説明

框組扉の製造方法及び框組扉

【課題】簡易かつ短時間の作業で、框材の反りを抑制することができる框組扉の製造方法及び框組扉を提供する。
【解決手段】縦框11,11及び横框12,12夫々の嵌込溝に接着剤を塗布し、鏡板10の長辺2本及び短辺2本夫々を前記嵌込溝に嵌め込んでなる嵌込体1を、高周波加熱装置の載置台40上に載置する。次に、嵌込体1を上側電極421,422及び下側電極で上下方向に挟み、外側定規51,52で水平方向に挟み、そして、縦框11,11に関して、接着部分の中央部を約30秒間、高周波加熱して接着剤を硬化させる。このため、嵌込体1の中央部をバンドで拘束する必要がない。また、接着剤の水分が縦框11,11に浸透して膨潤させることがないため、縦框11,11の反りが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡板に框材を組み付けてなる框組扉の製造方法及び框組扉に関する。
【背景技術】
【0002】
家具、出入り口等に取り付けられる框組扉は、従来、矩形平板状の鏡板に、鏡板の4辺に対応する4本の框材を、ダボ及び水性の常温硬化型の接着剤(酢酸ビニルエマルジョン系接着剤)を用いて額縁状に組み付けてなる。ダボは、額縁状に組み付けられた4本の框材の四隅を連結して、接着剤と共に、框材及び鏡板の組付強度を向上させている。
【0003】
各框材には鏡板を嵌め込む嵌込溝が形成してあり、この嵌込溝に常温硬化型の接着剤が塗布され、接着剤が塗布された嵌込溝に鏡板の一辺が嵌め込まれる。このような嵌込溝の寸法(長さ、幅、及び深さ)は、組み付けの都合上、鏡板の一辺の寸法(一辺の長さ、板厚、及び嵌込溝への挿入長さ)より大きくなるよう、適長(例えば0.5mm)の余裕を有するよう形成される。
【0004】
鏡板と框材とを接着する接着剤を常温で硬化(自然乾燥)させた場合、接着剤が硬化するまでにおよそ一昼夜を要し、このため、框材に接着剤の水分が浸透して框材が膨潤して、縦框の中央部が外側へ反り、家具、出入り口等に取り付けることができなくなるという問題がある。
この問題を解決するために、作業者は、4辺を框材に嵌め込まれた鏡板を複数枚(数枚〜十数枚)、平面上に積み重ね、前記鏡板の縦方向の中央部に適宜の幅(例えば5cm〜15cm)のバンドを巻回し、接着剤の硬化及び框組扉の養生のために、常温でおよそ一昼夜放置する。
しかしながら、バンドが巻回されていない框組扉の両端部、即ち縦框の両端部が外側へ反り、鼓形となって、框組扉の美観が損なわれるという問題がある。
【0005】
以上のような縦框の反りは、特に、例えばウォーク・イン・クロゼットの扉として用いられるような縦横比が大きい框組扉において著しい問題となる。
また、バンドの巻回は作業者の手作業で行なわれるため巻回作業は煩雑であり、長時間を要するという問題がある。仮に、框組扉の縦方向中央部及び両端部にバンドを巻回した場合、縦框の反りは低減されるが、バンドの巻回作業が更に煩雑化及び長時間化する。
また、縦框の反りは、嵌込溝の寸法が鏡板の一辺の寸法より大きいことによって助長されると考えられるが、嵌込溝の寸法と鏡板の一辺の寸法とを厳密に等しくした場合、例えば温度、湿度等に起因する縦框及び/又は鏡板の伸縮によって、嵌込溝に鏡板が嵌め込めなくなることがある。
【0006】
縦框の反りを抑制するために、縦框の嵌込溝内に断面コ字状の棒状金具を挿入する方法(特許文献1参照)、縦框の外面に凹凸模様を形成する方法(特許文献2参照)、木板を折り合わせてなる縦框を用いる方法(特許文献3参照)、収縮膨潤に伴う寸法変化が小さい木材を用いて縦框を形成する方法、(特許文献4参照)、反り易い天然木を用いないで縦框を形成する方法(特許文献5参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平5−1491号公報
【特許文献2】特開2001−207742号公報
【特許文献3】特開2003−161078号公報
【特許文献4】実開平5−17075号公報
【特許文献5】実開平7−14081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る框組扉は、縦框の嵌込溝内に断面コ字状の棒状金具を挿入するため、部品点数及び作業工数が増加して框組扉のコストが増大するという問題があった。
また、特許文献2に係る框組扉は、縦框の外面に凹凸模様を形成するため、作業工数が増加し、また、縦框の外形が限定されるという問題があった。
特許文献3に係る框組扉は、木板を折り合わせて縦框を形成するため、例えば棒材を削り出して形成した縦框を用いることができず、縦框の形成方法が限定されるという問題があった。
更に、特許文献4,5に係る框組扉は、縦框の材料が限定されるという問題があった。
【0008】
しかも、特許文献1〜5においては、接着剤の水分が框材に浸透して縦框が膨潤するために生じる縦框の反りの抑制に関しては言及されていない。
【0009】
本発明は、高周波により発熱硬化する接着剤を高周波加熱して硬化させる技術に着目してなされたものであり、その主たる目的は、框材と鏡板とを接着させる際、接着部分の中央部を高周波加熱することにより、簡易かつ短時間の作業で、框材の反りを抑制することができる框組扉の製造方法及び框組扉を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、框材と鏡板とを接着させる際、適宜の治具を用いて高周波加熱することにより、框材及び鏡板夫々の框材の反りを更に抑制することができる框組扉の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、框材と鏡板の長辺とを接着させる際、接着部分の中央部を高周波加熱することにより、鏡板の縦横比が大きい場合でも、框材の反りを抑制することができる框組扉の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る框組扉の製造方法は、矩形平板状の鏡板の対向2辺に、前記鏡板を嵌め込む嵌込溝が形成された框材を組み付ける框組扉の製造方法において、前記対向2辺及び/又は前記嵌込溝に、高周波により発熱硬化する接着剤を塗布し、前記対向2辺を前記嵌込溝に嵌め込み、接着部分の前記対向2辺の中央部を高周波加熱することを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る框組扉の製造方法は、前記鏡板が嵌め込まれた前記框材の外側に、該框材に沿う棒状の治具を配し、前記鏡板の片面又は両面に沿って、平板状の治具を配することを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る框組扉の製造方法は、前記対向2辺夫々は前記鏡板の長辺であることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る框組扉は、矩形平板状の鏡板の対向2辺に、前記鏡板を嵌め込む嵌込溝が形成された框材を組み付けてなる框組扉において、第1発明乃至第3発明の何れかひとつの框組扉の製造方法で製造されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の框組扉の製造方法及び第4発明の框組扉による場合、框材と鏡板とを接着させる際、部分的な高周波加熱を行なう。
まず、矩形平板状の鏡板と、鏡板の対向2辺に対応する2本の框材を準備する。この框材には、鏡板を嵌め込む嵌込溝が形成されている。
次に、鏡板の対向2辺に接着剤を塗布するか、框材に形成された嵌込溝に接着剤を塗布するか、又は、対向2辺及び嵌込溝の両方に接着剤を塗布する。ここで用いる接着剤は、高周波電界の印加による誘電発熱によって硬化する接着剤であり、特に、常温でも硬化するが、加熱によって常温で硬化するよりも迅速に硬化する接着剤が好ましい。
そして、2本の框材の嵌込溝夫々に、鏡板の対向2辺を嵌め込む。
【0017】
最後に、接着部分に関し、鏡板の対向2辺の中央部を高周波加熱する。
この場合、鏡板の対向2辺の中央部と框材との間の前記接着剤が先に硬化する。このため、框組扉の縦方向中央部をバンドで巻回した場合と同様に、框組扉の中央部が固定され、框材の中央部が外側へ反ることを抑制することができる。
また、高周波加熱によって接着剤の水分が短時間に(更に詳細には、框材への水分浸透による框材の膨潤が起こる前に)蒸発して接着硬化をもたらすため、框材の両端部が外側へ反ることを抑制することができる。
以上のことから、框組扉の美観を向上させることができ、框組扉を家具、出入り口等に確実に取り付けることができる。
【0018】
ここで、接着部分の中央部を高周波加熱する理由は、接着部分の全部を高周波加熱する場合よりも、高周波加熱装置を小型化させることができることによる。仮に、接着部分の全部を高周波加熱する場合、高周波加熱装置が備える高周波加熱用の電極を、框組扉のサイズに応じて大型化させる必要がある。
ところで、例えば流し台の扉として用いられるような縦横比が小さい(縦框の長さと横框の長さとの差が小さい)框組扉は、常温硬化型の接着剤を常温硬化させる場合でも縦框の反りが発生し難いことが経験的に知られている。
このため、框材の反りの発生を抑制するために十分な範囲、即ち接着部分の中央部を高周波加熱することによって、小型の電極(例えば、縦横比が大きい框組扉の内、製造すべき最大サイズの框組扉の中央部の長さに応じたサイズの電極)を使用して、必要十分な範囲の接着剤の硬化を加熱促進させることができる。
【0019】
鏡板の対向2辺(例えば長辺)の両端部、及び対向2辺に連なる対向2辺(例えば短辺)に対しては、高周波加熱を行なう必要はなく、例えば長辺の中央部を高周波加熱した後に、適宜の時間放置して常温硬化させる。この場合、框組扉の養生のためにバンドを用いる必要はなく、また、框組扉を積み重ねる必要もない。
【0020】
更に、高周波により発熱硬化する接着剤の高周波加熱による硬化は、例えば常温硬化型の接着剤の常温における硬化より短時間であり、框材が嵌め込まれた鏡板を平面の上に複数枚積み重ねてバンドを巻回する作業を行なう場合よりも作業時間が短縮される。
更にまた、高周波により発熱硬化する接着剤の高周波加熱は、框材が嵌め込まれた鏡板を高周波加熱装置にセットすることによって容易に行なうことができるため、作業手順が簡易である。
つまり、框材の反りが発生し難い框組扉に関しても、作業手順の簡易化及び作業時間の短縮化という効果を奏することができる。
【0021】
第2発明の框組扉の製造方法による場合、框材と鏡板とを接着させる際、適宜の治具を用いて高周波加熱を行なう。
例えば、框材に嵌め込まれた鏡板を高周波加熱装置にセットする場合、鏡板が嵌め込まれた框材の外側、つまり框材の嵌込溝が形成されていない側に、框材に沿う棒状の治具を配することによって、框材を鏡板と治具との間に拘束する。このため、高周波加熱中に框材の反りが発生することを確実に抑制することができる。
更に、鏡板の片面又は両面に沿って、平板状の治具を配することによって、鏡板を支持するか、又は治具の間に拘束する。このため、高周波加熱中に鏡板の反り、浮き等が発生することを確実に抑制することができる。
【0022】
第3発明の框組扉の製造方法による場合、鏡板の2本の長辺と2本の框材との間に接着剤を塗布し、2本の框材の嵌込溝夫々に、鏡板の2本の長辺を嵌め込む。最後に、接着部分に関し、鏡板の2本の長辺の中央部を高周波加熱する。
このため、特に、縦横比が大きいため反りが発生しやすい框材(例えば縦框)の反りを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1は、本発明に係る框組扉7の構成を示す正面図であり、框組扉7の一隅を示している。また、図2は、本発明に係る框組扉の製造方法を説明するための横断面図であり、框組扉7を構成する鏡板10及び縦框11夫々を示す。
鏡板10、各2本の縦框11,11及び横框12,12、並びに4本のダボ13,13,…は、夫々MDF(中比重繊維板)を用いて形成されている。
鏡板10は矩形平板状であり、各ダボ13は円柱状である。
【0025】
以下では縦框11を例示して説明する。
各縦框11は鏡板10の長辺10aに組み付けられる横断面矩形状の框材であり、一側に、鏡板10を嵌め込む嵌込溝11aが形成してある。ここで、鏡板10の板厚は9mm、長辺10aの長さは1605mm、縦框11への挿入長さは6mmであるため、嵌込溝11aの幅、長さ、及び深さは、長辺10aの板厚、長さ及び挿入長さに対し0.5mmの余裕を有するよう形成してある。
【0026】
鏡板10と縦框11との組み付け前に、作業者は、縦框11にラッピングシート14を巻き付ける。ラッピングシート14は紙、合成樹脂(例えばポリオレフィン)等を用いてなり、縦框11の表面を保護し、美観を向上させる。
また、作業者は、嵌込溝11aの内部に、スプレッダを用いて所定量の接着剤3を塗布する。この接着剤3は、水性の酢酸ビニルエマルジョン系接着剤であり、常温でも溶剤(水分)が飛散して硬化するが、高周波電界の印加による誘電加熱によって溶剤の飛散が促進され、このため硬化が促進される。
接着剤3の塗布後、作業者は、嵌込溝11aに鏡板10の長辺10aを嵌め込む。
【0027】
同様の手順で、作業者は、鏡板10の4辺を縦框11の嵌込溝11a及び横框12,12夫々の嵌込溝に嵌め込む。このとき、作業者は、縦框11及び横框12夫々の端部にダボ13の両端部を差し込んで縦框11及び横框12の端部同士を接合する。つまり、作業者は、鏡板10の4辺に縦框11,11及び横框12,12を額縁状に組み付け、ダボ13,13,…を用いて縦框11,11及び横框12,12の四隅を連結する。ダボ13,13,…は、縦框11及び横框12のズレを抑制して、接着剤3と共に、縦框11,11及び横框12,12と鏡板10の組付強度を向上させる。
【0028】
框組扉7は縦1705mm×横397mmの寸法であり、縦横比が大きい。しかも、縦框11,11は膨潤し易いMDFを用いてなる。このため、縦框11,11には接着剤3の硬化時に反りが発生しやすい。
ダボ13,13,…及び接着剤3を用いて、鏡板10の4辺に縦框11,11及び横框12,12全てが嵌め込まれた嵌込体1(図4及び図5参照)を形成した後、縦框11,11の反りを防止すべく、下記の手順で框組扉7を製造する。
【0029】
図3は、框組扉の製造方法で用いる高周波加熱装置4の構成を示す側面図である。高周波加熱装置4は、様々なサイズの嵌込体(例えば嵌込体1)を載置するための載置台40と、高周波発振器41とを備え、載置台40は、正面に、作業者が高周波加熱装置4を操作するための操作部48が配され、載置台40の背面に連続的に、高周波発振器41が配される。
図4及び図5は、框組扉の製造方法を説明するための平面図及び側断面図であり、載置台40の載置面4aに載置された嵌込体1を示す。
【0030】
載置台40には、載置台40の左右方向(前後方向)に嵌込体1の縦方向(横方向)が一致するよう嵌込体1が載置される。以下では、左右方向(上下方向)とは載置台40の左右方向(上下方向)であり、横方向(縦方向)とは嵌込体1の横方向(縦方向)である。
【0031】
載置台40の載置面4aは略水平面であり、図4に示すように、載置台40の左右両側に、載置面4aの高さと同じ高さの上面を有する載置補助板56,56が取り付けてある。載置補助板56、載置台40及び載置補助板56の前後方向の長さ(左右方向の長さの和)は嵌込体1の横幅(縦長さ)より長い。つまり、嵌込体1は、嵌込体1のサイズより大きいサイズの略水平面上に載置される。このため、嵌込体1の一部分に不要な外力が加わることが抑制され、嵌込体1の変形を抑制することができ、完成した框組扉7の歪みを抑制することができる。
【0032】
載置台40の載置面4aには、左右方向に長い棒状の外側定規51,52と左右方向に長い平板状の内側定規54,55とが配される。外側定規51,52(内側定規54,55)は、載置台40に載置された嵌込体1の縦框11,11の前後方向外側(内側)に配される治具である。
外側定規51,52は合成樹脂製であり、載置面4aの左右方向長さと略同じ長さを有する。外側定規52は、載置面4aの最奥部近傍にネジ留め固定してある。外側定規51は、載置面4aの手前側にネジ留め固定してある。外側定規51の奥側端面と外側定規52の手前側端面との離隔距離は嵌込体1の横幅に略等しい。
【0033】
内側定規54,55は合成樹脂製であり、内側定規54は、外側定規52から縦框11の横幅分だけ離隔して載置面4aにネジ留め固定してある。
内側定規55は、外側定規51から縦框11の横幅分だけ離隔して、着脱可能に載置面4aに固定される。更に詳細には、内側定規55は裏面に、左右方向に長い突出部55aを有し、突出部55aを、載置面4aに形成してある左右方向の溝10bに嵌め込むことによって載置面4aに固定される。突出部55aは内側定規55の裏面に一体形勢されていてもよく、別体の棒状部材を内側定規55の裏面に固定してもよい。
内側定規54,55夫々の板厚は、鏡板10の一面からの縦框11の突出高さ(2mm)に略等しい。
【0034】
作業者は、載置面4aに内側定規55をセットし、次いで、嵌込体1の横方向一側を外側定規52の手前側端面に手前側から突き当て、そして、嵌込体1の横方向他側を外側定規51の奥側端面に沿わせて、外側定規51,52間の載置面4aに嵌込体1を載置する。
このため、載置台40に載置された嵌込体1は、嵌込体1の前後方向の位置ズレ、縦框11,11の反り等が外側定規51,52によって抑制される。また、内側定規54,55が、載置面4aと鏡板10との間の空隙を充填するため、鏡板10の反り、浮き等が抑制される。
【0035】
載置台40の載置面4a上方及び載置台40内部には、高周波加熱のための電極として、上側電極421,422及び不図示の下側電極が配されている。この下側電極は載置面4aの下方に配されているため、作業を阻害することはない。
上側電極421,422は、左右方向長さ300mm×前後方向長さ50mmを有する互いに略同サイズの矩形板状であり、互いに略同じ高さに略平行かつ水平に配してある。
上側電極421,422は、上側電極421,422が共に上下方向(図3中白抜矢符方向)に移動及び停止可能であり、上側電極421が前後方向(図3中矢符方向)に移動及び停止可能であるよう、電極支持機構43に支持されている。
【0036】
電極支持機構43は、載置台40の載置面4aの最奥部(外側定規52の更に奥側)に立設された上下方向の支持棒431と、夫々前後方向に配された棒状の上下移動支持部432及び前後移動支持部433とで構成されている。上下移動支持部432は、一端が支持棒431に連結されて支持棒431に沿い上下移動及び停止可能に構成してあり、前後移動支持部433は、上下移動支持部432の下部に吊下されている。上側電極422は前後移動支持部433の奥側端部に吊下固定してあり、上側電極421は前後移動支持部433の手前側端部に前後移動及び停止可能に吊下してある。
【0037】
載置台40に嵌込体1を載置した後、作業者は、操作部48を操作して上側電極421,422を移動させる。この場合、図4及び図5に示すように、上側電極421,422の下面が鏡板10に、上側電極421の手前側端部が手前側の縦框11に、上側電極422の奥側端部が奥側の縦框11に、夫々接触するよう上側電極421,422が移動する。
【0038】
この状態で、作業者は操作部48を操作して高周波加熱装置4に高周波発振器41を駆動させて、約30秒間、発振周波数約27.12MHzで高周波加熱を実行させる。つまり、鏡板10と縦框11,11との接着部分の縦方向中央部を高周波加熱する。
このとき、高周波による誘電加熱によって鏡板10と縦框11,11との間の接着剤3自身が内部発熱し、接着剤3の水分が蒸発して硬化する。
【0039】
高周波加熱の終了後、作業者は、約30秒間、嵌込体1を放置して養生させ、そして、操作部48を操作して上側電極421,422を上側へ移動させ、載置台40から嵌込体1を取り外す。
この後、作業者は嵌込体1を常温下で一昼夜放置する。このとき、鏡板10と横框12,12との接着部分、及び、鏡板10と縦框11,11との接着部分の縦方向両端部が完全に硬化して、框組扉7が完成する。
【0040】
接着剤3の水分は高周波加熱によって短時間に蒸発するため、縦框11,11に接着剤3の水分が浸透し縦框11,11が膨潤することが抑制される。また、嵌込体1の接着部の縦方向中央部が高周波加熱によって先に硬化するため、常温下での一昼夜放置の際、嵌込体1の縦方向中央部にバンドを巻回した場合と同様の効果が得られる。以上のことから、縦框11,11の反りが抑制される。
完成した框組扉7は、例えば蝶番を用いて家具、出入り口等に取り付けられる。框組扉7の縦框11,11は反りの発生が抑制されているため、美観が向上されており、また、家具、出入り口等に確実に取り付けることができる。
【0041】
以上のような框組扉の製造方法は、特にクロゼットのような長物の框組扉の框材反り抑制を確実に行ない、製造した框組扉の品質の向上及び安定化に寄与することができる。
ここで、嵌込体1の接着部の縦方向中央部を高周波加熱して短時間で硬化させ、縦方向全体を高温加熱しないため,必要最小限の左右方向長さを有する上側電極421,422を用いることができる。なお、上側電極421,422夫々の左右方向長さは20〜500mmの範囲が好適であるが、特に300mmが最適である。
【0042】
高周波加熱装置4においては、安全のため、載置台40に対する嵌込体1の載置、電極支持機構43による上側電極421,422の移動、及び作業者の作業を阻害しない範囲で、載置面4aを覆うアルミカバー45を備える。このアルミカバー45は、高周波発振器41の上部に固定された上面と、この上面から夫々垂れ下がり、高周波発振器41の左右側面に固定された左右側面とを有する。アルミカバー45は、アルミカバー45内(特に載置面4a)に異物が侵入することを抑制する。
【0043】
更に、高周波加熱装置4は、アルミカバー45上面最前端に配された発光部441と、載置面4aの最前端に配された受光部442とを有するフォトセンサ44を備える。高周波加熱装置4は、発光部441が発光した光を受光部442が受光している場合に高周波加熱が実行可能となるよう構成してある。
発光部441が発光した光を受光部442が受光していない場合、例えばアルミカバー45内に作業者の手が存在するか、又は載置台40に嵌込体1を載置している最中であるため、高周波加熱は実行されず、高周波加熱の実行中は高周波加熱が緊急停止される。
【0044】
さて、縦1705mm×横397mmの寸法を有する框組扉7の他、その縦横比は框組扉7の縦横比より小さいが、横幅が框組扉7の横幅に等しい縦775mm×横397mmの寸法を有する框組扉、及び縦565mm×横397mmの寸法を有する框組扉も、以上で説明したような框組扉7と同様の製造方法で夫々形成される。
【0045】
縦565mm×横397mmの寸法を有する框組扉は、本発明の製造方法ではなく、常温硬化型の接着剤を常温硬化させる従来の製造方法で形成した場合でも縦框の反りは発生し難い。しかしながら、この框組扉を本発明の製造方法で形成する場合、嵌込体を平面の上に複数枚積み重ねてバンドを巻回する作業を行なう必要がなく、作業時間が短縮される。また、嵌込体を高周波加熱装置4にセットすることによって、バンドを巻回した場合と同様の効果を得ることができるため、作業手順が簡易である。
【0046】
ところで、横幅が框組扉7の横幅より40mm短い横357mmの寸法を有する框組扉も、框組扉7と略同様の製造方法で形成される。このために、高周波加熱装置4における各種治具の配置、個数等が変更される。
図6は、他の框組扉の製造方法を説明するための側断面図であり、載置台40の載置面4aに載置された嵌込体2を示す。嵌込体2は、横357mmの寸法を有する框組扉の嵌込体であり、嵌込体1と略同様に、鏡板20の四辺を縦框21,21及び2本の横框夫々の嵌込溝に嵌め込んでなる。
【0047】
内側定規55の裏面の突出部55aは、内側定規55の前後方向中央部ではなく前側(又は後側)端部近傍に設けられており、載置台40に横長の嵌込体1を載置する場合と横短の嵌込体2を載置する場合とでは、図5と図6とのように、内側定規55の前後方向の向きを変更することによって、内側定規55の手前側端部から内側定規54の奥側端部までの長さを変更する。なお、載置面4aに複数の溝10b,10b,…を形成し、突出部55aを嵌め込む溝10bを変更することによって、内側定規55の手前側端部から内側定規54の奥側端部までの長さを変更する構成でもよい。
【0048】
また、前後方向の長さが40mmの外側定規53を準備する。外側定規53は、外側定規51の奥側端面に沿わせて、着脱可能に載置面4aに固定される。
【0049】
作業者は、載置面4aに外側定規53及び内側定規55をセットし、次いで、嵌込体2の横方向一側を外側定規52の手前側端面に手前側から突き当て、そして、嵌込体2の横方向他側を外側定規53の奥側端面に沿わせることによって、外側定規52,53間の載置面4aに嵌込体2を載置する。
このため、載置台40に載置された嵌込体2は、嵌込体2の前後方向の位置ズレ、縦框11,11の反り等が外側定規51,52,53によって抑制される。また、内側定規54,55が、載置面4aと鏡板20との間の空隙を充填するため、鏡板20の反り、浮き等が抑制される。
【0050】
なお、接着剤3は、水分、油分等、誘電体損失の大きい物質を含み、このため高周波電界が印加された場合に誘電体損失に伴う内部発熱を生じて、常温で硬化するよりも迅速に硬化するタイプの接着剤であれば、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤に限るものではない。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン等である。
また、鏡板10,20の両面に沿って、平板状の治具を配する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る框組扉の構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る框組扉の製造方法を説明するための横断面図である。
【図3】本発明に係る框組扉の製造方法で用いる高周波加熱装置の構成を示す側面図である。
【図4】本発明に係る框組扉の製造方法を説明するための平面図である。
【図5】本発明に係る框組扉の製造方法を説明するための側断面図である。
【図6】本発明に係る他の框組扉の製造方法を説明するための側断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10,20 鏡板
10a 長辺
11a 嵌込溝
11,21 縦框(框材)
3 接着剤(高周波により発熱硬化する接着剤)
51,52,53 外側定規(棒状の治具)
54,55 内側定規(平板状の治具)
7 框組扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形平板状の鏡板の対向2辺に、前記鏡板を嵌め込む嵌込溝が形成された框材を組み付ける框組扉の製造方法において、
前記対向2辺及び/又は前記嵌込溝に、高周波により発熱硬化する接着剤を塗布し、
前記対向2辺を前記嵌込溝に嵌め込み、
接着部分の前記対向2辺の中央部を高周波加熱することを特徴とする框組扉の製造方法。
【請求項2】
前記鏡板が嵌め込まれた前記框材の外側に、該框材に沿う棒状の治具を配し、
前記鏡板の片面又は両面に沿って、平板状の治具を配することを特徴とする請求項1に記載の框組扉の製造方法。
【請求項3】
前記対向2辺夫々は前記鏡板の長辺であることを特徴とする請求項1又は2に記載の框組扉の製造方法。
【請求項4】
矩形平板状の鏡板の対向2辺に、前記鏡板を嵌め込む嵌込溝が形成された框材を組み付けてなる框組扉において、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の框組扉の製造方法で製造されていることを特徴とする框組扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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