説明

止水構造

【課題】連結部材に形成されたねじ穴の芯と該連結部材を被連結部材に連結する際に利用するねじの芯が一致しなくとも、該ねじの頭部とねじ穴との間の止水性能を確保する。
【解決手段】止水構造は、連結部材となる縦枠2aの所定位置にねじ3の頭部3aを受け入れるための球の一部からなる球面11aとねじ穴11cを有する窪み11を形成すると共に、窪み11の球面11aに対応する球面12aを有し中心部分を貫通するねじ3の芯ずれ吸収部を設けたパッキン12を形成し、パッキン12を取り付けたねじ3を窪み11のねじ穴11cに挿通して被連結部材となる下地材6に締結することによって、芯ずれをパッキンの吸収部によって吸収すると共に、パッキンの球面を窪みの球面に接触させて止水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水がかかる虞のある部位に配置された被連結部材に対してねじを利用して連結部材を連結したときの該ねじと連結部材との止水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置される機器類の防水カバーや、建物の外壁部分に取り付けられる窓やシャッターの枠類、或いは浴室に取り付けられる扉の枠等の連結部材を、機器類のフレーム、建物に設けた下地材等の被連結部材に対してねじを利用して固定することがある。このような連結部材には雨水や浴室で利用する湯水がかかるため、連結部材とねじの頭部との間で止水構造を構成する必要がある。このため、連結部材とねじとの間にゴム等のパッキン材を挟んで止水構造とするのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属製のサッシ枠にガラスを取り付けると共に皿ビスを利用してガラスを押さえるガラス押さえ枠を取り付ける際に、ガラス押さえ枠に形成された円錐状の皿穴の内面とビス頭の円錐状底面との間に、可撓性を有し中央部にビス挿通孔が設けられた円板シート状のパッキンを介在させたものである。この技術では、皿ビスをサッシ枠に設けたねじ孔に対して締め込むことで、パッキンを皿穴の内面とビス頭部の円錐状底面との間に挟んで弾性変形させることにより、水密性を確実に保持することが可能である。
【0004】
一方、住宅の外壁面に設ける窓や浴室の壁面に設ける扉の施工に於いては、所定位置に周囲に下地材(被連結部材)を配置した開口部を設け、対応する開口部に窓や扉の枠体(連結部材)を嵌め込み、現場施工により枠体から下地材に向けてタッピンねじを通して取り付けるようにしている。この場合、枠体を取り付ける下地材は夫々の現場において組み立てられるものであるため、取付位置の精度は工場生産品には及ばない。従って、ねじ先端を当接する際の位置決めのガイドとなるねじ穴(下穴)を予め工場等で加工しておいても下穴の位置の精度は得難く、精度の得られていない下穴によってかえって枠体の取付精度が低下する虞もあるので下地材には下穴は形成せず、枠体にのみタッピンねじである皿ねじの頭部の円錐形状に対応した円錐状のねじ穴を所定の間隔を保持して形成しておき、電動工具によってタッピンねじを下地材に揉み込むのが一般的である。
【0005】
【特許文献1】実公平6−25593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皿ねじを利用して連結部材を被連結部材に連結する場合、連結部材に形成したねじ穴の円錐面と皿ねじの頭部の円錐面とが満遍なく接触しないと良好な止水性能を発揮することができない。即ち、皿ねじの芯とねじ穴の芯との間に、平行なずれ又は互いに交叉するようなずれ或いは平行なずれと交叉するずれが同時に生じた場合、ねじ穴の円錐面と皿ねじの頭部の円錐面とが満遍なく接触することが不可能になり、良好な止水性能を発揮することができないという問題が生じる。
【0007】
特許文献1に示すように、皿穴とねじ孔を、加工設備を備えたサッシ製造工場に於いて高い精度を保持して加工し得るアルミサッシ部材に於いては、両者の芯を一致させることが容易であり、上記問題を回避することができる。
【0008】
しかし、上記した住宅の窓や浴室の扉の枠体を下地材に取り付ける作業を現場施工とする場合では、下地材には下穴がなく、枠体に予め加工されているねじ穴の径も使用するタッピンねじの太さの自由度を持たせるように多少大きめに設定されているため、タッピンねじを螺入する平面的な位置や角度を一定に保つことが難しく、タッピンねじの芯を枠体に設けたねじ穴の芯と一致させて締結することに熟練や慎重さが要求される。従って、作業員の疲労が増大したり、工事期間が長くなるという問題を派生する。特に、前記の如き枠体を下地材に取り付ける場合、ねじを水平に施工する部位と、下向きに施工する部位と、上向きに施工する部位とがあり、作業姿勢が安定しないことからより疲労が増大するという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、連結部材に形成されたねじ穴の芯と該連結部材を被連結部材に連結する際に利用するねじの芯が一致しなくとも、該ねじの頭部とねじ穴との間の止水性能を確保することができる止水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る止水構造は、ねじを利用して連結部材を被連結部材に連結固定する際のねじと連結部材との止水構造であって、連結部材の所定位置にねじの頭部を受け入れるための球の一部からなる球面と該球面の底部にねじを挿通するねじ穴を有する窪みを形成すると共に、前記窪みを構成する球面に対応する球面を有し該球面の中心部分を貫通するねじの芯ずれ吸収部を設けたパッキンを形成し、前記パッキンを取り付けたねじを連結部材の窪みに形成したねじ穴に挿通して被連結部材に締結することによって、ねじのねじ穴に対する芯ずれをパッキンの吸収部によって吸収すると共に、パッキンの球面を窪みの球面に接触させて止水するものである。
【0011】
上記止水構造に於いて、パッキンが、外周面が連結部材に形成された窪みを構成する球面に対応する球面に形成され且つ中心部分に前記窪みに形成したねじ穴の径とねじの径に応じた径を持った貫通穴を形成すると共に貫通穴の端部に該貫通穴に直交する平坦面を有するざぐり部を形成したパッキン本体と、前記パッキン本体のざぐり部に嵌め込まれて平坦面に接触する接触体とを有して構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の止水構造では、連結部材に形成された窪みにねじを挿通して被連結部材に連結固定する際に、ねじが窪みに設けたねじ穴の芯に対し平行な芯ずれ、又は交叉する芯ずれ、或いは平行な芯ずれと交叉する芯ずれが混じった芯ずれが生じているような場合でも、安定した止水性能を発揮することができる。
【0013】
即ち、窪みに設けたねじ穴の芯に対しねじの芯が平行にずれる芯ずれを生じた場合、パッキンに設けた吸収部によってこの芯ずれを吸収することができる。またねじ穴の芯に対しねじの芯が交叉するような芯ずれを生じた場合、この芯ずれに応じて、パッキンの球面が窪みの球面に沿って移動(パッキンが回動)することで、この芯ずれを吸収することができる。従って、ねじの芯がねじ穴の芯に対し如何なる状態で芯ずれを生じていても、この芯ずれに関わらず安定した止水性能を発揮することができる。
【0014】
特に、パッキンを、パッキン本体と接触体とによって構成することで、ねじの頭部の形状の如何に関わらず、安定した止水性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る止水構造の最良の形態について説明する。本発明の止水構造は、ねじを利用して連結部材を被連結部材に連結固定する際に、連結部材とねじとの間の止水性能を確保して浸水を防止するものである。
【0016】
本発明に於いて、連結部材及び被連結部材の具体的な構成は限定するものではなく、連結部材としては雨水やシャワー水等がかかる虞のある部位に配置され、且つ該水の被連結部材側へのに浸水を防止することが要求されるような部材であれば良く、被連結部材としては前記の如き連結部材を連結固定する機能を有する部材であれば良い。
【0017】
上記の如き連結部材としては、例えば住宅に於ける外壁に設ける窓の枠体や浴室に設ける扉の枠体等がある。また被連結部材としては、例えば住宅に於ける外壁に設ける窓の下地材や浴室に設ける扉の下地材等がある。そして本発明は、前記枠体や下地材及び同様の機能を持った他の連結部材と被連結部材をねじによって連結固定する際の止水構造として好ましく適用することが可能である。
【0018】
本発明に於いて、連結部材には、ねじの頭部を受け入れるための球の一部からなる球面とねじを挿通するねじ穴を有する窪みが形成される。連結部材に於ける窪みの球面を形成する球の径は特に限定するものではなく、ねじの頭部の径や、ねじの頭部を嵌め込むパッキンの径に応じて設定することが好ましい。即ち、球面の径は、ねじの太さに応じた大きさを持つパッキンを安定した状態で受け入れることが可能で、且つパッキンが充分に球面に沿って摺動し得るような大きさに設定することが好ましい。
【0019】
窪みの球面の径は、パッキンの外周面に形成する球面の径と一致したものであることが必要である。このように、窪みはある程度の深さを有するものであり、連結部材も少なくとも窪みの深さと等しい厚さを有することが必要である。しかし、連結部材の素材そのものが窪みの深さと等しい厚さを有する必要はなく、素材を塑性加工することによって、実質的に窪みの深さと等しい厚さを実現し得れば良い。
【0020】
例えば、連結部材が窓や扉の枠体であるような場合、この枠体はアルミニウムの押出成形材によって構成されることが多い。このような枠体は、素材の厚さは薄いものの枠体としての厚さは厚いのが一般的である。従って、枠体の素材をプレス加工することによって所定の深さを持った球面を成形し、これにより窪みを形成することが可能である。
【0021】
また窪みに形成されるねじ穴の径も特に限定するものではなく、予め想定した径のねじを挿通し得る値であれば良い。
【0022】
本発明に於ける被連結部材の形状や構成は特に限定するものではなく、連結部材を連結固定するためのものであれば良い。このような被連結部材としては、前述した住宅に於ける窓の枠体を建物の外壁面に取り付けるための下地材や、浴室の扉の枠体を浴室の壁面に取り付けるための下地材等がある。これらの下地材は薄い鋼材であるのが一般的であるが、必ずしも鋼材である必要はなく、木材であっても良い。
【0023】
連結部材を被連結部材に連結固定するねじとしては、前記機能を有するものであれば良く、ねじの種類や太さを限定するものではない。例えば、被連結部材が木材或いは下穴が設けられた鋼材の場合には木ねじを用いるのが好ましく、また被連結部材が下穴のない鋼材の場合、或いは連結部材を被連結部材に対して連結固定する際の作業を容易に行うことが求められるような場合には、ねじとしてタッピンねじを用いるのが好ましい。特に、本発明の止水構造を実現するには、皿頭タッピンねじや、なべ頭タッピンねじ、或いはトラス頭タッピンねじ等があり、何れも好ましく用いることが可能である。
【0024】
パッキンは、連結部材に形成された窪みを構成する球面と等しい球面を有し、且つ中心部分にねじの芯ずれを吸収する吸収部が設けられ、該吸収部にねじを配置して該ねじを窪みのねじ穴に挿通して被連結部材に締結したとき、ねじの芯がねじ穴の芯に対し、平行な芯ずれ、交叉する方向の芯ずれ、或いは平行な芯ずれと交叉する芯ずれが混合した芯ずれが生じた場合でも、これらの芯ずれを吸収して球面どうしを接触させて止水性能を確保する機能を有するものである。
【0025】
パッキンに設けた吸収部は、特に、ねじの芯がねじ穴の芯に対して平行な芯ずれが生じたときにこの芯ずれを吸収するものであり、ねじの太さとねじ穴の径の差に対応した穴を有し、この穴にねじを挿通して窪みのねじ穴に螺合したときにねじの芯とねじ穴の芯との間に平行な芯ずれが生じたとき、ねじの螺合の進行に伴ってねじの芯がパッキンの穴の芯に対して平行に移動することで芯ずれを吸収し得るように構成されている。
【0026】
特に、パッキンの中心に形成した穴の端面を該穴の芯に対して直交する平坦面とし、且つねじの頭部に前記平坦面と接触する接触体を装着しておくことで、ねじに被連結部材に対する螺合の進行に伴って接触体が平坦面に沿って移動し、平行な芯ずれを吸収することが可能である。接触体は、ねじの芯がパッキンの窪みに形成した穴に於ける如何なる位置に移動したとしても必ず前記穴を閉塞し得る寸法を持って形成されている。従って、パッキンの穴と接触体との間に隙間が形成されることがなく、充分な止水性能を発揮することが可能となる。
【0027】
上記の如き機能を有するパッキン及び接触体を構成する材料として特に限定するものではないが、成形性が良好であり、且つ連結部材に設けた窪みを構成する球面に対する良好な滑りを確保する点から、適度な弾力性と高い耐水性を有する合成樹脂であることが好ましい。このような合成樹脂としては、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)が挙げられる。しかし、前記した合成樹脂にのみ限定するものではないことは当然である。
【実施例1】
【0028】
次に止水構造の実施例について図を用いて説明する。図1は本発明に係る止水構造を適用した、住宅の浴室に一般的に用いられる折戸付アルミ建具を説明する正面図である。図2は図1の建具の枠体と浴室の壁面内部の下地とを連結固定した状態を説明する図である。図3は第1実施例に係る止水構造を説明する図であり、ねじのねじ穴に対する平行な芯ずれを吸収した状態を説明する図である。図4はねじの芯がねじ穴の芯に対し平行な芯ずれと交叉する芯ずれを生じたときの止水構造を説明する図である。
【0029】
先ず、皿頭タッピンねじを利用して、連結部材としての浴室建具の枠体を、被連結部材としての浴室の壁面内部の下地材に連結固定した構造について図1、2により説明する。本実施例では、浴室建具の枠体を連結部材とし、浴室の壁面内部の下地材を被連結部材として構成しているが、本発明はこの実施例に限定するものではないことは当然であり、ねじによって連結部材を被連結部材に連結固定したときに、該ねじの締結部位からの浸水を防止することが要求されるような部位に適用し得るものである。
【0030】
図に於いて、折戸1は、一対の縦枠2aと一対の横枠2bとによって構成された枠体2に取り付けられている。この折戸1は、屈折可能に構成された一対の障子1aをヒンジ1bを介して接続し、一方の障子1aを枠体2に設けた図示しない支点を中心として回動可能に取り付けると共に、他方の障子1aを枠体2の下側の横枠2bに設けたレールに沿って移動可能に取り付けられている。従って、一対の障子1aをヒンジ1bを起点として折り曲げることで、折戸1を開放することが可能である。
【0031】
枠体2を構成する縦枠2a、横枠2bはアルミニウムの押出成形材からなり、中空部と突起片とを有して構成されており、中空部が浴室側に配置され突起片が脱衣室側に配置される。従って、縦枠2a、横枠2bの中空部に対応する部位には入浴時に温水や冷水がかかり、突起片には水がかかることはない。
【0032】
枠体2の縦枠2aは、中空部に対応する部位がねじ3によって下地材6に連結固定され、突起片には木ねじ5によって開口枠4が固定されている。本発明に於いて前記下地材6の構造や形状については特に限定するものではなく、本実施例では、図2の右側に示すように鋼材を略L字状に折り曲げて形成した部材、或いは同図の左側に示すように所定の厚さを持った板状の部材、の何れであっても良く、更に、これらの形状以外の形状であっても良い。
【0033】
上記構成に於いて、本発明に係る止水構造は、縦枠2aの中空部の片とねじ3の頭部3aとの間に構成されている。次に、図3、4により第1実施例に係る止水構造Aについて説明する。図に示すように、本実施例に係る止水構造Aは、枠体2を構成する縦枠2aの所定位置に設けた窪み11と、この窪み11とねじ3の間に配置されたパッキン12とを有して構成されている。
【0034】
縦枠2aに形成された窪み11は、球の一部からなる球面11aと、芯11bを中心として球面11aの底部に形成されたねじ穴11cを有して構成されている。縦枠2aに対して窪み11を如何なる方法で形成するかについては何ら限定するものではないが、縦枠2aがアルミニウムの押出成形材からなることを考慮すると、プレス加工によって形成することが好ましい。このため、本実施例では、球面11aと等しい球面を有し且つねじ穴11cの径と等しい径の成形部を持ったポンチとダイス(図示せず)を用い、これらのポンチとダイスによって窪み11を成形している。
【0035】
またねじ穴11cの径はねじ3を挿通し得る程度の値であれば良く、ねじ3の太さに比較して大きすぎると芯11bに対しねじ3の芯3bが芯ずれを生じる可能性と芯ずれ量が大きくなる虞が生じる。本実施例では、アルミニウムの押出成形材からなる縦枠2aをプレス加工して窪み11を形成すると共に、ねじ穴11cの径を多少大きめの寸法に設定している。
【0036】
ねじ3として本実施例ではなべ頭のタッピンねじを用いている。このタッピンねじ3では、頭部3aの底面3cは芯3bに対し略直角な面として形成されている。
【0037】
パッキン12は、外周に窪み11の球面11aと同じ曲率を持った球面12aが形成されており、芯12bと一致してねじ3を挿通する穴12cが形成されている。穴12cの球面12aと反対側にはざぐり部12dが形成されており、該ざぐり部12dの底面12eは芯12bに対して直角な面として形成されている。
【0038】
パッキン12に形成された穴12cの径は、窪み11に設けたねじ穴11cの径やタッピンねじ3の頭部3aの径よりも小さく、且つタッピンねじ3の側面が穴12cの内周面に接触したような場合でも頭部3aとの間に隙間が生じることのない程度の値を有している。
【0039】
またざぐり部12dの径は、タッピンねじ3の側面が穴12cの内周面に接触したような場合に頭部3aが接触するか、或いは接触しない程度の値を有している。即ち、パッキン12に形成された穴12c、及びざぐり部12dの径は、夫々タッピンねじ3の太さ、及び頭部3aの径よりも充分に大きく形成されている。
【0040】
上記の如く構成された止水構造Aでは、窪み11にパッキン12を嵌め込んで該パッキン12の穴12cにタッピンねじ3を挿通して下地材6に締結したとき、図3に二点鎖線で示すように、タッピンねじ3の芯3bがねじ穴11cの芯11bに対して平行な芯ずれを生じた場合、タッピンねじ3は、見掛け上、パッキン12の穴12c、ざぐり部12dの内部で平行移動する。またタッピンねじ3の下地材6に対する締結に伴って、該タッピンねじ3の頭部3aからパッキン12に押圧力が付与され、パッキン12は球面12aを窪み11の球面11aに圧接させる。
【0041】
このため、タッピンねじ3の芯3bの窪み11のねじ穴11cの芯11bに対する平行な芯ずれは、パッキン12の穴12c、ざぐり部12dに対する移動によって吸収されることになる。このとき、タッピンねじ3の頭部3aの底面3cは、パッキン12のざぐり部12dの底面12eに接触した状態を保持し、パッキン12の穴12cは頭部3aの底面3cによって閉塞される。
【0042】
従って、窪み11に水がかかったとしても、窪み11の球面11aに対するパッキン12の球面12aの圧接、及びパッキン12の穴12cがタッピンねじ3の頭部3aによって閉塞されることにより止水し、浸水することがない。
【0043】
上記の如く、パッキン12の穴12c、ざぐり部12dが、窪み11のねじ穴11cの芯11bに対しねじ3の芯3bが平行に芯ずれを生じたときにこの芯ずれを吸収する吸収部となる。
【0044】
図4はタッピンねじ3の芯3bが、窪み11のねじ穴11cの芯11bに対し、平行な芯ずれと交叉する方向の芯ずれを起している状態を示している。即ち、図4はタッピンねじ3とパッキン12との関係を図2の状態に保持して傾斜させた状態を示しており、タッピンねじ3の芯3bはねじ穴11cの芯11bに対し図に於ける右方向にずれを生じると共に傾斜して交叉している。
【0045】
タッピンねじ3が傾斜した状態で下地材6に締結されるのに伴って、頭部3aの底面3cからパッキン12のざぐり部12dの底面12eに押圧力が付与される。この押圧力の作用により、パッキン12にはタッピンねじ3の傾斜方向への回動が生じて、パッキン12の球面12aが窪み11の球面11aに沿って摺動する。
【0046】
そして、頭部3aの底面3cから付与される押圧力の方向とパッキン12の芯12bの方向とが一致したとき、前記押圧力はパッキン12の球面12aの窪み11の球面11aに対する圧接力として作用し、パッキン12は安定した状態で窪み11に圧接して止水することが可能である。
【0047】
上記の如く、タッピンねじ3の芯3bが窪み11のねじ穴11cの芯11bに対し交叉する方向の芯ずれを生じている場合、パッキン12は窪み11に対して交叉角度に対応した角度分回動して安定する。このため、パッキン12の上面12fが、該パッキン12を窪み11に嵌め込んだときに縦枠2aの表面と同一面であると、端部が縦枠2aの表面から突出することになり好ましくない。従って、パッキン12の上面12fは中心部分から球面12aの方向にかけて傾斜した傾斜面として構成されている。
【0048】
このように、タッピンねじ3の芯3bが、窪み11のねじ穴11cの芯11bに対し、平行な芯ずれと交叉する方向の芯ずれを起している場合でも、窪み11の球面11aに対するパッキン12の球面12aの圧接、及びパッキン12の穴12cがタッピンねじ3の頭部3aによって閉塞されることにより、窪み11にかかった水を止水し、浸水することがない。
【実施例2】
【0049】
次に、第2実施例に係る止水構造Bについて図5により説明する。尚、図に於いて前述の第1実施例と同一の部分及び同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図に示す止水構造Bは、パッキン12のざぐり部12dに接触体13を配置したものである。この接触体13は、ねじ3の頭部3aを装着するための凹部13aを有しており、該凹部13aの底面13bがざぐり部12dの底面12eと接触し得るように構成されている。
【0051】
特に、本実施例では、ねじ3としてなべ頭タッピンねじ3を利用しており、接触体13の凹部13aは、タッピンねじ3のなべ頭を適度に拘束して嵌め込むことが可能な寸法を持って形成されている。従って、タッピンねじ3の頭部3aに接触体13を装着したとき、該接触体13は頭部3aから離脱することがなく、一体として機能する。
【0052】
上記の如く構成された止水構造Bであっても、接触体13を頭部3aに装着したタッピンねじ3は、第1実施例のタッピンねじ3と全く同一に機能し、該タッピンねじ3の芯3bが窪み11のねじ穴11cの芯11bに対して芯ずれした場合でも、安定した止水性能を発揮することが可能である。
【実施例3】
【0053】
次に第3実施例に係る止水構造Cについて図6により説明する。図に示す止水構造Cは、前述の第2実施例に於けるねじ3としてのなべ頭タッピンねじ3を皿頭タッピンねじ3としたものである。
【0054】
本実施例では、接触体14にはタッピンねじ3の皿頭3aを受け入れる凹部14aが形成されており、該凹部14aの底面14bがパッキン12のざぐり部12dの底面12eと接触し得るように構成されている。
【0055】
上記の如く構成された止水構造Cであっても、接触体14を頭部3aに装着したタッピンねじ3は、第1実施例のタッピンねじ3と全く同一に機能し、該タッピンねじ3の芯3bが窪み11のねじ穴11cの芯11bに対して芯ずれした場合でも、安定した止水性能を発揮することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、ねじを利用して連結部材を被連結部材に連結固定する際に、防水性が要求される部位であれば利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る止水構造を適用した、住宅の浴室に一般的に用いられる折戸付アルミ建具を説明する正面図である。
【図2】建具の枠体と浴室の壁面内部の下地とを連結固定した状態を説明する図である。
【図3】第1実施例に係る止水構造を説明する図であり、ねじのねじ穴に対する平行な芯ずれを吸収した状態を説明する図である。
【図4】ねじの芯がねじ穴の芯に対し平行な芯ずれと交叉する芯ずれを生じたときの止水構造を説明する図である。
【図5】第2実施例に係る止水構造を説明する図である。
【図6】第3実施例に係る止水構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
A,B,C 止水構造
1 折戸
1a 障子
1b ヒンジ
2 枠体
2a 縦枠
2b 横枠
3 ねじ,タッピンねじ
3a 頭部
3b 芯
3c 底面
4 開口枠
5 木ねじ
6 下地材
11 窪み
11a 球面
11b 芯
11c ねじ穴
12 パッキン
12a 球面
12b 芯
12c 穴
12d ざぐり部
12e 底面
12f 上面
13,14 接触体
13a,14a 凹部
13b,14b 底面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじを利用して連結部材を被連結部材に連結固定する際のねじと連結部材との止水構造であって、連結部材の所定位置にねじの頭部を受け入れるための球の一部からなる球面と該球面の底部にねじを挿通するねじ穴を有する窪みを形成すると共に、前記窪みを構成する球面に対応する球面を有し該球面の中心部分を貫通するねじの芯ずれ吸収部を設けたパッキンを形成し、前記パッキンを取り付けたねじを連結部材の窪みに形成したねじ穴に挿通して被連結部材に締結することによって、ねじのねじ穴に対する芯ずれをパッキンの吸収部によって吸収すると共に、パッキンの球面を窪みの球面に接触させて止水することを特徴とする止水構造。
【請求項2】
前記パッキンが、外周面が連結部材に形成された窪みを構成する球面に対応する球面に形成され且つ中心部分に前記窪みに形成したねじ穴の径とねじの径に応じた径を持った貫通穴を形成すると共に貫通穴の端部に該貫通穴に直交する平坦面を有するざぐり部を形成したパッキン本体と、前記パッキン本体のざぐり部に嵌め込まれて平坦面に接触する接触体と、を有して構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載した止水構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−2590(P2007−2590A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186226(P2005−186226)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】