説明

椅子

【課題】背座一体方式の椅子において、背もたれが無理なくできるだけ大きく後傾することを可能ならしめる。
【解決手段】座シェル板8と下部背シェル板9とは一体成形されており、下部背シェル板9の上端に上部背シェル板9が連結されている。シェル板8,9,10にはクッションがインサート成形されている。座シェル板8と下部背シェル板9との間には前向き開口U形のスリット15が形成されており、スリット15の前端部の横にヒンジ部14が存在している。座シェル板8はレール部材20を介してベース6に前後スライド自在に支持されており、ベース6に連結した背フレーム7にレール部材20と背シェル板9,10が取り付けてられている。座シェル板8と下部背シェル板9とが一体成形されているものでありながら、スリット15の存在により、背もたれ2は無理なく後傾する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれと座とが連続した外観を成しているロッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれと座とが連続した外観を成している椅子には、座シェル板と背シェル板とが一体に繋がっていて全体が露出したタイプと、座シェル板及び背シェル板にクッションを張ったタイプとがある。座シェル板と背シェル板とが露出したタイプは簡易構造であることが多く、ロッキング機能は備えていないことが多い。
【0003】
他方、シェル板にクッションを張ったタイプはロッキング機能を備えたものが多く、その例が特許文献1,2に記載されている。このうち特許文献1の椅子は、背もたれの後傾動によって座も後傾動するようになっているが、座の後傾の度合いより背もたれの後傾の度合いを大きくするため、座シェル板と背シェル板との境界部にスリットを設けて、座シェル板と背シェル板との境界部が容易に変形するように設定している。
【0004】
他方、特許文献2では、背もたれが後傾すると座は側面姿勢は殆ど変えずに若干ながら前進するように設定されており、そこで、背もたれの後傾動を許容するため、座シェル板と背シェルとに跨がって延びる2本のスリットを形成して、座シェル板と背シェルとの境界部が容易に変形するように設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−23620号公報
【特許文献2】特許第2592108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献1,2では、背シェル板は座シェル板との連接部の変形によって後傾するが、背シェル板を支持する背フレームの回動支点は背シェル板の下端よりも下方に位置しているのが普通であるため、背シェル板の後傾動を背フレームの後傾動に追従させることに限度があり、このため後傾角度をあまり大きくすることができないという問題があった。すなわち、背シェル板は、その屈曲支点と回動支点とが相違するため、無理なくロッキングさせにくいのであった。特に、ロッキング時に座は後傾せずに後退動のみするか又は固定的である場合は、背シェル板を無理なく後傾させ難くなる。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、背座一体方式の椅子であっても背もたれの後傾角度をできるだけ大きくして安楽性能を向上させようとするものである。更に、本願は椅子に関して改良された構成を多々含んでおり、これら改良された構成の提供も目的と成りうるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、座と背もたれとが一体に連続した外観を成しており、前記座又はその下方に配置されたベースに後傾動可能に連結された背フレームに前記背もたれを取り付けている椅子を対象にしている。
【0009】
そして、請求項1の発明では、前記座は上面にクッションが張られた樹脂製の座シェル板を有している一方、前記背もたれは前面にクッションが張られた樹脂製の背シェル板を備えており、前記背シェル板は全体が一体構造になっているか、又は、上下複数のパーツに分割されて互いに連結されており、前記座シェル板と前記背シェル板の下端とが左右端部のヒンジ部を介して繋がっており、前記ヒンジ部の変形により、前記背シェル板が前記座シェル板の後端に対して下降動することが許容されている。
【0010】
本願発明は多様に展開できる。その例を請求項2以下で記載している。このうち請求項2の発明は、請求項1において、前記座シェル板の後端と背シェル板の下端との間には、左右両端部が前後方向に長い平面視前向きに開口U字形又はコ字形スリットが介在しており、前記座シェル板の後端と背シェル板の下端とは、前記スリットの前端部の外側に位置したヒンジ部を介して一体に繋がっており、前記ヒンジ部は前記座シェル板の後端よりも手前に位置している。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記背シェル板における下部の左右両側縁部には、当該背シェル板の下部を変形し難くするサイドリブが形成されている。請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記座の下方に配置したベースに前記背フレームが後傾動自在に連結されており、前記座シェル板は、前記背フレームが後傾動すると後ろに引かれて後退動するように前記ベースに支持されている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、前記背シェル板は、前記座シェル板に一体に繋がった下部背シェル板とその上に重ね配置された上部背シェル板とに分離構成されており、これら上部背シェル板の下端と下部背シェル板の上端とが連結されており、更に、前記上部背シェル板と下部背シェル板とはそれぞれ前記背フレームに取り付けられている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、背シェル板は座シェル板の後端に対して相対的に下降動するため、背フレームの後傾中心(回動支点)を背シェル板の後端よりも下方(或いは手前)に位置させても、背もたれを無理なくロッキングさせることができる。すなわち、座と背もたれとの一体性を保持しつつ、背もたれをできるだけ大きな角度で無理なく後傾させ得るのであり、これにより、背座一体方式の椅子の快適性を向上できる。
【0014】
座シェル板と背シェル板とは別体に製造してピン等で連結することも可能であるが、請求項2のように座シェル板と背シェル板の下端とを一体に繋がった構成(すなわち、少なくとも背シェル板の下部と座シェル板とを一体成形した構成)を採用すると、部材管理の手間を軽減できると共に連結作業の手間を省くことができる利点がある。また、ヒンジ部は座シェル板の後端より手前に位置しているため、背シェル板の少なくとも下部と座シェル板とを一体の成形品としつつ、ロッキングに際して背シェル板が座シェル板に対して下降動することを確実化できる。
【0015】
さて、請求項2のように少なくとも背シェル板の下部と座シェル板とを一体成形した場合、背もたれが人のもたれ掛かりによって容易にねじれ変形すると身体の安定性が損なわれると共に、ヒンジ部にも過大な負荷が掛かって破断しやすくなるおそれがある。この点、請求項3の構成を採用すると、サイドリブの存在によって背もたれの形状保持性が高くなるため、身体の支持安定性を確保できると共に、ヒンジ部等にねじりのような外力が作用することを抑制して耐久性を向上できる。
【0016】
座はロッキング時に動かない固定式とすることも可能であるが、請求項4のように背もたれの後傾動に連動して後退する連動方式を採用すると、ロッキング時の身体の伸びを抑制して安楽性を向上できる利点がある。
【0017】
背シェル板の全体と座シェル板とを一体成形することも可能であるが、この場合は非常に大きな成形機が必要になるため、コストが嵩むと共にタイムリーに製造できない可能性がある。これに対して請求項5のように背シェル板を上下に分割して製造すると、広く普及している成形機を使用して製造できるため、製造コストを抑制することやタイムリーな製造が可能になる。また、上部背シェル板の高さを変えたものを複数種類用意しておくことにより、背もたれの高さの変更に簡単に対応できる利点もある。
【0018】
また、上下に分割された背シェル板はそれぞれ背フレームに取り付けられているため、上下背シェル板の連結部に過大な負荷がかかることはなくて、上下背シェル板を分割成形したことに起因して強度が低下する問題は生じない。更に、ロッキングに際しては上下背シェル板がそれぞれ背フレームと一緒に後傾するため、ロッキングに際しての背シェル板の一体性も確保されており、従って、上下背シェル板が相対動して使用者に違和感を与えるような問題も皆無になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は平面図、(D)は背面図、(E)は部分的な斜視図である。
【図2】(A)は全体の分離斜視図、(B)はベースをひっくり返した状態での分離斜視図である。
【図3】(A)は椅子の主要部の一部省略斜視図、(B)はクッションの分離斜視図である。
【図4】座を中心にした部分の側断面図である。
【図5】主としてクッションの配置関係を示す断面図である。
【図6】縦断側面図である(座はレール部材の箇所で切断している。)。
【図7】(A)は図4の部分拡大図、(B)はレール部材と背フレームとの連結状態を示す断面図、(C)は(B)のC−C視断面図である。
【図8】(A)はレール部材を中心した部分の分離斜視図、(B)は座の支持部材の斜視図である。
【図9】(A)は座シェル板及び下部背シェル板の斜視図、(B)は背フレームの部分斜視図、(C)はベースの部分斜視図、(D)は組み立てた状態を(C)のD−D視方向から見た断面図である。
【図10】(A)は図6の XA-XA視断面図、(B)は図6の XB-XB視断面図である。
【図11】図6の XI-XI視断面図である。
【図12】レール部材の取り付け手順を示すための分離側面図である。
【図13】(A)は座シェル板をひっくり返した状態での分離斜視図、(B)は図9(D)の XIIIB-XIIIB視断面図、(C)は表皮材の展開状態での概略平面図である。
【図14】シェル板を後ろから見た分離斜視図である。
【図15】(A)は背シェル板の分離正面図、(B)は連結状態での(A)のB−B視断面図、(C)は連結状態での(A)のC−C視断面図、(D)は連結状態での(A)のD−D視断面図である。
【図16】(A)は上部背シェル板と補強板と背支柱との締結部の断面図、(B)は(A)の箇所での上部背シェル板の断面図である。
【図17】(A)はシェル板とクッションとの関係を示す分離正面図、(B)は下部背シェル板の下端部を中心にした縦断正面図、(C)は縁部材の係止状態を示す縦断面図である。
【図18】動きを説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この文言は普通に着座した人の向きを基準にしている。但し、正面視は着座した人と対向した方向をいう。「内」「外」の文言も使用するが、正面視で椅子の中心を向いた方向を内向きとし、正面視で椅子の中心から左右外側を向いた方向を外向きとしている。
【0021】
(1).椅子の概要
まず、図1〜図6に基づいて椅子の概要を説明する。本実施形態は回転椅子に適用しており、椅子は、図1に示すように、座1と背もたれ2とが一体に連続した身体受け部3と、脚支柱4を有する脚装置5と、脚支柱4の上端に取り付けたベース6と、ベース6に後傾動自在に連結した背フレーム7とを有している。脚装置5は放射方向に延びる枝足を有しており、各枝足の先端にはキャスタを設けている。ベース6と背フレーム7とはアルミダイキャスト品又は樹脂成形品である。
【0022】
図2,3から理解できるように、身体受け部3はシェル板とこれに一体成形したクッションとを有している。シェル板は、座1を構成する座シェル板8と、座シェル板8の後部に一体に繋がった下部背シェル板9と、下部背シェル板9とは別体の上部背シェル板10とを有しており、上部背シェル板10の下端部が下部背シェル板9の上端部に連結されている。従って、上下の背シェル板9,10によって背もたれ2のシェル板が構成されている。シェル板8,9,10は樹脂の成形品である。
【0023】
なお、背シェル板について使用する「下部」「上部」の文言は、上下に分かれている2つの要素を特定するために使用しており、高さ位置を特定するために使用しているのではない。従って、本実施形態のように上部背シェル板10で背もたれ2の大部分(70〜80%程度)が構成されている場合もあれば、下部背シェル板9で背もたれ2の大部分が構成されている場合もあるし、上下背シェル板9,10が半分ずつ程度の高さになっている場合もあり得る。
【0024】
図3(B)に示すように、クッションは、座シェル板8及び下部背シェル板9に対応した下部クッション11と、上部背シェル板10に対応した上部クッション12とに分離構成されている。これらのクッション11,12はそれぞれシェル板8,9,10にインサート成形されている。図5から理解できるように、下部クッション11は座シェル板8及び下部背シェル板9の表面の全体を覆うと共に、座シェル板8及び下部背シェル板9の終縁部の裏側まで巻き込むように成形されている。他方、上部クッション12は、上部背シェル板10の前面と後面との全体を包むように成形されている。
【0025】
身体受け部3は一体構造の表皮材13を有しており、表皮材13のうち背もたれ2に位置した部位は、背シェル板9,10及びその表裏のクッション11,12を上からすっぽり覆う袋状に形成されており、表皮材13のうち座1に対応した部位は、座シェル板8の外周から下方内向きに巻き込まれている。
【0026】
座シェル板8と下部背シェル板9とは、左右両端のヒンジ部14を除いてスリット15で分断されている。換言すると、座シェル板8と下部背シェル板9とは左右両端のヒンジ部14のみで一体に繋がっている。このため、下部背シェル板9は(背もたれ2)は、ヒンジ部14の変形により、座シェル板8に対して(座1に対して)相対的に後傾動し得る。スリット15はその左右両端部が手前に延びる平面視U字形に形成されており、このため、ヒンジ部14は座シェル板8の後端よりも手前に位置している。
【0027】
図2,4に示すように、ベース6は概ね平面視四角形状で上下に開口した枠構造になっており、このため、リアメンバー6aと左右サイドメンバー6bとフロントメンバー6cとを有する。リアメンバー6aの左右中間部に脚支柱取り付け穴17が空いていると共に、リアメンバー6aの後端部に後ろ向き張り出し部18を形成し、この後ろ向き張り出し部18に背フレーム7が左右横長のパイプ製支軸19で回動可能に連結されている。
【0028】
ベース6の後面と背フレーム7の下部前端との間のうち後ろ向き張り出し部20の左右両側には、図1(B)から理解できるように空間が空いているが、この空間の間隔は、ロッキングによって背フレーム7が傾動した状態であっても一般成人の指よりも大きい寸法が保持される大きさに設定している。従って、仮に人がベース6と背フレーム7との間の隙間に指先を差し込んでも挟まれることはない。なお、図6に示すように、ベース6のリアメンバー6aは上向きに開口した中空状に形成されており、その内部にリブが形成されている。リアメンバー6aの上面にはベースカバー6dを装着している。
【0029】
図2,4に示すように、ベース6の左右サイドメンバー6bには前後長手のレール部材20が前後スライド自在に装着されており、レール部材20に座シェル板8が装着されている。レール部材20はこれに内蔵したばね21に抗して後退動する。
【0030】
例えば図2(A)に示すように、背フレーム7は、その下端を構成する左右横長の基部22を有しており、この基部22の左右中間部が、軸受けブラケット23を介してベース6の後ろ向き張り出し部18に支軸19で連結されている。また、同じく図2(A)から理解できるように、背フレーム7における基部22の左右両端部には、レール部材20の後端に設けた左右軸受け部24の間に位置する上向きの軸受けリブ25が突設されており、レール部材20の軸受け部24と背フレーム7の軸受けリブ25とが左右横長のピン26で連結されている。
【0031】
背フレーム7における基部22の左右両端部には、やや後ろ向きに後退してから上向きに立ち上がった背支柱27が一体に形成されており、背支柱27の上端部に前向き突設したボス部28に上部背シェル板10がねじ(ビス)29で締結されている。
【0032】
上部背シェル板10の前面の下部には前向きに開口した左右横長の凹所30が形成されており、凹所30に金属製(鋼板製)で横長の補強板31が嵌め込まれており、ねじ29は補強板31に形成したバーリング部32にねじ込まれている。従って、背支柱27と上部背シェル板10と補強板31とがねじ(ビス)29で共締めされている。
【0033】
背支柱27の上端には、左右外向きに曲がってから手前に延びる形状の肘本体33が一体に形成されており、肘本体33には、その上面の全体を覆う肘カバー34が装着されている。肘カバー34に、背支柱27の上部を後ろから覆う下向きの後ろ壁34aが一体に形成されている。
【0034】
(2).ベースと背フレームとの連結部
次に、図7以下の図面も参照して各部位の詳細を説明する。まず、ベース6と背フレーム7との連結部を説明する。
【0035】
既述のとおり、背フレーム7はその左右中間部が軸受けブラケット23を介してベース6の後ろ向き張り出し部18に連結されているが、図9(B)(D)に明示するように、背フレーム7の基部22には軸受けブラケット23が左右ずれ不能に嵌まる凹所36が形成されており、背フレーム7の基部22に上から挿入したビス37が軸受けブラケット23にねじ込まれている。支軸19はベース6の後ろ向き張り出し部18に設けた左右の軸受け部18aに貫通しており、背フレーム7の凹所36によって左右抜け不能に保持されている。
【0036】
図9(D)に示すよように、軸受けブラケット23は上板と背面板とを有する逆L形で、かつ、背面板の下端には手前に向けて突出した規制片23aを有する。他方、ベース6における後ろ向き張り出し部18の内部には、ロッキングによって軸受けブラケット23が回動するとその規制片23aが当たる弾性支持体38を嵌め込み装着している。弾性支持体38は頭付きピン状の形態であり、左右2個配置している。
【0037】
図13(B)に示すうに、支軸19は軸受けブラケット23の側板23aに貫通していると共に、ベース6における後ろ向き張り出し部18の左右軸受け部18aに嵌まっているが、軸受けブラケット23の側板23a及びベース6の軸受け部18aには樹脂製のブッシュ39,40が嵌まっている。
【0038】
このように樹脂製のブッシュ39,40を使用すると、支軸19の回転が滑らかになると共に擦れ音も防止できる利点があるが、支軸19との相対動や軸受けブラケット23及び軸受け部18aとの相対動により、ブッシュ39,40が擦れて樹脂粉が発生するおそれがある。そこで本実施形態では、軸受けブラケット23の側板23bの下端に左右外向きに突出した粉受け片23cを曲げ形成している。従って、仮に樹脂製のブッシュ39,40が擦れて粉が落ちても、その粉は粉受け片23bに溜まるため、樹脂粉が床に落ちて美観を損なうような問題はない。なお、図2(B)には粉受け片23cは表示していない。
【0039】
(3).支持機構部
次に、レール部材20を中心にした支持機構部を説明する。図8,10,11に示すように、レール部材20は板金製であって下向きに開口したチャンネル状(コ字状)の形態であり、座シェル板8にはレール部材20を左右両側から囲う下向き規制リブ41を左右一対ずつ設けている。図10(B)に示すように、下向き規制リブ41にはレール部材20に内外から近接する位置決めリブ42を一体に設けており、かつ、レール部材20に切り起こし形成した前後長手のストッパー片43に、下向き規制リブ41に形成した係合爪44を下方から当てている。従って、座シェル板8はレール部材20に対して上向き離脱不能に保持されていると共に、座シェル板8とレール部材20とは若干ながら前後方向に相対動し得る。
【0040】
図8に明示するように、レール部材20の前端部には左右横長のガイドピン45が前後動不能に挿通されており、ガイドピン45は、ベース6のサイドメンバー6bに固定されたガイド体46に形成しているガイド穴47に挿通している。ガイド穴47は前後長手の長穴になっており、このためレール部材20は座シェル板8と一緒に前後スライドし得る。
【0041】
ガイド体46の前部は、ベース6のサイドメンバー6bに突設した台錘形のボス体48に嵌まっており、このボス体48にビスで固定されている。従って、ガイド体46の前部にはボス体48に嵌まる穴49が下向きに開口している。また、ガイド体46の下面には四角枠状の位置決め突起46aが形成されている一方、ベース6のサイドメンバー6bには、位置決め突起46aがきっちり嵌まる長方形の位置決め穴46bが空いている。ベース6のサイドメンバー6bには、レール部材20を外側からガードする前後長手の土手部51が一体に形成されている。
【0042】
レール部材20を構成する左右側板20a(例えば図8参照)の前端でかつ下端部には、若干の寸法のフロント突起52を突設しており、かつ、フロント突起52を含むレール部材20の先端部の下面は、側面視で手前に行くに従って高さが高くなるフロント傾斜面53になっている。他方、ガイド体46には、レール部材20のフロント突起52が上下動不能に嵌まる左右のフロント係合溝54が形成されている。かつ、フロント係合溝54の下面はフロント傾斜面53に重なる傾斜面になっており、フロント係合溝54の上の部位には、側面視で手前に行くに従って高くなった傾斜ガイド面55になっている。これらフロント突起52等の意義は後述する。
【0043】
例えば図8に示すように、レール部材20のうち概ね前後中間部には前部ばね受け50が取り付けられており、既に述べたばね(圧縮コイルばね)21が前部ばね受け50で手前側から支持されている。レール部材20の側板20aのうち前部ばね受け50を装着した部位には、後ろ側に向いて開口した切り開き部56が形成されており、切り開き部56の前端縁56aと後ろ側のストッパー片43との間に、前部ばね受け50の左右側面に突設した羽根片57を下方から挿入している。羽根片57は前向き突出部を有する平面視L形の形態であり、このため、前部ばね受け50は左右ずれ不能に保持されている。
【0044】
前部ばね受け50の下面は正面視で下向き凸の湾曲面50aになっており、そこで、ベース6のサイドメンバー6bには、前部ばね受け50の湾曲面50aに対応した上向き凹のガイド溝58が形成されている。
【0045】
ばね21は、後部ばね受け61で後ろから支持されている。後部ばね受け61は下向きに開口した中空状の形態であり、ベース6のサイドメンバー6bに形成した支持突起62に上から嵌まっている。従って、例えば樹脂製であっても前後ずれ不能に確実に保持される。また、後部ばね受け61の下端には内向きに突出したフランジ片61aが一体に形成されており、フランジ片61aはビスでベース6に固定されている。
【0046】
なお、前後ばね受け50,61には、ばね21をずれ不能に保持するテーパ状(台錘状)の突起を設けている。このため、組み立てに際してばね21とばね受け50,61とは自動的に同心に保持される。後部ばね受け61の手前には、脚支柱4のロックを解除するための昇降操作レバー63を装着しているが、本願との直接の関係はないので説明は省略する。
【0047】
既に説明したように、レール部材20の後端部には軸受け部24が形成されており、軸受け部24は連結ピン26で背フレーム7の軸受けリブ25に連結されている。この点は図7で明示されている。すなわち、図7に示すように、背フレーム7の軸受けリブ25は平断面視内向き開口溝形(コ字形)になっており、その内部に樹脂製の補助軸受け64を嵌め込み、軸受け部24にはそれぞれブッシュ65を嵌め込んでいる。また、レール部材20の後端に、軸受けリブ25の前面に近接した下向きストッパー片66を曲げ形成している。
【0048】
(4).レール部材による連結工程(組み立て工程)
次に、レール部材20の取り付けを中心にした組み立て工程の一部を説明する。図12から理解できるように、レール部材20でベース6と背フレーム7とを連結するに当たっては、まず、ガイド体46と後部ばね受け61とをベース6に固定しておき、次いで、レール部材20と前部ばね受け50及びばね21とをベース6にセットし、次いで、レール部材20の前端部をガイドピン45でガイド体46に連結し、それから、レール部材20の後端を連結ピン26で背フレーム7の軸受けリブ25に連結する。
【0049】
さて、着座した人が背もたれ2に凭れ掛かると背もたれ2はばね21を圧縮変形させて後傾するが、ロッキングに際してばね21が全く縮んでいない状態から縮み始めると、僅かの力でばね21が縮むため、背もたれ2が急激に後傾して危険である。従って、ばね21には初期荷重(プリテンション)を掛けておく必要がある。すなわち、レール部材20をセットした状態で、ばね21はある程度圧縮させておらねばならない。これについては、専用の治具を使用してレール部材20を後ろに押した状態を保持しつつ、ガイドピン45をガイド体46に挿通することも可能であるが、これでは作業性が悪い。
【0050】
これに対して本実施形態では、レール部材20の先端に設けたフロント突起52等の作用により、レール部材20を下向きに押さえ付けるだけで、ばね21を押し縮めた状態にしてレール部材20をセットできる。
【0051】
すなわち、ばね21を後部ばね受け61で支持した状態でレール部材20を下向きに押さえ付けると、ばね21は伸び切った状態であるため、レール部材20のフロント突起52がガイド体46の傾斜ガイド面55に当たるが、フロント突起52の下面も傾斜しているため、レール部材20を下向きに強く押し付けると、傾斜面53,55のガイド作用により、レール部材20はばね21を押し縮めて後退しながら下降し、押し下げ切ると、フロント突起52がばね21の力で前進してフロント係合溝54に嵌まり込む。
【0052】
従って、本実施形態では、ばね21にプリテンションが掛かった状態にレール部材20はセットすることを、特別な治具を使用せずに簡単に実現できる。また、ガイドピン45をガイド体46に挿通するとレール部材20は抜け不能に保持されると共に、レール部材20は、前端と後端とのいずれかを持ち上げようとしても起こし不能に保持されるため、連結ピン26で背フレーム7の軸受けリブ25に連結することも安全に行える。
【0053】
上記のとおり、レール部材20の取り付けに当たっては、正規の作業としては連結ピン26による背フレーム7への連結が最後に行われるが、作業者のミスにより、先に連結ピン26による連結を行ってから、レール部材20を強引に後退させてベース6にセットすることが考えられる。この場合、ばね21を圧縮させた状態でレール部材20が上向きに回動すると、ばね21の弾性力が一気に開放されて部材が飛び散るおそれがある。
【0054】
この点については、既述のとおり、レール部材20の後端に下向きのストッパー片66を設けて対処している。すなわち、図7(C)に示す一点鎖線から理解できるように、仮にレール部材20が連結ピン26を中心にして跳ね上がり回動しようとしても、ストッパー片66が軸受けリブ25の前端に当接することで跳ね上がり回動はできないのであり、このため、仮に組み立ての手順を誤っても、部材が飛び散って危険な状態になることを防止できる。
【0055】
(5).背もたれの構造
次に、背もたれ2の構造を説明する。例えば図2,3に示すように、下部背シェル板9の左右両側縁には上向きに突出したサイドリブ68が形成されており、サイドリブ68の前端にヒンジ部14が繋がっている。サイドリブ68の補強効果により、下部背シェル板9は剛性が高くなっている。ヒンジ部13は座シェル板8の後端より手前に位置しているので、サイドリブ68も座シェル板8の後端より手前に延びている。
【0056】
例えば図14に示すように、下部背シェル板9と上部背シェル板10との背面には縦横に延びる多数の補強リブ69が形成されており、補強リブ69で囲われた多くの部位に窓穴70が空いている。既述のとおり、上下の背シェル板9,10にはその前面と裏面との両方にクッション12,11がインサート成形されているが、インサート成形に際して、樹脂材料は窓穴70を通って背シェル板9,10の裏に回り込む。
【0057】
既述のとおり、上部背シェル板10は背もたれ2の全高のうち相当部分(7割程度)を構成している。上部背シェル板10の下面と下部背シェル板9の上面とにはそれぞれ重合部リブ板71,72が形成されており、上部背シェル板10の下面には、左右中間部に位置したセンター係合突起73と、左右両端部に位置したサイド係合突起74と、センター係合突起73とサイド係合突起74との間に位置した中間位置決め突起75とが下向きに突設されている。
【0058】
一方、下部背シェル板9の上部には、センター係合突起73が嵌まるセンターポケット部76と、サイド係合突起74が嵌まるサイドポケット部77と、中間位置決め突起75が嵌まる中間ポケット部78とが上向きに開口した状態に形成されている。図15に示すように、センター係合突起73には斜め上向きに突出した係合爪73aが形成されており、これがセンターポケット部76に設けたセンター係合穴76aに下方から引っ掛かり係合している。
【0059】
同様に、サイド係合突起74には斜め上向きに突出した係合爪74aが形成されており、この係合爪74aが、サイドポケット部77に設けたサイド係合穴77aに下方から引っ掛かり係合している。センター係合突起73は後ろ側に向けて倒れた姿勢であり、サイド係合突起74は手前側に向けて倒れた姿勢である。
【0060】
図15(A)に示すように、上部背シェル板10と下部背シェル板9との間に間隔を空けた場合を想定して、サイド係合突起74と下部背シェル板9との間隔寸法をE1、センター係合突起73と下部背シェル板9との間隔寸法をE2、中間位置決め突起75と下部背シェル板9との間隔寸法をE3とすると、E1<E2<E3の関係になっている。従って、各突起73,74,75は、サイド係合突起74、センター係合突起73、中間位置決め突起75の順で下部背シェル板9に嵌まり込む。
【0061】
下部背シェル板9の重合部リブ板72は、正面視でその中間部を含んだ相当範囲が下向きに凹んだ形状になっており、他方、上部背シェル板10の重合部リブ板71はその左右中間部を含んだ相当範囲が下向きに突出した形状になっている。すなわち、上下背シェル板9,10の合わせ面は凹凸状態になっている。そして、下部背シェル板9における重合部リブ板72の凹部72aの内側面72bは傾斜しており、中間ポケット部78は凹部72aの底面72cと傾斜状内側面72bとに跨がった状態に形成されている。他方、上部背シェル板10における重合部リブ板71の凸部71aの外側面71bも傾斜しており、中間位置決め突起75は凸部71aの下面71cと傾斜状外側面71bとに跨がった状態に形成されている。
【0062】
例えば図16(A)に示すように、上部背シェル板10の下部は平面視で前向き凹状に凹んでおり、そこで、上部背シェル板10の下部に配置された補強板31も平面視で前向き凹状に屈曲している。すなわち、補強板31のうちその中間部を含むかなりの範囲は平面視で左右横長の直線状に延びる基部になっているが、左右両端寄りのある程度の範囲は手前側に曲がった傾斜部31aとなっており、更に、傾斜部31aの先端には平面視で左右横長のエンド部31bが形成されている。そして、エンド部31bにバーリング部32が前向き突設されており、バーリング部32に形成した雌ねじに、ねじ29が後ろからねじ込まれている。
【0063】
図14〜16に示すように、上部背シェル板10には、背支柱27のボス部28が嵌まる受け座79が形成されている。また、背支柱27のうちボス部28の箇所の背面には、ねじ27の頭が入り込む座ぐり穴80が形成されている。そして、座ぐり穴80及びねじ27の頭は肘カバー34の後ろ壁34aで覆われている。このため、美観の悪化を防止できる。
【0064】
図2(A)に示すように、背支柱27の前面のうち上下略中間高さ位置には、側面視で上向き鉤状の下部係合爪81を突設している。他方、図9(A)に示すように、下部背シェル板9の裏面には、下部係合爪81に上から嵌まり込む上向き開口のポケット状の下部受け部82を形成している。従って、下部背シェル板9も背支柱27に前後離反不能に連結されている。下部背シェル板9と背支柱27とはビスで締結することも可能であるが、本実施形態のように係合爪81と受け部82とからなる嵌合式の係合手段を採用すると、組み立てが簡単であると共に背支柱27の背面がすっきりする利点がある。
【0065】
(6).クッション・表皮材
次に、クッション11,12と表皮材13とを補足説明する。既述のとおり、上部背シェル板10と下部背シェル板9とは凹凸を持って噛み合っているが、上下のクッション11,12も上下背シェル板9,10の形状に揃っているため凹凸を持って噛み合っている。また、既述のとおり、座シェル板8と下部背シェル板9とが下部クッション11で一体に覆われている。すなわち、スリット15を跨がった状態で下部クッション11が前後に広がっている。
【0066】
表皮材13の大まかな展開図を図13(C)で示している。表皮材13は、座1の部分を構成する平シート部13aと、背もたれ2の部分を構成する袋状部13bとが一体に連続している。平シート部13aの前端縁と左右両端縁と袋状部13bの下端縁とにはそれぞれ樹脂シート製の細長い縁部材86が縫着等によって固定されている。縁部材86には飛び飛びで複数個の穴87が空いている一方、座シェル板8の下面には、縁部材86の穴87が入り込む鉤状の係合爪88を突設している。
【0067】
表皮材13も背座一体方式であり、座1を構成する部分と背もたれ2を構成する部分とが側面視で屈曲しているため、弛みを生じやすい。そこで、表皮材13のうち座1と背もたれ2との接続部に位置した箇所と背もたれ2の上部に位置した部位とに、それぞれ引き込み用シート材89を縫着等で固定し、これを下部背シェル板10に取り付けている。従って、引き込み用シート材89を設けている箇所では、クッション11,12には切り込みが形成されている。
【0068】
図17(B)(C)に示すように、上部背シェル板10には、引き込み用シート材89が表面側から挿入される横長溝90(図2(A)も参照)を形成しており、横長溝90に、引き込み用シート材89に設けた穴91に嵌まる係合爪92を設けている。
【0069】
図16(B)に示すように、表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設けている。このため、表皮材13は正確に位置決めされている。なお、図16(A)ではリング状樹脂板83は表示していないが、実際には、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している。
【0070】
(7).まとめ
図6及び図18から容易に理解できるように、着座した人が背もたれ2にもたれ掛かると、背もたれ2はばね21に抗して支軸19を中心に後傾すると共に、座1は連結ピン26で後ろに引っ張られて後退動する。この場合、座1の後端と下部背シェル板9の前端との間にスリット15が形成されているため、下部背シェル板9は座シェル板8の後端に対して下降動することが許容されており、これにより、背もたれ2のロッキングが支障なく行われる。特に、ヒンジ部14は座シェル板8の後端よりかなり手前に位置しているため、背もたれ2の後傾動が無理なく行われる。
【0071】
本実施形態では、レール部材20と背フレーム7との連結部である連結ピン26は、支軸19の軸心から真上に伸びる中心線Oのやや手前に位置しているが、ロッキングに際して連結ピン26は中心線Oを挟んだ前後対称の位置に移動するように設定している。このため、ロッキングに際してレール部材20の後端が上下動する寸法は最低限に抑えられる。その結果、レール部材20と前後ばね受け50,61との間に上下動を許容するための特別の手段を講じることなく、レール部材20と前後ばね受け50,61との間でのガタの範囲内で、レール部材20の後退動を可能にできる。
【0072】
つまり、背フレーム7の後傾動によって連結ピン26は上下方向に移動するが、ガイドピン45の高さ位置は一定であるため、仮に連結ピン26の上下動寸法が大きいと、レール部材20は姿勢を大きく変化させながら後退するため、前後ばね受け50,61もレール部材20と一緒に上下動させるといった手段を講じなければならないおそれが生じ、すると構造が複雑化することになるが、本実施形態では、ロッキングに際しての連結ピン26の上下動寸法はごく僅かであるため、レール部材20の姿勢変化は当該レール部材20と前後ばね受け50,61との間のクリアランスによって吸収されるのであり、従って、構造を複雑化することなくロッキング機能を確保できるのである。
【0073】
ガイドピン45はガイド穴47の内部をスライドするが、ロッキングに際してガイドピン45がガイド穴47の後端に衝突すると、着座者の身体に衝撃がかかったり、衝突音が発生して不快感を与えたりするおそれがある。他方、図9(C)(D)を引用して説明したように、ベース6の後ろ向き張り出し部18に弾性支持体38を設けて軸受けブラケット23の規制片23aが当たるように設定しているが、ガイドピン45が後退し切る前に規制片23aが弾性支持体38に当たってロッキングが停止するように設定している。このため、衝撃や衝突音の発生を防止できる。
【0074】
クッションは座シェル板8と下部背シェル板9との間で分離することも可能であるが、この場合は、椅子を使用しているうちに上下背シェル板9,10の境界に厚さ方向のずれ(段差)が発生して体裁が悪くなるおそれがある。これに対して本実施形態では、下部クッション11は座シェル板8と下部背シェル板9とに跨がった状態に形成されているため、使用し続けても座1と背もたれ2との境界部に段差が発生することはなくて、品質に優れている。
【0075】
クッション11,12はシェル板8,9,10にインサート成形されるので、補強板31は予め上部背シェル板10に装着している。この場合は、補強板31は、上部背シェル板10に設けた突起と補強板31に設けた穴との嵌め合わせにより、正確に位置決めされている。また、図16(B)を参照して説明したように、表皮材13には上部背シェル板10の受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を一体に設けているため、表皮材13の後部は上部背シェル板10に正確に位置決めされる。
【0076】
上部背シェル板10と下部背シェル板9とを凹凸を持って重ね合わせると、上下背シェル板10,9は高さを変えた位置で連結されるため、連結強度を向上できる利点がある。この場合、上下背シェル板10,9を連結するにおいて係合突起等の本数を多くすると連結強度を向上できるが、各係合突起等が一斉に下部背シェル板9に一斉に嵌まる構成であると、位置決めしにくくなる場合がある。これに対して、図15(A)を参照して説明したように、E1<E2<E3の関係に設定すると、左右2本のサイド係合突起73を嵌め込むと他の突起74,75は自動的に位置決めされるため、連結作業を容易に行える。
【0077】
また、本実施形態では、下部背シェル板9は、下部係合爪81と下部受け部82との嵌合によって背支柱27に連結されているため、取り付け強度が高い。また、座シェル板はレール部20に上からの押し込みで取り付けるものであるため、椅子の組み立ての能率を格段に向上できる。
【0078】
さて、図17(A)に矢印Aで示すように、引き込み用シート材89による引っ張りによって下部クッション11にもテンションが掛かる。この場合、図17(A)に一点鎖線94で示すように、上下クッション11,12の境界面を一直線状に形成していると、引き込み用シート材89の引っ張りによって下部クッション11の左右端部が下向きに引かれる現象が発生して表皮材13との間に隙間が空き、このため、表皮材13に皺が発生して凹みが発生したりすることがある。
【0079】
この点、実施形態のように下部クッションの左右側部を上向き突出させると、引き込み用シート材89の引っ張りによって下部クッション11の左右側部11aに引っ張り力が作用しても、下部クッション11の左右側部は変形しにくくなるため、視認できるほどの変形は発生せず、このため体裁がよい。なお、引き込み用シート材89の周囲の箇所で表皮材13は強く引っ張られるため皺がよりやすいが、この皺の発生は、引き込み用シート材89の周囲の箇所にウレタンテープを貼ることで解消できる(変形しにくくして、表皮材13の追従変形を抑制する。)。
【0080】
(8).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば座シェル板と背シェル板とは全体を一体構造にしても良いし、逆に、シェル板を3つ以上に分割することも可能である。また、本願発明は、ロッキングに際して座が後退しないタイプや、ロッキングに際して座が後退しつつ後傾するタイプにも適用できる。
【0081】
ベースや背フレームなどを種々の形状に変更できる。シェル板を複数に分割した場合の連結手段としては、実施形態のように突起とポケット部(嵌合穴)との組み合わせに限らず、例えば双方に嵌まる連結棒や連結板を使用することも可能である。突起とポケット部(嵌合穴)との組み合わせを採用する場合、その位置関係は任意に設定できる(それぞれのパーツに突起とポケット部とを形成することも可能である。)。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本願発明の実施品は実際に製造可能である。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 座
2 背もたれ
3 身体受け部
6 ベース
7 背フレーム
8 座シェル板
9 下部背シェル板
10 上部背シェル板
11 下部クッション
12 上部クッション
13 表皮材
14 ヒンジ部
15 スリット
19 支軸
20 レール部材
21 ばね
23 軸受けブラケット
26 連結ピン
45 ガイドピン
46 ガイド体
68 サイドリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と背もたれとが一体に連続した外観を成しており、前記座又はその下方に配置されたベースに後傾動可能に連結された背フレームに前記背もたれを取り付けている椅子であって、
前記座は上面にクッションが張られた樹脂製の座シェル板を有している一方、前記背もたれは前面にクッションが張られた樹脂製の背シェル板を備えており、前記背シェル板は全体が一体構造になっているか、又は、上下複数のパーツに分割されて互いに連結されており、前記座シェル板と前記背シェル板の下端とが左右端部のヒンジ部を介して繋がっており、前記ヒンジ部の変形により、前記背シェル板が前記座シェル板の後端に対して下降動することが許容されている、
椅子。
【請求項2】
前記座シェル板の後端と背シェル板の下端との間には、左右両端部が前後方向に長い平面視前向きに開口U字形又はコ字形のスリットが介在しており、前記座シェル板の後端と背シェル板の下端とは、前記スリットの前端部の外側に位置したヒンジ部を介して一体に繋がっており、前記ヒンジ部は前記座シェル板の後端よりも手前に位置している、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記背シェル板における下部の左右両側縁部には、当該背シェル板の下部を変形し難くするサイドリブが形成されている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記座の下方に配置したベースに前記背フレームが後傾動自在に連結されており、前記座シェル板は、前記背フレームが後傾動すると後ろに引かれて後退動するように前記ベースに支持されている、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項5】
前記背シェル板は、前記座シェル板に一体に繋がった下部背シェル板とその上に重ね配置された上部背シェル板とに分離構成されており、これら上部背シェル板の下端と下部背シェル板の上端とが連結されており、更に、前記上部背シェル板と下部背シェル板とはそれぞれ前記背フレームに取り付けられている、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載した椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−63176(P2013−63176A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203607(P2011−203607)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】