説明

殺菌装置

【課題】 構造は比較的簡易であるにもかかわらず、人間が紫外放射を視認する恐れがなく安全であり、さらに循環する空気は紫外放射により殺菌効果に優れている殺菌装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 中空筒体の装置本体1の内部に紫外放射光源2を装着し、同装置本体の一端近傍に空気ファン21を配置して構成してある。また装置本体の他端近傍に循環する空気の圧力損失が少なく、且つ循環する空気が紫外放射光源に、より近接しながら送風される調整蓋31を設けて構成してある。また調整蓋は、上蓋32と中蓋33と内蓋34の3枚で構成し、さらに上蓋と中蓋と内蓋には、上蓋の外部から紫外放射が漏れないように、空孔を有して構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外放射光源を装着した殺菌装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院の待合室や食品工場等においては、紫外放射光源を用いて、紫外放射光源から生成される紫外放射で空気中に浮遊する菌を殺菌することが実施されている。(特許文献1)
また簡易型の殺菌装置としては、筒体の内部に紫外放射光源を装着し、同筒体の内部に空気を送り込み循環させて、空気中に浮遊する菌を殺菌することが行われている。
【0003】
【特許文献1】特開7−289616
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし殺菌装置の構造あるいは殺菌装置の取り付け位置や取り付け角度によると、紫外放射が装置の外部に漏れて、人間が紫外放射を視認する恐れがある。紫外放射を人間が視認すると有害であり改良が必要となる。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、比較的簡易な構造で人間が紫外放射を視認する恐れがなく、さらに殺菌効果の優れた殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するために次の構成とする。請求項1は、中空筒体の装置本体の内部に紫外放射光源を装着し、同装置本体の一端近傍に空気ファンを配置して構成してある。また装置本体の他端近傍に循環する空気の圧力損失が少なく、且つ循環する空気が紫外放射光源により近接しながら送風され、さらに紫外放射が装置本体の外部に漏れるのを防止する調整蓋を設けて構成してある。
【0007】
請求項2は、請求項1における調整蓋を、上蓋と中蓋と内蓋の3枚で構成し、且つ同上蓋と中蓋と内蓋は間隔を有して配置し、さらに中蓋は循環する空気が紫外放射光源により近接するように、外周近傍と中央付近に空孔を有して構成してある。
【0008】
請求項3は、請求項2における上蓋と中蓋と内蓋は、循環する空気が乱流を起こすように、内蓋は外周近傍に空孔があり、中蓋は外周近傍と中央付近に空孔があり、上蓋は中央近傍に空孔を有して構成してある。また同上蓋と中蓋と内蓋に形成された各空孔は位置をずらして形成され、上蓋の外部に紫外放射が漏れないように構成してある。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明によると、構造は比較的簡易であるにもかかわらず人間が紫外放射を視認する恐れがなく、循環する空気は紫外放射光源に、より近接するので殺菌効果に優れ、さらに通過する空気は損失が少なく処理効果が高い特別な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下第1の実施形態を図1乃至図3について説明する。図1において、1は中空状筒体の装置本体であって、例えば鋼板やプラスチック材で構成してある。同装置本体1は例えば高さ1140mm、太さはΦ200mmに構成してある。2は装置本体1の長手方向に沿って内部に装着してなる紫外放射光源であって、例えば15ワットの直管型紫外放射光源を用いて構成してある。3、4は装置本体1の内部に設けた一対のソケットであって、両ソケット間に15ワットの直管型紫外放射光源を装着してある。5は図1における上方のソケット3に接続してなるリード線である。6、7は装置本体1を支えるための支柱である。
【0011】
10は図3に示すように、装置本体1の長手方向の構成壁の一部に開閉自在に設けた紫外放射光源を交換するための内側開閉板であって、装置本体1に蝶番で支持して構成してある。11は内側開閉板10を覆ってなる外側開閉板であって、支持腕12を介して内側開閉板10に固定してある。13は図1に示すように、装置本体1の構成壁の一部に設けた紫外放射光源の点灯確認窓である。14は内側開閉板10の内側に設けた透明ガラス、15は外側開閉板11の内側に設けた透明ガラス、16は紫外放射光源2を挟んで配置してなる透明ガラスである。これらの透明ガラスは、紫外放射を透過しないものを用いて構成してある。なお、同透明ガラスは、紫外放射を透過せず、紫外放射により劣化しないものであればプラスチックを用いて構成してもよい。
【0012】
21は図1における下方のソケット4の下側に設けてなる空気ファンである。同空気ファン21は、1m3/minの送風量のものを用いて構成してある。22は装置本体1の内底部に設けた点灯装置であって、紫外放射光源を点灯するための安定器等を有して構成してある。
【0013】
31は装置本体1の内部であって、空気ファン21の他端近傍に設けた円形状の調整蓋であって、上蓋32と、中蓋33と、内蓋34の3枚で構成してある。上蓋32は図2に示すように、中央にΦ140mmの空孔38を有して構成してある。中蓋33は図2に示すように、外周部と中央に空孔35、36を有して構成してある。内蓋34は図2に示すように、円形状に構成してなる外周より内側に空孔37を有して構成してある。上蓋32の空孔38と、中蓋33の空孔35、36と、内蓋34の空孔37の面積は、略等しくなるように構成してある。上蓋32と中蓋33の空隙率が内蓋34より少ないと、内蓋34から送風された空気が中蓋33と上蓋32を通過する際に遮られ、その圧力損失により、送風量が減少することになる。上蓋32と、中蓋33と、内蓋34の空隙率が略等しくなると圧力損失を最小とすることができる。また上蓋32と、中蓋33と、内蓋34に形成された各空孔は位置をずらして設けられ、上蓋の外部に紫外放射が漏れないように構成してある。上蓋32と、中蓋33と、内蓋34を上述のように構成すると、殺菌装置の取り付け位置や取り付け角度にかかわらず、紫外放射が外部に漏れることはなく、在室者が紫外放射を視認する危険性を防ぐことができる。紫外線照度計により測定したところ本発明による構造によると、上蓋の外部に紫外放射が漏れてないことが確認されている。
【0014】
40は装置本体1の上端に設けた天板であって、不透光性材で構成してある。41は天板40の内側に設けた拡散板であって、例えば断面V字形あるは逆円錐形状に構成してある。紫外放射によって殺菌された循環する空気が拡散されるように構成してある。拡散板40を断面V字形あるは逆円錐形状に構成すると、殺菌された空気の内部で拡散される。
【0015】
次に上記した第1の実施形態を次の条件で試験したときの実験結果を表1に示す。
試験条件
(1)試験菌種:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
(2)試験菌培養方法:冷凍保存した菌株を前々培養し、35℃で24時間前培養したコロニーをイオン交換水に浮遊し、109CFU/mlに調整する。
(3)試験方法:装置本体の空気ファンの下方近傍で菌を含む液を噴霧し、紫外放射光源を点灯し、装置本体の内部を噴霧した菌が通過する。
かかる後紫外放射した菌を装置本体の他側で回収する。
(4)菌の回収 :一回の試験で50リットルの空気量
(5)浮遊菌数の測定:メンブランフィルターで濾過してフィルタ上に試験菌を集め寒天培地に貼り付け35℃で48時間培養
培地上に発育した集落数を測定
(6)試験回数:5回
(7)風速:0.50m/s
(8)紫外線放射光源:15ワット
【0016】
表1
浮遊菌数と殺菌率

【0017】
第1の実施形態によると、次の作用がある。
(1)装置本体1の空気ファン21を回転すると、装置本体1の下方から流入した試験菌は、紫外放射光源2の外周を通過し、内蓋34、中蓋33、上蓋32をとおり、拡散板41に当たって外部に流出する。
(2)空気は紫外放射光源2の外周を通過するときに、紫外放射により、第1の実施形態による表1に示すよう98%の殺菌効果を得ることができる。
(3)また装置本体1の内部を通過する空気は、内蓋34、中蓋33、上蓋32を通って、図2に示す矢府で示すように流れ、空気損失は少なく、効果的に空気殺菌することができるものである。また内蓋34、中蓋33、上蓋32により、装置本体1の内部を通過する空気は、乱流を起こし殺菌効果を高めることができるものである。つまり、内蓋34の空孔37を空気が通過する際に、空気は紫外放射光源2に近づき、また中蓋33の空孔35と36を通過する際に、空気は乱流を起こし殺菌率は向上する。さらに内蓋34、中蓋33、上蓋32により、紫外放射が殺菌装置の外部に漏れる恐れはなくなる。
【0018】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は例えば高さ1600mm、太さはΦ200mmに構成し、30ワット直管型紫外放射光源を用いて構成する。他の構造と、実験の条件は第1の実施形態と同じである。
実施形態2によると、表2に示す殺菌率となる。

【0019】
表2
浮遊菌数と殺菌率

【0020】
第2の実施形態によると、次の作用がある。
(1)装置本体1の空気ファン21を回転すると、 第1の実施形態と同様に空気は循環する。
このとき、装置本体における紫外放射光源は、30ワットを用いているので、殺菌効果は表2に示すように99.92%まで向上することができる。
【0021】
なお、上記した第2の実施形態における調整蓋(上蓋、中蓋、内蓋)を取り外し、実験したところ(他の条件は第2の実施形態と同じ)、殺菌率は99.6%であり、本発明における殺菌装置の殺菌率が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る殺菌装置の縦断面図。
【図2】図1の殺菌装置の一部拡大斜視図。
【図3】本発明に係る殺菌装置の横断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 装置本体
2 紫外放射光源
3、4 ソケット
5 リード線
6、7 支柱
10 内側開閉板
11 外側開閉板
12 支持腕
13 点灯確認窓
14 透明ガラス
21 空気ファン
22 電気部品
31 調整蓋
32 上蓋
33 中蓋
34 内蓋
35.36 空孔
37 空孔
38 空孔
40 天板
41 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒体の装置本体の内部に紫外放射光源を装着し、同装置本体の一端近傍に空気ファンを配置し、また装置本体の他端近傍に循環する空気の圧力損失が少なく、且つ循環する空気が紫外放射光源により近接しながら送風され、且つ紫外放射が装置本体の外部に漏れるのを防止する調整蓋を設けて構成したことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
調整蓋は、上蓋と中蓋と内蓋の3枚で構成し、且つ同上蓋と中蓋と内蓋は間隔を有して配置し、さらに中蓋は循環する空気が紫外放射光源により近接するように、外周近傍と中央付近に空孔を有して構成したことを特徴とする請求項1記載の殺菌装置。
【請求項3】
上蓋と中蓋と内蓋は、循環する空気が乱流を起こすように、内蓋は外周近傍に空孔があり、中蓋は外周近傍と中央付近に空孔があり、上蓋は中央近傍に空孔を有し、また同上蓋と中蓋と内蓋に形成された各空孔は位置をずらして形成され、上蓋の外部に紫外放射が漏れないように構成したことを特徴とする請求項2記載の殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−314661(P2006−314661A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142149(P2005−142149)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】