説明

椅子

【課題】背凭れ支持杆に嵌合した背凭れが上方に移動するのを、ねじ等の固定手段を用いることなく、かつ極めて少ない組付工数で簡単に防止しうるようにする。
【解決手段】座2を支持する脚体の後部より起立する背凭れ支持杆に、背凭れ3を、上方より嵌合して支持してなる椅子において、背凭れ3の下端部に、座2の後端部下方に向かって突出する突片19、19を設け、この突片19の上面に座2の後端部下面を当接させて、脚体の上部に座2を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れを、脚体より起立する背凭れ支持杆により支持するとともに、座を、脚体上部のほぼ水平をなす座支持杆により支持してなる椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の椅子は、脚体及び背凭れ支持杆が金属パイプを折曲して形成された簡易的なものが多く、会議室等において使用される。
このような従来の椅子の中には、例えば特許文献1〜3に記載されているように、背凭れの下部の左右両側部を、脚体の後部より起立する左右1対の背凭れ支持杆に嵌合して支持するとともに、座の少なくとも左右両側部下面を、脚体上部のほぼ水平をなす左右1対のパイプよりなる座支持杆により支持したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4441096号公報
【特許文献2】特許第3595714号公報
【特許文献3】特開2007−202591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3に記載されている椅子においては、いずれも、背凭れと座とが、それぞれ、背凭れ支持杆と座支持杆とに分離して個別に取り付けられており、かつ背凭れは、その下部の左右両側部が、脚体の後部より起立する左右1対の背凭れ支持杆に嵌合して支持されているので、背凭れが背凭れ支持杆より抜け外れたり、上下方向に位置ずれしたりしないように、背凭れと背凭れ支持杆とを、ねじ等の固定手段をもって固定する必要がある。
しかし、ねじ等の固定手段を用いると、背凭れと背凭れ支持杆とに、ねじの挿通孔やめねじ孔等を設ける必要があるので、加工工数が増えるとともに、背凭れの取付工数も増える。
また、ねじの頭部が外部に露呈するので、椅子の体裁が悪くなる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、背凭れ支持杆に嵌合した背凭れが上方に移動するのを、ねじ等の固定手段を用いることなく、かつ極めて少ない工数で簡単に防止しうるようにした椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)座を支持する脚体の後部より起立する背凭れ支持杆に、背凭れを、それに設けた下方に開口する取付孔を上方より嵌合して支持してなる椅子において、前記背凭れの下端部に、前記座の下方に向かって突出する突片を設け、この突片の上面に前記座の後端部下面を当接させて、前記脚体の上部に座を支持する。
【0007】
このような構成とすると、背凭れの下端部の突片の上面が、脚体に支持された座の後端部下面により押さえ付けられるので、背凭れを背凭れ支持杆に上方より嵌合したのみでも、背凭れが上方に移動する恐れはなく、従って、ねじ等の固定手段を用いて背凭れを固定する必要がない。
また、背凭れの下端部の突片の上面に、座の後端部下面を当接させるだけの極めて少ない工数で、背凭れの上方への移動を簡単に防止することができる。
【0008】
(2)上記(1)項において、背凭れ支持杆を、座の両側方において起立する左右1対のものとし、両背凭れ支持杆に、下端に下向突部が連設された背凭れの左右両側部を、それに設けた前記下向突部の下方に開口する取付孔を上方より嵌合し、かつ前記左右の下向突部の下端部に突設した突片の上面に、座の後両側部下面を当接させる。
【0009】
このような構成とすると、左右1対の背凭れ支持杆により、背凭れを安定よく支持しうるとともに、左右の下向突部の下端部に突設した左右1対の突片の上面が、座の後両側部下面により押さえ付けられるので、背凭れが左右方向にぐらつく恐れは小さく、これが安定する。
【0010】
(3)上記(2)項において、左右の下向突部の対向面間または外側面間に、座の後端部を嵌合し、前記両下向突部の突片の上面に、前記座の後両側部下面を当接させる。
【0011】
このような構成とすると、座の後端部が、左右の下向突部により前後左右方向に位置決めされるので、脚体への座の取付けが容易となるとともに、座が左右方向に動くのが規制されるので、左右の突片が、座の両側部下面の定位置に当接し、突片が位置ずれして外れたりする恐れはない。
【0012】
(4)上記(2)または(3)項において、脚体における上下方向を向く左右1対の後部脚杆の上部同士を、左右方向を向く連結杆により連結し、前記左右の後部脚杆における前記連結杆より上方に突出する部分を、左右1対の背凭れ支持杆とする。
【0013】
このような構成とすると、脚体の後部の剛性が高まるとともに、後部脚杆の上部を背凭れ支持杆としているので、背凭れの支持強度が大となり、これがより安定する。
【0014】
(5)上記(4)項において、連結杆の両側部の上面に、背凭れにおける左右の下向突部の下面を当接させる。
【0015】
このような構成とすると、背凭れが上下方向に動くのが阻止されるので、背凭れがより安定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、背凭れの下端部の突片の上面が、脚体に固定した座の後端部下面により押さえ付けられるので、背凭れを背凭れ支持杆に上方より嵌合したのみでも、背凭れが上方に移動する恐れはなく、従って、ねじ等の固定手段を用いて背凭れを固定する必要がない。
また、背凭れの下端部の突片の上面に、座の後端部下面を当接させるだけの極めて少ない工数で、背凭れの上方への移動を簡単に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態の椅子の正面図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】同じく、斜視図である。
【図4】同じく、分解斜視図である。
【図5】図2のV−V線に沿う要部の拡大縦断正面図である。
【図6】同じく、VI−VI線に沿う拡大縦断正面図である。
【図7】背凭れの下部を斜め下方より見た拡大斜視図である。
【図8】座の後部と背凭れの下部とを連係させた状態を、下方より見た拡大斜視図である。
【図9】図1のIX−IX線に沿う拡大縦断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の椅子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、本発明の第1の実施形態の椅子は、脚体1、座2、背凭れ3、及び左右1対の肘掛け4、4を備えている。
【0019】
脚体1は、金属パイプを側面視ほぼ台形状に折曲して形成された左右1対の側脚5、5と、この左右の側脚5、5の前上端部の対向面同士を連結する側面視U字状断面(図9参照)の板金製の前部連結杆6と、同じく、左右の側脚5、5の後上端部同士を連結する、左右の側脚5、5間の左右幅よりも若干長寸の金属パイプよりなる後部連結杆7とからなっている。前部連結杆6の前上縁には、座2の前端部下面に係止可能な左右複数の係止片6aが、前向きに突設されている。
【0020】
左右の側脚5、5の上部における後方を向く上部脚杆5a、5aの後端部には、短寸の折曲部5b、5bが内向き対向状に連設され、この両折曲部5bの後面を、後部連結杆7の両側端部の前面下部に溶接することにより、左右の側脚5、5は、側面視ほぼ台形状に形成されている。なお、上記左右の上部脚杆5a、5aと、前部連結杆6と、後部連結杆7とにより、座2の下面を支持するほぼ水平かつ平面視方形枠状の座支持杆8が構成されている。
【0021】
左右の側脚5、5における上下方向を向く後部脚杆5c、5cの上部同士は、後部連結杆7により連結されている。すなわち、後部連結杆7の両側部に設けた上下方向の貫通孔7a(図5参照)に、後部脚杆5cの上部を挿通し、溶接等により固着することにより、後部脚杆5c、5cの上部同士が、後部連結杆7により連結されている。このようにして、後部脚杆5c、5cの上部同士を後部連結杆7により連結すると、後部脚杆5c、5cの左右位置を後部連結杆7により容易に位置決めしうるとともに、それらを強固に連結することができる。
後部連結杆7より上方に突出する部分は、背凭れ3の両側部を支持するための背凭れ支持杆9、9とされている。
【0022】
左右の上部脚杆5a、5aの後部と、左右の折曲部5b、5bとの下面には、座2の下面を脚体1に固定するための固定金具10が、座支持杆8の枠内に突出するようにして、溶接により固着されている。
後部連結杆7の左右の開口端部内には、肘掛け4の下端部を支持可能な非円形断面、すなわち角軸状の上向突部11aを有する正面視内向きL字状の肘掛け支持金具11、11が、圧嵌または溶接により固定されている(肘掛けの取付け要領については後述する)。
【0023】
座2は、硬質合成樹脂により形成された平面視方形枠状の座フレーム12と、この座フレーム12の内周面に外周縁を一体成形することにより、座フレーム12の枠内に張設された下方に弾性変形可能なメッシュ状の可撓性座板13とからなっている。座フレーム12の後端の左右方向の中央部には、座フレーム12の左右の後隅部に切欠部14、14を形成することにより、後向突部14aが連設されている。
【0024】
背凭れ3は、上記座2と同様に、正面視方形枠状をなす硬質合成樹脂製の背フレーム15と、その枠内に一体的に張設された後方に弾性変形可能なメッシュ状の可撓性背板16とからなり、背フレーム15の上下方向の中間部は、側面視において前向「く」の字状に湾曲されている。
背フレーム15における左右の側部フレーム15a、15aの下部には、上記座2の切欠部14、14に嵌合可能な左右1対の角形をなす下向突部17、17が一体的に突設されている。両下向突部17の下面は、後部連結杆7の両側端部に上方より嵌合しうるように、側面視上向円弧状の曲面とされている。
【0025】
図5及び図7に示すように、背フレーム15における左右の側部フレーム15a、15aの下部には、上述した左右の背凭れ支持杆9、9に嵌合可能な上下方向の取付孔18、18が、下向突部17、17を貫通して下方に開口するように形成されている。
【0026】
図6〜図8に示すように、左右の側部フレーム15a、15aにおける下向突部17、17の下端部のやや前部寄りの内側面には、上面が、座2の後両側部下面、すなわち上述した後向突部14aの両側部下面と当接することにより、背凭れ3の上方への移動を阻止する突片19、19が、互いに内向き対向状に突設されている。
【0027】
左右の肘掛け4、4は、上下方向を向く角柱状の取付基部4aと、この取付基部4aの上端に前向きとして連設され、後端部が若干外向きに折曲された平板状の肘当て部4bとからなり、全体が合成樹脂により一体成形されている。
図5に示すように、取付基部4aの下端部には、上記肘掛け支持金具11の上向突部11aに嵌合可能な下方に開口する四角形断面の取付孔20が形成され、同じく内側面には、成形材料を節約するために、上下複数の肉抜き凹部21が形成されている。
また、背凭れ支持杆9の上部の開口端部には、肘掛け4の取付基部4aをボルト止めするための左右方向を向くめねじ孔22が穿設された軸状の取付金具23の下端部が圧嵌されている。なお、このような取付金具23を取り付けないで、若干長寸とした背凭れ支持杆9の上部に、左右方向のめねじ孔を直接設けてもよい。
【0028】
椅子を組立てるには、まず、左右の背凭れ支持杆9、9に、背凭れ3における左右の側部フレーム15a、15aの下部の取付孔18を、両下向突部17の上向円弧状をなす下端面が後部連結杆7の両側端部の上面に当接するまで上方より嵌合し、背凭れ3を左右の背凭れ支持杆9、9により支持する。
【0029】
ついで、図5に示すように、左右の肘掛け支持金具11の上向突部11aに、肘掛け4における取付基部4aの下端部の取付孔20を、上方より嵌合して支持したのち、取付基部4aの上端部の段付孔24に外側方より挿入したボルト25を、側部フレーム15aの下部の側面に設けた通孔26に挿通して、背凭れ支持杆9の上端に取付けた取付金具23のめねじ孔22に螺合する。これにより、肘掛け4は、背凭れ3の側部フレーム15aの外側面に固定され、かつ同時に、背凭れ3の側部フレーム15aも、共通のボルト25により背凭れ支持杆9に固定される。
【0030】
上述のようにして、背凭れ3と肘掛け4を取付けたのち、図9に示すように、脚体1の前部連結杆6に前向き突設した左右複数の係止片6aに、座フレーム12の前端部後面に形成された後方に開口する左右複数の係合溝27を、前方より嵌合して係止し、座2全体を、その後端の後向突部14aが背フレーム15の下端部の下向突部17、17の対向面間に嵌合されるように、脚体1の上部の枠状をなす座支持杆8の上面に載置する。このようにして座2を座支持杆8に載置すると、上述したように、両下向突部17の下部対向面に突設した突片19、19の上面に、後向突部14aの両側部下面が当接する(図6、図8参照)。
【0031】
このように、座2の後端の後向突部14aを下向突部17、17の対向面間に嵌合されるようにすると、座2の後端部が、左右の下向突部17により前後左右方向に位置決めされるので、脚体1への座2の取付けが容易となるとともに、座2が左右方向に動くのが規制されるので、左右の突片19が、座2の両側部下面の定位置に当接し、突片19が位置ずれして外れたりするのを防止することができる。なお、座2の後端に前方に凹入する凹部を設け、この凹部を、左右の下向突部17、17の外側面間に嵌合して、座2の後端部を左右の下向突部17により前後左右方向に位置決めするようにしてもよい。
【0032】
上記のようにして、座2を位置決めした状態で、左右の上部脚杆5a、5aの後部と、左右の折曲部5b、5bの下面とに固着した4個の固定金具10に、座フレーム12の後両側部下面と、前後方向の中間部の両側部下面とを、下方より挿入したねじ28により固定する(図9参照)。これにより座2は、脚体1の上部に安定よく取り付けられる。
脚体1の上部に座2を固定すると、図6に示すように、背フレーム15における左右の下向突部17の下部対向面に突設した突片19、19の上面に、座フレーム12の後端部の両側部下面が圧接して、左右の下向突部17の下端部が上方より押え付けられる。従って、たとえ、ボルト25が弛んだとしても、背凭れ3が上方に移動したり、上下方向にがたついたりするのが防止される。なお、座2に着座すると、座2には下向き荷重が加わり、この下向き荷重により左右の突片19が座2の後端部により押え付けられるので、座2を脚体1の上部に載置して支持するのみとしてもよい。
【0033】
図10は、本発明の椅子の第2の実施形態を示すもので、この椅子は、上記第1の実施形態の椅子より、肘掛け4のみを取り外したものである。
肘掛け4を取り外すと、背凭れ支持杆9と背凭れ3とがボルト25により固定されなくなるが、上述したように、背凭れ3の左右の下向突部17の下端部に突設した突片19が、座フレーム12の後端部の両側部下面により押え付けられているので、背凭れ3が上方に移動したり、上下方向にがたついたりすることはない。なお、背凭れ3の側部フレーム15aに設けた通孔26は、キャップ29を嵌合して目隠しすればよく、また、後部連結杆7の左右の開口端部に肘掛け支持金具11を取付ける必要がなくなるので、両開口端部にもキャップ29を止着して目隠しすればよい。
【0034】
なお、背凭れ3の下端部に設ける突片19の位置や数、及び突片19と座2の後端部下面との当接位置等は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 脚体
2 座
3 背凭れ
4 肘掛け
4a取付基部
4b肘当て部
5 側脚
5a上部脚杆
5b折曲部
5c後部脚杆
6 前部連結杆
6a係止片
7 後部連結杆
7a貫通孔
8 座支持杆
9 背凭れ支持杆
10 固定金具
11 肘掛け支持金具
11a上向突部
12 座フレーム
13 可撓性座板
14 切欠部
14a後向突部
15 背フレーム
15a側部フレーム
16 可撓性背板
17 下向突部
18 取付孔
19 突片
20 取付孔
21 肉抜き凹部
22 めねじ孔
23 取付金具
24 段付孔
25 ボルト
26 通孔
27 係合溝
28 ねじ
29 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座を支持する脚体の後部より起立する背凭れ支持杆に、背凭れを、それに設けた下方に開口する取付孔を上方より嵌合して支持してなる椅子において、前記背凭れの下端部に、前記座の下方に向かって突出する突片を設け、この突片の上面に前記座の後端部下面を当接させて、前記脚体の上部に座を支持したことを特徴とする椅子。
【請求項2】
背凭れ支持杆を、座の両側方において起立する左右1対のものとし、両背凭れ支持杆に、下端に下向突部が連設された背凭れの左右両側部を、それに設けた前記下向突部の下方に開口する取付孔を上方より嵌合し、かつ前記左右の下向突部の下端部に突設した突片の上面に、座の後両側部下面を当接させてなる請求項1記載の椅子。
【請求項3】
左右の下向突部の対向面間または外側面間に、座の後端部を嵌合し、前記両下向突部の突片の上面に、前記座の後両側部下面を当接させてなる請求項2記載の椅子。
【請求項4】
脚体における上下方向を向く左右1対の後部脚杆の上部同士を、左右方向を向く連結杆により連結し、前記左右の後部脚杆における前記連結杆より上方に突出する部分を、左右1対の背凭れ支持杆としてなる請求項2または3記載の椅子。
【請求項5】
連結杆の両側部の上面に、背凭れにおける左右の下向突部の下面を当接させてなる請求項4記載の椅子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate