植物体の病原菌感染診断装置及び植物体の病原菌感染診断方法
【課題】植物体が病原菌に感染しているか否かを診断できる、植物体の病原菌感染診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】植物体に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射手段と、前記植物体からの近赤外蛍光及び410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する検出手段と、を備える、植物体の病原菌感染診断装置。
【解決手段】植物体に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射手段と、前記植物体からの近赤外蛍光及び410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する検出手段と、を備える、植物体の病原菌感染診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体の病原菌感染診断装置及び植物体の病原菌感染診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物体の生育状況を診断する方法として、例えば、特許文献1のように光を用いた診断方法がある。特許文献1の方法では、植物体の生葉から放出される蛍光を観測することにより、植物体が病変、老化、あるいは枯死の状態、もしくはこれらのいずれかの状態への移行過程にあると判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3807940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、植物体が何らかの病原菌に感染しているのか否かまでは診断できない。一般的に農作物が何らかの病原菌に感染するとすぐに農場一帯に広まってしまうため、病原菌に感染した農作物をより早期に処分することが重要である。しかしながら、感染初期においては、植物体の感染が疑われる部位を目で見ただけでは、実際に病原菌に感染しているか否かの診断は、専門家でさえも難しい。したがって、農作物が病原菌に感染しているか否かを診断できる技術が必要である。
【0005】
そこで本発明は、植物体が病原菌に感染しているか否かを診断できる、植物体の病原菌感染診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、植物体に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射手段と、上記植物体からの近赤外蛍光及び410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する蛍光検出手段と、を備える、植物体の病原菌感染診断装置を提供する。
【0007】
上記病原菌感染診断装置によれば、励起光照射手段により、植物体に300〜500nmの波長の第1の励起光が照射される。この第1の励起光はクロロフィルと病原菌体を励起し、クロロフィルから近赤外蛍光、及び、病原菌体から410nm以上の波長の可視光域の自家蛍光が発せられ、それぞれの蛍光が病原菌感染診断装置の蛍光検出手段により検出される。植物体が病原菌に感染している場合、感染部位のクロロフィル量が低下するので、クロロフィルに由来する近赤外蛍光の強度が感染部位で低下する。また、病原菌体に由来する蛍光が感染部位で検出される。本発明の装置は、クロロフィルに由来する近赤外蛍光及び病原菌体に由来する可視光蛍光の両方の蛍光を検出することにより、病原菌に感染しているか否かを確度よく診断することができる。また、本発明の装置を使用すれば、専門家でなくとも容易に感染の有無を診断できる。しかも、植物体が病原菌に感染しているか否かを、植物体を生育させたまま、即座に診断することができる。
【0008】
上記励起光照射手段がさらに、680nm以下の波長の第2の励起光を照射することが好ましい。第1の励起光のみによってクロロフィルと病原菌体組織の両方を励起することが可能であるが、第2の励起光を用いることで、より効率的にクロロフィルが励起され、より確度よく診断することが可能となる。
【0009】
上記励起光照射手段は1つ又は複数の光源であり、上記第1の励起光と上記第2の励起光とが同一の上記1つ又は複数の光源により照射されてもよい。また、上記励起光照射手段は複数の光源であり、上記第1の励起光と上記第2の励起光とがそれぞれ異なる光源により照射されてもよい。
【0010】
また、上記蛍光検出手段は1つ又は複数の蛍光検出器であり、上記近赤外蛍光と上記可視光蛍光とが同一の上記1つ又は複数の蛍光検出器により検出されてもよい。また、上記蛍光検出手段は複数の蛍光検出器であり、上記近赤外蛍光と上記可視光蛍光とがそれぞれ異なる蛍光検出器により検出されてもよい。また、上記蛍光検出手段は1次元蛍光検出器及び2次元蛍光検出器のうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、上記蛍光検出手段が、上記近赤外蛍光と上記可視光蛍光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで検出してもよい。また、上記励起光照射手段が、上記第1の励起光と上記第2の励起光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで照射してもよい。
【0012】
また、上記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌であることが好ましい。植物に感染する病原菌の中でもこれらの病原菌は、上記410nm以上の波長の可視光領域に、強い自家蛍光を有するからである。
【0013】
また、本発明は、植物体の病原菌感染診断方法であって、上記植物体の診断対象部位及び該診断対象部位周辺の健常部位に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射工程と、上記診断対象部位及び上記健常部位からの近赤外蛍光を検出する第1の蛍光検出工程と、上記診断対象部位及び上記健常部位からの410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する第2の蛍光検出工程と、診断工程と、を含み、上記診断工程においては、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位における蛍光強度が、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%未満であり、かつ、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位の蛍光強度が、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%より大きい場合に、上記植物体が病原菌に感染していると診断し、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位における蛍光強度が、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%以上であり、かつ、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位の蛍光強度が、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%以下である場合に、上記植物体が上記病原菌に感染していないと診断する、植物体の病原菌感染診断方法を提供する。
【0014】
上記植物体の病原菌感染診断方法では、励起光照射工程において、植物体の診断対象部位及び該診断対象部位周辺の健常部位に300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する。この第1の励起光はクロロフィルと病原菌体の組織を励起し、クロロフィルから近赤外蛍光、及び、病原菌体から410nm以上の波長の可視光蛍光が発せられる。それぞれの蛍光を第1の蛍光検出工程及び第2の蛍光検出工程においてそれぞれ検出する。植物体が病原菌に感染して診断対象部位の細胞が破壊されている場合、クロロフィル量が低下するので、クロロフィルに由来する近赤外蛍光の強度が、診断対象部位において、健常部位における蛍光強度よりも低下する。また、診断対象部位に病原菌が存在している場合、病原菌体に由来する可視光蛍光が検出され、その蛍光強度が、診断対象部位において、健常部位における蛍光強度よりも強くなる。本発明の方法は、クロロフィルに由来する近赤外蛍光及び病原菌に由来する可視光蛍光の両方の蛍光を検出することにより、病原菌に感染しているか否かを確度よく診断することができる。しかも、植物体を生育させたまま、即座に診断することができる。
【0015】
上記本発明の方法では、上記診断対象部位及び上記健常部位に、680nm以下の波長の第2の励起光を照射する励起光照射工程をさらに備えることが好ましい。第2の励起光を照射することで、より効率的にクロロフィルが励起され、さらに確度よく診断することが可能となる。
【0016】
また、上記本発明の方法では、上記第1の蛍光検出工程と上記第2の蛍光検出工程とを、同時に又は異なるタイミングで行うことが好ましい。同時に検出することで、より短い時間で診断できる。また、異なるタイミングで検出することで、検出器が1つの場合でも、植物体からの蛍光が近赤外蛍光又は410nm以上の波長の可視光蛍光のどちらの蛍光なのか明確に判別でき、より確度よく診断することができる。
【0017】
また、上記本発明の方法では、上記第1の励起光を照射する励起光照射工程と、上記第2の励起光を照射する励起光照射工程とを、同時に又は異なるタイミングで行うことが好ましい。第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射することで、近赤外蛍光と410nm以上の波長の可視光蛍光の同時検出が容易になる。また、第1の励起光と第2の励起光をそれぞれ異なるタイミングで照射することにより、それぞれの励起光に由来する蛍光を精度よく検出することができる。
【0018】
上記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌であることが好ましい。植物に感染する病原菌の中でもこれらの病原菌は、上記410nm以上の波長の可視光領域に強い自家蛍光を有するため、本発明の方法によってさらに確度よく感染の有無を診断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の植物体の病原菌感染診断装置によれば、植物体が病原菌に感染しているか否かを確度よく診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図5】図5は、イチゴ生葉に375nmの紫外領域の波長の励起光を照射して検出された近赤外蛍光画像である。
【図6】図6は、炭疽病菌の分生子と菌糸の混合懸濁液に、360nm、380nm、410nmの励起光を照射したときの、それぞれの励起光に対応する蛍光スペクトルである。
【図7】図7は、炭疽病菌の分生子と菌糸の混合懸濁液に、300〜400nmの励起光を、波長を変化させて照射したときの、410nmの波長の蛍光を測定して得られた励起光スペクトルである。
【図8】図8は、炭疽病菌の分生糸の(A)明視野画像と(B)475nm以上の波長の蛍光画像である。
【図9】図9は、炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の(A)明視野画像と(B)710nm以上の波長の近赤外蛍光画像である。
【図10】図10は、炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の、病変部を横断する線でスキャンした近赤外蛍光イメージングプロファイルである。
【図11】図11は、炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の(A)明視野画像と(B)475nm以上の波長の蛍光画像である。
【図12】図12は、イチゴうどん粉病菌に感染したイチゴ生葉の(A)明視野画像と(B)428〜491nmの波長の蛍光画像である。
【図13】図13は、イチゴうどん粉病菌に感染したイチゴ生葉の、病変部を横断する線でスキャンした波長428〜491nmの蛍光のイメージングプロファイルである。
【図14】図14は、イチゴうどん粉病菌に感染したイチゴ生葉の、(A)428〜491nmの波長の蛍光画像と(B)710nm以上の波長の近赤外蛍光画像である。
【図15】図15は、病変部を横断する線でスキャンした、(A)428〜491nmの波長の蛍光のイメージングプロファイルと、(B)710nm以上の波長の近赤外蛍光のイメージングプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
(植物体の病原菌感染診断装置)
図1は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置100を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。本発明の病原菌感染診断装置100は、主として励起光照射手段1と、蛍光検出手段2と、を備える。
【0023】
(励起光照射手段)
励起光照射手段1は、植物体3に300〜500nmの波長の第1の励起光71を照射する。励起光照射手段1としては、例えば、300〜500nmの波長の光を照射できる光源である。このような光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザー半導体(LD)、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー、自由電子レーザー、化学レーザー等のレーザー、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯を挙げることができ、この中でも水銀ランプ、重水素ランプ、キセノンランプ並びに半導体光源であるLED及びLDが好ましい。
【0024】
(第1の励起光)
第1の励起光71は、300〜500nmの波長の光である。この波長の光は、植物体に感染する病原菌体を励起することができ、さらに植物体中のクロロフィルも励起することができる。第1の励起光71は、300〜500nmの波長の光であり、より好ましくは300〜450nmの波長の光であり、さらに好ましくは320〜420nmの波長の光である。第1の励起光71は、波長範囲の幅が狭いことが好ましい。波長範囲の幅が狭ければ、励起光照射によって得られる蛍光の感度が上がる。好ましくは波長範囲の幅は、20nm以下である。また、所望の波長範囲の光を得るために、励起光照射手段1に分光素子41を設けてもよい。分光素子41としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。また、第1の励起光71は、植物体に照射される光強度が、植物体への影響を低減するために、低い照射強度が好ましく、例えば、検出器がCCDの場合、受光面での強度が0.01〜100ルクスが好ましく、検出器が冷却CCDの場合、受光面での強度が0.00000001〜0.01ルクスが好ましい。
【0025】
(蛍光検出手段)
蛍光検出手段2は、植物体3から、410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とを検出する。図1において、植物体からの光8が分光素子51,52によってそれぞれ410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とに分光され、蛍光検出手段2に検出される。蛍光検出手段2としては、410nm以上の波長の可視光と近赤外蛍光とを検出できる蛍光検出器であればよい。このような蛍光検出器としては、例えば、ラインセンサー型のCCD、ラインセンサー型のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、フォトダイオードアレイや、スポット型検出器であるフォトダイオード、PMT(Photomultiplier Tube、光電子増倍管)等の1次元蛍光検出器や、2次元CCDや2次元CMOS等の2次元蛍光検出器を挙げることができる。1次元蛍光検出器では、検出した蛍光の蛍光強度をそのまま数値として測定することができる。2次元蛍光検出器では、検出した蛍光の蛍光強度を画像として確認することができる。また、2次元蛍光検出器を用いた場合でも、画像の画素から蛍光強度を数値として測定することができる。1次元蛍光検出器を用いた場合、装置の構成が簡単になるという利点があり、2次元蛍光検出器を用いた場合、蛍光を視覚的に確認できるという利点がある。なお、1次元蛍光検出器を用いる場合であっても、ラインセンサー型CCDやラインセンサー型CMOSを用いてスキャンしたり、PMT等のスポット型検出器を用いてスキャンしたりすることによって、植物体3からの蛍光を2次元で検出することは可能である。なお、蛍光検出手段2が410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とを分光可能であれば、分光素子51,52を設けなくてもよい。
【0026】
(近赤外蛍光)
近赤外蛍光82は、クロロフィルに由来する蛍光を含む光であり、近赤外光から赤外光までの波長の範囲の光である。近赤外蛍光82の波長の範囲としては、好ましくは680nm〜4100nm、より好ましくは680〜2500nm、さらに好ましくは680〜1000nmである。近赤外蛍光82は、波長範囲の幅が狭いことが、クロロフィルに由来する蛍光の測定感度が向上するため好ましい。波長範囲の幅は、好ましくは700〜850nmである。近赤外蛍光82の波長範囲を狭めるために、蛍光検出手段2に分光素子52を設けてもよい。分光素子52としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。
【0027】
(410nm以上の波長の可視光蛍光)
410nm以上の波長の可視光蛍光81は、病原菌体由来の蛍光を含む光である。可視光蛍光81の波長の範囲としては、好ましくは410nm〜680nm、より好ましくは410〜600nm、さらに好ましくは410〜500nmある。可視光蛍光81は、波長範囲の幅が狭いことが、特定の病原菌体に由来する蛍光の測定感度が向上するため好ましい。波長範囲の幅は、好ましくは20nm以下である。可視光蛍光81の波長範囲を狭めるために、蛍光検出手段2に分光素子51を設けてもよい。分光素子51としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。
【0028】
(第2の励起光)
励起光照射手段1はさらに、第2の励起光72を照射することが好ましい。図2は、励起光照射手段1が第1の励起光に加えて第2の励起光72を照射する実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置110を示す図である。第2の励起光72は、植物体中のクロロフィルを励起する光である。クロロフィルの吸収波長は、300〜500nm、580〜680nmである。したがって、第1の励起光71のみによってクロロフィルと病原菌体の両方を励起することが可能であるが、第2の励起光72を用いることで、より効率的にクロロフィルが励起され、より確度よく植物体の病原菌感染を診断することが可能となる。すなわち、図2の実施形態において、第1の励起光71に励起されて病原菌体が発する蛍光が410nm以上の波長の可視光蛍光81であり、第2の励起光72に励起されてクロロフィルが発する蛍光が近赤外蛍光82である。第2の励起光72は、680nm以下の波長の光であればよいが、好ましくは300〜680nmの波長の光であり、より好ましくは580〜680nmの波長の光であり、さらに好ましくは620〜680nmの波長の光である。また、所望の波長範囲の光を得るために、励起光照射手段1に分光素子42を設けてもよい。分光素子42としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。また、第2の励起光72は、植物体に照射される光強度が、植物体への影響を低減するために、低い照射強度が好ましく、例えば、検出器がCCDの場合、受光面での強度が0.01〜100ルクスが好ましく、検出器が冷却CCDの場合、受光面での強度が0.00000001〜0.01ルクスが好ましい。
【0029】
励起光照射手段は、第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射してもよいし、それぞれ異なるタイミングで照射してもよい。第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射する場合、近赤外蛍光と410nm以上の波長の可視光蛍光の同時検出が容易になる。また、第1の励起光と第2の励起光とをそれぞれ異なるタイミングで照射する場合、それぞれの励起光に由来する蛍光を精度よく検出することができる。第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射するために、第1の励起光と第2の励起光とを通過させるフィルター等の分光素子を用いてもよい。また、第1の励起光と第2の励起光とをそれぞれ異なるタイミングで照射するために、図2のように、それぞれの励起光71,72を通過させるためのフィルター41,42を入れ替えて使用してもよい。
【0030】
植物体に照射される光は、第1の励起光71及び第2の励起光72以外の波長の光を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。植物体に照射される光の総光強度を100%としたときに、第1の励起光71及び第2の励起光72以外の光の光強度は、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.01%未満、さらに好ましくは0.001%未満である。
【0031】
励起光照射手段は、図2に示すように1つの光源であってもよいし、複数の光源であってもよい。図3は、複数の光源を用いて第1の励起光と第2の励起光とを照射する実施形態にかかる、植物体の病原菌感染診断装置120を示す図である。第1の励起光71と第2の励起光72とは、それぞれ異なる光源11,12から照射される。ただし、分光素子を用いたり、異なるタイミングで照射したりすることによって、光源11,12それぞれが第1の励起光71と第2の励起光72との両方を照射することも可能である。
【0032】
また、蛍光検出手段は、図1〜3に示すように1つの検出器であってもよいし、複数の検出器であってもよい。図4は、複数の検出器を用いて近赤外蛍光と410nm以上の波長の可視光蛍光とを検出する実施形態にかかる、植物体の病原菌感染診断装置130を示す図である。第1の励起光71と第2の励起光72とが、それぞれ異なる光源11,12から照射され、植物体からの光8が分光素子51,52によってそれぞれ410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とに分光され、それぞれ異なる蛍光検出器21,22によって検出される。2つの蛍光を異なる蛍光検出器によって検出する場合、2つの蛍光の同時検出が容易になる。なお、蛍光検出器21,22がそれぞれ可視光蛍光81と近赤外蛍光82とを検出可能であれば、分光素子51,52は設けなくてもよい。また、この複数の検出器を用いる実施形態において、第1の励起光71と第2の励起光72とは、同一の光源から照射されてもよく、また、1つの光源から照射されてもよい。さらに、分光素子を用いたり、異なるタイミングで検出したりすることによって、近赤外蛍光82と可視光蛍光81との両方を検出する蛍光検出器を複数用いることも可能である。
【0033】
蛍光検出手段2は、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを同時に検出してもよいし、それぞれ異なるタイミングで検出してもよい。近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを同時に検出する場合、測定時間が短くなり、診断に要する時間が短くなる。また、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とをそれぞれ異なるタイミングで検出する場合、検出器が1つの場合でも確度よく測定を行える。近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを同時に検出するために、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを通過させるバンドパスフィルター等の分光素子を用いてもよい。また、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とをそれぞれ異なるタイミングで検出するために、図1〜図3のように、それぞれの蛍光81,82を通過させるための分光素子51,52を入れ替えて使用してもよい。
【0034】
(病原菌感染診断方法)
次に、図1の実施形態の病原菌感染診断装置100を用いた植物体の病原菌感染診断方法について説明する。
【0035】
本発明の植物体の病原菌感染診断方法は、植物体3の診断対象部位33及び診断対象部位33周辺の健常部位34に、300〜500nmの波長の第1の励起光71を照射する第1の励起光照射工程と、診断対象部位33及び健常部位34からの近赤外蛍光82を検出する第1の蛍光検出工程と、診断対象部位33及び健常部位34からの410nm以上の波長の可視光蛍光81を検出する第2の蛍光検出工程と、診断工程と、を含む。
【0036】
(第1の励起光照射工程)
第1の励起光照射工程は、300〜500nmの波長の第1の励起光71を照射する工程である。第1の励起光照射工程により、植物体に感染する病原菌体を励起し、さらに植物体のクロロフィルも励起する。
【0037】
(第1の蛍光検出工程)
第1の蛍光検出工程は、診断対象部位33及び健常部位34からの近赤外蛍光82を検出する工程である。第1の蛍光検出工程により、植物体のクロロフィルに由来する蛍光を検出する。
【0038】
(第2の蛍光検出工程)
第2の蛍光検出工程は、診断対象部位33及び健常部位34からの410nm以上の波長の可視光蛍光81を検出する工程である。第2の蛍光検出工程により、植物体に感染した病原菌体に由来する蛍光を検出する。
【0039】
第1の蛍光検出工程と、第2の蛍光検出工程とを、同時に行ってもよいし、又は異なるタイミングで行ってもよい。同時に行うことで、計測時間を短くし、診断に要する時間を短くすることができる。また、異なるタイミングで行うことで、用いる検出器が一つの場合でも、近赤外蛍光82又は可視光蛍光81のどちらの蛍光に由来する蛍光かを確度よく判別できる。異なるタイミングで行う場合、第1の蛍光検出工程と第2の蛍光検出工程のどちらを先に行ってもよい。
【0040】
(診断工程)
診断工程においては、以下のようにして、植物体3が病原菌に感染しているか否かの診断を行う。
まず、第1の蛍光検出工程により検出された、診断対象部位33における蛍光強度と、健常部位34における蛍光強度とを比較する。
同様に、第2の蛍光検出工程により検出された、診断対象部位33における蛍光強度と、健常部位34における蛍光強度とを比較する。
そして、第1の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに50%未満であり、かつ、第2の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに150%より大きい場合に、植物体3が病原菌に感染していると診断する。
一方、第1の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに50%以上であり、かつ、第2の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに150%以下である場合に、植物体3が病原菌に感染していないと診断する。
なお、2次元検出器を用いた場合、蛍光強度は精確な値を測定しなくとも、明らかに診断対象部位33における蛍光が健常部位34における蛍光に対して明るいこと、又は、暗いことが視認できる場合がある。そのような場合は、精確な値を測定しなくとも診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度に対して、上記の基準値より大きい又は未満であると判断してよい。
【0041】
(第2の励起光照射工程)
本発明の病原菌感染診断方法は、図2のように、診断対象部位33及び健常部位34に、680nm以下の波長の第2の励起光72を照射する励起光照射工程をさらに備えることが好ましい。第2の励起光照射工程により、植物体のクロロフィルを効率よく励起することができ、より確度のよい診断が行える。
【0042】
本発明の病原菌感染診断方法が第2の励起光照射工程を備える場合、第1の励起光照射工程と、第2の励起光照射工程とは、同時に行ってもよいし、又は異なるタイミングで行ってもよい。同時に行うことで、近赤外蛍光82及び可視光蛍光81の同時検出が容易になる。また、異なるタイミングで行うことで、簡易な分光素子により、一つの光源で両方の励起光照射を行える。異なるタイミングで行う場合、第1の励起光照射工程と第2の励起光照射工程のどちらを先に行ってもよい。
【0043】
(病原菌)
本発明の方法により感染の有無を診断できる病原菌としては、植物が感染する病原菌であれば種類を問わないが、好ましくは、炭疽病菌やうどん粉病菌である。炭疽病菌としては、グロメレラ(Glomerella)属、コレトトリカム(Colletotrichum)属等の炭疽病菌が挙げられ、例えば、グロメレラ・シングラータ(Glomerella cingulata)、コレトトリカム・アキュテータム(Colletotrichum acutatum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloesporioides)等が挙げられる。うどん粉病菌としては、ウドンコカビ科(Erysiphaceae)に属する子嚢菌類が挙げられ、例えば、スファエロテカ・パンノサ(Sphaerotheca pannosa)、スファエロテカ・フムリ(Sphaerotheca humuli)、スファエロテカ・キュキュルビタエ(Sphaerotheca cucurbitae)、スファエロテカ・フリジネア(Sphaerotheca fuliginea)、オイディウム・リコペルシシ(Oidium lycopersici)、ウンシヌラ・シムランス(Uncinula simulans)、エリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator)、エリシフェ・ポリゴニ(Erysiphe polygoni)、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)、フィラクチニア・モリコラ(Phyllactinia moricola)等が挙げられる。
【0044】
(植物体)
本発明の方法により診断できる植物としては、草本でも木本でもよい。また、種子植物、シダ植物、コケ植物であってもよいが、種子植物が好ましい。その中でも、イチゴ、スイカ、メロン、キュウリ、トウガン、カボチャ、ナス、トウガラシ、ピーマン、トマト、ムギ、マンゴー、ナシ、カキ、リンゴ、ブドウ、シクラメン、ベゴニア、バラ、ユリ、シバ、チャが好ましい。
【0045】
診断に用いる診断対象部位33及び健常部位34は、病原菌が感染する部位であれば、根、茎、葉、果実等、植物体のいずれの部位でもよいが、蛍光測定が容易なことから好ましくは葉や果実である。クロロフィルが豊富なことから葉がより好ましい。また、植物を生育させたまま診断できるのも本発明の利点である。もちろん、診断対象部位33及び健常部位34を含む組織を採取した後に測定してもよい。植物体の特定部位に、病原菌の感染が疑われる症状、例えば黒斑、白斑、褐斑、萎縮等が生じている場合、該部位を診断対象部位33として、本発明の方法により病原菌の感染の有無を確認することができる。
【0046】
なお、本発明は上記説明した実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
(クロロフィルの励起波長及び蛍光波長の検討)
イチゴ生葉にLEDを光源として、375nmの紫外領域の波長の励起光を照射し、710nm以上の波長の近赤外蛍光をCCDカメラで検出した。図5に近赤外蛍光画像を示す。クロロフィルが明るく光る蛍光画像が取得できたことから、クロロフィルを励起する励起光の励起波長として紫外領域の波長でさえも利用できることが示された。
【0048】
(実施例2)
(炭疽病菌の励起波長及び蛍光波長の検討)
炭疽病菌に由来する蛍光波長を測定した。炭疽病菌(Glomerella cingulata)の分生子と菌糸の混合懸濁液を調製し、該混合懸濁液に、360nm、380nm、400nmの励起光を照射し、それぞれの励起光に対応する蛍光スペクトルを測定した。図6に蛍光スペクトル(440〜540nm)を示す。380nm、400nmの励起光を照射したとき、蛍光スペクトルのピークは、両方の励起光ともに、448nm、467nm、482nm、492nm付近に見られた。360nmの波長の励起光を照射したときは、蛍光強度はスペクトル全体で弱いものの、やはり380nmと400nmの波長の励起光を照射したときと同じ部分にピークが見られた。励起波長を変えても蛍光スペクトルのピークが変わらないことから、該ピークは炭疽病菌由来の蛍光に起因するものであることが分かった。
【0049】
(実施例3)
(炭疽病菌の励起波長及び蛍光波長の検討)
励起光の波長を変化させて、炭疽病菌に由来する蛍光を測定した。炭疽病菌(Glomerella cingulata)の分生子と菌糸の混合懸濁液を調製し、該混合懸濁液に、300〜400nmの波長の励起光を、波長を変化させて照射し、410nmの波長の蛍光を測定した。図7に励起光スペクトル(300〜400nm)を示す。最短300nmの波長の励起光により、炭疽病菌に由来する410nmの波長の蛍光を取得できることが分かった。
【0050】
(実施例4)
(炭疽病菌の分生子の蛍光画像の取得)
炭疽病菌の分生糸の蛍光を測定した。炭疽病菌(Glomerella cingulata)に水銀ランプを光源として、400〜440nmの波長の励起光を照射し、475nm以上の波長の蛍光をCCDカメラで検出した。図8(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と蛍光画像を示す。図8(B)には炭疽病菌由来の蛍光が認められた。
【0051】
(実施例5)
(炭疽病菌に感染したイチゴ生葉のクロロフィル由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉に炭疽病菌(Glomerella cingulata)を接種した。接種後、5〜7日で葉に炭疽病の初期病変が認められ、約10日で明らかな病変(黒い斑点)となった。接種した生葉に、LEDを光源として、405nmの励起波長を照射し、710nm以上の波長の近赤外蛍光をCCDカメラで検出した。図9(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と近赤外蛍光画像を示す。明視野画像(A)でわずかに認められた黒斑は、近赤外蛍光画像(B)では明視野画像の黒斑よりも大きな黒斑となった(図9(A)(B)中、丸で囲まれた部分)。病変部ではクロロフィルが欠損し、病変部周辺の健常部位に存在するクロロフィルの蛍光強度に対して、病変部における蛍光強度が低くなったためと考えられる。なお、病変部の近赤外蛍光の蛍光強度は病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに、約30%となっていた。図10に病変部を横断する線でスキャンした近赤外蛍光イメージングプロファイルを示す。蛍光強度を表すA.U.(任意単位:arbitrary unit)が著しく低くなっているところが病変部、その他の部分が健常部位である。
【0052】
(実施例6)
(炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の炭疽病菌由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉に炭疽病菌(Glomerella cingulata)を接種した。接種後、5〜7日で葉に炭疽病の初期病変が認められ、約10日で明らかな病変(黒い斑点)となった。接種した生葉に、水銀ランプを光源として、400〜440nmの励起波長を照射し、475nm以上の波長の蛍光をCCDで検出した。図11(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と蛍光画像を示す。明視野画像(A)で認められた黒斑部位から、蛍光画像(B)で黄緑色の蛍光が認められた(図11(A)及び(B)中、丸で囲まれた部分)。該蛍光は炭疽病菌の菌体に由来する蛍光と考えられる。病変部(丸で囲まれた部分)の上記蛍光波長における蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約200%となっていた。
【0053】
(実施例7)
(うどん粉病菌に感染したイチゴ生葉のうどん粉病菌由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉にイチゴうどん粉病菌(Sphaerotheca aphanis)を接種した。接種後、葉が粉状に白くなり、うどん粉病の病変が認められた。接種した生葉に、LEDを光源として、405nmの励起波長を照射し、バンドパスフィルターを使用して428〜491nmの波長の蛍光をCCDカメラで検出した。図12(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と蛍光画像を示す。明視野画像(A)で白く認められた病変部から、明るく白い蛍光が発せられているのが蛍光画像(B)で観察された。(B)で観察された蛍光は、イチゴうどん粉病の菌体に由来する蛍光と考えられる。病変部の上記蛍光波長における蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約250%となっていた。図13に、病変部を横断する線でスキャンした、波長428〜491nmの蛍光のイメージングプロファイルを示す。蛍光強度を表すA.U.(任意単位:arbitrary unit)が著しく高くなっているところが病変部、その他の部分が健常部位である。
【0054】
(実施例8)
(うどん粉病菌に感染したイチゴ生葉のうどん粉病菌及びクロロフィル由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉にイチゴうどん粉病菌(Sphaerotheca aphanis)を接種した。接種後、葉が粉状に白くなり、うどん粉病の病変が認められた。接種した生葉に、LEDを光源として、375nmの励起波長を照射し、バンドパスフィルターを使用して428〜491nmの波長の蛍光をCCDカメラで検出した。また、同じ生葉に、LEDを光源として、375nmの励起波長を照射し、710nm以上の波長の近赤外蛍光をCCDカメラで検出した。図14(A)及び(B)にそれぞれ波長428〜491nmの蛍光画像と波長710nm以上の近赤外蛍光画像を示す。(A)で明るく白く光っている病変部が、(B)では黒くなっているのが観察された。病変部について、(A)では病原菌体由来の蛍光が観察され、(B)ではクロロフィルの欠損により近赤外蛍光が弱くなったためである。図14(A)(B)に示す白線に沿ってスキャンした、波長428〜491nm、710nm以上の蛍光のイメージングプロファイルをそれぞれ図15(A)(B)に示す。図15(A)において蛍光強度を表すA.U.(任意単位:arbitrary unit)が著しく高くなっているところが病変部、その他の部分が健常部位である。図15(A)で蛍光強度が高くなっている部分が、図15(B)では蛍光強度が低くなっていた。なお、病変部の蛍光波長428〜491nmにおける蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約200%となっていた。また、病変部の蛍光波長710nm以上における蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約30%となっていた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体の病原菌感染診断装置及び植物体の病原菌感染診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物体の生育状況を診断する方法として、例えば、特許文献1のように光を用いた診断方法がある。特許文献1の方法では、植物体の生葉から放出される蛍光を観測することにより、植物体が病変、老化、あるいは枯死の状態、もしくはこれらのいずれかの状態への移行過程にあると判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3807940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、植物体が何らかの病原菌に感染しているのか否かまでは診断できない。一般的に農作物が何らかの病原菌に感染するとすぐに農場一帯に広まってしまうため、病原菌に感染した農作物をより早期に処分することが重要である。しかしながら、感染初期においては、植物体の感染が疑われる部位を目で見ただけでは、実際に病原菌に感染しているか否かの診断は、専門家でさえも難しい。したがって、農作物が病原菌に感染しているか否かを診断できる技術が必要である。
【0005】
そこで本発明は、植物体が病原菌に感染しているか否かを診断できる、植物体の病原菌感染診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、植物体に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射手段と、上記植物体からの近赤外蛍光及び410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する蛍光検出手段と、を備える、植物体の病原菌感染診断装置を提供する。
【0007】
上記病原菌感染診断装置によれば、励起光照射手段により、植物体に300〜500nmの波長の第1の励起光が照射される。この第1の励起光はクロロフィルと病原菌体を励起し、クロロフィルから近赤外蛍光、及び、病原菌体から410nm以上の波長の可視光域の自家蛍光が発せられ、それぞれの蛍光が病原菌感染診断装置の蛍光検出手段により検出される。植物体が病原菌に感染している場合、感染部位のクロロフィル量が低下するので、クロロフィルに由来する近赤外蛍光の強度が感染部位で低下する。また、病原菌体に由来する蛍光が感染部位で検出される。本発明の装置は、クロロフィルに由来する近赤外蛍光及び病原菌体に由来する可視光蛍光の両方の蛍光を検出することにより、病原菌に感染しているか否かを確度よく診断することができる。また、本発明の装置を使用すれば、専門家でなくとも容易に感染の有無を診断できる。しかも、植物体が病原菌に感染しているか否かを、植物体を生育させたまま、即座に診断することができる。
【0008】
上記励起光照射手段がさらに、680nm以下の波長の第2の励起光を照射することが好ましい。第1の励起光のみによってクロロフィルと病原菌体組織の両方を励起することが可能であるが、第2の励起光を用いることで、より効率的にクロロフィルが励起され、より確度よく診断することが可能となる。
【0009】
上記励起光照射手段は1つ又は複数の光源であり、上記第1の励起光と上記第2の励起光とが同一の上記1つ又は複数の光源により照射されてもよい。また、上記励起光照射手段は複数の光源であり、上記第1の励起光と上記第2の励起光とがそれぞれ異なる光源により照射されてもよい。
【0010】
また、上記蛍光検出手段は1つ又は複数の蛍光検出器であり、上記近赤外蛍光と上記可視光蛍光とが同一の上記1つ又は複数の蛍光検出器により検出されてもよい。また、上記蛍光検出手段は複数の蛍光検出器であり、上記近赤外蛍光と上記可視光蛍光とがそれぞれ異なる蛍光検出器により検出されてもよい。また、上記蛍光検出手段は1次元蛍光検出器及び2次元蛍光検出器のうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
また、上記蛍光検出手段が、上記近赤外蛍光と上記可視光蛍光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで検出してもよい。また、上記励起光照射手段が、上記第1の励起光と上記第2の励起光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで照射してもよい。
【0012】
また、上記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌であることが好ましい。植物に感染する病原菌の中でもこれらの病原菌は、上記410nm以上の波長の可視光領域に、強い自家蛍光を有するからである。
【0013】
また、本発明は、植物体の病原菌感染診断方法であって、上記植物体の診断対象部位及び該診断対象部位周辺の健常部位に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射工程と、上記診断対象部位及び上記健常部位からの近赤外蛍光を検出する第1の蛍光検出工程と、上記診断対象部位及び上記健常部位からの410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する第2の蛍光検出工程と、診断工程と、を含み、上記診断工程においては、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位における蛍光強度が、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%未満であり、かつ、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位の蛍光強度が、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%より大きい場合に、上記植物体が病原菌に感染していると診断し、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位における蛍光強度が、上記第1の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%以上であり、かつ、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記診断対象部位の蛍光強度が、上記第2の蛍光検出工程により検出された上記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%以下である場合に、上記植物体が上記病原菌に感染していないと診断する、植物体の病原菌感染診断方法を提供する。
【0014】
上記植物体の病原菌感染診断方法では、励起光照射工程において、植物体の診断対象部位及び該診断対象部位周辺の健常部位に300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する。この第1の励起光はクロロフィルと病原菌体の組織を励起し、クロロフィルから近赤外蛍光、及び、病原菌体から410nm以上の波長の可視光蛍光が発せられる。それぞれの蛍光を第1の蛍光検出工程及び第2の蛍光検出工程においてそれぞれ検出する。植物体が病原菌に感染して診断対象部位の細胞が破壊されている場合、クロロフィル量が低下するので、クロロフィルに由来する近赤外蛍光の強度が、診断対象部位において、健常部位における蛍光強度よりも低下する。また、診断対象部位に病原菌が存在している場合、病原菌体に由来する可視光蛍光が検出され、その蛍光強度が、診断対象部位において、健常部位における蛍光強度よりも強くなる。本発明の方法は、クロロフィルに由来する近赤外蛍光及び病原菌に由来する可視光蛍光の両方の蛍光を検出することにより、病原菌に感染しているか否かを確度よく診断することができる。しかも、植物体を生育させたまま、即座に診断することができる。
【0015】
上記本発明の方法では、上記診断対象部位及び上記健常部位に、680nm以下の波長の第2の励起光を照射する励起光照射工程をさらに備えることが好ましい。第2の励起光を照射することで、より効率的にクロロフィルが励起され、さらに確度よく診断することが可能となる。
【0016】
また、上記本発明の方法では、上記第1の蛍光検出工程と上記第2の蛍光検出工程とを、同時に又は異なるタイミングで行うことが好ましい。同時に検出することで、より短い時間で診断できる。また、異なるタイミングで検出することで、検出器が1つの場合でも、植物体からの蛍光が近赤外蛍光又は410nm以上の波長の可視光蛍光のどちらの蛍光なのか明確に判別でき、より確度よく診断することができる。
【0017】
また、上記本発明の方法では、上記第1の励起光を照射する励起光照射工程と、上記第2の励起光を照射する励起光照射工程とを、同時に又は異なるタイミングで行うことが好ましい。第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射することで、近赤外蛍光と410nm以上の波長の可視光蛍光の同時検出が容易になる。また、第1の励起光と第2の励起光をそれぞれ異なるタイミングで照射することにより、それぞれの励起光に由来する蛍光を精度よく検出することができる。
【0018】
上記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌であることが好ましい。植物に感染する病原菌の中でもこれらの病原菌は、上記410nm以上の波長の可視光領域に強い自家蛍光を有するため、本発明の方法によってさらに確度よく感染の有無を診断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の植物体の病原菌感染診断装置によれば、植物体が病原菌に感染しているか否かを確度よく診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。
【図5】図5は、イチゴ生葉に375nmの紫外領域の波長の励起光を照射して検出された近赤外蛍光画像である。
【図6】図6は、炭疽病菌の分生子と菌糸の混合懸濁液に、360nm、380nm、410nmの励起光を照射したときの、それぞれの励起光に対応する蛍光スペクトルである。
【図7】図7は、炭疽病菌の分生子と菌糸の混合懸濁液に、300〜400nmの励起光を、波長を変化させて照射したときの、410nmの波長の蛍光を測定して得られた励起光スペクトルである。
【図8】図8は、炭疽病菌の分生糸の(A)明視野画像と(B)475nm以上の波長の蛍光画像である。
【図9】図9は、炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の(A)明視野画像と(B)710nm以上の波長の近赤外蛍光画像である。
【図10】図10は、炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の、病変部を横断する線でスキャンした近赤外蛍光イメージングプロファイルである。
【図11】図11は、炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の(A)明視野画像と(B)475nm以上の波長の蛍光画像である。
【図12】図12は、イチゴうどん粉病菌に感染したイチゴ生葉の(A)明視野画像と(B)428〜491nmの波長の蛍光画像である。
【図13】図13は、イチゴうどん粉病菌に感染したイチゴ生葉の、病変部を横断する線でスキャンした波長428〜491nmの蛍光のイメージングプロファイルである。
【図14】図14は、イチゴうどん粉病菌に感染したイチゴ生葉の、(A)428〜491nmの波長の蛍光画像と(B)710nm以上の波長の近赤外蛍光画像である。
【図15】図15は、病変部を横断する線でスキャンした、(A)428〜491nmの波長の蛍光のイメージングプロファイルと、(B)710nm以上の波長の近赤外蛍光のイメージングプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
(植物体の病原菌感染診断装置)
図1は、本発明の一実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置100を用いて本発明の方法を実施している様子を表す模式図である。本発明の病原菌感染診断装置100は、主として励起光照射手段1と、蛍光検出手段2と、を備える。
【0023】
(励起光照射手段)
励起光照射手段1は、植物体3に300〜500nmの波長の第1の励起光71を照射する。励起光照射手段1としては、例えば、300〜500nmの波長の光を照射できる光源である。このような光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザー半導体(LD)、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー、自由電子レーザー、化学レーザー等のレーザー、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯を挙げることができ、この中でも水銀ランプ、重水素ランプ、キセノンランプ並びに半導体光源であるLED及びLDが好ましい。
【0024】
(第1の励起光)
第1の励起光71は、300〜500nmの波長の光である。この波長の光は、植物体に感染する病原菌体を励起することができ、さらに植物体中のクロロフィルも励起することができる。第1の励起光71は、300〜500nmの波長の光であり、より好ましくは300〜450nmの波長の光であり、さらに好ましくは320〜420nmの波長の光である。第1の励起光71は、波長範囲の幅が狭いことが好ましい。波長範囲の幅が狭ければ、励起光照射によって得られる蛍光の感度が上がる。好ましくは波長範囲の幅は、20nm以下である。また、所望の波長範囲の光を得るために、励起光照射手段1に分光素子41を設けてもよい。分光素子41としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。また、第1の励起光71は、植物体に照射される光強度が、植物体への影響を低減するために、低い照射強度が好ましく、例えば、検出器がCCDの場合、受光面での強度が0.01〜100ルクスが好ましく、検出器が冷却CCDの場合、受光面での強度が0.00000001〜0.01ルクスが好ましい。
【0025】
(蛍光検出手段)
蛍光検出手段2は、植物体3から、410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とを検出する。図1において、植物体からの光8が分光素子51,52によってそれぞれ410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とに分光され、蛍光検出手段2に検出される。蛍光検出手段2としては、410nm以上の波長の可視光と近赤外蛍光とを検出できる蛍光検出器であればよい。このような蛍光検出器としては、例えば、ラインセンサー型のCCD、ラインセンサー型のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、フォトダイオードアレイや、スポット型検出器であるフォトダイオード、PMT(Photomultiplier Tube、光電子増倍管)等の1次元蛍光検出器や、2次元CCDや2次元CMOS等の2次元蛍光検出器を挙げることができる。1次元蛍光検出器では、検出した蛍光の蛍光強度をそのまま数値として測定することができる。2次元蛍光検出器では、検出した蛍光の蛍光強度を画像として確認することができる。また、2次元蛍光検出器を用いた場合でも、画像の画素から蛍光強度を数値として測定することができる。1次元蛍光検出器を用いた場合、装置の構成が簡単になるという利点があり、2次元蛍光検出器を用いた場合、蛍光を視覚的に確認できるという利点がある。なお、1次元蛍光検出器を用いる場合であっても、ラインセンサー型CCDやラインセンサー型CMOSを用いてスキャンしたり、PMT等のスポット型検出器を用いてスキャンしたりすることによって、植物体3からの蛍光を2次元で検出することは可能である。なお、蛍光検出手段2が410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とを分光可能であれば、分光素子51,52を設けなくてもよい。
【0026】
(近赤外蛍光)
近赤外蛍光82は、クロロフィルに由来する蛍光を含む光であり、近赤外光から赤外光までの波長の範囲の光である。近赤外蛍光82の波長の範囲としては、好ましくは680nm〜4100nm、より好ましくは680〜2500nm、さらに好ましくは680〜1000nmである。近赤外蛍光82は、波長範囲の幅が狭いことが、クロロフィルに由来する蛍光の測定感度が向上するため好ましい。波長範囲の幅は、好ましくは700〜850nmである。近赤外蛍光82の波長範囲を狭めるために、蛍光検出手段2に分光素子52を設けてもよい。分光素子52としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。
【0027】
(410nm以上の波長の可視光蛍光)
410nm以上の波長の可視光蛍光81は、病原菌体由来の蛍光を含む光である。可視光蛍光81の波長の範囲としては、好ましくは410nm〜680nm、より好ましくは410〜600nm、さらに好ましくは410〜500nmある。可視光蛍光81は、波長範囲の幅が狭いことが、特定の病原菌体に由来する蛍光の測定感度が向上するため好ましい。波長範囲の幅は、好ましくは20nm以下である。可視光蛍光81の波長範囲を狭めるために、蛍光検出手段2に分光素子51を設けてもよい。分光素子51としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。
【0028】
(第2の励起光)
励起光照射手段1はさらに、第2の励起光72を照射することが好ましい。図2は、励起光照射手段1が第1の励起光に加えて第2の励起光72を照射する実施形態にかかる植物体の病原菌感染診断装置110を示す図である。第2の励起光72は、植物体中のクロロフィルを励起する光である。クロロフィルの吸収波長は、300〜500nm、580〜680nmである。したがって、第1の励起光71のみによってクロロフィルと病原菌体の両方を励起することが可能であるが、第2の励起光72を用いることで、より効率的にクロロフィルが励起され、より確度よく植物体の病原菌感染を診断することが可能となる。すなわち、図2の実施形態において、第1の励起光71に励起されて病原菌体が発する蛍光が410nm以上の波長の可視光蛍光81であり、第2の励起光72に励起されてクロロフィルが発する蛍光が近赤外蛍光82である。第2の励起光72は、680nm以下の波長の光であればよいが、好ましくは300〜680nmの波長の光であり、より好ましくは580〜680nmの波長の光であり、さらに好ましくは620〜680nmの波長の光である。また、所望の波長範囲の光を得るために、励起光照射手段1に分光素子42を設けてもよい。分光素子42としては、例えば、バンドパスフィルター、長波長カットフィルター、短波長カットフィルターが挙げられる。また、第2の励起光72は、植物体に照射される光強度が、植物体への影響を低減するために、低い照射強度が好ましく、例えば、検出器がCCDの場合、受光面での強度が0.01〜100ルクスが好ましく、検出器が冷却CCDの場合、受光面での強度が0.00000001〜0.01ルクスが好ましい。
【0029】
励起光照射手段は、第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射してもよいし、それぞれ異なるタイミングで照射してもよい。第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射する場合、近赤外蛍光と410nm以上の波長の可視光蛍光の同時検出が容易になる。また、第1の励起光と第2の励起光とをそれぞれ異なるタイミングで照射する場合、それぞれの励起光に由来する蛍光を精度よく検出することができる。第1の励起光と第2の励起光とを同時に照射するために、第1の励起光と第2の励起光とを通過させるフィルター等の分光素子を用いてもよい。また、第1の励起光と第2の励起光とをそれぞれ異なるタイミングで照射するために、図2のように、それぞれの励起光71,72を通過させるためのフィルター41,42を入れ替えて使用してもよい。
【0030】
植物体に照射される光は、第1の励起光71及び第2の励起光72以外の波長の光を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。植物体に照射される光の総光強度を100%としたときに、第1の励起光71及び第2の励起光72以外の光の光強度は、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.01%未満、さらに好ましくは0.001%未満である。
【0031】
励起光照射手段は、図2に示すように1つの光源であってもよいし、複数の光源であってもよい。図3は、複数の光源を用いて第1の励起光と第2の励起光とを照射する実施形態にかかる、植物体の病原菌感染診断装置120を示す図である。第1の励起光71と第2の励起光72とは、それぞれ異なる光源11,12から照射される。ただし、分光素子を用いたり、異なるタイミングで照射したりすることによって、光源11,12それぞれが第1の励起光71と第2の励起光72との両方を照射することも可能である。
【0032】
また、蛍光検出手段は、図1〜3に示すように1つの検出器であってもよいし、複数の検出器であってもよい。図4は、複数の検出器を用いて近赤外蛍光と410nm以上の波長の可視光蛍光とを検出する実施形態にかかる、植物体の病原菌感染診断装置130を示す図である。第1の励起光71と第2の励起光72とが、それぞれ異なる光源11,12から照射され、植物体からの光8が分光素子51,52によってそれぞれ410nm以上の波長の可視光蛍光81と近赤外蛍光82とに分光され、それぞれ異なる蛍光検出器21,22によって検出される。2つの蛍光を異なる蛍光検出器によって検出する場合、2つの蛍光の同時検出が容易になる。なお、蛍光検出器21,22がそれぞれ可視光蛍光81と近赤外蛍光82とを検出可能であれば、分光素子51,52は設けなくてもよい。また、この複数の検出器を用いる実施形態において、第1の励起光71と第2の励起光72とは、同一の光源から照射されてもよく、また、1つの光源から照射されてもよい。さらに、分光素子を用いたり、異なるタイミングで検出したりすることによって、近赤外蛍光82と可視光蛍光81との両方を検出する蛍光検出器を複数用いることも可能である。
【0033】
蛍光検出手段2は、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを同時に検出してもよいし、それぞれ異なるタイミングで検出してもよい。近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを同時に検出する場合、測定時間が短くなり、診断に要する時間が短くなる。また、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とをそれぞれ異なるタイミングで検出する場合、検出器が1つの場合でも確度よく測定を行える。近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを同時に検出するために、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とを通過させるバンドパスフィルター等の分光素子を用いてもよい。また、近赤外蛍光82と可視光蛍光81とをそれぞれ異なるタイミングで検出するために、図1〜図3のように、それぞれの蛍光81,82を通過させるための分光素子51,52を入れ替えて使用してもよい。
【0034】
(病原菌感染診断方法)
次に、図1の実施形態の病原菌感染診断装置100を用いた植物体の病原菌感染診断方法について説明する。
【0035】
本発明の植物体の病原菌感染診断方法は、植物体3の診断対象部位33及び診断対象部位33周辺の健常部位34に、300〜500nmの波長の第1の励起光71を照射する第1の励起光照射工程と、診断対象部位33及び健常部位34からの近赤外蛍光82を検出する第1の蛍光検出工程と、診断対象部位33及び健常部位34からの410nm以上の波長の可視光蛍光81を検出する第2の蛍光検出工程と、診断工程と、を含む。
【0036】
(第1の励起光照射工程)
第1の励起光照射工程は、300〜500nmの波長の第1の励起光71を照射する工程である。第1の励起光照射工程により、植物体に感染する病原菌体を励起し、さらに植物体のクロロフィルも励起する。
【0037】
(第1の蛍光検出工程)
第1の蛍光検出工程は、診断対象部位33及び健常部位34からの近赤外蛍光82を検出する工程である。第1の蛍光検出工程により、植物体のクロロフィルに由来する蛍光を検出する。
【0038】
(第2の蛍光検出工程)
第2の蛍光検出工程は、診断対象部位33及び健常部位34からの410nm以上の波長の可視光蛍光81を検出する工程である。第2の蛍光検出工程により、植物体に感染した病原菌体に由来する蛍光を検出する。
【0039】
第1の蛍光検出工程と、第2の蛍光検出工程とを、同時に行ってもよいし、又は異なるタイミングで行ってもよい。同時に行うことで、計測時間を短くし、診断に要する時間を短くすることができる。また、異なるタイミングで行うことで、用いる検出器が一つの場合でも、近赤外蛍光82又は可視光蛍光81のどちらの蛍光に由来する蛍光かを確度よく判別できる。異なるタイミングで行う場合、第1の蛍光検出工程と第2の蛍光検出工程のどちらを先に行ってもよい。
【0040】
(診断工程)
診断工程においては、以下のようにして、植物体3が病原菌に感染しているか否かの診断を行う。
まず、第1の蛍光検出工程により検出された、診断対象部位33における蛍光強度と、健常部位34における蛍光強度とを比較する。
同様に、第2の蛍光検出工程により検出された、診断対象部位33における蛍光強度と、健常部位34における蛍光強度とを比較する。
そして、第1の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに50%未満であり、かつ、第2の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに150%より大きい場合に、植物体3が病原菌に感染していると診断する。
一方、第1の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに50%以上であり、かつ、第2の蛍光検出工程により検出された診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度を100%としたときに150%以下である場合に、植物体3が病原菌に感染していないと診断する。
なお、2次元検出器を用いた場合、蛍光強度は精確な値を測定しなくとも、明らかに診断対象部位33における蛍光が健常部位34における蛍光に対して明るいこと、又は、暗いことが視認できる場合がある。そのような場合は、精確な値を測定しなくとも診断対象部位33における蛍光強度が健常部位34における蛍光強度に対して、上記の基準値より大きい又は未満であると判断してよい。
【0041】
(第2の励起光照射工程)
本発明の病原菌感染診断方法は、図2のように、診断対象部位33及び健常部位34に、680nm以下の波長の第2の励起光72を照射する励起光照射工程をさらに備えることが好ましい。第2の励起光照射工程により、植物体のクロロフィルを効率よく励起することができ、より確度のよい診断が行える。
【0042】
本発明の病原菌感染診断方法が第2の励起光照射工程を備える場合、第1の励起光照射工程と、第2の励起光照射工程とは、同時に行ってもよいし、又は異なるタイミングで行ってもよい。同時に行うことで、近赤外蛍光82及び可視光蛍光81の同時検出が容易になる。また、異なるタイミングで行うことで、簡易な分光素子により、一つの光源で両方の励起光照射を行える。異なるタイミングで行う場合、第1の励起光照射工程と第2の励起光照射工程のどちらを先に行ってもよい。
【0043】
(病原菌)
本発明の方法により感染の有無を診断できる病原菌としては、植物が感染する病原菌であれば種類を問わないが、好ましくは、炭疽病菌やうどん粉病菌である。炭疽病菌としては、グロメレラ(Glomerella)属、コレトトリカム(Colletotrichum)属等の炭疽病菌が挙げられ、例えば、グロメレラ・シングラータ(Glomerella cingulata)、コレトトリカム・アキュテータム(Colletotrichum acutatum)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloesporioides)等が挙げられる。うどん粉病菌としては、ウドンコカビ科(Erysiphaceae)に属する子嚢菌類が挙げられ、例えば、スファエロテカ・パンノサ(Sphaerotheca pannosa)、スファエロテカ・フムリ(Sphaerotheca humuli)、スファエロテカ・キュキュルビタエ(Sphaerotheca cucurbitae)、スファエロテカ・フリジネア(Sphaerotheca fuliginea)、オイディウム・リコペルシシ(Oidium lycopersici)、ウンシヌラ・シムランス(Uncinula simulans)、エリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator)、エリシフェ・ポリゴニ(Erysiphe polygoni)、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)、フィラクチニア・モリコラ(Phyllactinia moricola)等が挙げられる。
【0044】
(植物体)
本発明の方法により診断できる植物としては、草本でも木本でもよい。また、種子植物、シダ植物、コケ植物であってもよいが、種子植物が好ましい。その中でも、イチゴ、スイカ、メロン、キュウリ、トウガン、カボチャ、ナス、トウガラシ、ピーマン、トマト、ムギ、マンゴー、ナシ、カキ、リンゴ、ブドウ、シクラメン、ベゴニア、バラ、ユリ、シバ、チャが好ましい。
【0045】
診断に用いる診断対象部位33及び健常部位34は、病原菌が感染する部位であれば、根、茎、葉、果実等、植物体のいずれの部位でもよいが、蛍光測定が容易なことから好ましくは葉や果実である。クロロフィルが豊富なことから葉がより好ましい。また、植物を生育させたまま診断できるのも本発明の利点である。もちろん、診断対象部位33及び健常部位34を含む組織を採取した後に測定してもよい。植物体の特定部位に、病原菌の感染が疑われる症状、例えば黒斑、白斑、褐斑、萎縮等が生じている場合、該部位を診断対象部位33として、本発明の方法により病原菌の感染の有無を確認することができる。
【0046】
なお、本発明は上記説明した実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
(クロロフィルの励起波長及び蛍光波長の検討)
イチゴ生葉にLEDを光源として、375nmの紫外領域の波長の励起光を照射し、710nm以上の波長の近赤外蛍光をCCDカメラで検出した。図5に近赤外蛍光画像を示す。クロロフィルが明るく光る蛍光画像が取得できたことから、クロロフィルを励起する励起光の励起波長として紫外領域の波長でさえも利用できることが示された。
【0048】
(実施例2)
(炭疽病菌の励起波長及び蛍光波長の検討)
炭疽病菌に由来する蛍光波長を測定した。炭疽病菌(Glomerella cingulata)の分生子と菌糸の混合懸濁液を調製し、該混合懸濁液に、360nm、380nm、400nmの励起光を照射し、それぞれの励起光に対応する蛍光スペクトルを測定した。図6に蛍光スペクトル(440〜540nm)を示す。380nm、400nmの励起光を照射したとき、蛍光スペクトルのピークは、両方の励起光ともに、448nm、467nm、482nm、492nm付近に見られた。360nmの波長の励起光を照射したときは、蛍光強度はスペクトル全体で弱いものの、やはり380nmと400nmの波長の励起光を照射したときと同じ部分にピークが見られた。励起波長を変えても蛍光スペクトルのピークが変わらないことから、該ピークは炭疽病菌由来の蛍光に起因するものであることが分かった。
【0049】
(実施例3)
(炭疽病菌の励起波長及び蛍光波長の検討)
励起光の波長を変化させて、炭疽病菌に由来する蛍光を測定した。炭疽病菌(Glomerella cingulata)の分生子と菌糸の混合懸濁液を調製し、該混合懸濁液に、300〜400nmの波長の励起光を、波長を変化させて照射し、410nmの波長の蛍光を測定した。図7に励起光スペクトル(300〜400nm)を示す。最短300nmの波長の励起光により、炭疽病菌に由来する410nmの波長の蛍光を取得できることが分かった。
【0050】
(実施例4)
(炭疽病菌の分生子の蛍光画像の取得)
炭疽病菌の分生糸の蛍光を測定した。炭疽病菌(Glomerella cingulata)に水銀ランプを光源として、400〜440nmの波長の励起光を照射し、475nm以上の波長の蛍光をCCDカメラで検出した。図8(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と蛍光画像を示す。図8(B)には炭疽病菌由来の蛍光が認められた。
【0051】
(実施例5)
(炭疽病菌に感染したイチゴ生葉のクロロフィル由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉に炭疽病菌(Glomerella cingulata)を接種した。接種後、5〜7日で葉に炭疽病の初期病変が認められ、約10日で明らかな病変(黒い斑点)となった。接種した生葉に、LEDを光源として、405nmの励起波長を照射し、710nm以上の波長の近赤外蛍光をCCDカメラで検出した。図9(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と近赤外蛍光画像を示す。明視野画像(A)でわずかに認められた黒斑は、近赤外蛍光画像(B)では明視野画像の黒斑よりも大きな黒斑となった(図9(A)(B)中、丸で囲まれた部分)。病変部ではクロロフィルが欠損し、病変部周辺の健常部位に存在するクロロフィルの蛍光強度に対して、病変部における蛍光強度が低くなったためと考えられる。なお、病変部の近赤外蛍光の蛍光強度は病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに、約30%となっていた。図10に病変部を横断する線でスキャンした近赤外蛍光イメージングプロファイルを示す。蛍光強度を表すA.U.(任意単位:arbitrary unit)が著しく低くなっているところが病変部、その他の部分が健常部位である。
【0052】
(実施例6)
(炭疽病菌に感染したイチゴ生葉の炭疽病菌由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉に炭疽病菌(Glomerella cingulata)を接種した。接種後、5〜7日で葉に炭疽病の初期病変が認められ、約10日で明らかな病変(黒い斑点)となった。接種した生葉に、水銀ランプを光源として、400〜440nmの励起波長を照射し、475nm以上の波長の蛍光をCCDで検出した。図11(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と蛍光画像を示す。明視野画像(A)で認められた黒斑部位から、蛍光画像(B)で黄緑色の蛍光が認められた(図11(A)及び(B)中、丸で囲まれた部分)。該蛍光は炭疽病菌の菌体に由来する蛍光と考えられる。病変部(丸で囲まれた部分)の上記蛍光波長における蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約200%となっていた。
【0053】
(実施例7)
(うどん粉病菌に感染したイチゴ生葉のうどん粉病菌由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉にイチゴうどん粉病菌(Sphaerotheca aphanis)を接種した。接種後、葉が粉状に白くなり、うどん粉病の病変が認められた。接種した生葉に、LEDを光源として、405nmの励起波長を照射し、バンドパスフィルターを使用して428〜491nmの波長の蛍光をCCDカメラで検出した。図12(A)及び(B)にそれぞれ明視野画像と蛍光画像を示す。明視野画像(A)で白く認められた病変部から、明るく白い蛍光が発せられているのが蛍光画像(B)で観察された。(B)で観察された蛍光は、イチゴうどん粉病の菌体に由来する蛍光と考えられる。病変部の上記蛍光波長における蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約250%となっていた。図13に、病変部を横断する線でスキャンした、波長428〜491nmの蛍光のイメージングプロファイルを示す。蛍光強度を表すA.U.(任意単位:arbitrary unit)が著しく高くなっているところが病変部、その他の部分が健常部位である。
【0054】
(実施例8)
(うどん粉病菌に感染したイチゴ生葉のうどん粉病菌及びクロロフィル由来の蛍光画像の取得)
イチゴの生葉にイチゴうどん粉病菌(Sphaerotheca aphanis)を接種した。接種後、葉が粉状に白くなり、うどん粉病の病変が認められた。接種した生葉に、LEDを光源として、375nmの励起波長を照射し、バンドパスフィルターを使用して428〜491nmの波長の蛍光をCCDカメラで検出した。また、同じ生葉に、LEDを光源として、375nmの励起波長を照射し、710nm以上の波長の近赤外蛍光をCCDカメラで検出した。図14(A)及び(B)にそれぞれ波長428〜491nmの蛍光画像と波長710nm以上の近赤外蛍光画像を示す。(A)で明るく白く光っている病変部が、(B)では黒くなっているのが観察された。病変部について、(A)では病原菌体由来の蛍光が観察され、(B)ではクロロフィルの欠損により近赤外蛍光が弱くなったためである。図14(A)(B)に示す白線に沿ってスキャンした、波長428〜491nm、710nm以上の蛍光のイメージングプロファイルをそれぞれ図15(A)(B)に示す。図15(A)において蛍光強度を表すA.U.(任意単位:arbitrary unit)が著しく高くなっているところが病変部、その他の部分が健常部位である。図15(A)で蛍光強度が高くなっている部分が、図15(B)では蛍光強度が低くなっていた。なお、病変部の蛍光波長428〜491nmにおける蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約200%となっていた。また、病変部の蛍光波長710nm以上における蛍光強度は、病変部周辺の健常部位の蛍光強度を100%としたときに約30%となっていた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射手段と、
前記植物体からの近赤外蛍光及び410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する蛍光検出手段と、を備える、
植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項2】
前記励起光照射手段がさらに、680nm以下の波長の第2の励起光を照射する、請求項1に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項3】
前記励起光照射手段は1つ又は複数の光源であり、前記第1の励起光と前記第2の励起光とが同一の前記1つ又は複数の光源により照射される、請求項2に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項4】
前記励起光照射手段は複数の光源であり、前記第1の励起光と前記第2の励起光とがそれぞれ異なる光源により照射される、請求項2に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項5】
前記蛍光検出手段は1つ又は複数の蛍光検出器であり、前記近赤外蛍光と前記可視光蛍光とが同一の前記1つ又は複数の蛍光検出器により検出される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項6】
前記蛍光検出手段は複数の蛍光検出器であり、前記近赤外蛍光と前記可視光蛍光とがそれぞれ異なる蛍光検出器により検出される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項7】
前記蛍光検出手段は1次元蛍光検出器及び2次元蛍光検出器のうち少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項8】
前記蛍光検出手段が、前記近赤外蛍光と前記可視光蛍光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで検出する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項9】
前記励起光照射手段が、前記第1の励起光と前記第2の励起光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで照射する、請求項2〜8のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項10】
前記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項11】
植物体の病原菌感染診断方法であって、
前記植物体の診断対象部位及び該診断対象部位周辺の健常部位に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射工程と、
前記診断対象部位及び前記健常部位からの近赤外蛍光を検出する第1の蛍光検出工程と、
前記診断対象部位及び前記健常部位からの410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する第2の蛍光検出工程と、
診断工程と、を含み、
前記診断工程においては、前記第1の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位における蛍光強度が、前記第1の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%未満であり、かつ、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位の蛍光強度が、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%より大きい場合に、前記植物体が病原菌に感染していると診断し、
前記第1の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位における蛍光強度が、前記第1の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%以上であり、かつ、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位の蛍光強度が、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%以下である場合に、前記植物体が前記病原菌に感染していないと診断する、
植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項12】
前記病原菌感染診断方法が、前記診断対象部位及び前記健常部位に、680nm以下の波長の第2の励起光を照射する励起光照射工程をさらに備える、請求項11に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項13】
前記第1の蛍光検出工程と前記第2の蛍光検出工程とを、同時に又は異なるタイミングで行う、請求項11又は12に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項14】
前記第1の励起光を照射する励起光照射工程と、前記第2の励起光を照射する励起光照射工程とを、同時に又は異なるタイミングで行う、請求項12又は13に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項15】
前記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項1】
植物体に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射手段と、
前記植物体からの近赤外蛍光及び410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する蛍光検出手段と、を備える、
植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項2】
前記励起光照射手段がさらに、680nm以下の波長の第2の励起光を照射する、請求項1に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項3】
前記励起光照射手段は1つ又は複数の光源であり、前記第1の励起光と前記第2の励起光とが同一の前記1つ又は複数の光源により照射される、請求項2に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項4】
前記励起光照射手段は複数の光源であり、前記第1の励起光と前記第2の励起光とがそれぞれ異なる光源により照射される、請求項2に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項5】
前記蛍光検出手段は1つ又は複数の蛍光検出器であり、前記近赤外蛍光と前記可視光蛍光とが同一の前記1つ又は複数の蛍光検出器により検出される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項6】
前記蛍光検出手段は複数の蛍光検出器であり、前記近赤外蛍光と前記可視光蛍光とがそれぞれ異なる蛍光検出器により検出される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項7】
前記蛍光検出手段は1次元蛍光検出器及び2次元蛍光検出器のうち少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項8】
前記蛍光検出手段が、前記近赤外蛍光と前記可視光蛍光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで検出する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項9】
前記励起光照射手段が、前記第1の励起光と前記第2の励起光とを同時に又はそれぞれ異なるタイミングで照射する、請求項2〜8のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項10】
前記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断装置。
【請求項11】
植物体の病原菌感染診断方法であって、
前記植物体の診断対象部位及び該診断対象部位周辺の健常部位に、300〜500nmの波長の第1の励起光を照射する励起光照射工程と、
前記診断対象部位及び前記健常部位からの近赤外蛍光を検出する第1の蛍光検出工程と、
前記診断対象部位及び前記健常部位からの410nm以上の波長の可視光蛍光を検出する第2の蛍光検出工程と、
診断工程と、を含み、
前記診断工程においては、前記第1の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位における蛍光強度が、前記第1の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%未満であり、かつ、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位の蛍光強度が、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%より大きい場合に、前記植物体が病原菌に感染していると診断し、
前記第1の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位における蛍光強度が、前記第1の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに50%以上であり、かつ、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記診断対象部位の蛍光強度が、前記第2の蛍光検出工程により検出された前記健常部位における蛍光強度を100%としたときに150%以下である場合に、前記植物体が前記病原菌に感染していないと診断する、
植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項12】
前記病原菌感染診断方法が、前記診断対象部位及び前記健常部位に、680nm以下の波長の第2の励起光を照射する励起光照射工程をさらに備える、請求項11に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項13】
前記第1の蛍光検出工程と前記第2の蛍光検出工程とを、同時に又は異なるタイミングで行う、請求項11又は12に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項14】
前記第1の励起光を照射する励起光照射工程と、前記第2の励起光を照射する励起光照射工程とを、同時に又は異なるタイミングで行う、請求項12又は13に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【請求項15】
前記病原菌が炭疽病菌又はうどん粉病菌である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の植物体の病原菌感染診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図10】
【図13】
【図15】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図10】
【図13】
【図15】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図14】
【公開番号】特開2013−36889(P2013−36889A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173896(P2011−173896)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]