説明

架空線のテンションバランサ

【課題】 比較的小型、軽量で、十分な張力が得られる架空線のテンションバランサを提供する。
【解決手段】 テンションバランサ1は、架空線Wと架線柱Pとの間に、伸縮自在の第1、第2のケーシング2,3を介在させてなる。ケーシング2は、一端側が架線柱Pに係止され、下部に開口2eを有する。ケーシング3は、一端側がケーシング2の他端側に軸線方向出入り自在に挿入され、他端側が架空線Wに接続される。ケーシング2内に回転軸4が支持される。回転軸4は、一端側に巻取ドラム5を有し、他端側にねじ棒部4aを有する。ねじ棒部4aは、ケーシング3の一端側に受け入れられ、ボールナット6に螺合する。巻取ドラム5には、懸垂ロープ7が巻かれ、その上端が係止される。懸垂ロープ7は、ケーシング2の開口2eから下方へ延出し、下端にウエイト8が係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トロリ線のような架空線の端部を構築物に対して所定の張力を維持しつつ支持するテンションバランサに関する。
【背景技術】
【0002】
トロリ線引止用の滑車式テンションバランサとして、例えば、特許文献1に記載されるものが公知である。滑車式テンションバランサは、架線柱に係止されたアームの先端に、大小滑車を固定した滑車軸を軸支し、小滑車に巻回された引手ワイヤに引止用ヨークを介してトロリ線を係止し、大滑車に巻回された懸垂ワイヤでウエイトを支持する構造である。ウエイトは振止装置により昇降自在に保持される。
【特許文献1】特開2005−225423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の滑車式テンションバランサにおいては、所定の張力を得るために、比較的大重量で大型のウエイトを用いたり、直径の大きい大滑車を用いる必要がある。このため、装置が大型化し、大きな設置スペースを要するし、設置、保守の際の作業も大がかりとなる難点がある。
したがって、この発明は、比較的小型で軽量なウエイトを用いて、十分な張力を得ることができ、装置の外形寸法を大きく変更することなく、各種張力のものを容易に製作することができる架空線のテンションバランサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この発明においては、第1に、架空線Wと架線柱Pとの間に、伸縮自在に結合された第1、第2のケーシング2,3を介在させるテンションバランサ1が提供される。第1のケーシング2は、一端側が架線柱Pに係止され、下部に懸垂ロープ導出用の開口2eを有する。第2のケーシング3は、一端側が第1のケーシング2の他端側に軸線方向出入り自在に挿入され、他端側が架空線Wに接続される。第1のケーシング2内には、一端から他端に向かって軸線方向に伸びるように回転自在に回転軸4が支持される。回転軸4は、一端側に巻取ドラム5を有し、他端側に、第2のケーシング3の一端側に受け入れられるねじ棒部4aを有する。回転軸のねじ棒部4aに螺合するように、第2のケーシング3の一端側に、ボールナット6が支持される。巻取ドラム5には、懸垂ロープ7が巻かれ、その上端が係止される。懸垂ロープ7は、第1のケーシング2の開口2eから下方へ延出し、下端にウエイト8が係止される。
第2に、この発明に係るテンションバランサ1において、第1のケーシング2は、一端側に円筒状の大径部2aを有し、他端側に円筒状の小径部2bを有し、大径部2a内に巻取ドラム5が配置され、小径部2b内に回転軸のねじ棒部4aが配置されるものとし、また第2のケーシング3は、円筒状に構成され、一端側が、第1のケーシングの小径部2b内に軸線方向出入り自在に受け入れられてスプライン結合されるものとすることができる。
第3に、この発明に係るテンションバランサ1において、巻取ドラム5は、軸線方向に連続的に直径を変化させる円錐部5a,5bを有し、第1のケーシング2と第2のケーシング3が伸張方向に相対移動するとき、懸垂ロープ7が順次巻取ドラム5の直径が拡大する方向に懸垂位置を移動するように構成されるものとすることができる。
第4に、この発明に係るテンションバランサ1において、巻取ドラム5は、軸線方向の中央から両端に向かって連続的に直径を増大させる2つの円錐部5a,5bを有するものとし、また一対の懸垂ロープ7a,6bの上端側が、それぞれ巻取ドラムの円錐部5a,5bに巻かれて巻取ドラム5の軸線方向各端部にそれぞれ係止されるものとすることにより、第1のケーシング2と第2のケーシング3が伸張方向に相対移動するとき、一対の懸垂ロープ7a,6bが順次巻取ドラム5の直径が拡大する方向に懸垂位置を移動するように構成されるものとすることができる。
第5に、この発明に係るテンションバランサにおいて、巻取ドラム5は、その外周に、懸垂ロープ7の巻き順を案内する螺旋状のガイド溝5cを備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0005】
この発明に係るテンションバランサにおいては、ボールねじ・ナットの利用により、回転軸に一定のトルクを与えることで、軸線方向の引っ張り力を発生させ、有効ストローク間で一定の張力を保持する比較的小型で、軽量なテンションバランサが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係るテンションバランサの概略的断面図、図2は本発明に係るテンションバランサの設置状態の全体図である。
【0007】
図1、図2において、テンションバランサ1は、架空線Wと架線柱Pとの間に、伸縮自在に結合された第1、第2のケーシング2,3を介在させてなる。
【0008】
第1のケーシング2は、一端側に円筒状の大径部2aを有し、他端側に円筒状の小径部2bを有し、大径部2aのふた2cの引き手2dが、バンド金11を介して架線柱Pに係止される。
【0009】
第2のケーシング3は、円筒状で、一端側が第1のケーシング2の小径部2bに軸線方向出入り自在に挿入されてキー結合され、他端側のふた3aの外側の引き手3bが架空線Wに接続される。
【0010】
ケーシング2内には、一端から他端に向かって軸線方向に伸びるように回転自在に回転軸4が支持される。回転軸4は、ケーシングの大径部2a内に位置する一端側に、巻取ドラム5を有し、他端側には、第2のケーシング3の一端側に受け入れられるねじ棒部4aを有する。
【0011】
第2のケーシング3の一端側には、回転軸のねじ棒部4aに螺合するボールナット6が支持される。
【0012】
巻取ドラム5には、懸垂ロープ7が巻かれ、その上端が係止される。懸垂ロープ7は、ケーシング2の開口2eから下方へ延出し、下端にウエイト8が係止される。ウエイト8は、バンド金具9を介して架線柱Pに支持されたガイド金具10で昇降を案内されると共に振れ止めされる。
【0013】
図示の実施形態において、巻取ドラム5は、軸線方向の中央から両端に向かって連続的に直径を増大させる2つの円錐部5a,5bを有し、また一対の懸垂ロープ7a,7bの上端側が、それぞれ巻取ドラムの円錐部5a,5bに巻かれ、巻取ドラム5の軸線方向各端部にそれぞれ係止される。第1のケーシング2と第2のケーシング3が伸張方向に相対移動するとき、一対の懸垂ロープ7a,7bが順次巻取ドラム5の直径が縮小する方向に巻き上げられるように構成される。巻取ドラム5は、その外周に、懸垂ロープ7の巻き順を案内する螺旋状のガイド溝5cを備える。
【0014】
しかして、架空線Wが、気温の変化により伸縮すると、テンションバランサがこれに追従して動作し、一定の張力を保ちながら架空線を支持する。また、電車の通過等に伴い、例えば、図において左方へ架空線Wが引かれると、巻取ドラム5が懸垂ロープ7a,7bを巻き解く方向に回転し、巻き解きにしたがい、懸垂ロープ7a,7bの巻き位置は、徐々に巻取ドラム5の両端部側、すなわち、大径部側へ移動する。これに伴い、ウエイト8の荷重による回転軸4に対する回転モーメントが増大し、架空線を引き戻すための張力が増大するようになっている。なお、ボールねじにおいて、直線運動を回転運動に変換するときの逆動作トルク(Tb)は、次式で表される。
【数1】

【0015】
上式において、推力Fa=1,000kg(架空線の張力)、l=32(mm)、η=0.9と仮定すると、逆動作トルク(Tb)は、5,660(kgf・mm)となる。巻き上げドラムの半径を95mmとすると、1,000kgの張力に見合うウエイトの重量は、60kgとなる。これに対して、従来の滑車式テンションバランサは、ウエイトが係止される大滑車と架空線が係止される小滑車との直径比は、およそ4:1であるから、1,000kgの張力に見合うウエイトの重量は、250kgとなる。本発明に係るテンションバランサのウエイトの重量は、従来の滑車式テンションバランサのそれの約1/4で済むことになる。本発明に係るテンションバランサの張力は、ボールねじのリードと、トルク(ウエイトの重量・ドラム径)の関係で、自由に設計することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、例えばトロリ線のような架空線を支持するテンションバランサとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るテンションバランサの概略的断面図である。
【図2】本発明に係るテンションバランサの設置状態の概略的全体図である。
【符号の説明】
【0018】
1 テンションバランサ
2 第1のケーシング
2a 大径部
2b 小径部
2c ふた
2d 引手
2e 開口
3 第2のケーシング
3a ふた
3b 引手
4 回転軸
4a ねじ棒部
5 巻取ドラム
5a 円錐部
5b 円錐部
5c ガイド溝
6 ボールナット
7 懸垂ロープ
7a 懸垂ロープ
7b 懸垂ロープ
8 ウエイト
9 バンド金具
10 ガイド金具
11 バンド金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が架線柱に係止され、下部に懸垂ロープ導出用の開口を有する第1のケーシングと、
一端側が前記第1のケーシングの他端側に軸線方向出入り自在に挿入され、他端側が架空線に接続される第2のケーシングと、
前記第1のケーシング内に、一端から他端に向かって軸線方向に伸びるように回転自在に支持され、一端側に巻取ドラムを有し、他端側に、前記第2のケーシングの一端側に受け入れられるねじ棒部を有する回転軸と、
前記回転軸のねじ棒部に螺合するように、前記第2のケーシングの一端側に、支持されるボールナットと、
上端側が前記巻取ドラムに巻かれて係止され、中間が前記第1のケーシングの開口から下方へ延出し、下端にウエイトが係止される懸垂ロープとを具備することを特徴とする架空線のテンションバランサ。
【請求項2】
前記第1のケーシングは、一端側に円筒状の大径部を有し、他端側に円筒状の小径部を有し、大径部内に前記巻取ドラムが配置され、小径部内に前記回転軸のねじ棒部が配置され、
前記第2のケーシングは、円筒状に構成され、一端側が、前記第1のケーシングの小径部内に軸線方向出入り自在に受け入れられてキー結合されることを特徴とする請求項1に記載の架空線のテンションバランサ。
【請求項3】
前記巻取ドラムは、軸線方向に連続的に直径を変化させる円錐部を有し、前記第1のケーシングと第2のケーシングが伸張方向に相対移動するとき、前記懸垂ロープが順次巻取ドラムの直径が拡大する方向に懸垂位置を移動するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の架空線のテンションバランサ。
【請求項4】
前記巻取ドラムは、軸線方向の中央から両端に向かって連続的に直径を増大させる2つの円錐部を有し、
上端側がそれぞれ前記巻取ドラムの円錐部に巻かれて巻取ドラムの軸線方向各端部にそれぞれ係止され、中間が前記第1のケーシングの開口から下方へ延出し、下端に共通のウエイトが係止される一対の懸垂ロープとを具備し、
前記第1のケーシングと第2のケーシングが伸張方向に相対移動するとき、前記一対の懸垂ロープが順次巻取ドラムの直径が拡大する方向に懸垂位置を移動するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の架空線のテンションバランサ。
【請求項5】
前記巻取ドラムの外周には、前記懸垂ロープの巻き順を案内する螺旋状のガイド溝を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに架空線のテンションバランサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−13046(P2008−13046A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186277(P2006−186277)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)