樹木保護部材
【課題】種々の大きさの樹木に装着可能で、構成が簡素で安価であり、資源再利用にも資する樹木保護部材を提供する。
【解決手段】樹木保護部材100は、樹木の周囲に装着されて、樹木を保護可能であり、互いに略平行に並べられた複数の細長い略平板状の板状部材10と、板状部材10の長手方向と交差する方向に配置されて、板状同士の間で折曲自在となるように各板状を連結する複数の横連結部材20と、板状部材10の長手方向が保護対象の樹木の延長方向と一致する姿勢で、板状同士の間を横連結部材20で折曲させ、板状部材10を円筒状として樹木の周囲を囲んだ状態において、板状部材10が樹木から外れないように板状部材10同士を任意の位置で固定するための結束部材30とを備える。
【解決手段】樹木保護部材100は、樹木の周囲に装着されて、樹木を保護可能であり、互いに略平行に並べられた複数の細長い略平板状の板状部材10と、板状部材10の長手方向と交差する方向に配置されて、板状同士の間で折曲自在となるように各板状を連結する複数の横連結部材20と、板状部材10の長手方向が保護対象の樹木の延長方向と一致する姿勢で、板状同士の間を横連結部材20で折曲させ、板状部材10を円筒状として樹木の周囲を囲んだ状態において、板状部材10が樹木から外れないように板状部材10同士を任意の位置で固定するための結束部材30とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事等で樹木が破損される事態を回避するため、これを保護する樹木保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山間部を切り開いて道路や鉄道を引いたり、宅地やゴルフ場等を造成する際、造成に支障のある樹木については、伐採して現状地形を掘削したり埋戻しをしながら、造成計画に基づいて造成工事が行われていた。一方で工事対象区域の境界部分については、樹木を伐採する必要はないが、クレーンやブルドーザ等の重機や作業用機械、車両が樹木に接触して傷付けることが生じていた。また一方で、近年は自然環境を守る意味からも、工事に支障にならない樹木は極力残す努力がなされている。
【0003】
また一方では、植樹した苗木や成長した樹木の樹皮を獣害から保護するために、苗木や樹木等に巻き付けて使用する植樹保護部材も知られている。山林等に植樹した苗木や成長した樹木等の樹皮が、鹿その他の動物により食われ、成長が阻害され或いは枯死する等の被害が多発している。そのために、植樹した苗木を板状体或いは筒状体で囲い、或いは、樹木にネット状の囲いを取り付ける等の被害防止手段を講じている。
【0004】
このような、工事や獣害から樹木を保護するためには、樹木の周囲を保護する保護材を各樹木の周囲に配置する必要がある。このような樹木の保護材はツリーシェルターやツリープロテクター等とも呼ばれ、幾つか開発されている。例えば特許文献1には、図1に示すようなツリーシェルターが開示される。このツリーシェルターは、4本の縦折り線で内面側に折り曲げて左右両端の重ね代51、55を重ねたとき、四角筒体を形成する第1プラスチックシート部と、第1プラスチックシート部との境界部の横折り線で内面側に折り曲げたとき、四角筒体に穴のある底板体を形成する第2プラスチックシート部とよりなる1枚の光透過性を有するコルゲート構造のプラスチックシート50と、このプラスチックシート50の外面側に取り付けた、四角筒体を土中に立設した支持杭に固定するためのバンド56とを備え、第1プラスチックシート部の第2プラスチックシート部側の端部が黒色となっている。このツリーシェルターはこれにより、組み立てと支持杭への固定を簡単かつ容易にする、雑草の生育を抑える、保温性と耐候性を改善する等の効果が得られる。
【0005】
また特許文献2には、図2及び図3に示すような植樹保護部材が開示される。この植樹保護部材60は、複数のモノ又はマルチフィラメントを、その方向性をランダムに重ね合わせ、各フィラメントの接点において互に熱融着してなる所定長の不織布帯をその幅方向に平行する複数の折り目によりアコーデオン状に屈折している。また、フィラメントにポリオレフィン繊維の太繊度糸を用いた。そして、太繊度糸のフィラメントをランダム方向に重ねることによりフィラメント間に空隙を多く形成し通気性を保持させてなる不織布63としている。これにより、山林原野で長期に亘って使用しても、屈折倒伏の心配が少なく強度の低下を来たすことなく、害獣により破損されるされることなく、その施工時にも、軽量で、樹木の太さに合致した寸法に切断するというようなことはなく、樹木の太さに関係なくそのまま固定手段68で巻き付け、容易に施工することが出来、施工後は適宜の通気通水性をを有し樹木苗木に成育上の悪影響の出ることがなく、廃棄時に焼却しても有毒ガスを出すことのない植樹保護部材を得ることができる。
【特許文献1】特開平10−327685号公報
【特許文献2】特開2001−251977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係るツリーシェルターでは、保護する木材の大きさが特定されてしまうという問題点があった。木は、それぞれ幹の太さや形状が異なるため、種々の大きさ、形状の木に対して養生するためには、異なる大きさに形成した複数のツリーシェルターを用意しておく必要があり、コストがかかる。またこれらのツリーシェルターは嵩張るため、保管のための場所をとる上管理も大変であった。加えて、木が生長して大きさが変わった場合は、一旦ツリーシェルターを外して、適切な大きさのツリーシェルターに交換する作業が必要となり、手間もかかるという問題があった。
【0007】
また特許文献2に係る植樹保護部材では、樹木の太さの変化に対応できるという利点はあるが、製造コストが高くなるという問題がある。特にフィラメントにポリオレフィン繊維の太繊度糸を使用し、このフィラメントをランダム方向に重ねることによりフィラメント間に空隙を多く形成し通気性を保持させた不織布を使用しているため、特定の原材料を特定の製法で形成する必要があり、製造コストが高くなる。さらに、この植樹保護部材は側面を折曲したアコーディオン状としているため、側面に複数条の突起が形成されることとなり、逆に作業者を傷付ける虞があった。また木の周囲を完全に人工物で覆ってしまうことは景観の面でも好ましくない。さらにまた、この植樹保護部材では幹の太さが均一な樹木に対しては装着できるが、幹の太さが不均一な樹木には装着することが困難であるという問題があった。樹木によっては部分的に太くなったり細くなったりする幹があり、また根元に近い部分等では末広がりに幹が太くなるため、根元付近の幹を十分保護できないという欠点があった。
【0008】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するために成されたものである。本発明の第1の目的は、種々の大きさの樹木に装着可能であり、一旦装着した後は放置しておくことも可能な樹木保護部材を提供することにある。また本発明の第2の目的は、安価に製造できる上、樹皮の被覆物から突起を無くし、安全性と見栄えを改善した樹木保護部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の樹木保護部材は、樹木の周囲に装着されて、樹木を保護可能な樹木保護部材であって、互いに略平行に並べられた複数の細長い略平板状の板状部材と、板状部材の長手方向と交差する方向に配置されて、板状同士の間で折曲自在となるように各板状を連結する複数の横連結部材と、板状部材の長手方向が保護対象の樹木の延長方向と一致する姿勢で、板状同士の間を横連結部材で折曲させ、板状部材を円筒状として樹木の周囲を囲んだ状態において、板状部材が樹木から外れないように板状部材同士を任意の位置で固定するための結束部材とを備える。これにより、樹木保護部材は板状部材を横連結部材で連結しており柔軟に折曲できるので、樹木の周囲を囲んでこれを保護できる上、樹木の太さに応じて結束部材の固定位置を調整できるため、種々の太さに対応できる。
【0010】
また、第2の樹木保護部材は、結束部材が伸縮性部材で構成されている。これにより、樹木の太さに応じた装着がよりスムーズになり、かつ弾性的に板状部材を樹木の側面に押圧して固定できると共に、樹木保護部材を装着後に樹木が生長しても、伸縮性部材が伸縮するため、樹木保護部材を一旦装着した後は、これを取り外すことなく使用でき、樹木の生長に応じて装着し直す手間を省くことができる。
【0011】
さらに、第3の樹木保護部材は、横連結部材がベルト状であり、複数枚のベルト状横連結部材で各板状部材の両面を狭持すると共に、隣接する板状部材同士の間で複数枚のベルト状横連結部材が交差されている。これにより、ベルト状の横連結部材を使って極めて簡単に複数の板状部材を連結でき、フレキシブルに折曲可能な樹木保護部材を構成できる。
【0012】
さらにまた、第4の樹木保護部材は、板状部材が、長手方向にも連結されており、かつ長手方向に隣接する板状部材同士の間を長手方向連結部材で折曲自在に連結している。これにより、板状部材を長手方向にもフレキシブルに折曲できるので、樹木の太さが部分的に変化したり、根元で末広がりとなった部分の幹も被覆可能とでき、より柔軟性に優れた樹木保護部材とできる。
【0013】
さらにまた、第5の樹木保護部材は、板状部材が、間伐材で構成されている。これにより、樹木保護部材を安価に構成できると共に間伐材の有効利用を図り、環境に配慮した構成とすることができる。また、樹木保護部材を木で構成し、樹木を板で覆うことにより違和感なく樹木保護部材を装着できる。
【0014】
さらにまた、第6の樹木保護部材は、横連結部材が、廃材で構成されている。これにより、板状部材の連結にタイヤチューブ等の廃材が利用でき、安価でなおかつ資源の有効利用も図ることができる。
【0015】
さらにまた、第7の樹木保護部材は、板状部材の表面を着色している。これにより、板状部材に色彩を付してイメージアップを図ることができ、また黄色と黒のストライプ等を構成することで、作業現場であることを示して周囲に注意を喚起する効果も得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹木保護部材は、複数の板状部材を折曲連結した簡単な構成により、様々な太さの樹木の周囲を囲むことができる。この樹木保護部材は構成が簡素で安価である上、強度も十分でしっかりと樹木を保護でき、養生材として理想的である。さらに間伐材やタイヤチューブ等の廃材を有効利用して、リサイクルや環境にも貢献できるという優れた特長も備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための樹木保護部材を例示するものであって、本発明は樹木保護部材を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態1)
【0018】
図4〜図5に、本発明の実施の形態1に係る樹木保護部材を示す。図4は、樹木保護部材100の平面図、図5は図4の樹木保護部材100の使用状態を示す斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す樹木保護部材100は、互いに略平行に並べられた細長い略平板状の板状部材10を、横連結部材20で複数枚連結して、フレキシブルに折曲自在としている。
(板状部材10)
【0019】
板状部材10は、図4に示すようにほぼ等しい長さ、幅の平板状の板であり、好ましくは木製の板とする。板は強度も十分で通気性に優れ、また外観も木を木で覆う構成となるため、木を覆う違和感が少なく馴染みやすいという利点が得られる。より好ましくは、間伐材で構成する。間伐材はこれまで十分な用途がなかったため、放棄され、森林荒廃の一因となっていた。このため間伐材を有効活用する用途が求められており、本実施の形態に係る樹木保護部材に利用することで、木を保護するという直接的な効果に加えて、間伐材の利用促進が図られ、この面からも森林保護が促進される。
【0020】
また、必要に応じて板状部材10の表面を着色したり、模様を付す等の装飾を加えてもよい。例えば板状部材をプラスチックボードとする場合、木目調のシールや木の葉等の緑を模した模様のシールを貼付してイメージアップを図ることもできる。あるいは、一本おきに板状部材を黄色と黒色に着色してストライプ模様を構成し、あるいは一本の板状部材毎に黄色と黒色のストライプパターンを構成して、作業現場であることを示して周囲に注意を喚起することもできる。
(横連結部材20)
【0021】
板状部材10の横幅、長さ、使用する枚数等は、装着対象の樹木の種類、太さ、樹齢等に応じて適宜選択される。これら複数の板状部材10は、横連結部材20で連結され、板状部材10同士の間で折曲可能として、図5に示すように複数の板状部材10を連結した樹木保護部材100で樹木の周囲を覆うことが可能となる。横連結部材20は、好ましくは板状部材10の長手方向において各端部近傍に設けられ、図4の例では2箇所に横連結部材20を設けている。各横連結部材20は、ひも状、あるいはベルト状で、板状部材の長手方向と交差する方向に配置されて、各板状部材を縛る、あるいは2本の横連結部材20で板状部材の両面を挟み込む、ないしは捲回するようにして、順次板状部材を結んでいく。例えば図6の断面図に示す横連結部材20は、2本のひも状とし、各板状部材10を両面から挟み込むと共に、端部で2本のひも状横連結部材20を結んで、板状部材10が抜け落ちないように結束する。また図7の断面図に示す例では、2本のベルト状横連結部材20を使用し、板状部材10の両面からベルトで挟み込むと共に、端部でベルトを交差させ、隣接する板状部材10では2本のベルトの前後が入れ替わるように、各横連結部材20をS字状に折り返して板状部材10の両面を狭持する。このように2本の横連結部材20を板状部材10と交差させるように走らせて、順次締結して結束する方法は、極めて簡単な構成で板状部材をカーテン状に連結することができる。また2本の横連結部材20に限らず、4本あるいは3本以上のひも状、ベルト状板状部材を利用してさらに強固に連結することもできる。あるいは図8に示すように、1本の横連結部材20であっても、板状部材を順次捲回していくことで複数枚の板状部材を連結することもできる。また横連結部材20として、金属製のワイヤやチェーン等を使用することも可能である。
【0022】
さらに、横連結部材20で板状部材10の周囲を締結した状態で、板状部材10が抜け落ちないようにする抜け落ち防止構造を設けることが好ましい。抜け落ち防止構造としては、例えば締結後の横連結部材20を跨ぐようにU字型の股釘(ステップル)を板状部材10に打ち付けたり、予め板状部材10に固定された釘やフック等に横連結部材20を巻き付けたり、板状部材10の表面に部分的に段差や窪みを設けて、この部分に横連結部材20を捲回して、段差部で横連結部材20の位置ずれを防止する等の構造が、適宜利用できる。
【0023】
図6〜図8に示すように、板状部材10同士の間に横連結部材20を通して連結すると、板状部材10同士の間に適度な隙間が形成されるため、この部分で十分な通気性が確保され、樹木の表面が被覆されて生長の妨げとなる事態が回避される。特に板状部材に板等の通気性に優れた部材を利用することで、樹木の生長は十分に維持される。また一方で、板状部材の隙間から樹皮が部分的に露出して、獣害を十分に阻止できなくなることを回避するため、特に獣害から保護する目的で樹木保護部材を利用する場合は、この隙間が少なくなるように構成される。
【0024】
このようにして、板状部材10をフレキシブルに折曲可能とすることで、様々な形状の樹木の幹に樹木保護部材を装着することができる。特に、従来のツリーシェルター等では、中空円筒状の内径を一定の大きさに固定しているため、樹木の幹の太さが異なる場合には使用できなかったり、余った部分を現場で切断して太さを調整しなければならないといった問題があったが、本実施の形態によれば、板状部材10で幹の周囲を囲んで余った部分はさらに重ねて捲くことが可能であるため、幹の太さに応じて内径を調整可能な、自由度の高い樹木保護部材が実現される。
(結束部材30)
【0025】
樹木の周囲に捲回した後は、結束部材30で板状部材10同士を任意の位置で固定し、板状部材10が樹木から外れないようにする。結束部材30は、ベルトやバックル等を板状部材の上から捲回して固定する等、別部材で構成することもできるが、好ましくは予め樹木保護部材に設けることで、結束部材30の紛失等を回避して固定作業をスムーズに行うことができる。結束部材30は、例えば端部に位置する板状部材にフックや紐等を固定しておき、端部の板状部材同士のフックや紐等を係止、締結することで結束できる。また、板状部材の長さが余った場合でも、フックを適当な位置の板状部材に係止したり、あるいは端部の板状部材に設けられた紐を樹木保護部材の上から巻いて固定してもよい。
【0026】
図9は、結束部材30の一例として、端部の板状部材10にフック31を設けた例を示している。この例では、ゴムバンドの先端にS字状のフック31を装着しており、フック31同士を係止して、あるいは板状部材や横連結部材20等に適宜引っ掛けることによって、容易に連結することが可能となる。また、フックに限られず、いわゆるプラスチックバックルやナスカンといった、カギ状、駒状のバックルやピン、キー、リング等、十分な連結の強度を発揮できる連結金具が適宜利用できる。さらにこのような金具を使用せず、ゴムバンドや紐等を直接締結することも可能である。さらに永久的に固定する場合は、接着材や釘による固定も可能である。なお図9の例は、フック31の係止状態を説明するため、後述する図10と同様に板状部材10で幹の周囲を完全に被覆しない例を示しているが、板状部材10の枚数を多くして幹の周囲を完全に覆うように構成できることはいうまでもない。この際の結束部材30も、例えば一方の板状部材10の端部から引き出した紐で幹の周囲を捲回し、終端のフック31で適当な位置の板状部材10の端面に係止する等の方法で固定できる。
【0027】
より好ましくは、結束部材30を別部材とせず、横連結部材20であるひも状やベルト状を端部の板状部材から引き出して、これらを結束部材30に兼用する。これによって別部材を用意することなく、板状部材の連結と固定を一の部材で行うことができ、構成を簡素化してさらに安価に実現できる。
【0028】
図4の例では、結束部材30と兼用する横連結部材20は板状部材10の長手方向に2カ所設けているが、3カ所以上とすることも可能であることはいうまでもない。より多くの位置で、好ましくはほぼ等間隔に横連結部材で板状部材を連結することにより、より強固に確実に板状部材を連結して樹木に固定できる。
【0029】
横連結部材20は、好ましくは伸縮性を有する部材を使用する。これによって板状部材を弾性的に押圧、締結して、弾性部材の連結をより強固にすると共に、幹の太さの対応をさらに柔軟にできる。例えば幹が太い樹木に装着する場合は、板状部材同士の間を広くし、細い樹木に装着する場合は板状部材同士の間を狭くして、太さの変化にも柔軟に対応できる。さらに結束部材30にも併用することで、締結の際にも弾性を発揮して確実且つ強固に樹木保護部材を木に固定できる。さらに、樹木の生育に応じて太さが変わったとしても、伸縮性を有する横連結部材であればそのまま使用することができるという優れた利点が得られる。従来は、特に成長著しい樹木を保護するために樹木保護部材を使用する場合は、樹木の生長に応じてより大きな樹木保護部材に交換しなければならないという手間がかかっていた。またこの場合は交換作業が大変なことに加えて、異なる太さの樹木保護部材を用意する必要がある等、コストや管理、破棄等の手間もかかるという問題もあった。これに対して、伸縮性を有する横連結部材であれば、樹木が生長してもそのまま使用し続けることができるので、維持管理が極めて容易であるという優れた特長を有する。
【0030】
このような伸縮性を有する横連結部材20には、ゴム製のバンドや紐等が利用できる。さらに好ましくは、タイヤチューブ等の廃材を横連結部材20として利用する。タイヤチューブは入手が容易で強度的にも十分であり、廃材利用の横連結部材20として理想的である。特に間伐材とタイヤチューブという、従来処分に困っていた廃材を有効利用することで、資源の活用にも貢献でき、樹木の保護という本来の目的に加えて、ひいては自然環境、地球に優しい廃材利用方法としても貢献できる。
【0031】
この樹木保護部材は、樹木の周囲を覆うことにより、外部から樹木を保護する。例えば森林開発や道路工事等の際に、不要な樹木を伐採せずに、かつ作業用の重機等の接触による損傷を防止するために利用できる。あるいは、植樹した苗木や成長した樹木の樹皮を獣害から保護するためのツリープロテクターやツリーシェルターとしても利用できる。このような保護のためには、樹木の全周を樹木保護部材で覆うことが好ましいが、利用態様によっては図10に示すように部分的に被覆するような状態でも使用できる。例えば工事現場等で、重機が接触する虞のある側が限られているような場合、崖に面して伸びている樹木で、山側のみを保護すれば足りる場合等が考えられる。
(実施の形態2)
【0032】
上記の例では、一枚の板状部材10を一方向に平行に連結して樹木保護部材100を構成したが、板状部材10を長手方向にも複数枚隣接させ、且つこの界面も折曲可能とすることもできる。次に実施の形態2として、図11、図12に示す樹木保護部材200について説明する。これらの図に示す樹木保護部材200は、板状部材10A、10Bを長手方向に2枚並べ、これらの間を長手方向連結部材40で折曲自在に連結し、さらに平行方向に隣接する板状部材は上記と同様に横連結部材20で折曲自在に連結している。
【0033】
長手方向連結部材40は、図11の例ではゴムバンドを使用し、対向する板状部材10の端部近傍に開口部を形成し、この開口部にゴムバンドを通して結束することにより、折曲自在としている。長手方向連結部材40は、この構成に限られず、例えば板状ゴム等の可撓性部材を接着したり、蝶板等の回動軸を固定したりする構成も採用できる。これにより、板状部材10を長手方向にもフレキシブルに折曲できるようになり、樹木の太さの部分的な変化にも対応可能となる。特に図12に示すように、根元で末広がりとなった部分の幹の近傍でも被覆可能とでき、根元付近を保護したい用途に好適に利用できる。このように板状部材10を長手方向に2分割し、分割した境界部分に長手方向連結部材40を配置する簡単な構成により、さらに柔軟に樹木保護部材を利用することが可能となる。
【0034】
また、図11、図12の例では、実施の形態1で説明した樹木保護部材を2段に並べたような形態としているが、板状部材を2枚連結する構成に限られず、3枚以上とすることも可能であることはいうまでもない。また、連結する板状部材の長さを変更することも可能であり、例えば長手方向連結部材40を介して追加する板状部材を短くして、根元の部分のみが開いて幹にフィットするように構成する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の樹木保護部材は、例えば森林開発や道路工事、林道工事、造成工事、土木工事、公共工事や森林伐採等の際に、作業用の重機の接触による損傷等を回避する養生材として、あるいは植樹した苗木や成長した樹木の樹皮を獣害から保護するためのツリープロテクターやツリーシェルターとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来のツリーシェルターの使用状態を示す斜視図である。
【図2】従来の植樹保護部材を示す斜視図である。
【図3】図2の植樹保護部材の使用状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る樹木保護部材を示す平面図である。
【図5】図4の樹木保護部材の使用状態を示す斜視図である。
【図6】横連結部材で板状部材を連結する一例を示す断面図である。
【図7】横連結部材で板状部材を連結する他の例を示す断面図である。
【図8】横連結部材で板状部材を連結するさらに他の例を示す断面図である。
【図9】結束部材で板状部材の端部を結束する状態を示す斜視図である。
【図10】樹木保護部材で樹木の幹を部分的に被覆する例を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る樹木保護部材を示す平面図である。
【図12】図11の樹木保護部材の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
100、200…樹木保護部材
10、10A、10B…板状部材
20…横連結部材
30…結束部材
31…フック
40…長手方向連結部材
50…プラスチックシート
51…重ね代
55…重ね代
56…バンド
60…植樹保護部材
63…不織布
68…固定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事等で樹木が破損される事態を回避するため、これを保護する樹木保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山間部を切り開いて道路や鉄道を引いたり、宅地やゴルフ場等を造成する際、造成に支障のある樹木については、伐採して現状地形を掘削したり埋戻しをしながら、造成計画に基づいて造成工事が行われていた。一方で工事対象区域の境界部分については、樹木を伐採する必要はないが、クレーンやブルドーザ等の重機や作業用機械、車両が樹木に接触して傷付けることが生じていた。また一方で、近年は自然環境を守る意味からも、工事に支障にならない樹木は極力残す努力がなされている。
【0003】
また一方では、植樹した苗木や成長した樹木の樹皮を獣害から保護するために、苗木や樹木等に巻き付けて使用する植樹保護部材も知られている。山林等に植樹した苗木や成長した樹木等の樹皮が、鹿その他の動物により食われ、成長が阻害され或いは枯死する等の被害が多発している。そのために、植樹した苗木を板状体或いは筒状体で囲い、或いは、樹木にネット状の囲いを取り付ける等の被害防止手段を講じている。
【0004】
このような、工事や獣害から樹木を保護するためには、樹木の周囲を保護する保護材を各樹木の周囲に配置する必要がある。このような樹木の保護材はツリーシェルターやツリープロテクター等とも呼ばれ、幾つか開発されている。例えば特許文献1には、図1に示すようなツリーシェルターが開示される。このツリーシェルターは、4本の縦折り線で内面側に折り曲げて左右両端の重ね代51、55を重ねたとき、四角筒体を形成する第1プラスチックシート部と、第1プラスチックシート部との境界部の横折り線で内面側に折り曲げたとき、四角筒体に穴のある底板体を形成する第2プラスチックシート部とよりなる1枚の光透過性を有するコルゲート構造のプラスチックシート50と、このプラスチックシート50の外面側に取り付けた、四角筒体を土中に立設した支持杭に固定するためのバンド56とを備え、第1プラスチックシート部の第2プラスチックシート部側の端部が黒色となっている。このツリーシェルターはこれにより、組み立てと支持杭への固定を簡単かつ容易にする、雑草の生育を抑える、保温性と耐候性を改善する等の効果が得られる。
【0005】
また特許文献2には、図2及び図3に示すような植樹保護部材が開示される。この植樹保護部材60は、複数のモノ又はマルチフィラメントを、その方向性をランダムに重ね合わせ、各フィラメントの接点において互に熱融着してなる所定長の不織布帯をその幅方向に平行する複数の折り目によりアコーデオン状に屈折している。また、フィラメントにポリオレフィン繊維の太繊度糸を用いた。そして、太繊度糸のフィラメントをランダム方向に重ねることによりフィラメント間に空隙を多く形成し通気性を保持させてなる不織布63としている。これにより、山林原野で長期に亘って使用しても、屈折倒伏の心配が少なく強度の低下を来たすことなく、害獣により破損されるされることなく、その施工時にも、軽量で、樹木の太さに合致した寸法に切断するというようなことはなく、樹木の太さに関係なくそのまま固定手段68で巻き付け、容易に施工することが出来、施工後は適宜の通気通水性をを有し樹木苗木に成育上の悪影響の出ることがなく、廃棄時に焼却しても有毒ガスを出すことのない植樹保護部材を得ることができる。
【特許文献1】特開平10−327685号公報
【特許文献2】特開2001−251977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係るツリーシェルターでは、保護する木材の大きさが特定されてしまうという問題点があった。木は、それぞれ幹の太さや形状が異なるため、種々の大きさ、形状の木に対して養生するためには、異なる大きさに形成した複数のツリーシェルターを用意しておく必要があり、コストがかかる。またこれらのツリーシェルターは嵩張るため、保管のための場所をとる上管理も大変であった。加えて、木が生長して大きさが変わった場合は、一旦ツリーシェルターを外して、適切な大きさのツリーシェルターに交換する作業が必要となり、手間もかかるという問題があった。
【0007】
また特許文献2に係る植樹保護部材では、樹木の太さの変化に対応できるという利点はあるが、製造コストが高くなるという問題がある。特にフィラメントにポリオレフィン繊維の太繊度糸を使用し、このフィラメントをランダム方向に重ねることによりフィラメント間に空隙を多く形成し通気性を保持させた不織布を使用しているため、特定の原材料を特定の製法で形成する必要があり、製造コストが高くなる。さらに、この植樹保護部材は側面を折曲したアコーディオン状としているため、側面に複数条の突起が形成されることとなり、逆に作業者を傷付ける虞があった。また木の周囲を完全に人工物で覆ってしまうことは景観の面でも好ましくない。さらにまた、この植樹保護部材では幹の太さが均一な樹木に対しては装着できるが、幹の太さが不均一な樹木には装着することが困難であるという問題があった。樹木によっては部分的に太くなったり細くなったりする幹があり、また根元に近い部分等では末広がりに幹が太くなるため、根元付近の幹を十分保護できないという欠点があった。
【0008】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するために成されたものである。本発明の第1の目的は、種々の大きさの樹木に装着可能であり、一旦装着した後は放置しておくことも可能な樹木保護部材を提供することにある。また本発明の第2の目的は、安価に製造できる上、樹皮の被覆物から突起を無くし、安全性と見栄えを改善した樹木保護部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の樹木保護部材は、樹木の周囲に装着されて、樹木を保護可能な樹木保護部材であって、互いに略平行に並べられた複数の細長い略平板状の板状部材と、板状部材の長手方向と交差する方向に配置されて、板状同士の間で折曲自在となるように各板状を連結する複数の横連結部材と、板状部材の長手方向が保護対象の樹木の延長方向と一致する姿勢で、板状同士の間を横連結部材で折曲させ、板状部材を円筒状として樹木の周囲を囲んだ状態において、板状部材が樹木から外れないように板状部材同士を任意の位置で固定するための結束部材とを備える。これにより、樹木保護部材は板状部材を横連結部材で連結しており柔軟に折曲できるので、樹木の周囲を囲んでこれを保護できる上、樹木の太さに応じて結束部材の固定位置を調整できるため、種々の太さに対応できる。
【0010】
また、第2の樹木保護部材は、結束部材が伸縮性部材で構成されている。これにより、樹木の太さに応じた装着がよりスムーズになり、かつ弾性的に板状部材を樹木の側面に押圧して固定できると共に、樹木保護部材を装着後に樹木が生長しても、伸縮性部材が伸縮するため、樹木保護部材を一旦装着した後は、これを取り外すことなく使用でき、樹木の生長に応じて装着し直す手間を省くことができる。
【0011】
さらに、第3の樹木保護部材は、横連結部材がベルト状であり、複数枚のベルト状横連結部材で各板状部材の両面を狭持すると共に、隣接する板状部材同士の間で複数枚のベルト状横連結部材が交差されている。これにより、ベルト状の横連結部材を使って極めて簡単に複数の板状部材を連結でき、フレキシブルに折曲可能な樹木保護部材を構成できる。
【0012】
さらにまた、第4の樹木保護部材は、板状部材が、長手方向にも連結されており、かつ長手方向に隣接する板状部材同士の間を長手方向連結部材で折曲自在に連結している。これにより、板状部材を長手方向にもフレキシブルに折曲できるので、樹木の太さが部分的に変化したり、根元で末広がりとなった部分の幹も被覆可能とでき、より柔軟性に優れた樹木保護部材とできる。
【0013】
さらにまた、第5の樹木保護部材は、板状部材が、間伐材で構成されている。これにより、樹木保護部材を安価に構成できると共に間伐材の有効利用を図り、環境に配慮した構成とすることができる。また、樹木保護部材を木で構成し、樹木を板で覆うことにより違和感なく樹木保護部材を装着できる。
【0014】
さらにまた、第6の樹木保護部材は、横連結部材が、廃材で構成されている。これにより、板状部材の連結にタイヤチューブ等の廃材が利用でき、安価でなおかつ資源の有効利用も図ることができる。
【0015】
さらにまた、第7の樹木保護部材は、板状部材の表面を着色している。これにより、板状部材に色彩を付してイメージアップを図ることができ、また黄色と黒のストライプ等を構成することで、作業現場であることを示して周囲に注意を喚起する効果も得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹木保護部材は、複数の板状部材を折曲連結した簡単な構成により、様々な太さの樹木の周囲を囲むことができる。この樹木保護部材は構成が簡素で安価である上、強度も十分でしっかりと樹木を保護でき、養生材として理想的である。さらに間伐材やタイヤチューブ等の廃材を有効利用して、リサイクルや環境にも貢献できるという優れた特長も備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための樹木保護部材を例示するものであって、本発明は樹木保護部材を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施の形態1)
【0018】
図4〜図5に、本発明の実施の形態1に係る樹木保護部材を示す。図4は、樹木保護部材100の平面図、図5は図4の樹木保護部材100の使用状態を示す斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す樹木保護部材100は、互いに略平行に並べられた細長い略平板状の板状部材10を、横連結部材20で複数枚連結して、フレキシブルに折曲自在としている。
(板状部材10)
【0019】
板状部材10は、図4に示すようにほぼ等しい長さ、幅の平板状の板であり、好ましくは木製の板とする。板は強度も十分で通気性に優れ、また外観も木を木で覆う構成となるため、木を覆う違和感が少なく馴染みやすいという利点が得られる。より好ましくは、間伐材で構成する。間伐材はこれまで十分な用途がなかったため、放棄され、森林荒廃の一因となっていた。このため間伐材を有効活用する用途が求められており、本実施の形態に係る樹木保護部材に利用することで、木を保護するという直接的な効果に加えて、間伐材の利用促進が図られ、この面からも森林保護が促進される。
【0020】
また、必要に応じて板状部材10の表面を着色したり、模様を付す等の装飾を加えてもよい。例えば板状部材をプラスチックボードとする場合、木目調のシールや木の葉等の緑を模した模様のシールを貼付してイメージアップを図ることもできる。あるいは、一本おきに板状部材を黄色と黒色に着色してストライプ模様を構成し、あるいは一本の板状部材毎に黄色と黒色のストライプパターンを構成して、作業現場であることを示して周囲に注意を喚起することもできる。
(横連結部材20)
【0021】
板状部材10の横幅、長さ、使用する枚数等は、装着対象の樹木の種類、太さ、樹齢等に応じて適宜選択される。これら複数の板状部材10は、横連結部材20で連結され、板状部材10同士の間で折曲可能として、図5に示すように複数の板状部材10を連結した樹木保護部材100で樹木の周囲を覆うことが可能となる。横連結部材20は、好ましくは板状部材10の長手方向において各端部近傍に設けられ、図4の例では2箇所に横連結部材20を設けている。各横連結部材20は、ひも状、あるいはベルト状で、板状部材の長手方向と交差する方向に配置されて、各板状部材を縛る、あるいは2本の横連結部材20で板状部材の両面を挟み込む、ないしは捲回するようにして、順次板状部材を結んでいく。例えば図6の断面図に示す横連結部材20は、2本のひも状とし、各板状部材10を両面から挟み込むと共に、端部で2本のひも状横連結部材20を結んで、板状部材10が抜け落ちないように結束する。また図7の断面図に示す例では、2本のベルト状横連結部材20を使用し、板状部材10の両面からベルトで挟み込むと共に、端部でベルトを交差させ、隣接する板状部材10では2本のベルトの前後が入れ替わるように、各横連結部材20をS字状に折り返して板状部材10の両面を狭持する。このように2本の横連結部材20を板状部材10と交差させるように走らせて、順次締結して結束する方法は、極めて簡単な構成で板状部材をカーテン状に連結することができる。また2本の横連結部材20に限らず、4本あるいは3本以上のひも状、ベルト状板状部材を利用してさらに強固に連結することもできる。あるいは図8に示すように、1本の横連結部材20であっても、板状部材を順次捲回していくことで複数枚の板状部材を連結することもできる。また横連結部材20として、金属製のワイヤやチェーン等を使用することも可能である。
【0022】
さらに、横連結部材20で板状部材10の周囲を締結した状態で、板状部材10が抜け落ちないようにする抜け落ち防止構造を設けることが好ましい。抜け落ち防止構造としては、例えば締結後の横連結部材20を跨ぐようにU字型の股釘(ステップル)を板状部材10に打ち付けたり、予め板状部材10に固定された釘やフック等に横連結部材20を巻き付けたり、板状部材10の表面に部分的に段差や窪みを設けて、この部分に横連結部材20を捲回して、段差部で横連結部材20の位置ずれを防止する等の構造が、適宜利用できる。
【0023】
図6〜図8に示すように、板状部材10同士の間に横連結部材20を通して連結すると、板状部材10同士の間に適度な隙間が形成されるため、この部分で十分な通気性が確保され、樹木の表面が被覆されて生長の妨げとなる事態が回避される。特に板状部材に板等の通気性に優れた部材を利用することで、樹木の生長は十分に維持される。また一方で、板状部材の隙間から樹皮が部分的に露出して、獣害を十分に阻止できなくなることを回避するため、特に獣害から保護する目的で樹木保護部材を利用する場合は、この隙間が少なくなるように構成される。
【0024】
このようにして、板状部材10をフレキシブルに折曲可能とすることで、様々な形状の樹木の幹に樹木保護部材を装着することができる。特に、従来のツリーシェルター等では、中空円筒状の内径を一定の大きさに固定しているため、樹木の幹の太さが異なる場合には使用できなかったり、余った部分を現場で切断して太さを調整しなければならないといった問題があったが、本実施の形態によれば、板状部材10で幹の周囲を囲んで余った部分はさらに重ねて捲くことが可能であるため、幹の太さに応じて内径を調整可能な、自由度の高い樹木保護部材が実現される。
(結束部材30)
【0025】
樹木の周囲に捲回した後は、結束部材30で板状部材10同士を任意の位置で固定し、板状部材10が樹木から外れないようにする。結束部材30は、ベルトやバックル等を板状部材の上から捲回して固定する等、別部材で構成することもできるが、好ましくは予め樹木保護部材に設けることで、結束部材30の紛失等を回避して固定作業をスムーズに行うことができる。結束部材30は、例えば端部に位置する板状部材にフックや紐等を固定しておき、端部の板状部材同士のフックや紐等を係止、締結することで結束できる。また、板状部材の長さが余った場合でも、フックを適当な位置の板状部材に係止したり、あるいは端部の板状部材に設けられた紐を樹木保護部材の上から巻いて固定してもよい。
【0026】
図9は、結束部材30の一例として、端部の板状部材10にフック31を設けた例を示している。この例では、ゴムバンドの先端にS字状のフック31を装着しており、フック31同士を係止して、あるいは板状部材や横連結部材20等に適宜引っ掛けることによって、容易に連結することが可能となる。また、フックに限られず、いわゆるプラスチックバックルやナスカンといった、カギ状、駒状のバックルやピン、キー、リング等、十分な連結の強度を発揮できる連結金具が適宜利用できる。さらにこのような金具を使用せず、ゴムバンドや紐等を直接締結することも可能である。さらに永久的に固定する場合は、接着材や釘による固定も可能である。なお図9の例は、フック31の係止状態を説明するため、後述する図10と同様に板状部材10で幹の周囲を完全に被覆しない例を示しているが、板状部材10の枚数を多くして幹の周囲を完全に覆うように構成できることはいうまでもない。この際の結束部材30も、例えば一方の板状部材10の端部から引き出した紐で幹の周囲を捲回し、終端のフック31で適当な位置の板状部材10の端面に係止する等の方法で固定できる。
【0027】
より好ましくは、結束部材30を別部材とせず、横連結部材20であるひも状やベルト状を端部の板状部材から引き出して、これらを結束部材30に兼用する。これによって別部材を用意することなく、板状部材の連結と固定を一の部材で行うことができ、構成を簡素化してさらに安価に実現できる。
【0028】
図4の例では、結束部材30と兼用する横連結部材20は板状部材10の長手方向に2カ所設けているが、3カ所以上とすることも可能であることはいうまでもない。より多くの位置で、好ましくはほぼ等間隔に横連結部材で板状部材を連結することにより、より強固に確実に板状部材を連結して樹木に固定できる。
【0029】
横連結部材20は、好ましくは伸縮性を有する部材を使用する。これによって板状部材を弾性的に押圧、締結して、弾性部材の連結をより強固にすると共に、幹の太さの対応をさらに柔軟にできる。例えば幹が太い樹木に装着する場合は、板状部材同士の間を広くし、細い樹木に装着する場合は板状部材同士の間を狭くして、太さの変化にも柔軟に対応できる。さらに結束部材30にも併用することで、締結の際にも弾性を発揮して確実且つ強固に樹木保護部材を木に固定できる。さらに、樹木の生育に応じて太さが変わったとしても、伸縮性を有する横連結部材であればそのまま使用することができるという優れた利点が得られる。従来は、特に成長著しい樹木を保護するために樹木保護部材を使用する場合は、樹木の生長に応じてより大きな樹木保護部材に交換しなければならないという手間がかかっていた。またこの場合は交換作業が大変なことに加えて、異なる太さの樹木保護部材を用意する必要がある等、コストや管理、破棄等の手間もかかるという問題もあった。これに対して、伸縮性を有する横連結部材であれば、樹木が生長してもそのまま使用し続けることができるので、維持管理が極めて容易であるという優れた特長を有する。
【0030】
このような伸縮性を有する横連結部材20には、ゴム製のバンドや紐等が利用できる。さらに好ましくは、タイヤチューブ等の廃材を横連結部材20として利用する。タイヤチューブは入手が容易で強度的にも十分であり、廃材利用の横連結部材20として理想的である。特に間伐材とタイヤチューブという、従来処分に困っていた廃材を有効利用することで、資源の活用にも貢献でき、樹木の保護という本来の目的に加えて、ひいては自然環境、地球に優しい廃材利用方法としても貢献できる。
【0031】
この樹木保護部材は、樹木の周囲を覆うことにより、外部から樹木を保護する。例えば森林開発や道路工事等の際に、不要な樹木を伐採せずに、かつ作業用の重機等の接触による損傷を防止するために利用できる。あるいは、植樹した苗木や成長した樹木の樹皮を獣害から保護するためのツリープロテクターやツリーシェルターとしても利用できる。このような保護のためには、樹木の全周を樹木保護部材で覆うことが好ましいが、利用態様によっては図10に示すように部分的に被覆するような状態でも使用できる。例えば工事現場等で、重機が接触する虞のある側が限られているような場合、崖に面して伸びている樹木で、山側のみを保護すれば足りる場合等が考えられる。
(実施の形態2)
【0032】
上記の例では、一枚の板状部材10を一方向に平行に連結して樹木保護部材100を構成したが、板状部材10を長手方向にも複数枚隣接させ、且つこの界面も折曲可能とすることもできる。次に実施の形態2として、図11、図12に示す樹木保護部材200について説明する。これらの図に示す樹木保護部材200は、板状部材10A、10Bを長手方向に2枚並べ、これらの間を長手方向連結部材40で折曲自在に連結し、さらに平行方向に隣接する板状部材は上記と同様に横連結部材20で折曲自在に連結している。
【0033】
長手方向連結部材40は、図11の例ではゴムバンドを使用し、対向する板状部材10の端部近傍に開口部を形成し、この開口部にゴムバンドを通して結束することにより、折曲自在としている。長手方向連結部材40は、この構成に限られず、例えば板状ゴム等の可撓性部材を接着したり、蝶板等の回動軸を固定したりする構成も採用できる。これにより、板状部材10を長手方向にもフレキシブルに折曲できるようになり、樹木の太さの部分的な変化にも対応可能となる。特に図12に示すように、根元で末広がりとなった部分の幹の近傍でも被覆可能とでき、根元付近を保護したい用途に好適に利用できる。このように板状部材10を長手方向に2分割し、分割した境界部分に長手方向連結部材40を配置する簡単な構成により、さらに柔軟に樹木保護部材を利用することが可能となる。
【0034】
また、図11、図12の例では、実施の形態1で説明した樹木保護部材を2段に並べたような形態としているが、板状部材を2枚連結する構成に限られず、3枚以上とすることも可能であることはいうまでもない。また、連結する板状部材の長さを変更することも可能であり、例えば長手方向連結部材40を介して追加する板状部材を短くして、根元の部分のみが開いて幹にフィットするように構成する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の樹木保護部材は、例えば森林開発や道路工事、林道工事、造成工事、土木工事、公共工事や森林伐採等の際に、作業用の重機の接触による損傷等を回避する養生材として、あるいは植樹した苗木や成長した樹木の樹皮を獣害から保護するためのツリープロテクターやツリーシェルターとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来のツリーシェルターの使用状態を示す斜視図である。
【図2】従来の植樹保護部材を示す斜視図である。
【図3】図2の植樹保護部材の使用状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る樹木保護部材を示す平面図である。
【図5】図4の樹木保護部材の使用状態を示す斜視図である。
【図6】横連結部材で板状部材を連結する一例を示す断面図である。
【図7】横連結部材で板状部材を連結する他の例を示す断面図である。
【図8】横連結部材で板状部材を連結するさらに他の例を示す断面図である。
【図9】結束部材で板状部材の端部を結束する状態を示す斜視図である。
【図10】樹木保護部材で樹木の幹を部分的に被覆する例を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る樹木保護部材を示す平面図である。
【図12】図11の樹木保護部材の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
100、200…樹木保護部材
10、10A、10B…板状部材
20…横連結部材
30…結束部材
31…フック
40…長手方向連結部材
50…プラスチックシート
51…重ね代
55…重ね代
56…バンド
60…植樹保護部材
63…不織布
68…固定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の周囲に装着されて、樹木を保護可能な樹木保護部材であって、
互いに略平行に並べられた複数の細長い略平板状の板状部材と、
前記板状部材の長手方向と交差する方向に配置されて、板状同士の間で折曲自在となるように各板状を連結する複数の横連結部材と、
前記板状部材の長手方向が保護対象の樹木の延長方向と一致する姿勢で、前記板状同士の間を前記横連結部材で折曲させ、前記板状部材を円筒状として樹木の周囲を囲んだ状態において、前記板状部材が樹木から外れないように板状部材同士を任意の位置で固定するための結束部材と、
を備えることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項2】
請求項1に記載の樹木保護部材であって、
前記結束部材が伸縮性部材で構成されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹木保護部材であって、
前記横連結部材がベルト状であり、複数枚のベルト状横連結部材で各板状部材の両面を狭持すると共に、隣接する板状部材同士の間で複数枚のベルト状横連結部材が交差されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記板状部材が、長手方向にも連結されており、かつ長手方向に隣接する板状部材同士の間を長手方向連結部材で折曲自在に連結してなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記板状部材が、間伐材で構成されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記横連結部材が、廃材で構成されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記板状部材の表面を着色してなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項1】
樹木の周囲に装着されて、樹木を保護可能な樹木保護部材であって、
互いに略平行に並べられた複数の細長い略平板状の板状部材と、
前記板状部材の長手方向と交差する方向に配置されて、板状同士の間で折曲自在となるように各板状を連結する複数の横連結部材と、
前記板状部材の長手方向が保護対象の樹木の延長方向と一致する姿勢で、前記板状同士の間を前記横連結部材で折曲させ、前記板状部材を円筒状として樹木の周囲を囲んだ状態において、前記板状部材が樹木から外れないように板状部材同士を任意の位置で固定するための結束部材と、
を備えることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項2】
請求項1に記載の樹木保護部材であって、
前記結束部材が伸縮性部材で構成されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹木保護部材であって、
前記横連結部材がベルト状であり、複数枚のベルト状横連結部材で各板状部材の両面を狭持すると共に、隣接する板状部材同士の間で複数枚のベルト状横連結部材が交差されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記板状部材が、長手方向にも連結されており、かつ長手方向に隣接する板状部材同士の間を長手方向連結部材で折曲自在に連結してなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記板状部材が、間伐材で構成されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記横連結部材が、廃材で構成されてなることを特徴とする樹木保護部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の樹木保護部材であって、
前記板状部材の表面を着色してなることを特徴とする樹木保護部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−110903(P2007−110903A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302329(P2005−302329)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(305048945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(305048945)
【Fターム(参考)】
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