説明

母線事故区間判定装置

【課題】電力系統への悪影響のおそれがなく供給支障および過負荷の早期解消が図れる母線事故区間判定装置を提供する。
【解決手段】母線事故区間判定装置10は、乙母線1bに事故が発生した場合には、乙母線1b保護用の母線保護継電器が動作し、かつ、乙母線赤相、白相および青相2次電圧VRb,VWb,VBbの少なくとも1つが整定値以下であり第4乃至第6の低電圧リレー114〜116が動作すると、乙母線1b側の入状態のラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bを順番に切状態にしていき、これらのラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bのうち乙母線赤相、白相および青相2次電圧VRb,VWb,VBbのすべてが整定値よりも大きくなって第4乃至第6の低電圧リレー114〜116がすべて不動作になったときに切状態にされたラインスイッチの設置箇所の区間を母線事故区間として判定し、すべて不動作にならない場合は母線本体の事故として判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母線事故区間判定装置に関し、特に、母線保護継電器が設置されている複母線電気所において発生した母線事故を早期に解消するのに好適な母線事故区間判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、母線保護継電器が設置されている複母線電気所において母線事故が発生すると、複母線のうち事故母線に接続されている全遮断器を母線保護継電器によって遮断(開放)して事故母線を停電させている。
【0003】
たとえば、図7に示すように甲母線1aと乙母線1bとの間に設置されたラインスイッチLS11a,LS11b,LS12a,LS12b,LS2a,LS2b,LS3a,LS3b,LS4a,LS4b,LS5a,LS5b,LS6a,LS6bのうち甲母線1a側のラインスイッチLS11a,LS3a,LS5aが入状態にされるとともに乙母線1b側のラインスイッチLS11b,LS3b,LS5bが切状態にされて△△受電線の第1の送電線1Lと第2の変圧器22と□□負荷線とが甲母線1aから電力の供給を受けており、乙母線1b側のラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bが入状態にされるとともに甲母線1a側のラインスイッチLS12a,LS2a,LS4a,LS6aが切状態にされて△△受電線の第2の送電線2Lと第1の変圧器21と第3の変圧器23と××負荷線とが乙母線1bから電力の供給を受けている場合に、乙母線1bにおいて母線事故が発生すると、図8に示すように甲母線1aと乙母線1bとの間に設置されている母線連絡遮断器BTSを乙母線1b保護用の母線保護継電器(不図示)によって遮断するとともに、△△受電線の第2の送電線2Lの乙母線1b側に設置されている遮断器CB12と第1の変圧器21の乙母線1b側に設置されている遮断器CB2と第3の変圧器13の乙母線1b側に設置されている遮断器CB4と××負荷線の乙母線1b側に設置されている遮断器CB6とを乙母線1b保護用の母線保護継電器によって遮断して、図8に実線で示すように甲母線1aは停電させずに同図に破線で示すように乙母線1b(事故母線)のみを停電させている。
【0004】
なお、下記の特許文献1には、変電所母線の各人形部から第1の母線に出入りする電流の方向を判定する第1の複数の方向継電器と、第2の母線に出入りする電流の方向を判定する第2の複数の方向継電器と、第1の母線の線間電圧低下を検出する第1の不足電圧継電器と、第1の母線の相電圧低下を検出する第2の不足電圧継電器と、第2の母線の線間電圧低下を検出する第3の不足電圧継電器と、第2の母線の相電圧低下を検出する第4の不足電圧継電器と、第1および第2の不足電圧継電器の出力から第1の複数の方向継電器の出力のうち事故相出力を選択する第1の複数の事故相選択部と、第3および第4の不足電圧継電器の出力から第2の複数の方向継電器の出力のうち事故相出力を選択する第2の複数の事故相選択部と、第1および第2の複数の事故相選択部の出力から故障区間を判定する判定部とを備えることにより、直接接地方式変電所の故障区間を正確に判定するようにした変電所の故障区間判定装置が開示されている。
また、下記の特許文献2には、単一の母線に複数の電源線と複数のバンクとを接続した変電所の各バンク間の母線上に、母線断路器と光CTとをそれぞれ取付けるとともに光CTの出力から電流の方向を検出できる継電器を設け、事故発生時に光CTにより事故電流を検出し、その電流から継電器によって事故電流の流れる方向を判定し、その結果を演算器に入力して事故が発生した区間を自動的に検出することにより、変電所内部において地絡事故などが生じた場合にもその故障区間を外部から直ちに検出し、その故障区間の切離しによって健全区間への送電を続けることができるようにした変電所の故障区間検出システムが開示されている。
【特許文献1】特開2001−16767号公報
【特許文献2】特公平7−4047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように事故母線を停電させると変圧器や送電線の停電による供給支障および健全設備の過負荷を伴う場合があるため、このような場合には必要最小限の試充電操作を実施して供給支障および過負荷の解消を図る必要があるが、このような試充電操作を行う場合には事故点に実電圧を印加することになるので、試充電不良時には設備損傷の拡大と瞬時電圧低下などに伴う電力系統への悪影響のおそれがあるという問題があった。
また、上述したような試充電操作を行う場合には、母線事故の事故様相や設備形態によっては現地確認の必要があり、現地確認後に試充電操作を行うことになるので、供給支障および過負荷の解消に時間がかかるという問題があった。
さらに、現地確認を行う場合には、外観点検以外の確認が必要であると機材の準備や測定などに時間を要するので、供給支障および過負荷の解消に更に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、電力系統への悪影響のおそれがないとともに供給支障および過負荷の早期解消が図れるようにするための母線事故区間判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の母線事故区間判定装置は、複母線(1a,1b)のうち一方の母線で事故が発生した母線事故区間を判定するための母線事故区間判定装置(10)であって、前記複母線のうち他方の母線の充電中に静電誘導によって前記一方の母線に発生する誘導電圧に基づいて前記複母線の健全性および前記母線事故区間を判定する母線事故区間判定手段を具備することを特徴とする。
ここで、前記母線事故区間判定手段が、前記誘導電圧が所定の電圧値以下であると動作する継電手段(111〜116)と、該継電手段が動作し、かつ、前記一方の母線を保護するための母線保護継電器が動作すると、前記複母線に設置された複数個のラインスイッチ(LS11a,LS11b,LS12a,LS12b,LS2a,LS2b,LS3a,LS3b,LS4a,LS4b,LS5a,LS5b,LS6a,LS6b)のうち該一方の母線側の入状態のラインスイッチ(LS11a,LS3a,LS5a;LS12b,LS2b,LS4b,LS6b)を順番に切状態にするラインスイッチ制御手段(121,122,131,132,14)と、前記継電手段が動作から不動作になったときに切状態にされたラインスイッチの設置箇所の区間を前記母線事故区間として判定する事故区間判定手段(15)とを備えてもよい。
前記事故区間判定手段が、前記入状態のラインスイッチがすべて切状態にされても前記継電手段が不動作にならない場合には、前記一方の母線本体において前記事故が発生したと判定してもよい。
前記継電手段が、前記一方および他方の母線にそれぞれ設置された2つのコンデンサ型計器用変圧器(PDa,PDb)から入力される該一方および他方の母線の各相2次電圧(VRa,VWa,VBa,VRb,VWb,VBb)が所定の整定値以下であるとそれぞれ動作する複数個の低電圧リレーであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の母線事故区間判定装置は、以下に示す効果を奏する。
(1)複母線のうち他方の母線の充電中に静電誘導によって一方の母線に発生する誘導電圧に基づいて事故が発生した区間を判定することにより、従来なされている試充電操作を回避することができるので、試充電不良による設備損傷の拡大と瞬時電圧低下などに伴う電力系統への悪影響の発生を防止することができるとともに、事故が発生した区間を早期に特定することができるので、供給支障および過負荷の早期解消を図ることができる。
(2)事故点への試充電回数の制約をなくすことができるので、作業員の負担軽減を図ることができる。
(3)停電母線の絶縁劣化の早期発見や停電作業完了時の乙アース外し忘れの防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記の目的を、停電母線に設置されたコンデンサ型計器用変圧器から入力される停電母線の各相2次電圧が所定の整定値以下であると動作する低電圧リレーが動作するとともに停電母線保護用の母線保護継電器が動作すると、停電母線側の入状態のラインスイッチを順番に切状態にし、低電圧リレーが動作から不動作になったときに切状態にされたラインスイッチの設置箇所の区間を事故発生区間として判定することにより実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の母線事故区間判定装置の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の一実施例による母線事故区間判定装置10は、複母線電気所で片側母線の充電中は静電誘導により停電母線に誘導電圧(たとえば、110kV母線では0.7〜1kVの誘導電圧)が発生するが、停電作業において乙アースを停電母線に取り付けると停電母線の電圧は0Vまたは0V近くの値になることに着目して、停電母線側の入状態のラインスイッチを順番に切状態にしていったときの停電母線の電圧の変化を検出することにより複母線の健全性および母線事故区間を判定することを特徴とする。
【0011】
そのため、母線事故区間判定装置10には、図1に示すように、甲母線1a保護用の母線保護継電器(不図示)からの第1の母線停電信号Taと、乙母線1b保護用の母線保護継電器(不図示)からの第2の母線停電信号Tbと、甲母線コンデンサ型計器用変圧器PDaからの甲母線赤相、白相および青相2次電圧VRa,VWa,VBaと、乙母線コンデンサ型計器用変圧器PDbからの乙母線赤相、白相および青相2次電圧VRb,VWb,VBbとが入力される。
また、母線事故区間判定装置10は、第1の母線停電信号Taがハイレベル(甲母線1a保護用の母線保護継電器が動作したことを示す)であり、かつ、甲母線赤相、白相および青相2次電圧VRa,VWa,VBaの少なくとも1つが設定電圧値以下であると、甲母線1a側のラインスイッチLS11a,LS12a,LS2a,LS3a,LS4a,LS5a,LS6aのうち入状態のラインスイッチLS11a,LS3a,LS5aを順番に切状態にするための第1のラインスイッチ制御信号Saを生成してこれらのラインスイッチLS11a,LS3a,LS5aを順番に切状態にしていき、これらのラインスイッチLS11a,LS3a,LS5aのうち甲母線赤相、白相および青相2次電圧VRa,VWa,VBaのすべてが設定電圧値よりも大きくなったときに切状態にされたラインスイッチの設置箇所の区間を母線事故区間として判定する。
同様に、母線事故区間判定装置10は、第2の母線停電信号Tbがハイレベル(乙母線1b保護用の母線保護継電器が動作したことを示す)であり、かつ、乙母線赤相、白相および青相2次電圧VRb,VWb,VBbの少なくとも1つが設定電圧値以下であると、乙母線1b側のラインスイッチLS11b,LS12b,LS2b,LS3b,LS4b,LS5b,LS6bのうち入状態のラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bを順番に切状態にするための第2のラインスイッチ制御信号Sbを生成してこれらのラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bを順番に切状態にしていき、これらのラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bのうち乙母線赤相、白相および青相2次電圧VRb,VWb,VBbのすべてが設定電圧値よりも大きくなったときに切状態にされたラインスイッチの設置箇所の区間を母線事故区間として判定する。
【0012】
なお、設定電圧値は、停電母線に発生する誘導電圧に甲母線コンデンサ型計器用変圧器PDaおよび乙母線コンデンサ型計器用変圧器PDbの変圧比(たとえば、1/1000)を掛けた値よりも小さく、かつ、0Vよりも大きい値(たとえば、上述した110kV母線の場合には0.5V)に設定される。
【0013】
これを実現するために、母線事故区間判定装置10は、図2に示すように、第1乃至第6の低電圧リレー111〜116と、第1および第2の論理和回路121,122と、第1および第2の論理積回路131,132と、制御信号生成部14と、事故区間判定部15とを具備する。
【0014】
ここで、第1の低電圧リレー111は、甲母線赤相2次電圧VRaが整定値(上述した設定電圧値と同様に設定される。)以下であると動作して、ハイレベルの出力信号を第1の論理和回路121に出力する。
第2の低電圧リレー112は、甲母線白相2次電圧VWaが整定値以下であると動作して、ハイレベルの出力信号を第1の論理和回路121に出力する。
第3の低電圧リレー113は、甲母線青相2次電圧VBaが整定値以下であると動作して、ハイレベルの出力信号を第1の論理和回路121に出力する。
第1の論理和回路121は、第1乃至第3の低電圧リレー111〜113の出力信号の論理和をとる。
第1の論理積回路131は、第1の論理和回路121の出力信号と第1の母線停電信号Taとの論理積をとる。
【0015】
第4の低電圧リレー114は、乙母線赤相2次電圧VRbが整定値以下であると動作して、ハイレベルの出力信号を第2の論理和回路122に出力する。
第5の低電圧リレー115は、乙母線白相2次電圧VWbが整定値以下であると動作して、ハイレベルの出力信号を第2の論理和回路122出力する。
第6の低電圧リレー116、乙母線青相2次電圧VBbが整定値以下であると動作して、ハイレベルの出力信号を第2の論理和回路122に出力する。
第2の論理和回路122は、第4乃至第6の低電圧リレー114〜116の出力信号の論理和をとる。
第2の論理積回路132は、第2の論理和回路122の出力信号と第2の母線停電信号Tbとの論理積をとる。
【0016】
制御信号生成部14は、第1の論理積回路131からハイレベルの出力信号が入力されると第1のラインスイッチ制御信号Saを生成して、生成した第1のラインスイッチ制御信号Saを甲母線1a側の入状態のラインスイッチLS11a,LS3a,S5aのうち切状態にするラインスイッチに出力するとともに、第2の論理積回路132からハイレベルの出力信号が入力されると第2のラインスイッチ制御信号Sbを生成して、生成した第2のラインスイッチ制御信号Sbを乙母線1b側の入状態のラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bのうち切状態にするラインスイッチに出力する。
【0017】
事故区間判定部15は、第1の論理積回路131の出力信号と制御信号生成部14から入力される第1のラインスイッチ制御信号Saとに基づいて、甲母線1aに発生した事故の区間(母線事故区間)を判定するとともに、第2の論理積回路132の出力信号と制御信号生成部14から入力される第2のラインスイッチ制御信号Sbとに基づいて、乙母線1bに発生した事故の区間(母線事故区間)を判定する。
すなわち、事故区間判定部15は、第1の論理積回路131の出力信号がハイレベルになると、第1のラインスイッチ制御信号Saに基づいてラインスイッチLS11a,LS3a,LS5aのうち入状態から切状態にされるラインスイッチを表すラインスイッチデータをメモリ(不図示)に記憶していき、第1の論理積回路131の出力信号がハイレベルからロウレベルになると、メモリに最後に記憶したラインスイッチデータによって表されるラインスイッチの設置箇所の区間を母線事故区間として判定する。なお、ラインスイッチLS11a,LS3a,LS5aがすべて入状態から切状態にされても第1の論理積回路131の出力信号がハイレベルのままである場合(すなわち、第1乃至第3の低電圧リレー111〜113がすべて不動作にならない場合)には、甲母線1a本体において事故が発生したと判定する。
同様に、事故区間判定部15は、第2の論理積回路132の出力信号がハイレベルになると、第2のラインスイッチ制御信号Sbに基づいてラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bのうち入状態から切状態にされるラインスイッチをメモリに記憶していき、第2の論理積回路132の出力信号がハイレベルからロウレベルになると、メモリに最後に記憶したラインスイッチの設置箇所の区間を母線事故区間として判定する。なお、ラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bがすべて入状態から切状態にされても第2の論理積回路132の出力信号がハイレベルのままである場合(すなわち、第4乃至第6の低電圧リレー114〜116がすべて不動作にならない場合)には、乙母線1b本体において事故が発生したと判定する。
【0018】
次に、図3に示すようにラインスイッチLS12bの設置箇所の区間において乙母線1bの赤相に地絡事故が発生した場合の母線事故区間判定装置10の動作について、図4も参照して説明する。
乙母線1bのラインスイッチLS12bの設置箇所の区間において乙母線1bの赤相に地絡事故が発生すると、乙母線1b保護用の母線保護継電器が動作して、ハイレベルの第2の母線停電信号Tbが母線連絡遮断器BTS、遮断器CB12、遮断器CB2、遮断器CB4および遮断器CB6に出力される。これにより、図3に示すように母線連絡遮断器BTS、遮断器CB12、遮断器CB2、遮断器CB4および遮断器CB6が遮断されて、同図に破線で示すように乙母線1bが停電される。
なお、ハイレベルの第2の母線停電信号Tbは、乙母線1b保護用の母線保護継電器から母線事故区間判定装置10の第2の論理積回路132にも出力される。
【0019】
また、乙母線1bが停電されても、乙母線1bの白相および青相には誘導電圧が発生するため、整定値よりも大きい乙母線白相および青相2次電圧VWb,VBbが乙母線コンデンサ型計器用変圧器PDbから母線事故区間判定装置10の第5および第6の低電圧リレー115,116に入力されるので、第5および第6の低電圧リレー115,116は不動作のままとなる。
一方、乙母線1bの赤相の電圧は地絡事故により0Vまたは0V近くの値となるため、整定値以下の乙母線赤相2次電圧VRbが第4の低電圧リレー114に入力されるので、第4の低電圧リレー114が動作する。
これにより、第4の低電圧リレー114のハイレベルの出力信号が第2の論理和回路122に入力されるため、第2の論理和回路122の出力信号はロウレベルからハイレベルになる。
【0020】
その結果、第2の論理和回路122のハイレベルの出力信号とハイレベルの第2の母線停電信号Tbとが第2の論理積回路132に入力されるため、第2の論理積回路132の出力信号はロウレベルからハイレベルになる。
【0021】
制御信号生成部14は、第2の論理積回路132からハイレベルの出力信号が入力されると、入状態のラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bのうちラインスイッチLS12bを切状態にするための第2のラインスイッチ制御信号Sbを生成して、生成した第2のラインスイッチ制御信号SbをこのラインスイッチLS12bおよび事故区間判定部15に出力する。
これにより、図4に示すようにラインスイッチLS12bが入状態から切状態にされるとともに、事故区間判定部15によってラインスイッチLS12bを表すラインスイッチデータがメモリに記憶される。
【0022】
ラインスイッチLS12bが入状態から切状態にされると、乙母線1bは事故点と切り離されるため、乙母線1bの赤相に誘導電圧が発生する。これにより、乙母線赤相2次電圧VRbは整定値よりも大きくなるため、第4の低電圧リレー114は不動作になる。その結果、第4乃至第6の低電圧リレー114〜116の出力電圧はすべてロウレベルになるため、第2の論理和回路122の出力信号はハイレベルからロウレベルとなるので、第2の論理積回路132の出力信号もハイレベルからロウレベルになる。
【0023】
事故区間判定部15は、第2の論理積回路132の出力信号がハイレベルからロウレベルになると、メモリに最後に記憶されたラインスイッチデータによって表わされるラインスイッチLS12bの設置箇所の区間を母線事故区間として判定する。
【0024】
次に、図5に示すようにラインスイッチLS4bの設置箇所の区間において乙母線1bの赤相に地絡事故が発生した場合の母線事故区間判定装置10の動作について説明する。
ラインスイッチLS4bの設置箇所の区間において乙母線1bの赤相に地絡事故が発生した場合には、上述したようにして母線事故区間判定装置10によってラインスイッチLS12bが先ず切状態にされる。しかし、ラインスイッチLS12bが切状態にされても乙母線1bは事故点と切り離されないため、乙母線赤相2次電圧VRbは0Vまたは0V近くの値のままとなるので、第4の停電圧リレー114が動作したままとなり、第2の論理積回路132の出力信号はハイレベルのままとなる。
【0025】
その結果、制御信号生成部14は、続いて入状態のラインスイッチLS2bを切状態にするための第2のラインスイッチ制御信号Sbを生成して、生成した第2のラインスイッチ制御信号SbをこのラインスイッチLS2bおよび事故区間判定部15に出力する。
これにより、ラインスイッチLS2bが入状態から切状態にされるとともに、事故区間判定部15によってラインスイッチLS2bを表すラインスイッチデータがメモリに記憶される。
【0026】
しかし、ラインスイッチLS2bが切状態にされても乙母線1bは事故点と切り離されないため、乙母線赤相2次電圧VRbは0Vまたは0V近くの値のままとなるので、第4の停電圧リレー114が動作したままとなり、第2の論理積回路132の出力信号はハイレベルのままとなる。
【0027】
その結果、制御信号生成部14は、続いて入状態のラインスイッチLS4bを切状態にするための第2のラインスイッチ制御信号Sbを生成して、生成した第2のラインスイッチ制御信号SbをこのラインスイッチLS4bおよび事故区間判定部15に出力する。
これにより、ラインスイッチLS4bが入状態から切状態にされるとともに、事故区間判定部15によってラインスイッチLS4bを表すラインスイッチデータがメモリに記憶される。
【0028】
ラインスイッチLS4bが入状態から切状態にされると、乙母線1bは事故点と切り離されるため、乙母線1bの赤相に誘導電圧が発生する。これにより、乙母線赤相2次電圧VRbは整定値よりも大きくなるため、第4の低電圧リレー114は不動作になる。その結果、第4乃至第6の低電圧リレー114〜116の出力電圧はすべてロウレベルになるため、第2の論理和回路122の出力信号はハイレベルからロウレベルとなるので、第2の論理積回路132の出力信号もハイレベルからロウレベルになる。
【0029】
事故区間判定部15は、第2の論理積回路132の出力信号がハイレベルからロウレベルになると、メモリに最後に記憶されたラインスイッチデータによって表わされるラインスイッチLS4bの設置箇所の区間を母線事故区間として判定する。
【0030】
次に、図6に示すように乙母線1b本体の赤相に地絡事故が発生した場合の母線事故区間判定装置10の動作について説明する。
乙母線1b本体の赤相に地絡事故が発生した場合には、上述したようにして母線事故区間判定装置10によって入状態のラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bが順番に切状態にされるとともに、事故区間判定部15によってラインスイッチLS6bを表すラインスイッチデータがメモリに最後に記憶される。しかし、ラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bがすべて切状態にされても乙母線1bは事故点と切り離されないため、乙母線赤相2次電圧VRbは0Vまたは0V近くの値のままとなるので、第4の停電圧リレー114が動作したままとなり、第2の論理積回路132の出力信号はハイレベルのままとなる。
【0031】
その結果、制御信号生成部14は、ラインスイッチLS6bを切状態するための第2のラインスイッチ制御信号Sbを事故区間判定部15に出力し続ける。
事故区間判定部15は、入状態のラインスイッチLS12b,LS2b,LS4b,LS6bのすべてが切状態にされても第2の論理積回路132の出力信号がハイレベルのままである場合には、乙母線1b本体に地絡事故が発生したと判定する。
【0032】
以上説明したように、母線事故区間判定装置10を使用することにより、乙母線1bを停電させたまま母線事故区間を早期に特定することができるので、供給支障および過負荷の早期解消を図ることができるとともに、試充電操作を回避することによる設備損傷の拡大と瞬時電圧低下などに伴う電力系統への悪影響の発生を防止することができる。
また、乙母線1b(停電母線)のメガー測定をすることなく、母線事故区間の判定ができるので、安全・迅速な事故復旧が可能となる。
その他、停電作業完了時の乙アース外し忘れの防止を図ることができる。
【0033】
以上では、乙母線1bの赤相に地絡事故が発生した場合を例にして説明したが、甲母線1aまたは乙母線1bの白相または青相に地絡事故が発生した場合にも、本発明による母線事故区間判定装置を使用することにより母線事故区間を早期に特定することができる。
【0034】
また、甲母線1aまたは乙母線1bに2線地絡短絡事故が発生した場合には甲母線1aまたは乙母線1bの赤相、白相および青相のうち2つの事故相の電圧は0Vまたは0V近くの値になるので、本発明による母線事故区間判定装置を使用することにより母線事故区間を早期に特定することができる。同様に、甲母線1aまたは乙母線1bに3線地絡短絡事故が発生した場合には甲母線1aまたは乙母線1bの赤相、白相および青相の電圧は0Vまたは0V近くの値になるので、本発明による母線事故区間判定装置を使用することにより母線事故区間を早期に特定することができる。
【0035】
さらに、母線事故区間判定装置10の第1および第2の論理積回路131,132の出力信号を遠隔監視制御装置へ伝送して、第1の論理積回路131の出力信号がハイレベルのときには「甲母線 誘導電圧なし」または「甲母線 事故継続中」を遠隔監視制御装置の電気所表示装置に画面表示し、第2の論理積回路132の出力信号がハイレベルのときには「乙母線 誘導電圧なし」または「乙母線 事故継続中」を遠隔監視制御装置の電気所表示装置に画面表示してもよい。これにより、監視員は、遠隔監視制御装置の電気所表示装置に表示された情報を試充電実施可否の判断要素にすることができる。
【0036】
さらに、第1乃至第6の低電圧リレー111〜116の検出感度を上げれば、同一構内で充電された母線などによる誘導電圧の発生により単母線および常時片母線停電の母線の事故点探索にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施例による母線事故区間判定装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した母線事故区間判定装置10の構成を示すブロック図である。
【図3】乙母線1bのラインスイッチLS12bの設置箇所の区間において地絡事故が発生した場合の図2に示した母線事故区間判定装置10の動作について説明するための図である。
【図4】乙母線1bのラインスイッチLS12bの設置箇所の区間において地絡事故が発生した場合の図2に示した母線事故区間判定装置10の動作について説明するための図である。
【図5】乙母線1bのラインスイッチLS4bの設置箇所の区間において地絡事故が発生した場合の図2に示した母線事故区間判定装置10の動作について説明するための図である。
【図6】乙母線1b本体において地絡事故が発生した場合の図2に示した母線事故区間判定装置10の動作について説明するための図である。
【図7】母線保護継電器が設置されている複母線電気所において母線事故が発生したときの従来の対処方法について説明するための図である。
【図8】母線保護継電器が設置されている複母線電気所において母線事故が発生したときの従来の対処方法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
a 甲母線
b 乙母線
1〜23 第1乃至第3の変圧器
10 母線事故区間判定装置
111〜116 第1乃至第6の低電圧リレー
121,122 第1および第2の論理和回路
131,132 第1および第2の論理積回路
14 制御信号生成部
15 事故区間判定部
1L,2L 第1および第2の送電線
BTS 母線連絡遮断器
CB11,CB12,CB2,CB3,CB4,CB5,CB6 遮断器
DS11,DS12,DS2,DS3 断路器
LS11a,LS11b,LS12a,LS12b,LS2a,LS2b,LS3a,LS3b,LS4a,LS4b,LS5a,LS5b,LS6a,LS6b ラインスイッチ
PDa 甲母線コンデンサ型計器用変圧器
PDb 乙母線コンデンサ型計器用変圧器
Ra,VWa,VBa 甲母線赤相、白相および青相2次電圧
Rb,VWb,VBb 乙母線赤相、白相および青相2次電圧
a,Sb 第1および第2のラインスイッチ制御信号
a,Tb 第1および第2の母線停電信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複母線(1a,1b)のうち一方の母線で事故が発生した母線事故区間を判定するための母線事故区間判定装置(10)であって、前記複母線のうち他方の母線の充電中に静電誘導によって前記一方の母線に発生する誘導電圧に基づいて前記複母線の健全性および前記母線事故区間を判定する母線事故区間判定手段を具備することを特徴とする、母線事故区間判定装置。
【請求項2】
前記母線事故区間判定手段が、
前記誘導電圧が所定の電圧値以下であると動作する継電手段(111〜116)と、
該継電手段が動作し、かつ、前記一方の母線を保護するための母線保護継電器が動作すると、前記複母線に設置された複数個のラインスイッチ(LS11a,LS11b,LS12a,LS12b,LS2a,LS2b,LS3a,LS3b,LS4a,LS4b,LS5a,LS5b,LS6a,LS6b)のうち該一方の母線側の入状態のラインスイッチ(LS11a,LS3a,LS5a;LS12b,LS2b,LS4b,LS6b)を順番に切状態にするラインスイッチ制御手段(121,122,131,132,14)と、
前記継電手段が動作から不動作になったときに切状態にされたラインスイッチの設置箇所の区間を前記母線事故区間として判定する事故区間判定手段(15)と、
を備えることを特徴とする、請求項1記載の母線事故区間判定装置。
【請求項3】
前記事故区間判定手段が、前記入状態のラインスイッチがすべて切状態にされても前記継電手段が不動作にならない場合には、前記一方の母線本体において前記事故が発生したと判定することを特徴とする、請求項2記載の母線事故区間判定装置。
【請求項4】
前記継電手段が、前記一方および他方の母線にそれぞれ設置された2つのコンデンサ型計器用変圧器(PDa,PDb)から入力される該一方および他方の母線の各相2次電圧(VRa,VWa,VBa,VRb,VWb,VBb)が所定の整定値以下であるとそれぞれ動作する複数個の低電圧リレーであることを特徴とする、請求項2または3記載の母線事故区間判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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