説明

歩行自走型除雪機

【課題】 自走小型除雪機を旋回するときに、走行ハンドルを握ったまま自動旋回する構成を提供する。
【解決手段】 前方に除雪部を設けた走行体の後方にハンドル操作パネル部を有してなる歩行自走型除雪機である。走行体の後部に縦軸を設けてハンドル操作パネル部を回動可能に構成し、所望する走行方向に向けてハンドル操作パネル部を回動させて発生する回動角を感知して走行体を自動制御旋回させる構成であって、作業者は除雪作業の操作に集中して、ハンドルから手を離すことなく連続して運転ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行自走型小型除雪機の旋回構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行自走型小型除雪機としては、例えば特開2002−275848号公報に開示されたものがある。この公報に示された小型除雪機は、エンジンのクランク軸にベルトを介してハイドロ・スタティック・トランスミッション(以下、HSTと呼称する)の入力軸が接続され、このHSTの出力軸に伝動装置を介して車体左側と車体右側のクローラ走行装置が接続されている。前記HSTは、クランク軸に接続された油圧ポンプと、このポンプから吐出された作動油によって回動して前記伝動装置を駆動する油圧モータとが一つのハウジングに一体的に組み付けられている。前記伝動装置には、車体左側のクローラ走行装置への動力の伝達・遮断を切換える左側クラッチと、車体右側のクローラ走行装置への動力の伝達・遮断を切換える右側クラッチとが設けられている。これらのクラッチは、操縦者が各クラッチ毎の操作レバーを操作することによって、切断状態と接続状態とが切換えられるように構成されている。
【特許文献1】特開2002−275848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した構成による除雪機においては、除雪作業を継続しながら旋回しようとする時、旋回しようとする側の片手をハンドルグリップから放してクラッチ操作レバーを握り直すため、旋回する方向への操作が不安定になりやすい。
【0004】
又、制約された道路の除雪作業中のクラッチ操作は、右側,左側のクラッチレバーの握り作用が頻繁に発生するので旋回操作が煩わしくなる問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、作業者が走行方向を切換える度にハンドルから手を放さずに、旋回操作を連続して行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、前方に除雪部を設けた走行体の後方にハンドル操作パネル部を有してなる歩行自走型除雪機において、走行体の後部に縦軸を設けてハンドル操作パネル部を回動可能に構成し、所望する走行方向に向けてハンドル操作パネル部を回動させて発生する回動角を感知して走行体を制御旋回させる歩行自走型除雪機を提供したものである。
【0007】
また、前述の歩行自走型除雪機において、ハンドル操作パネル部を回動する縦軸部にポテンショメータを設けて回動角を感知することを特徴とした構成を提供したものである。
【発明の効果】
【0008】
前記した構成によって、除雪作業中の作業者はハンドル操作部のハンドルを握ったまま作業方向の旋回操作が連続して可能になり、複雑な敷地や曲がった農道等においても快適な除雪作業ができるようになったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施した図面に基づいて構成を説明する。
図1は本発明を実施した側面図、図2は平面図、図3は走行駆動部の側面図、図4は走行駆動部の断面図、図5は縦軸部の断面図、図6は直進時の走行レバー操作フロー図、図7はハンドル旋回操作フロー図を示したものである。
【0010】
これらの図面において、1は歩行自走型除雪機である。この除雪機1は、エンジン2によって走行体であるクローラ走行装置3と、車体前方に設けた除雪部を形成するオーガ4とが駆動される。走行体の後部には縦軸9を介してハンドル操作パネル部10を左右に旋回可能に設けている。走行体後部の操作ハンドル5を作業者が把握して歩行しながら除雪するものである。
【0011】
ハンドル操作パネル10は、操作ハンドル5、走行用レバー30及び運転操作に必要なスイッチ、操作器を支持するパネルを備えている。前記操作ハンドル5は、作業者が把持するグリップ6が車幅方向の両端部に設けられて、車体フレーム7の後端に縦軸9によって支持された支持フレーム20に立設された支持パイプ8の上端に固着されている。
【0012】
前記エンジン2は、クローラ走行装置3の上方であって車幅方向の中央部にクランク軸11の軸線方向の車体前後方向に向けて搭載されて車体フレーム7に支持されている。この車体フレーム7は箱状を呈している。
【0013】
前記クランク軸11は、前端部にオーガクラッチ12とベルト13を介してオーガ4の入力軸へ接続されるとともに、後端部に走行用クラッチ14とベルト伝動装置15とを介してHST16,17が接続されている。前記クローラ走行装置3は公知な構成であって、駆動軸25は駆動スプロケット22から車幅方向の中央部まで延出されて、最終減速機28を介して回転自在に支持されている。
【0014】
前記駆動軸25の駆動部は、エンジンのクランク軸11の後端部に軸装された走行用クラッチ14とベルト伝動装置15と2個のHST16,17と最終減速機28とによって構成されている。
【0015】
図3と図4に基づいて説明すると、前記HST16,17は、車体後方側からみてそれぞれ右側に設けた変速レバー36が中立位置(図3においては水平方向)にいるときは駆動を停止させ、変速レバー36が車体の上方または下方へ揺動することによって車体は前進または後退するように駆動する。
【0016】
HST16,17は、変速レバー36の揺動する角度が大きくなればなるほどクローラ走行装置3の回転する速度が速くなるように構成されている。この変速レバー36は、ポテンショメータS−2Rが指示を受けて設定された電圧値になるまで電動モータ18を回転させて適宜中間リンクを介して揺動させる。
【0017】
本実施例においては、直進する場合での前進,中立,後進の操作は、ハンドル操作パネル部10に設けた走行用レバー30から指示を受ける。走行用レバー30にはポテンショメータS−1が設けられて、前進,中立,後進操作時にその回動角によって設定された電圧値が制御回路に信号として送られ、前記したHSTの変速レバー36側のポテンショメータS−2R,S−2Lが設定した電圧値になるまで電動モータ18を回転させ速度調整をするものである。
【0018】
走行用レバー30の操作による直進時のHST16,17の指示制御フローは図6に示すとおりで、走行用レバー30が設定したポテンショメータS−1の電圧値に比例してHST変速レバー角度検出センサーであるポテンショメータS−2R,S−2Lが達することで所望の速度が達成される。
【0019】
そこで図7に示した本実施例によるハンドル操作左右旋回運転時の動作について説明する。作業者が所望する方向へ旋回する場合、図2に示す矢印F1の場合は、ハンドルを右側(f1)へ切換える。この時、ハンドル操作パネル部10が支持される縦軸9が回動して、ポテンショメータS−3が0〜2.4Vの範囲で電圧値が示される。そして、この電圧値は左側旋回の信号を左側の電動モータ18´側のポテンショメータS−2Lへ伝達する。
【0020】
旋回時のポテンショメータS−3の回動による信号は予めデータ換算されて、左,右のS―2R,S−2Lのポテンショメータに対して回転を低くする中立側へ変速レバー36を揺動するように設定されている。従って、旋回する内側のHSTの回転が低くなるので、除雪機本体は連続して旋回動作を続ける。所定角度に旋回された時点で、作業者がハンドル操作パネル部を直進方向に戻すと設定電圧値が中立の位置となって、直進方向に走行する。
【0021】
右旋回動作の場合は、ハンドルの回動角が変移に対してポテンショメータS−3が2.6〜5Vの電圧値を示す場合で、前記した左旋回とは逆の動作の繰り返しとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施した側面図
【図2】平面図
【図3】走行駆動部の側面図
【図4】走行駆動部の断面図
【図5】縦軸部の断面図
【図6】直進時の走行レバー操作フロー図
【図7】ハンドル旋回操作フロー図
【符号の説明】
【0023】
1 歩行自走型除雪機
2 エンジン
3 クローラ走行装置
4 オーガ
5 操作ハンドル
6 グリップ
7 車体フレーム
8 支持パイプ
9 縦軸
10 ハンドル操作パネル部
11 クランク軸
12 オーガクラッチ
13 ベルト
14 走行用クラッチ
15 ベルト伝動装置
16 HST
17 HST
18,18´ 電動モータ
20 支持フレーム
22 駆動スプロケット
23 走行フレーム
25 駆動軸
28 最終減速機
30 走行用レバー
36 変速レバー
S−1,S−2R,S−2L,S−3 ポテンショメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に除雪部を設けた走行体の後方にハンドル操作パネル部を有してなる歩行自走型除雪機において、走行体の後部に縦軸を設けてハンドル操作パネル部を回動可能に構成し、所望する走行方向に向けてハンドル操作パネル部を回動させて発生する回動角を感知して走行体を制御旋回させる歩行自走型除雪機。
【請求項2】
ハンドル操作パネル部を回動する縦軸部にポテンショメータを設けて回動角を感知することを特徴とした請求項1記載の歩行自走型除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−200284(P2006−200284A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15073(P2005−15073)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】