説明

椅子

【課題】カバー部材の両側部が、背板に対して位置ずれしたり、簡単に外れたりするのを防止しうるようにした椅子を提供する。
【解決手段】脚と、脚に取付けられた左右1対の上下方向を向く背凭れフレーム8と、左右の背凭れフレーム8の前面に両側部の後面が支持され、かつ両側部に前後方向に貫通する上下複数の凹孔21を設けた背板9と、背板の前面を覆う前カバー部14を有し、かつ前カバー部14の両側部の後面に突設した上下複数の突起19を、背凭れフレーム8の前方において凹孔21に嵌合したカバー部材13とを備える椅子とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背板の前面にカバーを取付けてなる椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の椅子には、背板の前面に、伸縮性の素材からなるカバー部材を装着したものがある(例えば特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許6499810号明細書(Fig9〜11)
【特許文献2】特表2003−521956号公報(図1B、図1C、図2B)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているカバーの取付構造では、伸縮性の素材からなるカバー部材が、上下方向に伸ばされて、その上下部が背板に取り付けられているため、カバー部材の左右両側縁が背板の左右両側縁の内側となり、カバー部材の左右両側縁と背板の左右両側縁とを一致させるのが難しい。
【0005】
また、特許文献2に記載されているカバーの取付構造では、伸縮性の素材からなるカバー部材が、上下方向および左右方向に伸ばされて、背板の裏側でカバー部材の四方向の端部がそれぞれ取付けられているため、装着後のカバー部材の両側部が、背板の両側部に対して、上下および内外に位置ずれすることがある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題に鑑み、カバー部材の左右両側縁を、背板の左右両側縁の前方に正確に一致させることができ、かつ、背板へのカバー部材の取付け、および取外しを簡単に行うことができ、さらには、カバー部材の両側部が、背板に対して位置ずれしたり、簡単に外れたりするのを防止しうるようにした椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)脚と、この脚に取付けられた左右1対の上下方向を向く背凭れフレームと、この左右の背凭れフレームの前面に両側部の後面が支持され、かつ両側部に前後方向に貫通する上下複数の凹孔を設けた背板と、この背板の前面を覆う前カバー部を有し、かつ前記前カバー部の両側部の後面に突設した上下複数の突起を、前記背凭れフレームの前方において前記凹孔に嵌合したカバー部材とを備える椅子とする。
【0008】
このような構成によると、前カバー部の両側部の後面に突設した突起を、背板の凹孔に嵌合することにより、カバー部材を、背板に簡単かつ迅速に取付けることができるとともに、簡単に取外すことができる。
また、左右の背凭れフレームの前面により背板の両側部の後面が支持され、かつ背凭れフレームの前方において背板の両側部に設けた凹孔に、前カバー部の両側部に突設した突起を嵌合しているので、凹孔及びそれに嵌合した突起は、背凭れフレームにより後方より覆われる。従って、椅子の背凭れが家具や壁面等に当たっても、突起には当たる恐れはなく、突起が凹孔より離脱して、カバー部材が背板より簡単に外れてしまうのを防止することができる。
さらに、凹孔及びそれに嵌合した突起が背凭れフレームにより後方より覆われているので、体裁がよい。
【0009】
(2)上記(1)項において、突起の前後寸法を、凹孔の前後寸法よりも短寸とする。
【0010】
このような構成によると、突起は凹孔の後方に突出しないので、突起に他物が当接して、これが凹孔より離脱する恐れがより小さくなる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)項において、前カバー部の両側部の内面に、上下方向を向く補強プレートを取付け、この補強プレートの後面に、上下複数の突起を、前記前カバー部に設けた上下複数の係合孔を貫通させて突設する。
【0012】
このような構成によると、カバー部材の両側部の内面に補強プレートを設け、この補強プレートの後面に、上下複数の突起を、前カバー部に設けた上下複数の係合孔を貫通させて突設しているので、カバー部材の両側縁を、背板の両側縁の前方に、正確に一致させることができるとともに、突起と凹孔とを正確に一致させて嵌合することができる。
【0013】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、突起の先端部に、左右方向に突出する係合爪を設け、この係合爪を、対応する凹孔の内側面における奥行方向中間部に設けた拡幅段部に係止させる。
【0014】
このような構成によると、カバー部材が背板から容易に外れるのを確実に防止することができる。
【0015】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、上下複数の凹孔を、背板の前面に設けた多数の開口のうち、背板の両側部に配置したものにより形成する。
【0016】
このような構成によると、凹孔を、背板に設けた開口の一部と共用できるので、別途凹孔を設ける必要がなく、背板の製造工程を短縮することができる。
【0017】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、凹孔及び突起を、縦長のものとする。
【0018】
このような構成によると、凹孔への突起の嵌合領域が上下方向に大となるので、カバー部材の両側部が、背板の両側部より外れにくくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カバー部材の左右両側縁を、背板の左右両側縁の前方に正確に一致させることができ、かつ、背板へのカバー部材の取付け、および取外しを簡単に行うことができ、さらには、カバー部材の両側部が、背板に対して位置ずれしたり、簡単に外れたりするのを防止しうるようにした椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を備える椅子の分解斜視図である。
【図2】カバー部材を背板に装着するときの状態を示す、斜め後方から見た斜視図である。
【図3】背板の正面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿う拡大横断平面図である。
【図5】補強プレートを後方より見た斜視図である。
【図6】折り返し部と補強プレートとの結合部分の変形例を示す一部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図4は、本発明の一実施形態を備える椅子を示す。
図1および図2に示すように、この椅子1は、先端にキャスタ2を備え、かつ放射状の配置とした5本の脚杆3と、全脚杆3の放射状の中心部に立設した脚柱4と、脚柱4の上端に設けた支基5と、支基5上に取り付けられた座板6と、支基5の両側面に取り付けられ、かつ座板6の左右両側方を通って起立する1対の肘掛7と、同じく支基5の両側面に取り付けられ、かつ後上方に延出した後、座板6の後方で所定の傾斜角をなして立上がり、かつ上端同士が連結部8aにより一体に連結された左右1対の背凭れフレーム8と、背凭れフレーム8に着脱可能に固定された背板9とを備えている。
【0022】
支基5には、座板6および肘掛7の高さ調節手段や、背板9の後傾角度を調節するためのリクライニング機構等(いずれも図示略)が設けられている。
【0023】
背板9の前面は、着座者の標準体型に応じて、側面視においてやや下部が前方に突出するほぼくの字形に形成されるとともに、平面視において、中央が後方へ凹入する形状に形成され、さらには、外周縁を除くほぼ前面に、図3に示すように、多数の縦長の開口10が、所定の繰返しパターンで設けられている。
【0024】
背板9は、その後面における両側上下部に設けた連結部12を、背凭れフレーム8の前面における両側上下部に設けた被連結部11に連結することにより、背凭れフレーム8の前面に、着脱可能として取付けられている。
この連結部12と被連結部11との連結構造は、本発明には直接関係しないので、その詳細な説明は省略する。
【0025】
図2に示すように、カバー部材13は、伸縮性の素材からなり、かつ背板8の前面形状とほぼ同一の正面形状をなす前カバー部14と、上縁と両側縁とが前カバー部14の上部の周縁に連設され、かつ前カバー部14との間に下方に向かって開口する上部袋部15aを形成する後上カバー部15と、下縁と両側縁とが前カバー部14の下部の周縁に連設され、かつ前カバー部14との間に上方に向かって開口する下部袋部16aを形成する後下カバー部16と、前カバー部の両側端より連設された後方への折り返し部17、17と、この各折り返し部17と前カバー部14との間に、外側部が挾入され、かつ後面に上記折り返し部17が縫着または接着剤により接着された上下方向を向く薄板状の補強プレート18、18とを備えている。
【0026】
各補強プレート18は、可撓性を有する合成樹脂材料により、背板9の両側部の外形と同一形状をなすように形成され、後面における折り返し部17が止着された部分より内側の部分に、後方を向く複数の縦長の突起19が、上下方向に所要の間隔をもって突設されている。
この突起19の上下間隔は、背板9における多数の開口10のうち、背板9の両側部に配置されたものにより形成された凹孔21の上下間隔と同一としてある。
【0027】
各突起19の先端部両側面には、突起19の基部に向かって拡開する鏃状の係合爪20が設けられており、それに対応する背板9の各凹孔21の内側面における奥行方向中間部には、各係合爪20が係止しうるようにした、後方に向かって拡幅する拡幅段部22が設けられている。
【0028】
しかして、カバー部材13は、図2に矢印で示すように、上部袋部15aを、背板9の上部に上方より被嵌し、次いで、下部を引き下げて、その下部袋部16aを、背板9の下部に下方より被嵌し、その後、左右の補強プレート18、18の各突起19を、対応する各凹孔21に前方より押し込み、各係合爪20を、各各凹孔21における拡幅段部22に係止させることにより、簡単かつ迅速に、背板に装着することができる。
【0029】
装着後には、前カバー部14の両側部は、左右の補強プレート18、18により、背板19の側縁と同一の形状を保つことができるので、前カバー部14を伸縮性素材により形成しても、両側縁部が内方に引き寄せられることがなく、常に美麗な外観を呈することができる。
【0030】
本発明は、上記の実施形態のみに制限されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、変形した態様での実施が可能である。
例えば、図6に示すように、折り返し部17に係合孔23を設け、これを補強プレート18の突起19に係合さてもよい。
そうすることによって、折り返し部17が補強プレート18から剥れ難くなり、折り返し部17を補強プレート18に縫着したり、接着したりするのを省略することもできる。
【0031】
また、凹孔21は、図示の例では、背板9を前後方向に貫通するものとしてあるが、後端が閉塞された有底孔としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 椅子
2 キャスタ
3 脚杆
4 脚柱
5 支基
6 座板
7 肘掛
8 背凭れフレーム
8a連結部
9 背板
10 開口
11 被連結部
12 連結部
13 カバー部材
14 前カバー部
15 後上カバー部
15a上部袋部
16 後下カバー部
16a下部袋部
17 折り返し部
18 補強プレート
19 突起
20 係合爪
21 凹孔
22 拡幅段部
23 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚と、
この脚に取付けられた左右1対の上下方向を向く背凭れフレームと、
この左右の背凭れフレームの前面に両側部の後面が支持され、かつ両側部に前後方向に貫通する上下複数の凹孔を設けた背板と、
この背板の前面を覆う前カバー部を有し、かつ前記前カバー部の両側部の後面に突設した上下複数の突起を、前記背凭れフレームの前方において前記凹孔に嵌合したカバー部材
とを備えることを特徴とする椅子。
【請求項2】
突起の前後寸法を、凹孔の前後寸法よりも短寸とした請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前カバー部の両側部の内面に、上下方向を向く補強プレートを取付け、この補強プレートの後面に、上下複数の突起を、前記前カバー部に設けた上下複数の係合孔を貫通させて突設した請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
突起の先端部に、左右方向に突出する係合爪を設け、この係合爪を、対応する凹孔の内側面における奥行方向中間部に設けた拡幅段部に係止させた請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。
【請求項5】
上下複数の凹孔を、背板の前面に設けた多数の開口のうち、背板の両側部に配置したものにより形成した請求項1〜4のいずれかに記載の椅子。
【請求項6】
凹孔及び突起を、縦長のものとした請求項1〜5のいずれかに記載の椅子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−210511(P2012−210511A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175586(P2012−175586)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2007−80781(P2007−80781)の分割
【原出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】