説明

椅子

【課題】座、背凭れ、肘掛及び天板を備え、背凭れ全体及び肘掛の機能を常時使用可能な椅子において、種々の着座姿勢において天板を使用可能にする。
【解決手段】座5、背凭れ7及び肘掛8を備えてなり前方に向けて開放された椅子本体2と、この椅子本体2に支持され前記肘掛8の上方に位置する第1の使用位置P1から前記肘掛8の上方を開放して椅子本体2の前方に位置する第2の使用位置の間で移動可能な天板3とを具備する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモ台等として使用可能な天板を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、会議等の際に、テーブルを配置することなく多数の椅子を配置可能にしつつ、着座者が筆記を行う際やパーソナルコンピュータに代表される情報機器を使用する際等の便宜を図るべく、メモ台等として使用可能な天板を備えた椅子を用いることが広く知られている。このような椅子の一例として、脚と、脚に対して回動自在に支持される座と、これら脚及び座に対して回動自在であり天板を取り付けて使用可能なアームとを備えたものが考えられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、前記特許文献1記載のものは、天板を取り付けた状態のアームを脚及び座に対して回転させることによって着座者に対する天板の位置を変更可能であるとともに、天板を取り外した状態のアームを脚及び座に対して回転移動させ着座者の後方に位置させることにより前記アームを背凭れとして使用可能であるとともに、前記アームを着座者の側方に位置させることにより前記アームを肘掛として使用可能である。そして、前記アームを着座者の前方又は側方に位置させ、該アームに天板を取り付けることにより、天板をメモ台等として使用可能である。ところが、前記特許文献1記載のものは、前記対をなすアームの双方を着座者の後方に位置させた場合には、該アームの肘掛としての使用、及び該アームに天板を取り付けることにより該天板をメモ台等として使用することが不可能であり、前記対をなすアームの双方を着座者の側方又は前方に位置させた場合には、背凭れとしての使用が不可能である。また、前記対をなすアームの一方を着座者の後方、他方を着座者の側方又は前方に位置させた場合には、背凭れとしての機能が不十分であると着座者に感じられるおそれがある。
【0004】
そこで、背凭れ、肘掛及び天板を備えた椅子において、背凭れ全体及び肘掛の機能を常時使用可能にしつつ、種々の着座姿勢、換言すれば正面を向いた着座姿勢や側方を向いた着座姿勢等において天板を使用可能にする要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−206210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に着目し、座、背凭れ、肘掛及び天板を備え、背凭れ全体及び肘掛の機能を常時使用可能な椅子において、種々の着座姿勢において天板を使用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る椅子は、座、背凭れ及び肘掛を備えてなり前方に向けて開放された椅子本体と、この椅子本体に支持され前記肘掛の上方に位置する第1の使用位置から前記肘掛の上方を開放して椅子本体の前方に位置する第2の使用位置の間で移動可能な天板とを具備してなることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、天板を第1の使用位置に配した場合には、着座者が側方を向く着座姿勢でこの天板をメモ台等として使用できるとともに、この天板が肘掛の上方に位置しているので、この天板を着座者の肘を載せることができる肘掛として機能させることもできる。一方、天板を第2の使用位置に配した場合には、着座者が前方を向く着座姿勢でこの天板をメモ台等として使用できるとともに、肘掛の上方が開放されているので、この肘掛に着座者の肘を載せることができる。その上で、天板が第1の使用位置から第2の使用位置の間のどの位置に配しても着座者は背凭れを利用することができる。
【0009】
より多様な使用態様に対応可能な椅子の態様として、前記椅子本体が左右の肘掛を備えたものであり、前記左右の肘掛に関連させて左右対をなす前記天板を設けたものが挙げられる。ここで、「左右の肘掛に関連させて左右対をなす天板を設ける」とは、第1の使用位置に配した左側の天板が左側の肘掛の上方に位置し、第1の使用位置に配した右側の天板が右側の肘掛の上方に位置することを示す概念である。
【0010】
前段で述べたような椅子において、より大きな天板面を利用可能にするための態様として、前記左右の天板が前記第2の使用位置において相互に突き合い前記椅子本体の前方を閉塞するように構成されているものが挙げられる。
【0011】
このような椅子の外観を整えるための態様として、前記椅子本体が、左右の肘掛と背凭れとによって前方に開放された部分筒状をなす構造体を形成したものであり、前記天板がこの構造体の上縁に沿って水平にスライド移動し得るように構成されたものが挙げられる。
【0012】
このような椅子の天板を簡単な構成で椅子本体に移動可能に支持させるための態様として、前記天板が、前記座の下面に基端部を枢着された天板支持アームの先端に取り付けられたものが挙げられる。
【0013】
また、このような椅子の天板を簡単な構成で椅子本体に移動可能に支持させるようにするとともに、このような椅子の組立の容易化を図るための態様として、椅子本体の上縁部の形状に沿って延びるレールを有し、このレールに沿って天板が移動可能であるものが挙げられる。
【0014】
天板を第2の使用位置に配した際にレールが上方空間に露出して見栄えを損なう不具合を解消するための構成として、前記レールと前記天板との間に肘掛を配しているものが挙げられる。
【0015】
このような椅子の組立を容易に行うようにするための具体的な構成として、前記レールと、前記天板と、これらレールと天板とを接続し前記レールに沿って走行可能なスライドアームとを備える天板走行ユニットを、椅子本体の肘掛下方の側面に設けた開口部に側方から挿入することにより取り付け可能であるものが挙げられる。
【0016】
前段に述べたような椅子において、前記レールと前記走行部との係合箇所を側方空間から被覆するための具体的な構成として、前記スライドアームが、前記レールに摺接する走行部と、この走行部と前記天板とを接続するアーム部とを有し、前記レールの前面に前記レールと前記走行部との係合箇所を被覆する下カバー、前記レールの上部に前記レールと前記走行部との係合箇所を被覆する上カバーをそれぞれ取り付けてなるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、座、背凭れ、肘掛及び天板を備え、背凭れ全体及び肘掛の機能を常時使用可能な椅子において、種々の着座姿勢において天板が使用可能な構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る椅子を示す正面斜視図。
【図2】同実施形態に係る椅子を示す背面斜視図。
【図3】同実施形態に係る椅子を示す平面図。
【図4】図3におけるA−A断面図。
【図5】図3におけるB−B断面図。
【図6】図3における要部を拡大して示すC−C断面図。
【図7】同実施形態に係る天板の作動を示す作動説明図。
【図8】同実施形態に係る天板の作動を示す作動説明図。
【図9】同実施形態に係る天板の作動を示す作動説明図。
【図10】本発明の第二実施形態に係る椅子を示す正面斜視図。
【図11】同実施形態に係る椅子を示す平面図。
【図12】同実施形態に係る椅子を示す側面図。
【図13】図11におけるX−X断面図。
【図14】同実施形態に係る椅子の要部を示す平断面図。
【図15】同実施形態に係る天板の作動を示す作動説明図。
【図16】同実施形態に係る天板の作動を示す作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一実施形態を図1〜図9を参照しつつ以下に説明する。
【0020】
本実施形態の椅子1は、図1〜図9に示すように、座5、脚6、背凭れ7及び肘掛8を備えてなり前方に向けて開放された椅子本体2と、この椅子本体2に支持され前記肘掛8の上方に位置する第1の使用位置P1から前記肘掛8の上方を開放して椅子本体2の前方に位置する第2の使用位置P2の間で移動可能な天板3と、椅子本体2の背凭れ7の上方に設けたヘッドレスト4とを具備する。
【0021】
椅子本体2は、図1〜図5及び図7〜図9に示すように、座5と、この座5を支持する脚6と、この脚6の後上方に設けられた背凭れ7と、この背凭れ7の左右両端からそれぞれ前方に延出する左右に対をなす肘掛8とを備えている。ここで、脚6と、背凭れ7と、左右の肘掛8とは、前方に開放された部分筒状をなし全体が一体をなす構造体21を形成している。また、その表面には、図示は省略するが張地を設けている。
【0022】
座5は、図4〜図6に示すように、下端面を形成するシェル51と、このシェル51の上方に配してなりクッションを主体として構成した座本体52とを利用して形成している。また、前記シェル51の下面には、天板3を支持するための後述する天板支持アーム31を枢着させるための天板支持部材54と、前記天板支持アーム31の移動方向をガイドするためのレール部材55とを取り付けている。そして、この座5は、図示しない支持具を介して脚6に支持させている。
【0023】
脚6は、図1、図4、図5及び図8に示すように、前方に開口した内部空間を有し部分筒状をなす。また、この脚6は、上方に向かうにつれ径が漸次小さくなる形状を有する。この脚6の下端にはキャスタ61を備えているとともに、前記内部空間の下部にはかばん等の物品を載置可能な棚板62を設けている。この脚6の後上方、より詳述すればこの脚6の後部の直上には、上述したように背凭れ7を設けている。
【0024】
背凭れ7は、図1、図4、図5,図6及び図8に示すように、座5の後方、換言すれば脚6の後部の上端から後上方に延出しており、平面視部分円弧状をなしている。この背凭れ7の両側端からは、左右の肘掛8が一体をなして延出している。
【0025】
肘掛8は、上述したように、また図1〜図5及び図7〜図9に示すように、背凭れ7の左右両端からそれぞれ前方に延出しており、平面視部分円弧状をなしている。また、この肘掛8は、脚6の上端から外上方に延出している。そして、この肘掛8の上方を、より具体的にはこの肘掛8の上縁8aと一定の高さ距離を保ちつつ移動可能に、前記天板3が前記天板支持部材54を介して取り付けられている。なお、この肘掛8の上縁8aの前部には、天板3の下面に当接して天板3を支持する天板支持ローラ81が設けられている。
【0026】
左右の対をなす天板3は、左右の肘掛8に関連させて設けられている。すなわち、図1〜図5に示すように、第1の使用位置P1に配した左側の天板3は左側の肘掛8の上方に位置し、第1の使用位置P1に配した右側の天板3は右側の肘掛8の上方に位置する。また、左右の天板3の使用端縁3aは、いずれも肘掛8の上縁に略沿った形状すなわち略部分円弧状をなす。また、左右の天板3の反使用端縁3bは、その中央部において外方に突出する滑らかな曲線状をなし、背凭れ7に近い側の端部における使用端縁3aからの距離と比較して背凭れ7から離れた側の端部における使用端縁3aからの距離が大きく設定されている。左右の天板3の両側端縁3cはそれぞれ直線状をなす板状の部材である。また、左右の天板3は、図3及び図5に示すように、その双方を第1の使用位置P1に配した際に左右対称となる形状を有する。各天板3は、前記座5の下面に配した天板支持部材54に基端部を枢着された天板支持アーム31の先端に取り付けられている。各天板3は、前記構造体21の上縁、換言すれば前記肘掛8の上縁8aに沿って、上述したように前記肘掛8の上方に位置する第1の使用位置P1から前記肘掛8の上方を開放して椅子本体2の前方に位置する第2の使用位置P2の間を水平にスライド移動可能である。左右の天板3は、それぞれ別個に移動可能である。例えば、図7に示すように、着座者から見て左側の天板3を第1の使用位置P1に配し、着座者から見て右側の天板3を第1の使用位置P1と第2の使用位置P2との間の位置に配することができる。図8及び図9に示すように、左右の天板3の双方が前記第2の使用位置P2に配された際には、これら左右の天板3の互いに向かい合う側端縁3cが相互に突き合い、前記椅子本体2の前方を閉塞する。
【0027】
天板支持アーム31は、図3〜図7及び図9に示すように、天板3の下面から下方に向けて延出している起立部311a、及び起立部311aの下端から座5の下面の中心部に向けて延出している水平部311bを備えたアーム本体31と、このアーム本体31の基端部すなわち天板3と反対側の端部を溶接等の手段により固定しているとともに前記座5のシェル51の下面に設けた天板支持部材54に枢着ピン541を介して枢着されたブラケット312とを備えている。前記アーム本体31の水平部311bは、前記脚6と前記肘掛8との境界に設けたスリット21aを通過している。なお、構造体21は、このスリットを設けた高さ位置すなわち脚6と背凭れ7又は肘掛8との境界において最も外径が小さい形状を有する。また、このスリット21aの外方には、該スリット21aを被覆する帯状をなすスリットカバー211を配している。このスリットカバー211は、取付具212を介して前記構造体21に支持させている。前記ブラケット312の枢着ピン541から離れた側には、転動体取付部312aを起立させて設けている。この転動体取付部312aの幅方向両端部には、それぞれ上下に対をなす2対の転動体312bを設けている。上下に対をなす転動体312bは、その中間に位置するレール部材55を挟持した状態で、レール部材55の上面又は下面をそれぞれ転動する。
【0028】
ヘッドレスト4は、前述したように、また、図1、図2、図4、図5及び図7〜図9に示すように、背凭れ7の上方に設けられ、着座者の頭部を支持可能なヘッドレスト本体41と、このヘッドレスト本体41を背凭れ7に取り付けるための取付部42とを備えている。
【0029】
以上に述べたように、本実施形態に係る椅子1の構成によれば、天板3を第1の使用位置P1に配した場合には、着座者が側方を向く着座姿勢でこの天板3をメモ台等として使用できるとともに、この天板3が肘掛8の上方に位置しているので、この天板3を着座者の肘を載せることができる肘掛8として機能させることもできる。一方、天板3を第2の使用位置P2に配した場合には、着座者が前方を向く着座姿勢でこの天板3をメモ台等として使用できるとともに、肘掛8の上方が開放されているので、この肘掛8に着座者の肘を載せることができる。その上で、天板3が第1の使用位置P1から第2の使用位置P2の間のどの位置に配しても着座者は背凭れ7を利用することができる。従って、座5、背凭れ7、肘掛8及び天板3を備え、背凭れ7全体及び肘掛8の機能を常時使用可能な椅子1において、種々の着座姿勢において天板3が使用可能な構成を実現できる。
【0030】
また、前記椅子本体2が左右の肘掛8を備えたものであり、前記左右の肘掛8に関連させて左右対をなす前記天板3を設けているので、一方の天板3を第1の使用位置P1に配し、他方の天板3を第2の使用位置P2に配することにより天板3を移動させることなく着座者が側方を向く着座姿勢及び正面を向く着座姿勢の両方において天板3を使用可能にする等、多様な使用態様に対応することができる。
【0031】
さらに、前記左右の天板3が前記第2の使用位置P2において相互に突き合い前記椅子本体2の前方を閉塞するように構成されているので、左右の天板3の天板面を連続させて1つの大きな天板面として使用することも可能である。
【0032】
さらに、前記椅子本体2が、左右の肘掛8と背凭れ7とによって前方に開放された部分筒状をなす構造体21を形成したものであり、前記天板3がこの構造体21の上縁に沿って水平にスライド移動し得るように構成されているので、このような椅子1の外観を整えることができる。
【0033】
そして、前記天板3が、前記座5の下面に基端部を枢着された天板支持アーム31の先端に取り付けられているので、この椅子1の天板3を簡単な構成で肘掛8の上縁に沿って水平にスライド移動可能に支持させる構成を実現することができる。
【0034】
次に、本発明の第二実施形態を図10〜図16を参照しつつ以下に説明する。以下の説明において、上述した第一実施形態におけるものに対応する各部位には、同一の名称及び符号を付している。
【0035】
本実施形態の椅子A1は、図10〜図12に示すように、座5、脚6、背凭れ7及び肘掛8を備えてなり前方に向けて開放された椅子本体2と、この椅子本体2に支持され前記肘掛8の上方に位置する第1の使用位置P1から前記肘掛8の上方を開放して椅子本体2の前方に位置する第2の使用位置P2の間で移動可能な天板3と、椅子本体2の背凭れ7の上方に設けたヘッドレスト4とを具備する。
【0036】
椅子本体2は、図10〜図12に示すように、座5と、この座5を支持する脚6と、この脚6の後上方に設けられた背凭れ7と、この背凭れ7の左右両端からそれぞれ前方に延出する左右に対をなす肘掛8とを備えている。ここで、脚6と、背凭れ7と、左右の肘掛8とは、前方に開放された部分筒状をなし全体が一体をなす構造体21を形成している。また、その表面には、図示は省略するが張地を設けている。
【0037】
座5、脚6及び背凭れ7は、前述した第一実施形態に係るものと同一の構成を有するので、詳細な説明は省略する。
【0038】
肘掛8は、以下に述べる点を除いて前述した第一実施形態に係るものと同一の構成を有する。図10〜図13に示すように、この肘掛8の外側面、すなわち椅子本体2の左外側面及び右外側面の上縁部には、この肘掛8の上縁部、すなわち椅子本体2の上縁部の形状に沿って延びるレールA31を収納可能であり外側方に開口する開口部8xを有する。一方、この肘掛8の内側面は、背凭れ7の前面と滑らかに連続して椅子本体2の内側面を形成している。換言すれば、椅子本体2の内側面は全体にわたって凹凸なく滑らかに連続している。そして、天板3は、このレールA31に沿ってこの肘掛8の上方を、より具体的にはこの肘掛8の上縁8aと一定の高さ距離を保ちつつレールA31に沿って移動可能に取り付けられている。より具体的には、天板3は、前記レールA31、及びこのレールA31に沿って走行可能なスライドアームA32を介してこの肘掛8に取り付けられている。
【0039】
左右の対をなす天板3は、左右の肘掛8に関連させて設けられている。すなわち、図10及び図11に示すように、第1の使用位置P1に配した左側の天板3は左側の肘掛8の上方に位置し、第1の使用位置P1に配した右側の天板3は右側の肘掛8の上方に位置する。また、左右の天板3の使用端縁3aは、いずれも肘掛8の上縁8aに略沿った形状すなわち略部分円弧状をなす。また、左右の天板3の反使用端縁3bは、その中央部において外方に突出する滑らかな曲線状をなし、背凭れ7に近い側の端部における使用端縁3aからの距離と比較して背凭れ7から離れた側の端部における使用端縁3aからの距離が大きく設定されている。左右の天板3の両側端縁3cはそれぞれ直線状をなす板状の部材である。また、左右の天板3は、その双方を第1の使用位置P1に配した際に左右対称となる形状を有する。各天板3は、前記肘掛8の開口部内に配したレールに基端部が摺接するスライドアームの先端に取り付けられている。各天板3は、前記構造体21の上縁、換言すれば前記肘掛8の上縁8aに沿って、上述したように前記肘掛8の上方に位置する第1の使用位置P1から前記肘掛8の上方を開放して椅子本体2の前方に位置する第2の使用位置P2の間を水平にスライド移動可能である。左右の天板3は、それぞれ別個に移動可能である。例えば、図15に示すように、着座者から見て左側の天板3を第1の使用位置P1に配し、着座者から見て右側の天板3を第1の使用位置P1と第2の使用位置P2との間の位置に配することができる。そして、図16に示すように、左右の天板3の双方が前記第2の使用位置P2に配された際には、これら左右の天板3の互いに向かい合う側端縁3cが相互に突き合い、前記椅子本体2の前方を閉塞する。
【0040】
前記レールA31は、図11、図13及び図14に示すように、肘掛8の前記開口部8xの下面に設けたレールベースA33を介して前記開口部8x内に取り付けられる。より具体的には、前記レールベースA33は、平面視略円弧状の板状の部材で、その内側端の3箇所に、雌ねじ孔A331aを有する起立片A331を備えている。また、このレールベースA33は、本実施形態では図示しない雄ねじ部材により前記開口部8xの下面に固定されている。一方、前記レールA31は、前記レールベースA33の上面に接しスライドアームA32の基端に設けた転動輪A321を載せ置く底壁A311と、この底壁A311の上方に位置し全域にわたって前記底壁A311と対向する上壁A312とを備えている。前記上壁A312は、幅方向中間部より外側を構成する外要素A312aと幅方向中間部より内側を構成する内要素A312bとからなり、これら外要素A312aと内要素A312bとの間に、前記スライドアームA32の基端部を収容可能であるとともに、このスライドアームA32及びこのスライドアームA32に支持させた天板の進行方向をガイドするガイド溝A312xを形成している。前記底壁A311の内側端の3箇所からは、内起立片A313を起立させて設けている。この内起立片A313は、基端側に位置するスペーサ部A313aと、このスペーサ部A313aの起立端からさらに起立しておりレールベースA33の雌ねじ孔A331aと重なり合うねじ挿通孔A313xを備え前記上壁A312に設けた凹部A312yと係合する係合部A313bとを備えている。また、前記底壁A311の外側端からは、外起立片A314を起立させて設けている。この外起立片A314は、基端側に位置するスペーサ部A314aと、このスペーサ部A314aの起立端からさらに起立しており前記上壁A312に設けた凹部A312yと係合する係合部A314bとを備えている。さらに、前記底壁A311の長手方向両側縁からは、側起立片A315を起立させて設けている。この側起立片A315は、基端側に位置するスペーサ部A315aと、このスペーサ部A315aの起立端からさらに起立しており前記上壁A312に設けた凹部A312yと係合する係合部A315bとを備えている。本実施形態では、前記内起立片A313の係合部A313b、外起立片A314の係合部A314b及び側起立片A315の係合部A315bと、上壁A312の凹部A312yとを係合させた状態でこれらを溶接して接合している。さらに、このレールA31の外側方には、前記底壁A311と前記上壁A312との間の空間を被覆するための下カバーA34を設けている。この下カバーA34は、内側縁の6箇所に、前記外起立片A314に設けた図示しない雌ねじ孔に重なり合うねじ挿通孔を備えた垂下片を備えている。また、この下カバーA34は、前記ねじ挿通孔を通過させた雄ねじ部材を前記外起立片A314の雌ねじ孔にねじ止めすることによりレールA31に取り付けるようにしている。この下カバーA34の外面には、椅子本体2の表面と同一の張地を設けている。さらに、この下カバーA34の下端縁は、前記開口部8xの下端縁と略一致している。そして、このレールA31の上壁A312の前部の上面には、ローラ支持具A361を介して天板3の下面に当接して天板3を支持する天板支持ローラA36が設けられている。
【0041】
前記スライドアームA32は、図11、図13及び図14に示すように、下端に前記レールA31の底壁A311上を走行可能な転動輪A321aを備えるとともに前記レールA31の上壁A312に設けたガイド溝A312xを通過する走行部A321と、この走行部A321と天板3とを接続するアーム部A322とを有する。前記アーム部A322は、前記走行部A321の上端から外方に延伸する内持出部A323と、この内持出部A323の突出端から下斜め外方に延伸する目隠し部A324と、この目隠し部A324の下端から外方に延伸する外持出部A325と、この外持出部A325の突出端から上方に起立し上端部に天板3を支持するための支持ブラケットA327を一体に有する起立部A326とを備えている。ここで、前記起立部A326及び前記目隠し部A324の下端は、レールA31の上端よりも下方に達している。また、このスライドアームA32が走行範囲の後端部に達した際に天板3は第1の使用位置P1に配され、走行範囲の前端部に達した際に天板3は第2の使用位置P2に配される。すなわち、天板3とレールA31との間に肘掛8の開口部8xより上方の部位が配される。加えて、図示は省略するが、このスライドアームA32と前記アームA31との間には、このスライドアームA32に支持させた天板3を、前記第1の使用位置P1及び第2の使用位置P2を含む複数箇所のいずれかに保持可能な節度機構を設けている。
【0042】
ここで、前記レールA31と、前記スライドアームA32と、前記天板3とは、一体的に取り扱い可能な天板走行ユニットUを形成している。この天板走行ユニットUは、左右1対に設けられる。より具体的には、前記レールA31の底壁A311に上壁A312を取り付けるのに先立ち、スライドアームA32の走行部A321の転動輪A321aを前記レールA31の底壁A311に載せ置き、それから前記レールA31の底壁A311に上壁A312の外要素A312a及び内要素A312bを取り付けて溶接し、レールA31の底壁A311の外起立片A314に下カバーA34を取り付けるとともにスライドアームA32の支持ブラケットA327に天板3を取り付けて天板走行ユニットUを形成するようにしている。そして、この天板走行ユニットUを、肘掛8に設けた前記開口部8x内に外方から挿入し、レールA31の底壁A311の内起立片A313のねじ挿通孔A313xに雄ねじ部材を挿し通した状態でこの雄ねじ部材をレールベースA33の雌ねじ孔A331aにねじ止めすることにより天板走行ユニットUを椅子本体2に固定するようにしている。
【0043】
また、前記レールA31の上部、より具体的には前記開口部8xの上面には、図13に示すように、下斜め外方に延伸し、側方空間から前記レールA31と前記走行部A321との係合箇所を被覆する上カバーA35を取り付けている。この上カバーA35は、前記スライドアームA32のアーム部A322の目隠し部A324と起立部A326との間、換言すれば外持出部A325の上方に位置している。この上カバーA35の外面には、椅子本体2の表面と同一の張地を設けている。また、この上カバーA35は、内持出部A323の上端及び目隠し部A324の上端よりも下方に達しているとともに、その上端縁は、前記開口部8xの上端縁と略一致している。
【0044】
ヘッドレスト4は、前述した第一実施形態に係るものと同一の構成を有するので、詳細な説明は省略する。
【0045】
以上に述べたように、本実施形態に係る椅子の構成によっても、天板3を第1の使用位置P1に配した場合には、着座者が側方を向く着座姿勢でこの天板3をメモ台等として使用できるとともに、この天板3が肘掛8の上方に位置しているので、この天板3を着座者の肘を載せることができる肘掛8として機能させることもできる。一方、天板3を第2の使用位置P2に配した場合には、着座者が前方を向く着座姿勢でこの天板3をメモ台等として使用できるとともに、肘掛8の上方が開放されているので、この肘掛8に着座者の肘を載せることができる。その上で、天板3が第1の使用位置P1から第2の使用位置P2の間のどの位置に配しても着座者は背凭れ7を利用することができる。従って、座5、背凭れ7、肘掛8及び天板3を備え、背凭れ7全体及び肘掛8の機能を常時使用可能な椅子1において、種々の着座姿勢において天板3が使用可能な構成を実現できる。
【0046】
加えて、本実施形態の構成では、椅子本体2の上縁部の形状に沿って延びるレールA31を有し、このレールA31に沿って天板3が移動可能であるので、このような椅子の天板を簡単な構成で椅子本体に移動可能に支持させるようにするとともに、このような椅子の組立の容易化を図ることができる。
【0047】
また、前記レールA31と前記天板3との間に肘掛8を配しているので、天板を第2の使用位置P2に配した際にレールA31が上方空間に露出して見栄えを損なう不具合を解消することができる。
【0048】
さらに、前記レールA31と、前記天板3と、これらレールA31と天板3とを接続し前記レールA31に沿って走行可能なスライドアームA32とを備える天板走行ユニットUを、椅子本体2の肘掛8下方の側面に設けた開口部8xに側方から挿入することにより取り付け可能にしているので、このような椅子の組立を容易に行うことができる。
【0049】
そして、前記スライドアームA32が、前記レールA31に摺接する走行部A321と、この走行部A321と前記天板A3とを接続するアーム部A322とを有し、前記レールA31の前面に前記レールA31と前記走行部A321との係合箇所を被覆する下カバーA34、前記レールA31の上部に前記レールA31と前記走行部A321との係合箇所を被覆する上カバーA35をそれぞれ取り付けてなるので、前記レールA31と前記走行部A321との係合箇所を側方空間から被覆することができる。
【0050】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0051】
例えば、脚、背凭れ及び肘掛のそれぞれを別体に構成した椅子に本発明を適用してもよく、また、脚、背凭れ及び肘掛のうちのいずれか2つだけを一体に構成した椅子に本発明を適用してもよい。
【0052】
また、左右いずれか一方にのみ肘掛を有する椅子に本発明を適用してもよく、また、左右に対をなす肘掛を有し、一方の肘掛にのみ関連させて1つの天板のみを設けた椅子に本発明を適用してもよい。
【0053】
さらに、肘掛の上方を天板がスライド移動可能な構成として、上述した実施形態に係るもの以外に、例えば、天板を先端部で支持する天板支持アームの基端部に設けたガイド突起と、このガイド突起をスライド可能に係合させることが可能に脚の上端部又は肘掛の側面に設けたガイド溝とを係合させてなるガイド部を利用したものが挙げられる。また、このようなガイド部において、ガイド突起をガイド溝に係合させる代わりに、天板支持アームの基端部に設けた転動体がガイド溝内を転動可能な構成を採用してもよい。
【0054】
さらに、前記第二実施形態におけるレールベースとレールとの間に、レールを外側方から内側方に向けて移動可能に案内しつつレールと係合するレール取付案内部を設けてもよい。このレール取付案内部は、例えば、図示は省略するが、レールベースから起立させて設けられ、起立端に幅寸法を拡開させて設けた抜け止め部を有する案内突起と、レールに設けられ、前記案内突起の抜け止め部と略隙間なく係合可能な挿入部、及びこの該挿入部から外方に延伸し前記挿入部よりも幅寸法が小さく開口端が前記案内突起の基部と摺接可能である案内部を備えた案内凹部とを利用して形成している。このように構成すれば、天板が上方から作用を受け、スライドアームの基端側の転動輪がレールの上壁に衝き当たってレールが上方に向かう作用を受けた際に、前記抜け止め部が前記案内部の側方に衝き当たるので、レールを含む天板走行ユニットをがたなくより安定して椅子本体に保持させることができる。
【0055】
加えて、前記第二実施形態におけるスライドアームとレール又は椅子本体との間に、前述した節度機構に代えて、スライドアーム及び該スライドアームに支持させた天板の移動を規制するためのロック機構を設けてもよい。このロック機構は、天板を所定の位置、例えば第1の使用位置や第2の使用位置にのみ固定するもの、及び天板を任意の位置に保持可能なもののいずれを採用してもよい。
【0056】
また、上述した第二実施形態では、レールと天板との間に肘掛を配しているが、例えば、レールの上面に切欠き部を設け、この切欠き部の底面にレールを配する態様を採用してもよい。
【0057】
さらに、上述した第二実施形態では、前記レールと、前記天板と、これらレールと天板とを接続し前記レールに沿って走行可能なスライドアームとを備える天板走行ユニットを、椅子本体の肘掛下方の外側面に設けた開口部に外側方から挿入することにより取り付け可能にしているが、開口部を椅子本体の肘掛下方の内側面に設け、天板走行ユニットを内側方から挿入することにより取り付け可能にしてもよい。また、前段で述べたような肘掛の切欠き部の底面にレールを配する態様の場合、予めレールを椅子本体に固定しておき、スライドアームを上方から切欠き部に挿入する態様を採用してもよい。
【0058】
加えて、スライドアームのアーム部の形状は、上述した第二実施形態に係るものに限らず、例えば、走行部から外方に延伸する持出部及びこの持出部の突出端から上方に起立し上端部に天板を支持するための支持ブラケットを一体に有する起立部のみを有する構成を採用してもよい。
【0059】
そして、前記第二実施形態におけるレールの長手方向一端部又は両端部に、ボールサスペンション機構を設けてもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0061】
1…椅子
2…椅子本体
3…天板
31…天板支持アーム
A31…レール
A32…スライドアーム
A321…走行部
A322…アーム部
A34…下カバー
A35…上カバー
5…座
7…背凭れ
8…肘掛
P1…第1の使用位置
P2…第2の使用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座、背凭れ及び肘掛を備えてなり前方に向けて開放された椅子本体と、この椅子本体に支持され前記肘掛の上方に位置する第1の使用位置から前記肘掛の上方を開放して椅子本体の前方に位置する第2の使用位置の間で移動可能な天板とを具備してなることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記椅子本体が左右の肘掛を備えたものであり、前記左右の肘掛に関連させて左右対をなす前記天板を設けた請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記左右の天板が前記第2の使用位置において相互に突き合い前記椅子本体の前方を閉塞するように構成されている請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記椅子本体が、左右の肘掛と背凭れとによって前方に開放された部分筒状をなす構造体を形成したものであり、前記天板がこの構造体の上縁に沿って水平にスライド移動し得るように構成されたものである請求項2又は3記載の椅子。
【請求項5】
前記天板が、前記座の下面に基端部を枢着された天板支持アームの先端に取り付けられたものである請求項1、2、3又は4記載の椅子。
【請求項6】
椅子本体の上縁部の形状に沿って延びるレールを有し、このレールに沿って天板が移動可能である請求項1、2、3又は4記載の椅子。
【請求項7】
前記レールと前記天板との間に肘掛を配している請求項6記載の椅子。
【請求項8】
前記レールと、前記天板と、これらレールと天板とを接続し前記レールに沿って走行可能なスライドアームとを備える天板走行ユニットを、椅子本体の肘掛下方の側面に設けた開口部に側方から挿入することにより取り付け可能である請求項6又は7記載の椅子。
【請求項9】
前記スライドアームが、前記レールに摺接する走行部と、この走行部と前記天板とを接続するアーム部とを有し、前記レールの前面に前記レールと前記走行部との係合箇所を被覆する下カバー、前記レールの上部に前記レールと前記走行部との係合箇所を被覆する上カバーをそれぞれ取り付けてなる請求項8記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−75137(P2013−75137A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48281(P2012−48281)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】