説明

植物の栽培方法および植物栽培用カーボングラファイトシート

【課題】太陽光による熱を確実に吸収するとともに、これを培土の全面により均一に行きわたらせるようにし、しかも蓄えられた熱の放散を防ぐようにした植物の栽培方法を提供する。
【解決手段】カーボングラファイトシート10の両面に高分子フィルム11を接合し、このようなカーボングラファイトシート10を培土上に敷設し、このカーボングラファイトシート10に形成された開口15あるいは切込み17の部分に播種し、あるいは苗を植えて植物16を生育させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物の栽培方法およびこの植物の栽培方法に用いられるカーボングラファイトシートに係り、とくに植物を栽培する培土上にカーボングラファイトシートを敷設するようにした植物の栽培方法およびこのような植物の栽培方法に用いられるカーボングラファイトシートに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜等の各種の植物を栽培する場合に、とくに培土の温度を高めることによって植物の生育を早めることが可能になる。温度を上げる一般的な方法は、ハウス栽培である。すなわち透明なシートあるいはガラス等の透明材料で覆った建屋内において植物を栽培するものである。このようなハウス栽培と併用し、あるいはまたハウス栽培とは独立に、露地栽培において、培土の温度を高める方法として、農業用フィルムがある。
【0003】
農業用フィルムは、塩化ビニール、その他各種の合成高分子材料によってフィルム状あるいはシート状とし、しかも顔料等によって黒色に着色したものであって、このような農業用フィルムを培土上に敷設することによって、太陽熱を吸収し、しかも培土に蓄えられた熱を放散することが防止でき、これによって植物の生育を早めることが可能になる。とくに特開平9−239890号公報や特開2001−224257号公報に開示されているように、集熱保温効果を改善するために、農業用フィルムにカーボンブラックを混入することが提案されている。
【0004】
しかるにこのような従来の農業用フィルムによる地ねん熱の保持には、必ずしも十分な効果を発揮することができるものではない。すなわち農業用フィルムは一般にその厚さが十分な厚さを有しておらず、このために培土上に保持された熱が比較的簡単に放散する問題がある。また熱を均一に行きわたらせる効果を有していないために、熱の偏在が発生する。
【特許文献1】特開平9−239890号公報
【特許文献2】特開2001−224257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の課題は、より高い蓄熱効果を有するシートを用いた植物の栽培方法およびこのような植物の栽培方法に用いられる植物栽培用カーボングラファイトシートを提供することである。
【0006】
本願発明の別の課題は、敷設される培土上における熱の均一化を図るようにした植物の栽培方法およびこのような植物の栽培方法に用いられる植物栽培用カーボングラファイトシートを提供することである。
【0007】
本願発明のさらに別の課題は、高い蓄熱効果を有し、これによって培土上に蓄えられた熱を逃がさないようにした植物の栽培方法およびこのような植物の栽培方法に用いられる植物栽培用カーボングラファイトシートを提供することである。
【0008】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
植物の栽培方法に関する主要な発明は、培土上にカーボングラファイトシートを敷設するようにしたことを特徴とする植物の栽培方法に関するものである。
【0010】
ここで、前記カーボングラファイトシートが高分子フィルムまたは高分子シートと接合されていることが好ましい。また前記カーボングラファイトシートの植物を植える位置に開口または切込みが形成されていてよい。
【0011】
植物栽培用カーボングラファイトシートに関する主要な発明は、植物を栽培する培土上に敷設されることを特徴とする植物栽培用カーボングラファイトシートである。
【0012】
ここで、高分子フィルムまたは高分子シートと接合されていることが好適である。また植物を植える位置に開口または切込みが形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
植物の栽培方法に関する主要な発明は、培土上にカーボングラファイトシートを敷設することである。
【0014】
このような植物の栽培方法によると、培土上に敷設されたカーボングラファイトシートが太陽光線等による熱を吸収するとともに、この熱を敷設される全面に均一に伝達し、しかも培土上に蓄えられた熱の放散を防止することになる。
【0015】
植物栽培用カーボングラファイトシートに関する主要な発明は、植物を栽培する培土上に敷設される植物栽培用カーボングラファイトシートに関するものである。
【0016】
このような植物栽培用カーボングラファイトシートによると、このカーボングラファイトシートによって熱を均一にその面方向に伝達し、これによって培土の表面に沿う熱の偏在を無くすことが可能になる。またこのようなカーボングラファイトシートは、培土上に蓄熱された熱の放散を効果的に防止することになり、これによって高い蓄熱効果を発揮することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1および図2は本実施の形態に係る植物の栽培方法に用いられる植物栽培用カーボングラファイトシートを示すものであって、ここではシート状のカーボングラファイトシート10と、その両面に接合される高分子フィルム11とから構成され、全体としてシート状の形態をなすものである。
【0018】
上述のカーボングラファイトシート10は、天然鱗状黒鉛等の原料を浮遊選鉱し、さらに薬品処理を行なった後に濃硫酸と酸化剤との混酸によって酸化処理を行なう。そしてこの後に膨張化処理を行なう。膨張化処理は、炉内においてバーナで高温急加熱を行なうことによって達成される。そしてこの後にロール圧延を行なって成形する。これによってシート状のグラファイトシートが得られる。なおこのようなカーボングラファイトシート10は、その厚さが0.1〜3mmの範囲内であることが好ましく、とくにロール圧延の圧力と、その回数等によって任意の厚さのシートとすることが可能である。
【0019】
このようなカーボングラファイトシート10は比較的脆い性質を有しているために、その両面に高分子フィルム11を接合する。高分子フィルム11としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニール、エバール、ナイロン等の各種の材料を用いることが可能である。なお低コスト化のためには、ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0020】
高分子フィルム11のカーボングラファイトシート10に対する接合は、熱溶着によって行なうか、あるいはまた両者の接合部に接着剤を塗布して接着層を介して接合すればよい。
【0021】
このようなカーボングラファイトシート10には、図3および図4に示すように、一列に所定の間隔で円形の開口15が形成される。このような円形の開口15は、植物16を栽培する位置と一致する。すなわち植物16を栽培するピッチに応じて、所定の寸法の開口15を形成する。
【0022】
なお単一のカーボングラファイトシート10に、図5に示すように複数列に開口15を形成してもよい。あるいはまた図6に示すように、開口15に代えて、十字状をなす切込み17を形成することも可能である。またこのような切込み17の位置や配列についても、各種の変更が可能であって、複数列に、例えば千鳥状に配列して形成するようにしてもよい。
【0023】
このようなカーボングラファイトシート10は、例えば図7Aに示すように、栽培用ハウス20内において、盛土の上面に敷設され、このカーボングラファイトシート10の開口15の位置に播種を行なうか苗を植えることによって植物16を栽培できる。あるいはまた図7Bに示すように、栽培用ハウス20内に栽培用ボックス22を配し、その培土23上にカーボングラファイトシート10を敷設して、その開口15の部分に植物の種を播種するか苗を植え、これによって植物16の栽培を行なうことが可能である。なおカーボングラファイトシート10の敷設は、必ずしも栽培用ハウス20内において行なう必要はなく、露地栽培の培土上に敷設するようにしてもよい。
【0024】
このように植物栽培用の培土23上にカーボングラファイトシート10を敷設すると、このカーボングラファイトシート10が黒色をなしているために、太陽光を吸収する。そして吸収された太陽熱は、カーボングラファイトシート10が有する面方向の高い熱伝導性によって、培土23の全面に亙ってまんべんなく伝達されるために、カーボングラファイトシート10が敷設された培土23の表面の温度を均一化することができる。そしてカーボングラファイトシート10によって集められた熱は、培土23に蓄熱される。しかも周囲の温度が下がっても、培土23に蓄えられた熱は、カーボングラファイトシート10によって放散が確実に防止される。すなわちカーボングラファイトシート10は、面方向には高い熱伝導性を有するものの、厚さ方向の熱伝導性が低いために、熱の放散が起こり難い性質を持っている。
【0025】
実際にカーボングラファイトシート10を用いて実験を行なったところ、通常の黒色の農業用フィルム10に比べてはるかに高い地ねん熱の放熱の抑制効果が認められ、これによって各種の植物の育生期間を著しく短縮できることが確認されている。
【0026】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態におけるカーボングラファイトシート10に接合される高分子フィルム11の種類や、形成される開口15あるいは切込み17の大きさ、ピッチ、形状等については各種の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明は、ハウス栽培あるいは露地栽培における農業用フィルムに代えた蓄熱用の資材として広く利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】カーボングラファイトシートと高分子フィルムとの接合構造を示す分解斜視図である。
【図2】同縦断面図である。
【図3】高分子フィルムを接合したカーボングラファイトシートの平面図である。
【図4】同カーボングラファイトシートの使用状態を示す斜視図である。
【図5】変形例のカーボングラファイトシートの平面図である。
【図6】別の変形例のカーボングラファイトシートの平面図である。
【図7】カーボングラファイトシートを用いたハウス栽培の状態を示すハウスの縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 カーボングラファイトシート
11 高分子フィルム
15 開口
16 植物
17 切込み
20 栽培用ハウス
22 栽培用ボックス
23 培土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培土上にカーボングラファイトシートを敷設するようにしたことを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項2】
前記カーボングラファイトシートが高分子フィルムまたは高分子シートと接合されていることを特徴とする請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項3】
前記カーボングラファイトシートの植物を植える位置に開口または切込みが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項4】
植物を栽培する培土上に敷設されることを特徴とする植物栽培用カーボングラファイトシート。
【請求項5】
高分子フィルムまたは高分子シートと接合されていることを特徴とする請求項4に記載の植物栽培用カーボングラファイトシート。
【請求項6】
植物を植える位置に開口または切込みが形成されていることを特徴とする請求項4に記載の植物栽培用カーボングラファイトシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−189331(P2009−189331A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35306(P2008−35306)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000206174)大成ラミネーター株式会社 (32)
【Fターム(参考)】