説明

植物栽培システム

【課題】ガイド壁により、隣り合う植物の葉が成長に伴って互いに重なり合うのを阻止又は抑制することができるようになされていながら、植物が生育初期段階の未だ小さい状態にあっても、そのような植物に十分な量の光を付与することができる植物栽培システムを提供する。
【解決手段】栽培容器2が、該容器2よりも上方に突出するガイド壁3の高さ寸法を小さくしたり若しくはなくしたり、該寸法を大きくしたりするように、ガイド壁3に妨げられることなく、昇降させることができるようになされており、該栽培容器2をそのように昇降させる昇降機構4が備えられ、該昇降機構4によって栽培容器2を昇降させることにより、該栽培容器2を栽培用光源2に対して接近状態にしたり離反状態にしたりすることができるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場などにおいて用いられる野菜等の植物栽培システムとして、光合成を制御する目的で、栽培容器の上方に備えられる栽培用光源を可動に構成し、該光源を、水平方向に移動させることができるようになされていたり、あるいは、栽培容器に対して接近させたり離反させたりすることができるようになされていたりするものは提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−197637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の植物を一つ又は複数の栽培容器に植え付けると、隣り合う植物が、成長に伴って、葉を互いに重なり合わせるようになってしまい、それが原因で植物の光合成が阻害されることから、それを阻止する又は抑制する目的で、隣り合う植物の間をガイド壁で仕切ることが考えられている。
【0005】
しかるに、かかるガイド壁は、光源と容器との間に存在し、成長して大きくなった隣り合う植物の間を仕切るのには役立つが、植物が生育初期段階の未だ小さい状態にあると、ガイド壁自体の存在が妨げとなって光源をそのような小さな植物に接近状態にするのが困難であったり、また、光源からの光がガイド壁により遮られてそのような小さい植物の葉に到達する光の量を少なくしてしまうという問題を生じる。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、ガイド壁により、隣り合う植物の葉が成長に伴って互いに重なり合うのを阻止又は抑制することができるようになされていながら、植物が生育初期段階の未だ小さい状態にあっても、そのような植物に十分な量の光を付与することができる植物栽培システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、栽培用光源と、
該光源の下方に設けられた栽培容器と、
該容器に植え付けられた隣り合う植物の葉が成長に伴って互いに重なり合うのを阻止又は抑制すべく隣り合う植物の間を仕切るガイド壁と
が備えられ、
前記栽培容器は、該容器よりも上方に突出するガイド壁の高さ寸法を小さくしたり若しくはなくしたり、該寸法を大きくしたりするように、ガイド壁に妨げられることなく、昇降させることができるようになされていると共に、該栽培容器をそのように昇降させる昇降機構が備えられ、該昇降機構によって栽培容器を昇降させることにより、該栽培容器を栽培用光源に対して接近状態にしたり離反状態にしたりすることができるようになされていることを特徴とする植物栽培システムによって解決される(第1発明)。
【0008】
このシステムでは、ガイド壁が採用されていることにより、隣り合う植物の葉が成長に伴って互いに重なり合うのを阻止又は抑制することができて、成長した植物の光合成を効果的なものにすることができる。
【0009】
しかも、栽培容器は、該容器よりも上方に突出するガイド壁の高さ寸法を小さくしたり、なくしたり、あるいは、該寸法を大きくしたりするように、ガイド壁に妨げられることなく、昇降させることができるようになされていると共に、該栽培容器をそのように昇降させる昇降機構が備えられ、該昇降機構によって栽培容器を昇降させることにより、該栽培容器を栽培用光源に対して接近状態にしたり離反状態にしたりすることができるようになされている。
【0010】
これにより、植物が生育初期段階の未だ小さい状態にあるときは、昇降機構で栽培容器を上昇させ、該容器よりも上方に突出するガイド壁の高さ寸法を小さくしたり、なくしたりして、容器を光源に接近状態にすることによって、そのような小さな植物に対して、強い光を付与することができると共に、ガイド壁による光の遮りを抑えないしはなくすことができて、十分な量の光を付与することができる。
【0011】
そして、植物が成長したら、昇降機構で栽培容器を下降させ、該容器よりも上方に突出するガイド壁の高さ寸法を大きくすることによって、該ガイド壁により、上記のように、隣り合う植物の葉が互いに重なり合うのが阻止又は抑制されて、成長した植物の光合成を効果的なものにすることができる。
【0012】
その場合に、容器は光源から離反した状態となっているが、植物は上方に成長しているので、成長した植物の葉に対し、光源から強い光を付与することができると共に、ガイド壁による光の遮りを抑えないしはなくすことができて、十分な量の光を付与することができる。
【0013】
とりわけ、植物の成長に伴って昇降機構で栽培容器を下降させると、植物の外周部がガイド壁により下から上へと撫で上げられ、それにより、植物の葉の表面が上に向くように促され、植物に効率の良い光合成を行わせることができる。
【0014】
第1発明において、所定の高さ位置に備えられる上下の棚のうちの上棚に、前記光源が、下方に向けて照らすように設けられていると共に、
下棚に、前記ガイド壁が立設されており、かつ、
該上下の棚間で、前記栽培容器が昇降するようになされているとよい(第2発明)。
【0015】
この場合は、栽培容器が、所定の高さ位置に備えられた上下の棚間で昇降するようになされているので、上棚に対する光源の設置を容易にすることができると共に、ガイド壁の設置を下棚を利用して容易にすることができて、簡素構造によって全体を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のとおりのものであるから、ガイド壁により、隣り合う植物の葉が成長に伴って互いに重なり合うのを阻止又は抑制することができるようになされていながら、植物が生育初期段階の未だ小さい状態にあっても、そのような植物に十分な量の光を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の植物栽培システムを示すもので、図(イ)は図(ロ)のI−I線矢視平面図、図(ロ)は図(イ)のII−II線矢視正面図、図(ハ)は側面図、図(ニ)は植物植付け状態の平面図である。
【図2】図(イ−1)及び図(イ−2)は、栽培容器を上昇させた状態を示す正面図、側面図、図(ロ−1)及び図(ロ−2)は、栽培容器を下降させた状態を示す正面図、側面図である。
【図3】図(イ−1)及び図(イ−2)は、植物が生育初期段階で未だ小さい状態の栽培容器上昇状態を示す正面図、側面図、図(ロ−1)及び図(ロ−2)は、植物成長後の栽培容器下降状態を示す正面図、側面図である。
【図4】実施形態の栽培システムを組み込んだ植物工場の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
実施形態の植物栽培システムは、水耕栽培システムからなっており、同システムを示す図1〜図3において、1は栽培用光源、2は栽培容器、3はガイド壁、4は昇降機構である。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、上下の棚5a,5bが備えられており、該上下の棚5a,5bはそれぞれ、所定の高さ位置に、高さ位置固定で備えられていて、栽培用光源1は、上棚5aの下面部に、下方に向けて光を放射して照らすように設けられ、ガイド壁3は、下棚5bの上に立設されており、栽培容器2は、上下の棚5a,5b間で、昇降機構4によって昇降することができるように備えられている。
【0021】
栽培容器2は、平面視長方形状のものからなっていて、複数の植物6…を容器2の長手方向に間隔をおいて一列状態に植え付けることができるようになされている。該栽培容器2は、上下の棚5a,5b間に、複数、具体的には2つ、互いに間隔をおいて平行並列状態に備えられている。
栽培用光源1は、LED等を用いて構成された直線ライン状のものからなっており、ライン方向を容器2の長手方向に向けるようにして各栽培容器2の真上に位置して、対応数備えられている。
【0022】
ガイド壁3は、各栽培容器2において一列配置にされた植物6…間を仕切る仕切り壁部3a…と、隣り合う栽培容器2,2間を仕切る仕切り壁部3bとを備えていて、各栽培容器2において一列配置にされる植物6…間を仕切る仕切り壁部3a…は、栽培容器2,2の昇降動作を妨げないように控えて備えられ、ガイド壁3におけるこれら仕切り壁部3a…,3bが、栽培容器2に植え付けられた隣り合う植物6…の葉が成長に伴って互いに重なり合うのを阻止又は抑制するようになされている。
【0023】
そして、各栽培容器2,2は、図2(イ−1)(イ−2)に示すように、該容器2,2よりも上方に突出するガイド壁3の高さ寸法を小さくしたり若しくはなくしたり、図2(ロ−1)(ロ−2)に示すように、該高さ寸法を大きくしたりするように、昇降させることができるようになされていて、その昇降のために昇降機構4,4が備えられていて、該昇降機構4によって栽培容器2を昇降させることにより、栽培容器2を栽培用光源1に対して接近状態にしたり離反状態にしたりすることができるようになされている。
【0024】
なお、これらの栽培容器2,2は、同期して同じように昇降するようになされていてもよいし、互いに独立して個別に昇降することができるようになされていてもよい。昇降機構としては、ワイヤー巻上げ方式のほか、種々の方式による昇降機構が採用されてよい。
【0025】
上記の植物栽培システムでは、図3(イ−1)(イ−2)に示すように、植物6が生育初期段階の未だ小さい状態にあるときは、昇降機構4で栽培容器2を上昇させ、該容器2よりも上方に突出するガイド壁3の高さ寸法を小さくしたり、なくしたりして、容器2を光源1に接近状態にすることによって、そのような小さな植物6に対して、強い光を付与することができると共に、ガイド壁3による光の遮りを抑えないしはなくすことができて、十分な量の光を付与することができる。
【0026】
そして、図3(ロ−1)(ロ−2)に示すように、植物6が大きく成長したら、昇降機構4で栽培容器2を下降させ、該容器2よりも上方に突出するガイド壁3の高さ寸法を大きくする。これにより、隣り合う植物6…の葉は、該ガイド壁3により、互いに重なり合うのが阻止又は抑制されて、成長した植物6…の光合成を効果的なものにすることができる。
【0027】
その場合に、容器2は光源1から離反した状態となっているが、植物6は上方に成長しているので、成長した植物6の葉に対し、光源1から強い光を付与することができると共に、ガイド壁3による光の遮りを抑えないしはなくすことができて、十分な量の光を植物6に付与することができる。
【0028】
そして、上記のように、植物6の成長に伴って栽培容器2を下降させると、植物6の外周部はガイド壁3により下から上へと撫で上げられ、それにより、植物6の葉の表面が上に向くように促され、植物6に効率の良い光合成を行わせることができる。
【0029】
また、本実施形態では、栽培容器2が、所定の高さ位置に備えられた上下の棚5a,5b間で昇降するようになされているので、上棚5aに対する光源1の設置を容易にすることができると共に、ガイド壁3の設置を下棚5bを利用して容易にすることができて、簡素構造によって全体を構成することができる。
【0030】
なお、本実施形態の植物栽培システムは、図4(イ)に示すように、上下方向に多段に備えられた棚5…間を利用して、多段に構成することも可能で、その場合に、上下方向において隣り合う栽培容器2,2をつなぐ養液配管7aとして、図4(ロ)に示すような配管伸縮機構を採用しておくことによって、養液の循環を保ちながら、上下の栽培容器2,2を個別に昇降させることができる。8は養液タンク、7は養液配管、9はポンプである。
【0031】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、栽培用光源の形態や、栽培容器の数や形態、ガイド壁の形態等に制限はなく、種々の形態、種々の数のもので構成されていてよい。また、上下の棚5a,5bの高さ位置の関係は、固定であってもよいし、調節可能であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…栽培用光源
2…栽培容器
3…ガイド壁
4…昇降機構
5a…上棚
5b…下棚
6…植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培用光源と、
該光源の下方に設けられた栽培容器と、
該容器に植え付けられた隣り合う植物の葉が成長に伴って互いに重なり合うのを阻止又は抑制すべく隣り合う植物の間を仕切るガイド壁と
が備えられ、
前記栽培容器は、該容器よりも上方に突出するガイド壁の高さ寸法を小さくしたり若しくはなくしたり、該寸法を大きくしたりするように、ガイド壁に妨げられることなく、昇降させることができるようになされていると共に、該栽培容器をそのように昇降させる昇降機構が備えられ、該昇降機構によって栽培容器を昇降させることにより、該栽培容器を栽培用光源に対して接近状態にしたり離反状態にしたりすることができるようになされていることを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
所定の高さ位置に備えられる上下の棚のうちの上棚に、前記光源が、下方に向けて照らすように設けられていると共に、
下棚に、前記ガイド壁が立設されており、かつ、
該上下の棚間で、前記栽培容器が昇降するようになされている請求項1に記載の植物栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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