説明

椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具

【課題】 原木を穿孔するキリを高寿命化する。
【解決手段】 ドリル2のドリルチャック4にキリ6の基端側を固定する。ドリルチャック4の近傍に、キリ6の原木への所定深さ以上の侵入を阻止するストッパ8を設ける。ストッパ8からキリ6の先端側に向かってキリ6の周囲を包囲しながら所定距離だけコイルばね18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎茸の栽培用に原木に植菌するために原木を穿孔するドリルに設ける補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
椎茸の栽培の1手法として原木栽培がある。原木栽培では、原木に孔を穿ち、この孔に椎茸菌を埋め込む。原木に孔を穿つために、ドリルが使用される。このドリルの一例が、非特許文献1に開示されている。このドリルでは、ドリルのチャックにキリを取り付けた状態において、環状のストッパの中心付近にキリが位置するようにチャックの付近に上記ストッパを配置してある。このストッパは、固定用の棒状部をキリの長さ方向に沿って有し、この棒状部がドリル本体にネジ止めされている。このストッパを設けてあることによって、原木に孔を穿った際、その孔の深さが所定深さ以上になることを防止している。
【0003】
【非特許文献1】日立工機 日立椎茸ドリル 12mm DW12 DW12SA取扱説明書(http://www.hitachikoki.co.jp/manual_view_domestic/pdf_manual_view.do?implementationWorkNumber=210&partsCode=C99001502&model=DW12%2FDW12SA)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなストッパを用いる場合、孔からキリを抜く際に、キリを真っ直ぐに抜くことができず、キリをこねることになり、キリの切れ味が比較的速く悪くなり、キリの寿命が短くなりやすかった。また、穿孔作業時には、穿孔後のキリを引き抜くとき、回転で中へ進もうとしているキリに反するため大きな力が必要であった。
【0005】
本発明は、キリを高寿命化することができ、かつ穿孔作業を容易に行える椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具は、ストッパを有している。このストッパは、ドリルのドリルチャックに基端側が固定され、前記ドリルによって回転させられて、原木に穴を切削するキリの前記原木への所定深さ以上の侵入を阻止するもので、例えば環状に形成され、前記ドリルに固定されるものであったり、キリの基端側に形成されたフランジ状のものである。前記ストッパから前記キリの先端側に向かって弾性体が前記キリの周囲を包囲しながら所定距離だけ設けられている。この弾性体は、前記キリの長さ方向に沿って伸縮可能である。弾性体としては、例えばコイルばねを使用することができる。
【0007】
このように構成された椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具は、キリの先端を原木に当てて、ドリルを回転させ、キリを原木内に進行させて行くに従って、弾性体が縮み、所定の深さまで進行すると、弾性体がストッパに当たって、それ以上、キリが進行することが阻止される。この状態において、ドリルの回転を停止させ、キリを抜く方向に移動させると、伸縮して弾性体が伸張して、キリがこねられることなく、真っ直ぐに抜ける。そのため、キリに負荷が掛からず、キリの切れ味が悪くなることがなく、高寿命化を図ることができる。また、キリを原木内に進行させる際、弾性体が案内として機能し、かつ縮んだ弾性体の反発力によってドリルが原木側に押されるので、大きな力でドリルを原木側に押す必要が無く、ドリルの負担が少なくなり、また穿孔作業に大きな労力が不要となる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、キリの高寿命化を図ることができる上に、穿孔作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態の椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具は、図1に示すようなドリル2と共に、使用する。ドリル2は、公知のものであるので、その詳細な説明は省略する。ドリル2の先端にドリルチャック4が設けられており、このドリルチャック4に、原木を穿孔するためのキリ6が着脱自在に取り付けられている。
【0010】
ドリルチャック4の近傍に、ストッパ、例えば環状リング8が、その中心にキリ6が位置するように配置されている。環状リング8には、固定棒10が一体に形成されている。固定棒10は、ドリル2のハウジング側に伸びており、ボルト12が形成されている。このボルト12がドリル2のハウジング2aに形成した固定部14にナット16、16によって固定されている。このボルト12の固定位置を調整することによって、環状リング8の固定位置も調整される。
【0011】
この環状リング8に一体に、弾性体、例えばコイルばね18が取り付けられている。コイルばね18は、固定棒10とは反対側の環状リング8の側に、例えば溶接によって固定されている。コイルばね18の内部のほぼ中心にキリ6が位置するようにコイルばね18が配置されている。コイルばね18の長さは、キリ6の先端がコイルばね18から突出するように、この実施形態では構成されている。キリ6の先端とコイルばね18との位置関係も、環状リング8の取付位置の変更によって調整できる。
【0012】
このように構成された補助具を取り付けたドリル2によって原木20に穿孔する場合、図2に示すように、キリ6の先端を原木20に当て、ドリル2のモータ(図示せず)を回転させることによってキリ6を原木20内に進行させることによって孔22が形成される。キリ6の進行に伴い、コイルばね18の先端が原木20に接触し、圧縮されていく。コイルばね18が完全に圧縮された状態において、キリ6は、これ以上進行することはできず、所定の深さに孔22が形成される。この穿孔の間、コイルばね18の圧縮によってもキリ6の進行が行われるので、ドリル2のモータの負担が軽くなり、またドリルを大きな力で原木から引き抜く必要が無く、穿孔作業が容易になる。
【0013】
穿孔終了後、モータの回転を停止させると、圧縮されたコイルばね18が元の長さ復帰しようとするので、これに伴いキリ6が孔22から真っ直ぐに抜ける。従って、キリ6によって原木20をこねることがなく、キリ6の切れ味が悪くなることはなく、キリ6の高寿命化を図ることができる。
【0014】
本発明の第2の実施形態の補助具は、キリ6aに一体にフランジ状のストッパ8aが形成されている場合のもので、このフランジ状のストッパ8aにコイルばね18が取り付けられている以外、第1の実施形態の補助具と同様に構成され、第1の実施形態の補助具と同様に動作するので、詳細な説明は省略する。
【0015】
上記の両実施形態の補助具では、弾性体としてコイルばね18を使用したが、これに限ったものではなく、例えばキリ6、6aの周囲にこれを囲むように所定の間隔をおいて複数の板ばねを配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の補助具を取り付けたドリルの部分破断側面図。
【図2】図1のドリルによって原木を穿孔している状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の補助具を取り付けたドリルの部分省略破断側面図である。
【符号の説明】
【0017】
2 ドリル
4 ドリルチャック
6 キリ
8 8a ストッパ
18 コイルばね(弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルのドリルチャックに基端側が固定され、前記ドリルによって回転させられて、原木に穴を切削するキリの前記原木への所定深さ以上の侵入を阻止するストッパと、
前記ストッパから前記キリの先端側に向かって前記キリの周囲を包囲しながら所定距離だけ設けられ、前記キリの長さ方向に沿って伸縮可能な弾性体とを、
具備する椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具。
【請求項2】
請求項1記載の椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具において、前記ストッパは、環状に形成され、前記ドリルに固定される椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具。
【請求項3】
請求項1記載の椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具において、前記ストッパは、前記キリの基端側に形成されたフランジ状体である椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具。
【請求項4】
請求項1記載の椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具において、前記弾性体は、コイルばねである椎茸栽培用穿孔ドリルの補助具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−261254(P2009−261254A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111286(P2008−111286)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「菌蕈」第53巻 第11号、財団法人日本きのこセンター、平成19年11月 5日
【出願人】(000163316)菌興椎茸協同組合 (1)
【Fターム(参考)】