説明

染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置及び染料溶液の調節装置

【課題】染料感応太陽電池の製造において、染料吸着工程をリアルタイムで最適化して高品質の太陽電池を高い生産性で製作することができ、高価な染料を最適の状態で最大限活用し、その廃棄量を最少化することによって原価を節減し、高効率の電池を製作する効果を得ることができる染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置及び染料溶液の調節装置及びこのような装置に適用される方法を提供する。
【解決手段】本発明による染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置は、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度を測定する吸光装置;及び、染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpHを測定するpH測定装置を含むことを特徴とし、本発明による染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節装置は、前記モニタリング装置に追加して、高濃度の染料追加装置及び、pH調節のための酸又は塩基追加装置をさらに含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置及び染料溶液の調節装置に関するものであって、より詳しくは、染料感応太陽電池の製造において、染料吸着工程をリアルタイムで最適化して高品質の太陽電池を高い生産性で製作することができ、高価な染料を最適の状態で最大限活用し、その廃棄量を最少化することによって原価を節減し、高効率の電池を製作する効果を得ることができる染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置及び染料溶液の調節装置及びこのような装置に適用される方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1991年にスイス国立ローザンヌ高等技術院(EPFL)のマイケルグレッツェル(Michael Gratzel)らの研究チームによって染料感応ナノ粒子酸化チタン太陽電池が開発されて以来、この分野に関する多くの研究が進められている。染料感応太陽電池は既存のシリコン系太陽電池に比べて製造単価が顕著に低いため、既存の非晶質シリコン太陽電池を代替することができる可能性を有している。シリコン太陽電池とは異なり、染料感応太陽電池は、可視光線を吸収して電子−ホール(hole)対を生成することができる染料分子と、生成された電子を伝達する遷移金属酸化物とを主構成材料とする光電気化学的太陽電池である。
【0003】
一般的な染料感応太陽電池の単位セル構造は、上部及び下部の透明な基板(一般にガラス)と、その透明基板の表面にそれぞれ形成される透明導電性酸化物(TCO)とからなる導電性透明電極を基本にして、第1電極(作用極)に該当する一方側の導電性透明電極上には、その表面に染料が吸着された遷移金属酸化物多孔質層が形成され、第2電極(触媒極)に該当する他方側の導電性透明電極上には、触媒薄膜電極(主にPt)が形成され、前記遷移金属酸化物(例えば、TiO)多孔質電極と触媒薄膜電極との間には電解質が充填される構造を有する。即ち、染料感応太陽電池は、光を受けて電子を発生させる染料付き光電極(TiO)材料がコーティングされた作用極基板と、電子を供給する触媒極基板と、それらの間の酸化された染料に電子を供給する電解質とを基本にして構成される。
【0004】
しかし、このような構造を有する染料感応太陽電池において、優れた特性を有する吸光染料を前記遷移金属酸化物多孔質層に如何に多く吸着させるかが太陽電池の効率及び原価に大きな影響を与える。即ち、吸着量が多いほど、また、吸着された染料の特性が優れるほど太陽電池の光電効率が増大し、高価な染料を効率的に(効率の良い形態に吸着して)使用することになって、吸着されずに捨てられる染料の廃棄率を低くして原価を節減することができる。
【0005】
しかし、従来は吸着率を高めるために、新しく合成されて準備された染料を吸着率の最も良い濃度に調整して染料溶液を準備し、ここに太陽電池セルを浸漬する方式で吸着工程を行うので、多数のセルに対して吸着工程が進められるほど濃度が変化して吸着率が落ち、残った染料溶液を廃棄しなければならないので、廃棄率が高くて染料の浪費が激しかった。したがって、これを改善するために染料溶液の濃度を管理したが、初期溶液を使用する場合に比べて、吸着を進める過程で染料の変化などによって次第に低い光吸収率を示して、濃度管理のみで優れた太陽電池の製作を最適化することができず、手動濃度管理の場合には連続的に染料吸着工程を進めることができず生産性が落ちるという問題点がある。
【0006】
したがって、このような問題点を解決することができる染料溶液管理装置及び管理方法の開発が切実であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような従来の技術の問題点を解決しようと、本発明は、染料感応太陽電池の製造において、染料吸着工程をリアルタイムで最適化して高品質の太陽電池を高い生産性で製作することができ、高価な染料を最大限最適の状態で活用し、その廃棄量を最少化することによって原価を節減する効果を得ることができる染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置及び染料溶液の調節装置、並びに、このような装置に適用される染料管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置において、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度を測定する吸光装置;及び、染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpHを測定するpH測定装置を含むことを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含むことを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、染料吸着用担持体の入出のための移送口を有し、染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;前記貯蔵槽内の染料溶液の温度を測定し制御する温度調節部;前記貯蔵槽内の染料溶液の圧力を測定し制御する圧力調節部;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含むことを特徴とする染料感応太陽電池の染料吸着装置、
又は、染料感応太陽電池モジュールで染料溶液を循環させる移送ラインを有し、染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;前記移送ライン内の染料溶液の温度又は前記染料感応太陽電池モジュールの温度を測定し制御する温度調節部;前記移送ライン内の染料溶液の圧力又は前記染料感応太陽電池モジュール内の圧力を測定し制御する圧力調節部;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含むことを特徴とする染料感応太陽電池の染料吸着装置を提供する。
【0011】
その他に、本発明は、染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法において、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度測定及び染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpH測定を同時に行うことを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法及び、このようなモニタリング方法を適用した染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置及び染料溶液の調節装置並びにこのような装置に適用される染料管理方法によれば、染料感応太陽電池の製造において、染料吸着工程をリアルタイムで最適化して高品質の太陽電池を高い生産性で連続的に製作することができ、高価な染料を最適の効率を発揮する状態で最大限活用することによって、その廃棄量を最少化して原価を節減し、環境汚染を減らす効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の染料感応太陽電池の染料吸着装置の一実施例に関するシステム概略図である(TCO層及び触媒層などは単純化のために図示せず)。
【図2】本発明の染料感応太陽電池の染料吸着装置の他の実施例に関するシステム概略図である(TCO層及び触媒層などは単純化のために図示せず)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置は、染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置において、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度を測定する吸光装置;及び、染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpHを測定するpH測定装置を含む構成を有する。
【0015】
これに関する詳細な説明を、図面を参考にして説明する。
即ち、本発明は染料感応太陽電池の製造のためにTiOのような遷移金属酸化物多孔層に染料をより効果的に吸着するために染料溶液の状態をモニタリングするものであって、このために従来の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置に、染料溶液内の染料濃度をモニタリングするための、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度を測定する吸光装置を備える。即ち、本発明の染料感応太陽電池用吸着染料溶液の特徴が光を吸収する吸光機能を有することであるという点に着眼して、前記吸光装置は光源を介して発生した光を染料に照射して、照射された光中の染料に吸光された光を除いた残りの光を測定して、染料溶液の吸光度を測定することによって、吸光機能を有する染料の濃度を測定するようにする。
【0016】
好ましくは、前記吸光装置の光源は、染料が吸収する光の波長帯域であるのが、濃度の測定が容易であるので良く、これは測定対象である染料の最大吸収率を有する波長帯域であることもあり、場合によっては濃度によって吸光度の変化が敏感な他の波長帯域にこれを調整することができる。具体的に、前記吸光装置に適用される光源は、175nm乃至3300nmの波長を有してもよいし、或いは、UV(紫外線)光源を適用することもでき、これによって濃度変化を敏感に感知することができる。
【0017】
また、染料感応太陽電池用染料の吸着過程の吸着は吸着過程を進めることによって染料溶液の状態が変化し、このような染料溶液状態の変化は、染料に変化を起こすようにしたり、染料の濃度が高くてもそれ以上の吸着が行われないようにしたりする。そのため、単に濃度をモニタリングするのみでは吸着の最適条件を維持することができず、このような染料溶液の状態を共に管理しなければならず、これは一般的に染料溶液の酸度又は塩基度に影響を受けるので、このような染料溶液の状態を管理するために、本発明のモニタリング装置は染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpHを測定するpH測定装置を含む。前記pH測定装置は通常の多様な形態がこれに適用され、またこれは好ましくは、前記染料溶液が吸着過程で酸度又は塩基度が変化する染料(これに関する具体的な例としては、有機染料又は有機金属染料などが挙げられ、吸着の進行によってpHの変化が発生する場合に染料の吸着率や吸着する染料の変化が発生することがあるので、吸着進行中にpHモニタリングが必要となる。特に、有機染料の場合は染料溶液のpHによって染料の反応基、例えば、−COOHの反応性に差が発生して、pH変化によって吸着率に影響を受け、有機金属染料の場合もこのような影響を受けて吸着率に影響を与えたり、染料の構造が変化して電池の効率を落とす影響を与えることがある。)、さらに好ましくは、吸着過程の継続的な進行によって染料溶液のpHが変化して染料の構造を変化させるルテニウム系染料、より一層好ましくは、初期染料のTBAが分離されたり、さらに付着されて初期染料が効率の低い染料に変更されるような、染料溶液の酸度によって劣化が発生するTBAを有するルテニウム(Ru)系染料に対して適用されることが、染料溶液のpHによって直接的に影響を受けるようになるので良い。
【0018】
このような吸光度及びpHの測定のために、前記吸光装置及びpH測定装置は図1乃至図2に示したような位置にこれを設置したり、これから染料溶液のサンプルを採取して吸光度及びpHを測定したりすることができる。即ち、前記吸光装置は、前記染料溶液を貯蔵する貯蔵槽又は移送する移送ライン(引入又は排出ライン)から直接吸光度を測定したり、前記貯蔵槽又は移送ラインからサンプルを抽出して吸光度を測定し、前記pH測定装置は、前記染料溶液を貯蔵する貯蔵槽又は移送する移送ラインから直接pHを測定したり、前記貯蔵槽又は移送ラインからサンプルを抽出してpHを測定することができ、これによってリアルタイムで染料溶液の状態をモニタリングし、連続処理を行うことができる。
【0019】
また、これに加えて、前記モニタリング装置には、その具体的な例を図示したように、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の濁度又は伝導度を測定する付加測定装置をさらに含むようにすることができる。即ち、これによって染料溶液の異常の有無を確認することができ、濁度を測定して染料溶液内の異物汚染程度を把握し、異物が吸着するのを未然に防止することができる。
【0020】
また、本発明は、このようなモニタリング装置を基盤とする染料溶液の調節装置を提供し、これは染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする、前述した染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含んで構成される。
【0021】
これに関する具体的な例は図1乃至図2に示した通りである。即ち、前記モニタリング装置によってモニタリングされた染料溶液の状態によって、これを吸着が最適に行われる状態に変化させなければならない。したがってこのために染料濃度が吸着の最適条件に比べて低い場合には前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給するために染料供給装置を稼動し、染料の吸着によって溶液の酸度が高くなった場合には塩基を供給してpHを調節し、塩基度が高くなった場合には酸を供給してpHを調節するためにpH調節装置を稼動する。このような濃度及びpH調節は前記制御部によってフィードバック制御されるので、貯蔵槽内の染料溶液は常に最適の吸着条件にリアルタイム制御される。
【0022】
例えば、ルテニウム系染料を含む染料溶液の場合、紫外線を照射した際の紫外線吸収率が一定の程度以下である場合には染料の濃度が低くなったことを意味するので、十分な吸着が行われるように、染料濃度を高めるために高濃度の染料溶液を追加して適切な濃度水準に調整する。
【0023】
また、ルテニウム系染料の場合には染料の吸着過程の進行によってpHが順次変化し、これは大きく2つの様式で、製作される太陽電池の特性に影響を与える。まず、ルテニウム系染料の代表的な例であるN719は、元来分子構造でTBA陽イオンが選択的に2つのみ付いている構造であるが、吸着回数の増加又はその他の要因によって染料溶液のpHが変化すると、N719に付いているTBA陽イオンが解離されてTBAが一つも付いていないN3染料に形態が変化したり(pHが減少した場合)、又は、N719にTBA陽イオンがさらに付いて他の形態の染料に形態が変化したり(pHが増加した場合)するなどの変化が発生し、これは最初に供給されたN719がこれより効率の劣る他の形態の染料に変化して吸着されることを意味するので、染料感応太陽電池の性能低下を引き起こし、また、解離したTBA陽イオン濃度の増加はTiOに影響を与え、電流値や電圧値に影響を与えるようになって染料感応太陽電池の性能低下を引き起こす。したがって、このようなN719元来の分子構造を変化させるTBA陽イオンの解離を防止するために、酸又は塩基を追加して、染料溶液のpHを適切な水準に調整する。
【0024】
即ち、本発明ではこのような濃度及びpH管理を同時に、それもリアルタイムで行って、最適の吸着条件を連続吸着過程で常時維持して、優れた特性を有する染料の吸着率を高め、優れた特性を有する染料の活用度を高めることができる。
【0025】
また、前記染料供給装置の誤動作などで貯蔵槽内の染料溶液の濃度が過度に高くなることもあり、染料溶液の量が不足する場合が発生することもあるので、これに備えて、前記貯蔵槽に前記染料溶液の溶媒を供給する溶媒供給装置をさらに含み、前記制御部は前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置、pH調節装置、及び溶媒供給装置を制御するようにすることができる。即ち、染料溶液の濃度が高い場合には溶媒をさらに供給して染料溶液の濃度を最適濃度に制御することができ、染料溶液が不足する場合には染料供給装置から高濃度の染料溶液を供給するようにし、ここに溶媒を供給して最適濃度の新液を提供することができる。
【0026】
また、本発明は染料感応太陽電池の染料吸着装置を提供し、これは太陽電池セルの組立以前に吸着を行う図1の場合と、単位セルの組立が行われた後に吸着を行う図2の場合が挙げられる。
【0027】
即ち、図1のような方式で吸着を行う場合には、染料吸着用担持体の入出のための移送口を有し染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする前述した染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;前記貯蔵槽内の染料溶液の温度を測定し制御する温度調節部;前記貯蔵槽内の染料溶液の圧力を測定し制御する圧力調節部;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含んで染料感応太陽電池の染料吸着装置を構成することができる。
【0028】
また、図2のような方式で吸着を行う場合には、染料感応太陽電池モジュールで染料溶液を循環させる移送ラインを有し染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする前述した染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;前記移送ライン内の染料溶液の温度又は前記染料感応太陽電池モジュールの温度を測定し制御する温度調節部;前記移送ライン内の染料溶液の圧力又は前記染料感応太陽電池モジュール内の圧力を測定し制御する圧力調節部;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含んで染料感応太陽電池の染料吸着装置を構成することができる。
【0029】
即ち、吸着条件を最適化するためには、染料溶液条件の最適化だけでなく吸着工程条件の最適化も必要であるので、このために吸着工程の温度及び圧力を制御する調節部がさらに付加される。前記温度調節部の温度制御は、通常のルテニウム系染料の場合には約50℃の温度条件が設定されて制御され、圧力は高圧条件を適用することが吸着に有利である。また、これに追加して、添加された物質の均一な混合のために貯蔵槽などの内部に攪拌装置をさらに含むことができるのはもちろんである。
【0030】
図面に示したように、モニタリング装置は染料の状態のモニタリングのために多様な部分から染料溶液を得ることができ、これは選択的に又は全ての部分に対して同時にこれを行うこともでき、表示された部分で直接又はサンプリングによって行われる。
【0031】
即ち、温度調節部(温度測定及び制御部)は、図1の場合には貯蔵槽に別途の温度測定装置及び加熱又は冷却装置を備え、これによって温度を測定して、吸着に有利な温度を目標値にして貯蔵槽内の染料溶液温度を制御することができ、図2の場合、温度制御対象を貯蔵槽内の染料溶液とする場合には前述した通り制御することができ、温度制御の対象を移送ラインの染料溶液とする場合には、温度測定装置及び加熱又は冷却装置を移送ラインに備えたり、加熱又は冷却装置を貯蔵槽に備えるようにして温度を制御することもでき、実質的に吸着が行われるセルで温度を制御しようとする場合には、温度測定装置を貯蔵槽、移送ライン又はセルに取り付けることができ、加熱又は冷却装置を貯蔵槽、移送ライン又はセルに取り付ける構成とすることもできる。
【0032】
また、圧力調節部(圧力測定及び制御部)は、図1の場合には貯蔵槽に別途の圧力測定装置及び減圧又は加圧装置(ポンプ及びバルブなど)を備え、これによって圧力を測定して、吸着に有利な圧力を目標値にして貯蔵槽内の染料溶液の圧力を制御することができ、この場合には前記貯蔵槽は圧力容器でなければならない。また、図2の場合、圧力制御対象を貯蔵槽内の染料溶液とする場合には前述した通り制御することができ、圧力制御の対象を移送ラインの染料溶液とする場合には、圧力測定装置及び減圧又は加圧装置を移送ラインに備えたり、減圧又は加圧装置を貯蔵槽に備えるようにして圧力を制御することもでき、実質的に吸着が行われるセルで圧力を制御しようとする場合には圧力測定装置を貯蔵槽、移送ライン又はセルに取り付けることができ、減圧又は加圧装置が貯蔵槽、移送ライン又はセルを参照して制御されるようにポンプ及びバルブを取り付ける構成とすることもできる。
【0033】
この場合においても、前記調節装置で記述したように、溶媒を追加的にさらに制御するようにすることができ、このために前記染料吸着装置は前記貯蔵槽に前記染料溶液の溶媒を供給する溶媒供給装置をさらに含み、前記制御部は、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置、pH調節装置及び溶媒供給装置を制御するように構成することができる。ここでもこれに追加して、添加された物質の均一な混合のために貯蔵槽などの内部に攪拌装置をさらに含むことができるのはもちろんである。
【0034】
その他、本発明は前述したようなモニタリング装置、調節装置、及び吸着装置に適用されるモニタリング方法及び調節方法を提供し、モニタリング方法としては染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法において、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度測定及び染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpH測定を同時に行うことであって、これによって従来の単純な濃度モニタリングより高い吸着効果を得ることができる。
【0035】
ここでも前記染料溶液の染料は、好ましくは前記染料溶液が吸着過程で酸度又は塩基度が変化する染料(これに関する具体的な例としては多様な有機染料及び有機金属染料が挙げられる)であり、より具体的にはルテニウム系染料、例えば、N719などのようにTBAを有するルテニウム系染料が挙げられる。
【0036】
また、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節方法としては、染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽から前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液を前述した(染料感応太陽電池用吸着染料溶液の)モニタリング方法でモニタリングし、前記モニタリングから得られた吸光度及びpH値によって前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給したり、前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給する方式が挙げられる。
【0037】
これらについては前記装置に関する記述で詳しく説明したのでここでは詳細な説明を省略し、前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節方法には前述したのと同様に溶媒を追加する制御要素をさらに付加することができ、これは染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽から前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液を前述した(染料感応太陽電池用吸着染料溶液の)モニタリング方法でモニタリングし、前記モニタリングから得られた吸光度及びpH値によって前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給したり、前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給したり、前記染料溶液の溶媒を供給したりする方式でこれを行うことができる。
【0038】
以上で説明した本発明は前述した詳細な説明、実施例によって限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で該当技術分野の当業者が多様に修正及び変更させたものも本発明の範囲内に含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
10a 上面ガラス基板(触媒極)
10b 下面ガラス基板(作用極)
40 遷移金属酸化物層
50 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置において、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度を測定する吸光装置;及び、染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpHを測定するpH測定装置を含むことを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置。
【請求項2】
前記染料溶液の染料は、前記染料溶液が吸着過程で酸度又は塩基度が変化する染料であることを特徴とする、請求項1に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置。
【請求項3】
前記染料は、有機染料又は有機金属染料であることを特徴とする、請求項2に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置。
【請求項4】
前記染料は、ルテニウム系染料であることを特徴とする、請求項3に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置。
【請求項5】
前記吸光装置は、前記染料溶液を貯蔵する貯蔵槽又は移送する移送ラインから直接吸光度を測定し、或いは、前記貯蔵槽又は移送ラインからサンプルを抽出して吸光度を測定し、前記pH測定装置は前記染料溶液を貯蔵する貯蔵槽又は移送する移送ラインから直接pHを測定し、或いは、前記貯蔵槽又は移送ラインからサンプルを抽出してpHを測定することを特徴とする、請求項1に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置。
【請求項6】
前記吸光装置に適用される光源は、175nm乃至3300nmの波長を有するか、又はUV光源であることを特徴とする、請求項1に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置。
【請求項7】
染料感応太陽電池用吸着染料溶液の濁度又は伝導度を測定する付加測定装置をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置。
【請求項8】
染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする請求項1乃至7のうちのいずれか一項の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含むことを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節装置。
【請求項9】
前記貯蔵槽に前記染料溶液の溶媒を供給する溶媒供給装置をさらに含み、前記制御部は前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置、pH調節装置及び溶媒供給装置を制御することを特徴とする、請求項8に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節装置。
【請求項10】
染料吸着用担持体の入出のための移送口を有し、染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする請求項1乃至7のうちのいずれか一項の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;前記貯蔵槽内の染料溶液の温度を測定し制御する温度調節部;前記貯蔵槽内の染料溶液の圧力を測定し制御する圧力調節部;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含むことを特徴とする染料感応太陽電池の染料吸着装置。
【請求項11】
前記貯蔵槽に前記染料溶液の溶媒を供給する溶媒供給装置をさらに含み、前記制御部は前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置、pH調節装置及び溶媒供給装置を制御することを特徴とする、請求項10に記載の染料感応太陽電池の染料吸着装置。
【請求項12】
染料感応太陽電池モジュールで染料溶液を循環させる移送ラインを有し、染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽;前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液をモニタリングする請求項1乃至7のうちのいずれか一項の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング装置;前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給する染料供給装置;前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給するpH調節装置;前記移送ライン内の染料溶液の温度又は前記染料感応太陽電池モジュールの温度を測定し制御する温度調節部;前記移送ライン内の染料溶液の圧力又は前記染料感応太陽電池モジュール内の圧力を測定し制御する圧力調節部;及び、前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置及びpH調節装置を制御する制御部を含むことを特徴とする染料感応太陽電池の染料吸着装置。
【請求項13】
前記貯蔵槽に前記染料溶液の溶媒を供給する溶媒供給装置をさらに含み、前記制御部は前記モニタリング装置から得られた吸光度及びpH値によって前記染料供給装置、pH調節装置及び溶媒供給装置を制御することを特徴とする、請求項12に記載の染料感応太陽電池の染料吸着装置。
【請求項14】
染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法において、染料感応太陽電池用吸着染料溶液の吸光度測定及び染料感応太陽電池用吸着染料溶液のpH測定を同時に行うことを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法。
【請求項15】
前記染料溶液の染料は、前記染料溶液が吸着過程で酸度又は塩基度が変化する染料であることを特徴とする、請求項14に記載の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法。
【請求項16】
染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽の前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液を請求項14又は15の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法でモニタリングし、前記モニタリングから得られた吸光度及びpH値によって前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給し、或いは、前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給することを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節方法。
【請求項17】
染料感応太陽電池用吸着染料溶液を貯蔵する貯蔵槽の前記染料感応太陽電池用吸着染料溶液を請求項14又は15の染料感応太陽電池用吸着染料溶液のモニタリング方法でモニタリングし、前記モニタリングから得られた吸光度及びpH値によって前記貯蔵槽に貯蔵槽内の染料溶液より高濃度の染料溶液を供給し、前記貯蔵槽に酸又は塩基を供給し、或いは、前記染料溶液の溶媒を供給することを特徴とする染料感応太陽電池用吸着染料溶液の調節方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520456(P2012−520456A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553940(P2011−553940)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001415
【国際公開番号】WO2010/104294
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(502081871)ドンジン セミケム カンパニー リミテッド (62)
【Fターム(参考)】