説明

根わさび保存装置

【課題】 わさびの生育状況と比較的変わらない環境で、しかも葉つきのわさびを保管する方法を開発することが発明が解決しようとする課題である。
【解決手段】 容器の中のわさび保存室を栽培時と似た環境にし、その中に葉つきのわさびを立てて保存し、わさびの保存と同時に見る人に清涼感を与える保存方法を呈せんとするものであり、これが課題を解決するための手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として寿司店、小料理屋等における根わさびの保存装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
わさびは、アブラナ科の多年草で、日本特産。学名は「Wasabiajaponica」。冷涼な気候を好み全国各地の谷間に自生したり、渓流に造成されたわさび田で栽培されて、香辛料や漬物として利用されている。本わさびは、水がきれいで水温が年間を通して13〜16Cであり、水の量や流れの強弱が一定で、日差しをさえぎるための落葉樹があるなど様々な条件が揃った土地でないと育たない。食用の歴史はきわめて古く、奈良時代の『本草和名』にも記載されており、延喜式にも各地から貢納されていた記録がある。
【0003】
現在、粉わさびとかチューブ入りの錬りわさびが広く普及している。しかし、粉わさびは、本わさびを粉末にしたものと思っている人も多いが、実際に使用されているのはワサビダイコンといって、わさびとはまったく関係のない野菜であり、またチューブ入りの練りわさびにしても実際は原料のほとんどが北海道産のワサビダイコンであり、香りと色付けのほとんどが添加物によるものなので、味も香も本わさびとは全く別物である。風味が大切なわさびは、新鮮な根わさびが最適で、その場で摺って添えたいものである。そのために葉と細根を切り取って綺麗にした生の根わさびが喜ばれている。
【0004】
根わさびは、生で流通しているために、常温においておくと葉緑素が壊れて退緑して外観が悪くなり、しかも辛味が抜け香味が落ちて品質が悪くなる。
【0005】
日持ちを良くしようとするには冷蔵保管がよく、冷蔵庫は何処にでもあるので実用的ではあるが、それでも半月が限度であり、長期間の保存は難しい。また凍結すると解凍したときに細胞膜が壊れて軟質になり、摺り難く、しかも保存が利かないので実用的ではない。
【0006】
比較的短期間の保存方法としては、コップに水を入れて中に根わさびを立て、冷蔵庫(野菜室)へ保管する方法である。しかし、この方法はこまめに毎日水を変えなければならないという問題があり、やはり広く普及しているのは水に塗らした布、新聞紙等で包み、ラップして冷蔵庫(野菜室)へ保管する方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
わさびの生育状況と比較的変わらない環境で、しかも葉つきのわさびを保管する方法を開発すること、これが発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器の中のわさび保存室を栽培時と似た環境にし、その中に葉つきのわさびを立てて保存し、わさびの保存と同時に見る人に清涼感を与える保存方法を呈せんとするものであり、これが課題を解決するための手段である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、容器の縦方向に一方を高く他方を低く斜状とした二段の隔壁を設け、上部隔壁には両端部に上下に貫通した隙間を設け、また同じく貫通した複数のわさび容器挿入穴を設け、下部隔壁の他方側端部には水落下口を設け、下部隔壁下方には横方向略中央部に、下部に水通過口を設けた仕切り板を配設し、当該仕切り板の一方側は水室とし、他方側は水浄化室とするとともに、水室内にはポンプを配設し、水室の外側には前記ポンプとパイプを介して連通した水冷却部と当該水冷却部内の水を所定温度にする冷熱ユニットを配設し、水冷却部より立設したパイプの水口より冷却水を上部隔壁上へ吐出すべく構成してなる根わさび保存装置であり、更には、保存室に砂利を充填したこと、更には、保存室を水室としたこと、更には、わさび容器は、葉つき根わさびを挿入し得る大きさで、且つ網目状の多数個の貫通穴を設けるとともに、前記上部隔壁の穴に挿入すべく構成していること、更には、上部隔壁上面には、わさび容器挿入部分を除いて飾り砂利、小石等を載置するとともに、水口下方には、小型の水車、猪おどし、岩に滝等の添景物を配設したことを特徴とするものであるから、従来、根わさびの保存は水に塗らした布、新聞紙等で包み、ラップして冷蔵庫(野菜室)へ保管する方法が最良であったが、この方法は保存目的には最良ではあっても、わさびは冷蔵庫内であり、また葉つきのわさびを保存することはできなかったが、本発明では、水は水室内に配設したポンプとパイプを介して連通した水冷却部と当該水冷却部内の水を所定温度にする冷熱ユニットにより13〜16℃にて冷やした水を立設したパイプの水口より上部隔壁上へ吐出すべく構成しているので、保存室内の水は常に適温に保たれる、即ち冷却し、動かし、浄化することにより水の腐敗を防止することができる。しかも、水口より落下する水で猪おどしとか水車を稼動させたり、また小岩を配して滝を作れば、添景物としても最適で客に喜ばれるだけでなく、水の攪拌作用により酸素を供給することができ、その上、葉つきのわさびであるので、業務用として寿司店とか小料理屋で使う場合には、その場で採取した葉も天ぷらとかで使用でき、その上、当該装置をカウンター上に置いておけば、清涼感に溢れた置物となる等、極めて顕著なる効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
容器の縦方向に一方を高く他方を低く斜状とした二段の隔壁を設け、上部隔壁には両端部に上下に貫通した隙間を設け、また同じく貫通した複数のわさび容器挿入穴を設け、下部隔壁の他方側端部には水落下口を設け、下部隔壁下方には横方向略中央部に、下部に水通過口を設けた仕切り板を配設し、当該仕切り板の一方側は水室とし、他方側は水浄化室とするとともに、水室内にはポンプを配設し、水室の外側には前記ポンプとパイプを介して連通した水冷却部と当該水冷却部内の水を所定温度にする冷熱ユニットを配設し、水冷却部より立設したパイプの水口より冷却水を上部隔壁上へ吐出すべく構成してなる根わさび保存装置であり、更には、保存室に砂利を充填したこと、更には、保存室を水室としたこと、更には、わさび容器は、葉つき根わさびを挿入し得る大きさで、且つ網目状の多数個の貫通穴を設けるとともに、前記上部隔壁の穴に挿入すべく構成していること、更には、上部隔壁上面には、わさび容器挿入部分を除いて飾り砂利、小石等を載置するとともに、水口下方には、小型の水車、猪おどし、岩に滝等の添景物を配設したことを特徴とする根わさび保存装置を呈せんとするものである。
【実施例1】
【0011】
わさび保存装置1は、主として容器2、上部隔壁3、下部隔壁4、保存室5、水浄化室6、水室7、ポンプ8、水冷却部9、冷熱ユニット10、添景物11等により構成されている。
【0012】
容器2は、内部に縦方向に一方を高く他方を低く斜状とした二段の隔壁3、4を設けており、上部隔壁3には両端部に上下に貫通した隙間12、12を設け、また同じく貫通した複数のわさび容器挿入穴13を設けると共に、前記上部隔壁3と下部隔壁4間をわさび冷却の保存室5としている。保存室5内部には本実施例においては砂利、砂等を充填しているが、他の実施例においては単なる水室としている。容器2は、本実施例においてはステンレス製容器としているが、容器の材質及び外観、形状に限定を受けるものではない。
【0013】
下部隔壁4の他方側端部には保存室5よりの水落下口14を設け、下部隔壁4下方には横方向略中央部に、下部に水通過口16を設けた仕切り板15を配設し、当該仕切り板15の一方側は水室7とし、他方側は水浄化室6に構成している。水浄化室6内には砂利、砂等を充填しており、水室7との仕切り版15の下部にある水通過口16には砂利等が水室7内に入らないように網を取付けている。
【0014】
水室7内にはポンプ8を配設し、水室7の外側には前記ポンプ8とパイプ17を介して連通した水冷却部9と当該水冷却部9内の水を所定温度にする冷熱ユニット10を配設し、水冷却部9より立設したパイプ18の水口19より冷却水を上部隔壁3上へ吐出すべく構成している。
【0015】
水冷却部9より立設したパイプ18の上端には冷却水を吐出する水口19を設けており、当該水口19より吐出された水で、本実施例においては添景物としての水車11を廻している。この際、上部隔壁3上面には飾りの小石等を載置している。添景物11としては本実施例においては水車としているが、子岩等を配して滝としてもよく、また猪おどしをつけてもよく、添景物11に限定を受けるものではない。
【0016】
わさび容器20は、根わさびを挿入し得る大きさの筒状で、且つ網目状に多数の穴21を設けている。本実施例においてはプラスチック製としているが、材質並びに形状には限定を受けるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、容器2の縦方向に一方を高く他方を低く斜状とした二段の隔壁3、4を設け、上部隔壁3には両端部に上下に貫通した隙間12、12を設け、また同じく貫通した複数のわさび容器挿入穴13を設け、下部隔壁4の他方側端部には水落下口14を設け、下部隔壁4下方には横方向略中央部に、下部に水通過口16を設けた仕切り板15を配設し、当該仕切り板15の一方側は水室7とし、他方側は水浄化室6とすると共に、水室7内にはポンプ8を配設し、水室7の外側には前記ポンプ8とパイプ17を介して連通した水冷却部9と当該水冷却部9内の水を所定温度にする冷熱ユニット10を配設し、水冷却部9より立設したパイプ18の水口19より冷却水を上部隔壁4上へ吐出すべく構成してなる根わさび保存装置であり、更には、保存室5に砂利を充填したこと、更には、保存室5を水室としたこと、更には、わさび容器20は、葉つき根わさびを挿入し得る大きさで、且つ網目状の多数個の貫通穴21を設けると共に、前記上部隔壁3の穴13に挿入すべく構成していること、更には、上部隔壁3上面には、わさび容器挿入部分を除いて飾り砂利、小石等を載置するとともに、水口19下方には、小型の水車、猪おどし、岩に滝等の添景物11を配設したことを特徴とする根わさび保存装置1であるから、従来、根わさびの保存は水に塗らした布、新聞紙等で包み、ラップして冷蔵庫(野菜室)へ保管する方法が最良であったが、この方法は保存目的には最良ではあっても、わさびは冷蔵庫内であり、また葉つきのわさびを保存することはできなかったが、本発明では、葉つきのわさびを栽培時に近似した状況の中で保存するので保存には最適である。しかも、葉つきのわさびであるので、業務用として寿司店とか小料理屋で使う場合には、その場で採取した葉も天ぷらとかで使用でき、その上、当該装置1をカウンター上に置いておけば、清涼感に溢れた置物となる。また水は、水室7内に配設したポンプ8とパイプ17を介して連通した水冷却部9と当該水冷却部9内の水を所定温度にする冷熱ユニット10により13〜16℃にて冷やした水を立設したパイプ18の水口19より上部隔壁3上へ吐出すべく構成しているので、保存室内の水は常に適温に保たれる。即ち、水を冷却し、動かし、浄化することにより、水の腐敗を防止することができる。更に落下する水で猪おどしとか水車11を稼動させれば添景物としても最適で客に喜ばれるだけでなく、水の攪拌作用をも得られて水中に酸素を供給することができ、その上、従来はわさび業者が葉、茎部分を切断して根わさびとして出荷していたが、葉つきのままで出荷ができる等、産業上での利用可能性は極めて大きいものがある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 装置の一部断面した側面図
【図2】 容器の側面図
【図3】 わさび容器の側面図
【図4】 他の実施例の装置一部断面した装置の側面図
【符号の説明】
【0019】
1 保存装置
2 容器
3 上部隔壁
4 下部隔壁
5 保存室
6 水浄化室
7 水室
8 ポンプ
9 水冷却部
10 冷熱ユニット
11 添景物
12 隙間
13 わさび容器用穴
14 水落下口
15 仕切り版
16 水通過口
17 パイプ
18 吐出用パイプ
19 水口
20 わさび容器
21 わさび容器の網目穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の縦方向に一方を高く他方を低く斜状とした二段の隔壁を設け、上部隔壁には両端部に上下に貫通した隙間を設け、また同じく貫通した複数のわさび容器挿入穴を設け、下部隔壁の他方側端部には水落下口を設け、下部隔壁下方には横方向略中央部に、下部に水通過口を設けた仕切り板を配設し、当該仕切り板の一方側は水室とし、他方側は水浄化室とするとともに、水室内にはポンプを配設し、水室の外側には前記ポンプとパイプを介して連通した水冷却部と当該水冷却部内の水を所定温度にする冷熱ユニットを配設し、水冷却部より立設したパイプの水口より冷却水を上部隔壁上へ吐出すべく構成してなる根わさび保存装置。
【請求項2】
前記上部隔壁と下部隔壁間をわさび冷却保存室とし、当該保存室に砂利を充填したことを特徴とする請求項1の根わさび保存装置。
【請求項3】
前記上部隔壁と下部隔壁間をわさび冷却保存室とし、当該保存室を水室としたことを特徴とする請求項1の根わさび保存装置。
【請求項4】
わさび容器は、葉つき根わさびを挿入し得る大きさで、且つ網目状の多数個の貫通穴を設けるとともに、前記上部隔壁の穴に挿入すべく構成してなる請求項1の根わさび保存装置。
【請求項5】
前記上部隔壁上面には、わさび容器挿入部分を除いて飾り砂利、小石等を載置するとともに、水口下方には、小型の水車、猪おどし、岩に滝等の添景物を配設したことを特徴とする請求項1の根わさび保存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−124826(P2010−124826A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328698(P2008−328698)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(594135276)
【Fターム(参考)】