説明

機械式駐車装置用走行台車

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走行台車を中継して駐車室に車両を受渡しする機械式駐車装置に係り、より詳しくは、車両の昇降装置であるリフター付走行台車の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、複数の駐車階層を持つ機械式駐車装置の車両昇降装置は、以下のような手法を用いていた。まず一例としては、車両を駐車装置全体に渡って上下方向に昇降させる垂直搬送装置が設けられ、該垂直搬送装置の昇降路に沿って水平走行台車が多段的に設けられる。これらの水平走行台車により、前記垂直搬送装置から車両を受取り、受取った車両を水平方向に搬送し、前記各水平搬送装置の走行通路脇に、走行通路に沿って複数設けられた駐車室と車両の受渡しを行うものである。その他の例としては、走行台車そのものに昇降装置(以下、リフターと称す)を設け、前記垂直搬送装置を別個に設けないものがある。後者のリフター付走行台車については、設備費が高価な独立した垂直搬送装置が過剰設備となる、駐車階層が2〜3階層程度の機械式駐車装置に用いられている。これら従来例については、実開平1-150765号公報及び、特開平4-55575 号公報等にすでに開示されている。
【0003】上記引例等に開示されているリフター付走行台車は、その昇降装置に、油圧シリンダを用いたり、走行台車フレームと昇降台をX型リンクにより昇降自在に結合し、該X型リンクの交差角度を変えることにより、前記昇降台が前記走行台車フレームの上方で水平状態を保ったまま昇降するものであった。
【0004】
【発明が解決しょうとする課題】しかしながら、前記リフター付走行台車で昇降装置に油圧シリンダを用いたものでは、シリンダ及びピストンロッドを昇降距離に合わせて長大なものを用いなければならず、昇降距離にはおのずと制限があった。また、油圧シリンダを作動させる為の油圧回路から油漏れが発生した場合には、走行台車上の車両を汚すという可能性があった。更に、X型リンクを用いたものでは、X型リンクの長さによっておのずと昇降距離が決まってくるので、走行台車に納まる長さのリンクでは、2階層を越す高さへの伸張は困難であった。昇降距離を自由に設定するには、一般的なエレベータに用いられているような、索状体とカウンターウェイトを用いる方法があるが、索状体の掛け回しが複雑で、カウンターウェイトが昇降する為のスペースをとる必要があり、駆動手段を上方に設ける必要がある為、重心が高くなり走行台車に搭載することは困難であった。
【0005】本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、走行台車のリフターとして、前記昇降台とカウンターウェイトを、索状体によってエンドレスに掛け回すことにより、構造を簡単にし、走行台車への搭載を可能にした機械式駐車装置用走行台車を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明に係る手段は、走行台車の走行路に沿って複数の駐車室を配設し、前記走行台車および前記駐車室に相互間で車両の受け渡しを行う前輪用横送りコンベアと後輪用横送りコンベアとを並設してなる機械式駐車装置において、前記走行台車の台車フレームの四隅に支柱を立設すると共に、前記台車フレーム上に、前記前輪用横送りコンベア及び前記後輪用横送りコンベアを有し前記支柱により昇降案内される昇降台を配置し、前記走行台車の走行方向の前または後側に配列された二つの支柱に、上スプロケットと下スプロケットとを支持させ、該上・下スプロケットにエンドレスに掛け回した第1の索状体の途中にカウンターウェイトを介装し、前記台車フレーム上に前記下スプロケットを回転駆動する駆動手段を配置し、かつ前記走行台車の走行方向の前または後側に配列された二つの支柱のいずれか一方の上部と、他方の支柱側に位置する前記台車フレームとの間に、前記昇降台の前・後端に設けた前・後スプロケットを経由させて第2の索状体を張設したことを特徴とする。
【0007】本発明において、前記四隅の支柱に昇降台のガイドレール構造を設け、昇降台に取り付けたガイドローラが、前記ガイドレール構造上を走行するよう設けられていることが望ましい。
【0008】
【作用】走行台車の台車フレームの四隅に支柱を立設すると共に、前記台車フレーム上に、前記前輪用横送りコンベア及び前記後輪用横送りコンベアを有し前記支柱により昇降案内される昇降台を配置し、前記走行台車の走行方向の前または後側に配列された二つの支柱に、上スプロケットと下スプロケットとを支持させ、該上・下スプロケットにエンドレスに掛け回した第1の索状体の途中にカウンターウェイトを介装することにより、索状体の掛け回しが単純になり、カウンターウェイトの動作が索状体の可動範囲内に納まるので、カウンターウェイトの昇降スペースを別個に設ける必要がなくなる。また、前記台車フレーム上に前記下スプロケットを回転駆動する駆動手段を配置することにより、重心を低く抑えることができる。更に、前記走行台車の走行方向の前または後側に配列された二つの支柱のいずれか一方の上部と、他方の支柱よりに位置する前記台車フレームとの間に、前記昇降台の前・後端に設けた前・後スプロケットを経由させて第2の索状体を張設したことにより、昇降台の一端のみに昇降力を伝えても、前記昇降台の前・後端の平衡を保ったまま昇降をすることができる。
【0009】また、前記四隅の支柱に昇降台のガイドレール構造を設け、昇降台に取り付けたガイドローラが、該ガイドレール構造上を走行するよう設けられた場合には、リフターの基本構造である支柱をガイドレールとして併用する為、構造が単純になる。
【0010】
【実施例】以下、本願発明の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0011】図5は、本発明を実施する機械式駐車装置である。リフター付走行台車1は車輪2を介して、走行レール3上で水平移動可能である。走行レール3に沿って、走行台車が移動可能な幅を有する走行路4が走行レールに沿って設けられており、走行路脇には、複数段複数列をなして駐車室5が設けられている。図5においては、駐車室5はガイドレールの一側のみ表しているが、両側に駐車室を設けることが多い。
【0012】駐車室5の一室を特に、機械式駐車装置の内部と外部との車両50の乗り入れ及び乗り出しを行う入出庫室6として使用する。また、車両50の乗り入れを行う入庫室と乗り出しを行う出庫室を別個に設ける場合もある。駐車室5及び入出庫室6には、各々車両50の幅方向に移送する為の前輪用横送りコンベア7(以下、前コンベアと称す)及び後輪用横送りコンベア8(以下、後コンベアと称す)が設けられている。特に前コンベア7には、前輪の前後方向に対する位置決め装置(図示省略)を設けており、車両50は常に前コンベア7に対して略定位置に停車する。また、車両により前輪51と後輪52の軸間距離は異なるが、後コンベアの車両前後方向の長さを長くすることにより、軸間距離の短い車両も長い車両も後コンベア8の範囲内に後輪52を納めることができる。
【0013】次に、リフター付走行台車1についてを図1R>1〜図4に沿って説明する。台車フレーム9の四隅に鉛直方向に、四本の支柱10を立設する。前または後側に配列された支柱10の上端部を車体の幅方向に梁11で連結し、更に支柱の中間部を車両50の前後方向の補強フレーム12及び幅方向の補強フレーム13で連結し、四本の支柱10を互いに強固に組み合わせ、リフターの外郭構造14を形成する。前記支柱には図4に示すようにガイドレール構造10a を設け、前記の外郭構造14の内部を昇降自在な昇降台15を、ガイドローラ16を介して設ける。昇降台15は、走行台車1が走行レール3上を走行中であっても昇降可能である。昇降台15はその上面に、車両50の幅方向に移送する為の前輪用横送りコンベア17(以下、前コンベアと称す)及び後輪用横送りコンベア18(以下、後コンベアと称す)を有する。該前コンベア17及び後コンベア18は、前記駐車室5及び入出庫室6に設けられた前コンベア7及び後コンベア8に対し、各々同じ長さでかつ同間隔に設けられている。走行台車1が前記駐車室5及び入出庫室6の前に進み、車両の受渡しをするにあたり、前記各コンベアを車両受渡し手段として用いる。走行台車1の移動は、台車フレーム9の側面に、車両50の幅方向に設けた複数の車輪軸19に車輪2を設け、前記車輪軸を台車フレームに取付けた走行用モーター20により駆動し、前記走行レール3上を走行するものである。
【0014】前記の梁11の前後のいずれか一方には、上スプロケット21を設け、上スプロケット21の直下で、支柱の下端位置には下スプロケット22を設ける。該上・下スプロケットには、第1の索状体である第1のチェーン23をカウンターウェイト24を中間部に介装して掛け回し、該チェーン23の両端部を昇降台15の前端または後端の上面と下面とに取り付ける。よって、前記のチェーン23は、カウンターウェイト24と昇降台15とを介してエンドレスに接続される。前記下スプロケット22と回転軸を同じくする駆動スプロケット25を走行台車に配置した駆動手段である昇降用モーター26で回転駆動することにより、昇降台15は昇降する。すなわち、昇降台は、前端または後端のいずれか一端のみで上方にけん引され、かつ、動力を伝達されている。
【0015】前記のように昇降台15は、その一端のみで上方にけん引されているので、他端との水平を保つために、下記のような平衡手段を持っている。平衡手段は、昇降台15の下面の前後端に前スプロケット27および後スプロケット28を配設し、前記の梁11の前後のいずれか一方に一端部29a を固定した第2の索状体である第2のチェーン29を、前記前スプロケット27および後スプロケット28を経由させて、他端部29b を台車フレーム9に張設することによりなる。チェーン29の一端部29aが前方の梁11に固定されているときは、他端部29b は台車フレーム9の後方の梁11の下方に固定される。また、一端部29a が後方の梁11に固定される場合は、他端部29b は台車フレーム9の前方の梁11の下方に固定される。
【0016】前記の昇降台15に動力を伝達する伝達手段である上・下スプロケット21、22および第1のチェーン23と平衡手段である前・後スプロケット27、28および第2のチェーン29は各二組づつ車両50の幅方向に並設されている。また、前記伝達手段および平衡手段を各一組づつとした場合は、部品点数が減少するので、コストダウンにつながり、各三組づつとした場合は、昇降台15の動作がより正確に行われるようになる。
【0017】
【発明の効果】本発明はこのように構成したので、以下のような効果を有する。索状体を用いて昇降台とカウンターウェイトとをエンドレスに接続することにより、索状体の掛け回しが簡単になり、カウンターウェイトの昇降スペースも別個に設ける必要がなくなるので、走行台車という動く物に索状体を用いた伝達手段を搭載することができる。台車フレーム上に駆動手段を配置することにより、重心を低く抑えることができるので、走行台車の走行安定性を損なうことがない。更に、支柱と台車フレームと昇降台との間に、前記平衡手段を設けることにより、昇降台の一端のみに昇降力を伝えても、前記昇降台の前・後端の平衡を保ったまま昇降をすることができ、リフターの構造を簡素にすることができる。
【0018】前記四隅の支柱に、昇降台のガイドレールを設け、昇降台に取り付けたガイドローラが、該ガイドレール上を走行するよう設けられた場合には、リフターの基本構造である支柱をガイドレールとして併用する為、構造が単純になり、軽量化が図れる。また、昇降台の動作に油圧シリンダを用いないので、油圧回路からの油漏れによる車両の汚れが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すリフター付走行台車の側面摸式図である。
【図2】本発明の一実施例を示すリフター付走行台車の正面摸式図である。
【図3】本発明の一実施例を示すリフター付走行台車の上面摸式図である。
【図4】第4図のS部の拡大図である。
【図5】本発明の一実施例を示す機械式駐車装置の全体摸式図である。
【符号の説明】
1 走行台車
5 駐車室
7 前輪用横送りコンベア
8 後輪用横送りコンベア
9 台車フレーム
10 支柱
10a ガイドレール構造
15 昇降台
16 ガイドローラ
17 前輪用横送りコンベア
18 後輪用横送りコンベア
21 上スプロケット
22 下スプロケット
23 第1の索状体
24 カウンターウェイト
26 昇降用モーター
27 前スプロケット
28 後スプロケット
29 第2の索状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行台車の走行路に沿って複数の駐車室を配設し、前記走行台車および前記駐車室に相互間で両の受け渡しを行う前輪用横送りコンベアと後輪用横送りコンベアとを並設してなる機械式駐車装置において、前記走行台車の台車フレームの四隅に支柱を立設すると共に、前記台車フレーム上に、前記前輪用横送りコンベア及び前記後輪用横送りコンベアを有し前記支柱により昇降案内される昇降台を配置し、前記走行台車の走行方向の前または後側に配列された二つの支柱に、上スプロケットと下スプロケットとを支持させ、該上・下スプロケットにエンドレスに掛け回した第1の索状体の途中にカウンターウェイトを介装し、前記台車フレーム上に前記下スプロケットを回転駆動する駆動手段を配置し、かつ前記走行台車の走行方向の前または後側に配列された二つの支柱のいずれか一方の上部と、他方の支柱側に位置する前記台車フレームとの間に、前記昇降台の前・後端に設けた前・後スプロケットを経由させて第2の索状体を張設したことを特徴とする機械式駐車装置用走行台車。
【請求項2】 前記四隅の支柱に昇降台のガイドレール構造を設け、昇降台に取り付けたガイドローラが、前記ガイドレール構造上を走行するよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置用走行台車。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【特許番号】第2879191号
【登録日】平成11年(1999)1月29日
【発行日】平成11年(1999)4月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−56619
【出願日】平成6年(1994)3月2日
【公開番号】特開平7−238705
【公開日】平成7年(1995)9月12日
【審査請求日】平成8年(1996)8月5日
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【出願人】(594052700)横浜エレベータ株式会社 (5)
【参考文献】
【文献】特開 昭52−9274(JP,A)
【文献】実開 昭60−112553(JP,U)