説明

極端紫外光生成装置および極端紫外光生成方法

【課題】安定したパルスレーザ光を生成する。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、ターゲット物質に第1レーザ光を照射する第1レーザ装置と、前記第1レーザ光の照射によって拡散した前記ターゲット物質に第2レーザ光を照射して極端紫外光を生成する第2レーザ装置と、前記第1レーザ光の照射後、前記第2レーザ光の照射前に、該第2レーザ光よりもエネルギーの低い第3レーザ光を照射する第3レーザ装置とを備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成装置および極端紫外光生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスのさらなる集積化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式装置との3種類が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−224052号公報
【概要】
【0005】
本開示の一態様による極端紫外光生成装置は、ターゲット物質に第1レーザ光を照射する第1レーザ装置と、前記第1レーザ光の照射によって拡散した前記ターゲット物質に第2レーザ光を照射して極端紫外光を生成する第2レーザ装置と、を備える極端紫外光生成装置であって、前記第1レーザ光の照射後、前記第2レーザ光の照射前に、該第2レーザ光よりもエネルギーの低い第3レーザ光を照射する第3レーザ装置を備えてもよい。
【0006】
本開示の他の態様による極端紫外光生成方法は、ターゲット物質に第1レーザ光を照射し、該第1レーザ光の照射によって拡散した前記ターゲット物質に第2レーザ光を照射する極端紫外光生成方法であって、前記第1レーザ光の照射後、前記第2レーザ光の照射前に、該第2レーザ光よりもエネルギーの小さい第3レーザ光を照射してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。なお、本願に記載の偏光子は光フィルタの一例でもよい。
【図1】図1は、例示的なEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【図2】図2は、本開示の実施の形態1によるEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【図3】図3は、実施の形態1によるペデスタルを備えたメインパルスレーザ光の波形の一例を示す。
【図4】図4は、実施の形態1によるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係を示す。
【図5】図5は、実施の形態1によるペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係を示す。
【図6】図6は、実施の形態1によるペデスタル生成コントローラの動作を概略的に示すフローチャートである。
【図7】図7は、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの一例を示す。
【図8】図8は、図7の説明で用いられるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【図9】図9は、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの変形例を示す。
【図10】図10は、図9の説明で用いられるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【図11】図11は、図7および図9のステップS113に示されるペデスタル比率計測サブルーチンの一例を示す。
【図12】図12は、図11の説明で用いられるメインパルスレーザ光全体のエネルギーEtとペデスタルのエネルギーEpとの関係の一例を示す。
【図13】図13は、図6のステップS105に示されるペデスタル安定化サブルーチンの一例を示す。
【図14】図14は、図13のステップS142およびS145に示されるペデスタル比率計測サブルーチン2を示す。
【図15】図15は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの一例を示す。
【図16】図16は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの変形例を示す。
【図17】図17は、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの他の一例を示す。
【図18】図18は、図17の説明で用いられるペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【図19】図19は、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの他の変形例を示す。
【図20】図20は、図19の説明で用いられるペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【図21】図21は、図17および図19のステップS313に示されるペデスタルエネルギー計測サブルーチンの一例を示す。
【図22】図22は、図6のステップS105に示されるペデスタル安定化サブルーチンの一例を示す。
【図23】図23は、図22のステップS342およびステップS345に示されるペデスタルエネルギー計測サブルーチン2を示す。
【図24】図24は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの一例を示す。
【図25】図25は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの変形例を示す。
【図26】図26は、実施の形態1によるペデスタル調節機構に光シャッタが用いられた場合のメインパルスレーザ装置の一例を概略的に示す。
【図27】図27は、図26の位置(a)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図28】図28は、図26の位置(b)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図29】図29は、図26の位置(c)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図30】図30は、実施の形態1によるペデスタル調節機構に光シャッタと可飽和吸収装置とが用いられた場合のメインパルスレーザ装置の一例を概略的に示す。
【図31】図31は、図30の位置(a)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図32】図32は、図30の位置(b)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図33】図33は、図30の位置(c)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図34】図34は、図30の位置(d)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図35】図35は、実施の形態1によるペデスタル調節機構にマスタオシレータのEOポッケルスセルと可飽和吸収装置とが用いられた場合のメインパルスレーザ装置の一例を概略的に示す。
【図36】図36は、図35の位置(a)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図37】図37は、図35の位置(b)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図38】図38は、図35の位置(c)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図39】図39は、実施の形態1によるペデスタル調節機構にマスタオシレータのEOポッケルスセルと光シャッタとが用いられた場合のメインパルスレーザ装置の一例を概略的に示す。
【図40】図40は、実施の形態1によるマスタオシレータが少なくとも2つの半導体レーザを含むメインパルスレーザ装置の一例を概略的に示す。
【図41】図41は、図40の位置(a)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図42】図42は、図40の位置(b)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図43】図43は、図40の位置(c)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図44】図44は、図40の位置(d)でのパルスレーザ光の波形を示す。
【図45】図45は、本開示の実施の形態2によるペデスタル生成コントローラの動作を概略的に示すフローチャートである。
【図46】図46は、図45のステップS505に示されるペデスタル制御サブルーチンの一例を示す。
【図47】図47は、図46の説明で用いられるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【図48】図48は、実施の形態2の変形例によるペデスタル生成コントローラの動作を概略的に示すフローチャートである。
【図49】図49は、図48のステップS605に示されるペデスタル制御サブルーチンの一例を示す。
【図50】図50は、図49の説明で用いられるペデスタルエネルギーEpと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【図51】図51は、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した際の様子を示す。
【図52】図52は、ドロップレットにプリパルスレーザ光を照射した際の状態をプリパルスレーザ光の進行方向に対して垂直な方向から見た際の様子を示す。
【図53】図53は、プリパルスレーザ光の照射によって生成された拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を照射した際の状態をメインパルスレーザ光の進行方向に対して垂直な方向から見た際の様子を示す。
【図54】図54は、プリパルスレーザ光の照射によって生成された拡散ターゲットにメインパルスレーザ光を照射した際の状態をメインパルスレーザ光の進行方向から見た際の様子を示す。
【図55】図55は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを480mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を0μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図56】図56は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを480mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を0.5μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図57】図57は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを480mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を1.0μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図58】図58は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを480mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を1.5μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図59】図59は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを96mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を0μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図60】図60は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを96mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を0.5μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図61】図61は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを96mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を1.0μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図62】図62は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを96mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を1.5μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図63】図63は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを19.5mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を0μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図64】図64は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを19.5mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を0.5μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図65】図65は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを19.5mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を1.0μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図66】図66は、プリパルスレーザ光のフルーエンスを19.5mJ/cmとし、プリパルスレーザ光照射からの経過時間を1.5μsとした場合に観測された拡散ターゲットおよびプラズマの形状を示す。
【図67】図67は、ターゲットにプリパルスレーザ光を照射してからメインパルスレーザ光を照射するまでの時間差と変換効率との関係を示す。
【図68】図68は、2つの偏光子とEOポッケルスセルとを組み合わせて構成された光シャッタの一例を示す。
【図69】図69は、図68の光シャッタに入射するパルスレーザ光の一例を示す。
【図70】図70は、図68の光シャッタにおけるEOポッケルスセルに印加される高電圧パルスの一例を示す。
【図71】図71は、図68の光シャッタにおけるEOポッケルスセルに図70に示される高電圧パルスを印加した際に光シャッタから出力されるパルスレーザ光の一例を示す。
【図72】図72は、変形例1による光シャッタの構成を概略的に示す。
【図73】図73は、変形例2による光シャッタの構成を概略的に示す。
【図74】図74は、変形例3による光シャッタの構成を概略的に示す。
【図75】図75は、変形例4による光シャッタの構成を概略的に示す。
【図76】図76は、可飽和吸収ガスの濃度を調節可能な可飽和吸収装置の構成の一例を概略的に示す。
【図77】図77は、可飽和吸収ガス中を通過するレーザ光の光路長を調節可能な可飽和吸収装置の構成の一例を概略的に示す。
【図78】図78は、再生増幅器の一例を示す。
【実施の形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明される実施の形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施の形態で説明される構成および動作の全てが本開示の構成および動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
以下では、下記目次に沿って説明する。
目次
1.概要
2.用語の説明
3.EUV光生成システムの全体説明
3.1 構成
3.2 動作
4.メインパルスレーザ光のペデスタルの調節機構を含EUV光生成システム(実施の形態1)
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
4.4 メインパルスレーザ光のペデスタルと変換効率との関係
4.5 フローチャート
4.5.1 ペデスタル調節フロー
4.5.1.1 ペデスタル比率に基づく場合
4.5.1.1.1 ペデスタル調節サブルーチン
4.5.1.1.2 ペデスタル調節サブルーチン(変形例)
4.5.1.1.3 ペデスタル比率計測サブルーチン
4.5.1.1.4 ペデスタル安定化サブルーチン
4.5.1.1.5 ペデスタル比率計測サブルーチン2
4.5.1.1.6 再調節要否判定サブルーチン
4.5.1.1.7 再調節要否判定サブルーチン(変形例)
4.5.1.2 ペデスタルエネルギーに基づく場合
4.5.1.2.1 ペデスタル調節サブルーチン
4.5.1.2.2 ペデスタル調節サブルーチン(変形例)
4.5.1.2.3 ペデスタルエネルギー計測サブルーチン
4.5.1.2.4 ペデスタル安定化サブルーチン
4.5.1.2.5 ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2
4.5.1.2.6 再調節要否判定サブルーチン
4.5.1.2.7 再調節要否判定サブルーチン(変形例)
5.ペデスタルの調節機構
5.1 光シャッタ
5.2 光シャッタと可飽和吸収装置
5.3 EOポッケルスセルを含むMOとの組合せ
5.3.1 可飽和吸収装置との組合せ
5.3.2 光シャッタとの組合せ
5.4 少なくとも2つの半導体レーザを含む実施形態
6.メインパルスレーザ光のペデスタル調節によるEUV光のエネルギー制御(実施の形態2)
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
6.4 フローチャート
6.4.1 ペデスタル比率に基づく場合
6.4.1.1 ペデスタル制御フロー
6.4.1.2 ペデスタル制御サブルーチン
6.4.2 ペデスタルエネルギーに基づく場合
6.4.2.1 ペデスタル制御フロー
6.4.2.2 ペデスタル制御サブルーチン
7.補足
7.1 拡散ターゲット
7.1.1 拡散ターゲットの生成原理
7.2 メインパルスレーザ光の遅延時間と変換効率との関係
7.3 プリパルスレーザ光のフルーエンスと拡散ターゲットの形状との関係
7.4 光シャッタ
7.4.1 EOポッケルスセルと偏光子との組合せ
7.4.2 光シャッタのバリエーション
7.4.2.1 変形例1
7.4.2.2 変形例2
7.4.2.3 変形例3
7.4.2.4 変形例4
7.5 可飽和吸収装置
7.5.1 可飽和吸収ガスの濃度の調節
7.5.2 可飽和吸収ガス中を透過する光路長の調節
7.6 再生増幅器
【0010】
1.概要
以下の実施の形態にかかるEUV光生成システムでは、ターゲット物質にプリパルスレーザ光を照射して、拡散したターゲット物質にメインパルスレーザ光を照射してもよい。このEUV光生成システムは、メインパルスレーザ光のペデスタルを調節するための機構を備えてもよい。メインパルスレーザ光のペデスタルのエネルギーを調節することよって、EUV光のエネルギーを制御し得る場合がある。
【0011】
2.用語の説明
つぎに、本開示において使用される用語について、以下のように定義する。「ドロップレット」とは、溶融したターゲット物質の液滴でもよい。その形状は、表面張力によって略球形となり得る。「プラズマ生成領域」とは、プラズマが生成される空間として予め設定された3次元空間でもよい。「光路」とは、レーザ光が通過する空間領域であってもよい。「上流」とは、光路に沿ってレーザ光の光源に近い側でもよい。「下流」とは、光路に沿って露光装置等の外部装置に近い側でもよい。
【0012】
3.EUV光生成システムの全体説明
以下に、例示的なEUV光生成システムを、図面を参照に詳細に説明する。
【0013】
3.1 構成
図1に、例示的なLPP方式のEUV光生成装置1の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい。EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、以下、EUV光生成システム11と称する。図1に示され、かつ以下に詳細に説明されるように、EUV光生成装置1は、チャンバ2およびターゲット供給装置(例えばドロップレット生成器26)を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能でもよい。ターゲット供給装置は、例えばチャンバ2に取り付けられてもよい。ターゲット供給装置から供給されるターゲットの材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又はそれらのうちのいずれか2つ以上の組合せ等を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0014】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられてもよく、その貫通孔をパルスレーザ光31が通過してもよい。或いは、チャンバ2には、少なくとも1つのウィンドウ21が設けられてもよく、パルスレーザ光31がウィンドウ21を透過してもよい。チャンバ2の内部には例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有し得る。EUV集光ミラー23の表面には例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点がたとえば中間焦点(IF)292に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、貫通孔24が設けられてもよく、パルスレーザ光31が貫通孔24を通過してもよい。
【0015】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御部5に接続されてもよい。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含んでもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有してもよく、ターゲットの存在、軌道、位置、速度、ある位置に存在した時刻、ターゲット27の生成周波数等を検出するよう構成されてもよい。
【0016】
更に、EUV光生成装置1は、チャンバ2内部と露光装置6内部とを連通させる接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0017】
更に、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部34、レーザ光集光光学系22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含んでもよい。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置や姿勢等を調節するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0018】
3.2 動作
図1を参照すると、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、ウィンドウ21を透過し、チャンバ2に入射してもよい。パルスレーザ光31は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ光集光光学系22で反射されて、少なくとも1つのターゲット27に照射されてもよい。
【0019】
ドロップレット生成器26からは、ターゲット27がドロップレットの形態でチャンバ2内部に規定されるプラズマ生成領域25に向けて出力されてもよい。ターゲット27には、パルスレーザ光31に含まれる少なくとも1つのパルスが照射されてもよい。パルスレーザ光31が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射され得る。放射光251に含まれる光のうち少なくともEUV光252は、EUV集光ミラー23によって選択的に反射されるとともに集光されてもよい。EUV集光ミラー23で反射されたEUV光252は、中間焦点292を通って露光装置6等の外部装置に出力されてもよい。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光31に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0020】
EUV光生成制御部5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御部5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたターゲット27のイメージデータ等を処理してもよい。EUV光生成制御部5は、例えば、ターゲット27が出力されるタイミングやターゲット27の出力方向等を制御するよう構成されてもよい。また、EUV光生成制御部5は、例えば、レーザ装置3の発振タイミングやパルスレーザ光31の進行方向や集光位置等を制御するよう構成されてもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加してもよい。
【0021】
4.メインパルスレーザ光のペデスタルの調節機構を含EUV光生成システム(実施の形態1)
つぎに、本開示の実施の形態1にかかるEUV光生成システムについて、図面を参照に詳細に説明する。以下では、ターゲット物質にレーザ光を複数回照射する多段照射方式のEUV光生成システム11Aを例に挙げる。なお、以下の説明において、上述と同様の構成には、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0022】
4.1 構成
図2は、EUV光生成システム11Aの構成を概略的に示す。図2に示されるように、EUV光生成システム11Aは、メインパルスレーザ装置3Aと、高反射ミラー341と、ダイクロイックミラー342と、プリパルスレーザ装置40と、高反射ミラー401および402と、波形検出器350と、チャンバ2Aと、EUV光生成制御部5Aとを含んでもよい。
【0023】
メインパルスレーザ装置3Aは、たとえば、マスタオシレータ(MO)310と、ペデスタル調節機構320と、増幅器331〜333と、レーザコントローラ301とを含んでもよい。レーザコントローラ301は、マスタオシレータ310、ペデスタル調節機構320、および増幅器331〜333を制御するよう構成されてもよい。
【0024】
マスタオシレータ310は、レーザ光を所定繰返し周波数で出力するよう構成されてもよい。ペデスタル調節機構320は、マスタオシレータ310から出力されたパルスレーザ光の波形を変化させるよう構成されてもよい。増幅器331〜333は、たとえばCOガスを増幅媒体として含む増幅器でもよい。増幅後のパルスレーザ光は、メインパルスレーザ光31としてメインパルスレーザ装置3Aから出力されてもよい。メインパルスレーザ光31の波長は、10.6μm付近でもよい。
【0025】
高反射ミラー341およびダイクロイックミラー342は、ビームデリバリーシステム340を構成してもよい。高反射ミラー341の反射面には、メインパルスレーザ光31を高い反射率で反射する膜がコーティングされてもよい。ビームデリバリーシステム340は、高反射ミラー341の位置や姿勢等を調節するための不図示のアクチュエータをさらに備えてもよい。高反射ミラー341に入射したメインパルスレーザ光31は、ダイクロイックミラー342に向けて反射されてもよい。
【0026】
プリパルスレーザ装置40は、波長が1.06μm付近のプリパルスレーザ光41を出力するよう構成されてもよい。プリパルスレーザ装置40は、YAGレーザ装置でもよい。プリパルスレーザ光41のパルス幅は、5ns程度でもよい。プリパルスレーザ光41は、高反射ミラー401および402それぞれで反射されて、ダイクロイックミラー342に入射してもよい。高反射ミラー401および402それぞれの反射面には、プリパルスレーザ光41を高い反射率で反射する膜がコーティングされてもよい。高反射ミラー401および402には、それぞれの位置や姿勢等を調節するための不図示のアクチュエータが設けられてもよい。
【0027】
ダイクロイックミラー342は、メインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41がチャンバ2Aへ入射するビーム軸を調節するためのビーム調節器を構成してもよい。ダイクロイックミラー342において、メインパルスレーザ光31が入射する面には、メインパルスレーザ光31を高い反射率で反射し且つプリパルスレーザ光41を高い透過率で透過させる膜がコーティングされてもよい。ダイクロイックミラー342において、プリパルスレーザ光41が入射する面には、プリパルスレーザ光41を高い透過率で透過させる膜がコーティングされてもよい。ダイクロイックミラー342の基板の材質は、たとえばダイヤモンドでもよい。
【0028】
チャンバ2Aは、ウィンドウ21と、レーザ光集光光学系22Aと、ドロップレット生成器26と、ターゲットセンサ4と、EUV集光ミラー23と、エネルギーセンサ90と、ビームダンプ100と、接続部29とを備えてもよい。
【0029】
ウィンドウ21を介してチャンバ2A内に入射したメインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41は、レーザ光集光光学系22Aに入射してもよい。ウィンドウ21の表面には、ウィンドウ21におけるレーザ光の反射率を低減するための膜がコーティングされてもよい。レーザ光集光光学系22Aは、レーザ光集光ミラー71と、高反射ミラー72とを備えてもよい。レーザ光集光光学系22Aは、移動プレート73と、プレート移動機構74と、ミラーホルダ71aおよび72aとをさらに備えてもよい。ミラーホルダ72aは、自動アオリ機構を備えてもよい。レーザ光集光ミラー71は、軸外放物面ミラーでもよい。レーザ光集光ミラー71は、ミラーホルダ71aを介して移動プレート73に固定されてもよい。高反射ミラー72は、ミラーホルダ72aを介して移動プレート73に取り付けられてもよい。プレート移動機構74は、レーザ光集光ミラー71および高反射ミラー72を、移動プレート73とともに移動させてもよい。
【0030】
レーザ光集光光学系22Aに入射したメインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41は、レーザ光集光ミラー71によって反射されてもよい。高反射ミラー72は、メインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41を、プラズマ生成領域25へ向けて反射してもよい。高反射ミラー72で反射されたメインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41は、それぞれプラズマ生成領域25内で集光されてもよい。
【0031】
プレート移動機構74は、移動プレート73を移動させることで、メインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41の集光位置をZ方向において調節してもよい。ミラーホルダ72aは、高反射ミラー72のアオリ角を調節することで、メインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41の集光位置をXおよびY方向において調節してもよい。これらの調節は、後述するEUV光生成制御部5Aによって制御されてもよい。
【0032】
ドロップレット生成器26は、プラズマ生成領域25へ向けてターゲット27を出力するよう構成されてもよい。ドロップレット生成器26は、不図示の2軸移動機構を備えてもよい。2軸移動機構は、ドロップレット生成器26を移動させることで、ターゲット27が供給される位置を調節してもよい。
【0033】
プラズマ生成領域25に到達したターゲット27には、プリパルスレーザ光41およびメインパルスレーザ光31が順次照射されてもよい。プリパルスレーザ光41およびメインパルスレーザ光31は、EUV集光ミラー23に設けられた貫通孔24を介して、ターゲット27に照射されてもよい。プリパルスレーザ光41の照射によって、ターゲット27が拡散ターゲットに変化し得る。この拡散ターゲットにメインパルスレーザ光31を照射することによって、拡散ターゲットがプラズマ化し得る。このプラズマからは、EUV光252を含む放射光251が放射され得る。
【0034】
プラズマ生成領域25を通過したプリパルスレーザ光41およびメインパルスレーザ光31は、ビームダンプ100に吸収されてもよい。ビームダンプ100は、支柱101を介してチャンバ2A内に固定されてもよい。
【0035】
エネルギーセンサ90は、プラズマ生成領域25で放射されたEUV光252のエネルギーを検出してもよい。検出されたエネルギーは、EUV光生成制御部5Aに入力されてもよい。
【0036】
波形検出器350は、ビームスプリッタ351と、集光レンズ352と波形モニタ353とを含んでもよい。ビームスプリッタ351は、メインパルスレーザ光31の一部を反射し、残りを透過させてもよい。集光レンズ352は、ビームスプリッタ351で反射されたメインパルスレーザ光31を波形モニタ353の受光部に集光してもよい。波形モニタ353は、受光部で結像されたメインパルスレーザ光31のパルス波形をモニタしてもよい。または、集光レンズ352の代わりに、拡散板が配置されてもよい。波形モニタ353は、拡散されたメインパルスレーザ光31のパルス波形をモニタしてもよい。あるいは、集光レンズ352の代わりに、貫通孔が形成されたプレートが配置されてもよい。波形モニタ353は、貫通孔を通過したメインパルスレーザ光31のパルス波形をモニタしてもよい。または、ビームスプリッタ351で反射されたメインパルスレーザ光31を直接、波形モニタ353の受光部に入射させてもよい。波形モニタ353は、メインパルスレーザ光31の、その一部を反映したパルス波形をモニタしてもよい。モニタされたパルス波形は、EUV光生成制御部5Aに入力されてもよい。ここで、波形モニタ353は、メインパルスレーザ光31の時間的なエネルギー変化を検出するよう構成されてもよく、そのようなエネルギーセンサに置き換えられてもよい。波形モニタ353は、メインパルスレーザ光31のパルス波形が反映された計測値を得られる限り、他の任意のセンサに置き換えられてもよい。
【0037】
EUV光生成制御部5Aは、EUV光生成位置コントローラ51と、基準クロック生成器52と、ターゲットコントローラ53と、ターゲット生成ドライバ54と、遅延回路55と、ペデスタル調節コントローラ56とを含んでもよい。EUV光生成位置コントローラ51は、基準クロック生成器52、ターゲットコントローラ53、ペデスタル調節コントローラ56、および露光装置コントローラ61と接続されてもよい。EUV光生成位置コントローラ51は、さらに、遅延回路55を介して、メインパルスレーザ装置3Aおよびプリパルスレーザ装置40に接続されてもよい。ターゲットコントローラ53は、ターゲットセンサ4およびターゲット生成ドライバ54に接続されてもよい。ターゲット生成ドライバ54は、ドロップレット生成器26に接続されてもよい。ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ装置3Aのペデスタル調節機構320、およびエネルギーセンサ90に接続されてもよい。
【0038】
チャンバ2A内部は、間仕切り80によって、上流側と下流側との2つの空間に仕切られてもよい。プラズマ生成領域25は、下流側の空間に設定されてもよい。間仕切り80によって、下流側の空間で発生したターゲット物質のデブリが上流側の空間2aに進入する量が低減され得る。間仕切り80には、メインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41を通過させるための貫通孔が形成されてもよい。この貫通孔は、EUV集光ミラー23に形成された貫通孔24と略同軸に位置合わせされるのが好ましい。EUV集光ミラー23は、保持部23aによって間仕切り80に固定されてもよい。
【0039】
4.2 動作
つづいて、図2に示すEUV光生成システム11Aの動作を説明する。EUV光生成システム11Aは、EUV光生成制御部5Aの制御に従って動作するよう構成されてもよい。EUV光生成制御部5Aは、露光装置コントローラ61からEUV光252の生成位置またはプラズマ生成領域25の位置に関する要求を受信してもよい。EUV光生成制御部5Aは、この要求が示すEUV光生成要求位置でEUV光252が生成されるように各部を制御してもよい。あるいは、EUV光生成制御部5Aは、この要求が示すEUV光生成要求位置がプラズマ生成領域25の位置と一致するように各部を制御してもよい。
【0040】
EUV光生成位置コントローラ51は、レーザ光集光光学系22Aを制御してもよい。EUV光生成位置コントローラ51は、ミラーホルダ72aとプレート移動機構74とに駆動信号を送信してもよい。ミラーホルダ72aは、EUV光生成位置コントローラ51から受信した駆動信号にしたがって、高反射ミラー72のθx方向およびθy方向のアオリ角を制御してもよい。プレート移動機構74は、EUV光生成位置コントローラ51からの駆動信号にしたがって、Z方向に移動プレート73を移動させてもよい。
【0041】
EUV光生成制御部5Aは、露光装置コントローラ61からEUV光252の生成を要求するEUV光生成要求信号を受信してもよい。EUV光生成制御部5Aは、EUV光生成要求信号を受信すると、ターゲットコントローラ53に、EUV光生成要求信号を入力してもよい。ターゲットコントローラ53は、EUV光生成要求信号を受信すると、ドロップレット生成器26にターゲット27の出力信号を送信してもよい。
【0042】
ターゲットセンサ4は、ターゲット27のプラズマ生成領域25における到達位置および到達タイミングを検出してもよい。この検出値は、ターゲットコントローラ53に入力されてもよい。ターゲットコントローラ53は、入力された検出値に応じて、ドロップレット生成器26の不図示の2軸移動機構を制御してもよい。また、ターゲットコントローラ53は、入力された検出値に応じて、遅延回路55による遅延時間を調節してもよい。メインパルスレーザ装置3Aおよびプリパルスレーザ装置40は、遅延回路55に設定された遅延時間によって規定されたタイミングで、メインパルスレーザ光31およびプリパルスレーザ光41をそれぞれ出力するよう構成されてもよい。
【0043】
メインパルスレーザ光31のパルス波形は、波形検出器350によって検出されてもよい。波形検出器350は、検出したパルス波形をペデスタル調節コントローラ56に送信してもよい。ペデスタル調節コントローラ56は、EUV光生成位置コントローラ51の制御の下、入力されたパルス波形に応じて、メインパルスレーザ装置3Aのペデスタル調節機構320をフィードバック制御してもよい。
【0044】
また、エネルギーセンサ90で検出されたEUV光252のエネルギーは、ペデスタル調節コントローラ56に入力されてもよい。ペデスタル調節コントローラ56は、入力されたEUV光252のエネルギーに応じて、メインパルスレーザ装置3Aのペデスタル調節機構320をフィードバック制御してもよい。
【0045】
4.3 作用
メインパルスレーザ光31のペデスタルのエネルギーを調節することよって、レーザ光からEUV光252へのエネルギー変換効率が向上され得る。
【0046】
4.4 メインパルスレーザ光のペデスタルと変換効率との関係
ここで、メインパルスレーザ光のペデスタルと変換効率との関係を、図面を参照に詳細に説明する。変換効率とは、ターゲットに照射したパルスレーザ光のエネルギーに対する、出力されたEUV光のエネルギーの比率である。図3は、実施の形態1によるペデスタルを含むメインパルスレーザ光31の波形の一例を示す。図4は、ペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係を示す。図5は、ペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係を示す。なお、ペデスタル比率とは、メインパルスレーザ光31の総エネルギーに対するペデスタルのエネルギーの割合を示す。
【0047】
図3に示されるように、メインパルスレーザ光31の波形は、ペデスタル31pと、ピーク部31mとを含んでもよい。ペデスタル31pは、たとえばピーク部31mの立ち上がりより略100ns程度手前からなだらかに立ち上がってもよい。ペデスタル31pの光強度は、ピーク部31mの光強度に対して十分に小さくてもよい。
【0048】
図4に示されるように、ペデスタル比率が1〜10%程度の領域では、2.7〜3.3%程度の比較的高い変換効率が得られる。これより、ペデスタル比率は、1〜10%程度であるのが好ましいことが分かる。また、ペデスタル比率を変化させることで変換効率が変化することが分かる。つまり、ペデスタル比率を調節することでEUV光のエネルギーを制御可能であることが分かる。
【0049】
図5に示されるように、ペデスタルのエネルギーが1〜10mJ程度の領域では、2.7〜3.3%程度の比較的高い変換効率が得られる。これより、ペデスタルのエネルギーは、1〜10mJ程度であるのが好ましいことが分かる。また、ペデスタルのエネルギーを変化させることで変換効率が変化することが分かる。つまり、ペデスタルのエネルギーを調節することでEUV光のエネルギーを制御可能であることが分かる。
【0050】
4.5 フローチャート
つぎに、実施の形態1によるEUV光生成システム11Aの動作を、図面を参照に詳細に説明する。
【0051】
4.5.1 ペデスタル調節フロー
図6は、実施の形態1によるペデスタル調節コントローラ56の動作を概略的に示すフローチャートである。
【0052】
図6に示されるように、ペデスタル調節コントローラ56は、まず、EUV光生成位置コントローラ51から、EUV光の生成開始信号を受信するまで待機してもよい(ステップS101;NO)。EUV光の生成開始信号を受信すると(ステップS101;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの調節開始をEUV光生成位置コントローラ51へ通知してもよい(ステップS102)。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ光31のペデスタルが所望のペデスタル比率またはエネルギーとなるようにペデスタル調節機構320を調節するためのペデスタル調節サブルーチンを実行してもよい(ステップS103)。
【0053】
ペデスタル調節機構320の調節が完了すると、ペデスタル調節コントローラ56は、調節が完了したことをEUV光生成位置コントローラ51へ通知してもよい(ステップS104)。つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ光31のペデスタルを安定化させるためのペデスタル安定化サブルーチンを実行してもよい(ステップS105)。なお、メインパルスレーザ光31は所定繰返し周波数で連続出力されてもよい。
【0054】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が必要か否かを判定するための再調節要否判定サブルーチンを実行してもよい(ステップS106)。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、再調節要否判定サブルーチンの結果に基づいて、ペデスタルの再調節が必要か否かを判断してもよい(ステップS107)。再調節が必要の場合(ステップS107;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、ステップS102へリターンして、以降の動作をくり返してもよい。一方、ペデスタルの再調節が不要の場合(ステップS107;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、つづいて、EUV光の生成中止信号を受信したか否かを判定してもよい(ステップS108)。生成中止信号を受信した場合(ステップS108;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、そのまま動作を終了してもよい。一方、生成中止信号を受信していない場合(ステップS108;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ステップS105へリターンして、以降の動作をくり返してもよい。
【0055】
以上のように動作することで、所望の比率またはエネルギーのペデスタルを含むメインパルスレーザ光31をメインパルスレーザ装置3Aに安定して出力させることが可能となる。
【0056】
4.5.1.1 ペデスタル比率に基づく場合
図6に示されるペデスタル調節フローの各サブルーチンは、ペデスタル比率Rに基づいて実行されてもよいし(図4参照)、ペデスタルのエネルギーEpに基づいて実行されてもよい(図5参照)。そこで、まず、ペデスタル比率Rに基づいて実行される各サブルーチンを、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0057】
4.5.1.1.1 ペデスタル調節サブルーチン
図7に、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの一例を示す。図8に、図7の説明で用いられるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【0058】
図7に示されるように、ペデスタル調節サブルーチンでは、ペデスタル調節コントローラ56は、まず、変数Nに‘0’を設定してもよい(ステップS111)。つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、変数Nの値を1つインクリメント(N=N+1)してもよい(ステップS112)。
【0059】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタル調節機構320に、制御値Pを送信してもよい(ステップS113)。制御値Pは、後述するように、例えばポッケルスセルに印加される電圧値や、電圧の印加タイミング等の制御値でもよい。なお、最初にペデスタル調節サブルーチンを実行する段階では、初期制御値として最小値(または最大値)の制御値P=Pがペデスタル調節機構320に送信されてもよい。その後、予め定めておいた変化量ΔPstpごとの制御値P=P+(N−1)・ΔPstpがペデスタル制御機構320に送信されてもよい。なお、制御値Pは、計測範囲の上限値または下限値(P=P+(k−1)・ΔPstp)となるまで、ペデスタル調節機構320に送信されてもよい。なお、kは自然数であり、計測点数の上限値であってよい。kは、実験等により予め定めておくとよい。
【0060】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタル比率Rを計測するためのペデスタル比率計測サブルーチンを実行してもよい(ステップS114)。このとき、ペデスタル比率計測サブルーチンを実行する時点で保持されている変数Nの値は、引数としてペデスタル比率計測サブルーチンで利用されてもよい。
【0061】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、変数Nが予め定めておいた上限値k以上となったか否かを判定してもよい(ステップS115)。変数Nが上限値k未満である場合(ステップS115;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ステップS112へリターンして、以降の動作をくり返してもよい。一方、変数Nが上限値k以上である場合(ステップS115;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、必要な変換効率CEを満たすペデスタル比率Rの制御範囲の下限値RLおよび上限値RHを求めてもよい(ステップS116)。このとき、同時に、最大の変換効率CEが得られるペデスタル比率Rcを求めてもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示す動作へリターンしてもよい。
【0062】
図7に示されるステップS112〜S115の動作がくり返されることによって、それぞれk個のペデスタル比率Rおよび変換効率CEの値が保持されてもよい。つまり、R1からRkそれぞれの値および、CE1からCEkそれぞれの値が保持されてもよい。これらの値から、図8に示されるような、ペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係曲線を得てもよい。図8において、点(R1、CE1)は、計測範囲の下限値を示し、点(Rk、CEk)は、計測範囲の上限値を示している。図8に示されるように、変換効率CEは、ペデスタル比率Rの計測範囲の下限値から上限値までの間にピークを持つ場合がある。その場合、変換効率CEのピークに対応するペデスタル比率Rcを算出してもよい。また、必要とする変換効率CEの最小値CELが予め設定されている場合、変換効率CEの値が最小値CELを超える範囲をペデスタル比率Rの制御範囲としてもよい。この制御範囲から、ペデスタル比率Rの制御範囲の下限値RLと上限値RHとを算出してもよい。なお、ペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係曲線には、たとえば最小二乗法を用いて算出した近似曲線が用いられてもよい。
【0063】
4.5.1.1.2 ペデスタル調節サブルーチン(変形例)
変換効率CEは、ペデスタル比率Rの計測範囲内でピークを持つとは限らない。そこで、以下に、変換効率CEがペデスタル比率Rの計測範囲内でピークを持たない場合のペデスタル調節サブルーチンの一例を示す。図9は、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの変形例を示す。図10は、図9の説明で用いられるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【0064】
図9に示されるように、ペデスタル調節サブルーチンの変形例では、ステップS111〜S115まで、図7に示されるステップS111〜S115と同様の動作が実行されてもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、計測範囲内での変換効率CEの最大値に対するペデスタル比率Rcを求めてもよい。さらに変換効率CEが、必要とする変換効率CEの最小値CEL以上となる領域でのペデスタル比率Rを求め、制御範囲の上限値RHを求めてもよい(ステップS216)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示す動作へリターンしてもよい。
【0065】
変換効率CEがペデスタル比率Rの計測範囲内でピークを持たない場合、図9に示されるステップS112〜S115の動作がくり返されることによって、それぞれk個のペデスタル比率Rおよび変換効率CEの値が保持されてもよい。つまり、R1からRkそれぞれの値および、CE1からCEkそれぞれの値が保持されてもよい。これらの値から、図10に示されるような、ペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係曲線を得てもよい。図10において、点(R1、CE1)は、計測範囲の下限値を示し、点(Rk、CEk)は、計測範囲の上限値を示している。図10に示されるように、変換効率CEは、ペデスタル比率Rの計測範囲の下限値から上限値にかけて単調減少する場合がある。その場合、ペデスタル比率Rの計測範囲の下限値で、変換効率CEが最も高い。そこで、計測範囲の下限値でのペデスタル比率Rが最適値Rcとされもよい。また、必要とする変換効率CEの最小値CELが予め設定されている場合、計測範囲の下限値から変換効率CEの値が最小値CELを超える範囲をペデスタル比率Rの制御範囲としてもよい。この制御範囲から、ペデスタル比率Rの制御範囲の上限値RHを算出してもよい。なお、ペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係曲線には、たとえば最小二乗法を用いて算出した近似曲線が用いられてもよい。
【0066】
4.5.1.1.3 ペデスタル比率計測サブルーチン
図11に、図7および図9のステップS114に示されるペデスタル比率計測サブルーチンの一例を示す。図12に、図11の説明で用いられるメインパルスレーザ光全体のエネルギーEtとペデスタルのエネルギーEpとの関係の一例を示す。
【0067】
図11に示されるように、ペデスタル比率計測サブルーチンでは、ペデスタル調節コントローラ56は、まず、波形検出器350から、検出されたメインパルスレーザ光31のパルス波形を受信してもよい(ステップS121)。また、ペデスタル調節コントローラ56は、エネルギーセンサ90から、検出されたEUV光252のエネルギーEeuvを受信してもよい(ステップS122)。
【0068】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、受信した1パルス全体のパルス波形から、1パルス全体のエネルギーEtを算出してもよい(ステップS123)。図12に示されるように、エネルギーEtは、たとえばペデスタルのエネルギーEpとピーク部のエネルギーEmとを合計した積分値として算出されてもよい。
【0069】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルのエネルギーEpを算出してもよい(ステップS124)。エネルギーEpは、たとえばパルス波形におけるピーク部の立ち上がりよりも前の部分のエネルギーの積分値として算出されてもよい。あるいは、エネルギーEpは、たとえばパルス波形全体のエネルギーEtからピーク部のエネルギーEmを引算して求められてもよい。なお、ピーク部の立ち上がりは、たとえば光強度が予め定めておいた閾値を超えたか否かで特定されてもよい。
【0070】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ光31の全体のエネルギーEtに対する、ペデスタルのエネルギー比率Rn(=Ep/Et)を算出してもよい(ステップS125)。このとき、ペデスタル比率計測サブルーチンから移行した時点で保持されていた変数Nの値は、引数nとして利用されてもよい。つまり、エネルギー比率Rnのnは、変数Nと同じ序数でもよい。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、受信したEUV光252のエネルギーEeuvと、算出されたピーク部のエネルギーEmとから、EUV光252への変換効率CEnを算出してもよい(ステップS126)。このとき、変換効率CEnのnは、変数Nと同じ序数でもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図7または図9に示されるペデスタル調節サブルーチンへリターンしてもよい。
【0071】
4.5.1.1.4 ペデスタル安定化サブルーチン
ペデスタル安定化サブルーチンでは、都度、ペデスタル比率Rが変換効率CEの最大値に対応するペデスタル比率Rcに近づくように調節されてもよい。図13は、図6のステップS105に示されるペデスタル安定化サブルーチンを示す。
【0072】
図13に示されるように、ペデスタル安定化サブルーチンでは、ペデスタル調節コントローラ56は、波形検出器350でメインパルスレーザ光31のパルス波形が検出され、且つ、エネルギーセンサ90でEUV光252のエネルギーが検出されるまで待機してもよい(ステップS141;NO)。メインパルスレーザ光31のパルス波形およびEUV光252のエネルギーが検出されると(ステップS141;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタル比率計測サブルーチン2を実行してもよい(ステップS142)。本例におけるペデスタル比率計測サブルーチンは、図13を参照に説明されたペデスタル比率計測サブルーチン2と同様でもよい。
【0073】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、変換効率CEの最大値に対応するペデスタル比率Rcと、ペデスタル比率計測サブルーチンで得られたペデスタル比率Rとの差ΔR(=Rc−R)を算出してもよい(ステップS143)。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、差ΔRが小さくなるように、ペデスタル調節機構320へ制御値の変化量ΔPを送信してもよい(ステップS144)。変化量ΔPは、予め定めておいた変化量ΔPstpでもよいし、差ΔRに応じて算出された値でもよい。
【0074】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、再度、ペデスタル比率計測サブルーチン2を実行してもよい(ステップS145)。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、再度のペデスタル比率計測サブルーチン2で算出された変換効率CEを、これまで保持していた変換効率CEに上書きしてもよい(CE=CE)。同様に、最新の算出値であるペデスタル比率Rを、これまで保持していたRに上書きしてもよい(R=R)(ステップS146)。それぞれの値(CE、R)は、たとえば図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンで使用されてもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示す動作へリターンしてもよい。
【0075】
4.5.1.1.5 ペデスタル比率計測サブルーチン2
図14に、ペデスタル比率計測サブルーチン2を示す。ペデスタル比率計測サブルーチン2は、図13を参照に説明されるペデスタル安定化サブルーチンにおいて利用されてもよい。
【0076】
図14に示されるように、ペデスタル比率計測サブルーチン2では、図11に示されたペデスタル比率計測サブルーチンとほぼ同様の動作が行なわれてもよい。説明の簡略化のため、以下では、図11に示される動作と異なる動作についてのみ説明する。
【0077】
ペデスタル比率計測サブルーチン2では、ステップS135およびステップS136において、ペデスタル調節サブルーチンにおける変数Nが参照されなくてもよい。つまり、ペデスタル比率計測サブルーチン実行時のエネルギー比率Rおよび変換効率CEが算出されてもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図13に示されるペデスタル調節サブルーチンへリターンしてもよい。
【0078】
4.5.1.1.6 再調節要否判定サブルーチン
図15は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの一例を示す。
【0079】
図15に示されるように、再調節要否判定サブルーチンでは、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタル比率Rに設定されている値が下限値RLから上限値RHまでの範囲内であるか否か、また、変換効率CEに設定されている値が最小値CEL以上であるか否かを判定してもよい(ステップS151)。ペデスタル比率Rが下限値RLから上限値RHまでの範囲内であり、かつ、変換効率CEが最小値CEL以上である場合(ステップS151;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が不要であると判定してもよい(ステップS152)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。一方、ペデスタル比率Rが下限値RLから上限値RHまでの範囲外であるか、または、変換効率CEが最小値CEL未満である場合(ステップS151;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が必要であると判定してもよい(ステップS153)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。
【0080】
4.5.1.1.7 再調節要否判定サブルーチン(変形例)
また、ペデスタル比率Rの計測範囲内で変換効率CEがピークを持たない場合は、以下のような再調節要否判定サブルーチンが実行されてもよい。図16は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの変形例を示す。
【0081】
図16に示されるように、再調節要否判定サブルーチンの変形例では、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタル比率Rに設定されている値が上限値RH以下であるか否か、また、変換効率CEに設定されている値が最小値CEL以上であるか否かを判定してもよい(ステップS251)。ペデスタル比率Rが上限値RH以下であり、かつ、変換効率CEが最小値CEL以上である場合(ステップS251;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が不要であると判定してもよい(ステップS252)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。一方、ペデスタル比率Rが上限値RHより大きいか、または、変換効率CEが最小値CEL未満である場合(ステップS251;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が必要であると判定してもよい(ステップS253)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。
【0082】
4.5.1.2 ペデスタルエネルギーに基づく場合
つぎに、ペデスタルのエネルギーEpに基づいたサブルーチンを、それぞれ、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0083】
4.5.1.2.1 ペデスタル調節サブルーチン
図17に、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの他の一例を示す。図18に、図17の説明で用いられるペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【0084】
図17に示される、ペデスタルのエネルギーEpに基づいたペデスタル調節サブルーチンでは、図7に示されたペデスタル調節サブルーチンと同様の動作が行なわれてもよい。ステップS311〜ステップS315は、図7のステップS111〜S115に対応し、同様の動作であるので詳細な説明を省略する。但し、ステップS314において、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルのエネルギーEpを計測するためのペデスタルエネルギー計測サブルーチン(後述)を実行してもよい。
【0085】
図17に示されるステップS312〜S315の動作をくり返すことで、図18に示されるような、ペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係曲線を得てもよい。図18において、点(Ep1、CE1)は、計測範囲の下限値を示し、点(Epk、CEk)は、計測範囲の上限値を示している。図18に示されるように、変換効率CEは、エネルギーEpの計測範囲の下限値から上限値までの間にピークを持つ場合がある。その場合、変換効率CEのピークに対応するエネルギーEpcを算出してもよい。また、必要とする変換効率CEの最小値CELが予め設定されている場合、変換効率CEの値が最小値CELを超える範囲をエネルギーEpの制御範囲としてもよい。この制御範囲から、エネルギーEpの制御範囲の下限値EpLと上限値EpHとを算出してもよい。なお、エネルギーEpと変換効率CEとの関係曲線には、たとえば最小二乗法を用いて算出した近似曲線が用いられてもよい。
【0086】
4.5.1.2.2 ペデスタル調節サブルーチン(変形例)
変換効率CEは、ペデスタルのエネルギーEpの計測範囲内でピークを持つとは限らない。そこで、以下に、変換効率CEがエネルギーEpの計測範囲内でピークを持たない場合のペデスタル調節サブルーチンの一例を示す。図19は、図6のステップS103に示されるペデスタル調節サブルーチンの他の変形例を示す。図20は、図19の説明で用いられるペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【0087】
図19に示されるように、ペデスタルのエネルギーEpに基づいたペデスタル調節サブルーチンの変形例では、ステップS311〜S315まで、図17に示されるステップS311〜S315と同様の動作が実行されてもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、計測範囲内での変換効率CEの最大値に対応するエネルギーEpcを求めてもよい。さらに、ペデスタル調節コントローラ56は、必要とする変換効率CEの最小値CEL以上となるペデスタルのエネルギーEpの上限値EpHを求めてもよい(ステップS416)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示す動作へリターンしてもよい。
【0088】
変換効率CEがペデスタルのエネルギーEpの計測範囲内でピークを持たない場合、図19に示されるステップS312〜S315の動作をくり返すことで、図20に示されるような、ペデスタルのエネルギーEpと変換効率CEとの関係曲線が得られる場合がある。図20において、点(Ep1、CE1)は、計測範囲の下限値を示し、点(Epk、CEk)は、計測範囲の上限値を示している。図20に示されるように、変換効率CEは、エネルギーEpの計測範囲の下限値から上限値にかけて単調減少する場合がある。その場合、ペデスタルのエネルギーEpの計測範囲の下限値で、変換効率CEが最も高い。そこで、計測範囲の下限値でのペデスタルのエネルギーEpが最適値Epcとされてもよい。また、必要とする変換効率CEの最小値CELが予め設定されている場合、計測範囲の下限値から変換効率CEの値が最小値CELを超える範囲をエネルギーEpの制御範囲としてもよい。この制御範囲から、エネルギーEpの制御範囲の上限値EpHを算出してもよい。なお、エネルギーEpと変換効率CEとの関係曲線には、たとえば最小二乗法を用いて算出した近似曲線が用いられてもよい。
【0089】
4.5.1.2.3 ペデスタルエネルギー計測サブルーチン
図21に、図17および図19のステップS314に示されるペデスタルエネルギー計測サブルーチンの一例を示す。なお、メインパルスレーザ光全体のエネルギーEtとペデスタルのエネルギーEpとの関係は、たとえば図12に示された一例と同じでもよい。
【0090】
図21に示されるように、ペデスタルエネルギー計測サブルーチンでは、図11に示したペデスタル比率計測サブルーチンと同様の動作が実行されるステップが多い。そのため、以下では、図11に示したペデスタル比率計測サブルーチンにおける動作とは異なる動作のみ説明する。ステップS321〜ステップS323は、図11に示すステップS121〜ステップS123と同様のため、説明を省略する。ステップS324において、ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ光31のペデスタルエネルギーEpnを算出してもよい。このとき、ペデスタル調節サブルーチンから移行した時点で保持されていた変数Nの値は、引数nとして利用されてもよい。つまり、ペデスタルエネルギーEpnのnは、変数Nと同じ序数でもよい。
【0091】
ステップS325において、ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ光31の波形におけるピーク部のエネルギーEmを算出してもよい。エネルギーEmは、たとえばパルス波形におけるピーク部の立ち上がりから予め定めておいた所定時間分のエネルギーの積分値として算出されてもよい。あるいは、エネルギーEmは、たとえばパルス波形全体のエネルギーEtからペデスタルのエネルギーEpnを引算して求められてもよい。なお、ピーク部の立ち上がりは、たとえば光強度が予め定めておいた閾値を超えたか否かで特定されてもよい。
【0092】
ステップS326は、図11におけるステップS126と同様でよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図17または図19に示されるペデスタル調節サブルーチンへリターンしてもよい。
【0093】
4.5.1.2.4 ペデスタル安定化サブルーチン
ペデスタル安定化サブルーチンでは、都度、ペデスタルエネルギーEpが最適値Epcに近づくように調節されてもよい。図22は、図6のステップS105に示されるペデスタル安定化サブルーチンの一例を示す。
【0094】
図22に示されるように、ペデスタルのエネルギーEpに基づいたペデスタル安定化サブルーチンでは、図13に示したペデスタル安定化サブルーチンと同様の動作が行なわれるステップが多い。そのため、図13に示したペデスタル安定化サブルーチンとは異なる部分のみを説明する。ステップS341およびステップS342は、図13に示すステップS141およびステップS142と同様でよい。但し、ステップS342におけるペデスタルエネルギー計測サブルーチンは、図23を参照に説明されるペデスタルエネルギー計測サブルーチン2と同様でもよい。
【0095】
ステップS343において、ペデスタル調節コントローラ56は、変換効率CEの最大値に対応するペデスタルエネルギーEpcと、ペデスタルエネルギー計測サブルーチンで得られたエネルギーEpとの差ΔEp(=Epc−Ep)を算出してもよい。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、差ΔEpが小さくなるように、ペデスタル調節機構320へ制御値の変化量ΔPを送信してもよい(ステップS344)。変化量ΔPは、予め定めておいた変化量ΔPstpでもよいし、差ΔEpに応じて算出された値でもよい。
【0096】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、再度、ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2を実行してもよい(ステップS345)。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、再度のペデスタルエネルギー計測サブルーチン2で算出された変換効率CEをこれまで保持していた変換効率CEに上書きしてもよい(CE=CE)。同様に最新の算出値であるエネルギーEpをこれまで保持していたエネルギーEpに上書きしてもよい(Ep=Ep)(ステップS346)。それぞれの値(CE、Ep)は、たとえば図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンで使用されてもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示す動作へリターンしてもよい。
【0097】
4.5.1.2.5 ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2
図23は、ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2を示す。ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2は、図22を参照に説明されるペデスタル安定化サブルーチンにおいて利用されてもよい。
【0098】
図23に示されるように、ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2では、図21に示したペデスタルエネルギー計測サブルーチンとほぼ同様の動作を行なわれてもよい。説明に簡略化のため、図21に示すペデスタルエネルギー計測サブルーチンにおける動作とは異なる動作についてのみ説明する。
【0099】
ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2では、ステップS334およびステップS336において、ペデスタル調節サブルーチンにおける変数Nを参照しなくてもよい。つまり、ペデスタルエネルギー計測サブルーチン実行時のペデスタルエネルギーEpおよび変換効率CEを算出してもよい。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図22に示されるペデスタル調節サブルーチンへリターンしてもよい。
【0100】
4.5.1.2.6 再調節要否判定サブルーチン
図24は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの一例を示す。
【0101】
図24に示されるように、ペデスタルのエネルギーEpに基づいた再調節要否判定サブルーチンでは、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルのエネルギーEpに設定されている値が下限値EpLから上限値EpHまでの範囲内であるか否か、また、変換効率CEに設定されている値が最小値CEL以上であるか否かを判定してもよい(ステップS351)。エネルギーEpが下限値EpLから上限値EpHまでの範囲内であり、かつ、変換効率CEが最小値CEL以上である場合(ステップS351;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が不要であると判定してもよい(ステップS352)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。一方、エネルギーEpが下限値EpLから上限値EpHまでの範囲外であるか、または、変換効率CEが最小値CEL未満である場合(ステップS351;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が必要であると判定してもよい(ステップS353)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。
【0102】
4.5.1.2.7 再調節要否判定サブルーチン(変形例)
また、ペデスタルのエネルギーEpの計測範囲内で変換効率CEがピークを持たない場合は、以下のような再調節要否判定サブルーチンが実行されてもよい。図25は、図6のステップS106に示される再調節要否判定サブルーチンの変形例を示す。
【0103】
図25に示されるように、ペデスタルのエネルギーEpに基づいた再調節要否判定サブルーチンの変形例では、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルのエネルギーEpに設定されている値が上限値EpH以下であるか否か、また、変換効率CEに設定されている値が最小値CEL以上であるか否かを判定してもよい(ステップS451)。エネルギーEpが上限値EpH以下であり、かつ、変換効率CEが最小値CEL以上である場合(ステップS451;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が不要であると判定してもよい(ステップS452)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。一方、エネルギーEpが上限値EpHより大きいか、または、変換効率CEが最小値CEL未満である場合(ステップS451;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルの再調節が必要であると判定してもよい(ステップS453)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図6に示される動作へリターンしてもよい。
【0104】
5.ペデスタルの調節機構
つぎに、実施の形態1によるペデスタル調節機構の具体例を、以下に図面を参照に詳細に説明する。
【0105】
5.1 光シャッタ
図26は、ペデスタル調節機構320に光シャッタが用いられた場合のメインパルスレーザ装置3Bの一例を概略的に示す。図26に示されるように、メインパルスレーザ装置3Bは、ペデスタル調節機構320として、少なくとも1つの光シャッタ321を備えてもよい。その他の構成は、図2に示されるメインパルスレーザ装置3Aと同様でもよい。
【0106】
光シャッタ321は、マスタオシレータ310から出力されたパルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。光シャッタ321は、ペデスタル調節コントローラ56からの制御にしたがって、その透過率を変化させるよう構成されてもよい。ペデスタル調節コントローラ56は、パルスレーザ光が光シャッタ321に入射するタイミングに合わせて、光シャッタ321の透過率を調節してもよい。パルスレーザ光が光シャッタ321に入射するタイミングは、図示しない光センサ等により検知されてもよい。光センサは、例えばマスタオシレータ310から出力されるパルスレーザ光の散乱光を検知してもよい。これにより、メインパルスレーザ装置3Bから出力されるメインパルスレーザ光31のペデスタル比率R、または、そのペデスタルのエネルギーEpが調節され得る。
【0107】
光シャッタ321は、マスタオシレータ310とその下流側の増幅器331との間の光路上に配置されてもよい。あるいは、増幅器331よりも下流に光シャッタ321が配置されてもよい。
【0108】
また、1つの光シャッタ321のみではメインパルスレーザ光31におけるペデスタル比率Rを所望の値まで低減できない場合、複数の光シャッタ321が用いられてもよい。複数の光シャッタ321は、マスタオシレータ310と増幅器331との間の光路上に配置されてもよい。しかし、これに限定されず、増幅器331とその下流側の増幅器332との間の光路上に配置されてもよいし、増幅器332とその下流側の増幅器333との間の光路上に配置されてもよい。あるいは、増幅器333の出力側等にそれぞれ適宜に配置されてもよい。
【0109】
ここで、図27〜図29に、図26に示される位置(a)〜(c)におけるパルスレーザ光のパルス波形を示す。まず、図27に示されるように、マスタオシレータ310からは、比較的ペデスタル比率Rの高い、または、比較的エネルギーEpの高いペデスタルを含むパルス波形Wsのパルスレーザ光が出力されてもよい。つぎに、図28に示されるように、光シャッタ321を通過したパルスレーザ光の波形は、パルス波形Wsの前半部分の光強度が低下した形状となってもよい。このパルス波形は、比較的ペデスタル比率Rの低い、または、比較的エネルギーEpの低い波形部Wp1(ペデスタル)と、光シャッタ321を高い透過率で通過したパルス波形Wsの後半部分である波形部Wm1(ピーク分)とを含んでもよい。つぎに、図29に示されるように、増幅331〜333を通過することで増幅されたパルスレーザ光(メインパルスレーザ光31)の波形は、図28に示されるパルス波形が増幅された形状でもよい。このパルス波形は、図28に示されるパルス波形と同様に、比較的ペデスタル比率Rの低い、または、比較的エネルギーEpの低い波形部Wp2(ペデスタル)と、パルス波形Wsの後半部分である波形部Wm2(ピーク部)とを含んでもよい。
【0110】
5.2 光シャッタと可飽和吸収装置
図30は、ペデスタル調節機構320に光シャッタと可飽和吸収装置とが用いられた場合のメインパルスレーザ装置3Cの一例を概略的に示す。図30に示されるように、メインパルスレーザ装置3Cは、ペデスタル調節機構320として、少なくとも1つの光シャッタ321と、少なくとも1つの可飽和吸収装置322とを備えてもよい。その他の構成は、図2に示されるメインパルスレーザ装置3Aと同様でもよい。
【0111】
光シャッタ321は、図26に示された光シャッタ321と同様でもよい。
【0112】
可飽和吸収装置322は、内部に可飽和吸収ガスを含んだガスセルでもよい。可飽和吸収装置322は、ペデスタル調節コントローラ56からの制御にしたがって、内部の可飽和吸収ガスの濃度、または、可飽和吸収ガスを通過するパルスレーザ光の光路長が調節されるよう構成されてもよい。
【0113】
可飽和吸収装置322は、マスタオシレータ310から出力されたパルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。可飽和吸収装置322は、マスタオシレータ310とその下流側の増幅器331との間の光路上に配置されてもよい。あるいは、増幅器331よりも下流に可飽和吸収装置322が配置されてもよい。
【0114】
可飽和吸収装置322は、光シャッタ321より下流に配置されてもよい。これにより、光シャッタ321によって生成されたペデスタルのエネルギーEpを効果的に調節することができる。増幅器331〜333の増幅特性によっては、ペデスタルの増幅率がピーク部の増幅率よりも高くなる場合がある。このような場合、光シャッタのみでは所望のペデスタル比率を得られないことがある。そこで、可飽和吸収装置によってペデスタルのエネルギーを低減してもよい。その場合、所望のペデスタル比率Rが実現し易くなる。ただし、光シャッタ321より上流に可飽和吸収装置322が配置されてもよい。
【0115】
ここで、図31〜図34に、図30に示される位置(a)〜(d)でのパルスレーザ光の波形を示す。まず、図31および図32に示される、マスタオシレータ310から出力されたパルスレーザ光が光シャッタ321を通過する前後のパルス波形の変化は、図27および図28を参照に説明したパルス波形の変化と同様でよい。つぎに、図33に示されるように、可飽和吸収装置322を通過したパルスレーザ光のパルス波形は、ペデスタルのエネルギーEpがより低減された、または、ペデスタル比率Rがより低減された形状となってもよい。このとき、可飽和吸収ガスにより、パルス波形Wsの後半部分のエネルギーの低い部分は、エネルギーが低減され得る。このパルス波形は、光強度の低い前半部分である波形部Wp12(ペデスタル)と、光強度の高い後半部分である波形部Wm12(ピーク部)とを含んでもよい。さらに、図34に示されるように、増幅器331〜333を通過することで増幅されたパルスレーザ光(メインパルスレーザ光31)の波形は、図33に示されるパルス波形が増幅された形状でもよい。このパルス波形は、図33に示されるパルス波形と同様に、光強度の低い前半部分である波形部Wp13(ペデスタル)と、光強度の高い後半部分である波形Wm部13(ピーク部)とを含んでもよい。
【0116】
5.3 EOポッケルスセルを含むMOとの組合せ
また、マスタオシレータがEOポッケルスセルを含む場合、このEOポッケルスセルをペデスタル調節機構320として用いることも可能である。以下、マスタオシレータのEOポッケルスセルがペデスタル調節機構として用いられる場合の具体例を示す。
【0117】
5.3.1 可飽和吸収装置との組合せ
図35は、ペデスタル調節機構320にマスタオシレータのEOポッケルスセルと可飽和吸収装置とが用いられた場合のメインパルスレーザ装置3Dの一例を概略的に示す。図35に示されるように、メインパルスレーザ装置3Dは、マスタオシレータ311と、高反射ミラー317と、可飽和吸収装置322とを備えてもよい。その他の構成は、図2に示されるメインパルスレーザ装置3Aと同様でもよい。
【0118】
マスタオシレータ311は、共振器ミラーを構成する2つの高反射ミラー312および316と、増幅部313と、偏光ビームスプリッタ314と、EOポッケルスセル315とを含んでもよい。EOポッケルスセル315は、レーザコントローラ301から印加される電圧に応じて、透過するパルスレーザ光の偏光方向を変化させてもよい。レーザコントローラ301からEOポッケルスセル315に印加される電圧は、ペデスタル調節コントローラ56によって制御されてもよい。マスタオシレータ311からパルス状のレーザ光を出力させる際にEOポッケルスセル315へ印加する電圧を調節することで、パルス波形の前半部分の光強度が低下した形状の波形を持つパルスレーザ光がマスタオシレータ311から出力され得る。すなわち、ペデスタル比率R、または、ペデスタルのエネルギーEpが調節されたパルスレーザ光がマスタオシレータ311から出力され得る。
【0119】
マスタオシレータ311から出力されたパルスレーザ光は、高反射ミラー317で反射されて、可飽和吸収装置322に入射してもよい。可飽和吸収装置322は、図30に示された可飽和吸収装置322と同様でもよい。マスタオシレータ311から出力されたパルスレーザ光を可飽和吸収装置322を透過させることで、そのペデスタルのエネルギーEpを効果的に調節することができる。
【0120】
ここで、図36〜図38に、図35に示される位置(a)〜(c)におけるパルスレーザ光の波形を示す。まず、図36に示されるように、マスタオシレータ311からは、前半部分の光強度が低下したパルス波形を持つパルスレーザ光が出力されてもよい。このパルス波形は、比較的ペデスタル比率Rの低い、または、比較的エネルギーEpの低い波形部Wp21(ペデスタル)と、比較的エネルギーEmの高い波形部Wm21(ピーク部)とを含んでもよい。波形部Wp21は、たとえばEOポッケルスセル315に印加される電圧を比較的低くすることで生成することができる。また、波形部Wm21は、たとえばEOポッケルスセル315に印加される電圧を比較的高くすることで生成することができる。比較的低い電圧がEOポッケルスセル315に印加された場合、EOポッケルスセル315を透過したパルスレーザ光の偏光方向の変化は、微小であり得る。そのため、偏光ビームスプリッタ314で反射されるパルスレーザ光の光強度は比較的小さくり得る。これに対し、比較的高い電圧がEOポッケルスセル315に印加された場合、EOポッケルスセル315を透過したパルスレーザ光の偏光方向の変化は、90°に近くなり得る。そのため、偏光ビームスプリッタ314で反射されるパルスレーザ光の光強度は比較的大きくなり得る。つぎに、図37に示されるように、可飽和吸収装置322を通過したパルスレーザ光の波形は、ペデスタルのエネルギーEpがより低減された、または、ペデスタル比率Rがより低減された形状となってもよい。このパルス波形は、光強度の低い前半部分である波形部Wp22(ペデスタル)と、光強度の高い後半部分である波形部Wm22(ピーク部)とを含んでもよい。このとき、可飽和吸収ガスにより、パルス波形Wm22の後半部分のエネルギーの低い部分は、エネルギーが低減され得る。さらに、図38に示されるように、増幅器331〜333を通過することで増幅されたパルスレーザ光(メインパルスレーザ光31)の波形は、図37に示されるパルス波形が増幅された形状であってもよい。このパルス波形は、図37に示されるパルス波形と同様に、光強度の低い前半部分である波形部Wp23(ペデスタル)と、光強度の高い後半部分である波形部Wm23(ピーク部)とを含んでもよい。
【0121】
5.3.2 光シャッタとの組合せ
図39は、ペデスタル調節機構320にマスタオシレータのEOポッケルスセルと光シャッタとが用いられた場合のメインパルスレーザ装置3Eの一例を概略的に示す。図39に示されるように、メインパルスレーザ装置3Eは、図35に示されるマスタオシレータ3Dと同様の構成を備えてもよい。ただし、メインパルスレーザ装置3Eでは、可飽和吸収装置322が、光シャッタ321に置き換えられてもよい。光シャッタ321は、図26に示された光シャッタ321と同様でもよい。マスタオシレータ311から出力されたパルスレーザ光が光シャッタ321を透過する際に、光シャッタ321に印加される電圧を調節することで、そのペデスタルのエネルギーEpを効果的に調節することができる。
【0122】
5.4 少なくとも2つの半導体レーザを含む実施形態
また、メインパルスレーザ装置3のマスタオシレータは、少なくとも2つの半導体レーザを含んでもよい。その場合、複数の半導体レーザのうち少なくとも1つをペデスタル調節機構として用いてもよい。
【0123】
図40は、マスタオシレータが少なくとも2つの半導体レーザを含むメインパルスレーザ装置3Fの一例を概略的に示す。図40に示されるように、メインパルスレーザ装置3Fは、図26に示されるメインパルスレーザ装置3Bと同様の構成を備えてもよい。ただし、メインパルスレーザ装置3Fでは、マスタオシレータ310が、マスタオシレータ410に置き換えられてもよい。また、メインパルスレーザ装置3Fは、再生増幅器430をさらに備えてもよい。
【0124】
マスタオシレータ410は、半導体レーザ411および412と、光路調節器413とを含んでもよい。半導体レーザ411および412は、たとえば量子カスケードレーザでもよい。半導体レーザ411および412は、レーザコントローラ301の制御の下で発振するよう構成されてもよい。光路調節器413は、半導体レーザ411および412から出力されたパルスレーザ光の光路を実質的に一致させてもよい。
【0125】
レーザコントローラ301は、たとえば半導体レーザ411よりも遅いタイミングで半導体レーザ412を発振させてもよい。パルスレーザ光の波形において、半導体レーザ411から出力されたパルスレーザ光の波形の一部は、半導体レーザ412から出力されたパルスレーザ光の波形の一部に重畳してもよい。あるいは、半導体レーザ411から出力されたパルスレーザ光の波形と、半導体レーザ412から出力されたパルスレーザ光の波形とは時間的に分離していてもよい。
【0126】
半導体レーザ411から出力されたパルスレーザ光のエネルギーは、半導体レーザ412から出力されたパルスレーザ光のエネルギーよりも十分に小さくてもよい。半導体レーザ412から出力されたパルスレーザ光より時間的に前に、これよりもエネルギーの小さいパルスレーザ光を組み合わせることで、実質的にペデスタルを含むパルスレーザ光がマスタオシレータ410から出力され得る。
【0127】
マスタオシレータ410から出力されたパルスレーザ光は、再生増幅器430で増幅されてもよい。増幅後のパルスレーザ光は、光シャッタ321に入射してもよい。光シャッタ321は、図26に示す光シャッタ321と同様でもよい。光シャッタ321は、再生増幅器430よりも下流側の光路上に限らず、マスタオシレータ410と再生増幅器430との間の光路上に配置されてもよい。マスタオシレータ410から出力されたパルスレーザ光が光シャッタ321を透過する際に、光シャッタ321に印加される電圧を調節することで、そのペデスタルのエネルギーEpを効果的に調節することができる。ただし、半導体レーザ411から出力されたパルスレーザ光のエネルギーを調節して得られるペデスタルのエネルギーが、増幅器333の増幅後であっても所望のエネルギーとなる場合、光シャッタ321は、省略してもよい。
【0128】
ここで、図41〜図44に、図40に示される位置(a)〜(d)におけるパルスレーザ光の波形を示す。まず、図41に示されるように、マスタオシレータ410からは、比較的エネルギーEpの低い波形Wp31と、比較的エネルギーEmの高い波形Wm31とを含む波形のパルスレーザ光が出力されてもよい。波形Wp31は、たとえば半導体レーザ411から出力されたパルスレーザ光の波形でもよい。波形Wp31は、ペデスタルを構成してもよい。波形Wm31は、たとえば半導体レーザ412から出力されたパルスレーザ光の波形でもよい。波形Wm31は、ピーク部を構成してもよい。つぎに、図42に示されるように、マスタオシレータ410から出力されたパルスレーザ光は、再生増幅器430によって増幅されてもよい。その場合、再生増幅器430からは、図41に示されるパルス波形と同様に、比較的エネルギーEpの低い波形Wp32と、比較的エネルギーEmの高い波形Wm32とを含む波形のパルスレーザ光が出力されてもよい。つぎに、図43に示されるように、光シャッタ321を通過したパルスレーザ光の波形は、半導体レーザ411から出力されたパルスレーザ光の波形Wp32が光シャッタ321によってそのエネルギーが低減された形状となってもよい。このパルス波形は、比較的ペデスタル比率Rの低い、または、比較的エネルギーEpの低いパルス波形Wp33(ペデスタル)と、比較的エネルギーEmの高い波形Wm33(ピーク部)とを含んでもよい。さらに、図44に示されるように、増幅器331〜333を通過することで増幅されたパルスレーザ光(メインパルスレーザ光31)の波形は、図43に示される波形が増幅された形状でもよい。この波形は、図43に示される波形と同様に、ペデスタル比率Rのより低い、または、エネルギーEpのより低い波形Wp34(ペデスタル)と、比較的エネルギーEmの高い波形Wm34(ピーク部)とを含んでもよい。
【0129】
6.メインパルスレーザ光のペデスタル調節によるEUV光のエネルギー制御(実施の形態2)
上述したEUV光生成システムでは、必要な変換効率CEを満足するように、ペデスタル調節機構が調節された。しかし、本開示は、これに限定されるものではない。たとえば、メインパルスレーザ光31におけるペデスタル比率RまたはペデスタルのエネルギーEpを調節することで、EUV光252のエネルギーEeuvを調節することも可能である。以下では、ペデスタル調節機構を調節することによってEUV光のエネルギーを調節するよう構成されたEUV光生成システムを、本開示の実施の形態2として詳細に説明する。
【0130】
6.1 構成
実施の形態2によるEUV光生成システムは、実施の形態1によるEUV光生成システム11Aと同様に構成されてもよい。
【0131】
6.2 動作
実施の形態2によるEUV光生成システムにおける動作は、実施の形態1によるEUV光生成システム11Aにおける動作と同様でもよい。ただし、実施の形態2では、EUV光生成制御部5Aに、露光装置コントローラ61などの外部装置から、目標とするEUV光のエネルギーEeuvtが入力されてもよい。その場合、EUV光生成制御部5Aは、生成されるEUV光のエネルギーが目標とするエネルギーEeuvtとなるように、ペデスタル調節機構320を調節してもよい。
【0132】
6.3 作用
ペデスタル調節機構320を調節して変換効率CEを変化させることで、EUV光252のエネルギーが調節され得る。これによれば、メインパルスレーザ装置3Aの出力エネルギーを大きく変化させずにEUV光252のエネルギーを調節することが可能である。このため、メインパルスレーザ装置3Aからプラズマ生成領域25までの光路上に配置された光学素子にかかる熱負荷の変動を低減することができる。その結果、これらの光学素子が熱的に安定するため、メインパルスレーザ光31の集光性能が安定化し、EUV光252の出力安定性を向上させることが可能となる。
【0133】
6.4 フローチャート
つぎに、実施の形態2によるEUV光生成システム11Aの動作を、図面を参照に詳細に説明する。
【0134】
6.4.1 ペデスタル比率に基づく場合
実施の形態2による動作は、ペデスタル比率Rに基づいてもよいし(図4参照)、ペデスタルのエネルギーEpに基づいてもよい(図5参照)。そこで、まず、ペデスタル比率Rに基づいた動作を、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0135】
6.4.1.1 ペデスタル制御フロー
図45は、実施の形態2によるペデスタル調節コントローラ56の動作を概略的に示すフローチャートである。
【0136】
図45に示されるように、ペデスタル調節コントローラ56は、まず、露光装置コントローラ61などの外部装置から、目標とするEUV光252のエネルギー(目標EUV光エネルギー)Eeuvtを受信するまで待機してもよい(ステップS501;NO)。目標EUV光エネルギーEeuvtを受信すると(ステップS501;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、たとえばEUV光生成位置コントローラ51からトリガ信号を受信するまで待機してもよい(ステップS502;NO)。トリガ信号は、1パルスのEUV光252を生成するためのトリガでもよい。なお、トリガ信号は、EUV光252が生成される期間中、所定繰返し周波数でペデスタル調節コントローラ56に入力されてもよい。
【0137】
トリガ信号を受信すると(ステップS502;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、エネルギーセンサ90で検出されたEUV光252のEUV光エネルギーEeuvを受信してもよい(ステップS503)。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタル比率Rを計測するためのペデスタル比率計測サブルーチン2を実行してもよい(ステップS504)。ペデスタル比率計測サブルーチン2は、図13で説明したペデスタル比率計測サブルーチン2と同様でもよい。
【0138】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ光31のペデスタルが所望のペデスタル比率Rとなるようにペデスタル調節機構320を調節するためのペデスタル制御サブルーチンを実行してもよい(ステップS505)。
【0139】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、EUV光252の生成を中止するか否かを判定してもよい(ステップS506)。この判定は、たとえばステップS505に示されるペデスタル制御サブルーチン内で実行されてもよい。
【0140】
EUV光252の生成を継続する場合(ステップS506;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ステップS502へリターンし、以降の動作をくり返してもよい。一方、EUV光252の生成を中止する場合(ステップS506;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、そのまま動作を終了してもよい。
【0141】
以上のような動作により、目標EUV光エネルギーEeuvtに応じてメインパルスレーザ光31のペデスタル比率Rを調節することが可能となる。その結果、メインパルスレーザ光31の出力エネルギーを大幅に変更することなく、目標EUV光エネルギーEeuvtを達成することが可能となる。
【0142】
6.4.1.2 ペデスタル制御サブルーチン
図46に、図45のステップS505に示されるペデスタル制御サブルーチンの一例を示す。図47に、図46の説明で用いられるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【0143】
図46に示されるように、ペデスタル制御サブルーチンでは、ペデスタル調節コントローラ56は、検出されたEUV光エネルギーEeuvと目標EUV光エネルギーEeuvtとの差ΔE(=Eeuv−Eeuvt)を算出してもよい(ステップS511)。つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、算出された差ΔEに相当する、ペデスタル比率Rの変化量ΔRを算出してもよい(ステップS512)。差ΔEから変化量ΔRを算出するために、後述の図47に示されるペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係の取得において用いられるメインパルスレーザ光全体のエネルギーEtとペデスタルのエネルギー比率Rnとの関係が用いられてもよい。インパルスレーザ光全体のエネルギーEtとペデスタルのエネルギー比率Rnとの関係は、図7もしくは図9で説明したペデスタル調節サブルーチンを実行することによって得られてもよい。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、現在のペデスタル比率Rと算出された変化量ΔRとから、修正されたペデスタル比率R(=R+ΔR)を算出してもよい(ステップS513)。
【0144】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、算出されたペデスタル比率Rが、ペデスタル比率Rの計測範囲において変換効率CEの単調減少領域に含まれるか否かを判定してもよい(ステップS514)。変換効率CEの単調減少領域とは、図47に示されるように、ペデスタル比率Rの増加に対して変換効率CEが比較的単調に減少する領域でもよい。上述の判定は、ペデスタル比率Rの値に基づいて行なわれてもよい。このとき、図47に示されるようなペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係が前もって得られているのが好ましい。この関係は、図7もしくは図9で説明されたペデスタル調節サブルーチンを実行することによって得られてもよい。あるいは、事前に実験や装置調整時に得られたペデスタル比率Rと変換効率CEとの関係を記憶しておき、それを参照することによって得られてもよい。
【0145】
ペデスタル比率Rが変換効率CEの単調減少領域に含まれる場合(ステップS514;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、所望のペデスタル比率Rを達成するためのペデスタル調節機構320の制御値Pを算出してもよい(ステップS515)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図45に示される動作へリターンしてもよい。一方、ペデスタル比率Rが変換効率CEの単調減少領域に含まれない場合(ステップS514;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルを制御することによるEUV光252のエネルギー制御の停止をEUV光生成制御部5Aに要求してもよい(ステップS516)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図45に示される動作へリターンしてもよい。
【0146】
6.4.2 ペデスタルエネルギーに基づく場合
つぎに、ペデスタルのエネルギーEpに基づいた動作を、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0147】
6.4.2.1 ペデスタル制御フロー
図48は、実施の形態2の変形例によるペデスタル調節コントローラ56の動作を概略的に示すフローチャートである。
【0148】
図48に示されるように、ペデスタルのエネルギーEpに基づいたペデスタル制御フローは、図45を参照に説明したペデスタル制御フローと同様の動作が行なわれるステップが多い。をのため、図45に示したペデスタル制御フローにおける動作とは異なる動作のみを説明する。ステップS601〜ステップS603は、図45に示すステップS501〜ステップS503と同様でよい。ステップS604において、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルのエネルギーEpを計測するためのペデスタルエネルギー計測サブルーチン2を実行してもよい。ペデスタルエネルギー計測サブルーチン2は、図22で説明したペデスタルエネルギー計測サブルーチン2と同様でもよい。
【0149】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、メインパルスレーザ光31のペデスタルが所望のエネルギーEpとなるようにペデスタル調節機構320を調節するためのペデスタル制御サブルーチンを実行してもよい(ステップS605)。
【0150】
ステップS606は、図45のステップS506と同様でよい。但し、ステップS606において、判定がNOの場合、ペデスタル調節コントローラ56は、S602へリターンして、以降の動作を繰り返してもよい。
【0151】
以上のような動作により、目標EUV光エネルギーEeuvtに応じてメインパルスレーザ光31におけるペデスタルのエネルギーEpを調節することが可能となる。その結果、メインパルスレーザ光31の出力エネルギーを大幅に変更することなく、目標EUV光エネルギーEeuvtを達成することが可能となる。
【0152】
6.4.2.2 ペデスタル制御サブルーチン
図49に、図48のステップS605に示されるペデスタル制御サブルーチンの一例を示す。図50に、図49の説明で用いられるペデスタルエネルギーEpと変換効率CEとの関係の一例を示す。
【0153】
図49に示されるように、ペデスタル制御サブルーチンでは、ペデスタル調節コントローラ56は、検出されたEUV光エネルギーEeuvと目標EUV光エネルギーEeuvtとの差ΔE(=Eeuv−Eeuvt)を算出してもよい(ステップS611)。つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、算出された差ΔEに相当する、ペデスタルのエネルギーEpの変化量ΔEpを算出してもよい(ステップS612)。つづいて、ペデスタル調節コントローラ56は、現在のペデスタルのエネルギーEpと算出された変化量ΔEpとから、修正されたペデスタルのエネルギーEp(=Ep+ΔEp)を算出してもよい(ステップS613)。
【0154】
つぎに、ペデスタル調節コントローラ56は、算出されたエネルギーEpが、エネルギーEpの計測範囲において変換効率CEの単調減少領域に含まれるか否かを判定してもよい(ステップS614)。変換効率CEの単調減少領域とは、図50に示されるように、ペデスタルのエネルギーEpの増加に対して変換効率CEが比較的単調に減少する領域でもよい。上述の判定は、エネルギーEpの値に基づいて行なわれてもよい。このとき、図50に示されるようなエネルギーEpと変換効率CEとの関係が前もって得られているのが好ましい。この関係は、図17もしくは図19で説明されたペデスタル調節サブルーチンを実行することによって得られてもよい。あるいは、事前に実験や装置調整時に得られたペデスタルエネルギーEpと変換効率CEとの関係を記憶しておき、それを参照することによって得られてもよい。
【0155】
エネルギーEpが変換効率CEの単調減少領域に含まれる場合(ステップS614;YES)、ペデスタル調節コントローラ56は、所望のエネルギーEpを達成するためのペデスタル調節機構320の制御値Pを算出してもよい(ステップS615)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図48に示される動作へリターンしてもよい。一方、ペデスタルのエネルギーEpが変換効率CEの単調減少領域に含まれない場合(ステップS614;NO)、ペデスタル調節コントローラ56は、ペデスタルを制御することによるEUV光252のエネルギー制御の停止をEUV光生成制御部5Aに要求してもよい(ステップS616)。その後、ペデスタル調節コントローラ56は、図48に示される動作へリターンしてもよい。
【0156】
7.補足
つぎに、上述した実施の形態にかかる補足説明を、以下に記す。
【0157】
7.1 拡散ターゲット
上述において、拡散ターゲットとは、ターゲット物質の原子、分子、クラスター、微小液滴の何れかを含む粒子が霧またはガス状に拡散した状態のターゲットでもよい。拡散ターゲットには、一部にプラズマ状態となったターゲット物質が含まれてもよい。
【0158】
図51は、ターゲット27にプリパルスレーザ光41を照射した際の様子を示す。図51に示されるように、拡散ターゲット271は、たとえばターゲット27にプリパルスレーザ光41を照射することで生成され得る。球状(または液滴状)のターゲット27にプリパルスレーザ光41を照射することで、トーラス状または円盤状に拡散した拡散ターゲット271が生成され得る。
【0159】
7.1.1 拡散ターゲットの生成原理
拡散ターゲットの生成原理を、図52〜図54を参照に詳細に説明する。図52は、ターゲット27にプリパルスレーザ光41を照射した際の状態をプリパルスレーザ光41の進行方向AXpに対して垂直な方向から見た様子を示す。図53は、プリパルスレーザ光41の照射によって生成された拡散ターゲット271にメインパルスレーザ光31を照射した際の状態をメインパルスレーザ光31の進行方向AXmに対して垂直な方向から見た様子を示す。図54は、プリパルスレーザ光41の照射によって生成された拡散ターゲット271にメインパルスレーザ光31を照射した際の状態をメインパルスレーザ光31の進行方向AXmから見た様子を示す。
【0160】
図52に示されるように、ターゲット27にプリパルスレーザ光41を照射すると、ターゲット27の表面におけるプリパルスレーザ光41の照射側には、レーザアブレーション作用によるプラズマL1が生成され得る。プラズマL1が拡散する際に、その反作用として発生した衝撃波S1がターゲット27の内部を伝播し得る。その結果、ターゲット27が破裂され、または分裂し、拡散ターゲット271が生成され得る。
【0161】
図53に示されるように、拡散ターゲット271は、通常、プリパルスレーザ光41の進行方向と同じ方向D1の成分を持って移動し得る。メインパルスレーザ光31は、拡散ターゲット271が移動、拡散する範囲を含む空間を通過するように、集光されてもよい。たとえば、図54に示されるように、メインパルスレーザ光31のプラズマ生成領域25における直径Dmは、トーラス状または円盤状に広がった拡散ターゲット271の拡散範囲Ddよりも大きくてもよい。
【0162】
7.2 メインパルスレーザ光の遅延時間と変換効率の関係
また、図67に、ターゲット27にプリパルスレーザ光41を照射してからメインパルスレーザ光31を照射するまでの時間差と変換効率との関係を示す。図67は、プリパルスレーザ光41の波長を1.06μmとし、パルス幅を5nsとし、フルーエンスを490mJ/cmとした場合を示す。また、図67は、メインパルスレーザ装置3AをCOレーザとし、メインパルスレーザ光31のパルス幅を20nsとし、光強度を6.0×10W/cmとした場合を示す。
【0163】
図67において、ラインD12はターゲット27の直径を12μmとした場合を示し、ラインD20はターゲット27の直径を20μmとした場合を示し、ラインD30はターゲット27の直径を30μmとした場合を示し、ラインD40はターゲット27の直径を40μmとした場合を示す。
【0164】
図67から分かるように、ターゲット27の直径を12μmとした場合、プリパルスレーザ光41に対するメインパルスレーザ光31の遅延時間は、0.5〜2.0μsであることが好ましい。より好ましくは、遅延時間は、0.6〜1.5μsでもよい。さらにより好ましくは、遅延時間は、0.7〜1.0μsでもよい。
【0165】
ターゲット27の直径を20μmとした場合、プリパルスレーザ光41に対するメインパルスレーザ光31の遅延時間は、0.5〜2.5μsであることが好ましい。より好ましくは、遅延時間は、1.0〜2.0μsでもよい。さらにより好ましくは、遅延時間は、1.3μs程度でもよい。
【0166】
ターゲット27の直径を30μmとした場合、プリパルスレーザ光41に対するメインパルスレーザ光31の遅延時間は、0.5〜4.0μsであることが好ましい。より好ましくは、遅延時間は、1.5〜3.5μsでもよい。さらにより好ましくは、遅延時間は、2.0〜3.0μsでもよい。
【0167】
ターゲット27の直径を40μmとした場合、プリパルスレーザ光41に対するメインパルスレーザ光31の遅延時間は、0.5〜6.0μsであることが好ましい。より好ましくは、遅延時間は、1.0〜5.0μsでもよい。さらにより好ましくは、遅延時間は、2.0〜4.0μsでもよい。
【0168】
7.3 プリパルスレーザ光のフルーエンスと拡散ターゲットの形状との関係
つぎに、プリパルスレーザ光41のフルーエンスと拡散ターゲット271の形状との関係を、図面を参照に詳細に説明する。
【0169】
図55〜図58は、プリパルスレーザ光41のフルーエンスを480mJ/cmとした場合に観測された拡散ターゲット271およびプラズマ272の形状を示す。なお、図55は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を0μsとした場合を示す。図56は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を0.5μsとした場合を示す。図57は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を1.0μsとした場合を示す。図58は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を1.5μsとした場合を示す。
【0170】
図59〜図62は、プリパルスレーザ光41のフルーエンスを96mJ/cmとした場合に観測された拡散ターゲット271およびプラズマ272の形状を示す。なお、図59は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を0μsとした場合を示す。図60は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を0.5μsとした場合を示す。図61は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を1.0μsとした場合を示す。図62は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を1.5μsとした場合を示す。
【0171】
図63〜図66は、プリパルスレーザ光41のフルーエンスを19.5mJ/cmとした場合に観測された拡散ターゲット271およびプラズマ272の形状を示す。なお、図63は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を0μsとした場合を示す。図64は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を0.5μsとした場合を示す。図65は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を1.0μsとした場合を示す。図66は、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間を1.5μsとした場合を示す。
【0172】
また、図55〜図66は、ターゲット物質にSnが用いられ、ターゲット27の直径を20μmとし、プリパルスレーザ装置40には、YAGレーザが用いられ、プリパルスレーザ光41のパルス幅を5nsとした場合を示す。また、各図において、プリパルスレーザ光41は、図面中、右側からターゲット27へ照射された。
【0173】
図55、図59および図63に示されるように、プリパルスレーザ光41の照射からの経過時間が0μs、すなわちプリパルスレーザ光41をターゲット27に照射した時点では、拡散ターゲット271は観測されず、ターゲット物質のプラズマ272のみが観測された。
【0174】
図56〜図58に示されるように、プリパルスレーザ光41のフルーエンスを480mJ/cmとした場合、プリパルスレーザ光41の照射から0.5〜1.5μsの経過時間のいずれにおいても、トーラス状に広がった拡散ターゲット271が観測された。経過時間が1.5μs以上である場合、メインパルスレーザ光31の集光径Dmを300μm程度以上とすれば、拡散ターゲットの多くにメインパルスレーザ光31を照射できることがわかる。
【0175】
図60〜図62、および、図64〜図66に示されるように、プリパルスレーザ光41のフルーエンスを96mJ/cmとした場合および19.5mJ/cmとした場合のいずれにおいても、プリパルスレーザ光41の照射から0.5〜1.5μsの経過時間のいずれにおいても、円盤状に広がった拡散ターゲット271が観測された。また、経過時間が長くなるほど、拡散ターゲット271の拡散範囲は大きくなることもわかる。さらに、プリパルスレーザ光41のフルーエンスを96mJ/cmとした場合の方がプリパルスレーザ光41のフルーエンスを19.5mJ/cmとした場合に比べて、拡散ターゲット271の拡散範囲が大きくなった。
【0176】
また、図55〜図66で示されたケースのいずれにおいても、メインパルスレーザ光31を照射することで、EUV光252の生成は可能であった。
【0177】
7.4 光シャッタ
つぎに、上述した実施の形態における光シャッタについて、具体例を挙げて説明する。
【0178】
7.4.1 EOポッケルスセルと偏光子との組合せ
図68は、2つの偏光子とEOポッケルスセルとを組み合わせて構成された光シャッタの一例を示す。EOポッケルスセルは、通常、数nsの応答性を有しているため、高速スイッチングが要求されるレーザ装置の光シャッタに適していると考えられる。
【0179】
図68において、偏光子501は、たとえば入射した光のうち、Y方向の偏光成分を透過させ、X方向の偏光成分を反射または吸収して遮断してもよい。一方、偏光子502は、たとえば入射した光のうち、X方向の偏光成分を透過させ、Y方向の偏光成分を反射または吸収して遮断してもよい。このように、偏光子501と偏光子502とでは、透過させる光の偏光成分が異なっていてもよい。本例では、偏光子501を透過する光の偏光方向と偏光子502を透過する光の偏光方向とが90°異なっていてもよい。
【0180】
EOポッケルスセル503には、ペデスタル調節コントローラ56からの制御のもと、高電圧電源504から高電圧パルスが印加されてもよい。EOポッケルスセル503は、たとえば高電圧パルスが印加されている期間、入射した光の偏光方向を変更してもよい。本例では、入射光の偏光方向を90°変更する電圧値の高電圧パルスが、高電圧電源504からEOポッケルスセル503に印加されてもよい。
【0181】
以上のような構成の光シャッタ321にマスタオシレータ310から出力されたY方向の直線偏光成分を多く含むパルスレーザ光L1が入射する場合、パルスレーザ光L1は、まず、偏光子501に入射してもよい。偏光子501は、入射したパルスレーザ光L1のうち、Y方向の偏光成分を透過させてもよい。Y方向の直線偏光成分からなるパルスレーザ光を、以下、Y直線偏光パルスレーザ光という。偏光子501を透過したY直線偏光パルスレーザ光は、EOポッケルスセル503に入射してもよい。
【0182】
EOポッケルスセル503に高電圧パルスが印加されていない場合、EOポッケルスセル503に入射したY直線偏光パルスレーザ光は、Y方向の直線偏光のまま、EOポッケルスセル503から出力され得る。出力されたY直線偏光パルスレーザ光は、偏光子502に入射してもよい。偏光子502は、入射したY直線偏光パルスレーザ光を反射または吸収し得る。その結果、パルスレーザ光L1が、光シャッタ321によって遮断され得る。
【0183】
一方、EOポッケルスセル503に高電圧パルスが印加されている場合、EOポッケルスセル503に入射したY直線偏光パルスレーザ光の偏光方向は、90°変更され得る。その結果、EOポッケルスセル503からは、X方向の直線偏光のパルスレーザ光が出力され得る。X方向の直線偏光からなるパルスレーザ光を、以下、X直線偏光パルスレーザ光という。このX直線偏光パルスレーザ光は、偏光子502に入射してもよい。偏光子502は、入射したX直線偏光パルスレーザ光を透過させ得る。その結果、パルスレーザ光L1が、光シャッタ321から出力され得る。
【0184】
図69に示されるように、光シャッタ321には、たとえば20ns程度のパルス幅を持つパルスレーザ光L1が入射してもよい。これに対し、図70に示されるように、EOポッケルスセル503には、パルスレーザ光L1の時間ジッタをカバーできる程度のパルス幅を持つ高電圧パルスG1が印加されるのが好ましい。たとえばパルスレーザ光L1のパルス幅を20nsとして時間ジッタを10nsとする場合、高電圧パルスG1のパルス幅は、40ns程度でもよい。
【0185】
また、高電圧パルスG1は、パルスレーザ光L1からペデスタルLpが生成される部分における電圧が低く、その他の部分における電圧が高い、階段状の形状を有してもよい。これにより、図71に示されるように、パルスレーザ光L1の波形を、ペデスタルLpとピーク部Lmとを含む波形に変換することが可能となる。
【0186】
なお、本例は、偏光子501を透過したレーザ光の偏光方向と偏光子502を透過したレーザ光の偏光方向とを90°変えた構成である。そのため、EOポッケルスセル503に高電圧パルスが印加されている期間、光シャッタ321がパルスレーザ光L1およびL2を透過させ得る。しかし、この例に限定されるものではない。たとえば偏光子501を透過するレーザ光の偏光方向と偏光子502を透過するレーザ光の偏光方向とが同じ方向であってもよい。その場合、EOポッケルスセル503に高電圧パルスが印加されていない期間、光シャッタ321がパルスレーザ光L1を透過させ得る。
【0187】
7.4.2 光シャッタのバリエーション
つぎに、光シャッタ321の変形例を、以下に例を挙げて説明する。
【0188】
7.4.2.1 変形例1
図72は、変形例1による光シャッタの構成を概略的に示す。光シャッタ321−1では、透過型の偏光子501および502の代わりに、たとえば反射型の偏光子511および512が用いられてもよい。偏光子511および512には、それぞれATFRミラー等の偏光子が用いられてもよい。このような構成によっても、図68に示す光シャッタ321と同様の機能を実現することが可能である。なお、図72では、高電圧電源504が省略されている。
【0189】
7.4.2.2 変形例2
図73は、変形例2による光シャッタの構成を概略的に示す。図73に示すように、光シャッタ321−2では、EOポッケルスセル503の入力側に、4つの反射型の偏光子521〜524が配置されてもよい。また、光シャッタ321−2では、EOポッケルスセル503の出力側に、4つの反射型の偏光子525〜528が配置されてもよい。偏光子521〜528は、それぞれATFRミラー等の偏光子で構成されてもよい。また、EOポッケルスセル503に対して上流側に配置された偏光子521〜524は、入射するパルスレーザ光L1のうち、たとえばY方向の偏光成分のみを反射し、他の偏光成分を吸収してもよい。一方、EOポッケルスセル503に対して下流側に配置された偏光子525〜528は、入射するパルスレーザ光L1のうち、たとえばX方向の偏光成分のみを反射し、他の偏光成分を吸収してもよい。このように、EOポッケルスセル503の入出力側それぞれに、同一の偏光成分のみを反射し、他の偏光成分を吸収する偏光子が複数枚設けられた場合、他の偏光成分の総吸収率を高め、特定の偏光成分の純度を高くすることが可能となる。
【0190】
7.4.2.3 変形例3
図74は、変形例3による光シャッタの構成を概略的に示す。図74に示すように、光シャッタ321−3は、2つのEOポッケルスセル503aおよび503bを備えてもよい。EOポッケルスセル503aおよび503bは、EOポッケルスセル503と同様でもよい。EOポッケルスセル503aは、たとえばEOポッケルスセル503bよりも上流側に配置されてもよい。EOポッケルスセル503aの入力側に配置された反射型の偏光子531および532と、EOポッケルスセル503bの出力側に配置された反射型の偏光子539および540とは、入射するパルスレーザ光L1のうち、それぞれ同一の偏光成分(たとえばY方向の偏光成分)を反射し、他の偏光成分を吸収してもよい。また、EOポッケルスセル503aとEOポッケルスセル503bとの間の光路上には、反射型の偏光子534〜537が配置されてもよい。偏光子534〜537は、入射するパルスレーザ光L1のうち、同一の偏光成分(たとえばZ方向の偏光成分)を反射し、他の偏光成分を吸収してもよい。上流側のEOポッケルスセル503aの出力側および下流側のEOポッケルスセル503bの入力側には、それぞれ高反射ミラー533および538が配置されてもよい。このように、複数のポッケルスセル503aおよび503bが用いられる場合、不要な偏光成分の総吸収率を高め、所望の特定の偏光成分の純度を高くすることが可能となる。
【0191】
7.4.2.4 変形例4
図75は、変形例4による光シャッタの構成を概略的に示す。図75に示すように、光シャッタ321−4では、図72に示す光シャッタ321−1と同様の構成において、偏光子511および512に、それぞれ冷却装置551が設けられてもよい。冷却装置551から供給された冷却媒体は、流路552を通って偏光子511および512の内部流路にそれぞれ流れ込んでもよい。偏光子511および512には、それぞれ反射面の裏側に対して冷却媒体を効率的かつバランスよく流すための内部流路が設けられてもよい。偏光子511および512の反射面を効率的かつバランスよく冷却することで、光学面の熱変形を抑えることが可能となる。その結果、光シャッタ321−4で反射されたパルスレーザ光L1の反射方向および波面を安定させることが可能となる。なお、EOポッケルスセル503にも冷却装置を接続して、EOポッケルスセル503の過熱を抑制するように構成されてもよい。
【0192】
7.5 可飽和吸収装置
つぎに、上述した実施の形態における可飽和吸収装置について、具体例を挙げて説明する。
【0193】
7.5.1 可飽和吸収ガスの濃度の調節
まず、可飽和吸収ガスの濃度を調節可能な可飽和吸収装置について、図面を参照して説明する。図76は、可飽和吸収ガスの濃度を調節可能な可飽和吸収装置322Aの構成を概略的に示す。
【0194】
図76に示されるように、可飽和吸収装置322Aは、可飽和吸収ガスセル601と、熱交換器622と、ガス温度コントローラ620と、可飽和吸収ガスセルコントローラ610とを備えてもよい。可飽和吸収ガスセルコントローラ610は、ペデスタル調節コントローラ56からの信号にしたがって、可飽和吸収装置322Aの各部を制御してもよい。
【0195】
可飽和吸収ガスセル601は、パルスレーザ光L1が透過するウィンドウ602および603を備えてもよい。可飽和吸収ガスセル601の内部は、ガス配管621を介して熱交換器622と連通してもよい。ガス配管621には、ガス配管621内の可飽和吸収ガスを可飽和吸収ガスセル601と熱交換器622との間で循環させるためのガスポンプ623が設けられてもよい。また、ガス配管621には、その内部を循環する可飽和吸収ガスの温度を検出するための温度センサ624が設けられてもよい。温度センサ624は、ガス温度コントローラ620に接続されてもよい。ガス温度コントローラ620は、可飽和吸収ガスセルコントローラ610からの信号に基づいて、熱交換器622を駆動させることで、循環する可飽和吸収ガスの温度を制御してもよい。
【0196】
可飽和吸収ガスセルコントローラ610は、ガスポンプ623に接続されてもよい。可飽和吸収ガスセルコントローラ610は、ガスポンプ623の回転数を制御することで、ガス配管621内を循環する可飽和吸収ガスの流速を調節してもよい。
【0197】
ガス配管621には、バルブ633および632を介して、SFガスボンベ631が接続されてもよい。また、ガス配管621には、バルブ633およびバルブ635を介して、バッファガスボンベ634が接続されてもよい。バッファガスはNまたはHeでもよい。さらに、ガス配管621には、バルブ636を介して排気ポンプ637が接続されてもよい。バルブ632、633、635および636は、可飽和吸収ガスセルコントローラ610に接続されてもよい。排気ポンプ637は、可飽和吸収ガスセルコントローラ610に接続されてもよい。可飽和吸収ガスコントローラ610は、適宜、バルブ632、633、635および636の開度と、排気ポンプ637の回転数を調節することで、ガス配管621内のガス圧、および、可飽和吸収ガスの成分濃度を調節してもよい。
【0198】
7.5.2 可飽和吸収ガス中を透過する光路長の調節
つぎに、可飽和吸収ガス中を透過するレーザ光の光路長を調節可能な可飽和吸収装置について、図面を参照して詳細に説明する。図77は、可飽和吸収ガス中を透過するレーザ光の光路長を調節可能な可飽和吸収装置322Bの構成を概略的に示す。
【0199】
図77に示されるように、可飽和吸収装置322Bは、図76に示す可飽和吸収装置322Aと同様の構成を備えてもよい。ただし、可飽和吸収装置322Bは、可飽和吸収ガスセル601の代わりに、可飽和吸収ガスセル701を備えてもよい。
【0200】
可飽和吸収ガスセル701は、パルスレーザ光L1が透過するウィンドウ702を備えてもよい。可飽和吸収ガスセル701の内部には、パルスレーザ光L1の光路を折り返す2つの高反射ミラー711および712が設けられてもよい。高反射ミラー711および712は、ウィンドウ702を介して入射したパルスレーザ光L1が、高反射ミラー711および712で反射されて、ウィンドウ702を介して出力されるように配置されてもよい。
【0201】
高反射ミラー711および712は、移動ステージ713上に固定されてもよい。移動ステージ713は、可飽和吸収ガスセル701内に設けられたレール714に沿って移動可能でもよい。レール714は、パルスレーザ光L1の入出力方向と平行な方向に延在してもよい。
【0202】
また、可飽和吸収ガスセル701には、移動ステージ713をレール714に沿って移動させるための移動機構715が設けられてもよい。移動機構715は、ドライバ720に接続されてもよい。ペデスタル調節コントローラ56は、ドライバ720を介して移動機構715を制御して移動ステージ713を移動させることで、可飽和吸収ガスセル701中のパルスレーザ光L1の光路長を調節してもよい。
【0203】
7.6 再生増幅器
図78に、再生増幅器430の一例を示す。再生増幅器430は、偏光ビームスプリッタ431と、COガス増幅部432と、EOポッケルスセル433および436と、λ/4板434と、共振器ミラー435および437と、を備えてもよい。
【0204】
偏光ビームスプリッタ431は、たとえば薄膜ポラライザー(Thin−Film Polarizer)を用いて構成されてもよい。偏光ビームスプリッタ431は、入射するレーザ光のうち、たとえばS偏光成分を反射し、P偏光成分を透過させ得る。再生増幅器430に、偏光ビームスプリッタ431に対してS偏光成分を多く含むパルスレーザ光L1が入射すると、パルスレーザ光L1、まず、偏光ビームスプリッタ431によって反射され得る。これにより、パルスレーザ光L1が、2つの共振器ミラー435および437によって形成される共振器内に取り込まれ得る。共振器内取り込まれたパルスレーザ光L1は、COガス増幅部432を通過する際に増幅されてもよい。また、パルスレーザ光L1は、電圧が印加されていないEOポッケルスセル433を通過した後、λ/4板434を透過し、共振器ミラー435で反射されて再びλ/4板434を透過してもよい。これにより、パルスレーザ光L1の偏光方向が90°変更され得る。
【0205】
パルスレーザ光L1は、その後、再度、電圧が印加されていないEOポッケルスセル433を通過してもよい。EOポッケルスセル433には、この通過後のタイミングで所定の電圧が印加されてもよい。電圧が印加されたEOポッケルスセル433は、通過するレーザ光にλ/4の位相シフトを与え得る。そのため、EOポッケルスセル433に所定の電圧が印加されている期間、偏光ビームスプリッタ431に入射する際のパルスレーザ光L1は、偏光ビームスプリッタ431に対してP偏光成分を主に含むレーザ光となり得る。それにより、パルスレーザ光L1が共振器内に閉じ込められ得る。
【0206】
その後、パルスレーザ光L1を出力するタイミングで、EOポッケルスセル436に所定の電圧が印加されてもよい。共振器内を往復するパルスレーザ光L1は、偏光ビームスプリッタ431を透過後、EOポッケルスセル436を通過する際にλ/4の位相シフトを受け得る。それにより、直線偏光のパルスレーザ光L1が円偏光のパルスレーザ光L1に変換され得る。その後、パルスレーザ光L1は、共振器ミラー437で反射され、再度、EOポッケルスセル436を通過してもよい。その結果、円偏光のパルスレーザ光L1が直線偏光のパルスレーザ光L1に変換され得る。このパルスレーザ光L1は、偏光ビームスプリッタ431に対してS偏光成分を主に含み、偏光ビームスプリッタ431によって反射され、パルスレーザ光L2として再生増幅器430から出力され得る。
【0207】
以上のような動作において、EOポッケルスセル436に電圧を印加するタイミングや印加される電圧パルスの波形を調節することで、ペデスタルを含むパルスレーザ光L2を出力させることも可能である。
【0208】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施の形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0209】
本明細書および添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、限定的でない用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」または「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」または「1もしくはそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0210】
1 EUV光生成装置
11、11A EUV光生成システム
2 チャンバ
3、3A、3B、3C、3D、3E、3F レーザ装置
301 レーザコントローラ
310、410 マスタオシレータ
311 マスタオシレータ
312、316 高反射ミラー
313 増幅部
314 偏光ビームスプリッタ
315 EOポッケルスセル
317 高反射ミラー
411、412 半導体レーザ
413 光路調節器
320 ペデスタル調節機構
321 光シャッタ
322 可飽和吸収装置
331〜333 増幅器
430 再生増幅器
4 ターゲットセンサ
5、5A EUV光生成制御部
51 EUV光生成位置コントローラ
52 基準クロック生成器
53 ターゲットコントローラ
54 ターゲット生成ドライバ
55 遅延回路
56 ペデスタル調節コントローラ
6 露光装置
61 露光装置コントローラ
21 ウィンドウ
22、22A レーザ光集光光学系
71 レーザ光集光ミラー
71a ミラーホルダ
72 高反射ミラー
72a ミラーホルダ
73 移動プレート
74 プレート移動機構
23 EUV集光ミラー
23a 保持部
24 貫通孔
25 プラズマ生成領域
26 ドロップレット生成器
27 ターゲット
271 拡散ターゲット
272 プラズマ
28 ターゲット回収部
29 接続部
291 壁
292 中間焦点(IF)
31 メインパルスレーザ光
31p ペデスタル
31m ピーク部
340 ビームデリバリーシステム
341 高反射ミラー
342 ダイクロイックミラー
350 波形検出器
351 ビームスプリッタ
352 集光レンズ
353 波形モニタ
40 プリパルスレーザ装置
41 プリパルスレーザ光
401、402 高反射ミラー
80 間仕切り
90 エネルギーセンサ
100 ビームダンプ
101 支柱
G1 高電圧パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質に第1レーザ光を照射する第1レーザ装置と、
前記第1レーザ光の照射によって拡散した前記ターゲット物質に第2レーザ光を照射して極端紫外光を生成する第2レーザ装置と、
を備える極端紫外光生成装置であって、
前記第1レーザ光の照射後、前記第2レーザ光の照射前に、該第2レーザ光よりもエネルギーの低い第3レーザ光を照射する第3レーザ装置を備える、
極端紫外光生成装置。
【請求項2】
前記第3レーザ装置は、前記第2レーザ装置を兼用し、
前記第3レーザ光は、前記第2レーザ光のペデスタルである、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項3】
前記第2レーザ光の前記ペデスタルのエネルギーを調節するペデスタル調節機構を備える、請求項2記載の極端紫外光生成装置。
【請求項4】
前記ペデスタル調節機構は、前記第2レーザ光のエネルギーに対する前記ペデスタルのエネルギー比率を調節する、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項5】
前記ペデスタル調節機構は、前記エネルギー比率が1〜10%となるように前記ペデスタルを調節する、請求項4記載の極端紫外光生成装置。
【請求項6】
前記ペデスタル調節機構は、前記ペデスタルのエネルギーが1〜10mJとなるように前記ペデスタルを調節する、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項7】
前記ペデスタル調節機構は、印加電圧の電圧値に応じて透過率が変化する1つ以上の光シャッタを含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項8】
前記ペデスタル調節機構は、可飽和吸収ガスを含む1つ以上の可飽和吸収装置を含む、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項9】
前記第3レーザ光のエネルギーを調節するエネルギー調節機構を備える、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項10】
前記ペデスタル調節機構は、印加電圧の電圧値に応じてレーザ光の偏光方向を変化させる1つ以上の光学素子と、該1つ以上の光学素子を透過したレーザ光の所定の偏光成分を反射し、他の偏光成分を透過する偏光光学素子とを含む、
請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項11】
前記ペデスタルを含む前記第2レーザ光のパルス波形を検出する波形検出器と、
前記波形検出器で検出されたパルス波形に基づいて前記ペデスタル調節機構を制御する制御部と、
をさらに備える、請求項3記載の極端紫外光生成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記波形検出器で検出されたパルス波形から、前記第2レーザ光に対する前記ペデスタルのエネルギー比率または前記ペデスタルのエネルギーを算出し、算出された前記エネルギー比率または前記ペデスタルのエネルギーに基づいて、前記ペデスタル調節機構を制御する、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項13】
前記第1レーザ光の照射によって広がった前記ターゲット物質に前記ペデスタルを含む前記第2レーザ光を照射することで生成されたEUV光のエネルギーを検出するエネルギー検出器をさらに備え、
前記制御部は、前記エネルギー検出器で検出された前記EUV光のエネルギーに基づい
て前記ペデスタル調節機構を制御する、請求項11記載の極端紫外光生成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記波形検出器で検出されたパルス波形と、前記エネルギー検出器で検出されたエネルギーとから、前記EUV光へのエネルギー変換効率を算出し、算出された該エネルギー変換効率に基づいて前記ペデスタル調節機構を制御する、請求項13記載の極端紫外光生成装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記ペデスタル調節機構を制御することで、前記ペデスタルのエネルギー比率または前記ペデスタルのエネルギーをパラメータとする第1範囲内での複数点の前記ペデスタルのエネルギー比率または前記ペデスタルのエネルギーに対応した前記EUV光へのエネルギー変換効率を算出し、算出された前記エネルギー変換効率が所定のエネルギー変換効率以上となる第2範囲内に前記ペデスタルのエネルギー比率または前記ペデスタルのエネルギーが入るように前記ペデスタル調節機構を調節する、請求項13記載の極端紫外光生成装置。
【請求項16】
ターゲット物質に第1レーザ光を照射し、該第1レーザ光の照射によって拡散した前記ターゲット物質に第2レーザ光を照射する極端紫外光生成方法であって、
前記第1レーザ光の照射後、前記第2レーザ光の照射前に、該第2レーザ光よりもエネルギーの小さい第3レーザ光を照射する、極端紫外光生成方法。
【請求項17】
前記第3レーザ光は、前記第2レーザ光のペデスタルである、請求項16記載の極端紫外光生成方法。
【請求項18】
前記第2レーザ光の前記ペデスタルを調節する、請求項17記載の極端紫外光生成方法。
【請求項19】
前記ペデスタルを含む前記第2レーザ光のパルス波形を検出し、
検出された前記パルス波形に基づいて前記ペデスタルのエネルギーを調節する、
請求項18記載の極端紫外光生成方法。
【請求項20】
前記第1レーザ光の照射によって広がった前記ターゲット物質に前記ペデスタルを含む前記第2レーザ光を照射することで生成されたEUV光のエネルギーを検出し、
検出された前記EUV光のエネルギーに基づいて前記ペデスタルのエネルギーを調節する、
請求項19記載の極端紫外光生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【公開番号】特開2013−93308(P2013−93308A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135472(P2012−135472)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】