説明

樹脂とステンレスを組合わせた複層式パイプまたは複層式棒。

【課題】農業の促成栽培におけるトンネル型被覆施設の支柱や、同業の栽培施設で使用する灌水パイプなどに見られる腐食(錆び)や劣化や熱による変形などによって生じる被害や損失を軽減させる。耐腐食性と耐候性そして耐熱性に優れた高級素材を採用すると同時に、消費者が購入し易い価格帯にコストダウンを計る。
【解決手段】コストダウンのために高価なステンレスを薄くして、安価な樹脂と一体成型加工を施した。表面のステンレスを薄くしたことによって失われた強度を、安価な樹脂によって内側から補強すると同時に、ステンレスで樹脂の表面を覆うことによって内側の樹脂を劣化から保護するという相互補助特性を有する構造を考案した。この結果ステンレスの使用量が削減され大幅なコストダウンが実現できた。表面にステンレスを採用することによって、耐腐食性と耐候性と耐熱性が向上し、従来の腐食(錆び)や劣化や、熱による変形などによって生じる被害や損失を軽減可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は比較的に細い物は農業の促成栽培のために行うトンネル型被覆施設の支柱などに使用可能。そして比較的に太くて筒状の物は、農業の栽培施設に使用する灌水パイプなどに使用が可能である。
【背景技術】
【0002】
農業では畑の作物の生育を早めるために、一畝毎にフィルムで作物を覆って密閉状態にして作物を保温する。そして保温効果を高めるために、フィルムで覆ったトンネル状の密閉空間を広げる。この際フィルムを内側から持上げて支えるために複数の細い支柱を使用する。畝の片側から作物の上を通って畝の反対側に渡すように支柱の両端をそれぞれの側の土中に差込んで立てる。畝とは垂直方向に等間隔で支柱を立ててトンネル状の被覆フィルムを支える仕組みである。このような促成栽培のトンネル型被覆施設の支柱には従来、鋼管や樹脂を表面に被覆した鋼管、または強化プラスチック(FRP)などが使用されている。
【0003】
次に同じく農業で、栽培面積が比較的に広い畑やビニールハウスでは作物に対して満遍無くそして効率良く水分を供給するために、散水ノズルを付けたパイプを作物の近辺に張り巡らす。このパイプは作物に対して適切な水分供給ができるように、土の表面上やビニールハウス内の空中や壁面に配管される。このような栽培施設に使用する灌水パイプには、塩化ビニール製のパイプなどが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明品が解決する課題は、鋼管や樹脂を表面に被覆した鋼管の腐食(錆び)や、強化プラスチック(FRP)の劣化、および塩化ビニール管の熱による変形や劣化などによる、被害や損失を軽減することであり、それと同時に本発明品を消費者が購入し易い価格にするために、コストダウンを計ることである。
【0005】
従来、農業における促成栽培のトンネル型被覆施設の支柱には、鋼管や樹脂を表面に被覆した鋼管または強化プラスチック(FRP)が使用されている。この内、鋼管はいずれ腐食し、樹脂を被覆した鋼管も表面の樹脂が劣化した後に腐食する。この場合、その錆びが被覆フィルムに付着して、フィルムの透明度を著しく悪化させたり、フィルム自体をも劣化させる。この結果、トンネル内の農作物が、日照不足により生育不良になったり、市場価格の高い時期に出荷できなかったりする損失を招くことになる。また錆びによりフィルムが劣化して比較的に新しいフィルムでも取り替えなければならなくなるなどの損失も出る。次に強化プラスチック(FRP)の支柱を使用した場合は、その原料である不飽和ポリエステルが雨などの水分により加水分解を起こして、内部のガラス繊維が表面に浮き出してくる。この細く鋭利なガラス繊維によって、被覆フィルムが破損したり、手を怪我したりするなどの被害や損失が出る。さらに加水分解が進むと、支柱自体の強度が低下して折れる場合もある。強化プラスチック(FRP)の支柱は弓形に曲げて、その両端を土中に差込んだ状態で使用するので、それが折れた場合は、強化プラスチック(FRP)の反発力によって被覆のフィルムを突き破るだけでなく、作業者が負傷するなどの危険性もある。
【0006】
次に農業の栽培施設の灌水パイプには塩化ビニール管などが使用されているがビニールハウス内の高温により灌水パイプが変形して、これにより農作物に対して正常に水分を供給できずに農作物が生育不良になったり、塩化ビニール管の劣化により灌水パイプの一部が破損して、農作物全体に十分な水分供給ができなくなるなどの被害が出る。この際、市場価格の高い時期に農作物の出荷が間に合わず、収入が減ってしまうなどの損失が出る場合もある。
【0007】
上記のような被害や損失を無くすためには、ステンレスやポリカーボネートなどの高級素材でトンネル型被覆施設の支柱や灌水パイプを作れば良いわけだが、これらの素材は高価なため、単純にこれらの高級素材を使って生産したのでは、高額な価格の製品になってしまう。いくら良い商品でも消費者が購入できない価格では生産する意味がないので、消費者にとって購入し易い価格にするための工夫が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先に述べた損失や被害は、促成栽培のトンネル型被覆施設の支柱に使用する鋼管や、樹脂を表面に被覆した鋼管の腐食(錆び)が原因であり、また同じ用途で強化プラスチック(FRP)を使用した場合は、その原料である不飽和ポリエステルが雨などの水分により加水分解を起こして劣化することが原因である。そして、灌水パイプの用途に塩化ビニール管を使用した場合は、熱による塩化ビニール管の変形と、同品の劣化が原因である。これらの問題を一気に解決するために、耐候性と耐腐食性および、耐熱性に優れた素材であるステンレスを採用した。これによって根本的な原因である、腐食(錆び)と劣化と熱による変形などの問題点を、大幅に改善することができるわけだが、ステンレスは通常、非常に高価なため農業の栽培施設用途に採用されることは、ほとんど無いのが現状である。
【0009】
そこで消費者が購入し易い価格にするために、高価なステンレスを薄くして、安価な樹脂と一体成型加工を施した。表面のステンレスを薄くしたことによって失われた強度を、安価な樹脂によって内側から補強すると同時に、ステンレスで樹脂の表面を覆うことによって、内側の樹脂を劣化から保護するという、相互補助特性を有する構造を考案した。これによりステンレスの使用量が削減され、ステンレス単体で生産した場合よりも大幅なコストダウンが実現できた。
【発明の効果】
【0010】
本発明品は、筒状または棒状の樹脂の表面に、ステンレス板または筒状のステンレスを一体成型加工で一体化させた複層式パイプまたは複層式棒である。消費者が購入し易い価格にするためにステンレスの厚みを薄くすることによりコストダウンを計り、その薄くすることによって失われたステンレスの強度を補強するために、内側に樹脂の筒または棒を内包する構造にした。これにより、表面の薄いステンレスを内側の樹脂が補強し、内側の樹脂を外側のステンレスが劣化から保護するという相互補助特性を有する構造を考案した。この結果、消費者が購入し易い価格帯で、ステンレスを表面に採用された耐腐食性と耐候性そして、耐熱性に優れた複層式パイプまたは複層式棒が実現した。
【0011】
本発明品を農業の促成栽培のトンネル型被覆施設の支柱に採用した場合、従来のように腐食(錆び)によって折れたり、錆びによって被覆フィルムが汚れたり、劣化したりすることが大幅に減少するので従来のように比較的に新しい被覆フィルムを取り替える必要も大幅に少なくなる。また被覆フィルムの透明度が保たれるので、トンネル内の農作物が日照不足により生育不良になったり、それが原因で市場価格の高い時期に農作物を出荷し損なうことも極めて少なくなる。そして本発明品は強化プラスチック(FRP)のように加水分解を起こさないので、強化プラスチック(FRP)の支柱を使った時のように浮き出たガラス繊維によって被覆フィルムを破損したり、手を怪我したりするなどの被害や損失もなくなる。そして、さらに加水分解が進んだ場合に起こる、支柱自体の強度の低下による折れや、その際の強化プラスチック(FRP)の反発力によって被覆フィルムが破損したり作業者が負傷する危険性もなくなる。
【0012】
次に本発明品を農業の栽培施設の灌水パイプに採用した場合、従来の塩化ビニール管のようにビニールハウス内の高温によって変形することもなくなり、農作物に対して常に正常に水分を供給できるようになるので、水分不足で農作物が生育不良になることもなくなる。また本発明品は塩化ビニール管のように劣化しないので、灌水パイプの一部が劣化により破損して、農作物全体に十分な水分供給ができなくなる心配もなくなる。これらにより市場価格の高い時期に出荷が間に合わずに収入が減ってしまうなどの損失もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明品は、従来品とまったく同じ使い方が可能である。まったく同じ使い方で、従来品よりも優れた耐腐食性と耐候性そして耐熱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ステンレス管と筒状の樹脂を組合わせたパイプを斜めに切断した断面図
【図2】ステンレス管と筒状の樹脂を組合わせたパイプを縦に切断した断面図
【図3】ステンレス管と棒状の樹脂を組合わせたパイプを斜めに切断した断面図
【図4】ステンレス管と棒状の樹脂を組合わせたパイプを縦に切断した断面図
【符号の説明】
【0015】
1 ステンレス
2 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のステンレスの内側に、棒状または筒状の樹脂を一体成型加工で、圧着もしくは溶着または接着して一体化させた複層式棒または複層式パイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−285505(P2007−285505A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137028(P2006−137028)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(599051856)ハイムーン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】