説明

機械設備発生音の遮音装置

【課題】設備建屋内における所要の空気流通路を保持する一方で、機械設備から発生する機械音等の発生音が外部へ漏洩するのを抑制して効果的な遮音作用が得られる機械設備発生音の遮音装置を提供すること。
【解決手段】機械設備発生音の遮音装置25は、設備建屋21の周壁21aに設けられる換気用ガラリ23と、設備建屋21内の底部に設けられるポンプ井42内の流入水r1を汲み上げる放水ポンプ32と、設備建屋21内に設けられ、放水ポンプ32を作動させる内燃機関31と、換気用ガラリ23に面し且つ内燃機関31の外側を覆うように設けられる内燃機関側遮音板装置30と、内燃機関31側に面し且つ換気用ガラリ23の外側を覆うように設けられるガラリ側遮音板装置29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水処理設備等の設備建屋内から発する機械音等の設備発生音の遮音装置に係り、特に建屋内設備の作動時に発生する設備発生音が設備建屋外へ漏れるのを抑制する機械設備発生音の遮音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の機械設備発生音の遮音装置として、空調設備等の機械装置を駆動させるにあたって、空調機駆動用のコンプレッサ音や熱交換手段として設けられるファン装置等から機械音等の騒音が発生するために、建物の屋上や周囲と隔離した空調設備室が設けられ、騒音が発生しても周囲に漏れるのを抑制した手段が講じられている。
【0003】
例えば、空調設備室に空調設備を設けた場合には、騒音が空調設備室から外部へ漏れるのを抑制するために、空調設備室内に消音壁を設けた構成のものが実用化されている(特許文献1参照)。
【0004】
この種の機械設備発生音の遮音装置について、図9を参照して説明する。
【0005】
図9は、従来の空調設備として設けられる機械設備からの発生音を遮音する消音壁を備えた設備建屋を縦断して示す概要図である。設備建屋として設けられる事務所ビル1には、機械設備室2が設けられる。この機械設備室2の床面2aには、機械設備としての空調設備3が設けられる。空調設備3は、空調機4および集塵機5を備えている。
【0006】
一方機械設備室2の一方の周壁2bには、外気取入口(図示せず)を備えたファン装置6が設けられる。更に他方の周壁2c側には、別室7との間に設けられるドア8に換気用ガラリ8aが設けられる。また、このドア8の換気用ガラリ8aと対向する空調設備3との間に遮音装置としての消音壁9が設けられる。なお、符号10は、機械設備室2の空調設備3と別室7との間をつなぐ送風用ダクトである。
【0007】
このように構成されることにより、空調設備3が作動すると、機械設備室2内には、ファン装置6の作動により外気wが機械設備室2に流入する。この流入した外気wは、空調機4にて、例えば冷却された空気w1がダクト10を通して別室7側へ流出する。この流出した空気w1は、ドア8の換気用ガラリ8aを介して機械設備室2側へ循環流入する。
【0008】
一方、空調設備3は、設備の始動を開始してから停止するまでの間にわたって空調設備3の駆動音等の騒音が発生する。この発生した騒音の一部は、消音壁9を介してドア8の換気用ガラリ8aから別室7側へ音量が抑制された状態で漏洩する。従って、別室7では、機械設備室2である隣室から漏洩してくる騒音レベルが一定量抑制されるようになっている。
【特許文献1】特開平1−269852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の機械設備室2に設けられる空調設備用の遮音装置である消音壁9は、設備発生音を生じる空調設備3とドア8の換気用ガラリ8aとの間にあって、遮音作用を奏するものであるが、空調機能を得るために空気流通路を大きくとらざるを得ず、十分な遮音効果を得ることができなかった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、排水処理設備等の設備に設けられる機械設備室から生じる設備発生音を極力抑制して効果的な遮音作用が得られる機械設備発生音の遮音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、設備建屋の周壁に設けられる換気用ガラリと、上記設備建屋内の底部に設けられるポンプ井内の流入水を汲み上げる放水ポンプと、上記設備建屋内に設けられ、上記放水ポンプを作動させる内燃機関と、上記換気用ガラリに面し且つ内燃機関の外側を覆うように設けられる内燃機関側遮音板装置と、上記内燃機関側に面し且つ上記換気用ガラリの外側を覆うように設けられるガラリ側遮音板装置とを具備したことを特徴とする機械設備発生音の遮音装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設備建屋内における所要の空気流通路を保持する構成とする一方で、機械設備から発生する機械音等の発生音が外部へ漏洩するのを抑制して効果的な遮音作用が得られる機械設備発生音の遮音装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る機械設備発生音の遮音装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の機械設備発生音の遮音装置を設けた排水処理設備としての雨水ポンプ場20の概要を示す縦断側面図である。雨水ポンプ場20は、地面P上に設けられる設備建屋21と、地面P下に設けられる貯水設備22から構成される。設備建屋21は、その周壁21aに沿って設けられる換気用ガラリ23および監視制御盤24と、内部に設けられる遮音装置25から構成される。
【0015】
換気用ガラリ23は、図2で示す、図1のA−A線に沿う断面図のように、枠体23aと、この枠体23aに複数の格子状桟23bが所定の間隔を置いて掛け渡されて構成されたもので、設備建屋21内の発熱空気を屋外へ自然流出できる程度の大きさに設けられる。
【0016】
監視制御盤24は、雨水ポンプ場20の稼動制御を行うにあたり、取扱者が操作したり、稼動状況を監視したりするために設けられる。この監視制御盤24は、図1に示すように、設備建屋21の周壁21aの内壁面に設けられる。この監視制御盤24には、取扱者にて取り扱われる後述するディーゼルエンジン,ガスタービン等の内燃機関(以下、ディーゼルエンジンと称する。)31の始動電源用の手動操作スイッチ24a、タイマスイッチ等の自動操作スイッチ24b、後述する遮音板巻取装置M1,M2の始動スイッチ24cおよび機械設備27の運転条件が満たされているか否かの監視データを、目視確認できる表示盤24cが設けられる。
【0017】
遮音装置25には、図2に示すように、換気用ガラリ23の室内側前方に、間隙l1を介して1枚の遮音板装置(以下、ガラリ側遮音板装置という。)29と、ディーゼルエンジン31の室内側前方に間隙l2を介して1枚の遮音板(以下、ディーゼルエンジン側遮音板装置という。)30とが設けられる。
【0018】
このガラリ側遮音板装置29には、遮音効果を調整・制御するため図1に示すように、遮音板巻取装置M1およびM2が設けられる。この遮音板駆動装置又は遮音板巻取装置(以下、遮音板巻取装置と称す。)M1は、遮音板巻取用モータm1および板ストッパーや巻取用ドラム等の装置(以下、巻取用ドラムと称す。)m11が備えられる。また、遮音板巻取装置M2は、ディーゼルエンジン31側に設けられるもので、遮音板巻取用モータm2および巻取用ドラムm21が備えられる。
【0019】
遮音板巻取装置M1およびM2は、監視制御盤24の表示盤24cを操作することにより、ガラリ側遮音板装置29およびディーゼルエンジン側遮音板装置30を所要の展開(全開〜全閉までの)長さになるように展開可能に設けられる。
【0020】
例えば、ガラリ側遮音板装置29は、換気用ガラリ23側から見て、ディーゼルエンジン31側が見えない程度に覆い隠すように配置させることができる。
【0021】
また、ディーゼルエンジン側遮音板装置30は、ディーゼルエンジン31側から見て、換気用ガラリ23側が見えない程度に覆い隠すように配置させることができる。
【0022】
図3は、図1の遮音装置25に備えた遮音板装置を示し、(A)および(B)は、それぞれ異なった形状の遮音板装置を示している。例えば(A)に示す遮音板装置は、ガラリ側遮音板装置29で、複数のスリット部29aが形成される。また、(B)に示す遮音板装置は、ディーゼルエンジン側遮音板装置30で、複数の円孔部29bが板全体にわたって万遍に形成したものである。
【0023】
なお、これらの複数のスリット部29aおよび円孔部29bは、ガラリ側又はディーゼルエンジン側のどちらへも配置できるもので、これらの形状の他に、遮音効果および通風効果の両方を考慮した種々の形状のものを採用してもよい。
【0024】
機械設備27は、設備建屋21の底部に設けられる。この機械設備27は、貯水設備22の流入水r1を地上側へ汲み上げる放水ポンプである、例えば縦軸ポンプ32と、この縦軸ポンプ32を作動させるディーゼルエンジン31と、同じく縦軸ポンプ32を作動させる電動機33とから構成される。
【0025】
歯車変速機34は、ディーゼルエンジン31の駆動により回転駆動する伝導シャフト31aを介して減速回転するものである。一方、主に電気的に回転数が制御された電動機33を駆動させる際には、図2に示すように伝導シャフト33aを介して歯車変速機34を駆動させ、縦軸ポンプ32を作動させることができるようになっている。
【0026】
機械設備27は、歯車変速機34等に加え、ディーゼルエンジン31の周辺部に付属機器として配置されるディーゼルエンジン駆動用の補機群35とから構成される。この補機群35は、例えば冷却水ポンプ36,潤滑油ポンプ37,燃料移送ポンプ38および空気圧縮機39とからなり、ディーゼルエンジン31が支障なく駆動させるために容量・寸法により図1に示すように、建屋21内、又は図示しない建屋外の部屋に設けられる。
【0027】
次に、貯水設備22について説明する。貯水設備22は、地面Pより下方(地下)側に、地上側に降り注いだ大量の雨水等の流入水r1を地下側へ導く地下主幹路41と、この地下主幹路41を通って導かれる流入水r1を一時的に貯留するポンプ井42と、このポンプ井42に貯留された流入水r1を地上側へ導く放水管43と、この放水管43から流出した放流水r2を外部へ放出する放流梁44とから構成される。
【0028】
地下主幹路41には、その途中に流入水r1の流れ込みを規制する流入ゲート45および除塵機46が設けられる。放水管43の放水側端部には、放水弁47が設けられる。この放水弁47は放流梁44への放水量を調整する弁である。
【0029】
次に、監視制御盤24について詳述する。図4は、監視制御盤24に設けられるシーケンス回路装置による始動開始条件の取出しタイミングを示す図である。
【0030】
監視制御盤24には、機械設備27を作動させるにあたって、図4に示すように、プログラミングされたシーケンス回路装置50が設けられる。このシーケンス回路装置50は、遮音装置25を機械音発生以前など所定のタイミングで作動させるため条件取り出しにも機能するもので、第1のAND回路51,第1のOR回路52,第2のAND回路53を備えている。
【0031】
ANDおよびOR回路51〜53は、順次作動条件が定められており、第1のAND回路51では河川放水受入れ条件Xが定められている。
【0032】
第1のAND回路51は、操作開閉器が自動側に選択され、自動操作スイッチ24bがONとなり、且つ河川放水受入れ条件が満たされている場合、すなわち、河川の水位および放水河川側のゲート方向が所定値(高さ、開度)になっている場合に、図示しない河川水位および放水ゲート開度検知器から河川放水可能信号cを入力して河川放水許可信号dを出力するものである。
【0033】
第1のOR回路52では、手動操作スイッチ24aがオンすることにより又は、第1のAND回路51側から河川放水許可信号dを入力することにより、河川放水始動信号eを出力するものである。また、第1のOR回路52からの河川放水始動信号eにより、設備発生音の遮音手段開始条件Yとして取り出されると共に補機始動指令が発せられるようになっている。
【0034】
なお、この遮音手段開始条件Yは、取扱者により、監視制御盤24の始動スイッチ24cが操作されることを条件としてもよく、また、雨水ポンプ場20の稼動が定期的または定時的に行われる場合には、タイマ等を備えた自動操作スイッチ24bによる自動操作が条件であってもよい。更に、内燃機関等が発する機械音は、通常、始動時(期間)に最大となり、その後は低減傾向にあるものの、電動機等に比べれば大きい値にて安定する傾向がある。
【0035】
遮音装置25は、この始動期間の大騒音発生以前に体制を整えておく必要があり、一方、遮音装置自身にも体制確立までの時間が必要である。そのため、遮音装置25の作動開始条件として内燃機関の始動前を想定して、遮音手段作動条件Yにて遮音作動を始めさせ、大騒音発生前に遮音体制を確立させることができるようになっている。また、周囲騒音との比較で夜間等にての騒音を感じやすい補機類の機械音発生前に遮音体制を確立させるため、内燃機関、補機数の運転可能性を示す条件となっている。例えば河川放水受け入れ条件にて遮音装置25を作動させれば低騒音の建屋外への漏れも防止できる。
【0036】
次に、第2のAND回路53では、補機群35が作動することにより、補機始動信号fを入力すると共に、運転条件Zが満たされている場合、すなわち、冷却水量、潤滑油圧、燃料油量および空気圧縮機が所要値である場合に補機運転条件チェック信号gを入力して内燃機関始動信号hがディーゼルエンジン31側へ出力するようになっている。
【0037】
以上の4つの条件が満たされることにより、ディーゼルエンジン31が始動できるようになっている。
【0038】
このように、AND/OR回路51〜53を経てディーゼルエンジン31が始動すると、伝導シャフト31aが歯車変速機34に回転駆動力が伝達され、縦軸ポンプ32が作動するようになっている。従って、ポンプ井42内の流入水r1が縦軸ポンプ32により吸い上げられ、放流水r2として放流梁44側へ放出される。なお、ディーゼルエンジン31により作動する縦軸ポンプ32は、電動機33と連携・共働して使用できるようにしてもよい。
【0039】
機械設備27は、通常時には、電動機33により駆動される縦軸ポンプ32を主体に運用させ、一方放流すべき放流水r2が多くなったり、電動機33の電源系統の故障や停電時にはディーゼルエンジン31により駆動される縦軸ポンプ32を電動機33と同時又は単独にて運用させることができる。また、停電時に、電動機33が使用できないときは、ディーゼルエンジン31を使用し、逆に、縦軸ポンプ32の作動時における負荷が軽減しているように場合には、電動機33に切り替えて使用することもできる。
【0040】
次に、貯水設備22のポンプ井42に所定量の流入水r1が貯留された状態から地上P側へ放水するまでの機械設備27の作用について、図1および図4を参照して説明する。
【0041】
図1に示す監視制御盤24の手動操作スイッチ24aおよび自動操作スイッチ24bをオンさせると、それぞれのスイッチ24aおよび24bから図4に示すように、スイッチ信号aおよびbが出力される。
【0042】
以下、図4に示すシーケンス回路装置による始動開始条件の取出しタイミングに従いディーゼルエンジン31が作動するまでを説明する。
【0043】
第1のAND回路51は、スイッチ信号bを入力すると共に河川放水受入れ条件X、すなわち、河川の水位および放水側のゲート開度が所要値(高さ、開度)を示している場合には、河川水位およびゲート開度検知器から河川放水可能信号cを入力することにより、第1のAND回路51が閉成される。この第1のAND回路51が閉成されることにより、この第1のAND回路51から河川放水許可信号dが第1のOR回路52側へ出力される。第1のOR回路52には、手動操作スイッチ24aのスイッチ信号aを入力している場合又は河川放水許可信号dが入力されると河川放水始動信号eを出力する。
【0044】
河川放水始動信号eは、設備発生音の遮音手段開始条件Yとして取り出されると共に、補機始動指令信号として補機群35側へ出力され、補機群35が始動する。この補機群35が始動すると、補機群35から補機始動信号fが第2のAND回路53側へ出力する。補機群35は、補機始動信号fを入力すると共に、ディーゼルエンジン31および補機群35の運転条件が満たされている場合に、ディーゼルエンジン31および補機群35側から補機運転条件チェック信号gを入力してディーゼルエンジン始動信号hを出力する。そして、この出力された始動信号hをディーゼルエンジン31が入力することにより、ディーゼルエンジン31が始動する。
【0045】
次に、ディーゼルエンジン31が始動すると共に作動する機械設備27の作動について、図1〜図3を参照して説明する。
【0046】
ディーゼルエンジン31が始動すると、図1に示すように、ディーゼルエンジン31の伝導シャフト31aを介して歯車変速機34の回転速度が、例えば減速される。歯車変速機34が減速作動されると、伝導シャフト34aが減速回転する。この減速回転する伝導シャフト34aの回転駆動により縦軸ポンプ32が作動してポンプ井42内の流入水r1が放水管43を通して吸い上げられ、放流梁44に放流される。このように、ポンプ井42の流入水r1が地上P側へ放流されることにより、雨水ポンプ場20による排水処理がなされる。
【0047】
次に、ディーゼルエンジン31および補機群35が作動するに先だって、これらのディーゼルエンジン31および補機群35から騒音vが発生すると、図2に示すように、ディーゼルエンジン31および補機群35の換気用ガラリ23に面する側がディーゼルエンジン側遮音板装置30により覆われているので、騒音vが減衰されたり、又は直接に換気用ガラリ23側に達しないで、設備建屋21の周壁21aにて反射される。この減衰又は反射された騒音vは、換気用ガラリ23側のガラリ側遮音板装置29により遮られる。
【0048】
なお、ガラリ側遮音板装置29およびディーゼルエンジン側遮音板装置30は、図2に示す状態、例えばディーゼルエンジン31又は電動機33の全数停止時では、このガラリ側遮音板装置29およびディーゼルエンジン側遮音板装置30は、全開の状態になっている。そこで、設備建屋21の外へ漏れる騒音レベルが低い、例えば電動機33のみの作動,運用による場合や、騒音vが外部へ漏れ出しても人的その他影響がない場合には、その状況に応じて半開程度にすればよい。従って、騒音vは、設備建屋21内にて騒音レベルが低減され、換気用ガラリ23から外部へ漏れ出る騒音vが抑制される。
【0049】
一方、設備建屋21内にて機械設備27からの発熱は、ディーゼルエンジン31ディーゼルエンジン31とディーゼルエンジン側遮音板装置30、換気用ガラリ23とガラリ側遮音板装置29のそれぞれの間隙l2およびl1を介して設備建屋21内を対流し、換気用ガラリ23の格子状桟23b間から外部へ放熱される。
【0050】
このように、機械設備発生音の遮音装置25によれば、図1〜図3に示すように、設備建屋21の周壁21aに設けられる換気用ガラリ23と、設備建屋21内の底部に設けられるポンプ井42の水を地上側に汲み上げる放水ポンプ32と、設備建屋21内に設けられ、放水ポンプ42を作動させる内燃機関としてのディーゼルエンジン31と、換気用ガラリ23に面し且つディーゼルエンジン31の外側を覆うように設けられるディーゼルエンジン側遮音板装置30と、ディーゼルエンジン31側に面し且つ換気用ガラリ23の外側を覆うように設けられるガラリ側遮音板装置29とを具備した構成であるから、ディーゼルエンジン31およびその周辺の補機群35の作動時に発する機械音等の発生音が、ディーゼルエンジン31側のディーゼルエンジン側遮音板装置30およびガラリ側遮音板装置29により設備建屋21外へ漏れるのを効果的に抑制することができる。
【0051】
更に、機械設備発生音の遮音装置25によれば、ディーゼルエンジン側遮音板装置30は、図2に示すように、ディーゼルエンジン31およびこのディーゼルエンジン31の補機群35を含めて換気用ガラリ23側に向かって覆い隠すことができる程度の大きさでよいから、ディーゼルエンジン31側からの放熱を必要以上に阻害しない一方で、効果的に遮音作用が得られる。
【0052】
更にまた、機械設備発生音の遮音装置25によれば、内燃機関側遮音板装置30およびガラリ側遮音板装置29の少なくとも一方には、図3(A)および(B)に示すように、スリット部29aおよび円孔部29bを設けた構成としたから、共鳴吸音作用が助長され、効果的な遮音作用が得られる。
【0053】
なお、機械設備発生音の遮音装置25の内燃機関側遮音板装置30およびガラリ側遮音板装置29は、1枚のものを用いた構成に限らず、複層タイプ、例えば図5に示すように、2層構成のものを採用することができる。
【0054】
図5は、図1の遮音板装置の遮音板装置と異なった形状の遮音板装置を用いた図2に対応する断面図である。図5に示す換気用ガラリ23側に、所要間隙l3を介してガラリ側遮音板本体72を2層に組み合わせたガラリ側遮音板装置60と、また、ディーゼルエンジン31側にも所要間隙l4を介して内燃機関側遮音板本体73を2層に組み合わせた内燃機関側遮音板装置61を設けた構成である。その他の構成は、図2に示す構成と同様である。従って、ガラリ側遮音板装置60と内燃機関側遮音板装置61を採用した機械設備発生音の遮音装置25によれば、なお一層の遮音効果が得られる。
【0055】
また、機械設備発生音の遮音装置25のガラリ側遮音板装置60および内燃機関側遮音板装置61は、2層構成のものであるが、単に2層構成のみならず2層間に出し入れ可能な吸音シートを設けた構成のものを採用することができる。例えば図6に示すガラリ側遮音板装置70およびディーゼルエンジン側遮音板装置71のように3層構成にすることができる。その他の構成は、図2および図5に示す構成と同様である。
【0056】
ガラリ側遮音板装置70は、換気用ガラリ23側に、また、ディーゼルエンジン側遮音板装置71は、ディーゼルエンジン31側に設けた構成である。このガラリ側遮音板装置70およびディーゼルエンジン側遮音板装置71は、それぞれ遮音板本体72による2層構成および遮音板本体73による2層構成の、それぞれの層間において、例えば図7に示すように、フラットタイプ吸音シート74および75を出し入れ可能な構成にしたものである。その他の構成については、図5に示す構成と同様である。
【0057】
フラットタイプ吸音シート74,75は、図6に示すように、吸音シート巻取装置M3およびM4により全長〜全閉の範囲で展開したり、所望の範囲の長さにすることができる。なお、吸音シート巻取装置M3およびM4は、それぞれ取扱者により手動操作により行うのが簡易的であるが、図1に示す遮音装置25のように、遮音板巻取用モータm1,m2を備えたタイプのものであってもよい。
【0058】
また、フラットタイプ吸音シート74,75は、シート材質そのものが遮音作用を有するものである。例えば合板、石綿セメント板、石膏ボード、ハードボード、プラスチック板および金属板が用いられるが、機械音等の音波に対する吸収特性を考慮した材質のものを適宜に選定して用いることができる。この種のフラットタイプ吸音シート74,75を採用した場合に、例えば吸音シートの一端を揺らすように取り付けた場合には、ディーゼルエンジン31と補機群35が発する機械音等の振動波を受け、音圧の山谷がシートの山谷に一致すると、音圧の山谷はつねにシートを振れ動かすことになり、騒音vは完全透過することになる。
【0059】
そこで、フラットタイプ吸音シート74,75を取り付けるに際しては、音圧の山谷がシートの山谷に一致しないシート厚のものを用いる。このシート厚のものを用いれば騒音vによる振動波の共振作用が得られ、より一層の吸音効果が得られる。従って、特にディーゼルエンジン31側から騒音vが大きい場合には、特に、ディーゼルエンジン側遮音板装置30(61,71)の展開長さを最大限に大きく(全長)し、また、設備建屋21内での放熱量が多い(高温)場合等放熱性を考慮する場合には、覆い隠す範囲やディーゼルエンジン31側との間隙l2,換気用ガラリ23側の間隙l1の長さを加減して適宜に調整して使用することができる。
【0060】
更にまた、機械設備発生音の遮音装置25によれば、吸音シートとして、例えば図8に示すように波状タイプのものを採用することができる。図8に示す波状タイプ吸音シート80は、横断面が波状に形成されものである。
【0061】
この波状タイプ吸音シート80は、素材として、例えば合板、石綿セメント板、石膏ボード、ハードボード、プラスチック板および金属板が用いられるが、吸音する音波に対する吸収特性を考慮した材質のものを適宜に選定して用いることができる。この波状タイプ吸音シート80を採用する場合には、異なった方向から音圧を受けても波状部80aにより万遍に音波共振作用が得られ、より一層の吸音効果が得られる。
【0062】
なお、機械設備発生音の遮音装置25k歯車変速機34および放水管43は、内燃機関31および電動機33に共用させた構成にしたが、それぞれ別個に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の機械設備発生音の遮音装置を設けた雨水ポンプ場の概要を示す縦断側面図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】図1の遮音装置に備えたガラリ側遮音板装置を示し、(A)および(B)は、それぞれ異なった形状の遮音板装置を示す正面図。
【図4】本発明の機械設備を制御作動させるために監視制御盤に設けられる図示しないシーケンス回路装置による始動開始条件の取出しタイミングを示す図。
【図5】図1の遮音板装置の遮音板装置と異なった形状の遮音板装置を用いた図2に対応する断面図。
【図6】図2および図5の遮音板装置と異なった形状の遮音板装置を用いた図2および図5に対応する断面図。
【図7】図6に示される遮音板装置に用いられる吸音シートを示し、(A)は、その正面図、(B)は、その側面図。
【図8】図7に示される吸音シートと異なった形状の吸音シートを示し、(A)は、その正面図、(B)は、その側面図。
【図9】従来の機械設備発生音の遮音装置を備えた設備建屋を縦断して示す概要図。
【符号の説明】
【0064】
20 雨水ポンプ場(排水処理設備)
21 設備建屋
21a 周壁
22 貯水設備
23 換気用ガラリ
23a 枠体
23b 格子状桟
24 監視制御盤
24a 手動操作スイッチ
24b 自動操作スイッチ
24c 始動スイッチ
24d 表示盤
25 遮音装置
27 機械設備
29,60,70 ガラリ側遮音板装置
29a スリット部
29b,32b 円孔部
30,61,71 ディーゼルエンジン側遮音板装置(内燃機関側遮音板装置)
30a,33a,34a 伝導シャフト
31 ディーゼルエンジン(内燃機関)
32 縦軸ポンプ(放水ポンプ)
33 電動機
34 歯車変速機
35 補機群
36 冷却水ポンプ
37 潤滑油ポンプ
38 燃料移送ポンプ
39 空気圧縮機
41 地下主幹路
42 ポンプ井
43 放水菅
44 放流梁
45 流入ゲート
46 除塵機
47 放出弁
50 シーケンス回路装置
51,53 AND回路
52 OR回路
72 ガラリ側遮音板本体
73 ディーゼルエンジン側遮音板本体(内燃機関側遮音板本体)
74,75 フラットタイプ吸音シート
80 波状タイプ吸音シート
80a 波状部
a 手動操作スイッチオン信号
b 自動操作スイッチオン信号
c 河川放水可能信号
d 河川放水許可信号
e 河川放水始動信号
f 補機始動信号
g 補機運転条件チェック信号
h ディーゼルエンジン始動信号(内燃機関始動信号)
l1〜l6 間隙
r1 流入水
r2 放流水
v 騒音
M1,M2 遮音板巻取装置
m1,m2 遮音板巻取用モータ
m11,m21 巻取用ドラム
M3,M4 吸音シート巻取装置
P 地面
X 河川放水受入れ条件
Y 遮音手段作動条件
Z 運転条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備建屋の周壁に設けられる換気用ガラリと、上記設備建屋内の底部に設けられるポンプ井内の流入水を汲み上げる放水ポンプと、上記設備建屋内に設けられ、上記放水ポンプを作動させる内燃機関と、上記換気用ガラリに面し且つ内燃機関の外側を覆うように設けられる内燃機関側遮音板装置と、上記内燃機関側に面し且つ上記換気用ガラリの外側を覆うように設けられるガラリ側遮音板装置とを具備したことを特徴とする機械設備発生音の遮音装置。
【請求項2】
上記遮音装置は、設備建屋内の底部に設けられるポンプ井内の流入水を汲み上げる放水ポンプを作動させる電動機を備えたことを特徴とする請求項1記載の機械設備発生音の遮音装置。
【請求項3】
上記内燃機関側遮音板装置は、内燃機関および内燃機関の補機群を含めて換気用ガラリ側に向かって覆い隠すことができる大きさに設けられたことを特徴とする請求項1記載の機械設備発生音の遮音装置。
【請求項4】
上記内燃機関側遮音板装置およびガラリ側遮音板装置の少なくとも一方には、スリット部または透孔部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の機械設備発生音の遮音装置。
【請求項5】
上記内燃機関側遮音板装置およびガラリ側遮音板装置は、それぞれの遮音板本体が複層構成に設けられると共に、上記複層の間に吸音シートが配置されたことを特徴とする請求項1記載の機械設備発生音の遮音装置。
【請求項6】
上記吸音シートは、フラットタイプ吸音シートまたは波状タイプ吸音シートであることを特徴とする請求項5記載の機械設備発生音の遮音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−163030(P2007−163030A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359973(P2005−359973)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】