説明

架空線のテンションバランサ

【課題】 比較的構造が簡単で、頻繁な保守点検を要さず、振動対策、周辺部材との干渉への対応が容易な架空線のテンションバランサを提供する。
【解決手段】 テンションバランサ1は、架線柱21上に固定される軸受けフレーム2と、軸受けフレーム2に軸支されるレバー3と、レバー3に接続される重錘4とを具備する。軸受けフレーム2は、架線柱21における架空線22の延線方向側に固定する。レバー3は、架空線22に接続される主アーム3bと重錘に接続される重錘アーム3cとを有するものとし、水平軸6によって軸受けフレーム2に軸支する。重錘アーム3cは、架線柱21の側部を通って架空線22の延線方向と反対側へ延出させ、先端部に重錘4を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トロリ線のような架空線の端部を架線柱に対して所定の張力を維持しつつ支持するテンションバランサに関する。
【背景技術】
【0002】
架空線 、特に電車線(吊架線・補助吊架線・トロリ線)にあっては、温度変化による伸縮や、クリープ、トロリ線の摩耗による弾性伸び、さらに経年による支持物の傾斜などにより、弛度張力 が影響を受けるため、張力 を一定に保持する必要がある。この張力を常時一定に保持し得るようにした自動張力調整装置として、滑車式テンションバランサとばね式テンションバランサが知られている。
トロリ線引止用の滑車式テンションバランサは、架線柱に係止されたアームの先端に、大小滑車を固定した滑車軸を軸支し、小滑車に巻回された引手ワイヤに引止用ヨークを介してトロリ線を係止し、大滑車に巻回された懸垂ワイヤでウェイトを支持する構造である(例えば、特許文献1参照)。
ばね式テンションバランサは、コイルばねを内蔵し、架線柱などの固定側に取り付けられる外筒と、この外筒内に嵌挿され、電車線側に取り付けられる内筒とを備え、電車線の伸縮に応じてコイルばねの弾性を利用して電車線に一定の張力を付与するものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−225423号公報
【特許文献2】特開平9−33201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の滑車式テンションバランサにおいては、比較的構造が複雑で、頻繁なワイヤの保守点検を要する。また重錘の振動対策、重錘の上下移動に伴う周辺部材との干渉を考慮する必要がある。ばね式テンションバランサにおいては、比較的構造が複雑であるし、ばねの摺動による性能低下、経年劣化への対応が必要である。
したがって、この発明は、比較的構造が簡単で、頻繁な保守点検を要さず、振動対策、周辺部材との干渉への対応が容易な架空線のテンションバランサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この発明においては、架線柱21上に固定される軸受けフレーム2と、軸受けフレーム2に軸支されるレバー3と、レバー3に接続される重錘4とを具備させて架空線のテンションバランサ1を構成する。軸受けフレーム2は、架線柱21における架空線22の延線方向側に固定する。レバー3は、架空線22に接続される主アーム3bと重錘に接続される重錘アーム3cとを有するものとし、水平軸6によって軸受けフレーム2に軸支する。重錘アーム3cは、架線柱21の側部を通って架空線22の延線方向と反対側へ延出させ、先端部に重錘4を接続する。
【発明の効果】
【0005】
この発明に係るテンションバランサにおいては、構造が簡単で、保守点検が容易であり、振動対策、周辺部材との干渉への対応が容易であるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係るテンションバランサの正面図、図2は本発明に係るテンションバランサの平面図である。
【0007】
図1、図2において、テンションバランサ1は、架線柱21上に固定される軸受けフレーム2と、軸受けフレーム2に軸支されるレバー3と、レバー3に接続される重錘4とを具備する。
【0008】
軸受けフレーム2は、架線柱21における架空線22の延線方向側にバンド金具5で固定され、対向一対のブラケット2aを有する。
【0009】
レバー3は、対向一対のレバー板3aからなり、架空線22に接続される主アーム3bと重錘4に接続される重錘アーム3cとを有する。レバー3は、枢支部3dにおいて水平軸6によって軸受けフレーム2のブラケット2a,2a間に軸支される。両アーム3b、3cは、枢支部3dから90°よりやや大きい相互角度で延出する。主アーム3bは、架線柱21とほぼ平行に上方へ伸びる。重錘アーム3cは、架線柱21の側方を通過して架空線22の延線方向と反対側へ延出し、先端部に重錘4が接続される。
【0010】
図示の実施形態において、重錘アーム3cを構成するレバー板3aは、架線柱21の直径より大きい相互間隔を置いて、水平軸6によってブラケット2a,2aに軸支される。レバー板3aの重錘アーム3cを構成する部位は、架線柱21の側方を通過して架空線22の延線方向と反対側へ延出し、架空線22の延線方向と反対側において相互に接近するよう屈曲し、先端部に重錘4が接続される。レバー板3aの主アーム3bを構成する部位は、上方へ延出し、上部において相互に接近するよう屈曲し、先端部に架空線22が接続される。
【0011】
図1,2に示す実施例において、主アーム3bと重錘アーム3cとの相互角度θ=95°、重錘アーム3cの長さL1=1500mm、主アーム3bの長さL2=750mm、重錘4の重量W=1500kg、主アーム3bが垂直に配置された初期状態において、架空線22に対する牽引力F=3011kgとすると、初期状態からの架空線22の移動ストロークX(図において左方移動が正、右方移動が負)と牽引力Fとの関係は図3の図表(縦軸:牽引力F、横軸:ストロークX)に示すとおりである。ほぼコンスタントな牽引力が得られるが、架空線22が左方へ移動するに従い牽引力が増大し、架空線22の流れ現象を抑止する。
【0012】
この実施形態のテンションバランサは、構造が簡単でありながら、ほぼコンスタントな牽引力と流れ防止機能を持つ。構造が簡単であるから保守点検が容易である。ワイヤを用いる滑車式テンションバランサにおけるような振動対策、周辺部材との干渉への対応が不要である。重錘4が架線柱21に対して、架空線22の支持部と反対側に配置されるので、架線柱21および軸受けフレーム2の負荷が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るテンションバランサの正面図である。
【図2】本発明に係るテンションバランサの平面図である。
【図3】本発明に係るテンションバランサのストロークと牽引力との関係を示す図表である。
【符号の説明】
【0014】
1 テンションバランサ
2 軸受けフレーム
3 レバー
3a レバー板
3b 主アーム
3c 重錘アーム
3d 枢支部
4 重錘
21 架線柱
22 架空線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線柱上の架空線の延線方向側に固定される軸受けフレームと、この軸受けフレームに枢支され前記架空線に接続されるレバーと、このレバーに接続される重錘とを具備し、
前記レバーは、枢支部において水平軸によって前記軸受けフレームに枢支され、枢支部から延出し先端部において前記架空線に接続される主アームと、枢支部から延出し先端部において前記重錘に接続される重錘アームとを具備し、
前記重錘アームは、前記枢支部から前記架空線の延線方向と反対側へ伸びて前記架線柱の側方を通過し、架線柱に対して架空線の延線方向と反対側に位置する先端部に前記重錘が接続されることを特徴とする架空線のテンションバランサ。
【請求項2】
前記レバーは、前記枢支部において水平軸によって前記軸受けフレームに枢支される並行一対のレバー板からなり、これらの一対のレバー板は、前記架線柱の直径より大きい相互間隔を置いて配置され、それぞれ前記架線柱の反対側の側方を通過して架空線の延線方向と反対側へ延出し、架線柱に対して架空線の延線方向と反対側において相互に接近するよう屈曲し、先端部に前記重錘が接続されることを特徴とする請求項1に記載の架空線のテンションバランサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−168823(P2008−168823A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4973(P2007−4973)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)