説明

殺菌用組成物

【課題】皮膚刺激性が低く、使用感触、匂い、及び殺菌作用に優れる殺菌用組成物、及びこれを用いたウェットワイパーを提供する。
【解決手段】本発明にかかる殺菌用組成物は、(a)下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20.0質量%、(b)アルコールを1.0〜70.0質量%、及び、(c)殺菌剤を0.01〜2.0質量%、を含有することを特徴とする。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし、1<(a+c)×kである。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌用組成物、ウェットワイパー、特にその皮膚刺激性、匂いの低減、及び使用感触の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットワイパー類とは、「ぬれティッシュ」、「使い捨ておしぼり」、「お手ふき」、「清浄綿」、「お手ふき布タオル」、「保湿ティッシュ」等の総称(日本清浄綿類工業会:ウェットワイパー類の安全衛生自主基準)である。これらは主に携帯用のおしぼりとして広く普及しており、汗などの簡単な汚れを除去してさっぱりとした清潔感を得ることができるものである。
【0003】
ウェットワイパー類である、ぬれティッシュ、使い捨ておしぼり、お手ふき、清浄綿、お手ふき布タオル、保湿ティッシュには水、エタノール、及び塩化ベンザルコニウムなどの薬品が使用されている。薬品の中で代表的な塩化ベンザルコニウムは、殺菌消毒、消臭、防黴を目的として医療分野、食品分野、化粧品分野、工業分野などで用いられており、高い効果も有するため、広く使用されている。しかしながら塩化ベンザルコニウムは、皮膚刺激性や、匂いがするという欠点を有していた。
【0004】
この解決手段として、テトラヒドロアビエチン酸とエタノールを併用する方法(例えば、特許文献1参照)や、アルキルジメチルベンジルアンモニウムを配合する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
しかしテトラヒドロアビエチン酸とエタノールを併用する方法は、殺菌性や皮膚刺激性、および使用性に優れるものの、その効果は十分満足いくものではなかった。
アルキルジメチルベンジルアンモニウムを配合する方法は、皮膚刺激性や匂い低減に優れるものの、使用感触は十分満足いくものではなかった。
【0006】
また皮膚刺激性が低く、使用感触も良好な直鎖型ポリアルキレンオキシドジアルキルエーテル誘導体を配合した提案もされている(例えば特許文献3参照)。しかしこれらの提案では使用感触、皮膚に対する刺激性の緩和には優れているものの、経時による匂いに関して必ずしも満足のいく効果が得られてはいなかった。
【特許文献1】特開平5−15467号公報
【特許文献2】特開2006−69919号公報
【特許文献3】特開2004−292395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたもので、その目的は皮膚刺激性が低く、使用感触、匂い、及び殺菌作用に優れる殺菌用組成物、及びこれを用いたウェットワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定のブロック型アルキレンオキシド誘導体を、アルコール及び殺菌剤とともに用いることにより、殺菌剤を使用していても皮膚刺激性が低く、使用感触に優れ、経時による匂いが低く、殺菌作用も阻害しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる殺菌用組成物は、(a)下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20.0質量%、(b)アルコールを1.0〜70.0質量%、及び、(c)殺菌剤を0.01〜2.0質量%、を含有することを特徴とする。
【0010】
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし、1<(a+c)×kである。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。
【0011】
また、前記殺菌用組成物は、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、AOがオキシブチレン基であることが好適である。
また、前記殺菌用組成物は、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、aが0であることが好適である。
さらに、本発明にかかるウェットワイパーは、前記殺菌用組成物が含浸されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定構造を有するブロック型アルキレンオキシド誘導体を配合することにより、アルコールや殺菌剤を配合しても皮膚刺激性が低く、匂いや使用感触に優れた殺菌用組成物を得ることができる。しかも、前記組成物は高い殺菌作用を保持している。
また、前記殺菌用組成物を基布へ含浸させ、前記機能を備えたウェットワイパーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明にかかる殺菌用組成物は、(a)特定構造を有するブロック型アルキレンオキシド誘導体、(b)アルコール、及び、(c)殺菌剤をそれぞれ特定量含むものである。以下、前記必須成分について順次詳述する。
【0014】
(a)ブロック型アルキレンオキシド誘導体
本発明においては、下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体が適用し得る。
(化2)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
【0015】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であり、kは前記多価アルコールの水酸基数であり3〜6である。
3〜6個の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えばk=3であるグリセリン、トリメチロールプロパン、k=4であるエリスリトール、ペンタエリスリトール、k=5であるキシリトール、k=6であるソルビトール、イノシトールが挙げられる。
すなわち、本発明にかかる台所用液体洗浄剤組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、前記の3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの1種または2種以上の混合物の水酸基を除いた残基を基本骨格とする。
【0016】
本発明において、特に、Yが3〜4個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であることが好ましく、すなわち、3≦k≦4を満たすことが好適である。このような多価アルコールとして、具体的にはグリセリン、ペンタエリスリトールが挙げられる。kが2以下であると、殺菌用組成物へ配合した場合に、経時による匂い低減が不十分であり好ましくない。また、kが7以上であると、べたつき感が生じてきる場合があり好ましくない。
【0017】
EOは、オキシエチレン基である。AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、さらに好ましくはオキシブチレン基である。また、AOは1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
b×kはAOの平均付加モル数の総数であり、1≦b×k≦100、好ましくは3≦b×k≦70、より好ましくは5≦b×k≦50である。a×kおよびc×kはEOの平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、0≦c×k≦100である。a×kとして、好ましくは0≦a×k≦30、より好ましくは0≦a×k≦20である。また、c×kとして、好ましくは5≦c×k≦70、より好ましくは5≦c×k≦50である。また、前記式(I)中の全オキシエチレン基の平均付加モル数(a+c)×kは1より大きく、好ましくは1<(a+c)×k≦200であり、更に好ましくは10≦(a+c)×k≦140である。AOは本発明にかかるブロック型アルキレンオキシド誘導体において疎水性部位となり、b×kが0であると、べたつき感および経時による匂いの低減が不十分であり、100を超えると、皮膚刺激性に劣る傾向にある。また、(a+c)×kが0であると、皮膚刺激性に劣る場合があり好ましくない。
【0019】
前記式(I)中のAOとEOの合計に対する前記式(I)中の全EOの割合は10〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%である。前記割合が10質量%より小さいと、皮膚刺激性に劣る傾向にあり、80質量%より大きいと、べたつき感が出てくる場合があり好ましくない。
また、AOとEOの付加形態はブロック状であり、付加順序は式中のYに対して、(AO)−(EO)の順、(EO)−(AO)の順、(EO)−(AO)−(EO)の順のいずれであってもよい。本発明においては、式中のYに対して(AO)−(EO)の順、つまりa=0であることが特に好ましい。
【0020】
前記式(I)において、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、これはべたつきを低減するために必須である。このような炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、本発明においては特にメチル基、エチル基であることが好ましい。炭素数が5より大きいと、経時による匂いの低減効果が十分でなく好ましくない。また、Rが水素原子であると、べたつき感を生じる可能性があり好ましくない。
また、本発明にかかる台所用液体洗浄剤組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Rは1分子中、同一であっても異なっていてもよく、1分子中において同一のRを有するブロック型アルキレンオキシド誘導体1種、または異なるRを有する2種以上の混合物であってもよい。
【0021】
本発明にかかる台所用液体洗浄剤組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体としては、具体的にはPOB(30)POE(30)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリメチルエーテル、POB(17)POE(28)グリセリルトリメチルエーテル、POB(27)POE(45)グリセリルトリメチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリメチルエーテル、POB(22)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(19)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(40)POE(80)グリセリルトリメチルエーテル、POB(80)POE(40)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリエチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリプロピルエーテル、POE(30)POP(30)グリセリルトリメチルエーテル、POE(35)POP(40)グリセリルトリメチルエーテル、POE(41)POP(48)グリセリルトリメチルエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下、このように略して記載することがある。
【0022】
本発明にかかる殺菌用組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物に、エチレンオキシドおよび炭素数3〜6のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル化させることによって得られる。
【0023】
以上のようにして得られるブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量としては、本発明にかかる殺菌用組成物全量に対して0.1〜20.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10.0質量%である。前記配合量が0.1質量%に満たないと、皮膚刺激性の低減が十分でないことがあり、配合量が20.0質量%を超えると、使用後にべたつきを感じる傾向にあり好ましくない。
【0024】
(b)アルコール
本発明にかかる殺菌用組成物へ適用し得るアルコールとしては、特に限定されるものではないが、具体的には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等が挙げられる。本発明において特に好ましくはエタノールである。
本発明の殺菌用組成物におけるアルコールの配合量は、組成物全量に対し1.0〜70.0質量%であり、好ましくは5.0〜40.0質量%である。前記配合量が1.0質量%に満たないとべたつきを感じ、また、70.0質量%を越えると、皮膚刺激性が認められることがあり好ましくない。
【0025】
(c)殺菌剤
本発明にかかる殺菌用組成物へ適用し得る殺菌剤としては、カチオン系の界面活性剤、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。本発明において特に好ましくは塩化ベンザルコニウムである。
本発明の殺菌用組成物における殺菌剤の配合量は、組成物全量に対し0.01〜2.0質量%であり、好ましくは0.1〜0.5質量%である。前記配合量が0.01質量%に満たないと殺菌剤としての効果が得られず、また、2.0質量%を越えると、皮膚刺激性が認められることがあり好ましくない。
【0026】
本発明のウェットワイパーは、前記殺菌用組成物を、紙、不織布、脱脂綿レーヨンステーブル綿、又はこれらにプラスティックフィルム等を複合した基布に含浸することにより得られるものであり、具体的には、ぬれティッシュ、使い捨ておしぼり、お手ふき、清浄綿、お手ふき布タオル、保湿ティッシュ等が挙げられる。
【0027】
本発明のウェットワイパーにおいては、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にウェットワイパーに配合される他の成分、例えば、油分、水等を配合することができ、さらに所望に応じて、無機顔料、体質顔料等の粉末類、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高級脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールとのエステル、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、防腐剤、色素、香料などを配合することができる。
【0028】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、配合量については特に断りのない限り、質量%で示す。
【実施例1】
【0029】
下記表2に示す成分および配合量で、殺菌用組成物(実施例1〜5、比較例1〜10)を常法により調製した。そして、得られた組成物の溶液をそれぞれ20cm×20cmの不織布に含浸させウェットワイパーを得た。各ウェットワイパーについて、評価試験を行い、その特性を評価した。
【0030】
表2における(a)成分については、下記のものを用いた。
<a成分>
(a)成分として、下記表1に示す構造の化合物a−1〜a−12をそれぞれ用いた。a−1〜a−10のY、a×k、b×k、c×k、AO、EO、Rは、下記式(I)における基および数値を表す。なお、表1のYは各物質から水酸基を除いた残基を示し、EOwt%はAO及びEOの合計に対するEOの割合を示す。また、AOはオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、BOはオキシブチレン基を表す。
(化3)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
【0031】
(表1)

【0032】
表2中の各評価項目は、以下の評価試験及び基準によるものである。評価結果も表2に併せて示す。
「評価(1):皮膚刺激試験」
10名のパネルの上腕内側部に24時間の閉塞パッチを行ない、その後以下の基準により平均値を算出した。◎もしくは○を皮膚刺激が低いものと判断した。
0…全く異常が認められない。
1…わずかに赤みが認められる。
2…赤みが認められる。
3…赤みと丘疹が認められる。
「皮膚刺激試験」の評価基準は以下の通りである。
◎…パネル10名の平均値:0.1未満
○…パネル10名の平均値:0.1以上0.15未満
△…パネル10名の平均値:0.15以上0.2未満
×…パネル10名の平均値:0.2以上
【0033】
「評価(2):肌へのべたつきのなさ」
使用中及び使用後の肌へのべたつきのなさを専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。◎もしくは○をべたつきが少ないものと判断した。
◎…専門パネラー8名以上が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
×…専門パネラー3名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
【0034】
「評価(3):経時による匂い」
各試験例の殺菌用組成物について、製造直後ガラス瓶に充填し50℃にて6週間放置後の匂いを専門パネラー10名により官能評価を行った。○を経時による匂いが良好であると判断した。
○…専門パネラー6名以上が、不快臭がしないと認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が、不快臭がしないと認めた。
×…専門パネラー3名未満が、不快臭がしないと認めた。
【0035】
「評価(4):殺菌性試験(皮膚上)」
試料のウェットワイパー類、清浄綿で両手を拭いた。この操作を2回繰り返した後、グローブジュース法により手の菌を採取した。殺菌剤が配合されていない比較例1における手の菌数をコントロールとして比較評価した。○を殺菌作用を阻害してないと判断した。
○…比較例1の生菌数より明らかに低い菌数が確認されている。
×…比較例1の生菌数とほぼ同数の菌数が確認されている。
【0036】
(表2)

【0037】
上記の結果から、本発明の殺菌用組成物を含浸している実施例1〜5のウェットワイパーは、皮膚刺激性、肌のべたつきのなさ、経時による匂い、及び抗菌性のいずれも優れているものであった。
これに対して、アルキレンオキシド誘導体(a成分)を無配合とした比較例1は、肌のべたつき、経時による匂いの点で実施例に劣るものであった。EOを含有しない化合物a−6を配合した比較例2においては、皮膚刺激性、及び経時による匂いが劣っていた。末端が水酸基である化合物a−7を配合した比較例3は、皮膚刺激性、肌のべたつき、及び経時による匂いの点で劣っていた。ヘキシル基を有する化合物a−8を配合した比較例4は、経時による匂いの点で実施例に劣るものであった。AOを含有しない化合物a−9を配合した比較例5は、肌のべたつき、及び経時による匂いの点で劣り、トレハロース骨格を有する化合物a−10を配合した比較例6はべたつき感において劣ったものであった。また、比較例7は直鎖型のエチレンオキシド、プロピレンオキシドランダム共重合体のジメチルエーテルである化合物a−11を配合し、そして比較例8は、直鎖型のエチレンオキシド、プロピレンオキシドブロック共重合体のジメチルエーテルであるa−12を配合したものであるが、いずれの組成物も経時による匂いの点で実施例に劣っていた。
【0038】
このように、比較例1〜8の組成物において、実施例に比べ、皮膚刺激性、使用感触、経時による匂い、及び抗菌性の全てを満足するものは認められなかった。
したがって、(a)特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体、(b)アルコール、及び、(c)殺菌剤を適量配合することにより、高い抗菌性を保持したまま、使用感触及び経時による匂いの低減を向上し、且つ皮膚刺激性の低い殺菌用組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20.0質量%、
(b)アルコールを1.0〜70.0質量%、及び、
(c)殺菌剤を0.01〜2.0質量%、
を含有することを特徴とする殺菌用組成物。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦50、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし、1<(a+c)×kである。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、AOがオキシブチレン基であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌用組成物。
【請求項3】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、aが0であることを特徴とする請求項1または2に記載の殺菌用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の殺菌用組成物が含浸されていることを特徴とするウェットワイパー。

【公開番号】特開2009−108000(P2009−108000A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284091(P2007−284091)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】