説明

果樹栽培用棚

【課題】樹体ジョイント仕立て法を特に梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃に適用した場合に、従来の一般的な格子状の棚を用いた場合よりも、果樹の樹勢が強まり、果実の肥大化が促進される果樹栽培用棚の提供。
【解決手段】樹体ジョイント仕立て法による果樹の栽培に用いる果樹栽培用棚であって、梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃の栽培に用いるものであり、列方向にジョイントされた果樹の栽培列中に、支柱を設置し、行方向に高さHで棒状補強材を配置し、各支柱における棒状補強材との交点Cから支柱に沿って地面方向へ長さXの点を通過するように、各列において列方向に線材α配置し、交点Cから棒状補強材に沿って行方向へ長さYの2つの点を通過するように、列方向に線材β1および線材β2を配置し、長さXに対する長さYの比(Y/X)が1.0〜2.0であることを特徴とする、果樹栽培用棚。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹体ジョイント仕立て法による梨等の栽培において用いる果樹栽培用棚に関する。
【背景技術】
【0002】
樹体ジョイント仕立て法とは、サクラ、ハナモモ、サルスベリ、ムクゲ、カエデ、梨、梅、柿などの樹木において、主枝を一方向へ延ばし、主枝先端部と隣接樹の主枝基部とを接ぎ木連結、または連接樹間の横枝を接ぎ木連結して複数樹を直線状に連続的に接ぎ木することにより、早期に樹体の骨格を完成させ、早期の成園化、果樹の早期多収穫を可能にする方法である(特許文献1参照)。
【0003】
この樹体ジョイント仕立て法では、樹木の主枝と側枝を支える棚が必要となるが、従来、行列方向へ線材や棒材を配置した一般的な格子状の棚を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−304495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の格子状の棚は、設置するのに多大な労力を要し、通常、数人の職人が数日かかって設置していた。また、樹体ジョイント仕立て法を適用して果樹を栽培した場合、果実の発育がより早いことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は樹体ジョイント仕立て法を、特に梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃の果樹に適用した場合、棚の態様を特定のものとすることで、果樹の樹勢を強め果実の肥大を促進できることを見出した。そして、そのような特定の態様の棚であって、従来の一般的な格子状の棚よりも設置するのが簡単で、職人でなくても容易に設置できる棚を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、次の(1)〜(5)である。
(1)樹体ジョイント仕立て法による果樹の栽培に用いる果樹栽培用棚であって、梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃の栽培に用いるものであり、少なくとも、支柱と、棒状補強材と、3本の線材と、を組み合わせてなり、所定の列間隔および所定の間隔で列状に植えられ、列方向にジョイントされた果樹の栽培列中に、所定の間隔で前記支柱を設置し、行方向に、所定の高さHで前記棒状補強材を配置し、各列に設置した前記支柱と前記棒状補強材とを結合し、各支柱における前記棒状補強材との交点Cから前記支柱に沿って地面方向へ長さXの点を通過するように、各列において、列方向に線材α配置して、前記線材αによって樹木の主枝を支え、前記交点Cから前記棒状補強材に沿って行方向へ長さYの2つの点の各々を通過するように、各列において、列方向に線材β1および線材β2を配置して、前記線材β1および前記線材β2によって樹木の側枝を支え、長さXに対する長さYの比(Y/X)が1.0〜2.0である、果樹栽培用棚。
(2)前記長さXが100〜300mmである、上記(1)に記載の果樹栽培用棚。
(3)前記高さHが1400〜2200mmである、上記(1)または(2)に記載の果樹栽培用棚。
(4)前記支柱は一方の端部にアンカー部を有し、前記アンカー部を地面に埋設することで前記支柱を設置し、前記支柱は他方の端部にTキャップを有し、前記Tキャップを介して、前記支柱と前記棒状補強材とを結合する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の果樹栽培用棚。
(5)前記支柱と、前記棒状補強材と、前記線材と、を含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の果樹栽培用棚が得られる組立セット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹体ジョイント仕立て法を特に梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃に適用した場合に、従来の一般的な格子状の棚を用いた場合よりも、果樹の樹勢が強まり、果実の肥大化が促進され、また、従来の一般的な格子状の棚よりも設置するのが簡単で、職人でなくても容易に設置できる果樹栽培用棚を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、使用状態の本発明の果樹栽培用棚の好適実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は列方向にジョイントされた果実の栽培列の両端部に配置する支柱の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の果樹栽培用棚のより好ましい態様を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、樹体ジョイント仕立て法による果樹の栽培に用いる果樹栽培用棚であって、梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃に用いるものであり、少なくとも、支柱と、棒状補強材と、3本の線材と、を組み合わせてなり、所定の列間隔および所定の間隔で列状に植えられ、列方向にジョイントされた果樹の栽培列中に、所定の間隔で前記支柱を設置し、行方向に、所定の高さHで前記棒状補強材を配置し、各列に設置した前記支柱と前記棒状補強材とを結合し、各支柱における前記棒状補強材との交点Cから前記支柱に沿って地面方向へ長さXの点を通過するように、各列において、列方向に線材α配置して、前記線材αによって果樹の主枝を支え、前記交点Cから前記棒状補強材に沿って行方向へ長さYの2つの点の各々を各々通過するように、各列において、列方向に線材β1および線材β2を配置して、前記線材β1および前記線材β2によって果樹の側枝を支え、長さXに対する長さYの比(Y/X)が1.0〜2.0である、果樹栽培用棚である。
【0011】
このような本発明の果樹栽培用棚について、以下に図を用いて説明する。
図1は、使用状態の本発明の果樹栽培用棚1の好適実施例を示す概略斜視図であり、本発明の果樹栽培用棚1を用いて、樹体ジョイント仕立て法を梨5に適用して栽培している図である。
【0012】
また、図1は、梨5の主枝52を一方向へ延ばし、主枝52の先端部と隣接樹の主枝52の基部とを接ぎ木連結して、複数樹を直線状に連続的に接ぎ木する樹体ジョイント仕立て法によって、梨5を栽培している図である。図1に示すように、梨5の主枝52が連結されている方向を列方向とし、上から見た場合にそれと垂直方向を行方向とする。
【0013】
また、図1は梨5を4列、1列あたり28本、全体で112本を植えたものの一部分を示している。
【0014】
図1において本発明の果樹栽培用棚1は、支柱12と、棒状補強材14と、線材(α、β1、β2、γ1、γ2、γ3、γ4)と、を組み合わせてなる。
本発明の果樹栽培用棚は、少なくとも、支柱12と、棒状補強材14と、3本の線材(α、β1、β2)とを組み合わせてなるものであるが、図1に示すもののように、さらに線材(γ1、γ2、γ3、γ4)を備えるものであると、側枝54の保持を好ましく行うことができる。
【0015】
支柱12および棒状補強材14の材質等は特に限定されないが、鋼製パイプであることが好ましい。また、断面直径が50mm程度のパイプであることが好ましい。また、溶融亜鉛メッキが施され、防錆効果を奏するものであることが好ましい。
線材(α、β1、β2、γ1、γ2、γ3、γ4)の材質等は特に限定されないが、鋼製のワイヤーであることが好ましい。また、溶融亜鉛メッキが施され、防錆効果を奏するものであることが好ましい。
【0016】
図1において梨5は、所定の列間隔aおよび所定の間隔bで列状に植えられ、列方向にジョイントされて栽培列をなしている。
所定の列間隔aと所定の間隔bとは特に限定されない。例えば長果枝型品種の場合、aは2.5〜3.5mであることが好ましい。また、例えば短果枝型品種の場合、aは3.5〜5.0mであることが好ましい。また、bは1〜3mであることが好ましく、1.5〜2.5mであることがより好ましく、2m程度であることがさらに好ましい。果樹の発育をより促進し、果実をよりなり易くすることができるからである。
【0017】
この栽培列中に、所定の間隔cで支柱12を設置し、行方向に、所定の高さHで棒状補
強材14を配置し、各列に設置した支柱12と棒状補強材14とを結合する。
支柱12を設置する方法は特に限定されない。例えば、支柱12が一方の端部にアンカー部を有しており、アンカー部を地面に打ち込んで埋設することで支柱12を設置することができる。
支柱12と棒状補強材14とを結合する方法は特に限定されない。例えば溶接して結合することができる。また後述するように、支柱12の上端部にTキャップを付け、Tキャップを介して支柱12と棒状補強材14とを角バンドを用いて結合する方法でもよい。
また、所定の間隔cは特に限定されない。例えばcは2〜6mであることが好ましく、3〜5mであることがより好ましく、3.5〜4.5mであることがより好ましく、3.8〜4.3mであることがより好ましく、4m程度であることがさらに好ましい。果樹の発育をより促進し、果実をよりなり易くすることができるからである。
また、所定の高さHとは、地面から棒状補強材14の上面まで高さ(鉛直方向の長さ)を意味する。
所定の高さHは特に限定されない。例えばHは1400〜2200mmであることが好ましく、1600〜2000mmであることがより好ましく、1700〜1900mmであることがより好ましく、1800mm程度であることがさらに好ましい。果樹の発育をより促進し、果実をよりなり易くすることができるからである。
【0018】
このようにして配置した支柱12の各々における棒状補強材14との交点Cから、支柱12に沿って地面方向へ長さXの点Pxを通過するように、各列において、列方向に線材α配置する。この線材αは樹木の主枝52を支えるように用いる。
例えば図1に示す好適実施例のように、支柱12における点Pxに相当する箇所に孔を開け、この孔に線材αを通して配置する。
そして、線材αと主枝52とを紐で結んで主枝52を支えることができる。
なお、交点Cは支柱12と棒状補強材14との交点であるが、より詳細には、支柱12の中心線の上方向への延長線と、棒状補強材14の上面との交点を意味するものとする。
【0019】
また、交点Cから棒状補強材14に沿って行方向へ長さYの2つの点(Py1、Py2)の各々を通過するように、各列において、列方向に線材β1および線材β2を配置する。これら線材β1および線材β2は樹木の側枝54を支えるように用いる。図1に示すように、交点Cから棒状補強材14に沿って行方向へ、長さがYである点は点Py1および点Py2の2つが存在する。
例えば棒状補強材14の点Py1および点Py2に相当する箇所に、ワイヤー支持フックバンドを付け、その上をワイヤー状の線材β1および線材β2を配置する。
そして、線材β1、線材β2の各々の上に側枝54が伸びるように置くことで支えることができる。
なお、線材β1および線材β2の交点Cからの距離(長さY)は、異なっていてもよい。
【0020】
本発明の果樹栽培用棚では、上記の長さXに対する長さYの比(Y/X)が1.0〜2.0である。この比は、1.2〜1.8であることが好ましく、1.4〜1.6であることがより好ましく、1.45〜1.55であることがより好ましく、1.5程度であることがさらに好ましい。
本発明者は樹体ジョイント仕立て法を、特に梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃の果樹に適用する場合、Y/Xが上記の範囲となる棚を用いると、果樹の発育を促進し、果実をなり易くすることができることを見出した。
【0021】
また、長さXが100〜300mmであることが好ましく、150〜250mmであることがより好ましく、180〜220mmであることがより好ましく、190〜210mmであることがより好ましく、200mm程度であることがさらに好ましい。果樹の発育をより促進し、果実をよりなり易くすることができるからである。
【0022】
本発明の果樹栽培用棚では、列方向にジョイントされた果実の栽培列の両端部に配置する支柱等は、図2に記す態様であることが好ましい。
図2は列方向にジョイントされた果実の栽培列の、列方向の両端部に配置する好ましい態様の支柱の概略断面図である。
栽培列の両端部に配置された支柱は、線材(α、β1、β2等)によって果樹栽培用棚の内側へ引っ張られる。したがって、これによって内側へ倒れないように、内側に補強用支柱11を有する。これによって線材(α、β1、β2等)を引っ張った状態を保持し、支柱12および線材(α、β1、β2等)を所定の位置に保持することができる。図2に示した態様では、補強用支柱11に張線器20が設けられており、線材αおよび線材(β1、β2)を保持することができる。また、補強用支柱11を地面に埋め込んだ先にはベースプレート21を有することが好ましい。
また、図2において支柱12は、一方の端部にアンカー部13を有しており、このアンカー部13が地面に打ち込まれている。
【0023】
次に、本発明の果樹栽培用棚のより好ましい態様について、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の果樹栽培用棚における1本の支柱およびその上部に取り付けられた棒状補強材の一部を示している。なお、図3における縮尺は実際のものとは必ずしも一致しない。
図3において支柱12は、一方の端部にアンカー部13を有している。アンカー部13を地面に打ち込んで埋設することで、支柱12を容易に設置することができる。
また、図3において支柱12は、上端部にTキャップ15が付けられている。そして、Tキャップ15を介して支柱12と棒状補強材14とを角バンド16を用いて結合している。このような方法であると、支柱12と棒状補強材14とをより容易に結合でき好ましい。
【0024】
本発明の果樹栽培用棚は、前記支柱と、前記棒状補強材と、前記線材と、を含む組立セットを組み立てて得ることができる。この組立セットは前記Tキャップを含むことが好ましい。また、支柱の一方の端部に取り付けてアンカー部となるアンカーを含むことが好ましい。
このような組立セットを用いて、職人でなくても容易に本発明の果樹栽培用棚を設置することができる。従来の格子状の棚は設置するのに多大な労力を要し、通常、数人の職人が数日かかって設置していた。
【符号の説明】
【0025】
1 本発明の果樹栽培用棚
5 梨
52 主枝
54 側枝
11 補強用支柱
12 支柱
13 アンカー部
14 棒状補強材
15 Tキャップ
16 角バンド
17 ワイヤー支持フックバンド
20 張線器
21 ベースプレート
α、β1、β2、γ1、γ2、γ3、γ4 線材
Px 交点Cから地面方向へ長さXの点
Py1、Py2 交点Cから行方向へ長さYの点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹体ジョイント仕立て法による果樹の栽培に用いる果樹栽培用棚であって、
梨、梅、柿、すもも、りんごまたは桃の栽培に用いるものであり、
少なくとも、支柱と、棒状補強材と、3本の線材と、を組み合わせてなり、
所定の列間隔および所定の間隔で列状に植えられ、列方向にジョイントされた果樹の栽培列中に、所定の間隔で前記支柱を設置し、行方向に、所定の高さHで前記棒状補強材を配置し、各列に設置した前記支柱と前記棒状補強材とを結合し、
各支柱における前記棒状補強材との交点Cから前記支柱に沿って地面方向へ長さXの点を通過するように、各列において、列方向に線材α配置して、前記線材αによって樹木の主枝を支え、
前記交点Cから前記棒状補強材に沿って行方向へ長さYの2つの点の各々を通過するように、各列において、列方向に線材β1および線材β2を配置して、前記線材β1および前記線材β2によって樹木の側枝を支え、
長さXに対する長さYの比(Y/X)が1.0〜2.0である、果樹栽培用棚。
【請求項2】
前記長さXが100〜300mmである、請求項1に記載の果樹栽培用棚。
【請求項3】
前記高さHが1400〜2200mmである、請求項1または2に記載の果樹栽培用棚。
【請求項4】
前記支柱は一方の端部にアンカー部を有し、前記アンカー部を地面に埋設することで前記支柱を設置し、
前記支柱は他方の端部にTキャップを有し、前記Tキャップを介して、前記支柱と前記棒状補強材とを結合する、請求項1〜3のいずれかに記載の果樹栽培用棚。
【請求項5】
前記支柱と、前記棒状補強材と、前記線材と、を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の果樹栽培用棚が得られる組立セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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