説明

検出装置及び検出方法

【課題】張力等を高精度に検出し得る検出装置及び検出方法を提供する。
【解決手段】第1の回動軸49を中心として回動自在な第1のフレーム46と、第1の回動軸の両側に第1の回動軸と平行に配され、軸受48を介して第1のフレーム46により回転自在に支持され、搬送される帯状体又は線状体12が所定の抱き角で接する2本のロール44a、44bと、第1のフレームの第1の回動軸回りのモーメントを検出する第1の荷重センサ62とを有し、第1の荷重センサによる検出値に基づいて、帯状体又は線状体の張力を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、めっきを施すべき帯状の基材を搬送しながら、めっき槽内を通過させることにより、帯状の基材に対してめっき処理等を行う技術が提案されている。
【0003】
かかる基材に過大な張力が加わった場合には、基材が変形してしまい、寸法の安定性等の要求を満足し得ない。
【0004】
一方、張力が過度に小さい場合には、搬送用のローラと基材との間でスリップが生じ、基材に傷等が生じてしまう。
【0005】
従って、基材に適切な張力が加わるように制御しながら、基材を搬送することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−278214号公報
【特許文献2】特開2001−66205号公報
【特許文献3】特開2003−147582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基材の張力を高精度且つ高感度で検出するのは必ずしも容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、張力等を高精度に検出し得る検出装置及び検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、第1の回動軸を中心として回動自在な第1のフレームと、前記第1の回動軸の両側に前記第1の回動軸と平行に配され、軸受を介して前記第1のフレームにより回転自在に支持され、搬送される帯状体又は線状体が所定の抱き角で接する2本のロールと、前記第1のフレームの前記第1の回動軸回りのモーメントを検出する第1の荷重センサとを有し、前記第1の荷重センサによる検出値に基づいて、前記帯状体又は前記線状体の張力を検出することを特徴とする検出装置が提供される。
【0010】
上記の検出装置において、前記第1の回動軸と平行な第2の回動軸を中心として回動自在な第2のフレームと、前記第2のフレームの前記第2の回動軸回りのモーメントを検出する第2の荷重センサとを更に有し、前記第1の回動軸は、前記第2のフレームに設けられており、前記第1の荷重センサによる検出値と前記第2の荷重センサによる検出値とに基づいて、前記帯状体又は前記線状体の前記張力を検出してもよい。
【0011】
上記の検出装置において、前記第1の荷重センサによる検出値と前記第2の荷重センサによる検出値とに基づいて、前記ロールの負荷トルクを検出してもよい。
【0012】
上記の検出装置において、前記抱き角を調整する抱き角調整手段を更に有してもよい。
【0013】
本発明の他の観点によれば、第1の回動軸を中心として回動自在な第1のフレームと、前記第1の回動軸の両側に前記第1の回動軸と平行に配され、軸受を介して前記第1のフレームにより回転自在に支持され、搬送される帯状体又は線状体が所定の抱き角で接する2本のロールと、前記第1のフレームの前記第1の回動軸回りのモーメントを検出する第1の荷重センサとを有する検出装置を用いた検出方法であって、前記第1の荷重センサによる検出値に基づいて、前記帯状体又は前記線状体の張力を検出することを特徴とする検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2本のロールを用いて張力を検出するため、基材とロールとの抱き角を比較的大きく設定することができ、張力が比較的小さい場合であっても、高精度且つ高感度に張力を検出することができる。また、本発明によれば、ロールの上流側の張力と下流側の張力とをそれぞれ別個に検出することもできる。また、本発明によれば、負荷トルクについても高精度且つ高感度で正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】2本の張力検出用のロールを用いて張力を検出する場合を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による連続湿式処理装置の構造を示す上面図である。
【図3】本発明の一実施形態による検出装置を示す概略図(その1)である。
【図4】基材やロールに働く力やモーメント等を示す図(その1)である。
【図5】本発明の一実施形態による検出装置を示す上面図(その1)である。
【図6】本発明の一実施形態による検出装置を示す上面図(その2)である。
【図7】本発明の一実施形態による検出装置を示す上面図(その3)である。
【図8】本発明の一実施形態による検出装置を示す正面図である。
【図9】本発明の一実施形態による検出装置を示す左側面図である。
【図10】本発明の一実施形態による検出装置を示す右側面図である。
【図11】本発明の一実施形態による検出装置を示す概略図(その2)である。
【図12】基材やロールに働く力やモーメント等を示す図(その2)である。
【図13】本発明の変形実施形態による検出装置を示す概略図である。
【図14】1本の張力検出用のロールを用いて張力を検出する場合を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図14は、1本の張力検出用のロールを用いて張力を検出する場合を示す概略図である。
【0017】
図14(a)に示すように、帯状や線状の基材112を搬送するための搬送用のロール142と、基材112における張力T、Tを検出するための張力検出用のロール144とが設けられている。Tは、ロール144の上流側における基材112の張力を示しており、Tは、ロール144の下流側における基材112の張力を示している。張力検出用のロール144は、抱き角(抱き角度)αで基材112に接している。
【0018】
張力T、Tを検出する際には、張力検出用のロール144に働く1方向の荷重を検出するだけでは、正確な張力検出を行うことができない。このため、張力検出用のロール144に働く2方向の荷重を検出する。図14(b)において、Fは、ロール144の中心軸に働くX方向の荷重であり、Fは、ロール144の中心軸に働くY方向の荷重である。
【0019】
抱き角をα(但し、0°<α<180°)とすると、ロール144の上流側における基材12の張力T、及び、ロール144の下流側における基材112の張力Tは、それぞれ以下のような式により表される。
【0020】
= F/sinα
= Tcosα − F
また、張力検出用のロール144の半径をrとすると、負荷トルクMは、以下のような式により表される。
【0021】
M = r(T−T
なお、負荷トルクとは、ロールに働く張力以外の力によるトルクである。負荷トルクには、ロールの回転摩擦によるトルク等が含まれる。
【0022】
図14のように1本のロール144で基材112の張力を検出する場合には、抱き角αを必ずしも十分に大きくすることができないため、基材112における張力を必ずしも十分に高精度で検出し得ない。
【0023】
本願発明者は鋭意検討した結果、2本の張力検出用のロールを用いて張力を検出することに想到した。図1は、2本の張力検出用のロールを用いて張力を検出する場合を示す概略図である。
【0024】
図1に示すように、帯状や線状の基材12を搬送するための搬送用のロール42と、基材12における張力T、Tを検出するための2本の張力検出用のロール44a、44bとが設けられている。Tは、ロール44aの上流側における基材12の張力を示しており、Tは、ロール44bの下流側における基材12の張力を示している。張力検出用のロール44a、44bは、抱き角α、αで基材12にそれぞれ接している。
【0025】
図1に示すように、2本の張力検出用のロール44a、44bを用いれば、基材12と張力検出用のロール44a、44bとが十分に大きい抱き角α、αで接するようにすることが可能である。このため、2本の張力検出用のロール44a、44bを用いれば、張力検出用のロール44a、44bに働く合力F、Fを十分に大きくすることが可能となる。Fは、上流側のロール44aに働く合力を示しており、Fは、下流側のロール44bに働く合力を示している。
【0026】
このように、2本の張力検出用のロール44a、44bを用いれば、基材12と張力検出用ロール44a、44bとを十分に大きい抱き角α、αで接すようにすることが可能となり、基材12における張力T、Tを高い感度で検出することが可能となる。
【0027】
[一実施形態]
本発明の一実施形態による検出装置及び検出方法並びにその検出装置を用いた処理装置を図1乃至図12を用いて説明する。
【0028】
本実施形態では、本実施形態による検出装置を用いた連続湿式処理装置を例に説明するが、本発明は、連続湿式処理装置に限定されるものではなく、様々な処理装置等に用いることができる。
【0029】
(連続湿式処理装置)
まず、本実施形態による検出装置を用いた連続湿式処理装置について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態による連続湿式処理装置の構造を示す上面図である。
【0030】
本実施形態による連続湿式処理装置は、帯状のめっき対象物に電気銅めっきを施すものである。
【0031】
本実施形態による連続湿式処理装置は、図2に示すように、めっき処理が行われるめっき処理部10と、めっきを施すべき帯状の基材12をめっき処理部10に連続的に送り出す基材巻き出し部14と、めっき処理部10においてめっきが施された基材12を連続的に回収する基材巻き取り部16とを有している。
【0032】
基材巻き出し部14には、コイル状に巻かれた帯状の基材12を、その幅方向を略鉛直にして長手方向に送り出し、めっき処理部10へ導入するアンコイラー18が設けられている。アンコイラー18とめっき処理部10との間には、アンコイラー18から送り出された基材12の張力を一定に保つアキューム装置20が設けられている。
【0033】
めっき処理部10は、めっき液で満たされた複数のめっき槽22a、22b、22c、22dを有している。各めっき槽22a、22b、22c、22dには、対向する側壁にそれぞれ液シール装置24が設けられており、一方の側壁の液シール装置24から基材12が幅方向を略鉛直にしてめっき槽22a、22b、22c、22d内に導入されるようになっている。めっき槽22a、22b、22c、22dに導入された基材12は、そのまま他方の側壁の液シール装置24を介してめっき槽22a、22b、22c、22d外に導出されるようになっている。
【0034】
めっき槽22bの基材導出側とめっき槽22cの基材導入側の近傍には、めっき槽22bの液シール装置24から導出された基材12を方向転換し、めっき槽22cに液シール装置24を介して導入するためのUターン部26が設けられている。
【0035】
各めっき槽22a、22b、22c、22dの基材導入側と基材導出側の液シール装置24近傍には、基材12に給電するための給電ロール部28が設けられている。
【0036】
めっき槽22aの基材導入側と基材巻き出し部14との間には、基板巻き出し部14から送り出された基材12の汚れの除去等を行う前処理槽30が設けられている。前処理槽30についても、めっき槽22a、22b、22c、22dと同様の液シール装置(図示せず)が設けられている。
【0037】
めっき槽22dの基材導出側の液シール装置24近傍には、めっきが施された基材12をシャワー洗浄する洗浄室32が設けられている。洗浄室32近傍には、洗浄室内で洗浄された基材12を熱風乾燥する乾燥室34が設けられている。
【0038】
乾燥室34近傍には、乾燥室34内で乾燥された基材12を巻き取り回収する基材巻き取り部16が配置されている。
【0039】
基材巻き取り部16には、めっき処理部10によりめっきが施され、幅方向を略鉛直にして送り出された基材12を巻き取って回収するリコイラー36が設けられている。リコイラー36とめっき処理部10の乾燥室34との間には、基材12を所定の速度でリコイラー36に送るための駆動装置38が設けられている。
【0040】
各めっき槽22a、22b、22c、22dの基材導入側と給電ロール28との間には、後に詳述する本実施形態による検出装置40が設けられている。検出装置40は、基材12における張力等を検出するものである。
【0041】
こうして、基材巻き出し部14からその幅方向を略鉛直にして長手方向に送り出された基材12が、めっき処理部10の前処理槽30、めっき槽22a、22b、22c、22d、洗浄室32、乾燥室34を順次通過し、基材巻き取り部16により回収される構成となっている。
【0042】
このように、本実施形態による連続湿式処理装置は、めっき処理の対象物である帯状の基材12が、液シール装置24を介してその幅方向を略垂直にして長手方向にめっき槽22a、22b、22c、22d内を通過するものである。
【0043】
基材12としては、例えばフレキシブルプリント配線板等に用いられる樹脂フィルム等が挙げられる。フレキシブルプリント配線板等の微細化に伴い、基材12に要求される寸法の安定性は厳しくなってきている。このため、樹脂フィルム等の帯状の基材12を、微弱な張力で皺や擦り傷等の不良を発生させることなく搬送して、めっき処理等を行うことが好ましい。
【0044】
基材12が例えば幅500mm、厚さ9μm程度の樹脂フィルムの場合には、許容最大張力は例えば20N程度である。
【0045】
なお、基材12の材質、幅、厚さ、最大許容張力等は、これに限定されるものではなく、基材12によって様々である。
【0046】
連続湿式処理装置には、給電ロール28や液切り用のロール(図示せず)等の多数のロールが組み込まれており、これらすべてのロールの回転摩擦の総計は最大許容張力を超える。このため、ロールの回転摩擦を打ち消すための回転補助駆動が、数箇所のロールに対して行われる。
【0047】
適切な回転補助駆動の制御を行うためには、微弱な張力を高精度且つ高感度で検出し、検出された正確な張力に基づいて、回転補助駆動の制御を行うことが好ましい。本実施形態による検出装置は、後述するように、基材12における張力等を高精度且つ高感度で検出し得るものである。
【0048】
また、ロールの回転摩擦が経時変化等により大きくなってきた場合には、ロールの軸受等をメンテナンスすることが好ましい。本実施形態による検出装置は、後述するように、回転摩擦等を含む負荷トルクを高精度且つ高感度で検出し得るものである。
【0049】
(検出装置)
次に、本実施形態による検出装置について図3乃至図12を用いて説明する。図3は、本実施形態による検出装置を示す概略図(その1)である。図4は、基材やロールに働く力やモーメント等を示す図(その1)である。図5は、本実施形態による検出装置を示す上面図(その1)である。図6は、本実施形態による検出装置を示す上面図(その2)である。図7は、本実施形態による検出装置を示す上面図(その3)である。図8は、本実施形態による検出装置を示す正面図である。図9は、本実施形態による検出装置を示す左側面図である。図10は、本実施形態による検出装置を示す右側面図である。図11は、本実施形態による検出装置を示す概略図(その2)である。図11は、図3の場合より抱き角を大きく設定した場合を示している。図12は、基材やロールに働く力やモーメント等を示す図(その2)である。図12は、抱き角を図11のように設定した場合に対応している。
【0050】
なお、図3、図11においては、説明の便宜上、ロールを水平に配しているが、実際には、図5乃至図10に示すように、ロールの長手方向は鉛直方向となっている。なお、ロールの長手方向は鉛直方向に限定されるものではなく、適宜設定し得る。
【0051】
図3に示すように、回動軸56を中心軸として回動自在なフレーム(メカニカルロス検出フレーム)54が設けられている。フレーム54は、支点58において、固定フレーム(筐体)60により回動自在に支持されている。フレーム54は、複数の部材54a〜54d(図5,図8,図9参照)を組み合わせることにより構成されている。支点58としては、例えば転がり軸受等の軸受が用いられている。軸受58の中心軸は、回動軸56と一致している。
【0052】
フレーム54には、回動軸56と平行に回動軸49が設けられている。回動軸49と回動軸56との距離は、Lである。
【0053】
フレーム54は、支点52おいて、フレーム(合成張力検出フレーム、支持部)46を回動自在に支持している。換言すれば、フレーム46は、フレーム54に形成された回動軸49を中心軸として回動自在にフレーム54により支持されている。支点52としては、例えば転がり軸受等の軸受が用いられている。軸受52の中心軸は、回動軸49と一致している。図3に示すフレーム46は、図5乃至図9に示すフレーム46と抱き角調整用プレート50aとねじ50bとが相俟って構成されている。
【0054】
回動軸49の両側には、回動軸49と並行するようにロール(張力検出ロール)44a、44bが設けられている。ロール44a、44bとしては、同じ質量、且つ、同じ寸法のものが用いられている。なお、ロール44a、44bの質量、寸法は、必ずしも同じでなくてもよく、適宜設定してもよい。ロール44a、44bの胴部の直径は、例えば40mm程度とする。ロール44a、44bの長手方向における胴部の幅は、例えば590mm程度とする。ロール44aの中心軸とロール44bの中心軸と回動軸49とは、互いに平行になっている。ロール44a、44bは、例えば転がり軸受等の軸受48を介してフレーム46により支持されている。
【0055】
帯状の基材12は、抱き角α、α(図1参照)でロール44a、44bに接しながら搬送される。抱き角α、αは、抱き角調整手段(抱き角調整用軸継手)50により調整できるようになっている。
【0056】
図5に示すように、抱き角α、αを調整するための抱き角調整用プレート50aが設けられている。抱き角調整用プレート50aとフレーム46とは、ねじ(ボルト)50bを緩めることにより摺動可能となり、ねじ50bを用いて固定できるようになっている。図3に示す抱き角調整手段50は、フレーム46と抱き角調整用プレート50aとねじ50bとが相俟って構成されている。
【0057】
図6は、図5の場合より抱き角α、αを小さく設定した場合を示している。図7は、基材12とロール44a、44bとが接触しないようにした状態を示している。
【0058】
本実施形態では、このような抱き角調整手段50が設けられているため、抱き角α、αを容易に調整することが可能である。抱き角α、αの設定可能範囲は、例えば0°〜24°程度となっている。なお、抱き角α、αの設定可能範囲はこれに限定されるものではなく、所望の範囲で抱き角α、αを設定できるように、抱き角調整手段50等を設計すればよい。
【0059】
フレーム54には、フレーム46の回動軸49回りのモーメントを検出する荷重センサ(力検出器)62が設けられている。荷重センサ62としては、例えば軽荷重測定用のロードセル等を用いることができる。抱き角α、αが例えば24°程度、張力T、Tが例えば20N程度の場合、荷重センサ62に働く荷重は、例えば4.7N程度である。荷重センサ62の最大測定可能荷重は、例えば20N程度である。なお、荷重センサ62の最大測定可能荷重は、これに限定されるものではなく、適切な荷重センサを適宜用いることができる。荷重センサ62は、回動軸49から距離L(図3参照)だけ離れた箇所におけるフレーム46の回動軸49回りのモーメントを検出する。
【0060】
固定フレーム60には、フレーム54の回動軸56回りのモーメントを検出する荷重センサ64が設けられている。荷重センサ64としては、例えば軽荷重測定用のロードセル等を用いることができる。かかる荷重センサ64の最大測定可能荷重は、例えば20N程度である。なお、荷重センサ64の最大測定可能荷重は、これに限定されるものではなく、適切な荷重センサを適宜用いることができる。荷重センサ64は、回動軸56から距離L(図3参照)だけ離れた箇所におけるフレーム54の回動軸56回りのモーメントを検出する。
【0061】
図8に示すように、荷重センサ62、64が配されている箇所は、ロール44a、44bの長手方向の中央近傍の高さの箇所ではなく、上端部の近傍である。このため、捩りモーメントによるフレーム46,54のねじれが、検出精度に悪影響を与えるのを防止すべく、十分な捩り剛性を有するフレーム46,54を用いることが好ましい。
【0062】
なお、検出精度を向上させるためには、ロール44a、44bの長手方向の中央の近傍の高さの箇所に、荷重センサ62,64を設けるようにすることが好ましい。
【0063】
基材12における張力T、Tや、ロール44a、44bにおける負荷トルクM、Mは、以下のようにして求められる。
【0064】
図4に示すように、ロール44aの上流側における基材12の張力をTとし、ロール44bの下流側における基材12の張力をTとし、ロール44aとロール44bとの間の部分における基材12の張力をTとし、上流側のモーメント長さをLとし、下流側のモーメント長さをLとすると、フレーム46の回動軸(ピボット)49回りのモーメントMは、以下のような式(1)により表される。
【0065】
= T + T ・・・(1)
また、ロール44a、44bの半径をrとし、上流側のロール44aの抱き角をα(但し、0°<α<360°)とし、下流側のロール44bの抱き角をα(但し、0°<α<360°)とし、ひねり角をθ(但し、0°<θ<90°)とすると、上流側のモーメント長さLと、下流側のモーメント長さLは、以下のような式により表される。
【0066】
= r{1+sin(α−θ)/sinθ}
= r{1+sin(α−θ)/sinθ}
また、ピボット(回動軸)49に働く合力RのX方向成分RとY方向成分Rとは、以下のような式(2)、(3)により表される。なお、X方向とは、ロール44aの中心とロール44bの中心とを結ぶ線の方向である。Y方向とは、X方向と垂直な方向であって、且つ、ロール44a、44bの中心軸とも垂直な方向である。
【0067】
= Tcos(α−θ) − Tcos(α−θ) ・・・(2)
= Tsin(α−θ) − Tsin(α−θ) ・・・(3)
また、上流側のロール44aの負荷トルクM、下流側のロール44bの負荷トルクMは、以下のような式により表される。
【0068】
= r(T−T
= r(T−T
2本のロール44a、44bの負荷トルクの合計(M+M)は、以下のような式(4)により表される。
【0069】
+M= r(T−T) ・・・(4)
また、図3に示すように、荷重センサ62に対するフレーム46のモーメント長さをLとし、荷重センサ64に対するフレーム54のモーメント長さをLとし、回動軸(ピボット)49に対するフレーム54のモーメント長さをLとすると、荷重センサ62に働く荷重F、及び、荷重センサ64に働く荷重Fは、以下のような式(5)、(6)により表される。
【0070】
= M/L ・・・(5)
=(M+R)/L ・・・(6)
図3のように、TのX方向成分絶対値がY方向成分絶対値よりも大きい場合には、式(2)、(3)のうち、式(2)を用いた場合の方がTとTとの差を検出しやすくなるため、式(2)を選択することが好ましい。式(1)、(2)に、α=α=θ、L=L=r を代入すると、それぞれ、
=(T+To)r
= To−T
となり、T、Toを求めると、
={(M/r)−R}/2
o={(M/r)+R}/2
となる。これを式(4)に代入すると、
+M= rR
となる。
【0071】
また、式(5)、(6)からRを求めると、
=(F−F)/L
となる。従って、上流側の張力T、下流側の張力T、及び、負荷トルクの合計(M+M)は、以下のような式(7)〜(9)により表される。
【0072】
=(F/2)(1/r+1/L)−F/(2L) ・・・(7)
o=(F/2)(1/r−1/L)+F/(2L) ・・・(8)
+M= (r/L)(F−F) ・・・(9)
また、図11に示すように、荷重センサ62に対するフレーム46のモーメント長さをLとし、荷重センサ64に対するフレーム54のモーメント長さをLとし、回動軸(ピボット)49に対するフレーム54のモーメント長さをLとすると、荷重センサ62に働く荷重F、及び、荷重センサ64に働く荷重Fは、以下のような式(10)、(11)により表される。
【0073】
= M/L ・・・(10)
=(M+R)/L ・・・(11)
図11のように、TのX方向成分絶対値がY方向成分絶対値よりも小さい場合には、式(2)、(3)のうち、式(3)を用いた場合の方がTとTとの差を検出しやすくなるため、式(3)を選択することが好ましい。式(1)、(3)に、α=α=θ+90゜、L=L=r(1+1/sinθ) を代入すると、それぞれ、
=(T+To)(r+r/sinθ)
= To−T
となり、T、Toを求めると、
=[{M/(r+r/sinθ)}−R]/2
o=[{M/(r+r/sinθ)}+R]/2
となる。これを式(4)に代入すると
+M= rR
となる。
【0074】
また、式(10)、(11)からRを求めると、
=(F−F)/L
となる。従って、上流側の張力T、下流側の張力T、及び、負荷トルクの合計(M+M)は、以下のような式により表される。
【0075】
=(F/2){1/(r+r/sinθ)+1/L}−F/(2L
o=(F/2){1/(r+r/sinθ)−1/L}+F/(2L
+M= (r/L)(F−F
こうして、検出用のロール44a、44bの上流側の張力Tと下流側の張力Tとがそれぞれ別個に検出され、検出用のロール44a、44bにおける負荷トルクの合計(M+M)についても検出される。
【0076】
なお、張力T、Tや負荷トルク(M+M)の算出は、本実施形態による処理装置内に設けられたCPU等の処理部(図示せず)が行うようにしてもよいし、検出装置内に設けられたCPU等の処理部(図示せず)が行うようにしてもよい。
【0077】
このようにして検出された張力の検出値は、処理装置が回転補助駆動の制御を行う際等に用いられる。処理装置は、基材12における張力が所定範囲内になるように回転補助駆動の制御を行う。
【0078】
また、このようにして検出された負荷トルクの検出値は、ローラ44a、44bの軸受48等のメンテナンスの要否の判断等に用いることができる。処理装置は、検出された負荷トルクの値に基づいて、軸受48等のメンテナンスの要否を適宜判断する。
【0079】
このように、本実施形態によれば、2本の張力検出用のロール44a、44bを用いるため、基材12とロール44a、44bとの抱き角α、αを比較的大きく設定することが可能である。また、本実施形態によれば、2本の張力検出用のロール44a、44bを用いるため、2本の張力検出用のロール44a、44bに働く張力T、Tを合成モーメントとして検出することができる。このため、本実施形態によれば、張力が微弱な場合であっても、高精度且つ高感度に基材12における張力T、Tを検出することができる。このため、本実施形態による検出装置を用いれば、基材12に対して所定の処理を行う処理装置において、適切な回転補助駆動の制御等を行うことが可能となり、基材12に過大な張力が加わるのを防止しうる。このため、本実施形態によれば、寸法安定性を損なうことなく、めっき処理等の所定の処理を行うことが可能となる。
【0080】
ロール44a、44bを支持する軸受48には回転摩擦が生じ、回転摩擦の大きさはロール44a、44bに働く張力T、Tの大きさによっても変化する。ロール44a、44bの上流側の張力Tと下流側の張力Tは、軸受48の回転摩擦により異なる値となるが、本実施形態では、上流側の張力Tと下流側の張力Tとの合力を、2つの荷重センサ62,64を用いて2つの方向について検出するため、ロール44a、44bの上流側の張力Tと下流側の張力Tとをそれぞれ別個に算出することができる。このため、回転補助駆動をロール44a、44bの上流側において行う場合には、本実施形態による検出装置40により検出された上流側の張力Tに基づいて回転補助駆動を適切に行うことができる。また、回転補助駆動をロール44a、44bの下流側において行う場合には、本実施形態による検出装置40により検出された下流側の張力Tに基づいて回転補助駆動を適切に行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、2つの荷重センサ62,64のみで上流側の張力T、下流側の張力T、及び、ロール44a、44bに働く負荷トルクの合計(M+M)を、それぞれ検出することができる。本実施形態では、荷重センサ62、64の数が少なくてすむため、低コスト化の要請に応え得る。
【0082】
基材12の張力が微弱な場合には、基材12とロール44a、44bとの間でスリップが生じやすく、基材12に擦り傷が生じる場合がある。基材12とロール44a、44bとの抱き角α、αを大きく設定すれば、スリップを防止することは可能であるが、抱き角α、αを大きく設定した場合には、基材12の厚みの不均一等に起因して、基材12に皺が生じやすくなる。本実施形態では、基材12とロール44a、44bとの抱き角α、αを、抱き角調整手段50により容易に調整し得るため、スリップ等が生じないように抱き角α、αを適宜調整することができる。このため、本実施形態によれば、スリップ等により基材12に傷がつくのを確実に防止し得る。
【0083】
このように、本実施形態によれば、2本の検出用のロール44a、44bを用いるため、検出用のロール44a、44bの上流側の張力Tと下流側の張力Tとをそれぞれ別個に高精度且つ高感度で正確に検出することができるとともに、検出用のロール44a、44bにおける負荷トルクについても高精度且つ高感度で正確に検出することができる。また、本実施形態による検出装置は、簡便な構成であるため、低コスト化の要請にも応え得る。また、本実施形態による検出装置は、コンパクトであるため、省スペース化の要請に応え得る。また、本実施形態による検出装置は、抱き角α、αの調整も容易であるため、操作性の向上にも寄与することができる。
【0084】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0085】
例えば、負荷トルクM、Mが無視できるほど小さいことがわかっている場合には、図3に示される荷重センサ64及びフレーム54を設けない構成にしてもよい。図13は、本発明の変形実施形態による検出装置を示す概略図である。図3に示される荷重センサ64及びフレーム54は、図13には設けられていない。負荷トルクM、Mが無視できるほど小さい場合には、式(9)にM+M≒0を代入すると、F≒Fとなり、式(7)、(8)より、張力T、Tは以下のような式により表される。
【0086】
≒ T ≒ F/(2r)
これらの式から分かるように、負荷トルク(M+M)が無視できるほど小さいことがわかっている場合には、荷重センサ62に働く荷重Fのみに基づいて張力T、Tを求めることが可能である。図13のような構成にすれば、簡便な構成の検出装置を実現することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、基材12が帯状体である場合を例に説明したが、基材12は帯状体に限定されるものではない。例えば基材12が線状体であってもよい。基材12が線状体である場合にも、高精度且つ高感度で張力や負荷トルク等を検出することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、荷重センサ62を1つ設ける場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上部側のみならず、下部側にも荷重センサ62を設けるようにしてもよい。そして、2つの荷重センサ62により得られる検出値の加算値や平均値等を用いて張力や負荷トルク等を検出するようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、荷重センサ64を1つ設ける場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、上部側のみならず、下部側にも荷重センサ64を設けるようにしてもよい。そして、2つの荷重センサ64により得られる検出値の加算値や平均値等を用いて張力や負荷トルク等を検出するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、張力等を算出する際に抱き角α、αの値を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。抱き角α、αを正確に求めることが困難な場合には、例えば、ばね秤等を用いて張力を測定しながら、基材12に張力を与え、張力と荷重センサ62,64の出力信号との相関を予め測定しておき、張力を検出する際には、この相関に基づいて張力を算出するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、ロール44a、44bの長手方向が鉛直方向である場合を例に説明したが、ロール44a、44bの長手方向を鉛直方向に設定しなくてもよい。回動軸49を挟んだ両側に張力検出用のロール44a、44bをそれぞれ配せば、ロール44a、44bの長手方向が鉛直方向でない場合であっても、ロール44a、44bの重量が相殺される。このため、ロール44a、44bの長手方向が鉛直方向でない場合であっても、加重センサ62,64にはロール44a、44bの重量による荷重が働かず、荷重センサ62、64の計測範囲を最大限に活用することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…めっき処理部
12…基材
14…基材巻き出し部
16…基材巻き取り部
18…アンコイラー
20…アキューム装置
22a、22b、22c、22d…めっき槽
24…液シール装置
26…Uターン部
28…給電ロール部
30…前処理槽
32…洗浄室
34…乾燥室
36…リコイラー
38…駆動装置
40…検出装置
42…ロール
44a、44b…ロール
46…フレーム
48…軸受
49…回動軸
50…抱き角調整手段
50a…抱き角調整用プレート
50b…ねじ
52…支点
54…フレーム
54a〜54d…部材
56…回動軸
58…支点
60…固定フレーム
62…荷重センサ
64…荷重センサ
112…基材
142…ロール
144…ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回動軸を中心として回動自在な第1のフレームと、
前記第1の回動軸の両側に前記第1の回動軸と平行に配され、軸受を介して前記第1のフレームにより回転自在に支持され、搬送される帯状体又は線状体が所定の抱き角で接する2本のロールと、
前記第1のフレームの前記第1の回動軸回りのモーメントを検出する第1の荷重センサとを有し、
前記第1の荷重センサによる検出値に基づいて、前記帯状体又は前記線状体の張力を検出する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の検出装置において、
前記第1の回動軸と平行な第2の回動軸を中心として回動自在な第2のフレームと、
前記第2のフレームの前記第2の回動軸回りのモーメントを検出する第2の荷重センサとを更に有し、
前記第1の回動軸は、前記第2のフレームに設けられており、
前記第1の荷重センサによる検出値と前記第2の荷重センサによる検出値とに基づいて、前記帯状体又は前記線状体の前記張力を検出する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の検出装置において、
前記第1の荷重センサによる検出値と前記第2の荷重センサによる検出値とに基づいて、前記ロールの負荷トルクを検出する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検出装置において、
前記抱き角を調整する抱き角調整手段を更に有する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項5】
第1の回動軸を中心として回動自在な第1のフレームと、前記第1の回動軸の両側に前記第1の回動軸と平行に配され、軸受を介して前記第1のフレームにより回転自在に支持され、搬送される帯状体又は線状体が所定の抱き角で接する2本のロールと、前記第1のフレームの前記第1の回動軸回りのモーメントを検出する第1の荷重センサとを有する検出装置を用いた検出方法であって、
前記第1の荷重センサによる検出値に基づいて、前記帯状体又は前記線状体の張力を検出する
ことを特徴とする検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−21876(P2012−21876A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159716(P2010−159716)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000226518)日陽エンジニアリング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】