説明

正立等倍レンズアレイプレート、光走査ユニットおよび画像読取装置

【課題】フレアノイズを低減する。
【解決手段】正立等倍レンズアレイプレート11においては、複数の第1レンズ24a、第2レンズ24bが第1面24c、第2面24dにそれぞれ形成された第1レンズアレイプレート24と、複数の第3レンズ26a、第4レンズ26bが第3面26c、第4面26dにそれぞれ形成された第2レンズアレイプレート26とが積層されている。正立等倍レンズアレイプレート11は、第1レンズ24aを囲うように立設された第1遮光壁50と、第4レンズ26bを囲うように立設された第2遮光壁52とを備える。第1レンズアレイプレート24の第1面24cにおける第1レンズ24aの有効領域以外の領域24eに粗面化処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に用いられる正立等倍レンズアレイプレート並びに該正立等倍レンズアレイプレートを用いた光走査ユニットおよび画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナ等の画像読取装置として、正立等倍結像光学系を用いた装置が知られている。正立等倍結像光学系を用いた場合、縮小結像光学系の場合よりも装置をコンパクトにすることができる。画像読取装置の場合、正立等倍結像光学系は、ライン状光源と、正立等倍レンズアレイと、ラインイメージセンサから構成される。
【0003】
正立等倍結像光学系における正立等倍レンズアレイとしては、正立等倍像を結像可能なロッドレンズアレイが用いられる。ロッドレンズアレイは、通常はレンズアレイの長手方向(画像読取装置の主走査方向)にロッドレンズが配列される。ロッドレンズの列数を増加することで、光量伝達率の向上、透過光量ムラの低減が図れるが、ロッドレンズアレイの場合、ロッドレンズの列数は、価格とのかねあいで1〜2列が一般的である。
【0004】
一方、正立等倍レンズアレイとして、片面または両面に複数の微小凸レンズを規則的に配列した透明な平板状レンズアレイプレートを、個々の凸レンズの光軸が一致するように複数枚積層した正立等倍レンズアレイプレートも構成可能である。このような正立等倍レンズアレイプレートは、射出成型などの方法により形成できるため、複数列の正立等倍レンズアレイを比較的安価に製造することができる。
【0005】
正立等倍レンズアレイプレートでは、隣接したレンズ間に光線を隔離するための壁が無いため、正立等倍レンズアレイプレートに斜めに入射した光線が、プレート内部を斜めに進んで隣接した凸レンズに入り込み、出射してノイズ(ゴーストノイズともいう)を発生するという迷光の問題がある。
【0006】
そこで、結像に寄与しない迷光を除去するために正立等倍レンズアレイプレート上に遮光壁を形成したり、正立等倍レンズアレイプレートの間に遮光部材を設けたりしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−069801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、正立等倍レンズアレイプレートを構成する各部材の製造誤差や各部材を組み付ける際の組み付け誤差等により、設計時には予期していなかった部位に光が回り込み、その部位で反射または屈折した光がフレアノイズとなる可能性がある。フレアノイズが生じると、像が全体的に白くなり、像のS/N比が劣化してしまうおそれがある。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、フレアノイズを低減することのできる正立等倍レンズアレイプレート、該正立等倍レンズアレイプレートを用いた光走査ユニットおよび画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の正立等倍レンズアレイプレートは、第1面に規則的に配置された複数の第1レンズと、第1面に対向する第2面に規則的に配置された複数の第2レンズとを有する第1レンズアレイプレートと、第3面に規則的に配置された複数の第3レンズと、第3面に対向する第4面に規則的に配置された複数の第4レンズとを有する第2レンズアレイプレートと、第1レンズを囲うように第1面上に立設された第1遮光壁と、第4レンズを囲うように第4面上に立設された第2遮光壁とを備え、第1レンズアレイプレートと第2レンズアレイプレートが、対応するレンズの組が共軸のレンズ系を構成するように第2面と第3面とを対向させて積層され、第1面側のライン状光源からの光を受けて、第4面側の像面にライン状光源の正立等倍像を形成する。この正立等倍レンズアレイプレートは、第1面における第1レンズの有効領域以外の領域、第2面における第2レンズの有効領域以外の領域、第3面における第3レンズの有効領域以外の領域、第4面における第4レンズの有効領域以外の領域、第1遮光壁における第1面に面した領域、および第2遮光壁における第4面に面した領域のうち、少なくとも1つの領域に粗面化処理が施されている。また、少なくとも第1遮光壁における第1面に面した領域に粗面化処理が施されていることが特に好ましい。
【0011】
上述の領域で反射または屈折した光が像面に入射するとフレアノイズとなるおそれがあるが、この態様によると、上述の領域のうち粗面化処理が施された領域に入射した光は散乱するため、フレアノイズを低減することができる。
【0012】
第1レンズアレイプレートと第2レンズアレイプレートとの間に設けられた、第2レンズおよび第3レンズに対応する複数の開口部を有する遮光部材をさらに備えてもよい。遮光部材は、第2面に面する領域および第3面に面する領域のうち、少なくとも1つの領域に粗面化処理が施されていてもよい。この場合、フレアノイズをさらに低減することができる。
【0013】
粗面化処理は、中心線平均表面粗さRaが0.2μm以上2μm以下の粗面化処理であってもよい。このような粗面化処理を行うことにより、好適にフレアノイズを低減できる。
【0014】
本発明の別の態様は、光走査ユニットである。この光走査ユニットは、被読取画像に光を照射するライン状光源と、被読取画像から反射した光を集光する上述の正立等倍レンズアレイプレートと、正立等倍レンズアレイプレートを透過した光を受光するラインイメージセンサとを備える。
【0015】
この態様によると、上述の正立等倍レンズアレイプレートを用いて光走査ユニットを構成しているので、ラインイメージセンサは、フレアノイズの低減された正立等倍像を受光することができる。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、画像読取装置である。この装置は、上述の光走査ユニットと、光走査ユニットによって検出された画像信号を処理する画像処理部とを備える。
【0017】
この態様によると、上述の光走査ユニットを用いて画像読取装置を構成しているので、フレアノイズが好適に除去された良質の画像データを生成できる。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フレアノイズを低減することのできる正立等倍レンズアレイプレート、該正立等倍レンズアレイプレートを用いた光走査ユニットおよび画像読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像読取装置を説明するための図である。
【図2】光走査ユニットの一部の主走査方向における断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る正立等倍レンズアレイプレートの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像読取装置100を説明するための図である。図1に示すように、画像読取装置100は、筐体102と、原稿Gを載置する原稿台としてのガラス板14と、筐体102内に収容された光走査ユニット10と、光走査ユニット10を走査する駆動機構(図示せず)と、光走査ユニット10によって読み取られたデータを処理する画像処理部(図示せず)とを備える。
【0022】
光走査ユニット10は、ガラス板14上に載置された原稿Gに光を照射するライン状光源16と、原稿Gからの反射光を集光する正立等倍レンズアレイプレート11と、正立等倍レンズアレイプレート11により集光された光を受けるラインイメージセンサ(光電変換素子)20と、ライン状光源16、正立等倍レンズアレイプレート11およびラインイメージセンサ20を固定する筐体(図示せず)とを備える。
【0023】
ライン状光源16は、略直線状の光を出射する光源である。ライン状光源16は、照射光の光軸が、正立等倍レンズアレイプレート11の光軸Axとガラス板14の上面との交点を通るように固定される。ライン状光源16から出射された光は、ガラス板14上に置かれた原稿Gに照射される。原稿Gに照射された光は、原稿Gにより正立等倍レンズアレイプレート11に向けて反射される。原稿Gの光を反射する領域は、正立等倍レンズアレイプレート11に向けてライン状の光を照射する光源と考えることができる。
【0024】
正立等倍レンズアレイプレート11は、後述するように、複数の凸レンズを両面に形成した第1レンズアレイプレート24、第2レンズアレイプレート26が対応するレンズの組が共軸のレンズ系を構成するように積層されたものである。第1レンズアレイプレート24、第2レンズアレイプレート26は、ホルダ(図示せず)により積層状態で保持されている。正立等倍レンズアレイプレート11は、その長手方向が主走査方向に、短手方向が副走査方向に一致するように画像読取装置100に装着される。
【0025】
正立等倍レンズアレイプレート11は、上方に位置する原稿Gから反射されたライン状の光を受けて、下方に位置する像面、すなわちラインイメージセンサ20の受光面に正立等倍像を形成する。画像読取装置100は、光走査ユニット10を副走査方向に走査することにより、原稿Gを読み取ることができる。
【0026】
図2は、光走査ユニット10の一部の主走査方向における断面図である。図2において、横方向が正立等倍レンズアレイプレート11の主走査方向(長手方向)であり、奥行き方向が副走査方向(短手方向)である。
【0027】
上述したように、正立等倍レンズアレイプレート11は、第1レンズアレイプレート24と第2レンズアレイプレート26とが積層されて構成されている。第1レンズアレイプレート24および第2レンズアレイプレート26は、長方形状のプレートであり、その両面には複数の凸レンズが配列形成されている。
【0028】
第1レンズアレイプレート24および第2レンズアレイプレート26は、射出成形により形成される。第1レンズアレイプレート24および第2レンズアレイプレート26の材質は、射出成形に使用可能で、必要な波長帯域の光に対して光透過性が高く、吸水性の低いものが望ましい。望ましい材質としては、シクロオレフィン系樹脂や、オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネートなどを例示することができる。
【0029】
第1レンズアレイプレート24の一方の面である第1面24c上には、複数の第1レンズ24aが、第1レンズアレイプレート24の長手方向に沿って一列に配列されている。また、第1レンズアレイプレート24の第1面24cに対向する第2面24d上には、複数の第2レンズ24bが、第1レンズアレイプレート24の長手方向に沿って一列に配列されている。
【0030】
第2レンズアレイプレート26の一方の面である第3面26c上には、複数の第3レンズ26aが、第2レンズアレイプレート26の長手方向に沿って一列に配列されている。また、第3面26cに対向する第4面26d上には、複数の第4レンズ26bが、第2レンズアレイプレート26の長手方向に沿って一列に配列されている。
【0031】
なお、本実施の形態では、第1レンズ24a、第2レンズ24b、第3レンズ26aおよび第4レンズ26bの形状を球面としたが、非球面であってもよい。
【0032】
第1レンズアレイプレート24と第2レンズアレイプレート26は、対応する第1レンズ24a、第2レンズ24b、第3レンズ26a、第4レンズ26bの組が共軸のレンズ系を構成するように第2面24dと第3面26cとを対向させて積層される。なお、本実施の形態では、第2面24dの第2レンズ24bと第3面26cの第3レンズ26aとが当接しているが、第2レンズ24bと第3レンズ26aは離間していてもよい。
【0033】
第1レンズアレイプレート24の第1面24c上には、各第1レンズ24aの周囲を囲うように第1遮光壁50が立設されている。そして、この第1遮光壁50により、各第1レンズ24a上に第1開口部54が形成されている。第1開口部54は円柱形状であり、その中心軸が第1レンズ24aの光軸と一致するように配置されている。第1遮光壁50は、第1レンズ24aへ迷光が入射するのを遮断し、ゴーストノイズを低減する機能を有する。第1遮光壁50の高さは、所定の最大視野角までの光線を除去できる高さに設定される。
【0034】
同じように、第2レンズアレイプレート26の第4面26d上にも、各第4レンズ26bの周囲を囲うように第2遮光壁52が立設されている。そして、この第2遮光壁52により、各第4レンズ26b上に第2開口部56が形成されている。第2開口部56は円柱形状であり、その中心軸が第4レンズ26bの光軸と一致するように配置されている。第2遮光壁52は、第4レンズ26bから出射された迷光を除去し、ゴーストノイズを低減する機能を有する。第2遮光壁52の高さは、第1遮光壁50と同一に設定される。
【0035】
第1遮光壁50および第2遮光壁52は、例えば黒色のABS樹脂などの光吸収性材料を用いて、射出成形などの方法により形成することができる。また、第1遮光壁50および第2遮光壁52は、第1面24cおよび第4面26d上に黒色樹脂塗料を積層させることにより形成されてもよい。
【0036】
第1レンズアレイプレート24と第2レンズアレイプレート26との間には、遮光部材27が設けられている。遮光部材27には、第2レンズ24bおよび第3レンズ26aに対応する複数の開口部27aが形成されている。各開口部27aには、対応する第2レンズ24bおよび第3レンズ26aが嵌入されている。この遮光部材27は、結像に寄与しない迷光を遮断し、ゴーストノイズを低減する機能を有する。遮光部材27は、光学的透過率が小さいフィルム状の部材に開口部27aを設けることにより形成されている。遮光部材27の望ましい材質としては、黒色のシクロオレフィン系樹脂や、オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂などを例示することができる。
【0037】
ここで、本実施の形態においては、第1レンズアレイプレート24の第1面24cにおける第1レンズ24aの有効領域以外の領域24e、および第2面24dにおける第2レンズ24bの有効領域以外の領域24fに粗面化処理が施されている。また、第2レンズアレイプレート26の第3面26cにおける第3レンズ26aの有効領域以外の領域26e、および第4面26dにおける第4レンズ26bの有効領域以外の領域26fに粗面化処理が施されている。ここで、レンズの有効領域とは、レンズとしての機能を有する部分のことである。
【0038】
また、本実施の形態においては、第1遮光壁50における第1面24cに面した領域50bに粗面化処理が施されている。第1遮光壁50の領域50bは、第1レンズアレイプレート24の第1面24cの領域24eを覆っている。なお、図2においては領域50bと領域24eとの間に隙間があるが、領域50bと領域24eは当接していてもよい。また、第2遮光壁52における第4面26dに面した領域52aにも粗面化処理が施されている。第2遮光壁52の領域52aは、第2レンズアレイプレート26の第4面26dの領域26fを覆っている。なお、図2においては領域52aと領域26fとの間に隙間があるが、領域52aと領域26fは当接していてもよい。
【0039】
さらに、本実施の形態においては、遮光部材27の第2面24dに面する領域27b、および遮光部材27の第3面26cに面する領域27cに粗面化処理が施されている。遮光部材27の領域27bは、第1レンズアレイプレート24の第2面24dの領域24fを覆っており、遮光部材27の領域27cは、第2レンズアレイプレート26の第3面26cの領域26eを覆っている。なお、図2においては、領域27bと領域24fとの間および領域27cと領域26eとの間に隙間があるが、領域27bと領域24fおよび領域27cと領域26eはそれぞれ当接していてもよい。
【0040】
上述の領域24e、24f、26e、26f、50b、52a、27bおよび27cにおける粗面化処理は、レンズアレイプレート、遮光壁および遮光部材を形成する射出成形の型に粗面化部分を形成することにより施すことができる。あるいは、射出成形後にブラスト処理、エッチング処理を行うことにより粗面化処理を施してもよい。
【0041】
以上のように構成された正立等倍レンズアレイプレート11は、第1レンズ24aから原稿Gまでの距離および第4レンズ26bからラインイメージセンサ20までの距離が所定の作動距離となるように、図1に示す画像読取装置100に組み込まれる。
【0042】
図3は、本発明の実施の形態に係る正立等倍レンズアレイプレート11の動作を説明するための図である。
【0043】
ここでは、第1遮光壁50または第1レンズアレイプレート24の製造誤差、あるいは第1レンズアレイプレート24上に第1遮光壁50を組み付ける際の組み付け誤差が原因で、第1遮光壁50が設計位置からずれて第1レンズアレイプレート24上に配置された場合を想定する。
【0044】
図3に示すように原稿G上の点70から出射され、大きな入射角で正立等倍レンズアレイプレート11入射しようとする光L1(破線)について考察する。この光L1は、第1遮光壁50が設計通り第1レンズアレイプレート24上に配置されていれば第1遮光壁50により吸収される。しかしながら、ここでは第1遮光壁50がずれているために第1遮光壁50により吸収されず、第1レンズアレイプレート24の第1面24cの領域24eに入射している。領域24eに入射後、光L1は、第2レンズ24b、第3レンズ26a、第4レンズ26bを通ってラインイメージセンサ20に入射し、フレアノイズが発生してしまう。第1面24cの領域24eに粗面化処理が施されていない場合、領域24eに入射した光L1のほとんどが、フレアノイズの発生に寄与することになる。
【0045】
しかしながら、本実施の形態に係る正立等倍レンズアレイプレート11では、第1面24cの領域24eに粗面化処理が施されているため、図3の矢印72に示すように、光L1は領域24eで散乱する。従って、ラインイメージセンサ20に到達する光L1の光量が低減されるため、フレアノイズを低減することができる。
【0046】
第1面24cの領域24eは、第1遮光壁50が設計通り配置されていれば第1遮光壁50の領域50bにより覆われているため、光が入射しないはずの領域である。このように、通常であれば光が入射しない領域であっても部材の製造誤差や組み付け誤差等により光が入射する可能性があるが、本実施の形態のように粗面化処理を施すことにより、フレアノイズを低減できる。
【0047】
ここでは第1面24cの領域24eに入射する光の散乱を説明したが、その他の粗面化処理が施された領域においても入射する光は同様に散乱するため、フレアノイズを低減することができる。なお、本実施の形態に係る正立等倍レンズアレイプレート11では、領域24e、24f、26e、26f、50b、52a、27bおよび27cの全てに対して粗面化処理を施したが、これらの領域のうち少なくとも1つの領域に粗面化処理が施されていれば、フレアノイズの低減に効果がある。
【0048】
上述の複数の領域のうち、第1遮光壁50における第1面24cに面した領域50bや、遮光部材27における第3面26cに面する領域27cは結像光の進行方向に存在していないため、従来であればフレアノイズの原因として考慮されていない領域であった。しかしながら、本発明者は、フレアノイズの低減について鋭意研究を行った結果、このような結像光の進行方向に存在していない領域であっても、多重反射等によりフレアノイズ発生の要因となっていることを見いだした。そして、本発明者は、領域50bや領域27c等の結像光の進行方向に存在していない領域に粗面化処理を施すことにより、フレアノイズを低減できることを想到するに至った。
【0049】
上述の領域24e、24f、26e、26f、50b、52a、27bおよび27cにおける粗面化処理は、中心線平均表面粗さRaが0.2μm以上2μm以下の粗面化処理であることが望ましい。また、これらの領域における粗面化処理は、中心線平均表面粗さRaが0.6μm以上2μm以下の粗面化処理であることがさらに望ましい。このような粗面化処理を行うことにより、好適にフレアノイズを低減することができる。これらの中心線平均表面粗さRaの望ましい範囲は、本発明者が実験で求めたものである。
【0050】
次に、粗面化処理を施した正立等倍レンズアレイプレートと粗面化処理を施していない正立等倍レンズアレイプレートとを比較した結果を示す。以下に示す例において、粗面化処理の中心線平均表面粗さRaは0.6μmである。
【0051】
本発明者が第1遮光壁50における第1面24cに面した領域50bおよび第2遮光壁52における第4面26dに面した領域52aに粗面化処理を施したところ、粗面化処理を施していない正立等倍レンズアレイプレートと比較して約30%フレアノイズを低減できた。また、領域50bのみに粗面化処理を施したところ、約10%フレアノイズを低減できた。この実験結果を見ると、結像光の進行方向に存在していない領域50bの粗面化処理により、フレアノイズを低減できることが分かる。
【0052】
また、本発明者が遮光部材27の第2面24dに面する領域27bおよび遮光部材27の第3面26cに面する領域27cに粗面化処理を施したところ、粗面化処理を施していない正立等倍レンズアレイプレートと比較して約10%フレアノイズを低減できた。また、領域27cのみに粗面化処理を施したところ、約2%フレアノイズを低減できた。この実験結果を見ると、結像光の進行方向に存在していない領域27cの粗面化処理により、フレアノイズを低減できることが分かる。
【0053】
また、本発明者が第2面24dにおける第2レンズ24bの有効領域以外の領域24fおよび第3面26cにおける第3レンズ26aの有効領域以外の領域26eに粗面化処理を施したところ、粗面化処理を施していない正立等倍レンズアレイプレートと比較して約30%フレアノイズを低減できた。
【0054】
さらに、本発明者が領域50bおよび領域52aの粗面化処理に加え、第1開口部54および第2開口部56の内壁に粗面化処理を施したところ、粗面化処理を施していない正立等倍レンズアレイプレートと比較して約50%フレアノイズを低減できた。この実験結果を見ると、第1開口部54、第2開口部56の内壁の粗面化を併せて行うことにより、さらにフレアノイズを低減できることが分かる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0056】
上述の実施の形態では、各レンズ面のレンズを主走査方向に一列に配列したが、レンズの配列パターンはこれに限定されず、たとえば、レンズを主走査方向に2列に配列した場合や、正方配列で配置した場合でも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 光走査ユニット、 11 正立等倍レンズアレイプレート、 20 ラインイメージセンサ、 24 第1レンズアレイプレート、 26 第2レンズアレイプレート、 27 遮光部材、 50 第1遮光壁、 52 第2遮光壁、 100 画像読取装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に規則的に配置された複数の第1レンズと、前記第1面に対向する第2面に規則的に配置された複数の第2レンズとを有する第1レンズアレイプレートと、
第3面に規則的に配置された複数の第3レンズと、前記第3面に対向する第4面に規則的に配置された複数の第4レンズとを有する第2レンズアレイプレートと、
前記第1レンズを囲うように前記第1面上に立設された第1遮光壁と、
前記第4レンズを囲うように前記第4面上に立設された第2遮光壁と、を備え、
前記第1レンズアレイプレートと前記第2レンズアレイプレートが、対応するレンズの組が共軸のレンズ系を構成するように前記第2面と前記第3面とを対向させて積層され、第1面側のライン状光源からの光を受けて、前記第4面側の像面にライン状光源の正立等倍像を形成する正立等倍レンズアレイプレートであって、
前記第1面における前記第1レンズの有効領域以外の領域、前記第2面における前記第2レンズの有効領域以外の領域、前記第3面における前記第3レンズの有効領域以外の領域、前記第4面における前記第4レンズの有効領域以外の領域、前記第1遮光壁における前記第1面に面した領域、および前記第2遮光壁における前記第4面に面した領域のうち、少なくとも1つの領域に粗面化処理が施されていることを特徴とする正立等倍レンズアレイプレート。
【請求項2】
少なくとも前記第1遮光壁における前記第1面に面した領域に粗面化処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の正立等倍レンズアレイプレート。
【請求項3】
前記第1レンズアレイプレートと前記第2レンズアレイプレートとの間に設けられた、前記第2レンズおよび前記第3レンズに対応する複数の開口部を有する遮光部材をさらに備え、
前記遮光部材は、前記第2面に面する領域および前記第3面に面する領域のうち、少なくとも1つの領域に粗面化処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の正立等倍レンズアレイプレート。
【請求項4】
前記粗面化処理は、中心線平均表面粗さRaが0.2μm以上2μm以下の粗面化処理であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の正立等倍レンズアレイプレート。
【請求項5】
被読取画像に光を照射するライン状光源と、
前記被読取画像から反射した光を集光する請求項1から4のいずれかに記載の正立等倍レンズアレイプレートと、
前記正立等倍レンズアレイプレートを透過した光を受光するラインイメージセンサと、
を備えることを特徴とする光走査ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の光走査ユニットと、
前記光走査ユニットによって検出された画像信号を処理する画像処理部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−43643(P2011−43643A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191365(P2009−191365)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】