椅子のハンガー装置
【課題】美観に優れた椅子用ハンガー装置を提供する。
【手段】ハンガー装置は背もたれ(バックカバー14)の背面にビス64で固定される受け部材50と、受け部材50に取り付けられるハンガー部材51とで構成されている。ハンガー部材51の基部51cは背板52及び囲い壁53,54を有しており、基部51cで受け部材50がすっぽり囲われている。ハンガー部材51と受け部材50と蟻ホゾ板55と蟻溝65とによって位置決めされていると共に、係合爪56が係合溝66に嵌まることで抜け不能に保持されている。
【手段】ハンガー装置は背もたれ(バックカバー14)の背面にビス64で固定される受け部材50と、受け部材50に取り付けられるハンガー部材51とで構成されている。ハンガー部材51の基部51cは背板52及び囲い壁53,54を有しており、基部51cで受け部材50がすっぽり囲われている。ハンガー部材51と受け部材50と蟻ホゾ板55と蟻溝65とによって位置決めされていると共に、係合爪56が係合溝66に嵌まることで抜け不能に保持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、椅子のハンガー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子にハンガー装置を取り付けるにおいて、背もたれの背面に取り付ける場合がある。この場合、例えば特許文献1〜3に記載されているように、受け部材を背もたれの背面にビスで固定し、受け部材にハンガー部材を取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−32317号公報
【特許文献2】特許第4046393号公報
【特許文献3】特許第4061047号公報
【特許文献3】特開2009−112727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、ハンガー装置を受け部材とハンガー部材とで構成しているのは、ハンガー部材の高さや姿勢を調節可能とするためであったり、固定用のビスを隠すためであったり、或いは製造上(加工上)の要請であったりと様々である。いずれにしても、従来は、受け部材は人が普通に立ったり座ったりした状態で人目に触れるように露出している。しかし、受け部材が露出していると美観を損なう場合があった。
【0005】
本願発明は、このような現状を改善すべくなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は各請求項で特定される。このうち請求項1のハンガー装置は、背もたれの背面に固定される受け部材と、前記受け部材に取り付けられるハンガー部材とを有しており、前記受け部材は、その全体又は下面を除いた大部分が前記ハンガー部材の基部で覆われている。
【0007】
請求項2のハンガー装置は、請求項1において、前記受け部材及びハンガー部材の基部には、ハンガー部材を下向き動させると互いに嵌まり合って両者を前後左右のいずれにも離反不能に保持する嵌合手段と、前記嵌まり合いに伴う引っ掛かりによって前記ハンガー本体を上向き抜け不能に保持する係合手段とが設けられており、前記受け部材は下面を除いた大部分が前記ハンガー本体の基部で覆われている。
【0008】
請求項3のハンガー装置は、請求項1又は2において、前記受け部材は、椅子の手前側からねじ込んだビスで前記背もたれに固定されるようになっており、前記受け部材に、前記ビスがねじ込まれるナットを保持するポケット部が上向きに開口した状態に形成されており、前記受け部材の上面は前記ハンガー本体の基部で上から覆われている。
【0009】
請求項4のハンガー装置は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記ハンガー部材は、左右横長の基部の左右両端から掛け部が斜め上向きに立ち上がって全体として逆台形状のループ構造になっている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によると、受け部材は隠れていて人目に触れないため、受け部材が露出することによる美観の悪化を防止できる。なお、人が立ったり腰掛けたりした普通の状態では受け部材の下面が人目に触れることはないため、受け部材の下面が下方に露出していることは美観には影響しない。従って、本願発明では、受け部材は、背もたれに取り付けた状態で少なくとも下面を除いた部分が隠れるようにハンガー部材の基部で覆ったらよい。
【0011】
また、使用者が受け部材に直接触れることがないため、受け部材は表面処理したり美感等を考慮した外観にしたりしていなくても不都合はなく、また、受け部材にねじ込まれたビスがハンガー部材の取付前の状態で露出していても指を怪我する等の慮がない。
【0012】
受け部材にハンガー部材を取り付ける手段は種々採用し得るが、請求項2の構成を採用すると、ハンガー部材は上から下向き動させて受け部材に嵌め込むだけでよいため、取り付け作業がごく簡単である。
【0013】
さて、受け部材やハンガー部材は樹脂の成形品を採用することが多いが、ビスを受け部材に直接にねじ込む構造では強度が不足する場合が多い。さりとて、インサート成形法によってナットを埋設すると、製造コストが嵩むのみならず廃棄後の分別も厄介である。この点、請求項3のようにポケット部にナットを装着する構成を採用すると、受け部材の加工の容易性や廃棄後の分別の容易性を損なうことなく高い強度を確保できる。そして、ポケット部はハンガー部の基部で上から覆われているため、ポケット部を設けたことで美観が悪化する問題は生じない。ナットの嵌め込みが簡単である。
【0014】
請求項4のようにハンガー部材をループ構造にすると、外力が特定部位に集中的に作用することを抑制して頑丈な構造になる。このため,強度面で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は椅子の全体側面図、(B)は部分的な背面図である。
【図2】全部材を表示した分離斜視図である。
【図3】(A)は受け部材とハンガー部材との分離斜視図、(B)はバックカバーの斜視図である。
【図4】(A)はバックカバーの斜視図、(B)はハンガー部材の斜視図、(C)及び(D)は受け部材の斜視図である。
【図5】要部の分離正面である。
【図6】(A)は組み立て状態を図5のVIA-VIA 視方向から見た断面図、(B)は組み立て状態を図5のVIB-VIB 視方向から見た断面図である。
【図7】非ロッキング状態の縦断側面図である。
【図8】ロッキング状態の縦断側面図である。
【図9】主要部材を表示した分離斜視図である。
【図10】ロッキング機構部の分離斜視図である。
【図11】(A)はバックカバーと座板との分離斜視図(座板は上下ひっくり返している)、(B)及び(C)は押さえ部材の斜視図である。
【図12】補助足体を設けた箇所の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で方向を示すため「前後」「手前」「後ろ」「左右」といった文言を使用するが、これらの文言はロッキング椅子(以下、単に椅子と称する)に着座した人の向き基準にしている。「正面視」は着座者と対向した方向から見た状態になる。
【0017】
(1).椅子の概要
まず、主として図1,2に基づいて概要を説明する。本実施形態の椅子は事務用のいわゆる回転椅子に適用しており、椅子は、主要要素として、脚装置1、ベース2、座3、背もたれ4、バックサポート(支柱)5を有している。そして、背もたれ4の後面の上部にハンガー装置6を配置している。
【0018】
脚装置1はガスシリンダより成る脚支柱7を有している。脚支柱7は、放射状に延びる複数本の枝足を有する脚本体の中心部に嵌着されている。例えば図10に示すように、ベース2は上向きに開口した略函状の形態になっていて脚支柱7の上端に固定されている。そして、ベース2に座受金具(中間金具)8が前後スライド自在に装着されている。
【0019】
座3は、座板(座インナーシェル)10とその上面に張られた座クッション体11とを備えており、座クッション体11はクロス等の表皮材で覆われている。座板10の略前半部は座受けシェル(座アウターシェル)12の上面に取付けられている。座受けシェル12及び座板10はPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂材を素材とした射出成形品である。
【0020】
座板10は、大雑把に言って、前部を構成する第1部分10aと後部を構成する第2部分10bとを有し、第1部分10aと第2部分10bとの間には座3の左右方向に長いスリット13の群が形成されている。前後の部分10a,10bは数箇所のスリット13の箇所において連結片を介して連結されている。スリット13の群を設けている部分は一種のヒンジ部であり、座板10はスリット13の群の箇所で屈曲する。従って、座3は、前側に位置した部分と後ろに位置した部分とが連結された構成になっている。
【0021】
例えば図4に示すように、背もたれ4は、主として、バックカバー14と、バックカバー14の前面に取付けられた背板15と、背板15の前面に取付けられた背クッション体16とで構成されている。背クッション体16にはクロス等の表皮材が張られている。バックカバー14を背アウターシェルと言い換え、背板15を背インナーシェルと言い換えることも可能である。バックカバー14及び背板15はPP等の合成樹脂材を素材とした射出成形品である。
【0022】
バックカバー14は、背板15を支持する本体部14aと、この本体部14aの下端から前向き突出した前向き部14bとを有している。従って、バックカバー14は側面視で略L字状の外観を呈しており、バックカバー14における前向き部14bは座板10の第2部分10bに連結されている。また、バックカバー14はバックサポート5に下降動自在及び傾動自在に連結されている。
【0023】
着座した人が背もたれ4に凭れ掛かると、背もたれ4は上端が後退して下端が前進するように後傾動しつつ下降する一方、座3は全体として前進しつつ後部は前部に対して後傾する。ハンガー装置6はバックカバー14の上部の背面に取り付けられている。次に、ハンガー装置6を説明する。
【0024】
(2).ハンガー装置
例えば図3,5に示すように、ハンガー装置6は、バックカバー14の背面に固定される受け部材50と、受け部材50に取り付けられるハンガー部材51とで構成されている。両者とも樹脂の成形品であるが、金属ダイキャスト品を採用することも可能である。ハンガー部材51は、ループ状の帯板をねじったような態様であって、正面視では正面視逆台形の形態になっている。例えば図5に明示するように、ハンガー部材51の上端部51aはおおむね広い水平面が広がる形態であり、左右傾斜部51bは後ろに行くに従って左右外側に広がるように傾斜している。また、図1(A)に明示するように、左右傾斜部51bの上部は後ろに反るように側面視で曲がっている。
【0025】
ハンガー部材51の下端部は左右方向に長い基部51cになっており、この部分が受け部材50に取り付けられる。図3から容易に理解できるように、基部51cは、左右傾斜部51bと滑らかに連続する背板52と、基板52の上端から前向きに突出した左右横長の上囲い壁53と、基板52の左右両側縁から前向きに突出すると共に上囲い壁53に連続したサイド囲い壁54とを有している。左右のサイド囲い壁54は、その間隔が下に行くに従って広がるように正面視で傾斜している。
【0026】
左右のサイド囲い壁54からは、請求項に記載した嵌合手段の一貫を成す蟻ホゾ板55が内向きに突出している。他方、上囲い壁53の下面からは、請求項に記載した係合手段の一貫として係合爪56が下向きに突出している。係合爪56の下端には、側面視山形の前向き鉤部56aを形成している。なお、係合爪56と背板52との間には間隔が空いている。
【0027】
上囲い壁53の先端からは、左右方向に並んだ複数個(4個)の補助突起57を下向きに突設している。補助突起57は板状になっているが、棒状等の他の形態でもよい。なお、補助突起57も請求項に記載した嵌合手段の一部として把握できる。
【0028】
受け部材50はハンガー部材51の基部51cですっぽり覆われる大きさ・形状になっている。すなわち、正面視では略台形であり、上面と左右側面と背面とがハンガー部材51の基部51cで覆われるようになっており、下面のみが下方に露出している。受け部材50は下方から覗き込まないと人が見ることはできず、従って、通常の状態で受け部材50が人目に触れることはない。
【0029】
受け部材50の前面には、左右中心部に位置した中心突起58と、その左右両側に位置した中空ボス部59とを設けている。中心突起58は上下に割った状態になっており、かつ、先端には上向き爪58aを設けている。他方、バックカバー14には、中心突起58が嵌まる中心穴60と中空ボス部59が嵌まるビス挿通穴61とを空けている。図6(A)に示すように、中心突起58がその弾性に抗して変形してから中心穴60に嵌まり込むことにより、受け部材50は後ろからの押し込みによって、バックカバー14に簡単には抜けない状態に取り付けられる。
【0030】
受け部材50のうち左右中空ボス部59の真後ろに位置した部位には、平面視凸形で上向きに開口したポケット部62が形成されており、このポケット部62に、長方形の板にねじ筒を溶接したT型ナット63が上下に長い姿勢で挿入されている。従って、T型ナット63は回転不能に保持されている。中空ボス部59とポケット部62とは連通しており、図6(B)に示すように、ビス64をバックカバー14を貫通してT型ナット63にねじ込むことにより、受け部材50は左右2本のビス64でバックカバー14にしっかり固定される。ポケット部62の後ろには、中空ボス部59と同心の逃がし穴62′が後ろ向きに開口している。なお、T型ナット63に代えて六角ナットや四角ナットを使用することも可能である。
【0031】
また、図示していないが、バックカバー14のような背もたれの背面部にナットを仕込むことも可能で、この場合は、ポケット部62にT型ナット等を挿入することなく、逃がし穴62′に後ろから挿入したビスを背もたれの構成部材に取り付けたナットにねじ込むことも可能である。つまり、受け部材50にポケット部62と逃がし穴62′とを設けつつ背もたれにナットを仕込むことにより、受け部材50に対するビスの取付方向が選択可能である。なお、バックカバー14のような背面部材の前面に上向き開口のポケット部を形成して、このポケット部に挿入したナットに後ろからビスをねじ込むことも可能である。
【0032】
例えば図4(C)(D)から容易に理解できるように、受け部材50の左右両側面には、ハンガー部材51の蟻ホゾ板55が上から嵌まる蟻溝65が上下及び左右外側に開口する状態に形成されている。左右の蟻ホゾ板55が左右の蟻溝65に嵌まることにより、ハンガー部材51は左右動不能及び前後動不能に保持される。また、ハンガー部材51の上囲い壁53が受け部材50に上から重なっているため、ハンガー部材51は下向きずれ不能に保持されている。
【0033】
そして、受け部材の左右中間部に、ハンガー部材51の係合爪56が入り込む係合溝66を形成し、この係合溝66の箇所に、係合爪56の鉤部56aと引っ掛かり合う係合面66aを形成している。従って、ハンガー部材51を受け部材50に対して上から押し付けると、ハンガー部材51の蟻ホゾ板55が受け部材50の蟻溝65に嵌まり込むと共に、係合爪56は、いったん後ろ側に曲がるように逃げ変形してから戻って、ハンガー部材51を下降させ切るのと同時に、係合爪56の鉤部56aが係合溝66の係合面66aに噛み合い、これにより、ハンガー部材51は相当の力をかけないと抜けない状態に保持される。係合溝66の上端部は、係合爪56の誘い込みのため傾斜面66bになっている。
【0034】
図3(A)から容易に理解できるように、受け部材50のうち上面と前面とが連なる上前角部には、ハンガー部材51の補助突起57が嵌合する補助係合穴67を形成している。このため、ハンガー部材51に後ろ向きの外力が作用しても、基部51cの上囲い壁53が後ろにずれる現象は発生せず、固定強度に優れている。
【0035】
(3).ハンガー装置のまとめ・その他
既述のとおり、ハンガー装置6は受け部材50に押し重ねる作業によって取り付けられる。このため取り付け作業をワンタッチ的に行える。また、受け部材50は外部から見えないため美観が悪化することもない。本実施形態のように、ハンガー部材51の基部及び受け部材50を左右横長の形態にして、係合爪56の左右に一対のビス64と蟻ホゾ板55及び蟻溝65を設けると、受け部材50をバックカバー14にしっかりと固定できると共に、ハンガー部材51を受け部材50にしっかり取り付けることができる。
【0036】
また、ハンガー装置6に後ろ向きの力が作用すると、その外力は左右傾斜部51bの下端部にモーメントとして作用するが、蟻ホゾ板55及び蟻溝65が傾斜部51bの付け根の近傍に位置しているため、外力をしっかりと支えることができ、このため、強度面で優れている。
【0037】
受け部材やハンガー部材は必要に応じて任意の形状を採用できる。例えば、ハンガー部材51は正面視T形に形成することも可能である。ハンガー部材51の取り付け手段としては、後ろからの押し付けで互いに嵌合して抜け不能に保持せしめることも可能である。また、ハンガー部材51を受け部材50に上から又は後ろから嵌め込んで、下方から挿通操作するビスで両者を固定することも可能である。受け部材50に対してハンガー部材51を後ろから嵌め込む場合、下方から覗き込んでも受け部材50が見えないように、受け部材50をハンガー部材51の基部51cで完全に覆う構成を採することも可能である。
【0038】
嵌合手段としては、突起と穴との組み合わせなども採用できる。係合手段としては、例えばボールキャッチも採用できる(従って、ばねとスライド式ストッパーのような他の部材を使用することも可能である。)。
【0039】
(4).座と背もたれとの関係の補足説明
さて、ロッキング椅子において、ロッキング時に座の後端と背もたれの下端とが接触することがあり、その場合、座及び背もたれの表面がビニルレザーのような緻密構造の表皮材で構成されていると、接触によって擦れ音が発生するおそれである。本実施形態ではこれに対する対策も開示している。この点を以下に補足説明する。
【0040】
(5).バックサポート・ベース部
要点の説明に先立って、まず、バックサポート5やベース2のような支持機構部を説明する。本実施形態のバックサポート5は左右一対のパイプ材で側面視L字状に形成されており、このバックサポート5に裏側から支柱カバー18が装着されている。左右のバックサポート5は補強材5aで連結されている。
【0041】
例えば図2,10に示すように、バック支柱17の基部は、ベース2の内面に固定されたベース基板19に溶接などにて固定され、更に、補強金具20で押さえ保持している。ベース2は既述のとおり上向きに開口した箱形の外観を呈しており、後端は開放されている。そして、後部内面に既述のベース基板19が溶接によって固着されている。例えば図7,8に示すように、ベース2とベース基板19には上下に開口した受け筒21が固着されており、この受け筒21に脚支柱7の上端を下方から嵌着している。
【0042】
例えば図10に示すように、ベース2の左右両側板2aには前後長手の長穴23が形成されており、この長穴23に樹脂製のブッシュ24を装着し、左右両ブッシュ24に左右長手のガイド軸25が前後スライド自在に挿通されている。ブッシュ24は長穴23に外側から嵌め込んでおり、ベース3の外面に当たるフランジ24aを有している。ガイド軸25は、座受金具8の後部に設けた下向きの軸受け片26に挿通している。
【0043】
詳細は省略するが、座受金具8の前部は座板10の下面に設けたポケット部に後ろから嵌まっており、その状態で、座板10は座受金具8の後部に左右2本のねじで締結されている。
【0044】
例えば図10に示すように、ベース2の内部には、ロッキング用弾性支持手段の一例として、前後方向に伸縮するロッキンばね用のコイルばね28を配置している。他方、座受金具8の後端部には、下向きの後部ばね受け支持片29が形成されている。コイルばね28は後部ばね受け30を介して後部ばね受け支持片29で後ろから支持されている。また、コイルばね28の前端は前部ばね受け31を介してベース2の前壁で支持されている。従って、座受金具8はコイルばね28に抗して前進動する。
【0045】
例えば図10に示すように、ベース2における左右両側板2aの上端には左右外向きの水平片2bが一体に形成されており、この水平片2bに樹脂製のスライド補助体33が装着されている。スライド補助体33は水平片2bを抱持するように断面略溝形の形態になっている。また、座受金具8の左右両側部には、スライド補助体33を外側から包み込む溝形の抱持部34が形成されている。この抱持部34がスライド補助体33に対してスライドすることにより、座受金具8はベース2に対してスムースに前後摺動する。
【0046】
詳細は省略するが、座板10のうち前側を構成する第1部分10aは係合爪同士より成るキャッチ手段で座受けシェル12に連結されており、また、座板10のうち後部を構成する第2部分10bも、係合爪と係合穴との組み合わせによるキャッチ手段でバックカバー14の前向き部に取付けられている。
【0047】
(6).背もたれの構造
例えば図9から理解できるように、バックカバー14の左右中間部には下向きに開口した長溝35が形成されており、このためバックカバー14の前向き部14bは左右に分断されている。そして、バックカバー14における左右前向き部14bの前端には軸受け部36が形成されており、この左右軸受け部36とベース2における左右両側板2aの後端とがガイド軸25で連結されている。
【0048】
例えば図2から理解できるように、長溝35は、バックカバー14における本体部14aの上下中途高さ位置まで延びている。但し、前向き部14bの前後方向の中途部及び本体部14aの上下方向中途部には、長溝35を跨ぐ複数の連結部37が一体に形成されている。
【0049】
例えば図9に示すように、バック支柱17の上端部には補強ブラケット38が固定されており、この補強ブラケット38に、ガイドピン39が固定されている。ガイドピン39の左右両端部は補強ブラケット38の左右外側に露出している。
【0050】
他方、バックカバー14における長溝35の左右内側面の上部には上下長手のガイド溝40が向かい合う状態に形成されている。左右のガイド溝40には溝形の樹脂製ガイド部材41が嵌まっており、このガイド部材41の溝にガイドピン39の端部が上下スライド自在に嵌まっている。ガイド部材41は側面視において緩い曲率で前向き凹状に湾曲している。
【0051】
(7).動きのまとめ・補足説明の要点
ロッキング状態では、姿勢が一定のバックサポート5に対して背もたれ4が沈み込みながら後傾する。これと同時に座3は全体として前向きに移動しつつ、第2部分3bは第1部分3aに対して後傾する。ロッキング状態から身体を起こすと、背もたれ4及び座3はコイルばね28によって元の状態に戻る。
【0052】
そして、ロッキングに際して座3の後部が曲率を変えることなく下向きに沈めば、座3の後端と背もたれ4の下端とが接触することはないが、座板10の第2部分10bはバックカバー14の左右前向き部14bに連結されており、左右前向き部14bの間隔はさほど広くないため、座3の後端のうち左右中央部は背もたれ4に接触しないものの、座3の後端のうち左右端部寄りの部位は十分に下向き動せずに、背もたれ4の下端と接触する現象が生じる可能性である。その結果、表皮材がレザー質の場合、こすれ音が発生するおそれがある。
【0053】
この点は、ロッキング時に座の後端がどの部位においても背もたれ4の下端と接触しないように設定したらよい。そこで本実施形態の椅子では、図11,図12に示すように、座板10の第2部分10bの後端に四角形の補助穴45を設けて、この補助穴45に後ろ向き突出する補助足体46を取り付け、この補助足体46の先端(後端)をバックカバー14に設けた横長リブ47に下方から当接させている。
【0054】
補助足体46はT形の蟻ホゾ部46aを有しており、この蟻ホゾ部46aを補助穴45に手前から嵌め入れることにより、補助足体46を座板10の第2部分10bに取り付けている。ロッキングに際しては、補助足体46がバックカバー14の横長リブ47で下向きに押されることにより、座3の後端は背もたれ4の下端と隙間Sがあいた状態に保持される。従って、表皮材がレザー系であってもこすれ音が発生することはない。補助足体46の先端には、横長リブ47の下面部への進入を容易ならしめるため傾斜ガイド面46bを形成している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明は椅子に具体化して有用性を発揮する。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0056】
4 背もたれ
6 ハンガー装置
50 受け部材
51 ハンガー部材
51c ハンガー部材の基部
53,54 囲い壁
55 嵌合手段の一例として蟻ホゾ板
56 係合手段の一例としての係合爪
62 ポケット部
63 T型ナット
64 ビス(ボルト、ねじ)
65 嵌合手段の一例としての蟻溝
【技術分野】
【0001】
本願発明は、椅子のハンガー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子にハンガー装置を取り付けるにおいて、背もたれの背面に取り付ける場合がある。この場合、例えば特許文献1〜3に記載されているように、受け部材を背もたれの背面にビスで固定し、受け部材にハンガー部材を取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−32317号公報
【特許文献2】特許第4046393号公報
【特許文献3】特許第4061047号公報
【特許文献3】特開2009−112727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、ハンガー装置を受け部材とハンガー部材とで構成しているのは、ハンガー部材の高さや姿勢を調節可能とするためであったり、固定用のビスを隠すためであったり、或いは製造上(加工上)の要請であったりと様々である。いずれにしても、従来は、受け部材は人が普通に立ったり座ったりした状態で人目に触れるように露出している。しかし、受け部材が露出していると美観を損なう場合があった。
【0005】
本願発明は、このような現状を改善すべくなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は各請求項で特定される。このうち請求項1のハンガー装置は、背もたれの背面に固定される受け部材と、前記受け部材に取り付けられるハンガー部材とを有しており、前記受け部材は、その全体又は下面を除いた大部分が前記ハンガー部材の基部で覆われている。
【0007】
請求項2のハンガー装置は、請求項1において、前記受け部材及びハンガー部材の基部には、ハンガー部材を下向き動させると互いに嵌まり合って両者を前後左右のいずれにも離反不能に保持する嵌合手段と、前記嵌まり合いに伴う引っ掛かりによって前記ハンガー本体を上向き抜け不能に保持する係合手段とが設けられており、前記受け部材は下面を除いた大部分が前記ハンガー本体の基部で覆われている。
【0008】
請求項3のハンガー装置は、請求項1又は2において、前記受け部材は、椅子の手前側からねじ込んだビスで前記背もたれに固定されるようになっており、前記受け部材に、前記ビスがねじ込まれるナットを保持するポケット部が上向きに開口した状態に形成されており、前記受け部材の上面は前記ハンガー本体の基部で上から覆われている。
【0009】
請求項4のハンガー装置は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記ハンガー部材は、左右横長の基部の左右両端から掛け部が斜め上向きに立ち上がって全体として逆台形状のループ構造になっている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によると、受け部材は隠れていて人目に触れないため、受け部材が露出することによる美観の悪化を防止できる。なお、人が立ったり腰掛けたりした普通の状態では受け部材の下面が人目に触れることはないため、受け部材の下面が下方に露出していることは美観には影響しない。従って、本願発明では、受け部材は、背もたれに取り付けた状態で少なくとも下面を除いた部分が隠れるようにハンガー部材の基部で覆ったらよい。
【0011】
また、使用者が受け部材に直接触れることがないため、受け部材は表面処理したり美感等を考慮した外観にしたりしていなくても不都合はなく、また、受け部材にねじ込まれたビスがハンガー部材の取付前の状態で露出していても指を怪我する等の慮がない。
【0012】
受け部材にハンガー部材を取り付ける手段は種々採用し得るが、請求項2の構成を採用すると、ハンガー部材は上から下向き動させて受け部材に嵌め込むだけでよいため、取り付け作業がごく簡単である。
【0013】
さて、受け部材やハンガー部材は樹脂の成形品を採用することが多いが、ビスを受け部材に直接にねじ込む構造では強度が不足する場合が多い。さりとて、インサート成形法によってナットを埋設すると、製造コストが嵩むのみならず廃棄後の分別も厄介である。この点、請求項3のようにポケット部にナットを装着する構成を採用すると、受け部材の加工の容易性や廃棄後の分別の容易性を損なうことなく高い強度を確保できる。そして、ポケット部はハンガー部の基部で上から覆われているため、ポケット部を設けたことで美観が悪化する問題は生じない。ナットの嵌め込みが簡単である。
【0014】
請求項4のようにハンガー部材をループ構造にすると、外力が特定部位に集中的に作用することを抑制して頑丈な構造になる。このため,強度面で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は椅子の全体側面図、(B)は部分的な背面図である。
【図2】全部材を表示した分離斜視図である。
【図3】(A)は受け部材とハンガー部材との分離斜視図、(B)はバックカバーの斜視図である。
【図4】(A)はバックカバーの斜視図、(B)はハンガー部材の斜視図、(C)及び(D)は受け部材の斜視図である。
【図5】要部の分離正面である。
【図6】(A)は組み立て状態を図5のVIA-VIA 視方向から見た断面図、(B)は組み立て状態を図5のVIB-VIB 視方向から見た断面図である。
【図7】非ロッキング状態の縦断側面図である。
【図8】ロッキング状態の縦断側面図である。
【図9】主要部材を表示した分離斜視図である。
【図10】ロッキング機構部の分離斜視図である。
【図11】(A)はバックカバーと座板との分離斜視図(座板は上下ひっくり返している)、(B)及び(C)は押さえ部材の斜視図である。
【図12】補助足体を設けた箇所の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で方向を示すため「前後」「手前」「後ろ」「左右」といった文言を使用するが、これらの文言はロッキング椅子(以下、単に椅子と称する)に着座した人の向き基準にしている。「正面視」は着座者と対向した方向から見た状態になる。
【0017】
(1).椅子の概要
まず、主として図1,2に基づいて概要を説明する。本実施形態の椅子は事務用のいわゆる回転椅子に適用しており、椅子は、主要要素として、脚装置1、ベース2、座3、背もたれ4、バックサポート(支柱)5を有している。そして、背もたれ4の後面の上部にハンガー装置6を配置している。
【0018】
脚装置1はガスシリンダより成る脚支柱7を有している。脚支柱7は、放射状に延びる複数本の枝足を有する脚本体の中心部に嵌着されている。例えば図10に示すように、ベース2は上向きに開口した略函状の形態になっていて脚支柱7の上端に固定されている。そして、ベース2に座受金具(中間金具)8が前後スライド自在に装着されている。
【0019】
座3は、座板(座インナーシェル)10とその上面に張られた座クッション体11とを備えており、座クッション体11はクロス等の表皮材で覆われている。座板10の略前半部は座受けシェル(座アウターシェル)12の上面に取付けられている。座受けシェル12及び座板10はPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂材を素材とした射出成形品である。
【0020】
座板10は、大雑把に言って、前部を構成する第1部分10aと後部を構成する第2部分10bとを有し、第1部分10aと第2部分10bとの間には座3の左右方向に長いスリット13の群が形成されている。前後の部分10a,10bは数箇所のスリット13の箇所において連結片を介して連結されている。スリット13の群を設けている部分は一種のヒンジ部であり、座板10はスリット13の群の箇所で屈曲する。従って、座3は、前側に位置した部分と後ろに位置した部分とが連結された構成になっている。
【0021】
例えば図4に示すように、背もたれ4は、主として、バックカバー14と、バックカバー14の前面に取付けられた背板15と、背板15の前面に取付けられた背クッション体16とで構成されている。背クッション体16にはクロス等の表皮材が張られている。バックカバー14を背アウターシェルと言い換え、背板15を背インナーシェルと言い換えることも可能である。バックカバー14及び背板15はPP等の合成樹脂材を素材とした射出成形品である。
【0022】
バックカバー14は、背板15を支持する本体部14aと、この本体部14aの下端から前向き突出した前向き部14bとを有している。従って、バックカバー14は側面視で略L字状の外観を呈しており、バックカバー14における前向き部14bは座板10の第2部分10bに連結されている。また、バックカバー14はバックサポート5に下降動自在及び傾動自在に連結されている。
【0023】
着座した人が背もたれ4に凭れ掛かると、背もたれ4は上端が後退して下端が前進するように後傾動しつつ下降する一方、座3は全体として前進しつつ後部は前部に対して後傾する。ハンガー装置6はバックカバー14の上部の背面に取り付けられている。次に、ハンガー装置6を説明する。
【0024】
(2).ハンガー装置
例えば図3,5に示すように、ハンガー装置6は、バックカバー14の背面に固定される受け部材50と、受け部材50に取り付けられるハンガー部材51とで構成されている。両者とも樹脂の成形品であるが、金属ダイキャスト品を採用することも可能である。ハンガー部材51は、ループ状の帯板をねじったような態様であって、正面視では正面視逆台形の形態になっている。例えば図5に明示するように、ハンガー部材51の上端部51aはおおむね広い水平面が広がる形態であり、左右傾斜部51bは後ろに行くに従って左右外側に広がるように傾斜している。また、図1(A)に明示するように、左右傾斜部51bの上部は後ろに反るように側面視で曲がっている。
【0025】
ハンガー部材51の下端部は左右方向に長い基部51cになっており、この部分が受け部材50に取り付けられる。図3から容易に理解できるように、基部51cは、左右傾斜部51bと滑らかに連続する背板52と、基板52の上端から前向きに突出した左右横長の上囲い壁53と、基板52の左右両側縁から前向きに突出すると共に上囲い壁53に連続したサイド囲い壁54とを有している。左右のサイド囲い壁54は、その間隔が下に行くに従って広がるように正面視で傾斜している。
【0026】
左右のサイド囲い壁54からは、請求項に記載した嵌合手段の一貫を成す蟻ホゾ板55が内向きに突出している。他方、上囲い壁53の下面からは、請求項に記載した係合手段の一貫として係合爪56が下向きに突出している。係合爪56の下端には、側面視山形の前向き鉤部56aを形成している。なお、係合爪56と背板52との間には間隔が空いている。
【0027】
上囲い壁53の先端からは、左右方向に並んだ複数個(4個)の補助突起57を下向きに突設している。補助突起57は板状になっているが、棒状等の他の形態でもよい。なお、補助突起57も請求項に記載した嵌合手段の一部として把握できる。
【0028】
受け部材50はハンガー部材51の基部51cですっぽり覆われる大きさ・形状になっている。すなわち、正面視では略台形であり、上面と左右側面と背面とがハンガー部材51の基部51cで覆われるようになっており、下面のみが下方に露出している。受け部材50は下方から覗き込まないと人が見ることはできず、従って、通常の状態で受け部材50が人目に触れることはない。
【0029】
受け部材50の前面には、左右中心部に位置した中心突起58と、その左右両側に位置した中空ボス部59とを設けている。中心突起58は上下に割った状態になっており、かつ、先端には上向き爪58aを設けている。他方、バックカバー14には、中心突起58が嵌まる中心穴60と中空ボス部59が嵌まるビス挿通穴61とを空けている。図6(A)に示すように、中心突起58がその弾性に抗して変形してから中心穴60に嵌まり込むことにより、受け部材50は後ろからの押し込みによって、バックカバー14に簡単には抜けない状態に取り付けられる。
【0030】
受け部材50のうち左右中空ボス部59の真後ろに位置した部位には、平面視凸形で上向きに開口したポケット部62が形成されており、このポケット部62に、長方形の板にねじ筒を溶接したT型ナット63が上下に長い姿勢で挿入されている。従って、T型ナット63は回転不能に保持されている。中空ボス部59とポケット部62とは連通しており、図6(B)に示すように、ビス64をバックカバー14を貫通してT型ナット63にねじ込むことにより、受け部材50は左右2本のビス64でバックカバー14にしっかり固定される。ポケット部62の後ろには、中空ボス部59と同心の逃がし穴62′が後ろ向きに開口している。なお、T型ナット63に代えて六角ナットや四角ナットを使用することも可能である。
【0031】
また、図示していないが、バックカバー14のような背もたれの背面部にナットを仕込むことも可能で、この場合は、ポケット部62にT型ナット等を挿入することなく、逃がし穴62′に後ろから挿入したビスを背もたれの構成部材に取り付けたナットにねじ込むことも可能である。つまり、受け部材50にポケット部62と逃がし穴62′とを設けつつ背もたれにナットを仕込むことにより、受け部材50に対するビスの取付方向が選択可能である。なお、バックカバー14のような背面部材の前面に上向き開口のポケット部を形成して、このポケット部に挿入したナットに後ろからビスをねじ込むことも可能である。
【0032】
例えば図4(C)(D)から容易に理解できるように、受け部材50の左右両側面には、ハンガー部材51の蟻ホゾ板55が上から嵌まる蟻溝65が上下及び左右外側に開口する状態に形成されている。左右の蟻ホゾ板55が左右の蟻溝65に嵌まることにより、ハンガー部材51は左右動不能及び前後動不能に保持される。また、ハンガー部材51の上囲い壁53が受け部材50に上から重なっているため、ハンガー部材51は下向きずれ不能に保持されている。
【0033】
そして、受け部材の左右中間部に、ハンガー部材51の係合爪56が入り込む係合溝66を形成し、この係合溝66の箇所に、係合爪56の鉤部56aと引っ掛かり合う係合面66aを形成している。従って、ハンガー部材51を受け部材50に対して上から押し付けると、ハンガー部材51の蟻ホゾ板55が受け部材50の蟻溝65に嵌まり込むと共に、係合爪56は、いったん後ろ側に曲がるように逃げ変形してから戻って、ハンガー部材51を下降させ切るのと同時に、係合爪56の鉤部56aが係合溝66の係合面66aに噛み合い、これにより、ハンガー部材51は相当の力をかけないと抜けない状態に保持される。係合溝66の上端部は、係合爪56の誘い込みのため傾斜面66bになっている。
【0034】
図3(A)から容易に理解できるように、受け部材50のうち上面と前面とが連なる上前角部には、ハンガー部材51の補助突起57が嵌合する補助係合穴67を形成している。このため、ハンガー部材51に後ろ向きの外力が作用しても、基部51cの上囲い壁53が後ろにずれる現象は発生せず、固定強度に優れている。
【0035】
(3).ハンガー装置のまとめ・その他
既述のとおり、ハンガー装置6は受け部材50に押し重ねる作業によって取り付けられる。このため取り付け作業をワンタッチ的に行える。また、受け部材50は外部から見えないため美観が悪化することもない。本実施形態のように、ハンガー部材51の基部及び受け部材50を左右横長の形態にして、係合爪56の左右に一対のビス64と蟻ホゾ板55及び蟻溝65を設けると、受け部材50をバックカバー14にしっかりと固定できると共に、ハンガー部材51を受け部材50にしっかり取り付けることができる。
【0036】
また、ハンガー装置6に後ろ向きの力が作用すると、その外力は左右傾斜部51bの下端部にモーメントとして作用するが、蟻ホゾ板55及び蟻溝65が傾斜部51bの付け根の近傍に位置しているため、外力をしっかりと支えることができ、このため、強度面で優れている。
【0037】
受け部材やハンガー部材は必要に応じて任意の形状を採用できる。例えば、ハンガー部材51は正面視T形に形成することも可能である。ハンガー部材51の取り付け手段としては、後ろからの押し付けで互いに嵌合して抜け不能に保持せしめることも可能である。また、ハンガー部材51を受け部材50に上から又は後ろから嵌め込んで、下方から挿通操作するビスで両者を固定することも可能である。受け部材50に対してハンガー部材51を後ろから嵌め込む場合、下方から覗き込んでも受け部材50が見えないように、受け部材50をハンガー部材51の基部51cで完全に覆う構成を採することも可能である。
【0038】
嵌合手段としては、突起と穴との組み合わせなども採用できる。係合手段としては、例えばボールキャッチも採用できる(従って、ばねとスライド式ストッパーのような他の部材を使用することも可能である。)。
【0039】
(4).座と背もたれとの関係の補足説明
さて、ロッキング椅子において、ロッキング時に座の後端と背もたれの下端とが接触することがあり、その場合、座及び背もたれの表面がビニルレザーのような緻密構造の表皮材で構成されていると、接触によって擦れ音が発生するおそれである。本実施形態ではこれに対する対策も開示している。この点を以下に補足説明する。
【0040】
(5).バックサポート・ベース部
要点の説明に先立って、まず、バックサポート5やベース2のような支持機構部を説明する。本実施形態のバックサポート5は左右一対のパイプ材で側面視L字状に形成されており、このバックサポート5に裏側から支柱カバー18が装着されている。左右のバックサポート5は補強材5aで連結されている。
【0041】
例えば図2,10に示すように、バック支柱17の基部は、ベース2の内面に固定されたベース基板19に溶接などにて固定され、更に、補強金具20で押さえ保持している。ベース2は既述のとおり上向きに開口した箱形の外観を呈しており、後端は開放されている。そして、後部内面に既述のベース基板19が溶接によって固着されている。例えば図7,8に示すように、ベース2とベース基板19には上下に開口した受け筒21が固着されており、この受け筒21に脚支柱7の上端を下方から嵌着している。
【0042】
例えば図10に示すように、ベース2の左右両側板2aには前後長手の長穴23が形成されており、この長穴23に樹脂製のブッシュ24を装着し、左右両ブッシュ24に左右長手のガイド軸25が前後スライド自在に挿通されている。ブッシュ24は長穴23に外側から嵌め込んでおり、ベース3の外面に当たるフランジ24aを有している。ガイド軸25は、座受金具8の後部に設けた下向きの軸受け片26に挿通している。
【0043】
詳細は省略するが、座受金具8の前部は座板10の下面に設けたポケット部に後ろから嵌まっており、その状態で、座板10は座受金具8の後部に左右2本のねじで締結されている。
【0044】
例えば図10に示すように、ベース2の内部には、ロッキング用弾性支持手段の一例として、前後方向に伸縮するロッキンばね用のコイルばね28を配置している。他方、座受金具8の後端部には、下向きの後部ばね受け支持片29が形成されている。コイルばね28は後部ばね受け30を介して後部ばね受け支持片29で後ろから支持されている。また、コイルばね28の前端は前部ばね受け31を介してベース2の前壁で支持されている。従って、座受金具8はコイルばね28に抗して前進動する。
【0045】
例えば図10に示すように、ベース2における左右両側板2aの上端には左右外向きの水平片2bが一体に形成されており、この水平片2bに樹脂製のスライド補助体33が装着されている。スライド補助体33は水平片2bを抱持するように断面略溝形の形態になっている。また、座受金具8の左右両側部には、スライド補助体33を外側から包み込む溝形の抱持部34が形成されている。この抱持部34がスライド補助体33に対してスライドすることにより、座受金具8はベース2に対してスムースに前後摺動する。
【0046】
詳細は省略するが、座板10のうち前側を構成する第1部分10aは係合爪同士より成るキャッチ手段で座受けシェル12に連結されており、また、座板10のうち後部を構成する第2部分10bも、係合爪と係合穴との組み合わせによるキャッチ手段でバックカバー14の前向き部に取付けられている。
【0047】
(6).背もたれの構造
例えば図9から理解できるように、バックカバー14の左右中間部には下向きに開口した長溝35が形成されており、このためバックカバー14の前向き部14bは左右に分断されている。そして、バックカバー14における左右前向き部14bの前端には軸受け部36が形成されており、この左右軸受け部36とベース2における左右両側板2aの後端とがガイド軸25で連結されている。
【0048】
例えば図2から理解できるように、長溝35は、バックカバー14における本体部14aの上下中途高さ位置まで延びている。但し、前向き部14bの前後方向の中途部及び本体部14aの上下方向中途部には、長溝35を跨ぐ複数の連結部37が一体に形成されている。
【0049】
例えば図9に示すように、バック支柱17の上端部には補強ブラケット38が固定されており、この補強ブラケット38に、ガイドピン39が固定されている。ガイドピン39の左右両端部は補強ブラケット38の左右外側に露出している。
【0050】
他方、バックカバー14における長溝35の左右内側面の上部には上下長手のガイド溝40が向かい合う状態に形成されている。左右のガイド溝40には溝形の樹脂製ガイド部材41が嵌まっており、このガイド部材41の溝にガイドピン39の端部が上下スライド自在に嵌まっている。ガイド部材41は側面視において緩い曲率で前向き凹状に湾曲している。
【0051】
(7).動きのまとめ・補足説明の要点
ロッキング状態では、姿勢が一定のバックサポート5に対して背もたれ4が沈み込みながら後傾する。これと同時に座3は全体として前向きに移動しつつ、第2部分3bは第1部分3aに対して後傾する。ロッキング状態から身体を起こすと、背もたれ4及び座3はコイルばね28によって元の状態に戻る。
【0052】
そして、ロッキングに際して座3の後部が曲率を変えることなく下向きに沈めば、座3の後端と背もたれ4の下端とが接触することはないが、座板10の第2部分10bはバックカバー14の左右前向き部14bに連結されており、左右前向き部14bの間隔はさほど広くないため、座3の後端のうち左右中央部は背もたれ4に接触しないものの、座3の後端のうち左右端部寄りの部位は十分に下向き動せずに、背もたれ4の下端と接触する現象が生じる可能性である。その結果、表皮材がレザー質の場合、こすれ音が発生するおそれがある。
【0053】
この点は、ロッキング時に座の後端がどの部位においても背もたれ4の下端と接触しないように設定したらよい。そこで本実施形態の椅子では、図11,図12に示すように、座板10の第2部分10bの後端に四角形の補助穴45を設けて、この補助穴45に後ろ向き突出する補助足体46を取り付け、この補助足体46の先端(後端)をバックカバー14に設けた横長リブ47に下方から当接させている。
【0054】
補助足体46はT形の蟻ホゾ部46aを有しており、この蟻ホゾ部46aを補助穴45に手前から嵌め入れることにより、補助足体46を座板10の第2部分10bに取り付けている。ロッキングに際しては、補助足体46がバックカバー14の横長リブ47で下向きに押されることにより、座3の後端は背もたれ4の下端と隙間Sがあいた状態に保持される。従って、表皮材がレザー系であってもこすれ音が発生することはない。補助足体46の先端には、横長リブ47の下面部への進入を容易ならしめるため傾斜ガイド面46bを形成している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明は椅子に具体化して有用性を発揮する。従って産業上利用できる。
【符号の説明】
【0056】
4 背もたれ
6 ハンガー装置
50 受け部材
51 ハンガー部材
51c ハンガー部材の基部
53,54 囲い壁
55 嵌合手段の一例として蟻ホゾ板
56 係合手段の一例としての係合爪
62 ポケット部
63 T型ナット
64 ビス(ボルト、ねじ)
65 嵌合手段の一例としての蟻溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれの背面に固定される受け部材と、前記受け部材に取り付けられるハンガー部材とを有しており、前記受け部材は、その全体又は下面を除いた大部分が前記ハンガー部材の基部で覆われている、
椅子のハンガー装置。
【請求項2】
前記受け部材及びハンガー部材の基部には、ハンガー部材を下向き動させると互いに嵌まり合って両者を前後左右のいずれにも離反不能に保持する嵌合手段と、前記嵌まり合いに伴う引っ掛かりによって前記ハンガー本体を上向き抜け不能に保持する係合手段とが設けられており、前記受け部材は下面を除いた大部分が前記ハンガー本体の基部で覆われている、
請求項1に記載した椅子のハンガー装置。
【請求項3】
前記受け部材は、椅子の手前側からねじ込んだビスで前記背もたれに固定されるようになっており、前記受け部材に、前記ビスがねじ込まれるナットを保持するポケット部が上向きに開口した状態に形成されており、前記受け部材の上面は前記ハンガー本体の基部で上から覆われている、
請求項1又は2に記載した椅子のハンガー装置。
【請求項4】
前記ハンガー部材は、左右横長の基部の左右両端から掛け部が斜め上向きに立ち上がって全体として逆台形状のループ構造になっている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した椅子のハンガー装置。
【請求項1】
背もたれの背面に固定される受け部材と、前記受け部材に取り付けられるハンガー部材とを有しており、前記受け部材は、その全体又は下面を除いた大部分が前記ハンガー部材の基部で覆われている、
椅子のハンガー装置。
【請求項2】
前記受け部材及びハンガー部材の基部には、ハンガー部材を下向き動させると互いに嵌まり合って両者を前後左右のいずれにも離反不能に保持する嵌合手段と、前記嵌まり合いに伴う引っ掛かりによって前記ハンガー本体を上向き抜け不能に保持する係合手段とが設けられており、前記受け部材は下面を除いた大部分が前記ハンガー本体の基部で覆われている、
請求項1に記載した椅子のハンガー装置。
【請求項3】
前記受け部材は、椅子の手前側からねじ込んだビスで前記背もたれに固定されるようになっており、前記受け部材に、前記ビスがねじ込まれるナットを保持するポケット部が上向きに開口した状態に形成されており、前記受け部材の上面は前記ハンガー本体の基部で上から覆われている、
請求項1又は2に記載した椅子のハンガー装置。
【請求項4】
前記ハンガー部材は、左右横長の基部の左右両端から掛け部が斜め上向きに立ち上がって全体として逆台形状のループ構造になっている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した椅子のハンガー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−249693(P2012−249693A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122734(P2011−122734)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
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