説明

梱包装置

【課題】被梱包材を確実に梱包しうる梱包装置26の提供。
【解決手段】この梱包装置26は、被梱包材6が載せられるステージ30と、梱包資材4が収容されたカートリッジ32と、このカートリッジ32を回転可能に保持してこの被梱包材6を中心にして回転しうるリング部材36と、このリング部材36を上下に動かしうる昇降部38とを備えている。この被梱包材6がこの梱包資材4で梱包されるとき、この被梱包材6の中心と、このリング部材36の中心とは一致しうる。この梱包装置26では、被梱包材6の大きさによらず、梱包資材4に捻れが生じることなく被梱包材6がこの梱包資材4で巻かれる。この梱包装置26が用いられることにより、高い品質を有する被梱包材6が出荷されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包装置に関する。詳細には、長尺の被梱包材に梱包資材を巻く梱包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
棒鋼の製造方法として、圧延による方法が広く知られている。この製造方法では、まず精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、ビレットが得られる。このビレットは、加熱炉によって加熱される。次に、このビレットに熱間圧延が施される。通常は、タンデムに並べられた粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による多段圧延が施される。この熱間圧延によってビレットは徐々に細径化し且つ長尺化して、棒鋼が得られる。
【0003】
棒鋼は、例えば運搬中における表面疵等の発生が防止されるために梱包されて出荷される。通常、複数本の棒鋼からなる棒鋼群が梱包資材で巻かれる。この棒鋼群が梱包される工程は、梱包工程と称される。この梱包工程では、塩化ビニル、ポリエチレン等のような熱可塑性樹脂からなるフィルムが梱包資材として用いられる。この工程では、梱包装置を用いてこのフィルムが棒鋼群に巻かれる。製品の、運搬時における表面疵の発生防止の観点から、種々の自動梱包装置が検討されている。例えば、線材コイルに適用されうる自動梱包装置が、特開平6−247415号公報に開示されている。
【0004】
図5は、従来の梱包装置2の一部が示された正面図である。この梱包装置2は、梱包資材としてのフィルム4を、被梱包材としての棒鋼群6に巻く。この棒鋼群6は、複数本の棒鋼8からなる。これらの棒鋼8は、同一の外径を有している。この図5では、この棒鋼群6の輪郭が、円C1として示されている。なお、この棒鋼群6はこの紙面の表側から裏側に向かって移動する。
【0005】
この梱包装置2は、フレーム10と、ステージ12と、カートリッジ14と、4のガイドローラー16と、リング部材18とを備えている。このフレーム10は、ステージ12、カートリッジ14、ガイドローラー16及びリング部材18を支持する。棒鋼群6は、このステージ12に載せられつつ移動する。カートリッジ14は、フィルム4を収容する。図示されていないが、このカートリッジ14はシャフトを備えている。フィルム4は、このシャフトに巻かれている。このガイドローラー16は、ディスク20を備えている。このディスク20は、ピン22でこのガイドローラー16に取り付けられている。このリング部材18は、ホルダー24を備えている。このホルダー24は、カートリッジ14を収容する。
【0006】
この梱包装置2では、リング部材18はガイドローラー16のディスク20の内側に位置している。このリング部材18の外縁は、このディスク20の外縁に当接する。このディスク20は、ピン22を中心に回転する。従って、このリング部材18はこのガイドローラー16に支持されつつ回転する。ホルダー24に収容されたカートリッジ14は、シャフト(図示されず)を中心にして回転しうる。この梱包装置2では、このリング部材18は、このカートリッジ14を回転可能に保持しつつ、棒鋼群6を中心にして回転する。従って、この梱包装置2は、このカートリッジ14からフィルム4を引き出しつつ、移動する棒鋼群6にフィルム4を巻くことができる。なお、図5中、矢印線Aはこのリング部材18の回転方向を表している。矢印線Bは、このリング部材18が矢印線Aで示された方向に回転したときの、カートリッジ14の回転方向を表している。
【0007】
図5において、点PAはステージ12に置かれている棒鋼群6の中心を表している。点PBは、リング部材18の中心を表している。点PCは、カートリッジ14の中心を表している。この図5においては、この棒鋼群6の中心PAはリング部材18の中心PBと一致する。このとき、この梱包装置2では、棒鋼群6の中心PAからカートリッジ14の中心PCまでの距離は一定に保持されつつ、このカートリッジ14は棒鋼群6の周りを回転する。
【特許文献1】特開平6−247415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
量産工場では、様々な大きさの棒鋼8が製造される。図5において、二点鎖線で示された円C2は、前述の棒鋼群6aとは別の棒鋼群6bの輪郭を表している。図示されているように、この別の棒鋼群6bは、前述の棒鋼群6aよりも大きい。点PDは、この別の棒鋼群6bの中心を表している。図5に示されているように、この棒鋼群6bの中心PDは、前述の棒鋼群6aの中心PAの上方に位置している。前述したように、この梱包装置2では、ステージ12は上下に動かない。リング部材18も、上下に動かない。このため、この梱包装置2では、棒鋼群6の大きさが変わると、ステージ12に置かれた棒鋼群6の中心位置も変わる。梱包される棒鋼群6bの中心PDと、リング部材18の中心PBとが一致しない場合、この棒鋼群6bの中心PDから棒鋼群6bの周りを回転するカートリッジ14の中心PDまでの距離は一定の周期で変化する。この図5では、このカートリッジ14が棒鋼群6bの上側にあるとき、この距離は最短となり、このカートリッジ14が棒鋼群6の下側にあるとき、この距離は最長となる。このような梱包装置2では、フィルム4の張力を一定に保持しつつ、このフィルム4で棒鋼群6bを巻くことはできない。このため、この梱包装置2では、棒鋼群6bに巻かれたフィルム4に捩れが生じてしまう。この梱包装置2は、出荷される製品としての棒鋼群6bの品質に影響を与えうる。
【0009】
本発明の目的は、被梱包材を適切に梱包しうる梱包装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る梱包装置は、被梱包材が載せられるステージと、梱包資材が収容されたカートリッジと、このカートリッジを回転可能に保持してこの被梱包材を中心にして回転しうるリング部材と、このリング部材を上下に動かしうる昇降部とを備えている。この被梱包材がこの梱包資材で梱包されるとき、この被梱包材の中心と、このリング部材の中心とは一致しうる。
【0011】
好ましくは、この梱包装置は、上記昇降部に支持されるサブフレームと、上記リング部材を支持するガイドローラーとをさらに備えている。この梱包装置では、このガイドローラーは、このサブフレームに固定されている。上記カートリッジは、このガイドローラーに支持されつつこのサブフレームに取り付けられており、このサブフレームを介してこの昇降部に支持されている。
【発明の効果】
【0012】
この梱包装置には、リング部材を上下に昇降しうる昇降部が設けられている。この梱包装置では、梱包資材で梱包される被梱包材の大きさが変わると、この被梱包材の中心とリング部材の中心とが一致しうるように、このリング部材の位置がこの昇降部によって変えられる。このため、この梱包装置では、梱包資材に捻れが生じることなく、被梱包材がこの梱包資材で巻かれる。この梱包装置が用いられることにより、高い品質を有する被梱包材が出荷されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る梱包装置26の一部が示された正面図である。図2は、図1の梱包装置26の一部が示された側面図である。この梱包装置26は、梱包資材としてのフィルム4を被梱包材としての棒鋼群6に巻く。この棒鋼群6は、複数本の棒鋼8からなる。この図1では、この棒鋼群6の輪郭が円C1として表されている。なお、この被梱包材が、一本の棒鋼8から構成されてもよい。図2中、矢印線Aは棒鋼の移動方向を表している。
【0015】
この梱包装置26は、フレーム28と、ステージ30と、カートリッジ32と、4のガイドローラー34と、リング部材36と、昇降部38とを備えている。このフレーム28は、メインフレーム40とサブフレーム42とからなる。このメインフレーム40は、このサブフレーム42と、ステージ30と、昇降部38とを支持する。このサブフレーム42は、矩形である。このサブフレーム42の四隅は、パネル44で補強されている。このサブフレーム42は、カートリッジ32、ガイドローラー34及びリング部材36を支持している。この棒鋼群6は、このステージ30に載せられてこの図1の紙面の表側から裏側に向かって移動する。この梱包装置26では、このステージ30は上下に動かない。従って、このステージ30の高さは一定である。
【0016】
カートリッジ32は、フィルム4を収容する。図示されていないが、このカートリッジ32はシャフトとしてのパイプを備えている。このパイプに、フィルム4が巻かれる。なお、この梱包装置26では、このフィルム4は、塩化ビニル、ポリエチレン等のような熱可塑性樹脂からなる。
【0017】
ガイドローラー34は、サブフレーム42のパネル44に固定される。このガイドローラー34は、ディスク46と、ピン48とを備えている。このディスク46は、このピン48でガイドローラー34に固定されている。このガイドローラー34は、このディスク46がこのピン48を中心に回転しうるように構成されている。
【0018】
リング部材36は、ガイドローラー34に支持されている。このリング部材36は、ホルダー50を備えている。このホルダー50は、シャフトとしてのバー52を備えている。このバー52に、カートリッジ32のパイプが嵌め入れられる。
【0019】
昇降部38は、モーター54と、カバー56と、このカバー56に挿入されうる支持棒58とを備えている。このカバー56は、メインフレーム40に固定される。この支持棒58は、サブフレーム42を支持している。この昇降部38は、このモーター54が作動するとこの支持棒58が上下に動きうるように構成されている。この昇降部38は、スクリュージャッキである。この梱包装置26では、この昇降部38がメインフレーム40に対してこのサブフレーム42を上下に動かしうる。このサブフレーム42はリング部材36を支持しているので、この昇降部38はこのリング部材36を上下に動かしうる。なお、図1において、両矢印線S1はこの支持棒58の昇降方向を表している。
【0020】
この梱包装置26では、リング部材36はガイドローラー34のディスク46の内側に位置している。このリング部材36の外縁は、このディスク46の外縁に当接する。前述したように、このディスク46はピン48を中心にして回転する。従って、このリング部材36は、このガイドローラー34に支持されつつこのガイドローラー34に沿って回転しうる。図1中、矢印線R1はこのリング部材36の通常の回転方向を表している。
【0021】
この梱包装置26では、ホルダー50はリング部材36に固定されている。このため、このホルダー50の、このリング部材36に対する位置は一定である。この梱包装置26では、このホルダー50は、リング部材36が回転すると、矢印線R1で示される方向に回転する。
【0022】
前述したように、この梱包装置26では、カートリッジ32のパイプはリング部材36に設けられているホルダー50のバー52に嵌め入れられる。従って、このカートリッジ32は、このバー52を中心に回転しうる。
【0023】
この梱包装置26では、カートリッジ32はリング部材36に取り付けられる。このリング部材36は、ガイドローラー34に支持されつつサブフレーム42に取り付けられている。換言すれば、このカートリッジ32は、このガイドローラー34に支持されつつこのサブフレーム42に取り付けられている。この梱包装置26では、このサブフレーム42は昇降部の支持棒58に支持されている。換言すれば、このカートリッジ32は、このサブフレーム42を介してこの昇降部38に支持されている。
【0024】
前述したように、ホルダー50はリング部材36に固定されているので、カートリッジ32もこのリング部材36とともに回転する。この梱包装置26では、棒鋼群6がステージ30に載せられているとき、このカートリッジ32は、バー52を中心にして回転しつつこの棒鋼群6の周りを回転する。換言すれば、この梱包装置26では、このリング部材36はカートリッジ32を回転可能に保持してこの棒鋼群6を中心にして回転しうる。この梱包装置26は、カートリッジ32からフィルム4を引き出しつつ、この梱包装置26を移動している棒鋼群6にこのフィルム4を巻く。
【0025】
図1において、点PAは棒鋼群6の中心を表している。点PBは、リング部材36の中心を表している。点PCは、カートリッジ32の中心を表している。この梱包装置26では、棒鋼群6の中心PAと、リング部材36の中心PBとは一致している。このため、この中心PAからカートリッジ32の中心PCまでの距離は常に一定に保持される。この梱包装置26では、フィルム4の張力が一定に保持されつつこのフィルム4が棒鋼群6に巻かれる。このため、棒鋼群6に巻かれたフィルム4に捻れは生じない。
【0026】
図3は、図1の梱包装置26で別の棒鋼群6bが梱包されている状況が示された正面図である。図4は、図3の棒鋼群6bが梱包装置26を通過している状況の一部が示された側面図である。この図2では、この棒鋼群6bの輪郭が円C2として表されている。この円C2の直径は、図1に示された棒鋼群6aの輪郭を表す円C1の直径よりも大きい。換言すれば、この別の棒鋼群6bの大きさは、図1の棒鋼群6aの大きさよりも大きい。なお、図2において、矢印線Aは棒鋼の移動方向を表している。
【0027】
この図3において、点PDは円C2の中心を表している。換言すれば、この中心PDは、別の棒鋼群6bの中心である。点PAは、図1に示された棒鋼群6aの中心を表している。前述したように、この梱包装置26のステージ30は上下に動かない。従って、棒鋼群6の大きさが変わると、棒鋼群6の中心が移動する。図3に示されているように、この梱包装置26では、棒鋼群6bの中心PDとリング部材36の中心PBとが一致しうるように、昇降部38がリング部材36を動かしうる。図示されていないが、この梱包装置26には、棒鋼群6の高さを検知しうる位置検出器がさらに設けられている。この梱包装置26では、この位置検出器によりこのリング部材36の高さが制御されている。
【0028】
この梱包装置26では、梱包される棒鋼群6の大きさが変えられても、この棒鋼群6の中心PA又は中心PDとリング部材36の中心PBとがずれることはない。この棒鋼群6の中心PA又は中心PDとリング部材36の中心PBとが確実に一致するので、棒鋼群6の中心PA又は中心PDからカートリッジ32の中心までの距離は一定に保持されうる。従って、この梱包装置26では、フィルム4の張力が一定に保持されつつこのフィルム4が棒鋼群6に巻かれる。このため、棒鋼群6に巻かれたフィルム4に捻れは生じない。この梱包装置26では、棒鋼群6の大きさが変えられても棒鋼群6がフィルム4で確実に巻かれる。この梱包装置26では、梱包される棒鋼群6の大きさに関わらず、フィルム4に捻れが生じることなく棒鋼群6がフィルム4で巻かれる。この梱包装置26が用いられることにより、高い品質を有する棒鋼群6が出荷されうる。この梱包装置26が用いられることにより、梱包による不具合の発生が防止されうる。この梱包装置26は、生産性にも寄与しうる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、種々の被梱包材の梱包に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る梱包装置の一部が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の梱包装置の一部が示された側面図である。
【図3】図3は、図1の梱包装置で別の棒鋼群が梱包されている状況が示された正面図である。
【図4】図4は、図3の棒鋼群が梱包装置を通過している状況の一部が示された側面図である。
【図5】図5は、従来の梱包装置の一部が示された正面図である。
【符号の説明】
【0031】
2、26・・・梱包装置
4・・・フィルム
6、6a、6b・・・棒鋼群
8・・・棒鋼
10、28・・・フレーム
12、30・・・ステージ
14、32・・・カートリッジ
16、34・・・ガイドローラー
18、36・・・リング部材
20、46・・・ディスク
22、48・・・ピン
24、50・・・ホルダー
38・・・昇降部
40・・・メインフレーム
42・・・サブフレーム
44・・・パネル
52・・・バー
54・・・モーター
56・・・カバー
58・・・支持棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の被梱包材が載せられるステージと、梱包資材が収容されたカートリッジと、このカートリッジを回転可能に保持してこの被梱包材を中心にして回転しうるリング部材と、このリング部材を上下に動かしうる昇降部とを備えており、
この被梱包材がこの梱包資材で梱包されるとき、この被梱包材の中心と、このリング部材の中心とが一致しうる棒材用梱包装置。
【請求項2】
上記昇降部に支持されるサブフレームと、上記リング部材を支持するガイドローラーとをさらに備えており、
このガイドローラーが、このサブフレームに固定されており、
上記カートリッジが、このガイドローラーに支持されつつこのサブフレームに取り付けられており、このサブフレームを介してこの昇降部に支持されている請求項1に記載の梱包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−150093(P2008−150093A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342042(P2006−342042)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】