説明

栽培装置

【課題】
栽培容器を水平面内で安定かつ安全に移動させることができて、単位面積あたりの収穫量を増大させると共に、栽培作業の効率化を図る栽培装置を提供する。
【解決手段】
地面上に列状に設置された複数の支持部材と、該複数の支持部材のそれぞれにその一端が回動自在に軸支されたアーム部材と、該アーム部材の他端に支持された栽培容器と、を複数列備え、アーム部材の水平面内での同期した回動により栽培容器を水平面内で移動させて、複数列の栽培容器が略一定の間隔を有する栽培位置と、隣接する栽培容器間の間隔寸法が前記略一定の間隔寸法より大きく設定された作業位置と、に切替設定可能に構成する。前記アーム部材の他端に栽培容器を支持するための容器支持部材を配置すると共に、複数の支柱及び又はその近傍にアーム部材に設けたガイド部材が移動するための敷設部材を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばイチゴや野菜あるいは花その他の植物を地上から所定高さに設置して栽培するための栽培装置に係わり、特にビニールハウス等の温室内で栽培するために好適に用いられる栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、この種の植物の栽培装置としては、地上から所定高さ位置に栽培ベッド(栽培容器・栽培槽)を配設して栽培しており、作業者が立った状態で日常の手入れや収穫等の各種作業ができて、作業の効率化を実現すると共に作業者の負担を軽減するようになっている。従来、この種の栽培装置としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示のものが知られている。このうち、特許文献1に開示の栽培装置は、硬質プラスチック製の桁材の左右端部を支持する支柱からなる架台上にプランター等からなる栽培容器を配置し、架台を地面に所定間隔で複数条配設するようにしたものである。
【0003】
また、特許文献2に開示の栽培装置は、栽培容器と、この栽培容器を地面より高い位置で天秤状態に保持する保持部材及び該保持部材と栽培容器とを連結するワイヤーロープ等からなる吊下保持部材を備え、前記保持部材に栽培容器を水平方向に移動させる移動機構を設け、これらを地面に所定間隔で複数列(複数条)配置するようにしたものである。
【特許文献1】特許第3266579号公報
【特許文献2】特許第3001511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の栽培装置においては、作業者がしゃがんだ状態で作業をする必要がなくなり肉体的負担を軽減できるという利点が得られるものの、複数列の栽培容器の位置が固定されてその架台間に形成される通路の間隔寸法が固定的となり、限られた面積を有する温室内で植物の栽培面積を増やすことが困難で、単位面積あたりの収穫量を増大させることが極めて難しい。
【0005】
また、特許文献2に開示の栽培装置においては、移動機構等により栽培容器を昇降方向と水平方向に移動可能であることから、複数列配置した場合の各列間の間隔寸法を調整できて、特許文献1に開示の栽培装置が持つ不具合はある程度解消できるものの、栽培容器が天秤状態で保持されて昇降したり水平方向に移動するため、栽培容器の重量バランスが難しく、スムーズな移動が困難となる。また、栽培容器がワイヤーロープで保持部材に連結されているため、栽培容器の移動時に該容器が一層揺れる状態となり易く、この移動時に例えば栽培容器内の肥料や土あるいは実ったイチゴ等が落下する場合がある等、栽培作業の安定性や安全性の面でも劣ることになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、栽培容器を水平面内で安定かつ安全に移動させることができて、単位面積あたりの収穫量を増大させると共に、栽培作業の効率化を図る栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、地面に列状に設置された複数の支持部材と、該複数の支持部材のそれぞれにその一端が回動自在に軸支されたアーム部材と、該アーム部材の他端に支持された栽培容器と、を複数列備え、前記アーム部材の水平面内での同期した回動により前記栽培容器を水平面内で移動させて、複数列の栽培容器が略一定の間隔を有する栽培位置と、隣接する栽培容器間の間隔寸法が前記略一定の間隔より大きく設定された作業位置と、に切替設定可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記支持部材が地面に所定の間隔を有して列状に立設された複数の支柱であり、前記アーム部材の他端に栽培容器を支持するための容器支持部材を配置すると共に、複数の支柱及び又はその近傍に前記アーム部材に設けたガイド部材が移動するための敷設部材を配置したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、地面上方の所定高さ位置に列状に設置された複数の吊り部材と、該複数の吊り部材のそれぞれにその一端が回動自在に軸支されたアーム部材と、該アーム部材の他端に支持された栽培容器と、を複数列備え、前記アーム部材の水平面内での同期した回動により前記栽培容器を水平面内で移動させて、複数列の栽培容器が略一定の間隔を有する栽培位置と、隣接する栽培容器間の間隔寸法が前記略一定の間隔より大きく設定された作業位置と、に切替設定可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記アーム部材が、その他端上部に前記吊り部材の下端に設けたガイド板にガイドされつつ移動するガイド部材が設けられると共に、その他端下部に栽培容器を支持する容器支持部材が配設されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記栽培容器が温室内に複数列配置され、該列と直行する幅方向の一端側の栽培容器を固定的に設置すると共に、残りの列のうち少なくとも一つの列の栽培容器を水平面内で移動可能に配置したことを特徴とする。また、請求項6に記載の発明は、前記アーム部材がそれぞれ連結部材により列方向に連結されて一体となって水平面内で回動することを特徴とする。また、請求項7に記載の発明は、前記アーム部材を水平面内の所定位置で停止させるストッパ機構が設けられていることを特徴とする。また、請求項8に記載の発明は、前記栽培装置が、複数の容器を長手方向に連接してユニットとし、該ユニットを長手方向に所定数連接配置して形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、地面に列状に設置された複数の支持部材に各アーム部材の一端が回動自在に軸支され、この各アーム部材が水平面内で同期して回動して栽培容器を栽培位置と作業位置とに設定するため、栽培容器の水平面内での移動を複数のアーム部材で安定かつ確実に行うことができると共に、所定列の栽培容器に対して作業を行う場合に、当該列かもしくは隣り合う列の栽培容器を作業位置に設定して隣り合う栽培容器間の間隔寸法を大きくした状態で行うことができ、各種作業を効率的に行うことができる。また同時に、栽培容器を栽培位置に設定することで、隣り合う栽培容器間の間隔寸法を小さくできて、単位面積あたりの支持部材の設置数(栽培容器の配置数)を増加させて植物の収穫量を増大させることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明に効果に加え、アーム部材に設けたガイド部材が支持部材を形成する複数の支柱及び又はその近傍に敷設した敷設部材上をガイドされつつ移動するため、アーム部材の他端に配置された栽培容器を支持するための容器支持部材の水平面内での移動をスムーズに行うことができて、栽培容器の栽培位置と作業位置との間の切り替えを簡単かつ確実に行うことができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、地面上方の所定高さ位置に列状に設置された複数の吊り部材に各アーム部材の一端が回動自在に軸支され、この各アーム部材が水平面内で同期して回動して栽培容器を栽培位置と作業位置とに設定するため、請求項1に記載の発明と同様の効果に得られると共に、栽培容器を地面より所定高さ位置に配置した例えば桁柱の吊り部材やアーム部材によって空中に配置できて、例えば地面の管理が容易に行えたり栽培容器下方の空間を有効利用できて、各種作業を一層効率的に行うことができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、アーム部材の他端に、上端にガイド板にガイドされつつ移動するガイド部材が設けられ、下端に栽培容器を支持する容器支持部材が配設されているため、地面上の所定高さ位置に配置される栽培容器をガイド部材によりスムーズに水平移動できて、該容器の栽培位置と作業位置との間の切り替えを簡単かつ確実に行うことができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の効果に加え、栽培容器が温室内の地面に複数列配置され、幅方向の一端側の栽培容器が固定的に配置され、残りの少なくとも一つの列の栽培容器が水平面内で移動可能に配置されるため、例えば複数列の一端側の栽培容器を温室の境界部分等の端部に位置させることができて、単位面積あたりにおける栽培容器の配置数を増加させることができ、植物の収穫量を一層増大させることができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし5に記載の発明の効果に加え、アーム部材がそれぞれ連結部材により列方向に連結されて一体となって水平面内で回動するため、アーム部材の水平面内での回動動作が連結部材により確実に同期した状態で行われ、栽培容器の切り替えを安定かつスムーズに行うことができる。
【0018】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、請求項1ないし6に記載の発明の効果に加え、アーム部材を水平面内の所定位置で停止させるストッパ機構が設けられているため、栽培容器を例えば作業位置である所定位置に確実に停止させることができると共に、栽培位置と作業位置との切り替えを一層簡単に行うことができる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明によれば、請求項1ないし7に記載の発明の効果に加え、栽培装置が複数の容器を連接してユニットとして、このユニットを長手方向に所定数連接して形成されるため、複数のアーム部材で列状に配置された所定数の栽培容器を同時に移動させることができ、各栽培容器の栽培位置から作業位置への切替移動を簡単かつスムーズに行うことができると共に、例えば長さの長い温室であっても、容易に適用してその収穫量を一層増やすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図9は、本発明に係わる栽培装置の第1の実施形態を示している。図1及び図2において、栽培装置1は、例えば幅略8mで長さが略50mのビニールハウスや透明ガラスを使用した温室(以下これらを総称して温室2という)内に設置され、複数列(図では8列)併設状態で配置された栽培容器3を有している。
【0021】
この8列の栽培容器3のうち、温室2の幅方向の一端側となる第1列の栽培容器3Aは、その下端が地面15に埋設立設された支柱4の上端に容器支持部材6を介して固定的に配置されている。また、8列の栽培容器3のうち固定的に配置された栽培容器3Aを除く他の7列の栽培容器3は、下端が地面15に埋設立設された支持部材としての支柱5の上端に容器回動手段7を介して水平面内で移動可能に配置されている。この容器回動手段7による栽培容器3の移動で、固定側となる第1列の栽培容器3Aを除く第2列〜第8列の栽培容器3が水平面内で移動して、栽培位置S1と作業位置S2とに設定されるようになっている。
【0022】
つまり、例えば図2に示す第4列と第6列の栽培容器3の場合は、後述するハンドル8の手動操作により二点鎖線の栽培位置S1から実線の作業位置S2に設定されて、第3列と第5列の栽培位置S1にある栽培容器3との間隔寸法W2が、例えば第2列と第3列の栽培容器3のように、互いに栽培位置S1にある場合の間隔寸法W1に比較して所定寸法広くなるようになっている。そして、所定の栽培容器3が作業位置S2に設定された場合の間隔寸法W2は、この間隔寸法W2で形成される隣り合う栽培容器3間の通路が図1に示す作業用の台車9(棚)の通路として使用できる値に設定されている。なお、前記温室2においては、図1に示すように、8列の支柱4、5のうち、太陽光Lが入射し難い第1列側の支柱4を固定とし、太陽光Lが入射し易い第8列側の支柱4を移動可能に構成することで、各列への太陽光の照射量のバラツキを抑えるようになっている。
【0023】
また、各列の栽培容器3は、例えば長さが120cmで上端外周部に鍵状の鍔部3a(図4参照)が一体形成されたプランターを、その長手方向に複数個(例えば5個)連接して長さ600cmの栽培容器3としてユニット化されており、この各ユニットに対して前記支柱4もしくは支柱5がそれぞれ4本配設されている。また、ユニット化された栽培容器3が長手方向に複数個(例えば8個)連接されることにより、各栽培容器3が所定面積を有する温室2内に8列状態で併設配置されている。なお、この個々のプランターの長さやユニットの長さ、ユニットの連接個数、あるいは栽培容器3の列数等は一例であって、温室2の大きさに応じて最大収穫量が得られる適宜の数に設定される。
【0024】
前記容器回動手段7は、図3及び図4に示すように、ユニット化された各栽培容器3に対して配設された4本の支柱5の上端に、軸受11を介して水平状態でその一端が回動自在に軸支されたアーム部材10を有し、このアーム部材10の他端には軸受12を介し上下方向に指向して回動自在に支持されたガイド支柱13が設けられている。また、ガイド支柱13の下端にはキャスター14が取り付けられると共に、ガイド支柱13の上端には正面視コ字状で所定幅を有する前記容器支持部材6が固定されている。この容器支持部材6は、栽培容器3の幅方向に沿った側壁上端に栽培容器3のユニットの長さと同一長さを有するパイプ状の容器載置部6aが設けられており、この容器載置部6a上にユニット化された栽培容器3の前記鍔部3aが上方から着脱可能に載置されるようになっている。
【0025】
さらに、各アーム部材10は、その軸受12側の所定位置に設けられた一対のステー支持部材16、17を介して棒状の連結ステー18で連結されている。この連結ステー18は、図5に示すように、その外周面の各アーム部材10に対応する位置に突出状態で固定されたステー支持部材17が、アーム部材10に固定したステー支持部材16に回動自在に軸支されており、この連結ステー18により、互いに連結された4本のアーム部材10が一体となり同期して水平面内で略90度回動するようになっている。
【0026】
また、図1に示すように、前記各支柱5の埋設部近傍の地面15上には、円形の鉄板等からなる敷設部材としてのガイド板19が敷設されており、このガイド板19の外周上面に前記ガイド支柱13下端のキャスター14が当接して円周方向に沿って移動(転動)するようになっている。このガイド板19には、図4に示すように、栽培容器3を作業位置S1に位置決めするための例えばブロック状のストッパー20aが固定されている。なお、このストッパー20aとしては、ガイド板19上に設けたブロックに限らず、例えばアーム部材10に連結ステー18の回動動作を規制する規制部材を設けることで構成しても良い。
【0027】
そして、このように構成された容器回動手段7のアーム部材10の一端上面には、図5及び図6に示すように、アーム部材10を回動させるためのハンドル8が着脱可能に装着される。すなわち、アーム部材10の一端部の上面に上下方向に指向して例えば支柱5の上端の内部孔まで連通する嵌合孔21(図6参照)を設け、この嵌合孔21にハンドル8の嵌合突起8aが嵌合されるようになっている。
【0028】
この時、ハンドル8は、前記嵌合突起8aの他にアーム部材10の幅方向両側に係止される一対の係止突起8bを有し、この係止突起8bから側方の水平方向に向けて操作部8cが延設され、この操作部の8c先端には上方に突出した状態で握持部8dが一体形成されている。なお、ハンドル8が装着可能なアーム部材10は、ユニット化された栽培容器3に対応した4本のアーム部材10のうち、その長手方向の一端部のアーム部材10とされるが、例えば4本全てのアーム部材10に装着可能としてアーム部材10の共通化を図ったり所望位置での操作を可能として作業性の向上を図るようにしても良い。
【0029】
そして、ハンドル8を図5の二点鎖線で示す位置から、実線で示すように嵌合突起8aを嵌合孔21に嵌合させると共に、係止突起8bをアーム部材10に係止させることにより、ハンドル8がアーム部材10に装着され、この状態で握持部8dを手で握り、図6の矢印イ方向に回動操作することにより、アーム部材10が矢印ロの如く水平面内を回動するようになっている。この時、アーム部材10は、円形のガイド板19の作業位置S2と栽培位置S1との間で略90度回転可能とされており、この2つの位置への移動設定で、第1列〜第8列の栽培容器3の隣り合う栽培容器3間の間隔寸法が2つの寸法W1、2に設定されるようになっている。
【0030】
なお、以上の例では、アーム部材10をハンドル8を使用した手動操作で回動させるようにしたが、例えば図7に示すようにモータ23を使用して自動的に回動させるようにしても良い。すなわち、各アーム部材10を連結する連結ステー18の所定位置に固定部材24を固定し、この固定部材24に駆動用アーム25の一端を回動自在に軸支させると共に、駆動用アーム25の先端側に設けた長手方向のスライド溝25aにモータ23の回転軸に固定されたステー26を枢支させる。
【0031】
そして、図示しない操作スイッチをオン操作してモータ23を回転させると、その回転軸に固定されたステー26が矢印ハの如く回転して駆動用アーム25を例えば矢印ニ方向に引っ張って移動させる。この駆動用アーム25の移動により固定部材24を介して連結ステー18が矢印ホ方向に移動すると共に、アーム部材10が矢印ロ方向に回動して二点鎖線で示す位置(作業位置S2)に設定され、これによりアーム部材10の回動動作がモータ23により自動的に行われることになる。
【0032】
次に、このような栽培装置1の具体的な使用方法の一例について説明する。先ず、例えばイチゴが植えられた栽培容器3は、前述したようにユニット化された状態でその鍔部3aを各列の支柱4、5に対応して設けた容器支持部材6の容器載置部6a上に載置することで、温室2内の各支柱4、5に対応して列状に配置される。この列状に配置されたイチゴが植えられた栽培容器3は、各支柱5を栽培位置S1に設定した状態で温室2内で栽培され、この時、各栽培容器3の栽培位置S1への設定により、隣り合う栽培容器3間の間隔寸法W1を小さく設定できて、温室2内への栽培容器3の配置効率が高められる。
【0033】
そして、例えばイチゴの収穫や手入れ等の各種作業を行う場合は、作業を行う隣り合う栽培容器3の2列のうちその一方の列の例えば長手方向端部のアーム部材10に、ハンドル8を前述したように装着し、このハンドル8を手動操作して4本のアーム部材10を作業位置S2方向に回動させる。この時、4本のアーム部材10が連結ステー18で連結されていることから、4本全てが同時に同期した状態で、図8(a)に示す栽培位置S1から矢印ロ方向に回動して、同図(b)に示す位置を経て、同図(c)に示す作業位置S2まで回動する。
【0034】
また、各アーム部材10の回動時に、各アーム部材10の端部に設けたガイド支柱13も一体となって移動し、このガイド支柱13下端のキャスター14がガイド板19の外周縁部上を転動しながら移動して、キャスター14がガイド板19上に設けたストッパー20aに当接した時点でその移動が停止し、アーム部材10が作業位置S2に設定される。このアーム部材10の作業位置S2への設定により、アーム部材10上に容器支持部材6を介して支持されている栽培容器3も作業位置S2に設定され、隣り合う栽培容器3間の間隔寸法W2が栽培位置S1時の間隔寸法W1より広くなって所定幅の作業通路が形成されることになり、この作業通路を利用して作業者が台車9を移動させながらしゃがむことなく各種作業を簡単に行うことができる。
【0035】
そして、作業が完了した栽培容器3は、ハンドル8を前述した方向と逆方向に操作して各アーム部材10を栽培位置S1まで回動させ、キャスター14をガイド板19上の栽培位置に停止させて栽培容器3を栽培位置S1に戻す。この作業を、隣り合う栽培容器3の一方で行うことで、温室2内の全ての栽培容器3に対する各種作業が効率的に行えることになる。
【0036】
つまり、この栽培装置1の場合、ユニット化された列状の栽培容器3のうち、隣り合う栽培容器3の少なくとも一方を栽培位置S1から作業位置S2に位置替えすることで、隣り合う栽培容器3間に広い作業通路を確保して各種作業が簡単かつ効率的に行え、また栽培位置S1においては、隣り合う栽培容器3間の間隔寸法W1を狭くできて、温室2内における栽培容器3の配置列数を増加させてイチゴの収穫量を増大できることになる。
【0037】
なお、以上の例においては、各列の支柱4、5の下端を地中に埋設することで、支柱4、5を地面15上に立設したが、例えば図9に示すように、キャスター14のガイド部材として機能する前記ガイド板19の中心位置上面に支柱嵌合部材27を溶接する等して固定し、この支柱嵌合部材27の嵌合孔に支柱4、5の下端を着脱可能に嵌合させて地面15上に立設するようにしたり、ガイド板19に支柱4、5の下端を直接溶接固定するようにしても良い。
【0038】
このように、上記実施形態の栽培装置1にあっては、温室2内の地面15上に複数列設置された4本の一組となった支柱5に各アーム部材10の一端が容器回動手段7により回動自在に支持され、各アーム部材10が水平面内で同期して回動することにより、ユニット化されて長さの長い栽培容器3が栽培位置S1と作業位置S2とに設定されるため、栽培容器3の水平面内での移動を4本のアーム部材10で安定に支持しつつ確実に行うことができると共に、所定列の栽培容器3に対して作業を行う場合に、当該列かもしくは隣り合う列の栽培容器3を作業位置S2に設定することで、隣り合う栽培容器3間の間隔寸法W2を大きくした状態で各種作業を行うことができる。
【0039】
また、栽培容器3を栽培位置S1に設定することで、隣り合う栽培容器3間の間隔寸法W1を作業時の間隔寸法W2より小さくできて、温室2内の地面15に対する単位面積あたりの支柱4,5、すなわち栽培容器3の配列数を増やすことができて、単位面積あたりのイチゴの収穫量を増大させることが可能となる。特に、支柱4、5が温室2内の地面15に複数列配置され、幅方向の一端側の支柱4が固定的に配置され、残りの7列の支柱5が水平面内で移動可能に配置されているため、例えば複数列の一端側の支柱4を温室2の境界部分等の端部に位置させることができて、単位面積あたりにおける支柱4、5の設置数をより増加させることができ、イチゴの収穫量を一層増大させることができる。
【0040】
また、アーム部材10の端部に設けたガイド支柱13にキャスター14が設けられ、このキャスター14が複数の支柱5の近傍に敷設したガイド板19上を転動しつつ移動するため、アーム部材10や栽培容器3の水平面内での移動をスムーズに行うことができると共に、4本のアーム部材10が連結ステー18により連結されているため、例えば容器支持部材6とアーム部材10間の高さ寸法が長い場合に生じ易い、4本のアーム部材10のぎくしゃくした動き等が防止されて、ユニット化された栽培容器3に対応した4本のアーム部材10が一体となって水平面内でスムーズに回動し、アーム部材10の水平面内での回動動作を確実かつスムーズに行うことができる。また、各支柱5の下端に敷設されるガイド板19に、複数のアーム部材10を作業位置S2に停止させるストッパ20aが設けられているため、栽培容器3の栽培位置S1から作業位置S2への移動等を一層簡単・スムーズでかつ安全に行うことができる。
【0041】
さらに、4本のアーム部材10のうち長手方向端部のアーム部材10にハンドル8を係止させて回動操作することにより、4本のアーム部材10が一体となって回動するため、ユニット化され所定長さを有する栽培容器3をハンドル8の操作で所定位置に切替操作できて、温室2内の全列の栽培容器3の位置の切り替えを少ない回数で短時間に効率的に行うことができる。また、各アーム部材10の回動をモータ23の回転で自動的に行うように構成すれば、栽培容器3の位置替えのための操作を極めて簡単に行うことができる。これらのことから、温室2内における各種作業の能率向上を図り、結果としてイチゴの生産コストの低減化を図ることが可能となる。
【0042】
またさらに、列状に配置される栽培容器3が複数のユニットを長手方向に所定数配置すると共に、これらを列方向に複数連接配置して形成されているため、4本のアーム部材10で列状に配置された所定数の栽培容器3を一括して同時に移動させることができて、各栽培容器3の栽培位置S1から作業位置S2への切替移動をより一層簡単かつスムーズに行うことができると共に、列方向に複数配置することで、例えば長さの長い温室2であっても、容易に適用してその収穫量を一層増大させることができる。
【0043】
図10と図13は、本発明に係わる栽培装置の第2の実施形態と第3の実施形態を示しており、以下、上記第1の実施形態と同一部位には同一符号を付して説明する。これらの実施形態の特徴は、前記支柱4、5に代えて温室2の枠を形成する柱のうち、天井部分に配置される桁柱29から吊り部材30を介してアーム部材10や栽培容器3を地面15上の所定高さの空中に配置すると共に、この栽培容器3を上記第1の実施形態と同様に水平面内において栽培位置S1と作業位置S2との間で移動可能に構成した点にある。
【0044】
すなわち、先ず図10〜図12に示す第2の実施形態の栽培装置1は、桁柱29の所定位置に一対の吊り部材30を垂下して設け、この吊り部材30の下端に円盤状のガイド板31を固定すると共に、このガイド板31の下面中心位置にL字形状のアーム部材32の一端を軸受33により回動自在に軸支させる。また、アーム部材32の他端には、軸受34を介して上下方向に指向したガイド支柱13を回動自在に軸支させ、このガイド支柱13の上端に前記ガイド板31の上面外周面を転動するキャスター14を配設し、ガイド支柱13の下端に軸受35を介して容器支持部材6を回動自在に軸支させる。この時、容器支持部材6は、正面視略コ字状に形成されて下面側に開口して内側に屈曲された端部には、棒状の容器支持部材6aが固定されており、この容器支持部材6a上に栽培容器3の容器載置部3aが載置されることで、栽培容器3が容器支持部材6の内側に位置した状態で容器支持部材6に着脱可能に支持されている。
【0045】
この実施形態においても、アーム部材32をハンドル操作やモータの回転で回動させることにより、キャスター14がガイド板31の上面外周部を転動しつつガイド支柱13が所定方向に回動して、栽培容器3が栽培位置S1と作業位置S2とに設定されることになり、上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。また、この実施形態の場合は、温室2内の地面15に支柱4、5を埋設したりガイド板19を敷設する必要がなく、地面15をそのまま状態とすることができて、例えばイチゴの収穫後の地面15の清掃等の管理が機械で簡単に行える等の作用効果を奏することができる。また、この実施形態の場合は、一対の吊り部材30を桁柱29に対して同期させた状態で上下動可能に構成すれば、栽培容器3を温室2の天井に近い側に配置して栽培することができたり、栽培位置S1にある栽培容器3の下方の空間を一層有効できることになる。
【0046】
また、図13に示す第3の実施形態の栽培装置1は、桁柱29の所定位置に吊り部材30を固定して(もしくは移動可能に)設け、この吊り部材30の下端に軸受33を介してアーム部材36の一端を回動自在に軸支させると共に、アーム部材36の他端に軸受37を介して下方に垂下した状態で容器支持柱38を回動自在に軸支させ、この容器支持柱38の下端に容器支持部材6を軸受35を介して回動可能に軸支させる。
【0047】
この実施形態においても、アーム部材36をハンドル操作やモータの回転で回動させることにより容器支持柱38が所定方向に回動して、栽培容器3が栽培位置S1と作業位置S2とに設定されることになり、上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。また、この実施形態の場合は、アーム部材36の端部に容器支持柱38が軸受37を介して支持されることから、上記各実施形態におけるキャスター14やガイド板13、31等が不要となり、容器回動手段7の構成を簡略化できる等の作用効果を奏することができる。
【0048】
ところで、上記第1の実施形態においては、連結ステー18をリンク機構でアーム部材10に連結することにより、アーム部材10を略90度回動可能に構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば図14及び図15に示すように構成することもできる。すなわち、連結ステー18の各ガイド支柱13と対応する位置に軸孔を有するステー支持部22をそれぞれ設け、この各ステー支持部22の軸孔をガイド支柱13の外周面に回動可能に支持させて、各アーム部材10を例えば360度回動可能な構成とする。アーム部材10が360度回動可能なことにより、例えば第2列から第7列のアーム部材10を、図15(a)の栽培位置S1から矢印ロ方向に略90度回動させて、図15(c)に示す作業位置S2に設定することができ、上記実施形態と同様に、隣り合う栽培容器3間の間隔寸法をW1とW2に設定することができる。
【0049】
また、この例の場合は、アーム部材10が360度回動可能であることから、隣り合う栽培容器3を互いに離間する方向、すなわち、一方の栽培容器3に対応したアーム部材10を、図15(a)の栽培位置S1から矢印ロ方向に90度回動させて一方の作業位置S2に設定し、他方の栽培容器3に対応したアーム部材10を、図15(a)の栽培位置S1から反矢印ロ方向に90度回動させて他方の作業位置S2に設定することができる。これにより、隣り合う栽培容器3の両方が異なる作業位置S2にそれぞれ設定されて、両栽培容器3間の間隔寸法Wを前記間隔寸法W2より広い最大間隔寸法に設定でき、例えば台車9の移動が一層容易に行えたり、大型の台車9の使用や地面の耕作等の各種作業を一層簡単に行うこと等が可能となる。
【0050】
なお、上記各実施形態においては、ユニット化された各栽培容器3に対して4本のアーム部材10や支柱5等を配設したが、例えば2本のアーム部材10や支柱5等で栽培容器3を長手方向の両端部分で支持するようにする等、栽培容器3の重量等に応じて水平面内で確実に支持すると共にスムーズに回動させる複数本のアーム部材10や支柱5等を使用することができる。また、上記各実施形態における栽培容器3自体の形状や容器支持部材6の構造、温室2の大きさ、栽培容器3(支柱4、5)の列数等も一例であって、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ビニールハウスや温室内のように太陽光を利用して地面上に配置した栽培容器で植物を栽培する栽培装置に限らず、例えば各色LED等の人工光や人工土等を使用して野菜や植物等を人工的に栽培する栽培装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係わる栽培装置の第1の実施形態を示す正面図
【図2】同図1のA−A線矢視図
【図3】同要部の側面図
【図4】同その正面図
【図5】同容器支持部材及び容器回動手段を示す斜視図
【図6】同その平面図
【図7】同アーム部材の回動動作の変形例を示す平面図
【図8】同アーム部材の回動動作の説明図
【図9】同支柱の設置状態の変形例を示す断面図
【図10】本発明に係わる栽培装置の第2の実施形態を示す要部正面図
【図11】同その側面図
【図12】同その平面図
【図13】本発明に係わる栽培装置の第3の実施形態を示す要部正面図
【図14】本発明に係わる栽培装置の連結ステーの変形例を示す図3と同様の側面図
【図15】同そのアーム部材の回動動作の説明図
【符号の説明】
【0053】
1・・・栽培装置、2・・・温室 3、3A・・・栽培容器、3a・・・鍔部、4、5・・・支柱、6・・・容器支持部材、6a・・・容器載置部、7・・・容器回動手段、8・・・ハンドル、9・・・台車、10・・・アーム部材、13・・・ガイド支柱、14・・・キャスター、15・・・地面、18・・・連結ステー、19・・・ガイド板、20a・・・ストッパー、22・・・ステー支持部、23・・・モータ、24・・・固定部材、25・・・駆動用アーム、27・・・支柱嵌合部材、29・・・桁柱、30・・・吊り部材、31・・・ガイド板、32・・・アーム部材、36・・・アーム部材、38・・・容器支持柱、S1・・・栽培位置、S2・・・作業位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に列状に設置された複数の支持部材と、該複数の支持部材のそれぞれにその一端が回動自在に軸支されたアーム部材と、該アーム部材の他端に支持された栽培容器と、を複数列備え、
前記アーム部材の水平面内での同期した回動により前記栽培容器を水平面内で移動させて、複数列の栽培容器が略一定の間隔を有する栽培位置と、隣接する栽培容器間の間隔寸法が前記略一定の間隔より大きく設定された作業位置と、に切替設定可能に構成されていることを特徴とする栽培装置。
【請求項2】
前記支持部材が地面に所定の間隔を有して列状に立設された複数の支柱であり、前記アーム部材の他端に栽培容器を支持するための容器支持部材を配置すると共に、複数の支柱及び又はその近傍に前記アーム部材に設けたガイド部材が移動するための敷設部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
地面上方の所定高さ位置に列状に設置された複数の吊り部材と、該複数の吊り部材のそれぞれにその一端が回動自在に軸支されたアーム部材と、該アーム部材の他端に支持された栽培容器と、を複数列備え、
前記アーム部材の水平面内での同期した回動により前記栽培容器を水平面内で移動させて、複数列の栽培容器が略一定の間隔を有する栽培位置と、隣接する栽培容器間の間隔寸法が前記略一定の間隔より大きく設定された作業位置と、に切替設定可能に構成されていることを特徴とする栽培装置。
【請求項4】
前記アーム部材は、その他端上部に前記吊り部材の下端に設けたガイド板にガイドされつつ移動するガイド部材が設けられると共に、その他端下部に栽培容器を支持する容器支持部材が配設されていることを特徴とする請求項3に記載の栽培装置。
【請求項5】
前記栽培容器が温室内に複数列配置され、該列と直行する幅方向の一端側の栽培容器を固定的に配置すると共に、残りの列のうち少なくとも一つの列の栽培容器を水平面内で移動可能に配置したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の栽培装置。
【請求項6】
前記アーム部材は、それぞれ連結部材により列方向に連結されて一体となって水平面内で回動することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の栽培装置。
【請求項7】
前記アーム部材を水平面内の所定位置で停止させるストッパ機構が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の栽培装置。
【請求項8】
前記栽培容器は、複数の容器を長手方向に連接してユニットとし、該ユニットが長手方向に所定数連接配置して形成されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−101720(P2006−101720A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289601(P2004−289601)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000137328)株式会社マキ製作所 (48)
【Fターム(参考)】