説明

模様のあるデニム製品及びその製造方法

【解決手段】インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色された、濃色部及び淡色部からなる模様のあるデニム製品であって、該濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とする模様のあるデニム製品。
【効果】インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料での濃淡のみで形成された模様を有し、従来のデニム生地に比べて色落ちしにくく、審美性、ファッション性に優れ、しかも洗濯によって他の衣類等を汚染することのない模様のあるデニム製品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様のあるデニム製品に関し、更に詳述すると、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料による濃淡によって形成された模様を有し、色落ちが防止され、使用時や洗濯時の他の製品等に対する汚染を低減した模様のあるデニム製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デニム生地において、インジゴ染め、硫化染めあるいはスレン染めは代表的な染色方法である。インジゴ染料、硫化染料あるいはスレン染料は、還元により水溶性となるので、この状態の染色液にセルロース繊維を浸漬すれば、水と共に染料はセルロース繊維内に移動する。その後、そのセルロース繊維を空気に曝せば、インジゴ染料、硫化染料あるいはスレン染料は空気中の酸素により酸化され、セルロース繊維中に水に溶け難い色素を再生する。
【0003】
セルロース繊維とインジゴ染料、硫化染料あるいはスレン染料との結合力は、分子間力及び水素結合力といわれており、セルロース繊維の非結晶領域にこれらの力で固定されていると考えられる。また、一部はセルロース繊維表面に付着しているものもある。よって、インジゴ染色デニム、硫化染色デニム、スレン染色デニムは、水洗いや洗濯を行うことで簡単に染料が脱落する。このようなインジゴ染色、硫化染色、スレン染色の特長を利用し、湯洗い加工、ストーンウォッシュ加工、ブリーチ加工、バイオウォッシュ加工、ブラスト加工や、これらの加工を組み合わせて実施することで、デニム生地を個性的に加工したものが生産されている。
【0004】
しかし、上記の様々な洗い加工では、染料を落としたい部位の染料の除去は容易であるが、ベース生地の染料までも脱落して生地全体が退色するため、濃淡の差が不鮮明になるという問題があった。また、溶け出した染料により、例えば生地の白の緯糸が汚染されてメリハリの無い製品となり、また、ポケット地の白布も汚染されてしまうという問題があった。更に、製品の消費段階(着用、洗濯、保存など)においては、購入した製品の色相を長く保つことが望まれているにもかかわらず、洗濯により染料が脱落する結果、色相が変化し、審美性を損なうという問題があった。特に、濃色のデニムの色相を洗濯しても、脱落せず、長く濃色の色を保持することは永年の課題であった。また、デニム製品を他の衣類等と一緒に洗濯すると、デニム製品から脱落した染料が他の衣類等に付着して汚染する問題があり、洗濯により汚染しないデニム製品が求められてきた。
【0005】
ところで、このようなデニム生地の表面に、オーバーダイやプリント、あるいはレーザーを使用して、図柄や文字、商標、ロゴ、ワンポイントマーク等の様々の模様類を施すことも行われており、こうした模様柄のある生地を洗濯しても退色しない製法が見出されている。
【0006】
しかし、オーバーダイやプリントでは、生地の風合が硬くなったり、生地の着用感が低下したり、素材色(インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料で染められた生地の色)以外の色相が加わり嗜好的になったり、緯糸が着色する結果、デニム製品特有の綾目が見え難くなることで、用途に限界があった。また、これらの方法では模様柄の洗濯退色は防げても、製品のベース生地が洗濯退色する結果、模様柄がぼやけたり、審美性が低下する問題が残っていた。
ジーンズ生地にレーザーを当てて生地表面を薄く焼くことにより、地色とは異なる色地部分を形成して所望の装飾模様を形成する方法では、コンピューターとの連動で自在に繰り返し模様を形成できるが、素材色以外の色相が加わり嗜好的になることで用途に限界があった。また、レーザー光の使用により生地の一部を削り取る結果、当該製品を着用したり洗濯すると、レーザー照射部の繊維のほつれ、脱落が目立つようになり、毛羽が大量に発生したり、当該箇所の生地が薄くなり、穴が開いたり、破れたりする場合があった。
また、本来生産性が低い上、模様を描く面積が増加するにつれ更に加工時間が増え、コストが高くなる問題が残っており、素材色からなる精巧な模様を有し、かつ着用したり洗濯しても繊維のほつれや毛羽の増加を抑えつつピンホールや破れの心配も無い審美性の高い丈夫な製品を低コストで提供することが課題であった。
【0007】
これに対して、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料の素材色だけで模様形成された製品が提案されている。これは、生地の模様を構成する各部位が生地の素材色で構成されているので、彩色しても人に違和感を与えることはなく、商品価値を格段に向上させることができる。例えば、生地の表面に凹凸加工を施し、この生地の表面に模様類を形成することが提案されている(特許文献1:特開2005−54323号公報)。
また、デニム布地裏面に両面テープの一の面を貼り合わせ、両面テープの他の面を、所定の模様を彫り込んだ型板に貼り合わせ、平面部を有する摩擦部材でデニム布地表面を型板に押しつけるように擦り、その後に脱色及び水洗するデニム布地の脱色模様形成方法も提案されている(特許文献2:特開2006−299446号公報)。
更に、適宜模様を表現した型紙をデニム地上に置き、この型紙の上から化学のりを塗布し、のりを十分に乾燥させた後デニム地を脱色し、残ったのりを洗浄することにより、のり塗布部分にデニム地の脱色前の色にて模様を描出するデニム地への繊細模様描出方法が提案されている(特許文献3:特開2004−19056号公報)。
その他にも、摩擦堅牢度が、乾燥(タテ)が4.0級以上、湿潤(タテ)が1.5級以上であるデニム生地が提案されている(特許文献4:特開2007−182648号公報)。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の方法は、生地の表面に素材色だけで細かな模様を形成することは可能であるが、模様の加工が煩雑であったり、洗濯で色落ちする結果、模様がぼやけたり、初期の色相が維持できないので、審美性が低下する問題が残っている。
特許文献2の方法は、伸びやすい布地であっても、模様部を染色の色に濃く浮き立たせることはできるが、工程が非常に煩雑であり、また洗濯すると模様柄がぼやけたり、色相差の変化により審美性が低下する問題が依然残っている。
特許文献3に記載の処理方法では、比較的簡便に模様柄を得ることができるが、型紙の跡が残るのでデザインが限定的であり、また洗濯時の退色の問題は解決されていない。
特許文献4に記載の処理方法では、摩擦堅牢性が高くなることで、洗濯での汚染防止効果が期待できる。しかし、実施例には湿潤摩擦堅牢度1.5級の結果が示されているものの、それ以上、例えば2級以上の効果発現方法は記載がなく、また模様柄の形成については何ら記載はない。
このように、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料の素材色だけで模様が形成された製品に対し、生産性が低いことや、洗濯すると色落ちする結果、模様がぼやけたり、審美性が低下するといった問題が依然として残っていた。
【0009】
【特許文献1】特開2005−54323号公報
【特許文献2】特開2006−299446号公報
【特許文献3】特開2004−19056号公報
【特許文献4】特開2007−182648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料の濃淡(黒に近い濃藍色〜白色)によって形成された模様を有し、しかも、色落ちしにくく、加えて、洗濯によるデニム製品からの汚染が抑制され、湿摩擦堅牢度が向上した模様のあるデニム製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料で染色され、濃色部及び淡色部からなる模様のあるデニム製品であって、該濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上、特に2級以上(インジゴ染色又はインジゴ染色及びスレン染色のとき)であって、好ましくはJIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上である模様のあるデニム製品が、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料の素材色だけで形成された模様を有しているため、審美性、ファッション性等に優れ、しかも色落ちしにくく、その上、洗濯によるデニム製品からの汚染が防止され、実用的にも高い価値を有するものであることを見出すと共に、所定の条件下で上記特性を有するデニム製品が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記の模様のあるデニム製品及びその製造方法を提供する。
請求項1:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色された、濃色部及び淡色部からなる模様のあるデニム製品であって、該濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とする模様のあるデニム製品。
請求項2:
上記濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で2級以上である請求項1記載の模様のあるデニム製品。
請求項3:
上記濃色部が、JIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度(たて方向)が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上である請求項1又は2記載の模様のあるデニム製品。
請求項4:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、未架橋処理部分とを有し、該未架橋処理部分を脱色して模様を形成してなる請求項1又は2記載の模様のあるデニム製品。
請求項5:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、前記架橋処理部分の一部を酸又は塩基で脱架橋処理してなる脱架橋処理部分とを有し、該脱架橋処理部分を脱色して模様を形成してなる請求項1又は2記載の模様のあるデニム製品。
請求項6:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、未架橋処理部分とを有し、該未架橋処理部分を脱色して模様を形成すると共に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン系化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤で処理することにより得られた請求項3記載の模様のあるデニム製品。
請求項7:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、前記架橋処理部分の一部を酸又は塩基で脱架橋処理してなる脱架橋処理部分とを有し、該脱架橋処理部分を脱色して模様を形成すると共に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン系化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤で処理することにより得られた請求項3記載の模様のあるデニム製品。
請求項8:
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項4乃至7のいずれか1項記載の模様のあるデニム製品。
請求項9:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地に対し、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理液を部分的に付着させて熱処理し、続いて上記架橋処理液を付着させていない未架橋処理部分を脱色して模様を形成することを特徴とする模様のあるデニム製品の製造方法。
請求項10:
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地に対し、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理液を付着させて熱処理した後、前記架橋処理部分の一部を酸又は塩基で脱架橋反応させ、次いで該脱架橋反応部分を脱色して模様を形成することを特徴とする模様のあるデニム製品の製造方法。
請求項11:
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項9又は10記載の模様のあるデニム製品の製造方法。
請求項12:
更に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物、アミン系化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤を付着させ、熱処理することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の模様のあるデニム製品の製造方法。
請求項13:
耐湿摩擦性向上剤が、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びメルカプト変性シリコーンから選ばれるシリコーン系化合物と、イソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型又はアロファネート型の末端イソシアネート基含有イソシアネート化合物又はブロックイソシアネート化合物とを含む請求項12記載の模様のあるデニム製品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料での濃淡のみで形成された模様を有し、従来のデニム生地に比べて色落ちしにくく、審美性、ファッション性に優れ、しかも洗濯によって他の衣類等を汚染することのない模様のあるデニム製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のデニム製品は、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料で染色され、濃色部及び淡色部からなる模様のあるデニム製品であって、上記濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上、特に2級以上(インジゴ染色又はインジゴ染色及びスレン染色のとき)であり、好ましくはJIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度(たて方向)が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とする。
【0015】
デニム生地
ここで、本発明の製品に用いられるデニム生地としては、綿(短繊維綿、中繊維綿、長繊維綿、超長綿、超・超長綿など)、麻(リネン麻、ラミー麻、マニラ麻、サイザル麻、ジュート麻、ケナフ、ヘンプ等各種のものを含む)、竹、こうぞ、みつまた、バナナ、被嚢類等の植物性及び動物性の天然セルロース繊維でも、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンといったレーヨン繊維、ビスアセテート、トリアセテートといったアセテート繊維等の再生ないし半合成セルロース繊維などのセルロース系繊維を単独で又はこれらとポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリイミド繊維、ポリ乳酸繊維等の他の繊維とを混紡、交織等して製織された生地が挙げられ、典型的には、経糸としてインジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいは、インジゴ染料及びスレン染料で染色した綿糸と、緯糸として未晒し又は晒し綿糸を用いて、平織、斜文織(綾織)等に製織した生地を用いることができる。また、未染色の糸を用いた織布をインジゴ染料、硫化染料、スレン染料で染色したものも使用することができる。この場合、染色条件は特に制限されず、常法に従って染色することができる。
【0016】
模様形成
本発明において、模様とは、いわゆる中古加工と称した表面の一部を白っぽく擦り切り処理したものや、更に精細な模様として、動物、昆虫、植物、キャラクター、川、海、星、雲、太陽などの自然の風景、自動車、飛行機、パソコン、椅子、コップなどの人工物等の任意の図柄や、文字、商標、ロゴ、ワンポイントマーク等をいう。
【0017】
このような模様の形成方法として、例えば中古加工の場合は、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいはインジゴ染料及びスレン染料で染色したデニム生地に対し、ストーンウォッシュ法やサンドブラスト法などが用いられており、任意の図柄や文字、商標、ロゴ、ワンポイントマーク等を形成する場合は、レーザーや、公知の捺染脱色、ブリーチ脱色などを用いることができる。このような公知の方法で模様形成した後、本発明の色落ち防止処理(架橋処理)を実施することで、あるいは、本発明の色落ち防止処理と続く模様形成を行った後、もう一度任意の部分を本発明の色落ち防止処理することで、洗濯での色落ち防止を実現でき、初期の色相を保持し、審美性に優れた製品を製造することができる。また、形成した模様の全部又は一部に本発明の色落ち防止処理することで、模様の全部あるいは一部の洗濯退色を抑制することができ、初期の色相からの変化を自在に制御できたり、更に追加の模様を形成することができる。
【0018】
本発明においては、特に、インジゴ染料及び/又は硫化染料、あるいはインジゴ染料及びスレン染料で染色したデニム生地の一部分を架橋処理した後、ブリーチ処理等して未架橋部分を脱色することで模様を出現させる。この場合、色落ち防止箇所(架橋処理部分)はそのまま用いても、消費段階や洗濯での色落ち防止を実現できるが、色落ち防止効果の向上、例えば、色落ち防止箇所の色を淡色にしたい場合、最初の色落ち防止処理(架橋処理)を少量で実施し、ブリーチ処理等により未架橋部分を脱色すると共に、架橋部分は未架橋部分よりも脱色を抑えつつ模様を形成し、次いで追加の色落ち防止処理を行うことで色合いを制御しつつ色落ち抑制を実現することもできる。
【0019】
架橋処理
(1)架橋剤
染色された生地の一部分に対して、セルロースの水酸基と反応し、繊維間に架橋結合を発生させる架橋剤を用いて処理する。本発明で用いられる架橋剤としては、セルロースの水酸基と反応し、架橋を生成するものであればいずれのものでもよい。このような化合物としては、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が挙げられ、具体的には、尿素・ホルムアルデヒド化合物(尿素・ホルムアルデヒド樹脂、尿素誘導体)、メラミン・ホルムアルデヒド化合物(メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン誘導体)、環状尿素化合物(環状尿素型樹脂、エチレン尿素誘導体、ブチレン尿素誘導体)、アルキルカーバメート化合物(アルキルカーバメート樹脂)、アセタール化合物(アセタール樹脂)、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)、オルガノオキシ基又は水酸基含有シリコーン化合物(シリコーン樹脂、シリコーンゾル)、カルボン酸化合物、ポリカルボン酸化合物、スルフォン化合物、第4級アンモニウム塩、1,3−ジクロロ−2−プロパノール誘導体、N−メチロールアクリルアミド等の化合物が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、エポキシ化合物、オルガノオキシ基又は水酸基含有シリコーン化合物、ポリカルボン酸化合物が、効果、物性、反応性、経済性などの点で好ましい。
【0020】
尿素誘導体としては、尿素やモノメチロール尿素、ジメチロール尿素などの公知のものを使用することができる。
【0021】
メラミン誘導体としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基などを含むものが好ましく、その一例として、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−メチロールメラミンや、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−メチル化メチロールメラミン、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−エチル化メチロールメラミン、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−メチル化エチロールメラミン等が挙げられる。これらの中で、ホルマリンの低減のためには、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基を含むものやメラミンとジメトキシエタナールとの反応物などの使用が効果的である。
【0022】
環状尿素型樹脂としては、具体的にはジメチロールエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素及びそのグリコール変性物、ジメチロールトリアゾン、ジメチロールウロン、ジメチロールグリオキザールモノウレイン、ジメチロールプロピレン尿素、これらのメチロール基の一部又は全部をメトキシ化、エトキシ化したもの等があげられる。これらの中では、エチレン尿素タイプが反応性や価格の点で好ましく、ホルマリン低減のためには、メチロール基の一部又は全部をメトキシ化、エトキシ化したもの、あるいは、ノンホル型と呼ばれるジメチルジヒドロキシエチレン尿素などの使用が有効である。
【0023】
オルガノオキシ基又は水酸基含有シリコーン化合物としては、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリエチルブトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルプロポキシシラン、トリプロピルブトキシシラン、トリフェニルヒドロキシシラン等及びこれらの(部分)加水分解縮合物が挙げられ、上記オルガノオキシ基又は水酸基含有シラン化合物を1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらのなかでも特に架橋構造を形成する上でメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のトリオルガノキシシラン、テトラオルガノキシシランが好ましく用いられるが、一官能性や二官能性のシラン化合物もセルロース系繊維と反応させることができるため、本発明においては一乃至四官能性のシラン化合物のいずれも使用することができる。
【0024】
ポリカルボン酸化合物としては、分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有するものが好ましい。具体的には、分子中に2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸が使用できる。例えば飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等を使用することができる。飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ヘプチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオマレイン酸等を使用することができる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサジエン二酸(ムコン酸)、ドデカジエン二酸等を使用することができる。
【0025】
芳香族ジカルボン酸としては、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、メチルフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドリンデンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、カルボキシメチル安息香酸、トリフルオロメチルフタル酸、アゾキシベンゼンジカルボン酸、ヒドラゾベンゼンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ケリダム酸、ピラジンジカルボン酸等を使用することができる。脂環式ジカルボン酸としては、具体的にはヘット酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピペリジン−2,3−ジカルボン酸(ヘキサヒドロキノリン酸)、ピペリジン−2,6−ジカルボン酸(ヘキサヒドロジピコリン酸)、ピペリジン−3,4−ジカルボン酸(ヘキサヒドロシンコメロン酸)等を使用することができる。
【0026】
少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の使用も好ましく、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸、脂肪族ペンタカルボン酸、脂肪族ヘキサカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、カルボン酸ポリマー等を使用することができる。脂肪族トリカルボン酸としては、具体的には、トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸等を使用することができる。
【0027】
脂肪族テトラカルボン酸としては、具体的には、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、エチレンジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジフタル酸、エポキシ化コハク酸二量化物等を使用することができる。
【0028】
脂肪族ペンタカルボン酸としては、具体的には、ジエチレントリアミン五酢酸等を使用することができる。脂肪族ヘキサカルボン酸としては、具体的には、トリエチレンテトラミン六酢酸等を使用することができる。芳香族ポリカルボン酸としては、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等を使用することができる。
【0029】
カルボン酸ポリマーも使用でき、具体的には、アクリル酸重合物、クロトン酸重合物、マレイン酸重合物、イタコン酸(又は無水イタコン酸)重合物、アクリル酸・メタアクリル酸共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、アクリル酸・イタコン酸共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸共重合物、(無水)マレイン酸・α−メチルスチレン共重合物、(無水)マレイン酸・スチレン共重合物(スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸を含む)、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸・アクリル酸アルキル共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル・スチレン共重合物等を使用することができる。これらのポリカルボン酸のうち、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等で水溶性のポリカルボン酸が均一に処理しやすく、作業もしやすいため好ましい。
【0030】
エポキシ化合物としては、分子中に2個以上の反応性官能基を有するものが好ましく、グリシジルエーテル基又はクロルヒドリン基であることが好ましい。具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル,ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエチレングリコール系や、プロピレングリコールジグリシジルエーテル,ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のプロピレングリコール系の分子中に2個の官能基を有するものが挙げられるが、グリセロールグリシジルエーテル等の3個以上の官能基を持つエポキシ系架橋剤でも問題なく使用することが可能である。また、エポキシ変性シリコーンとして、セルロースの水酸基と直接反応するエポキシ基を持つシリコーン誘導体も使用することができる。エポキシ基にはグリシジルタイプのものと脂環式タイプのものとがあるがいずれのタイプでも構わない。これらは単独でも混合系で使用しても構わない。
【0031】
これらの架橋剤のなかでも、メラミン誘導体、エチレン尿素型の環状尿素重合体(樹脂)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のトリオルガノキシシラン、テトラオルガノキシシラン、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、セルロースの水酸基と直接反応するエポキシ基を持つ化合物を好適に用いることができる。
【0032】
これらの架橋剤は、水等に溶解又は分散させた架橋処理液として用いることが好ましく、処理液中の架橋剤の濃度は0.5〜80質量%、特に0.5〜50質量%であることが好ましい。
【0033】
また、生地に対する架橋剤の付着量は、処理前のデニム生地の質量に対して、0.3質量%以上が色落ち防止効果を発揮するために好ましく、25質量%を超えると、色落ち防止効果は更に良好となるが、架橋セルロースの破断強度や引裂強力の低下が顕著になるので、25質量%以下の使用が好ましいが、生地の規格(経、緯糸の種類と数)により架橋セルロースの物性(引張強度や引裂強力など)を高めることができる場合は、架橋量を上げて使用することもできる。例えば、中繊維綿からなる綿糸に変えて、長繊維綿、超長綿あるいは超・超長綿を含む綿糸を一部あるいは全部使用すると引張強度や引裂強力の向上に効果がある。また、当該デニム製品の用途次第では、破断強度や引裂強力の要望範囲が変わるので、品質の許容範囲で実際の架橋量は変化することになる。より好ましくは、0.5〜20質量%であり、特に好ましくは0.5〜18質量%である。なお、架橋量とは、架橋処理前のデニム生地の質量に対する、架橋処理前後の質量増加の割合を言い、下記式で表される。
架橋量[%]={(架橋処理後のデニム生地質量―架橋処理前のデニム生地質量)/架橋処理前のデニム生地質量}×100
【0034】
(2)架橋触媒
本発明の架橋処理には、上記架橋剤とセルロースの反応性を高め、架橋処理を迅速に行うために触媒を添加することができる。この触媒としては、通常、セルロース系繊維の樹脂加工に用いられる触媒であれば特に限定されず、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、エポキシ化合物、シリコーン化合物、アルキルカーバメート樹脂、ポリカルボン酸化合物などは、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化ナトリウム、ホウ弗化カリウム、ホウ弗化亜鉛等のホウ弗化化合物、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の中性金属塩触媒、燐酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、次亜硫酸、ホウ酸、次亜リン酸ナトリウム等の無機酸などが挙げられる。これらの触媒には、必要に応じて助触媒としてクエン酸、酒石酸、林檎酸、マレイン酸等の有機酸などを併用することもできる。
【0035】
これらの架橋触媒の使用量は、上記架橋剤に対して0.01〜400質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜300質量%である。架橋触媒の使用量が少なすぎると、反応収率が低下して架橋量が少なく効果が不足したりする場合があり、多すぎると、セルロース系繊維の酸分解などにより繊維の強度を低下したり、変色の原因になる場合がある。
【0036】
なお、ポリカルボン酸を用いる場合は、予めpH調整剤を添加してポリカルボン酸(水)溶液のpHを調整しておくのが望ましい。pH領域は、通常1〜6、好ましくは2〜5の範囲内とするのがよい。該液のpHが上記範囲より高くなると、色落ち防止効果が発現され難くなる傾向となり、一方該液のpHが上記範囲より低くなると、セルロースの加水分解により繊維強度の低下が大きくなる傾向となるので、好ましくない。pH調整剤としては、通常アルカリ又はその塩が用いられる。pH調整剤の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。また上記pH調整剤のナトリウムに代わり、カリウム、アンモニウム等や、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性低級アミンの塩も使用できる。これらは1種単独で又は2種以上混合して用いられる。これらpH調整剤の使用量は、上記エステル及びポリカルボン酸の溶解量や種類により異なり一概には言えないが、処理液中に通常0.1〜10質量%程度配合するのがよい。
【0037】
(3)架橋助剤
また、架橋剤には、必要に応じて、セルロースと架橋剤との反応を円滑に進めるための助剤を添加することができる。助剤は、架橋剤とセルロースの反応を促進させたり、架橋生成反応においても反応を均一に進めるといった反応溶媒としての作用、更にはセルロースを膨潤させる作用等を有するものである。
【0038】
上記助剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類、ジメチルホルムアミド、モルホリン、2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素溶媒類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン等のエステル類などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
架橋助剤の使用量は、架橋剤に対して1〜400質量%が好ましく、より好ましくは5〜300質量%である。少なすぎると反応を円滑にする効果がない場合があり、多すぎるとセルロースの脆化を招いたり、架橋処理後に生地から助剤を除去することが煩雑になる場合がある。
【0040】
(4)その他の成分
本発明の架橋処理には、上述の成分の他に、必要に応じて、風合い調整用の柔軟剤や、遊離ホルマリン濃度低減のためのホルマリンキャッチャー、浸透剤としての界面活性剤等を添加することもできる。メラミン誘導体や環状尿素型樹脂などホルマリンを発生するおそれのあるものはホルマリンキャッチャー剤との併用が、架橋セルロースが硬くなることで引裂強力や引張強度が低下する場合は柔軟剤の併用が、架橋剤溶液の生地への浸透性が低い場合は、浸透剤の併用が好ましい。
【0041】
(5)架橋処理方法
デニム生地を架橋処理する方法として、通常のパッド・ドライ法、浸漬法、含浸法、印捺法、インクジェット印刷法、レーザープリンター印刷法、塗布法、噴霧法等の公知の方法を採用することができるので、適宜効率的な方法、品質上好ましい方法を採用すればよい。例えば生地全体に処理する場合は、パッド・ドライ法が効率的で好ましい。製品全域に処理する場合は、浸漬法や噴霧法で処理すると手軽に実施できる。製品の一部を処理する場合は、噴霧法が効率的である。例えば、架橋処理しない部分を所望の形状をしたマスキング等で覆い、その上からマスキング部分を含む生地全体に架橋処理液を噴霧することで、マスキングした部分以外に処理液を付着させることができる。また、所望の形状に型抜きしたシート等を生地の上にセットし、型抜きされた部分だけに処理液を噴霧して付着させることもできる。
【0042】
更に、上記方法で架橋処理するに際し、コンピューターなどの画像処理装置を組み合わせることで、任意の図柄や文字、商標、ロゴ、ワンポイントマーク等を形成することが一層容易になる。なお、インクジェット印刷方式などで精巧な柄を形成する場合、液の滲み、にじみ、濃度むら等のない鮮明な図柄を得る目的で、上記処理液に、公知の増粘剤、浸透剤、粘着剤、カチオン処理剤などを添加することができる。
【0043】
架橋処理液を生地に付着させた後、熱処理する。熱処理は、70〜220℃、特に80〜200℃で0.5〜180分間、特に1〜120分間行うことが好ましい。上記条件を下回ると、反応収率が低下し架橋量が少なくなり効果が低下する場合があり、上回ると、セルロース繊維や架橋セルロース繊維が脆化する場合がある。
【0044】
洗い加工(脱色加工)
少なくとも一部が色落ち防止(架橋処理)されたデニム生地をブリーチ加工、ストーンウォッシュ加工、バイオ加工、水洗加工などの洗い加工をすると、色落ち防止処理された部分は、処理の強さ(架橋剤の付着量又は架橋量)に応じて色落ちが抑制され、色落ち防止処理のない箇所は、色落ち防止箇所に対してインジゴ染料、硫化染料、スレン染料の素材色の色落ちが大きくなる結果、任意の図柄や文字、商標、ロゴ、ワンポイントマーク等を形成することができる。
【0045】
模様の内部を濃くし、模様の周囲部を薄くしたり、模様の内部を薄くし、模様の周囲部を濃くしたり、任意の箇所の濃淡を制御することで、インジゴ染料や、硫化染料、スレン染料の素材色の色相の違いだけで様々な模様を形成することが可能になる。模様を形成する素材色の濃淡については、前述した通り、色落ち防止処理の強さに応じて変更することができ、セルロース系繊維との架橋量を多くすることで、色落ち防止効果を高めつつ色の変化をなくしたり、セルロース系繊維との架橋量を少なくすることで薄くすることができる。
【0046】
また、ブリーチ加工、ストーンウォッシュ加工、バイオ加工、水洗加工などの洗い加工の処理の強さによっても、模様の濃淡を調整することができる。ここで、色落ち防止処理した部分は、消費段階や洗濯でも色の変化が少なく、色落ち防止処理していない箇所との濃淡差を大きくすることができる。模様が形成された後に、任意の箇所に色落ち防止処理すると、この色落ち防止処理した箇所は、消費段階や洗濯でも初期の色相を保つこともできる。
【0047】
この場合、本発明においては、ブリーチ加工が、模様の濃淡の調整、グラディエーションや精巧な模様の形成、簡便で安価であることなどの点から好ましい。ブリーチ加工には、次亜塩素酸ソーダ等の塩素系漂白剤を0.1〜40質量%添加した水溶液を用いることが好ましい。上記処理液を用いて浴比1:5〜1:50で、常温(25℃)〜100℃で5〜120分間処理することが好ましい。ブリーチ処理に用いる溶液の濃度、温度、時間等の条件を調整することで、脱色の程度を変えることができ、目的により条件を適宜選定することが好ましい。
【0048】
その後、中和処理し、水洗、乾燥することが好ましい。このように、染色したデニム生地を部分的に架橋処理した後、ブリーチ処理することで、架橋処理した部分は脱色されず、未架橋処理部分が脱色されて、所定の形状の模様を出現させることができる。
【0049】
本発明においては、上記以外の方法でもデニム生地を部分的に架橋処理し、模様を形成することができる。例えば、製品全体を色落ち防止処理(架橋処理)した後、架橋反応を分解するための脱架橋反応液を製品の一部に付与して、架橋結合の分解反応(脱架橋処理)を行うことで、色落ち防止効果を低減又は除去せしめ、次いでこのデニム生地又はデニム製品をブリーチ加工、ストーンウォッシュ加工、バイオ加工などの洗い加工をすることで模様を形成することもできる。脱架橋反応溶液としては、セルロース系繊維と架橋剤の化学結合を分解するための公知の薬剤を使用することができる。例えば、アルカリ溶液を用いることで容易に実施することができる。具体的には、脱架橋反応用として濃度1〜10モル/Lの水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ溶液を色落ち防止処理(架橋処理)した箇所に、生地質量の5〜200質量%付与し、20〜140℃で5分〜24時間熱処理(湿熱及び/又は乾熱処理)して分解反応を実施することで、分解反応した部位は、続くブリーチ加工、ストーンウォッシュ加工、バイオ加工、水洗加工などの洗い加工によって色落ちが大きくなり、素材色で模様が形成できる。
【0050】
また、色落ち防止処理(架橋処理)した箇所をシェービング処理など公知の方法で表面を削ることで、架橋処理部位の少なくとも一部を除去することができ、色落ち防止効果を低減せしめ、次いでこのデニム生地又はデニム製品をブリーチ加工、ストーンウォッシュ加工、バイオ加工などの洗い加工をすることで模様を形成することもできる。
【0051】
また、架橋処理液を付着させた段階で、所望の形状に型抜きしたシート等を生地上にセットし、型抜きされた部分にだけ水等の架橋剤が溶解する溶媒を噴霧して拭き取る等して架橋処理液を除去し、ブリーチ処理等することで、型抜きした形状の模様を形成することもできる。
【0052】
耐湿摩擦性向上処理
(1)耐湿摩擦性向上剤
次に、得られた生地を耐湿摩擦性向上処理する。本発明者らが検討した結果、上記方法により架橋処理された生地に対し、種々の耐湿摩擦性向上剤を付与することで、湿摩擦堅牢度向上に一層の効果があることがわかった。
耐湿摩擦性向上剤としては、接着剤(バインダー)、フィックス剤、柔軟剤、固定化剤などを単独あるいは併用して用いることができるが、繊維が本来有している風合いを維持できるよう、風合い硬化しない柔軟な剤や、処理した時に色合いの変化が少ないもの、洗濯耐久性の高いもの、退色堅牢性が高いものを1種単独であるいは2種以上を併用して使用することが好ましい。
【0053】
更に、インジゴ染料、硫化染料、スレン染料で染色されたデニム生地については、通常、湿摩擦堅牢度は乾摩擦堅牢度より性能が低く、湿度が高い状態、湿った状態、ぬれた状態、あるいは洗濯の最中に当該デニム生地から他の衣類や資材にインジゴ染料、硫化染料、スレン染料が移染することなどから、湿摩擦堅牢度の向上が特に要望されている。本発明においては、湿摩擦堅牢度が向上すれば、乾摩擦堅牢度も処理前と同等ないし同等以上に性能は向上するものであるが、耐湿摩擦性向上剤あるいはその他の薬剤として60℃以下の温度で融解したり粘着性を生じるもの、綿の吸水性より高いものなどを使用すると乾摩擦堅牢度が低下することがあり、耐湿摩擦性向上剤の選択にあたっては湿摩擦堅牢度向上と共に乾摩擦堅牢度の性能低下を招かない処理の選択が好ましい。
【0054】
本発明に使用できる接着剤(バインダー)としては、セルロース系繊維への接着が高いもの、接着後に表面硬化せず、繊維の風合いを維持できる剤の使用が好ましく、例えば、アクリル系水性エマルジョン、ビニルアルコール系水性エマルジョン、酢酸ビニル系水性エマルジョン、エチレン酢酸ビニル系水性エマルジョン、エチレンビニルアルコール系水性エマルジョン、ウレタン系水性エマルジョン、スチレン−ブタジエン系合成ラテックス等が挙げられる。洗濯耐久性を高める方法としては、例えば、使用する接着剤自体をセルロースや架橋剤、耐湿摩擦性向上剤と直接反応させる方法、あるいは、架橋剤や他の耐湿摩擦性向上剤と相溶性の高い剤を使用することができる。
【0055】
本発明に使用できるフィックス剤としては、カチオン系のフィックス剤やカチオン系のポリマーを使用することができる。天然系ポリマーとしては、例えば、カチオン化デンプン、キトサン系などが使用でき、合成系ポリマーとしては、例えば、ポリジアルキルアミノエチルアクリレートやポリジアルキルアミノエチルメタクリレートの4級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン4級塩、ジシアンジアミドとホルマリンとの縮合物、アルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、カチオン変性ポリビニルアルコールなどを使用することができる。カチオン系のフィックス剤、カチオン系の高分子を接着剤としてそのまま用いてもよい。
【0056】
本発明に使用できる柔軟剤としては、繊維相互の摩擦を低減し、洗濯耐久性の高いもの、インジゴ染料、硫化染料、スレン染料に対して非溶出性の剤が好ましく、例えばシリコーン系化合物が使用できる。シリコーン系化合物としては、架橋剤として挙げたものも使用できるが、より好ましい例として具体的には、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等の変性シリコーン、及びこれらの複合変性シリコーン、並びにその他の有機変性シリコーン等が挙げられる。洗濯耐久性を高める方法としては、使用する柔軟剤自体をセルロースや架橋剤、耐湿摩擦性向上剤と直接反応させる方法、あるいは、架橋剤や他の耐湿摩擦性向上剤と相溶性の高い剤を使用する方法などがあり、メチルハイドロジェンシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、シランカップリング剤を含むものを使用するとよい。
【0057】
本発明に使用できる固定化剤としては、セルロースの水酸基や、色落ち防止を目的としてセルロースと架橋した部位と反応するもの、耐湿摩擦性向上剤として用いた接着剤、フィックス剤、柔軟剤と反応するものを用いることができる。耐湿摩擦性向上剤として反応性の剤を用いる場合は、反応基の種類に応じた触媒を使用することができる。例えば反応基がイソシアネート基の場合は、公知の錫系やアミン系触媒を使用することができる。
【0058】
好ましい固定化剤としては、反応性や保存安定性の点でアルコール系化合物、メラミン系及び尿素系化合物、アミン化合物、ウレタン系化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸系化合物、エポキシ系化合物などが挙げられる。アニオン系又は非イオン系のものを用いる場合は、カチオン化剤を併用すると反応を円滑に進めることができる。この場合、カルボン酸系化合物、エポキシ系化合物としては、架橋剤として挙げたものと同じものでも違うものでもよいが、固定化剤として用いられるものは、比較的低温で反応するもの、反応性の高いものが経済上、生地の風合い上、他の湿摩擦処理剤の選択範囲を広げる(耐熱性の低いもの、生地に柔らかい風合いを与える処理剤を広く使用できる)上で好ましい。
【0059】
耐湿摩擦性向上剤としては、柔軟剤としてシリコーン系化合物に加え、イソシアネート基と反応する水酸基を含有する化合物、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、グリコールアセタール、ペンタエリストールビスアセタールなどのアセタール樹脂等のアルコール系化合物;メラミン、尿素、N−オクタデシル−N,N−エチレン尿素などのエチレン尿素化合物等のメラミン系や尿素系化合物;ブタンジアミンやエチレンジアミン等のアミン化合物;脂肪族、脂環族又は芳香族イソシアネート化合物と、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカプロラクトン系、ポリカーボネート系、ポリアクリル系などのポリオール化合物とから得られるウレタン系化合物;脂肪族、脂環族又は芳香族イソシアネート化合物を用い、構造的には線状、イソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型、アロファネート型などであって、末端にはイソシアネート基あるいはブロック剤でブロックされたイソシアネート基を持つイソシアネート化合物;3個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸系化合物;グリシジル型又は脂環式型のエポキシ系化合物から選ばれる固定化剤を併用すると、繊維が本来有している風合いを維持しつつ、洗濯耐久性が高く、良好な耐湿摩擦堅牢度を得るので特に好ましい。上記固定化剤は水溶性か水に分散又は乳化しやすいものが操作上もしくは均一な品質を与える上で好ましい。更に、接着剤やカチオン化剤を併用すると効果が高くなる。この場合、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びメルカプト変性シリコーンから選ばれるシリコーン系化合物と、上記したイソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型又はアロファネート型の末端イソシアネート基含有イソシアネート化合物又はブロックイソシアネート化合物を含む耐湿摩擦性向上剤を用いることが好ましい。
【0060】
これらの耐湿摩擦性向上助剤のデニム生地(架橋処理後)に対する付着量は、固形分で0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜30質量%である。付着量が少なすぎると湿摩擦向上効果が乏しい場合があり、多すぎると効果は変わらず薬剤の使用量が多くなったり、乾摩擦堅牢度が低下する場合がある。
【0061】
(2)処理方法
上記耐湿摩擦性向上助剤を濃度0.1〜20g/L、特に0.2〜10g/Lの割合で水等の溶媒に溶解又は分散させ、浴比1:5〜1:160で、5〜80℃で1〜180分間処理することが好ましい。続いて、そのまま、あるいは、水洗を実施した後、脱水機を用いて脱水することが好ましい。操作は、一度だけでなく何回も繰り返して行うこともできる。
【0062】
最後に、40〜200℃で1〜600分間熱処理し、生地を乾燥させることが好ましい。
【0063】
ここで、本発明により色落ちが防止される理由の詳細は不明であるが、セルロース系繊維間が架橋剤で結合され、インジゴ染料や硫化染料あるいはスレン染料が溶出する空隙が小さくなること、洗濯時のフィブリル化が抑制される結果、インジゴ染料や硫化染料、スレン染料の溶出増大を防いでいること、及び耐湿摩擦性向上剤との併用により効果的に繊維間の摩擦が低減できること、インジゴ染料や硫化染料あるいはスレン染料の溶出抑制効果が増加することなどが関係している可能性がある。
洗い加工として、塩素ブリーチすると生地の表面に付着したインジゴ染料、硫化染料、スレン染料を除去する効果で処理後の色落ちが少なくなることは公知であったが、塩素ブリーチの処理中に、ベース生地や製品全体のインジゴ染料、硫化染料やスレン染料が脱落することで生地全体が退色し、その結果、塩素ブリーチ処理を行い、色落ち防止効果の高い濃色デニムはできなかった。本発明では、ブリーチ処理しても、ベース生地や製品全体の退色を抑えつつ、架橋部位より表面に残存するインジゴ染料、硫化染料、スレン染料を除去することができるので、色落ち防止効果や摩擦堅牢度が一層高い、濃色デニムを得ることができる。
【0064】
具体的には、本発明のデニム製品は、濃色部と淡色部とからなる模様を有しており、該濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上、特に2級以上(インジゴ染色又はインジゴ染色及びスレン染色のとき)であって、色落ち防止に対してこれまでにない高い効果がある。
【0065】
また、本発明のデニム製品は、上記濃色部が、JIS L0849(摩擦試験機II型)に準拠した湿摩擦堅牢度が1−2級以上、特に2級以上、とりわけ2−3級以上であり、実衣料(下着、中着、上着等)と同程度の湿摩擦堅牢度であり、製品使用時や、洗濯による汚染を抑制する効果もこれまでになく高い。
【0066】
本発明のデニム製品としては、上述した処理をして得られるデニム生地自体も含まれ、パンツ、シャツ等のデニム衣類、デニムバッグ、カーテン、シート等のデニムインテリア等が挙げられる。具体的には、パンツやズボン類、スカート類、シャツ類、ジャンパー類、制服やユニフォーム類、下着類、靴下類等の衣類、カーテン、シートカバー、テーブルクロス、壁紙等のインテリアが例示される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、部は質量部を表す。
【0068】
[加工液の調製]
下記方法により加工液A1〜A4、B1,B2を調製した。
加工液A1
水82部にメチル化トリメチロールメラミン(固形分濃度50質量%)8部、グリコール変性ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(固形分濃度60質量%、構造式(1))5部、尿素1部、触媒として塩化マグネシウム水溶液(固形分濃度20質量%)を4部投入して30分混合を続け、加工液A1を調製した。
【化1】

n=1〜2
【0069】
加工液A2
水81部にメチル化トリメチロールメラミン(固形分濃度50質量%)14部、尿素1部、触媒として塩化マグネシウム水溶液(固形分濃度20質量%)を4部投入して30分混合を続け、加工液A2を調製した。
【0070】
加工液A3
酢酸でpH3.5に調整した水56部を50℃で温調した後、メチルトリエトキシシラン10部を加えたところ二層になったが、引き続き45分間混合することで、加水分解により層分離は解消された。次に、メチル化トリメチロールメラミン(固形分濃度50質量%)14部、尿素1部、触媒として塩化マグネシウム水溶液(固形分濃度20質量%)を4部投入して1時間混合を続け、最後に濃度調整のため水を15部加え、加工液A3を調製した。
【0071】
加工液A4
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬工業(株)製)を9部、触媒として次亜リン酸ナトリウム・1水和物(関東化学(株)製)を10部、触媒及びpH調整のために1N水酸化ナトリウム15部を準備した。それらに水を66部加えて混合し、それぞれ溶解させ、加工液A4を調製した。
【0072】
加工液B1
40℃の水500部に、柔軟剤としてシリコーン1(KF101、信越化学工業(株)製)を0.6部、シリコーン2(X−22−160AS、信越化学工業(株)製)を0.3部、接着剤1(スミカフレックス400HQ、住友化学(株)製)を2部、カチオン化剤(ユニセンスKCA100L、センカ(株)製)を0.4部、固定化剤1(コロネートHXLV、日本ポリウレタン工業(株)製)を1.0部投入し、更に40℃の水を加えて全量を1000部として、1分間よく混合し、加工液B1を調製した。
【0073】
加工液B2
40℃の水500部に、柔軟剤としてシリコーン3(BY16−839、東レ・ダウコウニング(株)製)を0.6部、シリコーン2(X−22−160AS、信越化学工業(株)製)を0.2部、接着剤2(スミカフレックス950HQ、住友化学(株)製)を1.5部、カチオン化剤(ユニセンスKCA101L、センカ(株)製)を0.2部、固定化剤2(デュラネートWT30−100、旭化成ケミカルズ(株)製)を1.0部投入し、更に40℃の水を加えて全量を1000部として、1分間よく混合し、加工液B2を調製した。
【0074】
[実施例1〜4]
架橋反応処理1及びブリーチ処理
上記で作成した加工液A1〜A4を付与する生地として、綿100質量%デニム生地[インジゴ染料で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織されたデニム生地]からなるデニムパンツを準備した。
半径6cmの円をくりぬいたポリエチレンシートからなるターゲットをパンツひざ下10cmのところに置き、上記加工液A1〜A4を夫々ターゲットの中(円の中)に均一に噴霧することで、ターゲットの生地質量に対して60質量%分付与した。更に160℃の乾燥機中で6分間熱処理し、反応させた。
次いで、得られたデニムパンツを以下の条件でブリーチ処理すると、円の内側だけが色落ち抑制され、一方、円の外側は色落ちした淡色となり、円の内側が濃色の円模様が形成できた。
【0075】
[実施例5〜8]
架橋反応処理2及びブリーチ処理
架橋反応処理1と同じデニムパンツを用いて、ポリエチレン製の半径6cmの円板を、パンツひざ下10cmのところに置き、この円板を除く部位に加工液A1〜A4を均一に噴霧することで、噴霧部位(円板内を除く部位)の生地質量に対して60質量%分付与した。更に160℃の乾燥機中で6分間熱処理し、反応させた。
次いで、得られたデニムパンツを以下の条件でブリーチ処理すると、円板の内側だけが色落ちした淡色となり、一方、円板の外側は色落ちが抑制され、円の内側が淡色の円模様が形成できた。
【0076】
[実施例9〜12]
架橋反応処理3及びブリーチ処理
ポリエチレン製の半径6cmの円板をパンツひざ下10cmのところに置かない以外は架橋反応処理2と同様にして、デニムパンツ全体に加工液A1〜A4を均一に噴霧することで、噴霧部位(パンツ全体)の生地質量に対して60質量%分付与した。更に80℃の乾燥機で60分間乾燥させた。
次に、半径6cmの円をくりぬいたポリエチレンシートからなるターゲットを、パンツひざ下10cmのところに置き、このターゲットの中(円の中)に水を均一に噴霧することで、ターゲットの生地質量に対して200質量%分付与した。その後、乾いたタオルで水をふき取り、この操作を3回繰り返すことで最初に付与した架橋剤を水で除去した。続いて、160℃の乾燥機中で6分間熱処理し、反応させた。
次いで、得られたデニムパンツを以下の条件でブリーチ処理すると、円の内側だけが色落ちした淡色となり、一方、円の外側は色落ちが抑制され、円の内側が淡色の円模様が形成できた。
【0077】
ブリーチ処理は次の通り行った。
ブリーチ処理
(1)ワッシャーを使用して、次亜塩素酸ソーダ(有効塩素12質量%以上)20g/L、浴比1:20の条件で20分間ブリーチ処理する。
(2)次いで、水洗い(常温:25℃)を実施する。5分間処理を2回繰り返す。
(3)6g/Lのチオ硫酸ナトリウムで中和処理する。60℃で10分間処理する。
(4)次いで、水洗い(40℃)を実施する。5分間処理を2回繰り返す。
(5)最後に、水洗い(常温:25℃)を実施する。5分間処理を1回行う。
【0078】
[実施例13〜16、比較例1]
耐湿摩擦性向上処理
架橋反応処理2及びブリーチ処理を終えたデニムパンツを、浴比1:60の割合で加工液B1又はB2が入った洗濯機に投入し、40℃で15分間洗った(洗濯機の回転数は145rpm、3秒正回転−2秒停止−3秒逆回転の繰り返し)。具体的には、加工液A1と加工液B1、加工液A2と加工液B2、加工液A3と加工液B1、加工液A4と加工液B2の組み合わせで実施した。加工液は、調製したものを直ちに使用した。
続いて、脱水した製品を、浴比1:80の割合で水が入った洗濯機に投入し、40℃で15分間洗い(洗濯機の回転数は145rpm、3秒正回転−2秒停止−3秒逆回転の繰り返し)、次いで脱水した。最後にタンブル乾燥機で120℃、10分間熱処理し、乾燥させた。
【0079】
架橋反応処理2と耐湿摩擦性向上処理を終えたデニムパンツそれぞれの架橋反応処理部分について、以下の方法で評価試験を行った。また、比較として、加工液A1〜A4の代わりに水を用いた以外は、架橋反応処理2と耐湿摩擦性向上処理を行ったパンツ(比較例1)を同様に評価した。
【0080】
■摩擦堅牢度試験
摩擦堅牢度試験は、JIS L0849(摩擦試験機II型)に準拠して架橋処理部分を評価した。
摩擦用白布としては、JIS L0803指定の綿を使用し、当該摩擦用白綿布の着色の判定は、JIS L0801のa(視感法)、b(計器法)に準拠して実施した。等級が大きいほど摩擦堅牢度が高いことを表す。結果を表2に示す。
■色落ち防止評価
色落ち試験としては、JIS L0856塩素漂白に対する染色堅牢度試験方法の強試験に準拠して架橋処理部分を評価した。
色落ちの判定は、JIS L0801のa(視感法)に準拠して実施した。
色落ち防止の効果を数値化するために、次の式で効果を数値化した。
[色落ち防止評価等級]=
[架橋セルロース箇所の変退色等級]−[未架橋セルロース箇所の変退色等級]
なお、変退色等級のうち、1−2級、2−3級、3−4級、4−5級は、夫々、1.5、2.5、3.5、4.5として計算した。1級、2級、3級、4級、5級は、夫々1.0、2.0、3.0、4.0、5.0として計算した。
いずれも等級が大きいほど色落ち防止効果が高いことを表す。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

※1 架橋反応処理2と湿摩擦性向上処理を終えたデニムパンツを用いて色落ちの程度を
計測し、未架橋セルロース箇所としては、比較例1の架橋反応処理2と湿摩擦性向
上処理を終えたデニムパンツを用いた。
ΔE*abは、JIS Z8722により測定し、JIS Z8730により求めた、色落ち試験前と試験後の当該生地の色差を表す。
【0082】
【表2】

※2 等級が1級に達しないことを示す。
【0083】
架橋セルロース箇所の変退色については、インジゴ染料で染色されたデニム生地については、2級以上であり、色落ち防止評価としては、好ましくは0.5級以上であれば、模様形成に効果がある。色落ち防止評価としては、1.0級以上の差があれば、模様の形成効果は更に好ましい。
【0084】
[実施例17〜20、比較例2〜5]
架橋反応処理4及び耐湿摩擦性向上処理
以下のP1〜P4の4種類の綿100質量%デニム生地からなるデニムパンツを準備し、このデニムパンツの表面の一部をブラッシングで削りとった後、ストーンウォッシュを行い、中古加工の模様を形成した。次いで、デニムパンツ全体に加工液A1〜A4をそれぞれ均一に噴霧することで、噴霧部位(パンツ全体)の生地質量(未処理の生地)に対して60質量%分付与した。更に160℃の乾燥機中で6分間熱処理し、反応させた(実施例17〜20)。
次いで、得られたデニムパンツを実施例13〜16と同様の方法で耐湿摩擦性向上処理を行った。加工液の組み合わせは、具体的には、加工液A1と加工液B1、加工液A2と加工液B2、加工液A3と加工液B1、加工液A4と加工液B2の組み合わせで実施した。加工液は、調製したものを直ちに使用した。
次に、色落ち防止評価した結果、加工液Aを噴霧しなかった以外は実施例17〜20と同様に処理した中古加工風デニムパンツ(比較例2〜5)に比べて、表3、表4の効果を得た。
P1:
インジゴ染料で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織された綿100質量%デニム生地。
P2:
インジゴ染料で染色された後に、スレン染料(黄色)で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織された綿100質量%デニム生地。
P3:
インジゴ染料で染色された後に、硫化染料(黒色)で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織された綿100質量%デニム生地。
P4:
硫化染料で染色された経糸(綿100質量%、9番手単糸、67本/インチ)と、緯糸(綿100質量%、9番手単糸、52本/インチ)を用いて、3/1右綾組織で製織された綿100質量%デニム生地。
【0085】
【表3】

※3 色落ち防止評価の未架橋セルロース箇所として、対応する比較例2〜5の任意の箇
所を用いた。
ΔE*abは、JIS Z8722により測定し、JIS Z8730により求めた、色落ち試験前と試験後の当該生地の色差を表す。
【0086】
【表4】

※2 等級が1級に達しないことを示す。
【0087】
架橋セルロース箇所の変退色については、インジゴ染料で染色されたデニム生地については、2級以上であり、色落ち防止評価としては、好ましくは0.5級以上であれば、模様形成に効果がある。色落ち防止評価としては、1.0級以上の差があれば、模様の形成効果は更に好ましい。インジゴ染料及び硫化染料あるいは硫化染料で染色されたデニム製品については、1−2級以上であり、色落ち防止評価としては、好ましくは0.5級以上であれば効果がある。色落ち防止評価としては、1.0級以上の差があれば更に好ましい。
【0088】
[実施例21]
ポリエチレン製の半径6cmの円板をパンツひざ下10cmのところに置かない以外は架橋反応処理2と同様にして、デニムパンツ全体に加工液A2を均一に噴霧することで、噴霧部位(パンツ全体)の生地質量に対して60質量%分付与した。更に80℃の乾燥機で30分間乾燥させた後、160℃の乾燥機中で6分間熱処理し、反応させた。
次に、半径6cmの円をくりぬいたポリエチレンシートからなるターゲットを、パンツひざ下10cmのところに置き、このターゲットの中(円の中)に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を均一に噴霧することで、ターゲットの生地質量に対して60質量%分付与し、続いて80℃乾熱で5分静置した後、120℃湿熱下で10分間静置した。次に、大量の流水で残存する水酸化ナトリウムを除去し、酸で中和した後再水洗し乾燥した。
更に、得られたデニムパンツを実施例13〜16と同様の条件でブリーチ処理すると、円の内側だけが色落ちした淡色となり、一方、円の外側は色落ちが抑制され、円の内側が淡色の円模様が形成できた。円の外側の濃色部分の摩擦堅牢度試験(乾燥及び湿潤)及び色落ち防止評価の結果は共に良好であった。
このように、架橋セルロースの架橋部位の分解薬剤として公知である、酸、アルカリ、有機溶剤などで処理すると、当該処理部位は脱架橋反応により未架橋部位となり、模様を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色された、濃色部及び淡色部からなる模様のあるデニム製品であって、該濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上であることを特徴とする模様のあるデニム製品。
【請求項2】
上記濃色部が、JIS L0856強試験に準拠した塩素漂白による色変化が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で2級以上である請求項1記載の模様のあるデニム製品。
【請求項3】
上記濃色部が、JIS L0849に準拠した湿摩擦堅牢度(たて方向)が、JIS L0801に準拠した変退色の判定で1−2級以上である請求項1又は2記載の模様のあるデニム製品。
【請求項4】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、未架橋処理部分とを有し、該未架橋処理部分を脱色して模様を形成してなる請求項1又は2記載の模様のあるデニム製品。
【請求項5】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、前記架橋処理部分の一部を酸又は塩基で脱架橋処理してなる脱架橋処理部分とを有し、該脱架橋処理部分を脱色して模様を形成してなる請求項1又は2記載の模様のあるデニム製品。
【請求項6】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、未架橋処理部分とを有し、該未架橋処理部分を脱色して模様を形成すると共に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン系化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤で処理することにより得られた請求項3記載の模様のあるデニム製品。
【請求項7】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地を、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理剤で処理してなる架橋処理部分と、前記架橋処理部分の一部を酸又は塩基で脱架橋処理してなる脱架橋処理部分とを有し、該脱架橋処理部分を脱色して模様を形成すると共に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、アミン系化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤で処理することにより得られた請求項3記載の模様のあるデニム製品。
【請求項8】
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項4乃至7のいずれか1項記載の模様のあるデニム製品。
【請求項9】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地に対し、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理液を部分的に付着させて熱処理し、続いて上記架橋処理液を付着させていない未架橋処理部分を脱色して模様を形成することを特徴とする模様のあるデニム製品の製造方法。
【請求項10】
インジゴ染料及び/又は硫化染料で染色された、又はインジゴ染料及びスレン染料で染色されたデニム生地に対し、窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物を含有する架橋処理液を付着させて熱処理した後、前記架橋処理部分の一部を酸又は塩基で脱架橋反応させ、次いで該脱架橋反応部分を脱色して模様を形成することを特徴とする模様のあるデニム製品の製造方法。
【請求項11】
窒素原子、カルボキシル基、エポキシ基、オルガノオキシ基及び水酸基のいずれかを含む化合物が、尿素誘導体、メラミン誘導体、環状尿素化合物、ポリカルボン酸化合物、エポキシ化合物又はオルガノオキシ基もしくは水酸基含有シリコーン化合物である請求項9又は10記載の模様のあるデニム製品の製造方法。
【請求項12】
更に、シリコーン系化合物、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、アルコール系化合物、メラミン系化合物、尿素系化合物、アミン系化合物、カルボン酸系化合物及びエポキシ系化合物の少なくとも1種を含む耐湿摩擦性向上剤を付着させ、熱処理することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の模様のあるデニム製品の製造方法。
【請求項13】
耐湿摩擦性向上剤が、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン及びメルカプト変性シリコーンから選ばれるシリコーン系化合物と、イソシアヌレート型、アダクト型、ビュレット型又はアロファネート型の末端イソシアネート基含有イソシアネート化合物又はブロックイソシアネート化合物とを含む請求項12記載の模様のあるデニム製品の製造方法。

【公開番号】特開2010−144279(P2010−144279A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322122(P2008−322122)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】