説明

植物用栽培具

【課題】植物の側枝等をワンタッチで把持状態に固定する。
【解決手段】一対で、支点となる開閉部Aによって開閉自在に連設された前側の把持部11,12と、この把持部11,12に対し、開閉部Aを介して後側に連設された一対の操作部13,14と、この操作部13,14の後端部の一方から他方に向かって連なり、後側の頂点とともに、操作部13,14の後端部との連結点にそれぞれヒンジ151,152,153が設けられた付勢部と、で植物用栽培具1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温室或いは圃場での植物の生育を補助するのに用いられ、植物の側枝等をハウス内の棚線へ、一時的に留めるのに役立つ植物用栽培具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キウリ、メロンなどウリ科の植物は、その側枝に実となる部分が生育する。この実は生育するにつれ重量が増すため、これらの植物を天井のある温室或いは圃場にて生育させる場合には、植物が主枝ごと重力方向に倒れるようなことがないようにするための作業、具体的には、例えば、その室内に棚線を設け、この棚線に側枝を支持させる作業が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、棚線に側枝を支持させるのに用いる道具としては、洗濯物を干すときなどに用いられる所謂洗濯ばさみがワンタッチで便宜であるので、これまで、洗濯ばさみの鋏持部にて側枝と棚線とをまとめて銜えて保持させることが行われていた。
【0004】
しかし、所謂洗濯ばさみは、植物を生育させるために製造されておらず、洗濯ばさみの鋏持部にて側枝と棚線とをまとめて銜えることから、側枝を傷つけるという虞があった。また、植物の側枝等の鋏持状態を維持するために必要な付勢力を備えた付勢部材は、通常、金属製のものが用いられており、合成樹脂製の洗濯ばさみの本体部と金属製の付勢部材の2つの部材からなるので、1つの部材からなるものに比べコスト高であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、植物の側枝等をハウス内の棚線へ、一時的に留めるのに役立つ植物用栽培具に関し、合成樹脂製の一つの材質にて構成することができてコスト面で有利となるとともに、植物の鋏持に適した形状として、植物の側枝等を傷つけるのを防ぐようにした植物用栽培具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る植物用栽培具は、一対で、支点となる開閉部によって開閉自在に連設された前側の把持部と、この把持部に対し、前記開閉部を介して後側に連設された一対の操作部と、この操作部の一方から他方に向かって連なる付勢部とからなることを特徴とする。
【0007】
特に、上記付勢部は、内向きに指向していて、この内向きに指向している頂点と、前記操作部の一方および他方との連結点にそれぞれヒンジが設けられていることが好ましい。また、一対の操作部には、支点となる開閉部を中心とする同一円弧上に、内側へ突出させたストッパ部がそれぞれ設けられていることががさらに好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、一対で、支点となる開閉部によって開閉自在に連設された前側の把持部と、この把持部に対し、開閉部を介して後側に連設された一対の操作部と、この操作部の一方から他方に向かって連なる付勢部とからなるので、例えば、すべてを合成樹脂により製造すれば、製造の簡略化が果たせるとともに、そのコスト面で有利なものとすることができる。にもかかわらず、従来と同様に、把持部にて植物の側枝等を棚線とともに把持状態にワンタッチで固定することができ、作業の手間等を省くのに便宜な植物用栽培具として提供することができる。
【0009】
特に、付勢部は内向きに指向していて、この内向きに指向している頂点と、操作部の一方および他方との連結点にそれぞれヒンジを設けた構成とすれば、付勢部による付勢力を強力なものとすることができ、把持部にて植物の側枝等を棚線とともに把持状態に確実に固定することができる。そうすると、例えば、圃場において雨風等が激しい場合にも把持部によって植物の側枝等を棚線とともに把持状態に維持することができ、天候回復後の必要な作業の手間等を省くのにも有効な手段とすることができる。また、一対の操作部に、支点となる開閉部を中心とする同一円弧上に内側へ突出させたストッパ部をそれぞれ設けた構成とすれば、把持部が拡がりすぎることがなくなるとともに、繰り返しの使用によって生じる開閉部の劣化を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る第1実施形態における植物用栽培具の概略正面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態における植物用栽培具の概略平面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態における植物用栽培具に関し、付勢部を内向きに指向させた状態を説明する概略正面図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態における植物用栽培具に関し、操作部を操作した状態を説明する概略正面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態における植物用栽培具の把持部を前側から見た形態を説明する図1のIV−IV端面図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態における植物用栽培具に関し、付勢部を内向きに指向させた状態を説明する概略正面図である。
【図7】図3の植物用栽培具について使用状態を説明する概略説明図である。
【図8】図6の植物用栽培具について使用状態を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態における植物用栽培具1は、図1に示すとおり、一対で、支点となる開閉部Aによって開閉自在に連設された前側の把持部11,12と、この把持部11,12に対し、開閉部Aを介して後側に連設された一対の操作部13,14と、この操作部13,14の一方から他方に向かって連なる付勢部15とからなる。
【0013】
特に、付勢部15は、操作部13,14の後端を一方から他方へ連なるようにされている。また、図1において、付勢部15の後側の頂点とともに、付勢部15の操作部13,14の後端部との連結点にそれぞれヒンジ151,152,153が設けられている。
【0014】
把持部11,12は、棚線Lを銜えて鋏持する先端の挟持部111,121と、植物Pの例えば、側枝SBを銜えて保持する保持部112,122とからなる。保持部112,122は、植物Pの側枝SBを傷つけにくくするために、一対にて略円形の形態となるようにされている。また、挟持部111,121には、図5に示すように、棚線Lを確実に銜えるようにするための段部11a,12aが設けられている。このような段部11a,12aの形態は例示であるが、棚線Lが何らかの衝撃によって挟持部111,121から外れないようにするために好ましい形態となるものである(図7も参照のこと)。
【0015】
また、操作部13,14には、支点となる開閉部Aを中心とする同一円弧上に、対向する内側へ向けて突出させたストッパ部131,141がそれぞれ設けられている。
【0016】
このほか、植物用栽培具1は、開閉部Aに、把持部11,12側に切り欠きのような凹部A1を設けることが好ましい。この凹部A1の存在により把持部11,12の開閉が、よりスムーズになる。
【0017】
ここで、植物用栽培具1は、その材質を問うものではない。また、その成型手段としては、例えば、射出成形を採用すればよい。また、図面とともに説明している植物用栽培具1は、一体成型されてなるものであり、安価な製造が期待できるものの、一体成型することに限定されない。例えば、付勢部を、把持部および操作部の本体と別体として形成し、これらを組み合わせて用いて構成しても好ましい実施形態となるからである。この場合、様々な付勢力のバラエティに富んだ付勢部を揃え、用途に応じて、必要な付勢力をもつ付勢部と本体とを組み合わせて用いるという使用形態を想定することができる。
【0018】
植物用栽培具1は、図1に示すような形態で、付勢部15にある程度の付勢力を備えさせ、その付勢力によって把持部11,12を開閉自在にし、植物Pの側枝SBを銜え込んで把持状態にすることができる。さらに、図3に示すように、付勢部15には、その後側の頂点とともに、操作部13,14の後端部との連結点にそれぞれヒンジ151,152,153が設けられているので、これらのヒンジ151,152,153を活用し、付勢部15を内向き(前側)に指向させることができる。このような形態とすれば、付勢部15による付勢力を強力なものとすることができる。
【0019】
なぜなら、図3に示すような形態とすれば、植物用栽培具1における操作部13,14を操作した状態において、付勢部15がヒンジ151,152,153を支点にして撓り、その付勢力が強化されるからである。図4からは、操作部13,14を操作した状態において、付勢部15がヒンジ151,152,153を支点にして撓り、その付勢力が強化されている様子が理解される。すなわち、植物用栽培具1では、付勢部15を内向き(前側)に指向させ、この内向きに指向している頂点のヒンジ152と、操作部13,14の後端部との連結点のヒンジ151,153とを設けた構成とすれば、その付勢力が増して、雨風等が激しい場合にも把持部11,12にて植物Pの側枝SBを棚線Lとともに把持状態に維持することができ、天候回復後の必要な作業の手間等を省くのに有効な手段となる。
【0020】
また、植物用栽培具1では、図3と図4との比較から理解されるように、把持部11,12がある程度開くことによって、操作部13,14に設けられたストッパ部131,141の端部同士が衝合するようになる。そうすると、植物用栽培具1は、把持部11,12が開きすぎるということがなくなる。これにより、植物用栽培具1の繰り返しの使用によって最も劣化の影響を受けやすいと認められる開閉部Aの劣化が抑えられることになる。
【0021】
植物用栽培具1に関し、図1のものを一例として寸法を示す。植物用栽培具1は、前側の把持部11,12の先端から操作部13,14の後側までの全長が60mm前後で、把持部11,12が25mm前後、操作部13,14が35mm前後である。操作部13,14の間の幅は最大箇所で45mm前後であり、操作部13,14の指で摘む箇所の面積は約100mm2である(図2も参照すること。)。また、付勢部15の厚みは1〜1.5mmである。ストッパ部131,141は、把持部11,12の開かせる程度を考慮しつつ、操作部13,14の対向する内側へ、開閉部Aを中心とした同一円弧上に突出させて設ければよい。
【0022】
(第2実施形態)
また、本発明に係る第2実施形態における植物用栽培具10は、図6に示すように、上述した植物用栽培具1に対し、把持部11,12の挟持部111,121に代えて、引っ掛け部16を設けて構成したものである。引っ掛け部16は、釣り針のようなフック形状を有し、その先端部を自身の基部に近づかせるようにした形態に形成されている。また、その先端部に、自身の基部に向けて凸部を設け、先端部を自身の基部に近づかせるようにした形状の引っ掛け部であっても好ましい実施形態となる等、引っ掛け部は、使用用途に応じ、その大きさ、形状等を適宜調整して設けることができる。なお、引っ掛け部16は、上述した植物用栽培具1に対し、挟持部111,121の先端側に追加的に設けてもよい。
【0023】
なお、その他の構成は、上述した植物用栽培具1と同一の構成であり、操作部13,14をはじめ、内向きに指向させた付勢部15、操作部13,14の内側へ向けて突出させたストッパ部131,141をそれぞれ備えている。また、把持部11,12の植物Pの側枝SBを銜えて保持する保持部112,122も植物用栽培具1と同様な形態にて設けられている。
【0024】
図1〜5に示した植物用栽培具1と、図6に示した植物用栽培具10とを比べると、上記構成のほか、その使い方が異なる。すなわち、植物用栽培具1では、把持部11,12の保持部112,122にて植物Pの側枝SBを保持し、挟持部111,121にて棚線Lを銜えて使うのに対し、植物用栽培具10では、保持部112,122にて植物Pの側枝SBを保持するのは同様であるが、挟持部111,121に代えて設けた、または、挟持部111,121の先端側に追加的に設けた引っ掛け部16を、棚線Lに引っ掛けて使うのである。
【0025】
以下、本実施形態に係る植物用栽培具1,10の使用形態を、図7、図8を用いて簡単に説明する。下記説明は、あくまで例示であるが、植物用栽培具1,10が使用される状況としては、主としてキウリ、メロン等のウリ科の植物Pを育成させ、その側枝SBの実Fがなってきたときに、実Fによって植物Pの自重が重くなり、植物Pが主枝ごと重力方向に倒れるようなことがないようにするために使用されることが想定される。
【0026】
まず、植物用栽培具1の使用形態であって、付勢部15を内向き(前側)に指向させて、図3に示すような植物用栽培具1の形態に変化させてから使用した場合を説明する。
【0027】
この場合、まず、植物用栽培具1の操作部13,14を指で強く把持(操作)することにより、付勢部15の付勢力に抗して操作部13,14を接近させて把持部11,12を開かせる。このとき、操作部13,14のストッパ部131,141の端部同士が衝合するまで把持部11,12を開かせても、それ以上開くことがないので構わない。
【0028】
次に、開いた把持部11,12により、実Fの周辺の側枝SBを把持する、特に、保持部112,122にて形成されている略円形の領域に側枝SBを入れるとともに、操作部13,14を把持する力を緩めて鋏持部111,121を閉じ、棚線Lを鋏持部111,121によって銜えさせるようにする。
【0029】
そうすると、図7に示すように、実Fによって植物Pの自重が重くなっても、棚線Lによって実Fの周辺の側枝SBが支持されるようになるため、植物Pが主枝ごと重力方向に倒れるようなことを防ぐことができる。
【0030】
また、図6の植物用栽培具10では、操作部13,14を指で強く把持(操作)することにより把持部11,12を開かせ、開いた把持部11,12により実Fの周辺の側枝SBを把持する、具体的には、保持部112,122にて形成されている略円形の領域に側枝SBを入れるとともに、操作部13,14を把持する力を緩め、さらに引っ掛け部16を、棚線Lに引っ掛けるようにする。
【0031】
そうすると、植物用栽培具1を用いる場合と同様、図8に示すように、実Fによって植物Pの自重が重くなっても、棚線Lによって実Fの周辺の側枝SBが支持されるようになるため、植物Pが主枝ごと重力方向に倒れるようなことを防ぐことができる。引っ掛け部16は、釣り針のようなフック形状を有し、その先端部を自身の基部に近づかせるようにした形態にて形成されているため、雨風等が激しい場合にも棚線Lから外れ難い。
【0032】
このように、本発明では、植物用栽培具1,10により、合成樹脂製のものであれば、そのコスト面で有利になるにもかかわらず、従来と同様に、ワンタッチで、把持部にて植物Pの側枝B等を把持状態に固定することができ、作業の手間等を省くことができる。特に、付勢部15にヒンジ151,152,153を設けた構成とし、付勢部15内向きに指向させることで、その付勢力を強力なものとすることができ、雨風等が激しい場合にも把持部11,12によって植物Pの側枝SB等を保持状態に維持することができ、雨風後に必要な作業の手間等を省くのにも有効なものとすることができる。
【0033】
また、植物用栽培具1,10は、操作部13,14に設けられたストッパ部131,141によって把持部11,12が開きすぎるということがなく、繰り返しの使用によって最も劣化の影響を受けやすいと認められる開閉部Aの劣化を抑えることもできる。
【0034】
さらに、植物用栽培具1のように鋏持部111,121によって銜えさせることにより、または、植物用栽培具10のように引っ掛け部16によって引っ掛けるようにすることにより、棚線Lに植物Pの側枝SB等を支持させることができ、実Fによって植物Pの自重が重くなっても、植物Pが主枝ごと重力方向に倒れるようなことを防ぐことができる。
【0035】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0036】
設計変更の例示としては、例えば、植物用栽培具を、一体成型すれば安価な製造が期待できる。また、把持部および操作部の本体とし、付勢部を別体として形成すれば、様々な付勢力のバラエティに富んだ付勢部を揃えて、その用途に応じて用いるといった使い勝手のよいものとなる。さらに、把持しようとする植物に応じて、引っ掛け部を備えたものとするか、鋏持部を備えたものとするか使い分ける、といった利便性を備えた植物用栽培具として提供することができるものである。
【符号の説明】
【0037】
1・・植物用栽培具(第1実施形態)
10・植物用栽培具(第2実施形態)
11,12・・・把持部
111,121・鋏持部
112,122・支持部
11a,12a・段部
13,14・・・操作部
15・・・・・・付勢部
151,153・連結点のヒンジ
152・・・・・頂点のヒンジ
16・・・・・・引っ掛け部
A・・・・・・・開閉部
A1・・・・・・凹部
F・・・・・・・実
SB・・・・・・側枝
P・・・・・・・植物(ウリ科)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対で、支点となる開閉部によって開閉自在に連設された前側の把持部と、
この把持部に対し、前記開閉部を介して後側に連設された一対の操作部と、
この操作部の一方から他方に向かって連なる付勢部と、
からなることを特徴とする植物用栽培具。
【請求項2】
前記付勢部は、内向きに指向していて、この内向きに指向している頂点と、前記操作部の一方および他方との連結点にそれぞれヒンジが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の植物用栽培具。
【請求項3】
前記一対の操作部には、前記支点を中心とする同一円弧上に、内側へ突出させたストッパ部がそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物用栽培具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−29(P2012−29A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136172(P2010−136172)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(391002694)ナスニックス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】