説明

楽器玩具

【課題】 腕を揺動させる要素を少なくすることによってコストダウンを図った楽器玩具を提供する。
【解決手段】 2つの腕のうち少なくとも一方の腕を人形体の所定の回動軸芯を中心に揺動自在に配設するとともに、前記2つの腕の双方の先端のそれぞれに打楽器の半部を配設し、前記所定の回動軸芯を中心に揺動する前記腕を、一方側に揺動させることによって前記半部の双方を互いに衝突させて打音を発生させると共に、他方側に揺動させることによって前記半部同士を離反させて待機状態にする楽器玩具において、前記所定の回動軸芯を、前記人形体を使用状態に置いた際における鉛直軸に対して45度未満の角度をもって傾倒させる一方で、前記人形体、または前記所定の回動軸芯を中心に揺動する前記腕の一方に電磁石を構成するコイルを設け、他方に該コイルが励磁された際に該コイルに対して磁力によって吸引または反発する磁力作用体を設けた。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、揺動する腕の先端に打楽器の半部、例えばシンバルの一方と他方とを配設し、腕を揺動させることによってシンバルを衝突させて、音を発生させる楽器玩具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記楽器玩具として、例えば、特開平8ー141219号で開示されているものがある。この楽器玩具では、人形体に腕を水平方向に揺動自在にそれぞれ配設するとともに、腕の基端に2つの永久磁石を配設し、かつそれらの永久磁石の極性を互いに異なるように並べて配置させる一方、人形体に電磁石を構成するコイル配設し、かつ該コイルを前記2つの永久磁石に対向させて配置させ、さらに前記永久磁石に関連させて前記本体に磁性体を配設し、前記コイルに電流を流していない状態で、前記永久磁石を前記磁性体に吸引させて、前記腕を一方に側に揺動させ、前記コイルに電流を流すことによって該コイルを励磁し、それによって前記永久磁石を吸引させて前記腕を他方側に揺動させるようにしている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
上記楽器玩具では、腕を揺動させる要素として、2つの永久磁石,磁性体および電磁石の4つの部品を必要としている。
【0004】
そこで、本考案の目的は、腕を揺動させる要素を少なくすることによってコストダウンを図った楽器玩具を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案の楽器玩具は、2つの腕のうち少なくとも一方の腕を人形体の所定の回動軸芯を中心に揺動自在に配設するとともに、前記2つの腕の双方の先端のそれぞれに打楽器の半部を配設し、前記所定の回動軸芯を中心に揺動する前記腕を、一方側に揺動させることによって前記半部の双方を互いに衝突させて打音を発生させると共に、他方側に揺動させることによって前記半部同士を離反させて待機状態にする楽器玩具において、前記所定の回動軸芯を、前記人形体を使用状態に置いた際における鉛直軸に対して45度未満の角度をもって傾倒させる一方で、前記人形体、または前記所定の回動軸芯を中心に揺動する前記腕の一方に電磁石を構成するコイルを設け、他方に該コイルが励磁された際に該コイルに対して磁力によって吸引または反発する磁力作用体を設けたことを特徴とする。
【0006】
この考案の楽器玩具によれば、腕の回動軸芯を人形体の軸芯に対して45度未満の角度をもって傾倒させることにより、腕の一方への揺動を重力で行い、他方への揺動を電磁石と磁性体または他の磁石とによって行うので、腕の揺動動作に必要な要素は、電磁石と磁性体あるいは他の磁石の2つの部品で済むことになる。
【0007】
【考案の実施の形態】
腕の回動軸芯の角度をあまり大きくすると、重力による腕の先端の降下力が大きくなるため、腕の先端を上昇させる力、即ち容量の大きな電磁石が必要になり、また腕の回動軸芯の傾倒角度をあまり小さくすると、腕の降下力が小さくなって降下力(応答性)が低下してしまう。したがって、傾倒角度は3〜10度が好ましい。また、腕の回動軸芯の傾斜方向は、腕の重心の位置によって決定されるが、回動軸芯を人形体の前後方向および/または幅方向、好ましくは、後方および/幅方向へ傾斜させる。また、その他の磁石または磁性体と電磁石の配置は、その他の磁石または磁性体を腕側に設置し、電磁石を人形体側に設置しても、電磁石を腕側に設置し、その他の磁石または磁性体を人形体側に設置してもよいが、電磁石はコイルに電流を供給する電線を備えるため、電磁石を固定側、即ち人形体側に設置し、永久磁石または磁性体を腕側に設置することが好ましい。さらに、2つの腕の双方が必ずしも揺動可能に構成されている必要はなく、片方の腕が揺動可能となっていればよい。なお、「人形体を使用状態に置いた際」とは、楽器玩具が使用される場合の常態を示している。
【0008】
また、本考案の楽器玩具は、キーホルダとして携帯電話機や鞄に取り付けて電話機の呼び出し信号により作動させるようにしてもよいし、電話機の信号に替えて、呼び出し音等の音声により楽器音を発生させるようにしてもよい。また、置物等のインテリアとして使用してもよい。なお、楽器としては、シンバル等の同一形状のものを両腕の先端にそれぞれ係止し、それらを衝突させることによって音を発生させるようにしてもよく、一方の腕の先端に太鼓等の被打撃部材を係止し、他方の腕の先端に打撃子を係止して、打撃子で被打撃部材を鳴らすようにしてもよい。また、人形体としては、人物の他、動物またはキャラクター等を採用できる。
【0009】
【実施例】
図1乃至図5は本考案に係る楽器玩具であり、この楽器玩具は携帯電話の着信を知らせる用途に使用されるキーホルダを構成している。この楽器玩具1は、猿の形状をした人形体2と台座3によって中空の本体が形成されている。人形体2は前身2aと後身2bとに2分割してそれぞれプラスチックス等によって型成形され、それらの前身2aと後身2bとはネジ4によって合体されている。また、台座3もプラスチックスによって下方を開口させて型成形されている。そして、台座3はネジ5によって人形体の底部に合体されている。さらに、人形体2の頭部には、複数連のリング6の下端のリング6aが挿通され、上端のリング6bには携帯電話機や鞄等に連結するためのリング7が連結されている。
【0010】
この人形体2は、その左右両側部に腕8をそれぞれ備えている。それらの腕8の基端は人形体2の内部に延設されており、その基端部にはピン9がそれぞれ植設されている。そして、それらのピン9は、図3に示したように、人形体の軸芯Aに対して左右方向に5度の角度をもって人形体2に形成した軸受10に回動自在に支持されている。さらに、左右の腕8の基端は互いの方向に向けて延設されて、一方の腕8の延設部8aにはピン11が立設され、他方の腕8の延設部8bには長孔12が形成されている。そして、一方の腕8のピン11は他方の腕8の長孔12に挿入されている。また、それぞれの腕8の先端には、打楽器であるシンバル13の半部13a,13bが係止されている。したがって、それぞれの腕8は互いに連動し、無負荷状態では、重力によって斜め下方に揺動した位置にあって、シンバル13の半部13a,13bを互いに離反させた状態にある。
【0011】
さらに、図4に示したように、一方の腕8の延設部8aには永久磁石(磁力作用体)14が固設され、該永久磁石14に対向する人形体2には電磁石を構成するコイル15が設置されている。また、台座3には、コイル15を励磁するための電池16が収容される。そして、このコイル15は図5に示したように電話機の着信信号に基づいて制御される。即ち、アンテナ21によって電波をキャッチし、検波部22で、電話機に向けて発信された被変調波から信号波を取り出す。
そして、その信号は、増幅部23を介して発振部24に動作指示信号として入力される。この結果、発振部24は上記動作指示信号が継続している間、上記シンバル13の衝突動作に適した所定周期の信号を発する。発振部24の出力は、駆動部25に入力される。そこで、駆動部25は上記所定周期でコイル15を駆動し、その結果このコイル15の磁力によって永久磁石14が間欠的に反発されて、シンバル13の半部13a,13bが互いに衝突する方向に揺動される。なお、同時に駆動部25は上記所定周期で発光ダイオード26を点滅作動させる。
【0012】
【考案の効果】
上記したように、本考案に係る楽器玩具は、打楽器の半部を重力によって互いに離反状態にしておき、コイルを励磁することによって打楽器の半部を互いに衝突させるようにしている。即ち、本考案に係る楽器玩具は、腕を揺動させる要素として、電磁石と磁性体またはその他の磁石とがあればよく、したがってコストの低減が図れる。
【0013】
また、本考案に係る楽器玩具では、腕の回動軸芯を鉛直軸に対して小さい角度に設定するため、コイル(電磁石)の容量も小さくてすみ、それだけコストの低減が図れるばかりでなく、消費電力も少なくてすむので経済的である。
【0014】
さらに、本考案に係る楽器玩具では、携帯電話機の呼び出しばかりでなく、アクセサリーとしても使用できるので極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る楽器玩具を示した正面図である。
【図2】本考案に係る楽器玩具を示した縦断面側面図である。
【図3】本考案に係る楽器玩具を示した縦断面背面図である。
【図4】本考案に係る楽器玩具を示した横断面平面図である。
【図5】本考案に係る楽器玩具の電磁石を制御するためのブロック図である。
【符号の説明】
1 楽器玩具
2 人形体
3 台座
4,5 ネジ
6 複数連リング
7 連結リング
8 腕
9 ピン
10 軸受
11 ピン
12 長孔
13 シンバル
14 永久磁石
15 コイル
A 人形体の軸芯

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 2つの腕のうち少なくとも一方の腕を人形体の所定の回動軸芯を中心に揺動自在に配設するとともに、前記2つの腕の双方の先端のそれぞれに打楽器の半部を配設し、前記所定の回動軸芯を中心に揺動する前記腕を、一方側に揺動させることによって前記半部の双方を互いに衝突させて打音を発生させると共に、他方側に揺動させることによって前記半部同士を離反させて待機状態にする楽器玩具において、前記所定の回動軸芯を、前記人形体を使用状態に置いた際における鉛直軸に対して45度未満の角度をもって傾倒させる一方で、前記人形体、または前記所定の回動軸芯を中心に揺動する前記腕の一方に電磁石を構成するコイルを設け、他方に該コイルが励磁された際に該コイルに対して磁力によって吸引または反発する磁力作用体を設けたことを特徴とする楽器玩具。
【請求項2】 前記腕の回動軸芯を前記人形体の幅方向外側へ傾倒させたことを特徴とする請求項1に記載の楽器玩具。
【請求項3】 前記腕の回動軸芯を前記人形体の後方へ傾倒させたことを特徴とする請求項1に記載の楽器玩具。
【請求項4】 前記回動軸芯の角度を3〜10度にしたことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の楽器玩具。
【請求項5】 前記コイルを電話機の呼び出し信号で励磁させるようにしたことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の楽器玩具。
【請求項6】 前記コイルの励磁に同期させて発光ダイオードを点滅させることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の楽器玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】第3052322号
【登録日】平成10年(1998)7月1日
【発行日】平成10年(1998)9月25日
【考案の名称】楽器玩具
【国際特許分類】
【評価書の請求】有
【出願番号】実願平10−1558
【出願日】平成10年(1998)3月17日
【出願人】(000003584)株式会社トミー (248)