説明

構造物

【課題】外壁面の凹凸等に関わらずに取付精度を向上させることができる屋根の支持構造および屋根を提供すること。
【解決手段】横材5が連結される連結部材42が、外壁面2Aに対して直接に位置決めされずにベース部材41に対して位置決めされるので、外壁面2Aに凹凸や傾き等があったとしても突出部422の突出位置や突出方向を適切に調節することができる。また、位置決め機構43によって連結部材42の突出部422の突出角度を調整してから、連結部材42およびベース部材41を外壁に固定し、その突出部422に横材5を連結することで、横材5を外壁面2Aに対して所定の状態で取り付けることができ、この横材5に支持される屋根面材も含めた屋根1全体の取付精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁面に固定される構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外壁面に固定される構造物として、外壁面から突出して設けられる片持ち屋根(片持ち庇)などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された屋根は、上弦材、下弦材(横材)およびガセット(縦材)を三角形状に組んだ庇トラスと、複数の庇トラス上に固定した面材とを有した庇構造体を外壁面に固定して構成されるものである。そして、庇構造体は、上弦材および下弦材の基端部(つまり縦材の上下両端部)位置でビスを介して外壁に固定されるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−300801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の屋根では、予め組み立てた庇構造体を外壁面の所定位置に保持し、その状態で縦材の上下両端部位置を外壁にビス止め固定するため、外壁面に凹凸がある場合には、その凹凸に影響されて取付精度が確保できないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、外壁面の凹凸等に関わらずに取付精度を向上させることができる構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構造物は、外壁面に固定される構造物であって、構造物本体と、前記外壁面に固定される縦材と、この縦材に一端側が支持されるとともに他端側が前記構造物本体に連結される横材とを備え、前記縦材は、前記外壁面に沿って設けられるベース部材と、このベース部材に取り付けられて前記横材が連結される連結部材と、前記ベース部材に対して前記連結部材を位置決めする位置決め手段と、前記ベース部材および連結部材を前記外壁に固定する固定手段とを有し、前記連結部材は、前記位置決め手段を介して前記ベース部材に取り付けられる支持部と、この支持部から突設されて前記横材と固定される突出部とを有して構成されていることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、ベース部材に対して位置決め手段で位置決め可能に連結部材を設けて縦材を構成し、この連結部材の突出部に横材を固定することで、外壁面に凹凸や傾き等(例えば、吹き付けモルタルの凹凸や、タイル、石材、サイディングの凹凸や傾き、外壁面全体の傾きなど)があったとしても、連結部材を外壁面に対して直接に位置決めせずにベース部材に対して位置決めして突出部の突出位置や突出方向を適切に調整することができる。従って、連結部材を位置決めした状態で縦材を外壁面に固定してから、その突出部に横材を連結することで、横材を適正な状態(位置や傾き)で取り付け、これに連結される構造物本体の取付精度を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の構造物では、前記位置決め手段は、前記ベース部材および前記連結部材の支持部のいずれか一方に螺合されるとともに、他方に対する進退移動が規制された螺合部材を複数有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、螺合部材を回転操作することでベース部材に対する連結部材の相対位置を移動調整することができ、位置決め作業が容易に実施できる。さらに、螺合部材が複数設けられているので、各螺合部材を適宜調整することによって、連結部材の外壁面に対する角度(突出部の突出角度)や突出部のねじれ角度等が調整可能になり、取付精度をより一層向上させることができる。
【0009】
さらに、本発明の構造物では、前記位置決め手段は、前記ベース部材に対して前記連結部材を前記外壁面側に付勢する付勢部材を有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、付勢手段によって連結部材をベース部材に対して付勢し、付勢した状態で位置決めを実施することで、位置決め作業中の連結部材のがたつきや、位置決め後の連結部材の位置ずれなどを防止することができ、位置決め作業がより一層容易になるとともに位置決め精度も向上させることができる。
【0010】
また、本発明の構造物では、前記ベース部材は、前記外壁面に沿って設けられる背面部と、この背面部の左右両端縁において前記外壁から離れる方向に延びる一対の側面部と、これら一対の側面部から前記背面部と対向して互いに接近する方向に突出した一対の対向片部とを有して形成され、前記一対の対向片部の間から前記突出部が突出し、かつ前記ベース部材の背面部と対向片部との間に前記支持部の両側端縁部が位置された状態で、前記連結部材が配置され、前記螺合部材は、前記対向片部を貫通して前記支持部に螺合されるとともに、当該対向片部または前記背面部に対する進退移動が規制されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、背面部、側面部および対向片部を有した全体略コ字形断面形状でベース部材を構成し、対向片部を貫通する螺合部材を支持部に螺合させたことで、位置決め作業を容易に実施することができる。すなわち、対向片部が背面部に対向して外壁と反対側に位置しているので、外壁に対して外側(屋外の開放された空間側)から螺合部材の回転操作を実施することができ、位置決め作業が容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る屋根1を示す側面から見た縦断面図である。図2は、屋根1の要部を示す正面から見た縦断面図であり、図1に矢視II−II線で示す断面図である。図3は、屋根1の要部を示す横断面図であり、図1、図2に矢視III−III線で示す断面図である。
図1〜図3において、本発明の構造物としての屋根1は、外壁2の壁面(外壁面)2Aから突出して片持ち状に設けられたもので、外壁2に基端縁が固定されて先端縁が外壁2から離れかつ下方に傾斜して設けられる構造物本体としての屋根面材3と、外壁2に固定されて屋根面材3の基端縁よりも下側に延びる縦材4と、この縦材4に一端側が支持されるとともに他端側が屋根面材3の先端縁側に連結される横材5とを備えて構成されている。
【0014】
屋根面材3は、外壁面2Aに沿って水平方向に延びて屋根面材3の基端縁を構成する上枠材31と、この上枠材31に平行に延びて屋根面材3の先端縁を構成する下枠材32と、上枠材31および下枠材32の側端部同士を連結する左右の端部枠材33と、上枠材31および下枠材32の中間部同士を連結する中間枠材34と、これらの上枠材31、下枠材32、端部枠材33、中間枠材34に支持されるパネル35とを備えて構成されている。上枠材31、下枠材32、端部枠材33、中間枠材34は、適宜な面材保持部(不図示)を有して形成され、この面材保持部でパネル35を保持するように構成されている。そして、上枠材31は、ビス31Aによって外壁2に固定されている。また、下枠材32には、溝状の樋部32Aが形成されており、屋根面材3上に降った雨水等は、樋部32Aで集水されて適宜な縦樋等から排水できるようになっている。
【0015】
縦材4は、図2、図3に示すように、外壁面2Aに沿って設けられるベース部材41と、このベース部材41に取り付けられて横材5が連結される連結部材42と、ベース部材41に対して連結部材42を位置決めする位置決め機構(手段)43と、ベース部材41および連結部材42を外壁2に固定する固定手段であるビス44と、ベース部材41に取り付けられてベース部材41および連結部材42を覆うカバー部材45とを備えて構成されている。
横材5は、アルミ形材製の角筒中空状に形成された部材であって、その一端側(外壁側)がシール材51を介してカバー部材45に当接されるとともにビス52でカバー部材45に固定され、さらに一端側が連結部材42の突出部422(後述)にビス53で固定されている。そして、横材5の他端側の上面に屋根面材3の下枠材32が固定され、横材5の他端側の端部には、端部キャップ54が取り付けられ、横材5内部への雨水等の浸入が防止されている。
【0016】
以下、図4および図5も参照して縦材4の構造について詳しく説明する。
図4は、屋根1の縦材4を分解して示す横断面図である。図5(A),(B)は、縦材4を構成する連結部材42を示す側面図および正面図である。
縦材4のベース部材41は、アルミ形材製の部材であって、外壁面2Aに沿って設けられる背面部411と、この背面部411の左右両端縁から見込み方向外方(外壁2から離れる方向)に延びる一対の側面部412と、これら一対の側面部412から背面部411と対向して互いに接近する方向に突出した一対の対向片部413と、側面部412に連続しかつ対向片部413よりも見込み方向外方に延びた一対の延出片部414とを有して全体略コ字形に形成されている。
【0017】
縦材4の連結部材42は、図5に示すように、ベース部材41の背面部411に沿って設けられる支持部421と、この支持部421から突設されて横材5と固定される突出部422とを有して全体略T字形に形成されている。支持部421は、金属板材からなり、位置決め機構43を介してベース部材41に取り付けられるとともに、ビス44によって外壁2に固定されるようになっている。この支持部421におけるベース部材41の背面部411と対向片部413との間に位置する左右両側端縁部には、位置決め機構43のビス431(後述)を螺合させる各2箇所(計4箇所)のビス孔423が設けられ、支持部421の左右略中央部には、ビス44を挿通させる5箇所の挿通孔424が縦に並んで設けられている。一方、突出部422は、断面略コ字形の金属部材(チャンネル材)からなり、その基端部が支持部421に溶接固定されている。また、固定手段である5本のビス44は、支持部421の挿通孔424を通ってベース部材41の背面部411を貫通するとともに、外壁2の躯体に螺合することで、ベース部材41および連結部材42を外壁2に固定するようになっている。
【0018】
位置決め機構43は、ベース部材41の対向片部413を貫通するとともに連結部材42の支持部421(ビス孔423)に螺合する螺合部材としての4本のビス431と、これらのビス431に固定されてビス431の対向片部413に対する進退移動を規制する規制部材432との組み合わせで構成されている。ビス431は、外壁2に向かって対向片部413を貫通し、その頭部を対向片部413に当接させるとともに、対向片部413の裏側(外壁側)で規制部材432と結合され、これにより外壁面2Aに直交する方向の進退移動が規制されている。規制部材432は、EリングやCリング等からなり、対向片部413を貫通したビス431の軸部に係止されている。そして、4本のビス431は、それぞれ連結部材42の4箇所のビス孔423に螺合されており、これらのビス431を回転操作することで、連結部材42の支持部421がベース部材41に対して外壁面2Aと直交する方向に位置決めできるようになっている。従って、4本のビス431のうちの任意の1本または複数本を操作することで、ベース部材41の背面部411に対する支持部421の角度、すなわち連結部材42の突出部422の外壁面2Aに対する突出角度を所定角度に調整できるようになっている。ここで、ビス431の先端は、ベース部材41の背面部411に当接されるようになっており、固定手段であるビス44を締め付けても支持部421が背面部411側に移動しないようになっている。
【0019】
カバー部材45は、アルミ形材製の部材であって、ベース部材41の背面部411に対向して縦材4の正面を構成する正面部451と、この正面部451の左右両端縁から見込み方向内方(外壁2に近づく方向)に延びる一対の側面部452とを有して全体略コ字形に形成されている。このカバー部材45は、側面部452でベース部材41の側面部412および延出片部414の外側を覆った状態において、側面部452を貫通するビス453を延出片部414に螺合することでベース部材41に固定される。また、カバー部材45の正面部451には、連結部材42の突出部422と対応した位置に突出部422を挿通させる挿通孔454が設けられている。そして、ベース部材41に固定された状態でカバー部材45は、ベース部材41、連結部材42の支持部421および位置決め機構43を覆うとともに、連結部材42の突出部422を挿通孔454から突出させるようになっている。また、カバー部材45の下端部には、端部キャップ455が取り付けられ、カバー部材45内部への雨水等の浸入が防止されている。
【0020】
次に、屋根1の外壁2への取付手順を説明する。
先ず、縦材4のベース部材41に位置決め機構43のビス431を介して連結部材42を取り付け、この状態の縦材4を外壁面2Aに仮止めする。この際、例えば、ベース部材41の背面部411の上部に設けた上下長孔状の挿通孔を、外壁2に固定したビスの頭部に引っ掛けるとともに、ベース部材41を所定の高さ位置に合わせてから、適宜なビス等で背面部411を外壁2に仮止め固定する。
次に、連結部材42の突出部422が外壁面2Aに対して垂直(若しくは設計上の角度)になるように、位置決め機構43の4本のビス431を適宜回転操作して位置決め作業を実施する。すなわち、外壁面2Aの仕上げ材(例えば、吹き付けモルタルや、タイル、石材、サイディング等)に凹凸や傾き等があった場合に、ベース部材41が若干傾いて取り付けられることになるが、このベース部材41に対する連結部材42の傾き、つまり突出部422の突出角度を所定の角度(外壁面2Aに垂直)に調整する。
以上のように突出部422の突出角度を調整してから、連結部材42およびベース部材41をビス44で外壁2に固定する。
【0021】
一方、縦材4の取り付けとは別に、カバー部材45と横材5とを組み立てておく。すなわち、カバー部材45の挿通孔454の端縁に沿ってシール材51を設け、このシール材51に横材5を当接させた状態で、カバー部材45の内側からビス52を横材5のビスホール55に螺合させてカバー部材45に横材5を固定する。
次に、組み立てたカバー部材45および横材5を、前述のように外壁2に固定した縦材4に固定する。具体的には、カバー部材45の挿通孔454を介して横材5の中空内部に連結部材42の突出部422を挿入し、ベース部材41を覆うようにカバー部材45を位置させた状態で、横材5の上面をビス53で連結部材42の突出部422に固定するとともに、カバー部材45の側面部452をビス453でベース部材41の延出片部414に固定する。
【0022】
以上のようにして複数組みの縦材4および横材5を外壁2に固定した後に、これらの上側に屋根面材3を設置し、屋根面材3の上枠材31をビス31Aで外壁2に固定するとともに、下枠材32を横材5の他端側に固定する。その後、横材5の他端部に端部キャップ54を取り付け、縦材4のカバー部材45に端部キャップ455を取り付けて屋根1の取付作業が完了する。
なお、縦材4に横材5を取り付ける工程と屋根面材3を取り付ける工程とを同時に実施してもよい。すなわち、屋根面材3の下枠材32と複数の横材5とを予め固定しておき、組み立てた状態の屋根面材3および横材5を、それぞれ外壁2および外壁2に固定した複数の縦材4に取り付けるような取付手順も採用可能である。
【0023】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、横材5が連結される連結部材42が、外壁面2Aに対して直接に位置決めされずにベース部材41に対して位置決めされるので、外壁面2Aに凹凸や傾き等があったとしても突出部422の突出位置や突出方向を適切に調節することができる。
また、横材5が固定される突出部422の突出角度を調整してから、連結部材42およびベース部材41を外壁2に固定し、その突出部422に横材5が連結されるので、横材5を外壁面2Aに垂直に取り付けることができ、この横材5に支持される屋根面材3も含めた屋根1全体の取付精度を向上させることができる。
【0024】
(2)さらに、縦材4を外壁2に固定してから横材5を連結し、これらの縦材4および横材5を外壁2に複数組固定してから、屋根面材3を取り付ける作業手順を採用したことで、取り扱う各部材を軽量化して少数の作業者によって取付作業を実施することができ、作業性を向上させることができるとともに施工コストの低減を図ることもできる。
【0025】
(3)また、4本のビス431と規制部材432との組み合わせで位置決め機構43が構成され、ビス431を回転操作することでベース部材41に対する連結部材42の相対位置が移動調整可能になっているので、連結部材42の位置決め作業、つまり突出部422の突出角度の調整作業が容易に実施できる。さらに、4本のビス431がベース部材41の対向片部413を外壁2側に向かって貫通し、対向片部413と背面部411との間で連結部材42の支持部421に螺合するように構成されているので、外壁2に対して屋外の開放された空間側から外壁2に向かってビス431の回転操作を実施することができ、さらに作業を容易に実施できる。
【0026】
(4)また、カバー部材45でベース部材41および連結部材42が覆われているので、位置決め機構43やビス44が外部に露出しないようにでき、屋根1の外観を良好に形成することができる。そして、連結部材42の突出部422を突出させる挿通孔454がカバー部材45に設けられ、この挿通孔454の周囲を囲むシール材51に横材5が当接されているので、カバー部材45とベース部材41との間の空間への雨水等の浸入を防止することができる。さらに、カバー部材45の側面部452がベース部材41の延出片部414に固定されるので、対向片部413よりも外側にビス453の貫通部を位置させることができ、対向片部413よりも外壁2寄りに位置する連結部材42の支持部421側への雨水の浸入を確実に防止することができる。従って、固定手段としてベース部材41および連結部材42を貫通し外壁2に螺合するビス44を用いていても、このビス44の位置まで雨水等が浸入することなく、外壁2に対する止水性を確保することができる。
【0027】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図6および図7に基づいて説明する。
図6は、第2実施形態の屋根1の要部を示す正面から見た縦断面図である。図7は、屋根1の要部を示す横断面図であり、図6に矢視VII−VII線で示す断面図である。
本実施形態の屋根1は、縦材4を構成するベース部材41Aの構成が前記第1実施形態のベース部材41と相違するとともに、位置決め機構(手段)43および固定手段であるビス44の設置位置および設置数が第1実施形態と相違し、その他の構成は、第1実施形態と略同一である。以下、相違点について詳しく説明する。
【0028】
ベース部材41Aは、アルミ形材製の部材であって、外壁面2Aに沿って設けられる背面部411と、この背面部411の左右両端縁から見込み方向外方(外壁2から離れる方向)に延びる一対の側面部412と、これら一対の側面部412同士を連結して背面部411と略平行に延びる前面部415と、側面部412に連続しかつ前面部415よりも見込み方向外方に延びた一対の延出片部414とを有して全体略中空状に形成されている。そして、前面部415には、その下端部から所定高さ位置まで切り欠いた切欠き部416と、この切欠き部416よりも上方に設けられてビス44の螺合操作を行うための挿通孔417とが形成されている。このベース部材41Aに対して連結部材42は、その突出部422を切欠き部416に下方から挿通させるとともに、支持部421を前面部415と背面部411との間に挿通させて取り付けられるようになっている。
【0029】
本実施形態において、位置決め機構43は、所定位置における突出部422の上方1箇所と下方2箇所との計3箇所に設けられ、前面部415を外壁2に向かって貫通したビス431が支持部421に螺合するように構成されている。また、所定位置における突出部422の上方に設けられる固定手段であるビス44は、前面部415の内側で連結部材42の支持部421に挿通されるため、前面部415に設けた挿通孔417を介して螺合操作されるようになっている。
【0030】
以上の実施形態によれば、前記第1実施形態と略同様の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(5)すなわち、3箇所の位置決め機構43におけるビス431を回転操作することによって、連結部材42の突出部422の突出角度を調整することができ、位置決め機構43の設置箇所数を最小にして部品点数を削減することができる。また、ベース部材41Aが全体中空状に形成されているので、部材剛性を高められるとともに、ベース部材41A内部へ雨水等が浸入しにくくなり止水性を向上させることができる。
【0031】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態を図8に基づいて説明する。
図8は、第3実施形態の屋根1の要部を示す横断面図である。
本実施形態の屋根1は、縦材4を構成する位置決め機構(手段)43Aが前記第1および第2実施形態の位置決め機構43と相違し、その他の構成は、第1実施形態と略同一である。以下、相違点について詳しく説明する。
【0032】
本実施形態において、位置決め機構43Aは、ベース部材41の対向片部413を貫通するとともに連結部材42の支持部421に螺合する螺合部材としてのビス433と、ビス433に対して対向片部413の裏側(外壁2側)に位置して支持部421を外壁2側に付勢する付勢部材としての板ばね434との組み合わせで構成されている。ビス433の先端は、支持部421を貫通してベース部材41の背面部411に当接されており、外壁2に向かう方向のビス433の移動が規制されている。板ばね434は、対向片部413の裏側と支持部421とが互いに離れる方向に付勢力を作用させるもので、ビス433に貫通される適宜な貫通孔を有して形成されている。このような位置決め機構43Aでは、ビス433を回転操作することで、連結部材42の支持部421がベース部材41に対して外壁面2Aと直交する方向に位置決めできる。すなわち、支持部421との螺合を緩める側にビス433を回転操作すれば、板ばね434に押されて連結部材42が外壁2に近づく方向に移動され、螺合を締める側にビス433を回転操作すれば、板ばね434の付勢力に抗して連結部材42が外壁2から離れる方向に移動されるようになっている。
【0033】
以上の実施形態によれば、前記第1実施形態と略同様の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(6)すなわち、板ばね434によって連結部材42がベース部材41に対して付勢されているので、位置決め作業中の連結部材42のがたつきや、位置決め後の連結部材42の位置ずれなどを防止することができ、位置決め作業がより一層容易になるとともに位置決め精度も向上させることができる。さらに、連結部材42の支持部421を介した板ばね434の付勢力によって、ビス433の先端とベース部材41の背面部411とが互いに押圧されるので、この摩擦力によって連結部材42が落下しないように保持することもできる。従って、ベース部材41の対向片部413をビス433が貫通する貫通孔を上下の長孔や左右の長孔、あるいはビス433の軸部径よりも適宜に大きなルーズホールとしておけば、連結部材42を上下左右に位置調整することも可能になる。
【0034】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、縦材4をベース部材41,41A、連結部材42、位置決め機構43,43A、固定する固定手段であるビス44、およびカバー部材45から構成したが、カバー部材45は必須の部材ではなく、これを省略してもよい。この場合には、例えば、前記第2実施形態のベース部材41Aのような前面部を有したベース部材を用い、この前面部に挿通孔を設けておき、この挿通孔に外壁側から連結部材の突出部を挿通させるとともに、突出部と挿通孔の端縁部との隙間をシールするような構成が採用可能である。
【0035】
また、前記実施形態では、ベース部材41,41Aの背面部411を外壁面2Aに沿って配置するようにしたが、背面部411に外壁2側に突出する複数の突片を形成しておき、これらの突片が外壁面2Aに当接するようにベース部材を配置してもよい。このような構成によれば、位置決め手段によって調整しきれないような大きな凹凸(装飾や段差等)が外壁面2Aにある場合に、この凹凸に応じて突片の一部を切り落とすことで、背面部が外壁面2Aに略平行な状態でベース部材を配置することができる。そして、背面部が外壁面2Aに略平行な状態で配置されたベース部材に対して連結部材の位置決めを実施することで、その突出部の突出角度を精度良く調整することができる。
また、前記実施形態では、位置決め手段のビス431の先端をベース部材41の背面部411に当接させたが、ビス431を背面部411に当接させなくてもよい。その場合には、ベース部材41の側面部412および対向片部413(第1実施形態)や前面部415(第2実施形態)の板厚寸法を大きくするなどして、固定手段であるビス44を締め付け力により側面部412や対向片部413、前面部415が変形しないように構成すれば、連結部材42の支持部421が背面部411側に移動しないようにできる。
【0036】
また、前記実施形態では、構造物としての屋根1について説明したが、本発明の構造物は、屋根に限られるものではなく、庇でもよく、またバルコニーであってもよい。つまり、本発明の支持構造を用いて庇やバルコニーの床部分を支持するようにしてもよい。さらに、本発明の構造物としては、外壁面2Aから突出して片持ち状に設けられたものに限らず、対向配置された外壁2間に渡って設けられたものでもよく、その場合には、対向した外壁面に本発明の支持構造が一対で互いに対向して設けられていてもよい。
【0037】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る屋根を示す縦断面図である。
【図2】前記屋根の要部を示す正面から見た縦断面図である。
【図3】前記屋根の要部を示す横断面図である。
【図4】前記屋根の縦材を分解して示す横断面図である。
【図5】(A),(B)は、前記縦材を構成する連結部材を示す側面図および正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る屋根の要部を示す縦断面図である。
【図7】前記屋根の要部を示す横断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る屋根の要部を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…屋根、2…外壁、2A…外壁面、3…屋根面材、4…縦材、5…横材、41,41A…ベース部材、42…連結部材、43,43A…位置決め機構(手段)、44…固定手段であるビス、45…カバー部材、51…シール材、411…背面部、412…側面部、413…対向片部、415…前面部、416…切欠き部、421…支持部、422…突出部、431,433…螺合部材であるビス、434…付勢部材である板ばね、454…挿通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁面に固定される構造物であって、
構造物本体と、前記外壁面に固定される縦材と、この縦材に一端側が支持されるとともに他端側が前記構造物本体に連結される横材とを備え、
前記縦材は、前記外壁面に沿って設けられるベース部材と、このベース部材に取り付けられて前記横材が連結される連結部材と、前記ベース部材に対して前記連結部材を位置決めする位置決め手段と、前記ベース部材および連結部材を前記外壁に固定する固定手段とを有し、
前記連結部材は、前記位置決め手段を介して前記ベース部材に取り付けられる支持部と、この支持部から突設されて前記横材と固定される突出部とを有して構成されている構造物。
【請求項2】
前記位置決め手段は、前記ベース部材および前記連結部材の支持部のいずれか一方に螺合されるとともに、他方に対する進退移動が規制された螺合部材を複数有して構成されている請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記ベース部材に対して前記連結部材を前記外壁面側に付勢する付勢部材を有して構成されている請求項1または請求項2に記載の構造物。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記外壁面に沿って設けられる背面部と、この背面部の左右両端縁において前記外壁から離れる方向に延びる一対の側面部と、これら一対の側面部から前記背面部と対向して互いに接近する方向に突出した一対の対向片部とを有して形成され、
前記一対の対向片部の間から前記突出部が突出し、かつ前記ベース部材の背面部と対向片部との間に前記支持部の両側端縁部が位置された状態で、前記連結部材が配置され、
前記螺合部材は、前記対向片部を貫通して前記支持部に螺合されるとともに、当該対向片部または前記背面部に対する進退移動が規制されている請求項2または請求項3に記載の構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate