説明

歪測定装置

【課題】インピーダンスの整合状態を良い状態を確保することにより、広ダイナミックレンジでの歪測定を行えるようにすることである。
【解決手段】被測定物であるデュプレクサのTx端に第1の信号源11から第1の信号を送り、第2の信号源60から第1の信号と混合されたときに受信帯域内に入る周波数成分を生じさせる周波数を有する第2の信号をANT端に出力し、Rx端でスペクトラムアナライザ13によりフロントデバイス内で歪成分を帯域制限して選択して測定する構成にする。そして、分岐整合手段50が、第2の信号源とANT端との間にあって、第2の信号をANT端側へ送りANT端側からの通信帯域内の信号が第2の信号側へ送られるのを阻止し、かつANT端側からの通信帯域内の信号を終端させ第2の信号の終端を阻止する構成とすることで、インピーダンス整合を図ることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば移動体通信端末のフロントエンドに用いられ信号伝送に利用されている、半導体や金属製でなるRF通信用デバイス(以下、「フロントデバイス」と言う。)の歪みを測定する試験技術に関する。特に、フロントデバイスとしては、例えば、移動体通信端末において送信部からの送信信号をアンテナへ送り、かつアンテナからの受信信号を受信部へ送る結合デバイス(以下、デュプレクサ(Duplexer)と言う。)、さらにそのデュプレクサに結合するスイッチデバイス、やアンプ等がある。本発明は、それらから生成され、受信時の帯域内に入る歪を測定する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信端末(いわゆる、携帯端末)の小型化、高機能化にともない、フロントエンドに用いられるフロントデバイスの小型化、複合化が進んでいる。その一方、フロントデバイスが有すると考えられる雑音成分や歪成分が、受信感度に影響するのではないかという提起も出されている。
【0003】
ところで、上記デュプレクサ、スイッチデバイスは一般にはパッシブ素子として受け取られており、これらは、雑音成分より、歪成分が支配的とされ、歪成分の測定要求が高まっている。また、デュプレクサ、スイッチデバイスによる受信感度への影響が高調波歪成分が支配的といっても、パッシブ素子であるため、歪成分は相当に低レベルで発生するため、高感度或いは低レベルでの広測定ダイナミックレンジが要求される。なお、ここで問題にする歪成分は、素子の非線形性により生ずる不要波成分である。つまり、素子に入力される信号が素子内の非線形により生ずる高調波成分や、入力された信号及び生じた高調波を含む混変調により生ずる成分、及び入力された複数の信号同士による相互変調によって生ずる成分であって、受信帯域内に入る成分が歪成分として問題にされる。
【0004】
通信用のデバイス等の歪(変調歪)の測定としては、歪の測定レベル範囲(ダイナミックレンジ)が特許文献1の記載のような雑音、不要波の影響を軽減する技術がある。しかし、パッシブ素子のように非常に低いレベルでの広ダイナミックレンジの歪測定が困難であった。
【0005】
一般に、パッシブ素子の移動体通信端末の受信感度へ与える歪の影響を測定する装置としては、次の(1)(2)の装置が考えられ、使用されている。なお、デュプレクサは、上記したように、アンテナが接続されるアンテナ端(以下、「ANT端」と言う。)と、受信部が接続される受信端(以下、「Rx端」と言う。)と、送信部が接続される送信端(以下、「Tx端」と言う。)を有し、図6に示すようにTx端からANT端へ送信信号を通過させる周波数帯域(以下「Tx帯域」という)の帯域通過フィルタ、ANT端からRx端へ受信信号を通過させる周波数帯域(以下「Rx帯域」という)の帯域通過フィルタを有する。これらの帯域通過フィルタは送信部から受信部へ、受信部から送信部への信号の流れを断にする分離機能も兼ねている。なお、ここではTx帯域とRx帯域を合わせて通信帯域と言う。
【0006】
(1)IMD測定(Inter Modulation Distortion:変調歪の測定)
これは、図7及び図8に示すように、移動体通信端末が送信すべき送信信号とほぼ同じ周波数の信号Tx(以下、Txは送信信号を示すことも、その周波数を示すこともある。)をTx端へ入れる。そして、ANT端へ、予め信号Txと混合したときに歪成分としてRx帯域に周波数Rxの歪成分として生ずると予想される信号(周波数がRx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxの各信号)を入れ、歪成分をRx端において測定する例である。
【0007】
具体的には、図7で、第1の信号源11が、信号Txを出力し、パワー増幅手段20aで増幅し、ハイパスフィルタやノッチフィルタで構成される不要波除去フィルタ70aにより、信号Txの高調波や雑音成分を除去し、さらにサーキュレータ80aを介して、DUT30であるデュプレクサ31のTx端へ送っている。一方、第2の信号源60により、周波数がRx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxの各信号を切り換えて発生して、やはり、ハイパスフィルタやノッチフィルタで構成される不要波除去フィルタ70cにより、それらの高調波や雑音成分を除去し、サーキュレータ80bを介してデュプレクサ31のANT端へ送っている。そして、Rx端から出力されるRx成分を歪成分として測定手段90で帯域制限して測定する。測定が要求されるレベルは、図8のように−100dBm以下である。
【0008】
(1)IM3測定(3rd Inter Modulation;2信号3次変調歪の測定)
これは、図9及び図10に示すように、参照信号源60aからANT端に移動体通信端末が受信すべき受信信号とほぼ同じ周波数の信号Rxを入れ、第3の信号源14及び第4の信号源15により、予め信号Rxと混合したときに歪成分としてRx帯域に生ずると予想される信号(周波数がTx−Δf/2、Tx+Δf/2x、の各信号)をTx端へ入れ、Rx端でRx帯域に入る周波数成分を歪成分として測定する例である。
【0009】
具体的には、図9で、第3の信号源14及び第4の信号源15が、信号Txの近傍の信号として、周波数がTx−0.5MHz(Δf=1MHzとした)、Tx+0.5MHz、の各信号を出力し、それぞれパワー増幅手段20a、20bで増幅し、さらに不要波除去フィルタ70a、70bにより、信号Tx−0.5MHz、Tx+0.5MHz、それぞれの高調波や雑音成分を除去し、さらに重畳手段100で加えて1信号路に2信号として、サーキュレータ80aを介してデュプレクサ31のTx端へ送っている。一方、参照信号源60aにより、周波数が受信信号と同じ信号Rxを発生して、不要波除去フィルタ70dにより、それらの高調波や雑音成分を除去し、サーキュレータ80bを介してANT端へ送っている。そして、Rx端から出力されるRx−1MHz成分、Rx+1MHz成分を歪成分として測定手段90で帯域制限して測定する。測定が要求されるレベルは、図10のように−111dBm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
特開2005−121494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の(1)IMD測定法によれば、第2の信号源60が、周波数が2Tx−Rxの信号を発生して試験しているときは、一応、目的に近い歪測定が可能であったが、周波数がRx−Tx、Tx+Rx、2Tx+Rxの各信号を発生して試験しているときは、目的の歪測定に必要なダイナミックレンジが確保できず、必ずしも目的の歪測定ができているとは言えなかった。周波数の一例を挙げると、Tx=1785MHz、Rx=1850MHz、Rx−Tx=65MHz、2Tx−Rx=1720MHz、Tx+Rx=3635MHz、2Tx+Rx=5420MHzである。測定系全体を考えると、非常に広帯域である。
【0012】
歪測定が困難な原因を考察してみると、第2の信号源60が信号2Tx−Rx(周波数2Tx−Rxの信号)を発生しているときは、不要波除去フィルタ70cも信号2Tx−Rxをパスするフィルタ構成にされている。そしてこの信号2Tx−Rxの周波数は、図8に示すようにほぼ通信帯域内(図6を参照)にあるので、図7におけるANT端、サーキュレータ80b、不要波除去フィルタ70c、第2の信号源60の系統は、インピーダンス整合が良くなっている。つまり、信号Tx、信号2Tx−Rx、歪成分Rxにとっては、整合が良い状態で測定されている。
【0013】
これに対して、第2の信号源60が信号Rx−Tx、信号Tx+Rx、信号2Tx+Rxを出力しているときは、その信号に応じて不要波除去フィルタ70cのパス帯域を変更されている。そうすると、この場合、図8から理解できるように、不要波除去フィルタ70cは、信号Txや歪成分Rxにとっては、不要波除去フィルタ70cの帯域外になるので、この場合は、信号Txや歪成分Rxにとってインピーダンス整合がとれていない状態になる。例えば、信号と、インピーダンス不整合により反射してくる信号とが合成されたとき、互いの位相の違いにより、合成された信号は歪が大きくなることがある。特に、図8に示すように信号に対して80dB以下の歪を問題にするときは、インピーダンス不整合の影響が避けられない。
【0014】
そこで、本発明の目的の一つは、ANT端から第2の信号源60側をみたときのインピーダンスの整合状態を良い状態に保持することにより、広ダイナミックレンジの歪測定を行えるようにすることである。
【0015】
また、上記(2)IM3測定法は、2つの信号源から重畳回路100、及び不要波除去フィルタ70a、70b、70dやサーキュレータ80a、80bが、測定系の構成を複雑にし、規模を多くしている欠点がある。同様に、(1)IMD測定法でも不要波除去フィルタ70aやサーキュレータ80a、80bを使用している。特に、重畳回路のロスやパワー増幅手段の雑音等により信号対雑音比を悪化させるので、ノッチフィルタを用いた不要波除去フィルタを利用している。またその不要波除去フィルタを追加することによるロスの増加等の問題があって、適切な設計が容易ではなかった。
【0016】
これらは、この歪測定にあたっては、−100dBm以下のレベルの歪成分の測定を行うことから、ダイナミックレンジを確保するうえで雑音が問題になること、そのため不要波信号が入ることによる測定誤差が心配されることから図9、図7のような構成を採用していると考えられる。特に、重畳回路のロスやパワー増幅手段の雑音等により信号対雑音比を悪化させるので、ノッチフィルタを用いた不要波除去フィルタを利用している。またその不要波除去フィルタを追加することによるロスの増加等の問題があって、適切な設計が容易ではなかった。
【0017】
しかしながら、被試験物であるデュプレクサに入力する周波数関係が分かれば、その高調波の関係でRx帯域(受信帯域)に在る歪成分を特定して(つまり、歪成分の周波数は既知である。)測定条件を整えた構成で測定できることに着眼した。
【0018】
そこで、本発明の目的の他の一つは、信号源側の不要波の影響を受けることなく整合良く、狭帯域で測定することで、簡単な構成で測定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために具体的には、請求項1に記載の発明は、所定通信帯域内の所定送信帯域内にある送信信号を送信し、かつ前記所定送信帯域と周波数が異なる所定受信帯域内にある到来信号を受信する移動体通信機器に用いられ、アンテナ端、送信端、及び受信端を有し、前記所定送信帯域にて前記送信端とアンテナ端とを、及び前記所定受信帯域内にて前記アンテナ端と前記受信端とを、それぞれ結合させる結合デバイス(31)を少なくとも含むフロントデバイス(30)の前記受信端に出力される歪を測定する歪測定装置であって、前記送信端に前記送信信号に相当する周波数を有する第1の信号を送る第1の信号源(11)と、前記第1の信号と混合されたときに前記所定受信帯域内に入る周波数成分を生じさせる周波数を有する第2の信号を出力する第2の信号源(60)と、前記第2の信号源の出力と前記アンテナ端との間に設けられ、前記アンテナ端側に接続される第1端、前記第2の信号源の出力を受けて該第2の信号を該第1端へ通過させ該第1端で受ける前記所定通信帯域内の信号の前記第2の信号源側への通過を阻止する第1のフィルタ(51)を有する第2端、及び、第1端から受けた前記所定通信帯域内の信号を所定インピーダンスで終端させるとともに、前記第2端で受けた前記第2の信号の終端を阻止する第2のフィルタ(52)を有する第3端を備えた分岐整合手段(50)と、前記受信端において、前記フロントデバイス内で前記第1の信号と前記第2の信号によって生じる周波数成分を選択して歪成分として測定するスペクトラムアナライザ(13)と、を備えた。
請求項2に記載の発明は、所定送信帯域と該所定送信帯域と周波数が異なる所定受信帯域を含む所定通信帯域内で通信を行う移動体通信機器にして、前記所定送信帯域内にある送信信号を送信し、かつ前記所定受信帯域内にある到来信号を受信する前記移動体通信機器のフロントエンドに用いられ、アンテナ端、送信端、及び受信端を有し、前記所定送信帯域にて前記送信端とアンテナ端とを、及び前記受信帯域内にて前記アンテナ端と前記受信端とを、それぞれ結合させる結合デバイス(31)を少なくとも含むフロントデバイス(30)の前記受信端に出力される歪を測定する歪測定装置であって、前記送信信号に相当する周波数を有する信号を送出する第1の信号源(11)と、該第1の信号源から送出される信号を増幅して第1の信号として前記送信端に送出するパワー増幅手段(20a)と、前記第1の信号と混合されたときに前記所定受信帯域内に入る周波数成分を生じさせる周波数を有する第2の信号を出力する第2の信号源(60)と、前記第2の信号源の出力と前記アンテナ端との間に設けられた分岐整合手段(50)と、前記受信端において、前記フロントデバイス内で前記第1の信号と前記第2の信号によって生じる周波数成分を選択して歪成分として測定するスペクトラムアナライザ(13)と、を備え、前記分岐整合手段は、3つの抵抗がΔ形又はT形で結合されて構成され、その結合の3つの端である第1端、第2端及び第3端を有し、該第1端が前記アンテナ端側に接続されるようになっている分岐部と、該第2端と前記第2の信号源との間に設けられ、前記第2の信号源からの前記第2の信号を前記第1端へ通過させるとともに該第1端で受ける前記所定通信帯域内の信号の前記第2の信号源側への通過を阻止する第1のフィルタ(51)と、所定インピーダンスを有し、一方の端が接地されているる終端器と、該終端器の他方の端と前記第3端との間に設けられ、前記第1端から受けた前記所定通信帯域内の信号を前記終端器の前記所定インピーダンスで終端させ、前記第2端から受けた前記第2の信号の終端を阻止する第2のフィルタ(52)と、を備えた。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記フロントデバイスは、さらに、前記アンテナ端に接続されるための子接点と、前記分岐整合手段の第1端へ接続される親接点を有し、切り換えることで、該親接点からの前記第2の信号を前記子接点を介して該アンテナ端へ送るスイッチデバイス(32)を含む構成とした。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの一つの請求項に記載の発明において、前記第2の信号源は、前記第1の信号の周波数をTxとし、前記到来信号の周波数をRxとしたとき、前記第2の信号として少なくともRx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、及び2Tx+Rxの4つの周波数の信号を切り換えて出力し、前記分岐整合手段は、該第2の信号の切り換えに対応して、前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタの通過帯域及び阻止帯域を切り換える構成とした。
請求項5に記載の発明は、所定通信帯域内の所定送信帯域内にある送信信号を送信し、かつ前記所定送信帯域と周波数が異なる所定受信帯域内にある到来信号を受信する移動体通信機器に用いられ、アンテナ端、送信端、及び受信端を有し、前記所定送信帯域にて前記送信端とアンテナ端とを、及び前記所定受信帯域内にて前記アンテナ端と前記受信端とを、それぞれ結合させる結合デバイス(31)を少なくとも含むフロントデバイス(30)の前記受信端に出力される歪を測定する歪測定装置であって、内部で前記送信信号と同じ周波数の信号と周波数±Δf/2の信号とを生成しそれらに基づいて、前記送信端に前記送信信号の周波数の近傍の周波数であって互いの周波数差Δfが前記所定送信帯域の幅内にある2つのRF信号を含む前記第1の信号を生成し、該2つのRF信号を一つの出力端子から出力する2信号発生源(11a)と、前記受信端から受ける信号の周波数成分を測定するスペクトラムアナライザ(13)と、を一つの筐体に有する信号分析装置と、前記第1の信号を受けて増幅して前記送信端へ直接に出力するパワー増幅手段(20a)と、前記到来信号に相当する第2の信号を生成し出力する参照信号源(60a)と、該第2の信号を受けて前記アンテナ端へ送ると共に、該アンテナ端からの信号を阻止する一方向結合手段(80)と、を備え、前記スペクトラムアナライザは、前記フロントデバイス内で前記第1の信号と前記第2の信号によって生じる周波数成分を選択して歪成分として測定する構成とした。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記送信信号の周波数をTxとしたとき、前記2つのRF信号の周波数はTx−Δf/2、Tx+Δf/2であり、歪成分とは、第2の信号の周波数をRxとしたとき、Rx−Δf、Rx+Δfの周波数成分である構成とした。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の発明において、前記スペクトラムアナライザの周波数分解能帯域幅は、約300Hz〜10Hzである構成とした。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜4に記載の発明によれば、分岐整合手段により、第2の信号源の周波数を変えたとしても、デュプレクサからみた第2信号源側のインピーダンスが整合状態で安定するので、不整合によるダイナミックレンジへの影響を防止できる。
【0021】
請求項5、6に記載の発明によれば、例えば、周波数Txの信号と周波数Δf/2の信号とで周波数変換して同時に作りだした信号Tx−Δf/2、信号Tx+Δf/2を含む2信号を用いることにより、例え、その周波数変換により周波数Txの成分がリークしていても、その影響を受けることなく簡単な構成で測定できる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、いずれもインピーダンス整合させて、300Hz以下の狭帯域に制限して測定するので、雑音、不要波等の影響を軽減して測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態の機能・構成を示す図である。
【図2A】図1の分岐整合手段の機能・構成を示す図である。
【図2B】分岐整合手段における各フィルタの特性を示す図である。
【図3】異なったフロトデバイスへの第1の実施形態の適用例を示す図である。
【図4】第1の実施形態による実施結果を示す図である。
【図5】第2の実施形態の機能・構成を示す図である。
【図6】デュプレクサの機能を説明するための図である。
【図7】従来の一測定構成例(IMD測定法の例)を示す図である。
【図8】図7の構成例における信号の周波数関係を示す図である。
【図9】従来の他の一測定構成例(IM3測定法の例)を示す図である。
【図10】図9の構成例における信号の周波数関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る実施形態を図1に係る第1の実施形態、図5に係る第2の実施形態に分けて説明する。第1の実施形態は、上記「背景技術」で説明した従来のIMD測定法に対し改善した実施形態である。第2の実施形態は、同じく従来のIM3測定法に対して改善した実施形態である。したがって、図6、図8は、そのまま図1〜図3に係る第1の実施形態に適用される。同様に、図6、図10は、図5に係る第2の実施形態に適用される。また、図1〜10で同一符号の構成は同一機能を示す。
【0025】
[第1の実施形態]
図1〜4、6、8を基に、第1の実施形態について説明する。図1は、図7と同様にDUT30として、デュプレクサ31の歪を測定する構成である。
【0026】
図1で、第1の信号源11から信号Txがパワー増幅手段20aで増幅されて、デュプレクサ31のTx端に入力される。一方、第2の信号源60は、信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxを切り換えて出力し、分岐整合手段50及び分岐手段40を介して、デュプレクサ31のANT端へ入力する。そしてデュプレクサ31のRx端に接続されたスペクトラムアナライザ13で帯域制限して、Rx端に現れた歪成分Rxを測定する。図8に示すように歪成分Rxは、デュプレクサ31が移動体通信端末に使用されたとき、受信すべき周波数と同じ周波数のRx成分である。
【0027】
ここで、図1の構成において、図7の構成と異なるところは、次の(1A)〜(1D)で示す部分である。
(1A)図1のANT端側の信号系統において、図7の不要波除去フィルタ70cを除き、第2の信号源60からの各信号に対して、及びANT端においてデュプレクサ31側に生じる周波数成分、つまりTx成分、Rx成分に対して、の双方にインピーダンス整合を図れる分岐整合手段50を用いた。
(1B)図1のTx端側の信号系統において、図7の不要波除去フィルタ70cを除いてパワー増幅手段20aからTx端へ入力している。
(1C)図1のRx端側の信号系統において、狭帯域に制限してレベル測定できるスペクトラムアナライザで歪測定する。
(1D)方向性結合手段で構成される分岐手段40により、分岐整合手段50を介して入力された第2の信号源60からの信号を受けて、一端を終端器41で終端し、他端からパワーメータ42側に分岐して出力している。これは、デュプレクサ31のANT端に入力される信号のレベル(パワー)をパワーメータ42によりモニタリングするためのものであり、分岐手段40の入出力に係るインピーダンスの整合をとって接続されるので、歪み成分には、特に影響がないので、詳細説明を省略する。
【0028】
以下、上記(1A)(1B)(1C)について詳細説明をする。
(1A)について(ANT端側信号系統における分岐整合手段50について)
図1、図2A、図2B、図8を基に説明する。図1の第2の信号源60は、信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxを切り換えて第2の信号として、分岐整合手段50及び分岐手段40を介して、デュプレクサ31のANT端へ入力する。そのとき、第2の信号は、非常に広帯域である。上記例を再掲すると、Tx=1785MHz、Rx=1850MHz、Rx−Tx=65MHz、2Tx−Rx=1720MHz、Tx+Rx=3635MHz、2Tx+Rx=5420MHzである。したがって、第2の信号をANT端へ入力する際には、それぞれ第2の信号を通過させると同時に、他の周波数成分、雑音を除去するフィルタが必要となる(後記する「パスフィルタ51」がそのフィルタに該当する。)。この場合、そのフィルタの通過帯域ではインピーダンス整合が図られるが、通過帯域外である通信帯域(Tx帯域及びRx帯域)では、インピーダンス整合はとれない。
【0029】
一方、デュプレクサ31のTx端には第1の信号として信号Txが入力される。そして、デュプレクサ31内に歪成分Rx(周波数Rxは、移動無線として使用しているときは受信周波数となっているが、この場合は、歪成分が発生したときのその周波数になる。)が発生する。そのデュプレクサ31内に入力された信号Txや発生した歪成分Rxにとっては、ANT端から第2の信号限60側をみたインピーダンスの影響を受ける。そこで、分岐整合手段50により、第2の信号源60側からANT端側をみたインピーダンスの整合と、ANT端から第2の信号源60側をみたインピーダンスの整合を図ることとした。
【0030】
図2Aに分岐整合手段50の詳細な機能構成を示す。図2Aにおいて、3つの抵抗RでΔ形(T形(Y形)であっても良い。)の分岐を構成している。そのΔ分岐の一端である第1端は、特性インピーダンスZoで、第2の信号の周波数帯域、及び通信帯域を含む広帯域に亘り整合をとって接続されている。Δ分岐の第2端と第2の信号源60との間には、第2の信号源60から切り換えて送られてくる信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxに応じて、それらの信号を通過させるパスフィルタ51が接続されている。図2Bにそのパスフィルタの特性を二重線の実線で示している(また、二重線の点線で示す特性であっても問題ない。)。図2Bにおいて、パスフィルタ51は、第2の信号が信号Rx−Tx、2Tx−Rxのときは、それらの信号を通過させ、Tx帯域以上の周波数の信号を阻止する特性インピーダンスZoのローパス形(バンドパス形でも良い)のフィルタ特性にされ、第2の信号が信号Tx+Rx、2Tx+Rxのときは、それらの信号を通過させ、Rx帯域以下の周波数の信号を阻止する特性インピーダンスZoのハイパス形(バンドパス形でも良い)のフィルタ特性にされる。したがって、信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxは、それらが出力されている時点では、必ず、パスフィルタ51の通過帯域に入り、通信帯域(Tx帯域+Rx帯域)にある信号Tx、歪成分Rxにとっては、常時、パスフィルタ51の阻止帯域に入るので、第2端側を通過しない構成である。
【0031】
なお、図2Aのパスフィルタ51は、通信帯域(Tx帯域+Rx帯域)にある信号Tx、歪成分Rxにとっては、パスフィルタ51の阻止領域に入る特性を有するので、第2の信号源60からの第2の信号に、通信帯域内に含まれる不要な成分や、雑音があれば、それらを除去する効果も有する。
【0032】
一方、Δ分岐の第3端には、通信帯域終端フィルタ52が接続される。通信帯域終端フィルタ52は、図2Bに一重の実線で示すように、第2の信号が信号Rx−Tx、2Tx−Rxのときは、Tx帯域以上の周波数の信号を通過させ、信号Rx−Tx、2Tx−Rxを阻止する、特性インピーダンスZoで終端されたハイパス形のフィルタ特性にされる。そして、第2の信号が信号Tx+Rx、2Tx+Rxのときは、Rx帯域以下の周波数の信号を通過させ、信号Tx+Rx、2Tx+Rxを阻止する、特性インピーダンスZoで終端されたローパス形のフィルタ特性にされる。したがって、第1端からみた場合、通信帯域内の信号(信号Tx、歪成分Rx)にとっては、常時、第3端で特性インピーダンスZoに終端される。そして、この第3端は、信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxを阻止するので、これらの信号は、第3端側を通過しないで上記した第2端側を経由して第1端に送られる。
なお、通信帯域終端フィルタ52は、通信帯域内の信号のみを通過させるバンドパス形のフィルタでも構成できる(構成はこの方が簡単である。)。
【0033】
分岐整合手段50を上記の構成にすることにより、図2Aの粗い点線で示す第1端側から第3端側への信号系統は、通信帯域内の信号(信号Tx、歪成分Rx)にとって特性インピーダンスZoで構成され、図2Aの細かい点線で示す第2端側から第1端側への信号系統は、信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxにとって特性インピーダンスZoで構成される。したがって、関連する何れの信号にとってもインピーダンス整合がとれる構成である。
【0034】
(1B)(1C)について(Tx端側及びRx端側の信号系統について)
図1のTx端側及びRx端側の信号系統のいずれも、特性インピーダンスZoで構成されている。ここで、Tx端側の信号系統において、歪測定上、大きな問題となるのは、図8からも理解できるように、第1の信号源11からの信号Tx自身のサイドバンドノイズ(一般に、SSB位相雑音と言われることもある。)としてRx成分(以下、SSB雑音Rxと言う。)があると、それが、デュプレクサ31内で発生した歪成分Rxに重畳されるので、ダイナミックレンジが制限されることである。SSB雑音Rxが測定しようとする歪成分Rxに比較し、許容できるほど十分小さい値であれば問題はない。周波数の具体例は上記のように、Tx=1785MHz、Rx=1850MHzとすれば、信号Txの+65MHzの周波数における雑音成分が、SSB雑音Rxに該当する。
【0035】
移動体通信端末(携帯端末)における信号源の雑音成分(位相雑音を含む)の大きさは、一般に次の式で示されるスペックが要求されている。
雑音成分[dBm/Hz]=保証受信感度レベル[dBm]−10Log(占有周波数帯域幅)
信号に対する雑音レベル[dBm/Hz]=−信号レベル[dBm]+雑音成分
【0036】
上記式の意味するところは、占有周波数帯域幅で受信すれば、1Hz当たりのZH雑音成分が占有周波数分だけ加算(1Hz当たりの雑音×占有周波数帯域)されるので、その分の雑音を予め少なくした信号源が必要である、と言うことである。言い換えれば、保証受信感度レベルと同一のレベルの信号を、占有周波数帯域幅で受信したとき、雑音対信号比=S/N=0dBを意味する。
【0037】
ここで、歪測定の保証受信感度レベル(要求スペック)を−110dBm、信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxの信号レベルを図8のように−20dBm、通信方式がW−CDMAの場合の占有周波数帯域幅=3.84MHzとすると、要求される雑音レベルは、次のとおりである。
雑音レベル=−110−(−20)−10Log(3.84×10
≒−155[dBm/Hz]
【0038】
しかしながら、この歪測定するにあたっては、歪測定に必要なダイナミックレンジで測定できれば良く、占有周波数帯域幅で受信する必要はない。そこで、歪成分Rxを測定するスペクトラムアナライザ13の分解能帯域幅(RBWと言われる。いわば、測定帯域幅である。)を3kHz、300Hz、30Hzと制限して測定すれば、それぞれ、占有周波数帯域幅=3.84MHzに比べ、約30dB、約40dB、約50dBだけ、S/Nが向上する。したがって、上記の例のように歪測定の保証受信感度レベル(要求スペック)を−110dBm、信号Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxの信号レベルを−20dBmとしたとき、スペクトラムアナライザ13の測定帯域、つまり分解能帯域幅を3kHz、300Hz、30Hzと制限したとき、信号源に要求される雑音レベルはそれぞれ、約−135dBm/Hz、−125dBm/Hz、−115dBm/Hzとなり、雑音成分に大きな制約を受けなくても済む。このように雑音成分の制約が薄くなるにつれ、従来のようにノッチフィルタ等で雑音等の不要波成分を除く処理が不要になる。
【0039】
なお、歪成分Rxの測定精度を良くするにはS/N=6dBの余裕を持って測定することが望ましい。さらに回路間にインピーダンスの整合をとるために特性インピーダンスZoを有する抵抗パッドを用いることがある(例えば、Rx端、ANT端、Rxに3dBパッドを用いる。)が、これは、S/Nを悪化させるので、雑音成分における影響を考慮する必要がある。例えば、第1の信号源11としては、歪成分Rxの周波数点で、雑音レベルが約−145dBm/Hz以下であれば、スペクトラムアナライザ13の測定帯域幅(分解能帯域幅)が300Hzで、信号源に要求される雑音レベルは−125dBm/Hzであるので、20dBの余裕が生まれる。したがって、この余裕をS/N=6dBと抵抗パッドでのロスにまわせる。
【0040】
以上のことから、スペクトラムアナライザ13の測定帯域幅(分解能帯域幅)として300Hz〜10Hzであることが、望ましい。第1の信号源11としては、歪成分Rxの周波数点での雑音レベル約−145dBm/Hz以下が望ましいが、信号源の雑音レベルによって、スペクトラムアナライザ13の測定帯域幅(分解能帯域幅)を適切に選択することで対応することもできる。
【0041】
なお、図1は、被測定物DUT30として、デュプレクサ31だけの場合で説明したが、図3のように、被測定物DUT30として、デュプレクサ31のANT端に半導体でなるスイッチ32が終端器33とともに接続された構成であっても、デュプレクサ31とスイッチ32とで発生する歪成分を、上記図1と同様に測定できる。なお、スイッチ32は、分岐手段40側に親端子があり、ANT端と、終端器33とが子端子に接続され、親端子に入力された信号が、終端器33またはANT端へ切り換えて接続される構成である。
【0042】
あるいは、特性が既知のデュプレクサ31を歪測定装置の構成要素の1つとして用い、スイッチ32のみを被測定物DUT30として測定する構成であってもよい。この場合は、スペクトラムアナライザ13の測定値に対して、デュプレクサ31の既知の特性を考慮することにより、スイッチ32の歪を測定することができる。
【0043】
[第1の実施形態による実施例]
図1の構成による実施の結果を図4に示す。測定条件は、第1の信号源11の周波数が1750MHzであり、第2の信号源60の周波数が、Rx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、2Tx+Rxでそれぞれ、100MHz、1650MHz、3600MHz、5350MHzであり、それぞれのレベル(パワーメータ42で測定したANT端におけるレベル)を−20dBmとしたときの条件で測定している。またスペクトラムアナライザ13は、歪成分Rx=1850MHzに同調して、測定帯域幅、つまり分解能帯域幅(RBW)は30Hzで測定している。比較のため、従来例の構成による場合と、図1の構成による場合、双方の測定値を記載している。
【0044】
図4において、従来例によれば、第2の信号周波数がRx−Txのときの歪成分Rxが−103.39dBm、第2の信号周波数がTx+Rxのときの歪成分が−92.77dBmとなっているが、これらは、規格−110dBmを割っている。これに対し、図1の実施形態によれば、第2の信号のいずれの周波数であっても測定値は、約−140dBm近辺以下であり、規格を満足している。
【0045】
なお、第1の信号源11及びスペクトラムアナライザ13を含む信号分析装置10としては、それらが一筐体に組込まれた、本発明の出願人が製造するMS2692Aシグナルアナライザを用いている。第2の信号源60としては、同じく本発明の出願人が製造するMG3691Bシンセサイザを用いている。
【0046】
[第2の実施形態]
図5、6、10を基に、第2の実施形態について説明する。図5は、DUT30aとして、デュプレクサ31とスイッチ32とで発生する歪を測定する構成である。
【0047】
図5は、スイッチ32(或いはANT端)に、参照信号源60aにより移動体通信端末が受信すべき受信信号とほぼ同じ周波数の信号RxをANT端へ入れ、Tx端へ、2信号源11aにより、予め信号Rxと混合したときに歪成分としてRx帯域に生ずると予想される信号(周波数がTx−Δf/2、Tx+Δf/2、の各信号)を入れ、それをRx端子でRx帯域に入る周波数成分Rx−Δf、Rx+Δfを雑音成分として測定する例である。
【0048】
つまり、図5の2信号源11aが信号Txの近傍の信号として、例えば、周波数がTx−0.5MHz(Δf=1MHzとした)、Tx+0.5MHz、の各信号を出力し、それぞれパワー増幅手段20aにより増幅し、デュプレクサ31のTx端へ送っている。一方、参照信号源60aにより、周波数が受信信号と同じ信号Rxを発生して、サーキュレータ80及び分岐手段40を介してスイッチ32(或いはANT端)へ送っている。そして、スペクトラムアナライザ13によりRx端から出力される成分Rx−1MHz、成分Rx+1MHzを歪成分として測定する。
【0049】
図5と図9との主な違いは次(2A)(2B)(2C)の点にある。
(2A)図9では、第3の信号源14からの信号と第4の信号源15からの信号とを重畳して信号を生成していたが、図5では周波数変換により作り出した2信号を用いている。
(2B)図9で使用していた不要波除去フィルタ70a、70b、70dを図5では不要にしたこと、それに伴い、スペクトラムアナライザでの分解能帯域RBW(測定帯域)を制限したこと。
(2C)分岐手段40を設けていること。ただし、これは、上記(1D)の理由と同じであり、説明を省略する。
【0050】
以下、上記(2A)(2B)について詳細を説明する。
(2A)2信号源11aの構成について
図5で、2信号源11aは、内部で高周波帯の信号Txと低周波帯の信号±Δf/2を生成し、信号Txを信号±Δf/2でミキサでミキシングすることで周波数変換して、信号Txの両サイドにある信号Tx−Δf/2と信号Tx+Δf/2を一つの出力端子からパワー増幅手段20aへ出力している。すなわち、2信号源11aは、内部で、周波数Txの搬送波信号と、周波数±Δf/2の2つのトーン信号で成るデジタルのベースバンド信号とを生成し、このベースバンド信号をD/A変換して搬送波信号で周波数変換することにより、Tx−Δf/2とTx+Δf/2との2つのRFのトーン信号を出力している。例えば、Δf=1MHzとした例を図10に示す。周波数変換であるからして、実際に出力される成分としては、信号Tx−0.5MHzと信号Tx+0.5MHzのほかに、周波数変換による残留成分Txも出力される。しかしながら、スペクトラムアナライザ13で帯域制限して測定される成分Rx−1MHz、成分Rx+1MHzの歪成分の測定に何ら影響を与えることがない成分である。
【0051】
(2B)不要波除去フィルタ(雑音除去のノッチフィルタを含む)を不要とした点
特に、歪測定で問題になるのは、図10から理解できるように、信号Tx−Δf/2、信号Tx+Δf/2及び信号Rx自身のサイドバンドに有する雑音として、Rx−Δf、Rx+Δf成分が含まれているとそれがそのまま、歪測定の誤差になるからである。特にΔf=1MHzとすれば、周波数Rx−1MHz、Rx+1MHzにおける雑音成分が大きな問題となる。従来は、この雑音をノッチフィルタで軽減していた。
【0052】
上記(2A)に記載した2信号源11aの構成により、重畳回路を無くすことによりロスが少なくなり、その分のS/N悪化が避けられる。そして、そして、上記(1B)(1C)に記載したようにスペクトラムアナライザ13で300Hz〜10Hzに帯域制限して測定することにより、不要波除去フィルタ(雑音除去のノッチフィルタを含む)を不要としてもほぼ満足した結果が得られた。
【0053】
例えば、信号Rxのレベルが−30dBmで歪測定のダイナミックレンジが−82dBという仕様での測定要求がある。そうすると−112dBmのレベルを測定できる必要がある。そこで、2信号源11a及び参照信号源60aの各信号源からの信号として、Rx−1MHz、Rx+1MHzにおける雑音成分−152dBm/Hzの信号を用いてスペクトラムアナライザ13の測定帯域を300Hzとし、歪測定に必要なS/Nを6dBとすれば、
−152+10Log300+6=−121[dBm]
が測定可能になるので、十分にダイナミックレンジをカバーできる。なお、2信号源11a及びスペクトラムアナライザ13を含む信号分析装置10aとしては、それらが一筐体に組込まれた、本発明の出願人が製造するMS2692Aシグナルアナライザを用いている。性能的に十分であり、一体型であるから構成も簡単になる。なお、参照信号源60aとしては、本発明の出願人が製造するMG3691Bシンセサイザを用いている。
【符号の説明】
【0054】
10 信号分析装置、10a 信号分析装置、 11 第1の信号源、
11a 2信号源、 14 第3の信号源、
13 スペクトラムアナライザ、14 第3の信号源、 15 第4の信号源、
20a パワー増幅手段、 20b パワー増幅手段、
30 DUT(被試験物)、 30a DUT、 31 デュプレクサ(結合手段)、32 スイッチ、
33 終端器、
40 分岐手段、 41 終端器、 42 パワーメータ、
50 分岐整合手段、 51 パスフィルタ、 52 通信帯域終端フィルタ、
60 第2の信号源、 60a 参照信号源、
70a 不要波除去フィルタ、 70b 不要波除去フィルタ、
70c 不要波除去フィルタ、70d 不要波除去フィルタ、
80 サーキュレータ、 80a サーキュレータ、 80b サーキュレータ、80c サーキュレータ、
90 測定手段、
100 重畳手段、
R 抵抗器、
Zo 特性インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定通信帯域内の所定送信帯域内にある送信信号を送信し、かつ前記所定送信帯域と周波数が異なる所定受信帯域内にある到来信号を受信する移動体通信機器に用いられ、アンテナ端、送信端、及び受信端を有し、前記所定送信帯域にて前記送信端とアンテナ端とを、及び前記所定受信帯域内にて前記アンテナ端と前記受信端とを、それぞれ結合させる結合デバイス(31)を少なくとも含むフロントデバイス(30)の前記受信端に出力される歪を測定する歪測定装置であって、
前記送信端に前記送信信号に相当する周波数を有する第1の信号を送る第1の信号源(11)と、
前記第1の信号と混合されたときに前記所定受信帯域内に入る周波数成分を生じさせる周波数を有する第2の信号を出力する第2の信号源(60)と、
前記第2の信号源の出力と前記アンテナ端との間に設けられ、前記アンテナ端側に接続される第1端、前記第2の信号源の出力を受けて該第2の信号を該第1端へ通過させ該第1端で受ける前記所定通信帯域内の信号の前記第2の信号源側への通過を阻止する第1のフィルタ(51)を有する第2端、及び、第1端から受けた前記所定通信帯域内の信号を所定インピーダンスで終端させるとともに、前記第2端で受けた前記第2の信号の終端を阻止する第2のフィルタ(52)を有する第3端を備えた分岐整合手段(50)と、
前記受信端において、前記フロントデバイス内で前記第1の信号と前記第2の信号によって生じる周波数成分を選択して歪成分として測定するスペクトラムアナライザ(13)と、を備えた歪測定装置。
【請求項2】
所定送信帯域と該所定送信帯域と周波数が異なる所定受信帯域を含む所定通信帯域内で通信を行う移動体通信機器にして、前記所定送信帯域内にある送信信号を送信し、かつ前記所定受信帯域内にある到来信号を受信する前記移動体通信機器のフロントエンドに用いられ、アンテナ端、送信端、及び受信端を有し、前記所定送信帯域にて前記送信端とアンテナ端とを、及び前記所定受信帯域内にて前記アンテナ端と前記受信端とを、それぞれ結合させる結合デバイス(31)を少なくとも含むフロントデバイス(30)の前記受信端に出力される歪を測定する歪測定装置であって、
前記送信信号に相当する周波数を有する信号を送出する第1の信号源(11)と、
該第1の信号源から送出される信号を増幅して第1の信号として前記送信端に送出するパワー増幅手段(20a)と、
前記第1の信号と混合されたときに前記所定受信帯域内に入る周波数成分を生じさせる周波数を有する第2の信号を出力する第2の信号源(60)と、
前記第2の信号源の出力と前記アンテナ端との間に設けられた分岐整合手段(50)と、
前記受信端において、前記フロントデバイス内で前記第1の信号と前記第2の信号によって生じる周波数成分を選択して歪成分として測定するスペクトラムアナライザ(13)と、を備え、
前記分岐整合手段は、
3つの抵抗がΔ形又はT形で結合されて構成され、その結合の3つの端である第1端、第2端及び第3端を有し、該第1端が前記アンテナ端側に接続されるようになっている分岐部と、
該第2端と前記第2の信号源との間に設けられ、前記第2の信号源からの前記第2の信号を前記第1端へ通過させるとともに該第1端で受ける前記所定通信帯域内の信号の前記第2の信号源側への通過を阻止する第1のフィルタ(51)と、
所定インピーダンスを有し、一方の端が接地されている終端器と、
該終端器の他方の端と前記第3端との間に設けられ、前記第1端から受けた前記所定通信帯域内の信号を前記終端器の前記所定インピーダンスで終端させ、前記第2端から受けた前記第2の信号の終端を阻止する第2のフィルタ(52)と、を含むことを特徴とする歪測定装置。
【請求項3】
前記フロントデバイスは、さらに、前記アンテナ端に接続されるための子接点と、前記分岐整合手段の第1端へ接続される親接点を有し、切り換えることで、該親接点からの前記第2の信号を前記子接点を介して該アンテナ端へ送るスイッチデバイス(32)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の歪測定装置。
【請求項4】
前記第2の信号源は、前記第1の信号の周波数をTxとし、前記到来信号の周波数をRxとしたとき、前記第2の信号として少なくともRx−Tx、2Tx−Rx、Tx+Rx、及び2Tx+Rxの4つの周波数の信号を切り換えて出力し、
前記分岐整合手段は、該第2の信号の切り換えに対応して、前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタの通過帯域及び阻止帯域を切り換えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の歪測定装置。
【請求項5】
所定通信帯域内の所定送信帯域内にある送信信号を送信し、かつ前記所定送信帯域と周波数が異なる所定受信帯域内にある到来信号を受信する移動体通信機器に用いられ、アンテナ端、送信端、及び受信端を有し、前記所定送信帯域にて前記送信端とアンテナ端とを、及び前記所定受信帯域内にて前記アンテナ端と前記受信端とを、それぞれ結合させる結合デバイス(31)を少なくとも含むフロントデバイス(30)の前記受信端に出力される歪を測定する歪測定装置であって、
内部で前記送信信号と同じ周波数の信号と周波数±Δf/2の信号とを生成しそれらに基づいて、前記送信端に前記送信信号の周波数の近傍の周波数であって互いの周波数差Δfが前記所定送信帯域の幅内にある2つのRF信号を含む前記第1の信号を生成し、該2つのRF信号を一つの出力端子から出力する2信号発生源(11a)と、前記受信端から受ける信号の周波数成分を測定するスペクトラムアナライザ(13)と、を一つの筐体に有する信号分析装置と、
前記第1の信号を受けて増幅して前記送信端へ直接に出力するパワー増幅手段(20a)と、
前記到来信号に相当する第2の信号を生成し出力する参照信号源(60a)と、
該第2の信号を受けて前記アンテナ端へ送ると共に、該アンテナ端からの信号を阻止する一方向結合手段(80)と、
を備え、
前記スペクトラムアナライザは、前記フロントデバイス内で前記第1の信号と前記第2の信号によって生じる周波数成分を選択して歪成分として測定することを特徴とする歪測定装置。
【請求項6】
前記送信信号の周波数をTxとしたとき、前記2つのRF信号の周波数はTx−Δf/2、Tx+Δf/2であり、歪成分とは、第2の信号の周波数をRxとしたとき、Rx−Δf、Rx+Δfの周波数成分であることを特徴とする請求項5に記載の歪測定装置。
【請求項7】
前記スペクトラムアナライザの周波数分解能帯域幅は、約300Hz〜10Hzであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の歪測定装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−32393(P2012−32393A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150608(P2011−150608)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)