説明

機械式駐車設備

【課題】 昇降体を昇降駆動する昇降駆動装置を下部位置に配置でき、駐車設備の全高を抑えるとともに平面的スペースを有効活用できる機械式駐車設備を提供すること。
【解決手段】 昇降路12に沿って昇降させるエレベータ搬器16と、このエレベータ搬器16を上方から吊下げたロープ21を摩擦駆動力で巻上げ・巻下げして鉛直方向に昇降させる昇降駆動装置20と、この昇降駆動装置20によるエレベータ搬器16の巻上げ力を軽減するカウンタウェイト22とを備え、前記昇降路12の側方にパレットを格納する駐車棚13を有し、前記昇降駆動装置20をエレベータ式駐車設備1の下部位置に設置し、この昇降駆動装置20で巻上げ・巻下げるロープ21をエレベータ式駐車設備1の下部位置から昇降路12の上部位置まで導き、このロープ21でエレベータ搬器16を吊持するとともに前記カウンタウェイト22を所定位置に吊持する昇降駆動系50を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ式、エレベータスライド式、スタッカクレーン式等、摩擦駆動力でロープを巻上/巻下して昇降体を昇降させる機械式駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ式駐車設備、エレベータスライド式駐車設備、及び乗用エレベータ等には、昇降体(エレベータ搬器、かご等)をワイヤロープ(以下、「ロープ」という)で昇降させる昇降駆動装置が備えられている。この昇降駆動装置には、昇降体が一端に設けられたロープの他端に昇降体の巻き上げ力を軽減するためのカウンタウェイトを設け、このロープの中間部分を駆動源のトラクションシーブに掛けてつるべ式で動作させるものがある。この昇降駆動装置では、トラクションシーブに掛けたロープの摩擦駆動力で昇降体を昇降させている。
【0003】
このようにロープの摩擦駆動力を利用して昇降体を昇降させる昇降駆動装置を備えた駐車設備の例として、以下、エレベータ式駐車設備を例に説明する。
【0004】
図6に示すように、一般的なエレベータ式駐車設備101は、鉄骨構造体の駐車塔102を有し、この駐車塔102の地上1階が乗入れ部106となっている。乗入れ部106には、乗入れ床107にピット108が形成され、入出庫口109が設けられている。
【0005】
上記駐車塔102の中央部鉛直方向には、平面視が矩形状の昇降路112が形成されており、この昇降路112を挟んで図の左右両側の鉛直方向に複数段の駐車棚113が設けられている。昇降路112には、車両Vが搭載されるパレット70を搬送するエレベータ搬器116が設けられており、このエレベータ搬器116を昇降させてパレット70が所定の駐車棚113に搬送されて格納される。
【0006】
そして、上記駐車塔102の上部に設けられた機械室104に上記エレベータ搬器116を昇降させる昇降駆動装置120が設けられている。この昇降駆動装置120には、エレベータ搬器116を昇降路112の上方から吊下げるロープ121が転向プーリ131を介して掛けられており、このロープ121を巻上げ・巻下げ駆動することでエレベータ搬器116が昇降させられるようになっている。また、この昇降駆動装置120に掛けられたロープ121の反エレベータ搬器側にカウンタウェイト122が設けられ、エレベータ搬器116を上昇させる時の巻上げ力を軽減するようになっている。
【0007】
図7に示すように、このような上部駆動方式のエレベータ式駐車設備101における昇降駆動装置120とカウンタウェイト122との駐車塔102内での平面視の配置としては、カウンタウェイト122は、駐車設備101のほぼ最上部から最下部まで移動するため、例えば、駐車棚113のパレット長手方向側一端部に専用の昇降空間Sが設けられている。そして、上記昇降駆動装置120は、平面寸法が大きいため、駐車棚113と干渉しない上記最上部の機械室104(図6)に設けられている。
【0008】
なお、この種の機械式駐車設備に関する先行技術として、例えば、ピット内に昇降駆動装置を設け、この昇降駆動装置で4組の無端チェーンを駆動してエレベータ搬器を昇降させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、他の先行技術として、縦列式の駐車装置において、奥側は駆動部をピット底に設け、手前側は駆動部を2階層に配置した釣瓶式のチェーン駆動方式としたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
さらに、他の先行技術として、釣瓶式でカウンタウェイトに連結した駆動索を中間階に設けた駆動部で駆動して搬器を昇降駆動するようにしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07−42401号公報
【特許文献2】特開平08−128221号公報
【特許文献3】特開平05−18134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上記エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)101等の場合、駐車塔102の屋根部が日影規制(法的規制)の斜線制限線(図6に示す「L」)に少しでも干渉するようであれば、駐車棚113の階層数を1つ減らして全高を下げる必要がある。その場合、上記図6に示すエレベータ式駐車設備101の場合には収容台数が2つ減り、収容効率が低下してしまう。一方、建築費などを抑えるために、エレベータ式駐車設備101の設置面積に対して最大限収容台数は確保できるようにしたい。そのため、このような法的規制や建築費などの制約から、機械式駐車設備の全高を抑えつつ、収容台数は確保したいという要望がある。
【0013】
このようなことから、本出願人は、これらの要望に答えるために、機械式駐車設備の全高を抑えつつ収容台数を増やす方法として、昇降駆動装置を最上部から他の場所に移動すると効果的であると考えた。
【0014】
しかしながら、昇降駆動装置を最上部から他の場所に移動させたとしても、この昇降駆動装置によって機械式駐車設備の平面的設置スペースへの影響は極力小さくしたい。また、このようなエレベータ式駐車設備101は、入出庫口109が車路に接続している関係から、洪水時にピット108内が冠水する可能性が高いので、昇降駆動装置120の水没は避けたい。
【0015】
なお、上記特許文献1の場合は、駆動軸がエレベータ搬器の下を縦断しているので、昇降駆動装置は最下部(ピット底)に設置しなければならず、洪水等による冠水時には駆動装置が水中に没し、運転不可能となる。
【0016】
また、上記特許文献2の場合、駆動部をピット底以外に配置するとしても、平面的に搬器、駆動部、カウンタウェイトが相互に干渉しないように配置することが難しい。なお、この特許文献2の構成では、入口側搬器が上端に移動したとき、カウンタウェイトが底部に当接するので、ピットを深くする等の対策を講じなければ実現は難しく、建設費の増大などを招く。さらに、上記特許文献3の場合も、平面的に駐車棚(又は搬器)、駆動部、カウンタウェイトが相互に干渉しないように配置することが難しい。そのため、これらの駐車設備では、平面的設置スペースを大きくしなければならない場合も生じ、建設費の増大などを招く。
【0017】
そこで、本発明は、昇降体を昇降駆動する昇降駆動装置を下部位置に配置して駐車設備の全高を抑えるとともに、平面的設置スペースへの影響を抑えることができる機械式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、車両を搭載するパレットを昇降路に沿って昇降させる昇降体と、該昇降体を上方から吊下げたロープを摩擦駆動力で巻上げ・巻下げして鉛直方向に昇降させる昇降駆動装置と、該昇降駆動装置による昇降体の巻上げ力を軽減するカウンタウェイトと、を備えた機械式駐車設備であって、前記昇降路の側方に前記パレットを格納する駐車棚を有し、前記昇降駆動装置を機械式駐車設備の下部位置に設置し、該昇降駆動装置で巻上げ・巻下げるロープを機械式駐車設備の下部位置から前記昇降路の上部位置まで導き、該ロープで前記昇降体を吊持するとともに前記カウンタウェイトを所定位置に吊持する昇降駆動系を設けたことを特徴とする。この構成によれば、昇降駆動装置を機械式駐車設備の最上部から下部位置に移動した昇降駆動系により、下部位置に設置した昇降駆動装置で機械式駐車設備の上部位置から昇降体とカウンタウェイトとをロープで所定位置に吊持するので、機械式駐車設備の全高を抑えることができる。しかも、昇降駆動系で昇降体とカウンタウェイトとを吊持することにより、昇降駆動装置を下部位置に設置しつつ平面的スペースを有効活用することができる。
【0019】
また、前記昇降駆動装置は、前記駐車棚の無い高さの下部位置に設置されていてもよい。駐車棚の無い高さの下部位置としては、乗入れ部及びその近傍、ピット内等がある。このように構成すれば、昇降駆動装置が駐車スペースへは干渉しないので、昇降駆動装置によって駐車スペースに影響がないようにできる。
【0020】
また、前記昇降駆動装置は、前記乗入れ部又は前記ピット内の高い位置に設置されていてもよい。このように構成すれば、下部位置に設置した昇降駆動装置を冠水時に水没し難くでき、洪水等の自然災害時におけるリスクを低減させることができる。
【0021】
また、前記昇降駆動装置とカウンタウェイトとは、異なる水平面内位置に配置されていてもよい。このように構成すれば、機械式駐車設備の下部位置における比較的高い位置に昇降駆動装置を設置したとしても、昇降体が上昇したときに下降するカウンタウェイトが昇降駆動装置とは異なる水平面内位置で昇降するため、このカウンタウェイトの昇降ストロークに影響を与えることがないようにできる。
【0022】
また、前記機械式駐車設備は、平面視において矩形状の外形に形成され、前記昇降駆動装置とカウンタウェイトとは、前記矩形状の前後左右の各4面を中心で分割して8区画としたとき、前記昇降駆動装置とカウンタウェイトが同一面側の隣り合う区画に配置されるように構成してもよい。このように構成すれば、矩形状に形成された機械式駐車設備の周囲に形成される4面の内の1面のスペースを利用して、昇降駆動装置から上昇するロープと、機械式駐車設備の上部で転向してカウンタウェイトに向けて下降するロープとを配置することができ、機械式駐車設備の平面スペースを大きくすることなく下部位置に設置した昇降駆動装置で昇降体及びカウンタウェイトを昇降させることができる。
【0023】
また、前記駐車棚は、前記昇降路を挟んで両側方に設けられ、前記昇降路を挟んだ一方の駐車棚の位置の空間に前記昇降駆動装置が配置され、他方の駐車棚の位置の空間に前記カウンタウェイトが配置されていてもよい。このように構成すれば、カウンタウェイトの昇降スペースとなっている空間の昇降路を挟んだ対称側における空間を利用し、この空間で昇降駆動装置からのロープを立ち上げることで、機械式駐車設備の平面スペースを大きくすることなく下部位置に設置した昇降駆動装置で昇降体及びカウンタウェイトを昇降させることができる。
【0024】
また、前記昇降駆動装置は、複数の前記ロープを半掛け又は全掛けしたトラクションシーブを有し、前記昇降駆動系は、前記トラクションシーブに掛けた複数本のロープを、両端部側のいずれもがトラクションシーブから上方に延び、機械式駐車設備の最上部に設けられた複数の転向プーリによって水平方向に転向させられた後、吊下げプーリによって垂直方向に転向させられて、前記昇降体とカウンタウェイトとをそれぞれ吊持するように構成されていてもよい。このように構成すれば、機械式駐車設備の下部位置に設置した昇降駆動装置からのロープを昇降駆動系で機械式駐車設備の上部まで上昇させた後、機械式駐車設備の上部から垂下させたロープで昇降体とカウンタウェイトとを吊持して、昇降駆動装置で昇降体を安定して昇降させることができる。
【0025】
また、前記昇降駆動装置は、前記トラクションシーブと対向して配置した反らせプーリと、該反らせプーリを前記トラクションシーブを駆動する駆動軸に支持する支持部材とを有し、前記ロープは、前記トラクションシーブに巻き掛けた後、前記反らせプーリに巻き掛け、再びトラクションシーブに巻き掛けて、両端部が同一方向に延びるように構成されていてもよい。このように構成すれば、トラクションシーブへのロープ巻き掛け回数を増加させてもトラクションシーブを駆動する駆動軸に作用するロープ張力作用方向の軸受反力が増加することを抑止でき、コンパクトな昇降駆動装置に大きな摩擦駆動力を持たせることができる。
【0026】
また、前記昇降体は、前記昇降路の上方から下方に延びるロープを掛ける動滑車を有し、前記昇降体を昇降させる方式を、前記動滑車に掛けられたロープの一方を機械式駐車設備の固定部に固定し、他方を前記昇降駆動装置でロープを巻上げ・巻下げ駆動する動滑車方式に構成してもよい。このように構成すれば、直吊りに比べて、シーブに掛けるロープ本数が半減するのでシーブを薄くできるとともに、シーブが倍速で回るので減速比の小さい小型化した減速機として、昇降駆動装置のより小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、機械式駐車設備の全高を抑えて外形寸法を縮小化、又は同一外形寸法で駐車空間を増やすことが可能となる。また、重量物である昇降駆動装置を、設置、交換が容易な下部位置に設置でき、メンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る機械式駐車設備の一例であるエレベータ式駐車設備を示す全体概略斜視図である。
【図2】図1に示す昇降駆動系の平面視における配置の概略を示す平面図である。
【図3】図1に示すエレベータ式駐車設備におけるエレベータ搬器の第1実施形態に係る昇降駆動系を示す全体概略斜視図である。
【図4】図1に示す昇降駆動装置の斜視図である。
【図5】図1に示すエレベータ式駐車設備におけるエレベータ搬器の第2実施形態に係る昇降駆動系を示す全体概略斜視図である。
【図6】従来のエレベータ式駐車設備を示す全体概略正面図である。
【図7】図6に示す昇降駆動系の平面視における配置の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、機械式駐車設備の一つである下部90°乗入れ方式のエレベータ式駐車設備1に備えられた昇降駆動装置20を例に説明する。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、図1に示すエレベータ式駐車設備1に向かった状態における前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0030】
図1に示すように、エレベータ式駐車設備1は、4隅に設けられた鉛直方向の主柱3と、この主柱3を水平方向に連結する梁(図示略)等とによって鉄骨構造体が形成され、この鉄骨構造体の外面に外装板5が設けられた駐車塔2を有している。この駐車塔2は、地上1階が乗入れ部6となっており、乗入れ部6の乗入れ床7にはピット8が形成されている。また、乗入れ部6の左方向には入出庫口9が設けられ、この入出庫口9には、開閉式の入出庫口扉10が設けられている。また、入出庫口9の外部側方には、運転盤11が配設されている。
【0031】
このようなエレベータ式駐車設備1は、駐車塔2の中央部鉛直方向に平面視が矩形状の昇降路(エレベータシャフト)12が形成されている。昇降路12は、平面視で駐車塔2の前後方向が長寸で、左右方向が短寸の矩形状となっている。また、この昇降路12を挟んで図の左右両側の鉛直方向に複数段の駐車棚13が設けられている。各駐車棚13には、図示する左右方向に延びる棚レール14が設けられている。この棚レール14は、上記主柱3と平行に鉛直方向に延びる棚柱15と主柱3とに設けられており、この棚レール14に沿ってパレット70が格納されるようになっている。
【0032】
また、上記昇降路12には、パレット70を搬送する昇降体たるエレベータ搬器16が設けられている。エレベータ搬器16には、パレット移載機構17が設けられており、このパレット移載機構17によってパレット70を上記各駐車棚13の棚レール14との間で移載できるようになっている。さらに、ピット8内には、上記エレベータ搬器16のパレット70を持上げて旋回させるパレット持上旋回装置18が備えられており、このパレット持上旋回装置18により、パレット70が乗入れ部6で入出庫口9の方向に旋回させられる。これらのパレット移載機構17及びパレット持上旋回装置18は、公知の手段が採用される。
【0033】
そして、エレベータ式駐車設備1の下部位置である上記駐車塔2の乗入れ部6に、昇降駆動装置20が設置されている。この昇降駆動装置20のトラクションシーブ(駆動部)30に掛けられた複数本のロープ21は、駐車塔2の最上部に設けられた転向プーリ31に向けて延び、この転向プーリ31に掛けられて水平方向に転向させられている。
【0034】
この水平方向に延びる一部のロープ21は、エレベータ搬器16を昇降させる一端側が昇降路12の上方に設けられた吊下げプーリ32で下方に曲げられてエレベータ搬器16に向けて垂下し、エレベータ搬器16が吊下げられている。また、水平方向に延びる他のロープ21は、駐車棚13の後方部分に設けられた吊下げプーリ33で下方に曲げられ、昇降駆動装置20による巻上げ力を軽減するカウンタウェイト22に連結されている。
【0035】
従って、昇降駆動装置20を駆動することにより、ロープ21で吊下げられたエレベータ搬器16が昇降路12で昇降させられ、エレベータ搬器16の昇降と逆方向にカウンタウェイト22が昇降空間Sで昇降させられる。
【0036】
また、上記昇降駆動装置20の設置場所としては、昇降駆動装置20は平面寸法が大きいため、乗入れ部6の駐車棚13が無い場所に設置されている。昇降駆動装置20を設置する場所としては、この実施形態では、乗入れ部6に設置されているが、例えば、ピット8の底部よりも一定の高さ高い位置から乗入れ部6の駐車棚13が無い場所に設置される。上記昇降駆動装置20の配置位置としてピット8内とした場合、ピット底部よりも一定の高さ高い場所が、洪水等で水没して故障することがないようにできる。
【0037】
さらに、この例では、昇降駆動装置20を縦置き配置とした例を示しているが、昇降駆動装置20を横置き配置としてもよい。このように、昇降駆動装置20がエレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)1の全高に直接影響しないため、昇降駆動装置20を横置きにしても縦置きにしてもよく、またモータ23や減速機24の選定、レイアウトの自由度が大きくなる。
【0038】
なお、昇降駆動装置20の設置場所は、中間乗入式等では乗入れ部の階下にも駐車棚13があるので、駐車棚13の「無い場所」は主に乗入れ部6の階となる。また、旋回装置付の場合は、乗入れ部6における旋回半径の部分を避けて設置するようにすればよい。
【0039】
図2に示すように、エレベータ式駐車設備1の平面視における上記昇降駆動装置20とカウンタウェイト22との配置としては、平面視において矩形であるエレベータ式駐車設備1の前後左右の空間を4面で分割し、更に各面の中心で分割した8区画としたとき、昇降駆動装置20とカウンタウェイト22が同一面側(この例では、後方部分)の隣り合う区画に配置されているようにする。
【0040】
また、この実施形態では、昇降路12を挟んで両側の駐車棚13の位置の、車両長手方向端側の一方(図示する左側)に昇降駆動装置20を配置し、もう一方(図示する右側)にカウンタウェイト22を配置するようにしている。このようにすれば、昇降路12の昇降空間Sを効率良く利用して昇降駆動装置20とカウンタウェイト22とを配置することができる。
【0041】
つまり、カウンタウェイト22は駐車塔2のほぼ最上部から最下部まで移動するため、例えば、従来のエレベータ式駐車設備と同様に、駐車棚13のパレット長手方向側に隣接した空間を専用の昇降空間Sとし、他方の空間をロープ21の昇降空間とすることで、エレベータ式駐車設備1の外形寸法を大きくすることなくカウンタウェイト22の昇降空間を確保することができるようにしている。
【0042】
また、図3に示すように、第1実施形態における昇降駆動系50としては、エレベータ搬器16の下部に動滑車51を設け、この動滑車51に掛けたロープ21の一方を駐車塔2の固定部52に固定し、他方を昇降駆動装置20のトラクションシーブ30に巻き掛けた後、動滑車掛けでカウンタウェイト22を吊持するようになっている。従って、トラクションシーブ30でロープ21を巻上げ・巻下げ駆動することで、エレベータ搬器16を昇降させる動滑車方式の吊持方法としている。
【0043】
この動滑車方式の昇降駆動系50としては、昇降駆動装置20のトラクションシーブ30に掛けられた複数本のロープ21を、両端部側のいずれもがトラクションシーブ30から上方に延び、駐車塔2の最上部に設けられた複数の転向プーリ31によって水平方向に転向させられた後、一方が吊下げプーリ32によって垂直方向に転向させられて、上記エレベータ搬器16を吊持し、他方が吊下げプーリ33によって垂直方向に転向させられて、上記カウンタウェイト22を吊持するように構成されている。
【0044】
このような昇降駆動系50によれば、昇降駆動装置20でロープ21を駆動することにより、エレベータ搬器16とカウンタウェイト22とはつるべ式に動作し、エレベータ搬器16が上昇したストローク分、カウンタウェイト22が下降するように駆動される。
【0045】
図4に示すように、上記昇降駆動装置20としては、モータ23の出力側に減速機24が設けられ、この減速機24に出力軸26が設けられている。この出力軸26に上記トラクションシーブ30が取り付けられ、トラクションシーブ30は出力軸26と一体的に回転するようになっている。
【0046】
また、トラクションシーブ30と対向するように所定距離離れた位置に反らせプーリ40が設けられている。この実施形態では、反らせプーリ40が、上記トラクションシーブ30に掛けられたロープ21の張力作用方向Pに設けられている。この反らせプーリ40は、トラクションシーブ30の径に比べて小径で形成されている。
【0047】
さらに、上記出力軸26には、軸受41を介して支持部材42が支持されている。この支持部材42の先端部43(半トラクションシーブ側)に、上記反らせプーリ40が回転自在に軸支されている。支持部材42は、出力軸26が回転しても減速機24との相対位置が変化しないように支持されており、反らせプーリ40を所定の位置で回転自在に支持している。なお、出力軸26による支持部材42の支持構造、及び支持部材42による反らせプーリ40の支持構成は、この実施形態に限定されるものではない。
【0048】
なお、この実施形態では、昇降駆動装置20のトラクションシーブ30にロープ21を全掛けにしたものを示しているが、半掛けで構成してもよく、必要な摩擦駆動力が得られるようにすればよい。
【0049】
以上のようなエレベータ式駐車設備1によれば、図1に示すように、昇降駆動装置20のトラクションシーブ30から立ち上げた巻き上げロープ21は、上部の転向プーリ(アイドラプーリ)31により方向を変え、エレベータ式駐車設備1の中心線に対して略対称の位置を昇降するカウンタウェイト22に接続しているので、昇降駆動装置20の設置高さがカウンタウェイト22の昇降ストロークに影響を与えることがないようにできる。つまり、昇降駆動装置20を駐車塔2の下部における比較的高い位置に設置しても、エレベータ搬器16を上昇させた時に下がってきたカウンタウェイト22が昇降駆動装置20に当接することがないようにできる。
【0050】
また、昇降駆動装置20は、駐車設備最下部のピット8の底からある程度の高さ(例えば、1m)上がった位置や、乗入れ部6及びその中間に設置することで、洪水等による浸水時の故障等を防ぐことができる。
【0051】
従って、エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)1の最上部から昇降駆動装置20を下部に移動することで、エレベータ式駐車設備1の外形寸法の縮小化(例えば、斜線制限線「L」に干渉しない高さ(図1))、又は同一外形寸法で駐車空間を増やすことで、駐車台数の増加、又はハイルーフ車等の高車高車の駐車比率を増加させることができる。しかも、重量物である昇降駆動装置20を、設置、交換が容易な下部位置に設置でき、メンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0052】
図5は、第2実施形態に係る昇降駆動系60を示している。この昇降駆動系60は、エレベータ搬器16及びカウンタウェイト22をいずれも直接吊下げる直吊り方式とした例である。なお、上記第1実施形態と同一の構成には同一符号を付して説明する。
【0053】
図示するように、この直吊り方式の昇降駆動系60では、昇降駆動装置20のトラクションシーブ30に掛けられた複数本のロープ21を、両端部側のいずれもがトラクションシーブ30から上方に延び、駐車塔2の最上部に設けられた複数の転向プーリ31によって水平方向に転向させられた後、一方が吊下げプーリ32によって垂直方向に転向させられて、上記エレベータ搬器16を吊持し、他方が吊下げプーリ33によって垂直方向に転向させられて、上記カウンタウェイト22を吊持するように構成されている。
この例でも、昇降駆動装置20がエレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)1の全高に直接影響しないため、昇降駆動装置20を横置きにしても縦置きにしてもよく、またモータ23や減速機24の選定、レイアウトの自由度が大きくなる。
【0054】
そして、この実施形態の昇降駆動系60によっても、エレベータ搬器16とカウンタウェイト22とはつるべ式に動作し、エレベータ搬器16が上昇したストローク分、カウンタウェイト22が下降するように駆動される。
【0055】
従って、このような昇降駆動系60を採用したとしても、エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)1の最上部から昇降駆動装置20を下部に移動することで、エレベータ式駐車設備1の外形寸法の縮小化、又は同一外形寸法で駐車空間を増やすことで、駐車台数の増加、又はハイルーフ車等の高車高車の駐車比率を増加させることができる。しかも、重量物である昇降駆動装置20を、設置、交換が容易な下部位置に設置でき、メンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0056】
なお、上記実施形態では、下部乗入れ方式のエレベータ式駐車設備1を例に説明したが、機械式駐車設備としては摩擦駆動力でロープ21を巻上げ・巻下げして昇降体を昇降させる駐車設備であればよく、主に、エレベータ式、スタッカクレーン式における、下部乗入方式、中間乗り入れ方式、上部乗入方式のいずれも可能である。また、乗用エレベータや水平多層式の昇降リフトに利用しても、上記したように昇降体の昇降路の高さや平面投影寸法を極力小さくすることができる、という効果を奏することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、機械式駐車設備としてエレベータ式駐車設備1を例に説明したが、他の機械式駐車設備においても適用可能であり、機械式駐車設備は上記実施形態に限定されるものではない。
【0058】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る機械式駐車設備は、高さ制限のある設置条件等のエレベータ式駐車設備、エレベータスライド式駐車設備等の機械式駐車設備や、乗用エレベータ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)
2 駐車塔
6 乗入れ部
7 乗入れ床
8 ピット
12 昇降路
13 駐車棚
16 エレベータ搬器(昇降体)
20 昇降駆動装置
21 ロープ
22 カウンタウェイト
23 モータ
24 減速機
30 トラクションシーブ
31 転向プーリ
32 吊下げプーリ
33 吊下げプーリ
40 反らせプーリ
42 支持部材
50 昇降駆動系
51 動滑車
52 固定部
60 昇降駆動系
70 パレット
L 斜線制限線
V 車両
S 昇降空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を搭載するパレットを昇降路に沿って昇降させる昇降体と、該昇降体を上方から吊下げたロープを摩擦駆動力で巻上げ・巻下げして鉛直方向に昇降させる昇降駆動装置と、該昇降駆動装置による昇降体の巻上げ力を軽減するカウンタウェイトと、を備えた機械式駐車設備であって、
前記昇降路の側方に前記パレットを格納する駐車棚を有し、
前記昇降駆動装置を機械式駐車設備の下部位置に設置し、
該昇降駆動装置で巻上げ・巻下げるロープを機械式駐車設備の下部位置から前記昇降路の上部位置まで導き、該ロープで前記昇降体を吊持するとともに前記カウンタウェイトを所定位置に吊持する昇降駆動系を設けたことを特徴とする機械式駐車設備。
【請求項2】
前記昇降駆動装置は、前記駐車棚の無い高さの下部位置に設置されている請求項1に記載の機械式駐車設備。
【請求項3】
前記昇降駆動装置は、前記乗入れ部又は前記ピット内の高い位置に設置されている請求項1又は請求項2に記載の機械式駐車設備。
【請求項4】
前記昇降駆動装置とカウンタウェイトとは、異なる水平面内位置に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械式駐車設備。
【請求項5】
前記機械式駐車設備は、平面視において矩形状の外形に形成され、
前記昇降駆動装置とカウンタウェイトとは、前記矩形状の前後左右の各4面を中心で分割して8区画としたとき、前記昇降駆動装置とカウンタウェイトが同一面側の隣り合う区画に配置されるように構成されている請求項4に記載の機械式駐車設備。
【請求項6】
前記駐車棚は、前記昇降路を挟んで両側方に設けられ、
前記昇降路を挟んだ一方の駐車棚の位置の空間に前記昇降駆動装置が配置され、他方の駐車棚の位置の空間に前記カウンタウェイトが配置されている請求項4に記載の機械式駐車設備。
【請求項7】
前記昇降駆動装置は、複数の前記ロープを半掛け又は全掛けしたトラクションシーブを有し、
前記昇降駆動系は、前記トラクションシーブに掛けた複数本のロープを、両端部側のいずれもがトラクションシーブから上方に延び、機械式駐車設備の最上部に設けられた複数の転向プーリによって水平方向に転向させられた後、吊下げプーリによって垂直方向に転向させられて、前記昇降体とカウンタウェイトとをそれぞれ吊持するように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の機械式駐車設備。
【請求項8】
前記昇降駆動装置は、前記トラクションシーブと対向して配置した反らせプーリと、該反らせプーリを前記トラクションシーブを駆動する駆動軸に支持する支持部材とを有し、
前記ロープは、前記トラクションシーブに巻き掛けた後、前記反らせプーリに巻き掛け、再びトラクションシーブに巻き掛けて、両端部が同一方向に延びるように構成されている請求項7に記載の機械式駐車設備。
【請求項9】
前記昇降体は、前記昇降路の上方から下方に延びるロープを掛ける動滑車を有し、
前記昇降体を昇降させる方式を、前記動滑車に掛けられたロープの一方を機械式駐車設備の固定部に固定し、他方を前記昇降駆動装置でロープを巻上げ・巻下げ駆動する動滑車方式に構成した請求項1〜8のいずれか1項に記載の機械式駐車設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−241469(P2012−241469A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114897(P2011−114897)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)