説明

植栽用セラミック培地

【課題】植栽部への水分の供給安定性に優れた植栽用培地、或いは植栽用ブロックを提供すること。
【解決手段】この培地10は、多孔質のセラミック製の基体を備える。基体の内部には、土や植物が収容された植栽部11、水を含んだ吸水性ポリマーが収容された保水部12、及び肥料を含んだ物質が収容された肥料部13が形成されている。植栽部11、保水部12、及び肥料部13を隔てる多孔質内の多数の微孔を介して、水分が保水部12から植栽部11へと容易に移動し得、且つ、肥料部13から溶け出た液体の養分が肥料部13から植栽部11へと容易に移動し得る。よって、保水部12から植栽部11へ水分を、肥料部13から植栽部11へ養分を、安定して供給できる。加えて、基体の表面に形成された多数の微孔を介して、基体外部から基体内部へと水分を安定して取り込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製の基体を有する植栽用セラミック培地に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題等の背景から緑化技術が注目されており、緑化ブロックや保水ブロック等の植栽用の培地が多数提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。一般に、これらの培地では、基体の内部に、吸水性ポリマー等の保水材が収容された空間(保水部)と、植物又は種子が配設された空間であって上表面に開口を有する空間(植栽部)と、が設けられている。
【0003】
これによれば、地表等から保水部に蓄えられた水分が保水部から植栽部へと安定して供給され得る。従って、例えば、乾燥地においてこの培地が土地に埋設されて使用される場合であっても、植栽部に配設された植物(又は種子)は、植栽部へ供給された水分を吸収して安定して成育・栽培され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−154026号公報
【特許文献2】特開2002−330632号公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、本発明者は、このような培地の基体として、多孔質のセラミック製のものを使用すると好適であることを見出した。即ち、本発明に係る植栽用セラミック培地は、保水材が収容された空間である保水部と、植物又は種子が配設された空間であって前記基体の上表面に開口を有する植栽部と、を内部に有する、セラミック製の基体を有する。そして、前記基体における少なくとも前記保水部と前記植栽部との間の部分が多孔質で構成されている。
【0006】
ここにおいて、前記保水材としては、例えば、吸水性ポリマー等が採用され得る。前記基体において前記植栽部は複数設けられていることが好適である。
【0007】
上記構成によれば、例えば、保水部と植栽部とを所定距離だけ離して並べて配置するだけで、特別な工夫を施すことなく、両者を隔てる多孔質のセラミックに含まれる多数の微孔を介して、保水部から植栽部へと水分を安定して供給することができる。また、保水部と植栽部とを離して配置することで、保水材の吸水力によって、植物又は種子の吸水が妨げられることがない。また、基体の表面に多数の微孔が形成されている場合(基体全体が多孔質の場合)、この微孔を介して、基体外部から基体内部(従って、保水部、植栽部)へと水分を安定して取り込むことができる。
【0008】
更に、保水部を植栽部から離隔することで、保水部の容積や保水材の量の増減によって貯水量を自由に定められるとともに、保水部の貯水量を培地の外から調節できるため、植栽部へ水分を定量的に供給できる。
【0009】
即ち、上記構成によれば、植栽部への水分の供給安定性や定量性に優れた培地が提供され得る。従って、この培地は、乾燥地での植物(農作物)の栽培に最適である。加えて、土地、及び建築物の壁等にこの培地を多数埋設して敷き詰めることで、土手、砂漠、及び建築物等の緑化にも使用され得る。
【0010】
上記本発明に係る植栽用セラミック培地では、具体的には、例えば、前記基体は前記上表面に垂直な軸線を有する形状(例えば、円柱状等)を呈するとともに、前記保水部及び前記植栽部もそれぞれ軸線を有する形状(例えば、円柱状等)を呈していて、前記保水部及び前記植栽部のそれぞれの軸線が前記基体の軸線と平行になるように且つ前記保水部及び前記植栽部が共に前記基体の上表面に開口を有するように、前記保水部及び前記植栽部が並べて配置される。
【0011】
この場合、前記植栽部または前記保水部が前記基体の下表面に開口を有してもよい。これによれば、この下表面の開口が水抜き孔として機能し得る。
【0012】
また、上記本発明に係る植栽用セラミック培地では、前記基体が直方体又は立方体の形状を呈していて、前記保水部が前記植栽部の下方に配置され得る。これにより、植栽用セセラミックブロック(タイル)が提供され得る。
【0013】
この培地(ブロック)の基体は、例えば、基体全体が多孔質のセラミックからなるから、上述のように内部に水分を多く含み得る。また、培地(ブロック)の上表面には植栽部の開口から植物(例えば、芝生、コケ等)が生えてくるから、培地(ブロック)の上表面の一部が植物で覆われ得る。従って、培地(ブロック)の上表面の冷却性が高い。従って、例えば、歩道等にこの培地(ブロック)を多数埋設して敷き詰めることで、歩道等の緑化、及び歩道等の温度上昇の抑制等にも使用され得る。加えて、この培地(ブロック)は、例えば、建築物の壁等に多数埋設して敷き詰めることで、建築物等の緑化にも最適である。
【0014】
この場合、培地(ブロック)の上表面に、前記植栽部の前記開口よりも先端部が上方に位置する突起が形成されることが好適である。ここにおいて、前記植栽部が複数設けられ、且つ前記突起が複数形成されると好ましい。これによれば、例えば、上述のようにこの培地(ブロック)が歩道等に使用される場合、前記突起の形成により、歩行者の踏みつけにより植物が受ける損傷が抑制され、且つ、歩行者の足が滑り難くなるという作用・効果が発揮され得る。
【0015】
上記本発明に係る植栽用セラミック培地の基体は、前記植物の肥料を含んだ物質(肥料を含んだ土等)が収容された空間である肥料部を内部に有し、前記基体における少なくとも前記肥料部と前記植栽部との間の部分が多孔質で構成されることが好適である。
【0016】
これによれば、肥料部と植栽部とを所定距離だけ離して並べて配置するだけで、特別な工夫を施すことなく、両者を隔てる多孔質のセラミックに含まれる多数の微孔を介して、肥料部から植栽部へと肥料(具体的には、肥料から溶け出た液体の養分等)を安定して供給することができる。この結果、肥料の追加についてメンテナンスフリーとすることができる。従って、この培地は、観葉植物の栽培に最適である。
【0017】
また、上記セラミック培地の前記基体の内部は、多孔質の隔壁により前記基体の上表面に開口を有する複数の空間に区画されていて、前記複数の空間の一部が少なくとも前記植栽部として使用されると、好適である。前記複数の空間の他の一部は、前記保水部、及び肥料部として使用され得る。また、前記隔壁は、格子状に形成され得る。前記隔壁の気孔率が30〜80%であることが好ましい。加えて、前記隔壁の厚さが0.1mm〜10.0mmであると好適である。
【0018】
これによれば、隔壁の厚さや保水部及び肥料部の容積等を調整することで、保水部から植栽部(従って、植物)への水分の供給速度及び量(加えて、肥料部が形成されている場合、肥料部から植栽部(従って、植物)への養分の供給速度及び量)を容易且つ正確に調整することができる。従って、植物の成育状態の管理がし易くなる。
【0019】
また、上記本発明に係る植栽用セラミック培地において、前記基体全体が多孔質のセラミックからなる場合、前記基体の表面であって上表面を除いた部分が非透水性の部材で覆われていると、好適である。これによれば、例えば、基体の上表面が地面から露呈するように培地が土地に埋設して使用される場合、地中に含まれる有害成分(例えば、塩分等)が基体外部から基体内部に侵入することが抑制され得る。従って、例えば、植物(農作物)が塩害を受けることが抑制され得る。非透水性の部材としては、耐久性を考慮して、セラミック、ガラス等が好適である。
【0020】
また、上記セラミック培地の前記基体の底面には下方に延びる支柱が設けられてもよい。これによれば、例えば、培地が土地に埋設して使用される場合、支柱を土地に差し込むことで土地に対して培地を固定することができる。従って、特に、地盤が柔らかい土地への培地の設置状態を安定化することができる。
【0021】
また、上記本発明に係るセラミック培地において、前記基体には、外部から前記保水部に水を導入する通路が形成されてもよい。これによれば、保水部内の含水量を遠隔操作できるから、この培地は、例えば、大規模農業に適しているといえる。
【0022】
加えて、地表から散水する場合に比して、供給した水のうちで植物に実際に供給され得るものの割合を高くすることができる。更には、地表から散水する場合に比して、地中に放出される水の量を少なくすることができる。この結果、塩害の抑制も期待され得る。
【0023】
更には、上記複数のセラミック培地が、互いに連結部材で連結されることで「セラミック培地のセット」が提供され得る。これにより、特に、地盤が柔らかい土地への「セラミック培地のセット」の設置状態を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセラミック培地の外観を示した斜視図である。
【図2】図1に示したセラミック培地を2−2線で切断して得られる断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の変形例に係るセラミック培地の外観を示した斜視図である。
【図4】図3に示したセラミック培地を4−4線で切断して得られる断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の他の変形例に係るセラミック培地の断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の他の変形例に係るセラミック培地の断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の他の変形例に係るセラミック培地の断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の他の変形例に係るセラミック培地の断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るセラミック培地の外観を示した斜視図である。
【図10】図9に示したセラミック培地を10−10線で切断して得られる断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の変形例に係るセラミック培地の外観を示した斜視図である。
【図12】図11に示したセラミック培地を12−12線で切断して得られる断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の他の変形例に係るセラミック培地の外観を示した斜視図である。
【図14】図13に示したセラミック培地を14−14線で切断して得られる断面図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係るセラミック培地(セラミックブロック)の外観を示した斜視図である。
【図16】図15に示したセラミックブロックの主要断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態の変形例に係るセラミック培地(セラミックブロック)の外観を示した斜視図である。
【図18】図17に示したセラミックブロックの主要断面図である。
【図19】本発明の第3実施形態の他の変形例に係るセラミック培地(セラミックブロック)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係るセラミック培地(セラミックブロック)について説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係るセラミック培地10の外観を示した斜視図であり、図2は、図1に示した2−2線でセラミック培地10を切断して得られる断面図である。セラミック培地10は、多孔質のセラミック製の円柱状の基体を備えている。この基体は、全体が多孔質のセラミックの焼成体である。この基体の成形、焼成は、周知の手法の一つを用いて実行され得る。
【0027】
この基体の内部には、上表面に開口を有する円柱状の空間である植栽部11、保水部12、及び肥料部13が形成されている。植栽部11、保水部12、及び肥料部13は、各軸線が基体の軸線と平行に、保水部12及び肥料部13が植栽部11を挟むように、互いに所定距離だけ離れて1列に並んで配置されている。
【0028】
植栽部11には、土21Aが収容されていて、土21Aに植物(或いは、農作物)21Bが植えられている。植物21Bは、植栽部11の開口(従って、基体の上表面)から上方に向けて生えている。
【0029】
保水部12には、保水材として、例えば、吸水性ポリマー22が収容されている。吸水性ポリマー22としては、各種の公知のものが特に制限なく使用され得る。この吸水性ポリマー22には、水分が十分に含まれている。
【0030】
肥料部13には、植物21Bの肥料(ミネラル分等を含む)を含んだ物質23(例えば、肥料を含んだ土(養土)等)が収容されている。
【0031】
以上のように構成された第1実施形態に係るセラミック培地10では、基体が多孔質のセラミックからなる。従って、植栽部11と保水部12とを隔てる多孔質のセラミックに含まれる多数の微孔を介して、水分が保水部12から植栽部11へと容易に移動し得る(図2の白矢印を参照)。よって、特別な工夫を施すことなく、保水部12から植栽部11へと水分を安定して供給することができる。加えて、基体の表面に形成された多数の微孔を介して、基体外部から基体内部(従って、保水部12、或いは植栽部11)へと水分を安定して取り込むことができる。
【0032】
以上より、セラミック培地10は、植栽部11への水分の供給安定性に優れる。従って、このセラミック培地10が土地に埋設して使用される場合、特に、乾燥地での植物(農作物)の栽培に最適である。加えて、土地、及び建築物の壁等にこのセラミック培地10を多数埋設して敷き詰めることで、土手、砂漠、及び建築物等の緑化にも使用され得る。
【0033】
加えて、このセラミック培地10では、肥料部13と植栽部11とを隔てる多孔質のセラミックに含まれる多数の微孔を介して、肥料部13の物質23から溶け出た液体の肥料(養分)或いはその元素が肥料部13から植栽部11へと容易に移動し得る(図2の黒矢印を参照)。よって、特別の工夫を施すことなく、肥料部13から植栽部11へと養分を安定して供給することができる。この結果、植栽部への肥料の追加についてメンテナンスフリー(若しくは、メンテナンスを容易)とすることができる。従って、このセラミック培地10は、観葉植物の栽培にも最適である。
【0034】
上記第1実施形態に係るセラミック培地10の変形例としては種々のものが採用され得る。例えば、植物21Bは、種子であってもよい。また、植物21Bの特性によっては、土21Aがなくてもよい。また、植栽部11、保水部12、及び肥料部13の各々は、複数あってもよい。更には、肥料部13がなくてもよい。
【0035】
また、基体の上表面を覆う蓋材が設けられてもよい。これにより、基体の上表面からの水分の蒸発を抑制できる。この蓋材の材質としては、例えば、セラミック、樹脂、ガラス、ゴム、繊維、コルク等が使用され得る。この中でも植物の成長に応じて柔軟に変形し得るゴム、繊維、コルクが好適である。更には、植栽部11または保水部12が基体の下表面に開口を有してもよい(即ち、植栽部11または保水部12が上下に貫通した空間であってもよい)。これによれば、この下表面の開口が水抜き孔として機能し得る。
【0036】
また、図1、及び図2にそれぞれ対応する図3、及び図4に示すように、多孔質のセラミックス製の円柱状の基体が、円柱状の上部基体10Aと、上部基体10Aの下に同軸的に接合された円柱状の下部基体10Bとから構成されてもよい。なお、後出の図において、前出の図に示したものと同じ或いは等価なものについては、前出の図にて付された符号と同じ符号が付されている。
【0037】
この例では、上部基体10Aの内部に、1つの植栽部11と2つの肥料部13とが、上表面に開口を有するように形成され、下部基体10Bの内部に、短円柱状の1つの保水部12が、上部基体10Aの下面で覆われて密閉されるように形成されている。この例でも、上部基体10A、及び下部基体10Bの全体が、多孔質のセラミックの焼成体である。
【0038】
この基体は、例えば、焼成が完了した下部基体10Bの保水部12(上表面に開口を有する)に吸水性ポリマー22を収容し、その後、その上に、焼成が完了した上部基体10Aを所定の接着剤を用いて同軸的に接合することで完成する。
【0039】
また、図5に示すように、上部基体10Aと下部基体10Bとの接合状態において外部と保水部12とを連通する導入孔14が上部基体10Aに設けられてもよい。この場合、上部基体10Aと下部基体10Bとの接合後(即ち、焼成体同士の接合後)において、導入孔14を介して保水部12に吸水性ポリマーの作成に使用される物質(前駆物質)を注入することで、保水部12に吸水性ポリマー22を収容することができる。
【0040】
また、図6に示すように、上記基体の表面であって上表面を除いた部分(具体的には、側面、及び下面)が、非透水性の部材31で覆われていてもよい。これによれば、例えば、基体の上表面が地面から露呈するようにセラミック培地10が土地に埋設して使用される場合、地中に含まれる有害成分(例えば、塩分等)が基体外部から基体内部に侵入することが抑制され得る。従って、例えば、植物(農作物)21Bが塩害を受けることが抑制され得る。なお、水分の気化抑制および遮蔽性の向上のため、側面、及び下面とともに、又は単独で、開口部を除く上表面の一部又は全部が、非透水性の部材31で覆われていてもよい。
【0041】
また、図7に示すように、各セラミック培地10の基体の底面に下方に延びる支柱42が設けられてもよい。これによれば、例えば、各セラミック培地10が土地に埋設して使用される場合、支柱42を土地に差し込むことで土地に対して各セラミック培地10を固定することができる。従って、特に、地盤が柔らかい土地への各セラミック培地10の設置状態を安定化することができる。
【0042】
更には、図7に示すように、複数(図7では、4つ)のセラミック培地10が、互いに連結部材41で連結されて「セラミック培地のセット」が形成されてもよい。これにより、特に、地盤が柔らかい土地への「セラミック培地のセット」の設置状態を安定化することができる。なお、単に「セラミック培地のセット」として使用する場合には、基体に連結部を設け、基体同士が直接連結されてもよい。
【0043】
また、図8に示すように、複数のセラミック培地10の保水部12が、各基体に形成された送水孔15を介して送水管51で互いに連結されてもよい。これによれば、送水管51に流す水の流量を調整することで、それぞれの保水部12内の含水量を遠隔操作できる。従って、この形態は、例えば、大規模農業に適しているといえる。加えて、地面から散水する場合に比して、供給した水のうちで植物21Bに実際に供給され得るものの割合を高くすることができる。更には、地面から散水する場合に比して、地中に放出される水の量を少なくすることができる。この結果、塩害の抑制も期待され得る。なお、図8では保水部12が送水孔15を介して送水管51と連結されているが、保水部12と送水管51とが直接連結されてもよい。また、各基体に対して、導入側の送水管51と排出側の送水管51とが直線上に並ばなくてもよい。また、送水管51は、図8ではセラミック培地10の側面に連結されているが、セラミック培地10の上面又は下面に連結されてもよい。
【0044】
図9は、本発明の第2実施形態に係るセラミック培地10の外観を示した斜視図であり、図10は、図9に示した10−10線でセラミック培地10を切断して得られる断面図である。この第2実施形態に係るセラミック培地10は、基体の内部が、多孔質のセラミック製の格子状の隔壁により複数の空間に区画されている点においてのみ、上記第1実施形態と異なる。この基体も、全体が多孔質のセラミックの焼成体である。この基体の成形、焼成も、周知の手法の一つを用いて実行され得る。
【0045】
この第2実施形態では、図10に示すように、上表面に開口をそれぞれ有する前記複数の空間のうち一部(複数の空間)が植栽部11として使用され、他の一部(複数の空間)が保水部12として使用され、他の一部(複数の空間)が肥料部13として使用されている。この例では、植栽部11には、種子21Bが植えられている。なお、植栽部11、保水部12、及び肥料部13は、各植栽部11が、少なくとも1つの保水部12及び少なくとも1つの肥料部13に隣接するように配置されることが好適である。
【0046】
この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同じ作用・効果を奏し得る。加えて、格子状の隔壁の厚さ等を調整することで、保水部12から植栽部11(従って、種子21B)への水分の供給速度及び量、及び肥料部13から植栽部11(従って、種子21B)への養分の供給速度及び量を容易且つ正確に調整することができる。従って、植物の成育状態の管理がし易くなる。このためには、隔壁の気孔率が30〜80%であり、隔壁の厚さが0.1mm〜10.0mmであることが好ましいことが判明している。
【0047】
上記第2実施形態に係るセラミック培地10の変形例としては種々のものが採用され得る。例えば、種子21Bは、植物であってもよい。また、種子21Bの特性によっては、土21Aがなくてもよい。更には、肥料部13がなくてもよい。また、上部基体10Aの上表面を覆う蓋材が設けられてもよい。また、植栽部11または保水部12が基体の下表面に開口を有してもよい(即ち、植栽部11または保水部12が上下に貫通した空間であってもよい)。これによれば、この下表面の開口が水抜き孔として機能し得る。
【0048】
また、図9、及び図10にそれぞれ対応する図11、及び図12に示すように、多孔質のセラミックス製の円柱状の基体が、円柱状の上部基体10Aと、上部基体10Aの下に同軸的に接合された円柱状の下部基体10Bとから構成されてもよい。この例は、上述した図3、及び図4に示した上記第1実施形態の変形例に対応するものである。
【0049】
また、上述した図6に示す形態と同様、上記基体の表面であって上表面を除いた部分(具体的には、側面、及び下面)が、非透水性の部材で覆われていてもよい。また、図7に示す形態と同様、各セラミック培地10の基体の底面に下方に延びる支柱が設けられてもよい。更には、図7に示す形態と同様、複数(図7では、4つ)のセラミック培地10が、互いに連結部材で連結されて「セラミック培地のセット」が形成されてもよい。また、図9、及び図10にそれぞれ対応する図13、及び図14に示すように、基体が円柱状ではなく直方体状を呈していてもよい。以上、本発明の実施形態に係るセラミック培地10について説明した。
【0050】
次に、本発明の第3実施形態に係るセラミック培地60(以下、「セラミックブロック60」とも称呼する。)について説明する。図15は、本発明の実施形態に係るセラミックブロック60の外観を示した斜視図であり、図16は、図15に示したセラミックブロック60を主要断面にて切断して得られる断面図である。
【0051】
このセラミックブロック60は、全体が多孔質のセラミック製の直方体状を呈している。このブロック60は、直方体状の上部基体10Aと、上部基体10Aの下に接合された直方体状の下部基体10Bとから構成されている。この例では、上部基体10Aの内部に、多数の植栽部11が、上面視にて格子状に、上表面に開口を有するように形成され、下部基体10Bの内部に、直方体状の1つの保水部12が、上部基体10Aの下面で覆われて密閉されるように形成されている。
【0052】
上述した図3、及び図4に示した上記第1実施形態の変形例と同様、この例でも、上部基体10A、及び下部基体10Bの全体が多孔質のセラミックの焼成体である。
【0053】
更には、このセラミックブロック60の上表面には、多数の突起61が形成されている。各突起61は、上面視にて四角形状に隣接する4つの植栽部11の開口の位置を四隅とする各四角形の中心部に対応する位置にそれぞれ形成されている。従って、多数の突起61は、上面視にて格子状に形成されている。各突起61の先端部の位置は、隣接する植栽部11の開口よりも上方に位置する。
【0054】
以上のように構成された実施形態に係るセラミックブロック60では、上述した実施形態に係るセラミック培地10と同様、ブロック60の内部に水分を多く含み得る。また、ブロック60の上表面には多数の植栽部11の各開口から植物(例えば、芝生、コケ等)が生えてくるから、ブロック60の上表面の一部が植物で覆われ得る。従って、ブロック60の上表面の冷却性が高い。
【0055】
従って、例えば、歩道等にこのブロック60を多数埋設して敷き詰めることで、歩道等の緑化、及び歩道等の温度上昇の抑制等に使用され得る。また、ブロック60の上表面に上術のように多数の突起61が形成されていることから、歩行者の踏みつけにより植物が受ける損傷が抑制され得る。加えて、歩行者の足が滑り難くなるという作用・効果も発揮され得る。
【0056】
上記実施形態に係るセラミックブロック60の変形例としては種々のものが採用され得る。例えば、ブロック60は、上部基体10A及び下部基体10Bに分割されることなく一体で成形(及び焼成)されてもよい。また、種子21Bは、植物であってもよい。また、種子21Bの特性によっては、土21Aがなくてもよい。また、植栽部11の一部が肥料部13に置き換えられてもよい。この場合、植栽部11、及び肥料部13は、各植栽部11が、少なくとも1つの肥料部13に隣接するように配置されることが好適である。
【0057】
また、上述した図6に示す形態と同様、セラミックブロック60の表面であって上表面を除いた部分(具体的には、側面、及び下面)が、非透水性の部材で覆われていてもよい。また、図7に示す形態と同様、ブロック60の面に下方に延びる支柱が設けられてもよい。
【0058】
また、図15、及び図16に対応する図17、及び図18に示すように、上記セラミックブロック60において、ブロック60の上表面の突起61が省略されて、上表面が平坦に形成されてもよい。このブロック(タイル)60は、例えば、建築物の壁等に多数埋設して敷き詰めることで、建築物等の緑化に最適である。
【0059】
また、上述のように、多数の上記セラミックブロック60を歩道等に埋設して敷き詰める場合、図19に示すように、セラミックブロック60の保水部12が、各ブロック60に形成された送水孔15を介して互いに連結されてもよい。これによれば、上述した図8に示した形態と同様、それぞれの保水部12内に供給される水の流量を調整できるから、それぞれの保水部12内の含水量を遠隔操作できる。
【0060】
以上、上述した本発明に係るセラミック培地、及びセラミックブロックの実施形態において、多孔質のセラミックの材質としては、例えば、アルミナやシリカ等が使用され得る。前記多孔質の気孔率は、80〜30%、好適には70〜50%であることが好ましい。なお、上述した各種実施形態では、セラミック製の基体全体が多孔質であったが、基体における少なくとも保水部12と植栽部11との間の部分が多孔質で構成されていればよい。また、基体に肥料部13が設けられている場合、少なくとも肥料部13と植栽部11との間の部分が多孔質で構成されていればよい。
【0061】
また、吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸ナトリウム等の高分子化合物が使用され得る。デンプン系やセルロース系の天然由来のものでもよい。なお、吸水性ポリマーの使用形状としては、各種バインダーとこれら吸水性ポリマーの粉体ないしは粒子を混合したものをシート状にしたもののほか、吸水性ポリマーを繊維質に含浸させたものやマトリックス状に分散したもの、またそのような繊維をシート状にしたもの、他の樹脂と吸水性ポリマーを混合し塗膜状に塗布したもの等でもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…セラミック培地、10A…上部基体、10B…下部基体、11…植栽部、12…保水部、13…肥料部、21A…土、21B…植物(種子)、22…吸水性ポリマー、23…肥料を含んだ物質、60…セラミックブロック、61…突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製の基体を有する植栽用セラミック培地であって、
前記基体は、保水材が収容された空間である保水部と、植物又は種子が配設された空間であって前記基体の上表面に開口を有する植栽部と、を内部に有し、前記基体における少なくとも前記保水部と前記植栽部との間の部分が多孔質で構成された植栽用セラミック培地。
【請求項2】
請求項1に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体は前記上表面に垂直な軸線を有する形状を呈するとともに、前記保水部及び前記植栽部もそれぞれ軸線を有する形状を呈していて、
前記保水部及び前記植栽部のそれぞれの軸線が前記基体の軸線と平行になるように且つ前記保水部及び前記植栽部が共に前記基体の上表面に開口を有するように、前記保水部及び前記植栽部が並べて配置された植栽用セラミック培地。
【請求項3】
請求項1に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体が直方体又は立方体の形状を呈していて、
前記保水部が前記植栽部の下方に配置された植栽用セラミック培地。
【請求項4】
請求項3に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体の上表面には、前記植栽部の前記開口よりも先端部が上方に位置する突起が形成された植栽用セラミック培地。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体は、前記植物の肥料を含んだ物質が収容された空間である肥料部を内部に有し、前記基体における少なくとも前記肥料部と前記植栽部との間の部分が多孔質で構成された植栽用セラミック培地。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体が前記植栽部を複数有する植栽用セラミック培地。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体の内部が、多孔質の隔壁により前記基体の上表面に開口を有する複数の空間に区画されていて、前記複数の空間の一部が少なくとも前記植栽部として使用された植栽用セラミック培地。
【請求項8】
請求項7に記載の植栽用セラミック培地において、
前記隔壁が格子状に形成された植栽用セラミック培地。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の植栽用セラミック培地において、
前記隔壁の気孔率が30〜80%である植栽用セラミック培地。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9の何れか一項に記載の植栽用セラミック培地において、
前記隔壁の厚さが0.1mm〜10.0mmである植栽用セラミック培地。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体全体が多孔質のセラミックからなる植栽用セラミック培地。
【請求項12】
請求項11に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体の表面であって上表面を除いた部分が非透水性の部材で覆われた植栽用セラミック培地。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体の底面には下方に延びる支柱が設けられた植栽用セラミック培地。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13の何れか一項に記載の植栽用セラミック培地において、
前記基体には、外部から前記保水部に水を導入する通路が形成された植栽用セラミック培地。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14の何れか一項に記載の複数のセラミック培地が、互いに連結部材で連結されて得られる植栽用セラミック培地のセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−183075(P2012−183075A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125848(P2012−125848)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2008−183391(P2008−183391)の分割
【原出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】