説明

植物用補強具

【課題】茎への取付操作性に優れ、しかも茎部分の自立性を補って茎折れを防止できるようにする。
【解決手段】茎に取り付けられて茎対応部を支持して茎の折れを防ぐ植物用補強具であって、補強具1(1A,1B)は、長手方向の両端に設けられて茎の対応部8aを一側の開口から内側に拘束可能な把持部2,2、及び両端の把持部同士を接続している弾性変形可能な連結部3又は30からなる構成である。また、両端の把持部2は、それぞれ略U状からなり、かつ連結部3又は30に対し互いに略180度変位して接続されており、茎8aの径方向ないしは茎を挟んだ両側に配置した状態から全体を回転することで茎対応部に取付可能となる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト,ナス,キュウリなどの植物において、茎に取り付けられて茎対応部を支持して茎折れを防ぐ植物用補強具に関する。
【背景技術】
【0002】
農園芸分野においては、トマトなどの茎が強風や果実などの荷重により茎折れしないよう色々な茎折れ防止構造が採用される。特許文献1には、その茎折れ防止構造として茎を支柱によって支えたり補強する場合に好適な保持クリップが開示されている。この保持クリップは、中央部に折り曲げ部を形成している支柱挟み部と、該支柱挟み部の両側に連設された茎挟み固定部と、支柱挟み部と茎挟み固定部との連設部に設けられ、支柱挟み部が折り曲げられたときに互いに重なり合って支柱を挟み込む爪部と、茎挟み固定部の先端に連設されて互いに折り曲げられたときに折り曲げ状態を保つロック部とを備えた構造である。なお、このような構造は、特開2001−204267号公報や特開平9−9794号公報に開示のものと同様な考え方である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−37346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、植物の茎には、本発明の使用例である図3のトマト7から推察されるごとく、主茎8から分かれた柄8aが果実9の肥大化により垂れ下がって茎折れすることがある。この場合は、上記と同様、柄8aを支柱にクリップ等を介し支持したり拘束しようとしても、柄8aが細かったり主茎8に接近している関係で支柱に支持したり拘束できないことが多い。そこで、対策としては、柄8aを吊り紐などにより吊り上げ支持することも考えられる。しかし、その場合は、着果した全茎を吊すとなると作業工数がかさむため制約される。また、吊り構造では、柄や茎が吊り紐の食い込みなどで折れ易くなったり上段の果実や葉柄などが邪魔になることも起きる。
【0005】
なお、特開平11−168974号公報には、接ぎ木する場合に用いられて台木又は穂木の茎部が短いときでも、接ぎ木を支障なく行えるようにする接ぎ木支持具が開示されている。この接ぎ木支持具は、例えば、軸方向一側に設けられた割れ目と、一端側から他端側に向かって切り欠いた切り欠き部を有した弾性プラスチックチューブからなる。上記した茎折れ防止構造として、そのようなチューブを茎に沿って取り付けて茎対応部を補強支持することも考えられるが、茎対応部への取付操作性に欠けたり外れ易かったり、茎表面に密接したり締め付けるため茎の生長にも好ましくはない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、以上のような背景から茎への取付時期的な制約がなく、取付操作性に優れ、しかも茎部分の自立性を補って茎折れを防止できる植物用補強具を提供することにある。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、図面の例で特定すると、茎に取り付けられて茎対応部を支持して茎折れを防ぐ植物用補強具において、前記補強具1は、長手方向の両端に設けられて前記茎の対応部8aを一側の開口から内側に拘束可能な把持部2,2、及び前記両端の把持部同士を接続している弾性変形可能な連結部3又は30からなることを特徴としている。
【0008】
以上の本発明において、「茎」とは茎から延びる枝や葉柄それに類似の植物部分を含む広義な意味で使用している。「茎の対応部」とは、図3に例示したトマトの場合だと、主茎に近い部分となる。要は茎の自立性を補う上で最適な部分である。「弾性変形可能な連結部」とは、連結部が把持部より弾性変形し易くなっていることであり、例えば補強具が樹脂製の場合であれば、連結部が把持部に比べ形状的に変形容易に形成されていることである。
【0009】
以上の発明は、請求項2〜5のごとく構成することがより好ましいものとなる。即ち、(1)前記両端の把持部2は、それぞれ略U状からなり、かつ前記連結部3に対し互いに略180度変位して接続されており、前記茎8aの径方向ないしは茎を挟んだ両側に配置した状態から全体を回転することで茎対応部に取付可能となる構成である(請求項2)。
(2)前記各把持部2は、対向している両側面2a、及び前記両側面の側縁同士を接続している側面より幅細の底片2b、並びに前記側面の内側に設けられて両側面及び前記底片で区画された空間に挿入される前記茎を抜け止めする係止突起4を有している構成である(請求項3)。
【0010】
(3)前記連結部3は、前記各把持部2の両側面のうち一方側面同士を接続し、かつ該側面2aより幅細の片状となっている構成である(請求項4)。
(4)前記連結部30は、前記各把持部2の両側面のうち一方側面同士を接続し、かつ断面が略円状になっている構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、例えば、補強具が主茎から分かれて果実を付けた茎や柄(以下、茎と言う)の根本部分に対し両端の把持部、つまり各把持部に対し一側の開口から茎対応部分を径方向に挿入し簡単に取り付けられる。取付状態において、茎対応部は両方の把持部及び間の連結部によりその自立性が補強されるとともに、連結部の弾性変形により茎部分の曲がり程度に応じた形状で茎部分を支持する。また、例えば茎の生長や果実の肥大化により茎の折れ方向への荷重が大きくなると、連結部が適度に弾性変形して茎の局部荷重を緩和吸収できる。
【0012】
請求項2の発明では、補強具が図4(a)に示されるごとく茎の対応部に交差状態に配置された後、略90度回転されると、両端の把持部が略180度変位した状態となっているためほぼ同時に茎対応部に取り付けられ、それにより取付操作性に優れるとともに、外れ難いものとなる。
【0013】
請求項3の発明では、各把持部が形態のごとく両側面及び底片、並びに各側面に設けられて茎を抜け止めする係止突起からなるため、簡易であり、しかも底片構成によって、接触部を減らして生長阻害要因を極力なくすることができる。
【0014】
請求項4の発明では、連結部が把持部を構成している両側面のうち一方側面同士を接続して該側面より幅細の片状となっているため、請求項3と同様に例えば茎への接触や締め付けに起因した生長阻害要因をなくすことができる。
【0015】
請求項5の発明では、断面が略円状になっていると、弾性変位する方向に制約されずどの方向にも変位するため当該茎の曲がり方向に追随して変形され、生長阻害要因をより確実になくし植物に優しい補強具として提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)と(b)は形態の植物茎用補強具を180度変位した状態で示す斜視図である。
【図2】図1の補強具を詳細を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】上記補強具をトマトに用いた使用例を示す模式図である。
【図4】(a)は上記補強具を茎や柄に装着する際の初期操作を示す作用図、(b)は装着状態を示す装着図である。
【図5】(a)と(b)は上記補強具の変形例1を図1に対応して示す斜視図である。
【図6】変形例1の補強具の使用例を図3に対応して示す模式図である。
【図7】(a)と(b)は上記補強具の変形例2を示す補強具の斜視図及び茎い装着した状態での斜視図である。
【図8】変形例2の補強具の詳細を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図、(e)は(b)のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。この説明では、図1〜図4に示した補強具構造、取付操作、図5と図6に示した変形例1の変更点、図7と図8に示した変形例2の変更点の順に言及する。
【0018】
(補強具構造)形態の補強具1は、図1及び図2に示されるごとく、樹脂成形品であり、両側の把持部2,2及び該把持部同士を接続している連結部3とからなる。長さ寸法は対象の茎に応じて適宜決められる。通常は25〜60mm程度の細長い形状である。材質は樹脂(これにはポリプロピレン等の通常の樹脂に限られず、分解性樹脂も含まれる)以外にゴム質や紙質でもよい。工夫点は、特に、補強具1が連結部3の両端に把持部2を有していること、連結部3が弾性変形可能となっていること、各把持部2が茎の対応部に対し一側の開口から茎対応部を径方向にそれぞれ挿入し、両方が同時に拘束し取り付けられることにある。以下、これらの細部を明らかにする。
【0019】
両端の把持部2は、対向している両側面2a、及び両側面2aの側縁同士を接続している底片2bとで区画された略U形となっている点、両側面2aの内面に対向して設けられている係止突起4を有している点と、各把持部2の同じ側にある一方の側面2aの外面にそれぞれ設けられたガイドリブ6を有している点、各把持部2の同じ側にある他方の側面2aの外面及び連結部3の外面に連続して設けられている横方向に延びる補強リブ3aを有している点で同じである。また、両端の把持部2は、連結部3に対し互いに略180度変位した状態で接続一体化されており、U形の開口が逆向きに開放されている点で異なっている。
【0020】
ここで、各側面2aは、矩形の平板状であり、側縁同士が間隔を保って設けられた2つの底片2bで接続されている。各底片2bは、間に小開口5を介在、つまり長手方向に間隔を保って設けられている。各把持部2は、茎がU形内に拘束された状態において、茎対応部分をU形の開口及び小開口5に露出させ、それにより生長阻害要因をなくすようにしている。
【0021】
各係止突起4は、茎が装脱される方向の面4a,4bをそれぞれ傾斜面として、かつ外側の面4aが内側の面4bより小さな傾斜角に形成されており、茎が面4aに沿って把持部のU形内に挿入し易い反面、一旦U形内に入ると鋭角な面4bにより抜け難くなるよう設定されている。各ガイドリブ6は、各側面2aのうち、把持部同士が対向している内側縁に沿って形成されている。これは、図4(a)から推察されるごとく、茎8の柄8aに取り付ける際、ガイドリブ6同士の間に柄8aを配置したり、ガイドリブ6側を下向きにすることで後述するように取付時の回転方向を決める上で好適となる。加えて、各ガイドリブ6は、図3において、柄8aが更に下向きに垂れ下がった場合、下側で互いにぶつかることにより補強具1が大きく曲がるのを防ぐ、つまり補強具1の変形量規制作用も兼ねる。
【0022】
連結部3は、各把持部2の両側面2aのうち一方側面同士を接続しており、側面2aより幅細の片状となっている。換言すると、補強具1は、連結部3が把持部2と全く異なる片状に形成されることで、この連結部3で専ら弾性変形するようにし、それにより使用状態において、対象の茎部分の曲げ形状に馴染みやすくしたり、把持部2が茎の対応部に過剰に負荷を与えないようにし茎の生長阻害要因とならないよう工夫されている。補強リブ3aは、各把持部2の対応側面2a及び連結部3に沿って延びており、各部を一体化している。
【0023】
(取付操作)図3と図4は以上の補強具を茎側に取り付けるときの操作要領を示している。形態の補強具1は、例えば、図3のごとくトマト7に用いられると場合だと、通常は果実9がある程度の大きさになった段階で取り付けられるが、着果する前でも差し支えない。補強具1は、茎8つまり主茎から分かれた柄8aの根本部分に取り付けられる。
【0024】
取付要領は、図4(a)のごとく補強具1を柄8aの対応部分に対し交差するよう配置、つまり柄8aが連結部3ないしはガイドリブ6同士の間を通るようにし、その状態から矢印方向へ90度回転する。すると、両側の把持部2は、同(b)のごとく略180度変位した状態となっているため、茎対応部をそれぞれほぼ同時にU状内へ受け入れ、かつ、係止突起4同士の間を通気することで抜け止めされる。
【0025】
すなわち、各把持部2は、側面2a同士を接続している幅細の底片2bにより、柄8aの対応部分をU状の空間に入れる際、両側面2aが底片2bとの接続部を支点として間の隙間つまり一側の開口を拡大する方向へ変形し、それにより柄対応部分を係止突起4を通って前記空間に挿入し易くワンタッチ取付を可能としている。
【0026】
そして、図3の取付状態において、柄8aの根本部分は、補強具1を構成している両側の把持部2及び間の連結部3によりその自立性が補強される。この場合、補強具1は、連結部3の弾性変形により柄8a部分の曲がり程度に応じた形状で柄部分を支持するため、例えば茎の生長や果実の肥大化により茎の折れ方向への荷重が大きくなると、連結部3が適度に弾性変形して茎の局部荷重を緩和吸収でき、しかもU形の開口と底片構成によって形成される小開口5、更に片状の連結部3の構成とにより接触部を減らして生長阻害要因を極力なくすことができ、茎、柄、果の生長に最も好ましい態様で補強支持できる。
【0027】
(変形例1)図5(a),(b)は以上の補強具を変形したもので、図1に対応して示している。この説明では、上記形態と同じ部材及び部位に同一符号を付し、重複した記載を極力省く。すなわち、変形例1の補強具1Aは、上記形態に比べて、連結部3の全寸Lが長く形成されていること、各把持部2を構成している側面2aの外面に設けられたフック部10を有している点で相違し、それ以外は同じ。
【0028】
補強具1Aは、連結部3の全寸Lが長く形成されることにより、茎側の対応部が大きく曲がっている場合、その曲がりに適度に沿った形状で補強支持して局部荷重を緩和したり吸収できるようにする。
【0029】
フック部10は、例えば、図6の使用例に示されるごとく補強具1が柄8aに取り付けられた後、果実9が予想外に肥大化したような場合、トマトが青枯病等にかかって弱った場合等において、フック部10を利用して吊り紐Mにより柄8aを吊り上げることにより柄や茎折れを防ぐ上で有用となる。この場合、補強具1Aは、フック部10を両側の把持部2の側面2aに有し、吊り位置を選択できるためより好ましい態様となる。
【0030】
(変形例2)図7及び図8は上記形態の補強具を更に変形したものである。この説明でも、上記形態と同じ部材及び部位に同一符号を付し、重複した記載を極力省く。すなわち、変形例2の補強具1Bは、上記形態に比べて、各把持部2の外面に設けられたガイドリブ6を省略した点と、把持部2同士を接続している連結部30を断面略円形状に形成した点で異なっている。
【0031】
すなわち、変形例2において、両端の把持部2は、両側面2a、及び両側面2aの側縁同士を接続している底片2bとで区画された略U形となっており、連結部30に対し互いに略180度変位した状態で接続一体化されている点で上記形態と同じであるが、上記形態のガイドリブ6が省略されて簡略化されている。
【0032】
連結部30は、上記形態よりも全寸が長い片状となっているとともに、断面が矩形状ではなく略円状になっている。これは、連結部30が弾性変位する方向に制約されずどの方向にも変位し易くしたものである。この構成では、補強具1Bの使用状態において、例えば図7(a)に想像線で示したごとく一方の把持部2に対して他方の把持部2が連結部30を介してX−Yの任意の方向、つまり360°にわたって自在に変位することにより、植物の茎の曲がり方向にスムースに追随して生長阻害要因をより確実になくすことができる。連結部30の長さは、茎の種類や弾性変位の度合いを考量して適宜に設定される。また、この例でも、連結部30の両側は対応する側面2aまで延びた補強リブ30aとして形成されている。
【0033】
なお、本発明は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部については必要に応じて種々変更可能である。例えば用途に応じて、両側の把持部2としては、一方を他方に対し多少大きめに形成することである。補強具としては、把持部2A−連結部3−把持部2B−連結部3−把持部2C−連結部3−把持部2Dと言った展開形状に設定し、かつ把持部2Aと2Bを同じ向き、把持部2Cと2Dを同じ向きにすることである。
【符号の説明】
【0034】
1,1A,1B…植物用補強具
2…把持部(2aは側面、2bは底片)
3,30…連結部(3a,30aは補強リブ)
4…係止突起
5…開口
6…ガイドリブ
7…トマト(植物、8は茎、8aは柄、9は果実)
10…フック部
L…間隔
M…吊り紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茎に取り付けられて茎対応部を支持して茎折れを防ぐ植物用補強具において、
前記補強具は、長手方向の沿って両端に設けられて前記茎の対応部を一側の開口から内側に拘束可能な把持部、及び前記両端の把持部同士を接続している弾性変形可能な連結部からなることを特徴とする植物用補強具。
【請求項2】
前記両端の把持部は、それぞれ略U状からなり、かつ前記連結部に対し互いに略180度変位して接続されており、前記茎の径方向ないしは茎を挟んだ両側に配置した状態から全体を回転することで茎対応部に取付可能となることを特徴とする請求項1に記載の植物用補強具。
【請求項3】
前記各把持部は、対向している両側面、及び前記両側面の側縁同士を接続している側面より幅細の底片、並びに前記側面の内側に設けられて両側面及び前記底片で区画された空間に挿入される前記茎を抜け止めする係止突起を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物用補強具。
【請求項4】
前記連結部は、前記各把持部の両側面のうち一方側面同士を接続し、かつ該側面より幅細の片状となっていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の植物用補強具。
【請求項5】
前記連結部は、前記各把持部の両側面のうち一方側面同士を接続し、かつ断面が略円状になっていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の植物用補強具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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