説明

椅子

【課題】ビスを使用せずともハンガー装置を背もたれに強固に取付けることを可能ならしめる。
【手段】背もたれ3は背板(背インナーシェル)6とその後ろに配置したバックサポート7とを有している。背板6はメインメンバー11とトップメンバー12とに分離構成されており、トップメンバー12はバックサポート7の後ろに突出したオーバーハング部13を有している。ハンガー装置16は、ベースブラケット54とホルダー55とハンガー体56とを有しており、ベースブラケット54はバックサポート7に重ね配置されており、背板6のオーバーハング部13で上から覆われている。ベースブラケット54にはロッド57や羽根板59を設けて安定性を向上させ得るが、これらは露出しないため、美観を損なうことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれにハンガー装置を設けた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれにハンガー装置を取り付けることは広く行われており、様々な構造が提案され或いは実施されている。ハンガー装置の取付け構造は背もたれの構造と不離一体の関係にあり、例えば特許文献1〜3には、シェル状の裏カバーを有する背もたれにおいて、裏カバーの背面にハンガー装置をビスで取り付けることが開示されている。
【0003】
また、特許文献4には、左右2本の背支柱に背もたれを取付けた椅子において、ハンガー装置を背支柱に固定することが開示されている。この特許文献3では、ハンガー装置の下端に背支柱を挟み保持するばね式のクリップ体が設けられている。更に、特許文献4〜7には、背もたれにおける上部の内部にハンガー受け部材を配置し、このハンガー受け部材にハンガーの足部を上から差し込むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−334125号公報
【特許文献2】特開2005−245866号公報
【特許文献3】特開2004−174145号公報
【特許文献4】実開昭61−196655号公報
【特許文献5】特開2008−029581号公報
【特許文献6】特許第3801769号号公報
【特許文献7】特開2006−087528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハンガー装置はオプション品であり、従って、椅子はハンガー装置を取付けない状態で使用することもある。しかるに、特許文献1〜3のように裏カバーの背面にビス止めする方式では、ビスを紛失するとハンガー装置を取付けできなくなる問題や、取付け・取り外しに際してのビスの回転操作に手間が掛かる問題、或いは、ハンガー装置を取り外すとビスの取付け穴が露出して美観を損なうおそれがあるという問題がある。また、高い取付け強度を確保し難い可能性もある。
【0006】
他方、特許文献4はばね式のクリップ体で背支柱を挟み保持するものであるため、ビス穴が露出することによる美観の悪化は生じないが、背支柱を持たない椅子には適用できないという問題や、使用状態でクリップ体が露出するため人に違和感を与える可能性が高いという問題などがある。
【0007】
他方、特許文献5〜7ではハンガー受け部材は背もたれの内部に隠れているため、ハンガー装置を使用していない状態での美観悪化の問題はないと言える。本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、従来にない斬新で優れたハンガー取付け構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、背もたれにハンガー装置を取付けている椅子において、前記ハンガー装置は、前記背もたれの上部に内蔵された部分を有するベースブラケットと、前記背もたれの後ろ側に露出したハンガー体とを備えており、前記ベースブラケットは背もたれの背面部に突出したハンガー受け部を有しており、前記ハンガー受け部に前記ハンガー体を設けている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記背もたれの上部には後ろ向きに突出するオーバーハング部を設けており、前記オーバーハング部の後端に下向き張り出し部を設けることにより、背もたれの上部に下向き開口の上部空間を設けており、かつ、前記ベースブラケットは前記背もたれの上部空間から後ろ向きに露出している。請求項2の発明の具体例として、請求項3では、前記背もたれは、前記オーバーハング部を有する背板と、前記背板のうちオーバーハング部より下方の部位の後ろに配置したシェル状のバックサポートとを有しており、前記ハンガー装置におけるベースブラケットの一部が、前記バックサポートとオーバーハング部との間に介在している。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記ベースブラケットは金属製であってハンガー体と別体に構成されており、前記ベースブラケットのハンガー受け部に前記ハンガー体を高さ調節可能に取り付けている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、ベースブラケットは背もたれの後ろに露出しているため、例えば上面が表皮材で覆われた背もたれにも適用できる。また、ベースブラケットのうち外側から視認できない部分は外観を考慮することなく専ら強度を考慮した設計とすることができるため、ベースブラケットを背もたれの内部にしっかりと保持することが可能になるため、背もたれの背面に固定した場合に比べて取付け強度を高めることも可能になる。
【0012】
請求項2の発明によると、背もたれのうちベースブラケットの取り付け部はオーバーハング部で隠れているため、ハンガー装置を取り外した後にベースブラケットの取付け部が露出することはなく、このためハンガー装置を使用しないことに起因して外観が悪化することはない。また、ハンガー装置の使用状態でベースブラケットはハンガー受け部が露出しているだけであるため、露出部分をできるだけ少なくしてスッキリさせることができる利点もある。
【0013】
請求項3のように構成すると、ハンガー装置のベースブラケットは、背板のオーバーハング部とバックサポートとで挟むことで離脱不能に保持し得る。このため、ビス等のファスナーを使用することなく強固に固定できる。従って、ビスのようなファスナの紛失の問題を防止可能である。また、ビスを使用しない場合は、ビスの回転操作の手間も軽減できる。請求項4の発明によると、ハンガー体を高さ調節できるため融通性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】椅子の外観図であり、(A)はハンガー装置を取り付けた状態での側面図、(B)はハンガー装置を省略した状態で後ろから見た斜視図、(C)はハンガー装置を取付けた状態での部分背面図である。
【図2】(A)は背もたれの一部省略斜視図、(B)は背もたれを後ろから見た一部省略斜視図、(C)は背もたれの一部省略分離側面図、(D)は一部省略背面図である。
【図3】背もたれの分離斜視図である。
【図4】(A)(B)とも背もたれの分離斜視図である。
【図5】メインメンバーを裏返してバックサポートと並べた正面図である。
【図6】(A)はメインメンバーとバックサポートとの分離斜視図、(B)はバックサポートの下部の部分斜視図、(C)はメインメンバーの下部の部分斜視図である。
【図7】背もたれの上部の縦断側面図である。
【図8】(A)は背板の分離斜視図、(B)はバックサポートを表示した状態での背板の分離斜視図である。
【図9】(A)は要部の分離背面図、(B)は要部の分離側面図である。
【図10】(A)は要部の斜視図、(B)は要部の分離斜視図である。
【図11】要部の後方からの分離斜視図である。
【図12】(A)はハンガー装置を取り付けた状態での後方からの一部省略斜視図、 (B)はハンガー装置の分離斜視図である。
【図13】(A)はハンガー装置の分離斜視図、(B)(C)(D)はハンガー装置の構成部材の斜視図である。
【図14】ハンガー装置を取り付けた状態での図7と同じ縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用に多用されている回転式ロッキング椅子に適用している。本願では方向を特定するため「前後」「左右」といった文言を使用するが、これは普通の姿勢で着座した人の向きを基準にしている。正面視は着座した人と対向した方向になる。
【0016】
(1).椅子の概要
まず、主として図1〜図3を参照して椅子の概要を説明する。図1に示すように、椅子は大きな要素として脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は放射方向に延びる枝足を有しているが図示は省略しており、ガスシリンダよりなる脚支柱4のみを表示している。脚支柱4の上端にはベース5が固定されており、ベース5の上方に座2が配置されている。
【0017】
図2(A)に示すように、背もたれ3は、着座者の体圧がかかるシェル状の背板(背インナーシェル)6と、背板76が取付けられたシェル状のバックサポート(背アウターシェル)7とを有しており、背板6の前面に背クッション8が張られている。背クッション8は織地や編地等から成る表皮材9で前から覆われている。バックサポート7の背面にもクロス等より成るバック張地10が張られている。
【0018】
背板6はバックサポート7の手前に配置されたメインメンバー11と、メインメンバー11の上に重ね配置されたトップメンバー12との2つの部材(パーツ)とで構成されている。両メンバー11,12はのトップメンバー12は前後に開口した多数の凹所を有する。そして、成形品であり、トップメンバー12には前向きに開口した多数の凹所と後ろ向きに開口した多数の凹所を有する。メインメンバー11の前面とトップメンバー12の前面は滑らかに連続している。従って、着座した人は違和感なく凭れる掛かることができる。
【0019】
背板6におけるメインメンバー10の上端とバックサポート7の上端とは略同じ高さになっており、背板6のトップメンバー11はバックサポート7の上面に重なっている。そして、背板6を構成するトップメンバー11は、バックサポート7の上部後方に折り返したようなオーバーハング部13を有しており、従って、トップメンバー11はおおよそ下向き開口U字に近い側面視形態になっていると共に、左右両端にはサイド凹所14が開口している。
【0020】
図2に明示するように、バックサポート7の下端には前向きに延びる左右一対のアーム7aが一体に形成されており、左右のアーム7aはベース5に連結されている。バックサポート7の下部の背面にはロアカバー15が装着されている。詳細は省略するが、背もたれ3が後傾動すると座2は上昇しつつ後退動する。背もたれ3はハンガー装置16を備えている。ハンガー装置16は、バックサポート7とトップメンバー12とで離脱不能に保持されている。ハンガー装置16の説明に先立って背もたれ3の構造を説明する。
【0021】
(2).背もたれの基本構造
例えば図2から理解できるように、バックサポート11と背板6とは上端の横幅より下端の横幅が小さく、従って、両者とも正面視で逆台形の形状を成している。また、背板6は平面視では前向き凹状に湾曲しており、また、側面視では前向き凸の形態を成していてランバーサポート部を有している。
【0022】
例えば図2から理解できるように、メインメンバー11の左右側縁及び下端と、トップメンバー12の左右側縁及び後端とには外向きの突条18が形成されており、突条18で囲われた部位に背クッション8を配置している。従って、背クッション8と表皮材9とはトップメンバー12におけるオーバーハング部13の背面下端まで延びている。表皮材9の周縁にはテープ状の縁部材19(図7参照)が固定されており、縁部材19をメインメンバー11及びトップメンバー12の裏部に設けたキャッチ突起20に嵌合させている。縁部材19はその弾性に抗してキャッチ突起20に嵌脱させることができ、従って、ユーザーであっても表皮材9を簡単に交換できる。
【0023】
図3から理解できるように、バックサポート7のうちアーム7aを除いた部分は背板6のメインメンバー11と略相似形になっており、図4(B),図5,図6に示すように、バックサポート7の前面には、アーム7aに連続する左右一対ずつの内側縦リブ21及び外側縦リブ22が前向きに突設されており、内側縦リブ21は左右横長のロアリブ23に連続している。左右の側縦リブ21,22の上端は上部水平リブ24に連続している。内外縦リブ21,22は補強機能を有すると共に、背板6の取付け機能も果たしている(この点は後述する)。
【0024】
背板6はバックサポート7に簡単に着脱できる。この点を主として図5,6に基づいて説明する。背板6を構成するメインメンバー11はバックサポート7に左右ずれ不能に保持する必要がある。そこで、メインメンバー11の左右両側部と下部とに略角形の位置決め突起26,27を後ろ向きに突設して、上部位置決め突起26はバックサポート7に設けた左右一対の上部挟持体28の間に嵌め入れ、下部位置決め突起27はバックサポート7における内外縦リブ21,22の間に嵌め入れている。
【0025】
また、メインメンバー11を前向き移動不能に保持する手段として、メインメンバー11のうち上部位置決め突起26の外側に上部係合体29を後ろ向きに突設し、この上部係合体29の先端部に平面視で傾斜した上部係合爪29aを一体に設けている一方、バックサポート7の前面には、上部係合爪28が引っ掛かる平面視L形の上部係合受け部30を形成している。
【0026】
上部係合爪29aはメインメンバー11に手前に行くほど左右外側にずれるように平面視で傾斜したヒレ状の形態であり、このため、撓み変形し得る(弾性に抗して窄まり変形し得る。)。上部係合爪29aは、下降動することで上部係合体30に係合することもできるし、手前から押して弾性変形させることによって上部係合体30に係合させることもできる。
【0027】
メインメンバー11の背面のうち下部位置決め突起27より下方の下端部には、下部係合体32を後ろ向きに突設しており、この下部係合体32に、平面視で傾斜した左右一対の下部係合爪32aを一体に設けている。左右の下部係合爪32aはヒレ状(舌状)の形態であり、両者は先端に行くほど互いの間隔が広がるように傾斜している。すなわち、下部係合体32は矢印形の形態になっている。下部係合爪32aもその付け根を中心に回動するように弾性変形し得る。
【0028】
メインメンバー11の下部係合体32は、バックサポート7における内外縦リブ21,22の間の溝に入り込む。そして、内外の縦リブ21,22に、下部係合爪32aが後ろ側から当接する左右一対の下部係合受け部33を相対向するように形成している。下部係合爪32aも、上からのずらし移動によって下係合受け部33に係合させることが可能であると共に、図6(B)に矢印Aで示すように前方からの押し込み動によって下部係合受け部33に係合させることも可能である。
【0029】
背板6のメインメンバー11は、その上端においてもバックサポート7に対して左右動不能及び下向き移動不能に保持されている。すなわち、メインメンバー11の上端のうち左右両端寄り部位に後ろ向きの上端突起34と、上端突起34に連続した上下開口の上枠部35とを後ろ向きに突設している一方、バックサポート7には、上端突起34が嵌まる上端凹部36と、上枠部35が上から嵌まる内枠部37とが形成されている。メインメンバー11の上枠部35は前後のバー35a,35bを有している一方、バックサポート7の内枠部37には、前後バー35a,35bの間に位置する上向き突起37aを設けている。
【0030】
メインメンバー11のうち上枠部35の下方の部位には、トップメンバー12をメインメンバー11に離脱不能に保持するためのアッパー係合爪38を設けている。アッパー係合爪38はその下端を中心にして前後回動するように撓み変形する。かつ、アッパー係合爪38がバックサポート7の内枠部37に下方から当接することにより、背板6は上向き離脱不能に保持されてる。
【0031】
バックサポート7のうち内枠部37の下方の部位には、アッパー係合爪38を操作するレバー39(図8参照)が配置される前後開口の下枠部40を設けている。下枠部40はレバー39を回動自在に装着する支軸41(図6(A)参照)を有している。詳細な説明は省略するが、背もたれ3の裏側からトップメンバー12のオーバーハング部13の内部に指を下方に差し入れ、レバー39の下端に指先を当てて後ろに引くと、アッパー係合爪38は、その上端が前方に移動して内枠部37から離脱するように回動し、これにより、トップメンバー12をメインメンバー11から取り外すことができる。
【0032】
また、トップメンバー12をメインメンバー11に重ね配置すると、アッパー係合爪38は、その上端が手前に移動するようにその弾性に抗していったん撓み変形してから元の姿勢に戻り変形し、すると、アッパー係合爪38の上端がバックサポート7における内枠部37の下方に位置する。その結果、背板6は上向き離脱不能に保持される。
【0033】
(3).連結構造
次に、主として図7及び図8に基づいて、メインメンバー11とトップメンバー12との連結構造及びトップメンバー12とバックサポート7との関連を説明する。図8(B)に示すように、メインメンバー11の上端とバックサポート7の上端とには、前後に重なると共に上面が同一面を成す後ろ向き突出部42,43を有しており、メインメンバー11の後ろ向き突出部に位置決め穴44が上下に開口している。
【0034】
他方、トップメンバー12は、平面視でメインメンバー11及びバックサポート7の後ろ向き突出部42,43と重なる中間段部45を有しており、中間段部45に、メインメンバー11の位置決め穴44に嵌合する位置決め突起46を設けている。また、中間段部45には後ろ向き突出部42,43に上から当接するリブ47も設けている。トップメンバー12のオーバーハング部13は、中間段部45より下方に突出した下向き張り出し部13aを有している。下向き張り出し部13aはオーバーハング部13の左右全長にわたって延びており、下向き張り出し部13aの手前には、下方と左右側方とに開口した上部空間が空いている。
【0035】
図8(A)や図4(A)に示すように、トップメンバー12のうち左右の位置決め突起46の内側には、中間段部45と下向き張り出し部13aとに繋がったガイドリブ48を設けている。ガイドリブ48の前面は側面視で鉛直線に対して前傾するように傾斜しており、背もたれ3を組み立てた状態では、ガイドリブ48はバックサポート7における内枠部37の後ろに位置している。
【0036】
そして、背もたれ3の組み立てに際しては、図2(C)や図3に示すように、メインメンバー11にトップメンバー12を装着して構成された背板6をバックサポート7に上から重ねてながら取付けるが、その取付けに際して、トップメンバー12のオーバーハング部13をバックサポート7に重ねるように下降動させると、ガイドリブ48がバックサポート7における内枠部37の後面に当たることで、背板6はバックサポート7に重なるように後ろ向きに移動していき、背板6を下降動させ切ると、位置決め突起46が位置決め穴44に嵌合すると共に、上下係合体29,32が係合受け部30,32に嵌合する。
【0037】
上下係合体29,32が係合受け部30,32に嵌合していない場合は、メインメンバー11を後ろに押しつけると、上下係合体29,32は係合爪29a,32aが弾性変形することで係合受け部30,32に係合する。例えば図8(A)に示すように、トップメンバー12の左右両側部には、突条18に連続した下向き突起49が形成されている一方、メインメンバー11における突条18の上端部は上向き開口の筒部50と成しており、下向き突起49を筒部50に嵌合させている。
【0038】
例えば図3に明示するように、バックサポート7の上端部のうちその左右両端には、トップメンバー12のサイド凹所14に嵌る耳部51を設けている。トップメンバー12は高さが高いタイプとの2種類が用意されており、高さが高いトップメンバー12を使用する場合は、図示しているように、耳部51に目隠し用のプラグ52を装着している。なお、トップメンバー12は3種類以上の高さのものを用意しておいて、任意に選択して使用することも可能である。
【0039】
(4).ハンガー装置
次に、主として図9以下の図面を参照してハンガー装置16を説明する(なお、図10に示すバックサポート7は図4〜図6に示すバックサポート7と前から見た上部の形状が少し相違するが、両者は本質的には同じである。)。例えば図9に示すように、ハンガー装置16は、バックサポート7とトップメンバー12との間に挟み保持されるベースブラケット54と、ベースブラケット54に装着したホルダー55と、ホルダー55に高さ調節可能に取付けたハンガー体56とを有している。以下、詳述する。
【0040】
例えば図11に示すように、ベースブラケット54は、バックサポート7の後ろ向き突出部43に上から重なる上板54aと、バックサポート7の後ろ向き突出部43の後ろに位置する鉛直部54bと、鉛直部54bの下端から後ろ向きに突出した下板54cと、下板54cの後端から上向きに突出してハンガー受け部54dとを有しており、全体的には上向き開口のコの字形(樋形)になっている。
【0041】
ベースブラケット54の上板54aには左右横長のロッド57を溶接によって固着している一方、バックサポート7の後ろ向き突出部43には、ロッド57が前から嵌まる側面視前向きの鉤片58を一対ずつ上向きに突設している。また、ベースブラケット54の垂直部54bの前面には、バックサポート7における後ろ向き突出部43の背面に重なる左右横長の羽根板59を溶接している。ロッド57は平面視で前向き凹状(或いは後ろ向き凸形)に屈曲しており、このため安定性に優れている。ベースブラケット54の上板54aの前端には、ロッド57をしっかり位置保持するため上向きのリップを曲げ形成している。
【0042】
バックサポート7の後ろ向き突出部43には、羽根板59の左右両端部が左右動不能及び上下動不能に嵌まる枠部(凹所)60を設けている。なお、ベースブラケット54とロッド57と羽根板59とをまとめてベース部と呼ぶことも可能である。バックサポート7へのベースブラケット54の取付けは、背板6を取り外した状態で行われる。すなわち、ハンガー受け部57dが上になるように側面視で傾けた姿勢にして、まずロッド57を鉤片58に手前からはめ入れ、次いで、所定の姿勢に戻す、というごく簡単な手順でバックサポート7に取り付けられる。
【0043】
ベースブラケット54は前後左右及び上下にずれ不能に保持される。バックサポート7の後ろ向き突出部43には、ベースブラケット54の上板54aを左右ずれ不能に位置決めするリブ61が上向きに突設されている。また、図14に示すように、背板6を構成するトップメンバー12の内部には、ベースブラケット54の垂直部54bに後ろから当接又は密接する左右一対の押さえリブ62を設けている(図4(A)や図8も参照)。このため、ハンガー装置16は前倒れ不能に保持されている。
【0044】
本実施形態のように、ベースブラケット54に左右横長のロッド57と羽根板59とを固着すると、安定性を向上させることができる利点がある。また、羽根板59の左右両端とバックサポート7の枠部60には互いに連通する丸穴63a,63bを設けている。より高い締結強度を得たい場合は、この丸穴63a,63bを利用してビスで締結することも可能である(ビスは手前から羽根板59にねじ込んでもよいし、枠部60の手前のポケット部に装着したナットに後ろからねじ込んでもよい。)。
【0045】
例えば図13に示すように、ホルダー55は、ベースブラケット54のハンガー受け部54dに取付けられたホルダー本体64と、このホルダー本体64に手前から装着したストッパー65とで構成されている。両者は樹脂成形品である。図13(C)や図14に示すように、ホルダー本体64の前部には、ベースブラケット54のハンガー受け部54dに手前から重なる上下の前枠部66と、ベースブラケット54のハンガー受け部54dに後ろから重なる後ろ枠部67とを設けており、かつ、ホルダー本体部64はベースブラケット54のハンガー受け部54dに上から当接する天板68を有する。
【0046】
また、図14に示すように、ベースブラケット54におけるハンガー受け部54dの下部には正面視角形の係合穴70を設けている一方、ホルダー本体64には係合穴70に下方から突っ張り嵌合する係合爪71を設けており、これにより、ホルダー55を上向き抜け不能に保持している。係合爪71は上に行くほど前にずれるように傾斜しており、このため、ホルダー本体64をハンガー受け部54dに上から嵌め込むと、係合爪71はいったん後ろに倒れるように変形してから戻り変形して係合穴70に嵌合する。
【0047】
図14から理解できるように、ホルダー本体64の上下前枠部66と後ろ枠部67及び係合爪71は上下方向にずれており、前後方向から見て重複していない。換言すると、上下前枠部66の間と下部前枠部66の下方とは開放されている。これは、図14の状態で左右方向に相対動する金型を使用してホルダー本体64を製造するにおいて、型抜きを容易ならしめるためである。
【0048】
例えば図14に示すように、ホルダー55を構成するホルダー本体64の後面部には、平面視で左右外側に突出した鉤部72を多段に設けている一方、ハンガー体56は足部56aを有する正面視T形に形成されており、足部56aに、ホルダー本体64の鉤部72に嵌合する蟻溝73を設けている。このため、ハンガー体56は前後ずれ不能で上下動のみにする状態でホルダー55に取付けられている。左右の蟻溝73は連続しており、このため、足部56aには前向き開口の凹溝74が開口している。
【0049】
例えば図13(A)(B)に示すように、ストッパー65の左右両側部には前向きに突出した係合爪75を突設している一方、ホルダー本体64には、係合爪75が嵌合する係合穴76を設けている。従って、ストッパー65は押し付けるだけでホルダー本体64に取付けできる。また、ホルダー本体64とストッパー65との間には弾性体の一例としてゴム77を介在させている。このため、ストッパー65は後ろきに付勢されている。更に、ストッパー65には、ハンガー体56の蟻溝73に嵌まるフラップ78を左右外向きに突設している。
【0050】
ハンガー体56における足部56aの凹溝74には、ハンガー体56の上下高さを規制する上昇位置規制突起79と、ハンガー体56を上限高さ位置に保持する抜け止め突起80とを上下に隔てて設けている。他方、ストッパー65の後面には、上昇位置規制突起79に下から当接し得る上突起81と、抜け止め突起76に下方から当接し得る下突起82とを設けている。
【0051】
ストッパー65の上昇位置規制突起79とハンガー体56の上突起81とは側面視で上下両面とも傾斜した山形になっている。他方、抜け止め突起80は、下面は傾斜しているが上面は略水平状になっており、また、ストッパー65の下突起82は、上面は傾斜しているが下面は略水平状になっている。
【0052】
図14ではハンガー体56を下降させた状態を描いており、この状態でハンガー体56は凹溝74の状態がホルダー本体54の上端に当たることで下降動不能に保持されている。他方、ハンガー体56を上向きに引き上げると、ハンガー体56の上突起81は、ストッパー65をゴム77の弾性に抗して前向きに押し遣ることにより、ストッパー65の抜け止め突起76と上昇位置規制突起79とを乗り越えていく。そして、上突起81が上昇位置規制突起79を乗り越え切ると、ハンガー体56の下突起82がストッパー65の抜け止め突起76に下方から当接し、これにより、ハンガー体56は上昇位置でずり下がり不能に保持される。
【0053】
上昇位置のハンガー体56は、ある程度の力を掛けて下向きに押すと図14の状態に下降させることができる。また、ストッパー65は、その下端に指先を当てたりマイナスドライバーを当てたりすることにより、手前に回動させることができる。これにより、ハンガー体56を取り外すことができる。また、ホルダー55は、係合爪71を下方からマイナスドライバのような薄いもので後ろに倒し回動させることにより、ベースブラケット54から取り外すことができる。
【0054】
(5).まとめ・その他
以上の説明のとおり、ハンガー装置16は、背板6を取り外した状態でバックサポート7に上からセットすることができ、そして、背板6をバックサポート7に取り付けるとハンガー装置16は離脱不能に保持される。従って、ビスを使用しなくても、ハンガー装置16を背もたれ3に強固に取付けできる(ビスを使用すると、より一層強固に固定できる。)。また、左右方向に長いロッド57や羽根板59の存在によって安定性を向上できるが、ロッド57や羽根板59は背もたれ3の内部に隠れていて外部からは視認できないため、美観を損なうことなく高い安定性(取付け強度)を確保することができる。
【0055】
本実施形態ではベースブラケット54がバックサポート7と背板6とで挟まれているが、ベースブラケット54をバックサポート7における後ろ向き突出部43の内部に固定することも可能である(すなわち、ベースブラケット54は必ずしも背板6で挟む必要はない。)。
【0056】
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば適用対象は回転椅子に限定されず、固定式椅子などの各種の椅子に適用できる。また、背もたれがロッキングしない椅子にも適用できることはいうでもない。ハンガー装置は何らかの物を掛ける機能があれば足りるのであり、従って、衣類の他にも、タオルやショール、マフラー、帽子、傘など様々な物品を掛けることができる。高さ調節式にする場合、3段階以上の高さに段階的に調節することや、無段階に高さ調節することも可能である。
【0057】
更に、本願発明は、背板が一体構造になっている背もたれにも適用できる。また、バックサポートを備えていない背もたれにも適用できる。オーバーハング部をバックサポートに設けることも可能である。更に、背もたれにオーバーハング部を設ける場合、必ずしも下向き張り出し部を設ける必要はなく、ハンガー装置のベースブラケットをオーバーハング部の下面から後ろ側に露出させたらよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0059】
3 背もたれ
6 背板
7 バックサポート
11 背板を構成するメインメンバー
12 背板を構成するトップメンバー
13 トップメンバーのオーバーハング部
16 ハンガー装置
43 バックサポートの後ろ向き突出部
54 ベースブラケット
55 ホルダー
56 ハンガー体
56a 足部
57 ロッド
58 鉤部
59 背板
64 ホルダー本体
65 ストッパー
72 鉤部
73 蟻溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれにハンガー装置を取付けている椅子であって、
前記ハンガー装置は、前記背もたれの上部に内蔵された部分を有するベースブラケットと、前記背もたれの後ろ側に露出したハンガー体とを備えており、前記ベースブラケットは背もたれの背面部に突出したハンガー受け部を有しており、前記ハンガー受け部に前記ハンガー体を設けている、
椅子。
【請求項2】
前記背もたれの上部には後ろ向きに突出するオーバーハング部を設けており、前記オーバーハング部の後端に下向き張り出し部を設けることにより、背もたれの上部に下向き開口の上部空間を設けており、かつ、前記ベースブラケットは前記背もたれの上部空間から後ろ向きに露出している、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記背もたれは、前記オーバーハング部を有する背板と、前記背板のうちオーバーハング部より下方の部位の後ろに配置したシェル状のバックサポートとを有しており、前記ハンガー装置におけるベースブラケットの一部が、前記バックサポートとオーバーハング部との間に介在している、
請求項2に記載した椅子。
【請求項4】
前記ベースブラケットは金属製であってハンガー体と別体に構成されており、前記ベースブラケットのハンガー受け部に前記ハンガー体を高さ調節可能に取り付けている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−135489(P2012−135489A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290790(P2010−290790)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)