説明

果実袋用原紙

【課題】本発明は、果実汚染性の少ない、優れた湿潤紙力強度を有し、ワックス加工性や撥水加工性にも優れた果実袋原紙を提供することにある。
【解決手段】カチオン性エポキシ樹脂、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂、もしくはカチオン性ポリアミド樹脂等のカチオン性ポリマーと、アニオン性ポリマーを組み合わせて、イオンバランスをとり紙力強度を高め、カチオン性定着剤として、化学式〔Al(OH)Cl6−nで表される無機塩の塩化アルミニウムを使用したことを特徴とする果実袋用原紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果実袋原紙および果実袋に関し、詳しくは、りんご、梨、桃、ぶどう、びわ、メロンなどの果実栽培において、成育中の果実を鳥、病害虫、直射日光及び風雨等から保護し、果実の外観(肌)を美しくするための果実袋用原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
果実袋は、従来から新聞紙、ワックス加工紙、撥水加工紙、塩化ビニールシート等を単独あるいは複数層複合して、袋状あるいは笠状に成形加工して用いられている。しかしながら、果実の成育期間(果実の種類・品種によっても異なるが、一般的には2〜4ヶ月程度と考えられる)に雨、風、日光にさらされても果実の生育に影響がないよう、その間撥水性が持続し、果実を保護する耐久性があることが求められることから、それらの要求を満たす紙としてワックス加工紙や撥水加工紙が特によく用いられる。
【0003】
また、ワックス加工紙や撥水加工紙の原紙は、果実袋原紙と呼ばれる。果実袋原紙は、ワックス加工や撥水剤加工、袋成形等の各加工工程で破れたり裂けたりしないことはいうまでもなく、果実袋として使用している間も破れたりしない強度が必要とされる。
【0004】
一般に、強度の高い原紙を得ようとすると紙力増強剤や湿潤紙力増強剤を相当量添加することが必要となり、その場合、コストの高いものとなってしまうばかりでなく、湿潤紙力剤の一部で人体に対する有害性が指摘されている。
【0005】
たとえば、特開平7−231728号公報には、パルプ繊維に対して、有機顔料および弁柄からなる着色顔料を1〜5重量%添加含有せしめ、かつ有機顔料に対する弁柄の配合比を5〜60重量%とした果実袋用原紙が提案されている。この果実袋用原紙にはパラフィン系ワックスやスチレンまたはスチレン誘導体とビニル系モノマーとの共重合物、塩素化パラフィン等の撥水剤を付与することが好ましいとされ、実施例には、紙料に湿潤紙力増強剤としてメラミン樹脂が内添されることが記載されている。
【0006】
特開平6−153712号公報には、木材パルプを主成分として抄造され、湿潤引張強度が0.2kgf/15mm以上、透気度が7000g/m・24h以上、光線透過量が1500〜3000ルクスであるアールスメロン用笠かけ栽培用紙が提案されている。本公報では、水に濡れても形状を保持できる湿潤強度として0.2kgf/15mm以上の強度が必要であり、この強度を得るためにメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂等の湿潤紙力増強剤を、通常パルプ乾燥重量に対して0.2重量%以上添加する必要があることが記載されている。
【0007】
しかし、湿潤増強剤が多く使用されたり、メラミン樹脂や尿素樹脂系薬品は、湿潤紙力や耐久性の向上については極めて効果は高いものの、近年それらの人体に対する発ガン性等の有害性が指摘され、法規制も強まり、使用に際してはより厳しい制限がかかるようになってきた。
【0008】
特に、メラミン樹脂の使用は、紙料調成等の製造時現場においても、更に熱のかかる乾燥工程のマシンのドライヤー内等では、一時的にホルムアルデヒド濃度が高まる場合があり、作業環境の面からも好ましくなかった。
【0009】
2008年3月1日から、安全衛生法で、ホルムアルデヒドが特定化学物質の第3類から、第2類に格上げされ、かつ、特別管理物質に指定され、作業の記録等が義務付けられるとともに、住宅等の建築分野でも、メラミン樹脂を使用した内装材が、その有害性が指摘されており、脱ホルマリン化は、産業界全体の流れになってきている。
【特許文献1】特開平7−231728号
【特許文献2】特開平6−153712号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ホルマリンを発生しない湿潤紙力増強剤を用い、優れた湿潤紙力効果を有し、ワックス加工性や撥水加工性にも優れた果実袋原紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)湿潤紙力増強剤と中性サイズ剤を内添して抄紙された果実袋原紙において、湿潤紙力剤増強剤として、カチオン性湿潤紙力増強剤とアニオン性湿潤紙力増強剤を併用し、かつ、定着剤として、化学式〔Al(OH)Cl6−nで表される無機塩の塩化アルミニウムを使用し、中性サイズ剤を内添したことを特徴とする果実袋用原紙。
(2)カチオン性ポリマーの配合量をアニオン性ポリマーに対して、固形分比で0.8〜1.3倍量とした(1)記載の果実袋用原紙。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用する木材パルプは特に限定されず、通常用いられている製紙用木材パルプを使用できる。たとえば針葉樹あるいは広葉樹を用いたサルファイトパルプ、クラフトパルプ、ソーダパルプ等のケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、メカニカルパルプ等が挙げられ、未晒パルプの状態で使用してもよく、晒パルプを使用しても良い。また、古紙を処理して製造される脱墨パルプを使用しても良い。さらにこれらパルプは、単独で使用してもよく、複数種類混合して使用しても良い。
【0013】
果実汚染性を極力抑え、人体に悪影響を及ぼさず、しかも耐水強度を高めることができる湿潤紙力増強剤をパルプ繊維スラリーに添加する。本発明においては、湿潤紙力増強剤としては、カチオン性のものとアニオン性のものを併用する。カチオン性湿潤紙力増強剤としては、カチオン性エポキシ樹脂、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂、あるいは、カチオン性ポリアミド樹脂等の耐水性を付与できるカチオン性ポリマーを用いる。カチオン性が強くなり過ぎるため、アニオン性湿潤紙力増強剤と組み合わせてイオンバランスをとることにより湿潤紙力が向上する。アニオン性紙力増強剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド樹脂などが使用できる。
【0014】
本発明においては、更にカチオン性定着剤として、化学式〔Al(OH)Cl6−nで表される無機塩の塩化アルミニウムを使用することにより、耐水性が格段に向上することを見出した。
【0015】
メラミン樹脂は、メチロールメラミンを加工品原料としているが、メチロールメラミンは加熱すると重縮合を起こし、網目状に架橋することで、引張強さや耐摩耗性をはじめ、耐水性にすぐれた熱硬化樹脂となる。
【0016】
一方、ノンホルマリンであるエポキシ樹脂類も、アミン類の硬化剤との反応により不溶の三次元硬化物となり、機械的強度や耐磨耗性はもとより耐水性を備えた高機能樹脂として広汎な用途に利用されている。しかしながら、紙への利用では、エポキシ樹脂系やエピクロロヒドリン系のノンホルマリンタイプの樹脂の耐水強度は、メラミン樹脂の半分程度しか発現できていなかった。さらにアニオン性のポリアクリルアミド系紙力剤を併用することによって強度を上げても、メラミン樹脂並みの湿潤紙力効果を発現させることができなかった。
【0017】
化学式〔Al(OH)Cl6−nで表される無機塩の塩化アルミニウムを使用してはじめて、エピクロロヒドリン系等のカチオン性樹脂とアニオン性ポリマーの紙への定着率を高め、さらに両薬品がネットワークを構成し、その相乗効果によって、メラミン樹脂と同等レベルの湿潤紙力強度を発現できた。
上記化学式において、nは1〜5、mは10以下の整数である。
【0018】
カチオン性紙力剤とアニオン性紙力剤の有効成分比率を1:1にした場合に、もっとも優れた湿潤紙力強さが得られる。これは、カチオン性の湿潤紙力剤が、アニオン性紙力剤とコポリマーを形成し、湿潤紙力剤単独以上の強度を発現するためと考えられる。
【0019】
本発明における紙力剤の添加量は、カチオン性、アニオン性いずれの場合も各々、パルプ繊維の種類、紙の種類、用途、要求される性能等に応じて変えられるが、パルプ繊維の乾燥重量に対して0.7〜1.2%、好ましくは0.8〜1.0%である。
0.7%より少ないと、十分な湿潤紙力が発現できず、1.2%を超えると抄紙機に汚れが発生するため好ましくない。
【0020】
カチオン性の紙力剤単独使用でも湿潤紙力が得られるが、本発明の湿潤紙力強さには至らない。また、アニオン性紙力剤と併用した場合には、パルプ繊維への定着剤が別途必要となり、酸性抄紙で使用される硫酸バンド系では、カチオン性紙力剤とアニオン性紙力剤のコポリマーの形成を阻害するため、本発明の湿潤紙力強さには至らない。
【0021】
本発明においては、前記した製紙用紙力増強剤の他に、製紙用サイズ剤と定着剤、填料、顔料、歩留まり向上剤、染料、消泡剤、防腐剤、粘度調整剤等の公知の抄紙薬品を適宜選択して用いられ、必要に応じて併用添加することができる。
【0022】
特に染料、顔料については、果実袋として使用する際に、作物に応じて光透過性能を必要な値にコントロールし、その目的に応じ適宜選択して使用する。たとえば、りんごなどでは、濃色の赤、青等の色相で使用される場合が多く、梨、桃、ぶどう等の栽培では淡色あるいは染料等の添加による着色なしに使用される場合が多い。本発明に係る果実袋原紙は、使用する果実の種類により、必要に応じて適宜染料、顔料等を添加・着色して使用する。これら染料、顔料等の添加は、従来公知の方法にて添加し、その配合、量は、所望する色相,濃度に応じて適宜調整することができる。
【0023】
本発明の果実袋原紙の製造は、公知の湿式抄紙機、例えば長網式抄紙機、ギャップフォーマ型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等抄紙機が使用可能である。
【0024】
また原紙の坪量は、果実育成袋に作製する際の製袋作業性や、製袋した袋を果実に袋掛けしたり、除袋したりする育成作業性の観点から、34〜150g/m の範囲が望ましい。坪量が34g/m より低いと、製袋作業や栽培現場での育成作業において十分な強度が得られず、150g/m を超えると硬すぎて紙の柔軟性が悪くなるため製袋作業における打ち抜き工程が困難となり、育成作業における袋掛けや除袋の作業性が低下する。
【0025】
こうして得られる果実袋原紙は、各種サイズプレス塗工或いはロール塗工、スプレー塗工、含浸加工等によりワックス処理あるいは撥水処理の加工が行われる。使用するワックス、撥水剤としては公知のものを使用することができる。たとえばパラフィン系ワックス、スチレンまたはスチレン誘導体とビニルモノマーとの共重合物、塩素化パラフィン、ナフテン酸コバルト、ジルコニウム化合物、アルキルケテンダイマーなどが挙げられる。
【0026】
本発明の果実袋用原紙の場合、一般に生育期間中の果実の袋掛けの期間は2〜4カ月必要である。袋の撥水効果が1カ月前後でなくなると、果実が雨の影響を受け、果実の生育や商品価値の低下を招く。
【0027】
ワックスや撥水剤の塗布量は一般に、1.0〜2.0g/m である。1.0g/m より少ないと撥水性が不足し、果実の生育や商品価値に影響を及ぼし、2.0g/mより多くしても、撥水効果はそれ程向上しないため、コスト的に不利となる。
【0028】
本発明の果実袋原紙は、紙力増強剤や湿潤紙力増強剤、さらにその他に添加される各種薬品の紙中分布の均一性が高く、強度、吸液性等のばらつきが少ないため、ワックス処理や撥水処理の加工工程の際に均一に処理することが可能である。
【0029】
本発明の果実袋原紙は、JIS P8135に準じて測定した湿潤引張強度が、0.5kN/m以上であることが必要で、0.9kN/m以上あることが好ましい。0.5kN/m未満であると、ワックス処理、撥水処理時に破断する可能性が高く、製品化できたとしても雨風で破れ易くなり、果実袋としての機能が十分に果たせなくなる。
【0030】
実施例1
DDR叩解機を用いて、カナダ標準フリーネス(CSF)350mLに叩解した針葉樹晒クラフトパルプ3.8%濃度のパルプ繊維スラリーを得た。このパルプ繊維スラリーに、アニオン系の紙力増強剤として、ポリアクリルアミドを成分とする薬品(商品名:ポリストロン117、荒川化学製)をパルプ重量に対して0.9%、カチオン系の湿潤紙力増強剤として、ポリアミドを成分とする薬品(商品名:アラフィックス255、荒川化学製)0.9%、中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(商品名:サイズパインK−903、荒川化学製)0.3%、化学式〔Al(OH)Cl6−nで表される無機塩の塩化アルミニウム(商品名:Paho#2S、浅田化学工業製)0.12%を配合し、前記の順で添加し紙料とした。
【0031】
この紙料を用いて、長網抄紙機で36.5坪量g/mの紙を抄紙し、その後塗工設備にて、ワックス(商品名:HA−541、荒川化学製)を1.5g/m塗布乾燥して、果実袋用の38g/m原紙を得た。
下記項目について、ワックス塗布後の原紙品質を評価し、結果を表1に示した。
【0032】
(1)坪量: JIS P8124に準じて測定し、(g/m)で表した。
(2)厚さ:JIS P8118に準じて測定し、(μm)で表した。
(3)引張強度(MD方向):JIS P8113に準じて測定し、(kN/m)で表した。
(4)湿潤引張強度(MD方向):JIS P8135に準じて湿潤状態とした試料を、JIS P8113の引張強度測定法に準じて測定し、(kN/m)で表した。
【0033】
実施例2
カチオン系の湿潤紙力増強剤として、ポリアミン・エピクロロヒドリンを成分とする薬品(商品名:WS4010、星光PMC製)をパルプ重量に対して0.9%、無機塩の塩化アルミニウムを0.15%添加、中性サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸(商品名:AS1532、星光PMC製)を0.3%添加した以外は実施例1と同様にして紙料とした。
【0034】
この紙料を用いて、長網抄紙機で33.5坪量g/mの紙を抄紙し、塗工設備にて、ワックス(商品名:HA−541、荒川化学製)を1.5g/m塗布乾燥して、果実袋用の35g/m原紙を得た。
品質を実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0035】
実施例3
実施例1で用いた針葉樹晒クラフトパルプと、DDR叩解機を用いて、カナダ標準フリーネス(CFS)350mLに叩解した広葉樹晒クラフトパルプを重量比7:3に混合した4%濃度のパルプ繊維スラリーに、カチオン系の湿潤紙力増強剤としてポリアミドエポキシ樹脂を成分とした薬品(商品名:スパラミン30、東邦化学工業製)をパルプ重量に対して0.8%、アニオン系紙力増強剤としてポリアクリルアミドを成分とする薬品(実施例1と同じ)を0.8%添加した以外は実施例1と同様にして果実袋原紙を作成し、品質を評価し、結果を表1に示した。
【0036】
実施例4
カチオン系の湿潤紙力増強剤としてエポキシ変性ポリアミドを成分とする薬品(商品名:ハーマイドPY−525A、ハリマ化成製)をパルプ重量に対して1.0%と、アニオン系紙力増強剤としてポリアクリルアミドを成分とする薬品を1.0%添加した以外は実施例2と同様にして紙料を得た。
【0037】
この紙料を用いて、長網抄紙機で坪量42.5g/mの紙を抄紙し、塗工設備にて、ワックス(商品名:HA−541、荒川化学製)を1.5g/m塗工して、果実袋用の44g/m原紙を得た。品質を実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0038】
実施例5
DDR叩解機を用いて、カナダ標準フリーネス(CSF)530mLに叩解した針葉樹未晒クラフトパルプ3.5%濃度のパルプ繊維スラリーに、カチオン系の湿潤紙力増強剤としてポリアミド・エピクロロヒドリンを成分とする薬品(商品名:ポリフィックス259、昭和高分子製)をパルプ重量に対して1.0%添加した以外は実施例4と同様にして果実袋原紙を作成し、品質を評価し結果を表1に示した。
【0039】
比較例1
DDR叩解機を用いて、カナダ標準フリーネス(CSF)350mLに叩解した針葉樹晒クラフトパルプ3.5%濃度のパルプ繊維スラリーを得た。このパルプ繊維スラリーに、湿潤紙力増強剤としてメラミンとホルムアルデヒドを成分にもつメラミン樹脂薬品(商品名:スミレーズレジン8%AC、田岡化学工業製)をパルプ重量に対して1.0%、酸性抄紙用サイズ剤(商品名:サイズパインN−771、荒川化学製)0.3%、硫酸バンド0.5%添加し紙料とした。
【0040】
この紙料を用いて、長網抄紙機で坪量36.5g/mの紙を抄紙し、塗工設備にて、ワックス(商品名:HA−541、荒川化学製)を1.5g/m塗工して、果実袋用の38g/m原紙を得た。実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0041】
比較例2
湿潤紙力増強剤としてホルムアルデヒドを成分にもつメラミン樹脂薬品(商品名:スミレーズレジン8%AC、田岡化学工業製)をパルプ重量に対して1.2%、硫酸バンド0.8%添加した以外は比較例1同様にして紙料を得た。
【0042】
この紙料を用いて、長網抄紙機で坪量42.5g/mの紙を抄紙し、塗工設備にて、ワックス(商品名:HA−541、荒川化学製)を1.5g/m塗工して、果実袋用の44g/m原紙を得た。実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0043】
比較例3
DDR叩解機を用いて、カナダ標準フリーネス(CSF)350mLに叩解した針葉樹未晒クラフトパルプ3.5%濃度のパルプ繊維スラリーに、湿潤紙力増強剤としてホルムアルデヒドを成分にもつメラミン樹脂薬品(商品名:スミレーズレジン8%AC、田岡化学工業製)をパルプ重量に対して1.0%添加、硫酸バンド0.6%添加した以外は比較例2と同様にして坪量44g/mの果実袋原紙を作成し、実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0044】
比較例4
メラミン樹脂に変えて、湿潤紙力増強剤としてカチオン性ポリアミド樹脂を成分とする薬品(商品名:アラフィックス255、荒川化学製)をパルプ重量に対して0.9%、アニオン系の紙力増強剤としてポリアクリルアミドを成分とする薬品(商品名:ポリストロン117、荒川化学製)を0.9%、硫酸バンドを0.6%添加する以外は比較例1と同様にして坪量38g/mの果実袋原紙を作成し、実施例1と同様に評価し、結果を表1に示す。
【0045】
比較例5
メラミン樹脂に変えて、カチオン系の湿潤紙力増強剤として、ポリアミドエポキシ樹脂を成分とする薬品(商品名:スパラミン30、東邦化学工業製)をパルプ重量に対して1.0%添加、アニオン系の紙力増強剤として、ポリアクリルアミドを成分とする薬品(商品名:ポリストロン117、荒川化学製)を1.0%添加する以外は比較例3と同様にして果実袋原紙を作成し、品質を評価し結果を表1に示した。
【0046】
比較例6
湿潤紙力増強剤としてカチオン性ポリアミド樹脂を成分とする薬品(商品名:アラフィックス255、荒川化学製)をパルプ重量に対して1.2%添加、アニオン系の紙力増強剤としてポリアクリルアミドを成分とする薬品(商品名:ポリストロン117、荒川化学製)を0.9%添加する以外は実施例1と同様にして果実袋原紙を作成し、品質を評価し結果を表1に示した。
【0047】
表1から明らかなように、本発明により果実袋原紙は、
(1)従来のメラミン樹脂の紙力剤を用いた処方(比較例1〜3)と遜色のない湿潤強度を有する果実袋原紙が得られた。
(2)硫酸バンドを使用したノンホルマリン処方(比較例4〜5)よりも、実施例の湿潤強度は高い。
(3)カチオン性とアニオン性の比率を適性範囲で使用することにより、バランスの悪い比較例6よりも、コストバランスと湿潤強度を高いレベルで発現させた。


【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤紙力増強剤と中性サイズ剤を内添して抄紙された果実袋原紙において、湿潤紙力剤増強剤として、カチオン性湿潤紙力増強剤とアニオン性湿潤紙力増強剤を併用し、かつ、定着剤として化学式〔Al(OH)Cl6−nで表される無機塩の塩化アルミニウムを使用し、中性サイズ剤を内添したことを特徴とする果実袋用原紙。
【請求項2】
カチオン性ポリマーの配合量をアニオン性ポリマーに対して、固型分比で0.8〜1.3倍量とした請求項1記載の果実袋用原紙。

【公開番号】特開2010−63418(P2010−63418A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234092(P2008−234092)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(000191320)王子特殊紙株式会社 (79)
【Fターム(参考)】