説明

検査用治具およびレンズ駆動装置の検査方法

【課題】レンズホルダが取り付けられる可動体の内周面を損傷させることなく、レンズ駆動装置の可動体に着脱することが可能な検査用治具を提供する。
【解決手段】レンズを保持するレンズホルダが取り付けられる内周面を有する略筒状に形成されレンズの光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動する駆動機構4とを備えるレンズ駆動装置1の検査時に、レンズホルダに代えて可動体2に搭載されて使用される検査用治具25は、可動体2に形成される搭載面8eに搭載される被搭載面と、検査用治具25の被写体側の端面である被写体側端面26h、27aとを備えている。被写体側端面26h、27aは、光を反射する光反射性を有しており、この被写体側端面26h、27aには、レンズ駆動装置1の検査時に光が照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるレンズ駆動装置の検査時に使用される検査用治具、および、この検査用治具を用いたレンズ駆動装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置は、レンズを内周側で保持するレンズホルダと、レンズホルダを内周側で保持するスリーブと、スリーブを光軸方向へ移動可能に支持する固定体とを備えている。レンズホルダの外周面には、オネジが形成され、スリーブの内周面には、レンズホルダの外周面に形成されるオネジに螺合するメネジが形成されている。このレンズ駆動装置では、スリーブの内周側にレンズホルダをねじ込むことで、スリーブにレンズホルダが仮固定される。また、レンズホルダの外周面とスリーブの内周面との間に接着剤を塗布して硬化させることで、スリーブにレンズホルダが確実に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−292821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レンズ駆動装置を製品として出荷する前には、固定体の軸(光軸方向の軸)に対するスリーブの軸(光軸方向の軸)の傾き(チルト)や固定体に対するスリーブの移動量等の特性検査を行う必要がある。また、レンズ駆動装置を製品として出荷する形態には、一般に、レンズ駆動装置の製造メーカーがレンズホルダを組み込んでからレンズ駆動装置を出荷する形態と、レンズ駆動装置の製造メーカーがレンズホルダを組み込まずにレンズ駆動装置を出荷する形態とがある。レンズホルダが組み込まれていない状態でレンズ駆動装置が出荷される場合には、出荷先の完成品メーカー等でレンズ駆動装置にレンズホルダが組み込まれる。
【0005】
レンズホルダが組み込まれていない状態でレンズ駆動装置が出荷される場合、製造メーカーでは、レンズホルダに代えて検査用治具をスリーブに取り付けて、チルト等の特性検査を行う必要があり、検査後には、スリーブから検査用治具を取り外す必要がある。ここで、特性検査で使用される検査用治具が、その外周面にオネジが形成されたものであって、スリーブの内周側にねじ込むことでスリーブに取り付けられるものである場合、検査用治具の着脱の際に、スリーブの内周面に形成されるメネジが損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、レンズホルダが取り付けられる可動体の内周面を損傷させることなく、レンズ駆動装置の可動体に着脱することが可能な検査用治具を提供することにある。また、本発明の課題は、かかる検査用治具を用いたレンズ駆動装置の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の検査用治具は、レンズを保持するレンズホルダが取り付けられる内周面を有する略筒状に形成されレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体を光軸方向へ駆動する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置の検査時に、レンズホルダに代えて可動体に搭載されて使用される検査用治具であって、可動体に形成される搭載面に搭載される被搭載面と、検査用治具の被写体側の端面である被写体側端面とを備え、被写体側端面は、光を反射する光反射性を有し、被写体側端面には、レンズ駆動装置の検査時に光が照射されることを特徴とする。
【0008】
本発明の検査用治具には、可動体に形成される搭載面に搭載される被搭載面が形成されている。そのため、搭載面に被搭載面を搭載すれば、検査用治具を可動体に取り付けることが可能になり、かつ、検査用治具を持ち上げれば、検査用治具を可動体から取り外すことが可能になる。したがって、本発明では、可動体の内周面を損傷させることなく、可動体に検査用治具を着脱することが可能になる。また、本発明では、搭載面に被搭載面を搭載すれば、検査用治具を可動体に取り付けることが可能になり、かつ、検査用治具を持ち上げれば、検査用治具を可動体から取り外すことが可能になるため、可動体に対する検査用治具の着脱時間を短縮することが可能になり、その結果、検査時間を短縮することが可能になる。
【0009】
本発明において、検査用治具は、可動体の内周側に挿入される本体部と、本体部の被写体側端に繋がる端面部とを備え、端面部には、可動体の径方向の外側へ広がる被搭載部が形成され、被搭載面は、被搭載部の反被写体側の端面であり、搭載面は、可動体の被写体側に形成されていることが好ましい。このように構成すると、本体部を利用して、可動体に対する検査用治具の、レンズ駆動装置の径方向におけるがたつきを抑制することが可能になる。また、このように構成すると、可動体の被写体側の端面をそのまま搭載面として利用することが可能になるため、可動体の反被写体側に搭載面が形成されている場合と比較して、可動体の構成を簡素化することが可能になる。
【0010】
本発明において、固定体は、レンズ駆動装置の被写体側の端面を構成する端面部材を備え、端面部材には、レンズの光軸を中心とする開口部が形成され、本体部の外周面と可動体の内周面との距離は、端面部の外周端と開口部の縁との最小距離よりも小さくなっていることが好ましい。このように構成すると、端面部の外周端と開口部の縁とが干渉するのを防止することが可能になる。したがって、検査用治具が傾かないように可動体の搭載面に検査用治具を搭載することが可能になり、その結果、適切な検査を行うことが可能になる。
【0011】
本発明において、検査用治具は、たとえば、端面部に取り付けられる鏡を備え、鏡の光反射面は、被写体側端面の一部を構成しており、レンズ駆動装置の検査時に、鏡の光反射面に光が照射される。この場合には、被写体側端面で反射される反射光の光量を増やすことが可能になる。したがって、被写体側端面での反射光の光量が要求される検査を適切に行うことが可能になる。
【0012】
本発明において、鏡は、検査用治具の軸中心からずれた位置に取り付けられていることが好ましい。このように構成すると、可動体に検査用治具を搭載するときに、鏡を目印にして、可動体に対する検査用治具の取付方向を一定にすることが可能になる。たとえば、一定方向を向くようにレンズ駆動装置を配置するとともに、作業者の手前側に鏡が配置されるように検査用治具を可動体に取り付けることで、可動体に対する検査用治具の取付方向を一定にすることが可能になる。したがって、検査用治具の取付方向に起因する測定結果のばらつきを抑制することが可能になり、その結果、検査の精度を高めることが可能になる。
【0013】
本発明において、検査用治具の重量は、レンズホルダの重量と略等しいことが好ましい。このように構成すると、レンズホルダが搭載されている状態とほぼ同じ条件で、レンズ駆動装置の検査を行うことが可能になる。すなわち、完成状態のレンズ駆動装置とほぼ同条件で、レンズ駆動装置の検査を行うことが可能になる。
【0014】
本発明において、検査用治具は、非磁性材料で形成されていることが好ましい。このように構成すると、可動体を駆動する駆動機構が、たとえば、駆動用コイルと駆動用磁石とによって構成されている場合、レンズ駆動装置の検査時に、検査用治具が駆動機構の磁気回路に磁気的な影響を与えることがない。したがって、レンズ駆動装置の適切な検査を行うことが可能になる。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、本発明のレンズ駆動装置の検査方法では、上述の検査用治具をレンズホルダに代えて可動体に搭載して、固定体に対する可動体の移動量を測定する。また、本発明のレンズ駆動装置の検査方法では、上述の検査用治具をレンズホルダに代えて可動体に搭載して、固定体の軸に対する可動体の軸の傾きを測定する。本発明のレンズ駆動装置の検査方法では、可動体の内周面を損傷させることなく、可動体に検査用治具を着脱することが可能になる。また、本発明のレンズ駆動装置の検査方法では、可動体に対する検査用治具の着脱時間を短縮することが可能になり、その結果、検査時間を短縮することが可能になる。
【0016】
本発明において、固定体には、光軸方向における可動体の基準位置を決めるための基準面が形成され、可動体には、基準面に当接する当接面が形成され、基準面に当接面が当接して可動体が基準位置にある状態で、検査用治具を可動体に搭載することが好ましい。このように構成すると、可動体に検査用治具を取り付ける際に、可動体が傾きにくくなる。したがって、たとえば、可動体に検査用治具を取り付ける際の、可動体と固定体とを繋ぐ板バネの損傷等を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の検査用治具を用いれば、レンズホルダが取り付けられる可動体の内周面を損傷させることなく、レンズ駆動装置の可動体に検査用治具を着脱することが可能になる。また、本発明のレンズ駆動装置の検査方法では、レンズホルダが取り付けられる可動体の内周面を損傷させることなく、レンズ駆動装置の可動体に検査用治具を着脱することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の斜視図である。
【図2】図1のE−E断面の断面図である。
【図3】図1に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図4】図3に示すスリーブの斜視図である。
【図5】図4に示すスリーブの断面図である。
【図6】図1に示すレンズ駆動装置の平面図である。
【図7】図1に示すレンズ駆動装置の特性検査に使用される検査用治具の斜視図である。
【図8】図1に示すレンズ駆動装置に検査用治具を取り付ける前のレンズ駆動装置および検査用治具の断面図である。
【図9】図1に示すレンズ駆動装置に検査用治具が取り付けられた状態を説明するための断面図である。
【図10】図1に示すレンズ駆動装置に検査用治具が取り付けられる前のレンズ駆動装置の平面図である。
【図11】図1に示すレンズ駆動装置に検査用治具が取り付けられたときのレンズ駆動装置および検査用治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(レンズ駆動装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示すレンズ駆動装置1の分解斜視図である。なお、以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0021】
本形態のレンズ駆動装置1は、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるものであり、図1に示すように、全体として略四角柱状に形成されている。具体的には、レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0022】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態のレンズ駆動装置1が搭載されるカメラでは、下側に図示を省略する撮像素子が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0023】
レンズ駆動装置1は、図1、図2に示すように、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動するための駆動機構4とを備えている。また、レンズ駆動装置1は、図2、図3に示すように、可動体2と固定体3とを繋ぐ板バネ5、6を備えている。すなわち、可動体2は、板バネ5、6を介して固定体3に移動可能に保持されている。本形態では、1個の板バネ5が可動体2の上端側に配置され、2個の板バネ6が可動体2の下端側に配置されている。
【0024】
可動体2は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8を備えている。固定体3は、レンズ駆動装置1の側面の上端側部分を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の側面の下端側部分およびレンズ駆動装置1の下端面を構成するベース部材11と、板バネ5の一部が固定されるスペーサ12とを備えている。ベース部材11には、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル15に電流を供給するための一対の給電端子13が固定されている。
【0025】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されている。このレンズホルダ7は、その内周側で、上下方向から見たときの形状が略円形状となる複数のレンズを保持している。すなわち、レンズホルダ7の内周面には、複数のレンズが固定されている。レンズホルダ7の外周面には、オネジが形成されている。
【0026】
スリーブ8は、樹脂材料で形成されている。また、スリーブ8は、略筒状に形成されている。具体的には、スリーブ8は、上下方向から見たときの内周面の形状が略円形状となるとともに、上下方向から見たときの外周面の上端側の形状が略円形状となり、かつ、上下方向から見たときの外周面の下端側の形状が略四角形状となる略筒状に形成されている。スリーブ8の下端には、ベース部材11に形成される後述の基準面11bに当接する当接面8a(図2参照)が光軸方向と略直交するように形成されている。具体的には、前後方向および左右方向におけるスリーブ8の下端の略中心位置に、かつ、略90°ピッチで、4個の当接面8aが形成されている。スリーブ8のより具体的な構成については後述する。
【0027】
カバー部材10は、磁性材料で形成されている。また、カバー部材10は、底部10aと筒部10bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。底部10aは、上側に配置されており、レンズ駆動装置1の上端面(すなわち、被写体側の端面)を構成している。底部10aの中心には、底部10aを貫通する開口部10cが形成されている。開口部10cは、光軸Lを中心とする略円形状に形成されている。開口部10cの縁には、レンズ駆動装置1の四隅に向かって切り欠かれた4個の切欠き部10dが形成されている。本形態の底部10aは、レンズ駆動装置1の被写体側の端面を構成する端面部材である。
【0028】
ベース部材11は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。また、ベース部材11は、光軸方向から見たときの形状が略正方形となるブロック状に形成されている。このベース部材11は、カバー部材10の下端側に取り付けられている。ベース部材11の中心には、貫通孔11aが形成されている。また、ベース部材11の上面には、光軸方向における可動体2の基準位置を決めるための基準面11bが光軸方向と略直交するように形成されている。具体的には、前後方向および左右方向におけるベース部材11の上面の略中心位置に、かつ、略90°ピッチで、4個の基準面11bが形成されている。
【0029】
スペーサ12は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略正方形の扁平なブロック状に形成されている。また、スペーサ12は、枠状に形成されており、その中心には、貫通孔が形成されている。このスペーサ12は、カバー部材10の底部10aの下面に固定されている。
【0030】
板バネ5は、図3に示すように、スリーブ8の上端側に固定される円環状の可動体固定部5aと、スペーサ12に固定される4個の固定体固定部5bと、可動体固定部5aと固定体固定部5bとを繋ぐ4本の腕部5cとを備えている。この板バネ5は、その厚さ方向と上下方向とが略一致するように、スリーブ8およびスペーサ12に固定されている。本形態では、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル15に電流が供給されていないときに、スリーブ8の当接面8aとベース部材11の基準面11bとが当接して可動体2が所定の基準位置に配置されるように、板バネ5は、撓んだ状態でスリーブ8およびスペーサ12に固定されている。具体的には、可動体固定部5aよりも固定体固定部5bが下側に配置されるように、板バネ5は、撓んだ状態でスリーブ8およびスペーサ12に固定されている。
【0031】
板バネ6は、スリーブ8の下端側に固定される可動体固定部と、ベース部材11に固定される2個の固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ2本の腕部とを備えている。板バネ6は、その厚さ方向と上下方向とが略一致するように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。また、板バネ6は、スリーブ8の当接面8aとベース部材11の基準面11bとが当接しているときに板バネ6による付勢力が可動体2に生じないように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。
【0032】
給電端子13は、平板状の金属材料が折り曲げられることで形成されている。この給電端子13は、ベース部材11に固定されている。また、給電端子13には、板バネ6の一部が半田付け等されて固定されている。
【0033】
駆動機構4は、スリーブ8の外周側に巻回される2個の駆動用コイル15と、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれに沿って配置される駆動用磁石17とを備えている。2個の駆動用コイル15は、上下方向に所定の間隔をあけた状態で、スリーブ8の外周面に巻回されている。駆動用磁石17は、略矩形の板状に形成されている。また、駆動用磁石17は、駆動用コイル15の外周面に対向するようにカバー部材10の筒部10bの前後左右の内側面に固定されている。なお、本形態のカバー部材10は、磁気回路を形成するためのヨークの機能を果たしている。
【0034】
(スリーブの構成)
図4は、図3に示すスリーブ8の斜視図である。図5は、図4に示すスリーブ8の断面図である。図6は、図1に示すレンズ駆動装置1の平面図である。
【0035】
スリーブ8は、上述のように、上下方向から見たときの内周面の形状が略円形状となるとともに、上下方向から見たときの外周面の上端側の形状が略円形状となり、かつ、上下方向から見たときの外周面の下端側の形状が略四角形状となる略筒状に形成されている。スリーブ8の内周面には、レンズホルダ7の外周面に形成されるオネジに螺合するメネジ8bが形成されている。本形態では、レンズホルダ7がスリーブ8の内周側にねじ込まれることで、レンズホルダ7がスリーブ8に仮固定される。また、その後、レンズホルダ7の外周面とスリーブ8の内周面との間に接着剤を塗布して硬化させることで、スリーブ8にレンズホルダ7が確実に固定される。すなわち、スリーブ8の内周面にレンズホルダ7が取り付けられる。
【0036】
スリーブ8の上端側には、上側へ突出する複数の凸部8cが形成されている。本形態では、略90°の等角度ピッチで、4個の凸部8cが形成されている。また、4個の凸部8cは、レンズ駆動装置1の四隅に対応する位置に形成されている。凸部8cは、上下方向から見たときの形状が光軸Lを中心とする略円弧状となるように形成されている。凸部8cの内周面は、スリーブ8の内周面の上端側の一部を構成している。
【0037】
凸部8cの上端側には、さらに上側へ突出する突起部8dが形成されている。突起部8dは、レンズホルダ7に固定されるレンズの周方向における凸部8cの中心に形成されている。また、突起部8dは、上下方向から見たときの形状が光軸Lを中心とする略円弧状、または、略長方形状となるように形成されている。レンズの径方向における凸部8cの幅と突起部8dの幅とは略等しくなっている。
【0038】
凸部8cの上端面(すなわち、突起部8dの上端面、および、突起部8dの上端面を除いた凸部8cの上端面)は、上下方向に略直交するように形成されている。突起部8dの上端面は、後述の検査用治具25が搭載される搭載面8eとなっており、本形態では、4個の搭載面8eがスリーブ8の上端面(具体的には、凸部8cの上端面)に形成されている。一方、突起部8dの上端面を除いた凸部8cの上端面は、カバー部材10の底部10aの下面に当接して固定体3に対する可動体2の上側への移動量を規制する規制面8fとなっており、本形態では、8個の規制面8fがスリーブ8の上端面(具体的には、凸部8cの上端面)に形成されている。
【0039】
本形態では、固定体3に対する可動体2の上側への移動量を精度良く設定するため、当接面8aから規制面8fまでの寸法精度が高くなっている。具体的には、当接面8aから規制面8fまでの寸法精度は、当接面8aから搭載面8eまでの寸法精度よりも高くなっている。一方、4個の搭載面8eに搭載される後述の検査用治具25が傾いていたのでは、後述のチルトの測定を適切に行うことができないため、4個の搭載面8eの平面度は高くなっている。具体的には、4個の搭載面8eの平面度は、8個の規制面8fの平面度よりも高くなっている。
【0040】
図6に示すように、4個の搭載面8eは、レンズ駆動装置1の四隅に対応するようにスリーブ8の上端面に形成されている。具体的には、レンズの周方向において、カバー部材10に形成される切欠き部10dの中心と搭載面8eの中心とが一致するように、搭載面8eが形成されている。レンズの周方向における切欠き部10dの幅は、この方向における搭載面8eの幅よりも広くなっている。また、スリーブ8の上端側の内径は、開口部10cの内径よりもわずかに小さくなっており、上側から見たときに、搭載面8eは、切欠き部10dにおいて、レンズ駆動装置1の上面側で外部に露出している。一方、レンズの周方向における切欠き部10dの幅は、この方向における凸部8cの幅よりも狭くなっており、レンズの周方向における切欠き部10dの両側において、規制面8fは、底部10aの下面に当接可能となっている。
【0041】
スリーブ8の上端側であって、かつ、凸部8cよりも外周側には、板バネ5の可動体固定部5aが接着によって固定される略円環状のバネ固定面8gが形成されている。バネ固定面8gは、凸部8cよりも下側に形成されており、規制面8fよりも下側に配置されている。上述のように、駆動用コイル15に電流が供給されていないときに、スリーブ8の当接面8aとベース部材11の基準面11bとが当接して可動体2が所定の基準位置に配置されるように、板バネ5は、撓んだ状態でスリーブ8およびスペーサ12に固定されている。
【0042】
また、本形態では、駆動用コイル15に電流が供給されていないときの板バネ5の付勢力を調整するための円環状のスペーサ19(図3参照)がバネ固定面8gと可動体固定部5aとの間に配置されている。すなわち、バネ固定面8gには、スペーサ19および可動体固定部5aが下からこの順番で接着固定されている。また、スペーサ19および可動体固定部5aは、凸部8cの外周側に塗布される接着剤によってバネ固定面8gに接着固定されている。バネ固定面8gに接着固定された可動体固定部5aの上面は、規制面8fよりも下側に配置されている。
【0043】
なお、スリーブ8の上端側には、レンズ駆動装置1の組立時に目印として利用する1個の凹部8hが形成されている(図4参照)。凹部8hは、下側に向かって窪むように形成されている。また、凹部8hは、レンズの周方向における凸部8c間の1箇所に形成されている。
【0044】
(検査用治具の構成)
図7は、図1に示すレンズ駆動装置1の特性検査に使用される検査用治具25の斜視図である。図8は、図1に示すレンズ駆動装置1に検査用治具25を取り付ける前のレンズ駆動装置1および検査用治具25の断面図である。なお、図8に示す検査用治具25の断面図は、図7のF−F断面の断面図である。
【0045】
本形態のレンズ駆動装置1は、レンズホルダ7が組み込まれていない状態で製品として出荷される。一方、レンズ駆動装置1を製品として出荷する前には、固定体3の軸(上下方向の軸)に対する可動体2の軸(上下方向の軸)の傾き(チルト)や固定体3に対する可動体2の移動量等の特性検査を行う必要がある。そのため、本形態では、レンズホルダ7に代えて検査用治具25を可動体2(具体的には、スリーブ8)に取り付けて、チルト等の特性検査を行う。
【0046】
検査用治具25は、治具本体26と、治具本体26に取り付けられる鏡27とを備えている。治具本体26は、スリーブ8の内周側に挿入される本体部26aと、本体部26aの上端に繋がる端面部としての上面部26bとを備えており、全体として略円柱状に形成されている。また、治具本体26は、非磁性材料によって形成されている。本形態の治具本体26は、アルミニウム合金によって形成されている。なお、治具本体26は、非磁性の樹脂材料で形成されても良いし、アルミニウム合金以外の非磁性の金属材料で形成されても良い。
【0047】
本体部26aは、略円柱状に形成されている。本体部26aの上端側の外周面には、径方向の内側に向かって窪む円環状の凹部26cが形成されている。凹部26cは、図8に示すように、その断面形状が矩形状になるように形成されている。凹部26cの上側面26dは、上面部26bの下面となっている。凹部26cを除く本体部26aの外径は、スリーブ8の内径よりもわずかに小さくなっている。本体部26aの外周側の下端は、スリーブ8へ検査用治具25を挿入する際の治具本体26の引っ掛かりを防止するため、曲面状に形成されている。
【0048】
上面部26bは、略円板状に形成されている。上面部26bには、スリーブ8の搭載面8eに搭載される複数の被搭載部26eが上面部26bの径方向の外側へ突出するように形成されている。本形態では、4個の被搭載部26eが90°ピッチで上面部26bに形成されている。被搭載部26eの下面は、搭載面8eに搭載される被搭載面となっている。この被搭載面は、上面部26bの下面(すなわち、凹部26cの上側面26d)と同一平面上に形成されている。被搭載部26eを除く上面部26bの外径は、本体部26aの外径と略等しくなっている。また、スリーブ8に検査用治具25が取り付けられると、上面部26bは、スリーブ8の上側に配置される。
【0049】
本形態では、凹部26cを除く本体部26aの外周面とスリーブ8の内周面との距離は、カバー部材10の開口部10cの縁と上面部26bの外周端との最小距離よりも小さくなっている。具体的には、凹部26cを除く本体部26aの外周面とスリーブ8の内周面との距離は、被搭載部26eの外周端と切欠き部10dの径方向外側端の縁との距離D(図11参照)よりも小さくなっている。すなわち、凹部26cを除く本体部26aの外径をd1、スリーブ8の内径をd2とすると、D>(d2−d1)/2となっている。
【0050】
本体部26aの下端側の内部には、図8に示すように、略円柱状の空間である肉抜き部26fが形成されている。肉抜き部26fは、本体部26aの下面から上側に向かって窪むように形成されている。本形態の肉抜き部26fは、検査用治具25の重量を調整する機能を果たしており、本体部26aに肉抜き部26fを設けることで、検査用治具25の重量は、レンズホルダ7の重量と略等しくなっている。
【0051】
本体部26aの上端側および上面部26bの内部には、図8に示すように、鏡27を固定するための固定孔26gが形成されている。固定孔26gは、治具本体26の軸中心(すなわち、検査用治具25の軸中心)からずれた位置に形成されており、鏡27は、治具本体26の軸中心からずれた位置に取り付けられている。すなわち、上下方向から見たときに、鏡27の中心と治具本体26の軸中心とがずれている。また、固定孔26gは、上面部26bの上面26hと肉抜き部26fとの間を貫通するように形成されている。
【0052】
鏡27は、略円板状に形成されている。また、鏡27は、ガラスや樹脂等の非磁性材料によって形成されている。鏡27の外径は、上面部26bの外径の1/2〜1/3程度となっている。この鏡27は、固定孔26gの上端側に固定されている。光を反射する鏡27の光反射面27aは、上面部26bの上面26hと略同一平面上に配置されている。本形態では、上面部26bの上面26hと鏡27の光反射面27aとによって、検査用治具25の被写体側の端面である被写体側端面が構成されている。この被写体側端面の一部が鏡27の光反射面27aであるため、被写体側端面は、光を反射する光反射性を備えている。また、本形態では、被搭載部26eの下面である被搭載面とこの被写体側端面との平行度が高くなっている。なお、鏡27の光反射面27aは、上面部26bの上面26hよりも上側に配置されても良いし、下側に配置されても良い。
【0053】
(レンズ駆動装置の検査方法)
図9は、図1に示すレンズ駆動装置1に検査用治具25が取り付けられた状態を説明するための断面図である。図10は、図1に示すレンズ駆動装置1に検査用治具25が取り付けられる前のレンズ駆動装置1の平面図である。図11は、図1に示すレンズ駆動装置1に検査用治具25が取り付けられたときのレンズ駆動装置1および検査用治具25の平面図である。
【0054】
レンズ駆動装置1の出荷前にチルト等の特性検査を行う際には、まず、レンズホルダ7が取り付けられていない状態のレンズ駆動装置1のスリーブ8に、レンズホルダ7に代えて、検査用治具25を搭載する。具体的には、図9に示すように、治具本体26の本体部26aをレンズ駆動装置1の上側からスリーブ8の内周側へ挿入する。本体部26aが挿入されていくと、被搭載部26eの下面である被搭載面がスリーブ8の搭載面8eに搭載される。すなわち、本形態では、チルト等の特性検査を行う際に、搭載面8eに検査用治具25を搭載することで、検査用治具25をスリーブ8に取り付ける。検査用治具25のスリーブ8への搭載は、図8、図9に示すように、スリーブ8の当接面8aとベース部材11の基準面11bとが当接して可動体2が所定の基準位置にある状態で行われる。
【0055】
その後、たとえば、駆動用コイル15に電流を供給して、可動体2を上下方向へ動かして、固定体3に対する可動体2の移動量を測定する。固定体3に対する可動体2の移動量の測定には、たとえば、半導体レーザと受光素子とを有するレーザ変位計が用いられる。検査用治具25が搭載されたレンズ駆動装置1は、半導体レーザから射出されたレーザ光が鏡27で反射される(すなわち、半導体レーザから鏡27の光反射面27aにレーザ光が照射される)とともに鏡27で反射されたレーザ光が受光素子に入射するようにレーザ変位計に設置される。可動体2の移動量は、鏡27で反射されて受光素子に入射するレーザ光の光量の変化に基づいて測定される。
【0056】
また、たとえば、当接面8aと基準面11bとが当接しているときの固定体3の軸に対する可動体2の軸の傾き(初期チルト)や、可動体2が上下方向へ動いたときの固定体3の軸に対する可動体2の軸の傾き(動作チルト)を測定する。チルトの測定には、たとえば、半導体レーザと受光素子とを有するオートコリメータが用いられる。検査用治具25が搭載されたレンズ駆動装置1は、半導体レーザから射出されたレーザ光が鏡27で反射される(すなわち、半導体レーザから鏡27の光反射面27aにレーザ光が照射される)とともに鏡27で反射されたレーザ光が受光素子に入射するようにオートコリメータに設置される。初期チルトや動作チルトは、鏡27で反射されて受光素子に入射するレーザ光の入射位置に基づいて測定される。
【0057】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、検査用治具25の上面部26bに被搭載部26eが形成され、被搭載部26eの下面は、スリーブ8の搭載面8eに搭載される被搭載面となっている。また、本形態では、凹部26cを除く本体部26aの外径は、スリーブ8の内径よりもわずかに小さくなっている。そのため、治具本体26の本体部26aをレンズ駆動装置1の上側からスリーブ8の内周側へ挿入して、被搭載部26eの下面を搭載面8eに搭載すれば、検査用治具25を可動体2に取り付けることができ、かつ、検査用治具25を持ち上げれば、検査用治具25を可動体2から取り外すことができる。したがって、本形態では、スリーブ8の内周面を損傷させることなく、可動体2に検査用治具25を着脱することが可能になる。
【0058】
また、本体部26aをレンズ駆動装置1の上側からスリーブ8の内周側へ挿入して、被搭載部26eの下面を搭載面8eに搭載すれば、検査用治具25を可動体2に取り付けることができ、かつ、検査用治具25を持ち上げれば、検査用治具25を可動体2から取り外すことができるため、可動体2に対する検査用治具25の着脱時間を短縮することが可能になり、その結果、本形態では、検査時間を短縮することが可能になる。また、本体部26aをレンズ駆動装置1の上側からスリーブ8の内周側へ挿入して、被搭載部26eの下面を搭載面8eに搭載すれば、検査用治具25を可動体2に取り付けることができ、かつ、検査用治具25を持ち上げれば、検査用治具25を可動体2から取り外すことができるため、本形態では、検査用治具25を可動体2に着脱する際の塵埃の発生を抑制することができる。
【0059】
本形態では、検査用治具25は、スリーブ8の内周側に挿入される本体部26aを備えている。そのため、本体部26aを利用して、可動体2に対する検査用治具25の前後左右方向のがたつきを抑制することが可能になる。また、本形態では、凹部26cを除く本体部26aの外周面とスリーブ8の内周面との距離は、被搭載部26eの外周端と切欠き部10dの径方向外側端の縁との距離Dよりも小さくなっているため、検査用治具25をスリーブ8に搭載する際に、被搭載部26eの外周端と切欠き部10dの径方向外側端の縁とが干渉するのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、検査用治具25が傾かないようにスリーブ8の搭載面8eに検査用治具25を搭載することが可能になり、その結果、適切な検査を行うことが可能になる。
【0060】
本形態では、上面部26bの上面26hと鏡27の光反射面27aとによって、検査用治具25の上端面が構成されており、レンズ駆動装置1の検査時に、光反射面27aに光が照射される。そのため、検査用治具25の上面(被写体側端面)で反射される反射光の光量を増やすことができる。一般に、オートコリメータの受光素子に入射する光量がある程度確保されていないと、チルトの適切な測定は困難であるが、本形態では、検査用治具25の上面で反射される反射光の光量を増やすことができるため、オートコリメータによって、チルトを適切に測定することが可能になる。
【0061】
本形態では、鏡27は、検査用治具25の軸中心からずれた位置に取り付けられている。そのため、可動体2に検査用治具25を搭載するときには、鏡27を目印にして、可動体2に対する検査用治具25の取付方向を一定にすることが可能になる。たとえば、一定方向を向くようにレンズ駆動装置1を配置するとともに、作業者の手前側に鏡27が配置されるように検査用治具25を可動体2に取り付けることで、可動体2に対する検査用治具25の取付方向を一定にすることが可能になる。したがって、本形態では、検査用治具25の取付方向に起因する測定結果のばらつきを抑制することが可能になり、その結果、検査の精度を高めることが可能になる。
【0062】
本形態では、検査用治具25の重量は、レンズホルダ7の重量と略等しくなっている。そのため、本形態では、レンズホルダ7が搭載されている状態とほぼ同じ条件で、レンズ駆動装置1の検査を行うことが可能になる。すなわち、本形態では、完成状態のレンズ駆動装置1とほぼ同条件で、レンズ駆動装置1の検査を行うことが可能になる。
【0063】
本形態では、検査用治具25は、非磁性材料によって形成されている。そのため、レンズ駆動装置1の検査時に、駆動用コイル15および駆動用磁石17等によって構成される駆動機構4の磁気回路に対して、検査用治具25が磁気的な影響を与えることがない。したがって、本形態では、レンズ駆動装置1の適切な検査を行うことが可能になる。
【0064】
本形態では、検査用治具25のスリーブ8への搭載は、スリーブ8の当接面8aとベース部材11の基準面11bとが当接して可動体2が所定の基準位置にある状態で行われている。そのため、スリーブ8に検査用治具25を搭載する際にスリーブ8が傾きにくくなる。したがって、本形態では、可動体2に検査用治具25を取り付ける際の板バネ5、6の損傷等を防止することが可能になる。
【0065】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0066】
上述した形態では、検査用治具25は、鏡27を備えているが、検査用治具25は、鏡27を備えていなくても良い。この場合には、レーザ変位計やオートコリメータから射出されるレーザ光が上面部26bの上面26hで反射されるように、たとえば、上面部26bの上面26hが鏡面状に形成される。また、上述した形態では、鏡27は、検査用治具25の軸中心からずれた位置に取り付けられているが、上下方向から見たときに、鏡27の中心と検査用治具25の軸中心とが一致するように鏡27が取り付けられても良い。
【0067】
上述した形態では、スリーブ8の内周面に、レンズホルダ7の外周面に形成されるオネジに螺合するメネジ8bが形成されており、レンズホルダ7は、スリーブ8の内周側にねじ込まれている。この他にもたとえば、スリーブ8の内周面にメネジ8bが形成されなくても良い。この場合には、たとえば、圧入や接着によって、スリーブ8の内周側にレンズホルダ7が固定される。なお、圧入や接着によってスリーブ8の内周側にレンズホルダ7が固定される場合であっても、本形態の検査用治具25を用いてレンズ駆動装置1の検査を行えば、スリーブ8の内周面を損傷させることなく、可動体2に検査用治具25を着脱することが可能になる。
【0068】
上述した形態では、検査用治具25の重量は、レンズホルダ7の重量と略等しくなっているが、検査用治具25の重量は、レンズホルダ7の重量より軽くても良い。この場合には、レンズ駆動装置1の検査時に板バネ5、6に必要以上の負荷がかからなくなる。なお、検査用治具25の重量は、レンズホルダ7の重量より重くても良い。
【0069】
上述した形態では、検査用治具25の上面部26bに4個の被搭載部26eが90°ピッチで形成されている。この他にもたとえば、上面部26bに円環状の1個の被搭載部が形成されても良い。
【0070】
上述した形態では、凸部8cに形成される突起部8dの上端面が搭載面8eとなっている。この他にもたとえば、下方向へ窪む凹部が凸部8cに形成されるとともに、上下方向に略直交するこの凹部の底面が搭載面8eとなっていても良い。また、凸部8cの上端側に突起部8dが形成されずに、凸部8cの上端面である規制面8fが搭載面8eとなっていても良い。さらに、スリーブ8の上端側に凸部8cが形成されずに、スリーブ8の上端面が規制面8fおよび搭載面8eとなっていても良い。また、スリーブ8の上端側に凸部8cが形成されずに突起部8dが形成されて、突起部8dの上端面が搭載面8eとなり、突起部8dの上端面を除くスリーブ8の上端面が規制面8fとなっていても良い。また、上述した形態では、共通の凸部8cに規制面8fと搭載面8eとが形成されているが、規制面8fが形成される凸部と搭載面8eが形成される凸部とが個別に形成されても良い。この場合には、規制面8fは、搭載面8eよりも下側に配置されても良いし、搭載面8eよりも上側に配置されても良い。
【0071】
上述した形態では、突起部8dの上端面が搭載面8eとなっており、スリーブ8の上端側に搭載面8eが形成されている。この他にもたとえば、スリーブ8の下端側に検査用治具25が搭載される搭載面が形成されても良い。たとえば、スリーブ8の下端側の内周面から径方向の内側に突出する突出部が形成され、この突出部の上面が搭載面となっていても良い。この場合には、たとえば、治具本体26の下面が、この搭載面に搭載される被搭載面となる。また、この場合には、複数の突出部が所定の角度ピッチで形成されても良いし、円環状の1個の突出部が形成されても良い。なお、上述した形態のように、スリーブ8の上端側に搭載面8eが形成されていると、スリーブ8の上端面をそのまま搭載面8eとして利用することができるため、スリーブ8の下端側に搭載面が形成されている場合と比較して、スリーブ8の構成を簡素化することが可能になる。
【0072】
上述した形態では、検査用治具25を用いて、可動体2の移動量およびチルトの測定が行われているが、検査用治具25を用いて、可動体2の移動量またはチルトの測定の一方のみが行われても良い。また、上述した形態では、駆動用磁石17は、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれに沿って配置されているが、駆動用磁石17は、レンズ駆動装置1の四隅のそれぞれに配置されても良い。また、上述した形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されているが、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略長方形状となるように形成されても良いし、光軸方向から見たときの形状が略六角形状等の略多角形となるように形成されても良い。また、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略円形状や略楕円形状となるように形成されても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 レンズ駆動装置
2 可動体
3 固定体
4 駆動機構
7 レンズホルダ
8a 当接面
8e 搭載面
10a 底部(端面部材)
10c 開口部
11b 基準面
25 検査用治具
26a 本体部
26b 上面部(端面部)
26e 被搭載部
26h 上面(被写体側端面の一部)
27 鏡
27a 光反射面(被写体側端面の一部)
D 端面部の外周端と開口部の縁との最小距離
L 光軸
Z 光軸方向
Z1 被写体側
Z2 反被写体側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズホルダが取り付けられる内周面を有する略筒状に形成され前記レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、前記可動体を前記光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、前記可動体を前記光軸方向へ駆動する駆動機構とを備えるレンズ駆動装置の検査時に、前記レンズホルダに代えて前記可動体に搭載されて使用される検査用治具であって、
前記可動体に形成される搭載面に搭載される被搭載面と、前記検査用治具の被写体側の端面である被写体側端面とを備え、
前記被写体側端面は、光を反射する光反射性を有し、
前記被写体側端面には、前記レンズ駆動装置の検査時に光が照射されることを特徴とする検査用治具。
【請求項2】
前記可動体の内周側に挿入される本体部と、前記本体部の前記被写体側端に繋がる端面部とを備え、
前記端面部には、前記可動体の径方向の外側へ広がる被搭載部が形成され、
前記被搭載面は、前記被搭載部の反被写体側の端面であり、
前記搭載面は、前記可動体の前記被写体側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の検査用治具。
【請求項3】
前記固定体は、前記レンズ駆動装置の前記被写体側の端面を構成する端面部材を備え、
前記端面部材には、前記レンズの光軸を中心とする開口部が形成され、
前記本体部の外周面と前記可動体の内周面との距離は、前記端面部の外周端と前記開口部の縁との最小距離よりも小さくなっていることを特徴とする請求項2記載の検査用治具。
【請求項4】
前記端面部に取り付けられる鏡を備え、
前記鏡の光反射面は、前記被写体側端面の一部を構成しており、
前記レンズ駆動装置の検査時に、前記鏡の前記光反射面に光が照射されることを特徴とする請求項2または3記載の検査用治具。
【請求項5】
前記鏡は、前記検査用治具の軸中心からずれた位置に取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の検査用治具。
【請求項6】
前記検査用治具の重量は、前記レンズホルダの重量と略等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の検査用治具。
【請求項7】
非磁性材料で形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の検査用治具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の検査用治具を前記レンズホルダに代えて前記可動体に搭載して、前記固定体に対する前記可動体の移動量を測定することを特徴とするレンズ駆動装置の検査方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の検査用治具を前記レンズホルダに代えて前記可動体に搭載して、前記固定体の軸に対する前記可動体の軸の傾きを測定することを特徴とするレンズ駆動装置の検査方法。
【請求項10】
前記固定体には、前記光軸方向における前記可動体の基準位置を決めるための基準面が形成され、
前記可動体には、前記基準面に当接する当接面が形成され、
前記基準面に前記当接面が当接して前記可動体が前記基準位置にある状態で、前記検査用治具を前記可動体に搭載することを特徴とする請求項8または9記載のレンズ駆動装置の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−64964(P2013−64964A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204859(P2011−204859)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】