説明

毛髪保持具

【課題】筒状体を安定的に毛髪束に固定可能であり、また、筒状体に注入した染毛剤を毛髪束に塗り拡げる際に、染毛剤が筒状体から漏れ出しにくい毛髪保持具を提供すること。
【解決手段】本発明の毛髪保持具1は、一端の開口部21から他端の開口部22に向けて毛髪束Hを挿入通可能なように構成された筒状体2を有し、筒状体2内に毛髪処理剤を注入して、該筒状体2の内部で該毛髪束Hに対して毛髪処理を施すことができるになされている。また、筒状体2の、前記一端の開口部21の近傍における内面側に、毛髪束Hに押し付けられたときに漏出防止作用を発現する毛髪処理剤漏出防止部材4,4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量の毛髪を、染毛処理等の毛髪処理をすることのできる毛髪保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定量の毛髪を、染毛又はパーマ等することのできる筒状体から構成される毛髪保持具が知られている。この種の毛髪保持具は、可撓性の筒状体から構成されており、該筒状体における一方の端部から、毛髪束が該筒状体内へ挿入されるようになされている。例えば、毛髪束の染毛を行う際には、筒状体の内部に染毛剤を注入し、筒状体の内部で染毛剤が毛髪束に塗布される。
【0003】
筒状体の形成材料として、染毛剤に対して、非透過性の材料を用いることにより、毛髪保持具に挿入されている毛髪以外の毛髪が染毛されることが防止されるので、毛髪の部分的な染毛に効果的である。
【0004】
また、毛髪束が挿入されている一方の端部とは反対側の他方の端部から、染毛剤が筒状体の内部に注入される場合がある。この場合の染毛剤は、他方の端部側から一方の端部へ向かって筒状体をしごいて、毛髪束に塗り広げられる。
【0005】
前述したような筒状体から構成される毛髪保持具として、例えば、本出願人は、先に特許文献1において、一端部に毛髪取り込み口を有する細長形状の可撓性材料からなる扁平形状の筒状体から構成されており、該筒状体に保持された毛髪を所定の形状に巻き上げ、湾曲又は屈曲させる巻き上げ手段が備えられている毛髪保持具を提案している。
【0006】
また、特許文献2には、一端の開口部から他端の開口部に向けて毛髪束を挿入可能な筒状体から構成されており、該筒状体は柔軟な材料から形成されている毛髪保持具が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−93133号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004−216759号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の毛髪保持具においては、頭髪の一部を筒状体に挿入した状態で、巻き上げ手段を操作することにより、筒状体とその内部に挿入された毛髪束とが一体的に変形し、それにより、毛髪保持具が毛髪束に固定される。しかし、筒状体内部の毛髪束に毛髪保持具を固定するのみでは、毛髪処理の操作中に、筒状体が毛髪束の当初の固定位置からずり落ちる場合がある。例えば、巻き上げ手段で毛髪束を充分に巻き上げない状態等においては、ずり落ちが生じやすい。
また、一方の端部から筒状体の内部に挿入した毛髪束に、他端の端部から注入した染毛剤を、筒状体をしごいて塗り拡げるときに、一方の端部から毛髪処理剤が漏れ出てしまうおそれがある。
また、毛髪保持具の上から強力なクリップ等を使用して毛髪を抑え付けることにより、上記課題を解決することもできるが、毛髪処理剤により膨潤した毛髪にこのような力を加えると毛髪にダメージを与える原因となり好ましくない。
【0009】
また、特許文献2に記載の毛髪保持具は、毛髪処理剤を新たに筒状体の内部に供給する必要はないものの、毛髪処理剤と毛髪束とをなじませるために、筒状体をしごく際に、毛髪処理剤が漏れ出てしまうおそれがある。
【0010】
従って、本発明の目的は、筒状体を安定的に毛髪束に固定可能であり、また、筒状体に注入した毛髪処理剤を毛髪束に塗り拡げる際に、毛髪処理剤が筒状体から漏れ出しにくい毛髪保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一端の開口部から他端の開口部に向けて毛髪束を挿入可能なように構成された筒状体を有し、該筒状体内に毛髪処理剤を注入して、該筒状体の内部で該毛髪束に対して毛髪処理を施すことができるようになされている毛髪保持具であって、前記筒状体の、前記一端の開口部の近傍における内面側に、毛髪束に押し付けられたときに漏出防止作用を発現する毛髪処理剤漏出防止部材が設けられている毛髪保持具を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の毛髪保持具は、筒状体を安定的に毛髪束に固定可能であり、また、筒状体に注入した毛髪処理剤を毛髪束に塗り拡げる際に、毛髪処理剤が筒状体から漏れ出しにくい。
更に本発明によれば、毛髪処理剤漏出防止部材によって、毛髪保持具を毛髪束に固定する際の毛髪束にかかる負担を少なくすることができ、結果的に毛髪に与えるダメージも少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の一実施形態である毛髪保持具1は、図1〜図3に示すように、一端の開口部21から他端の開口部22に向けて毛髪束Hを挿入可能なようにシート23、23により構成された筒状体2を有している。そして、毛髪保持具1は、筒状体2内に毛髪処理剤として染毛剤を注入して、該筒状体2の内部で、該毛髪束Hに対して染毛処理を施すことができるになされている。尚、本発明にいう染毛剤には、染毛剤の他に、脱色剤も含まれる。
そして、筒状体2の、前記一端の開口部21の近傍における内面側に、毛髪束Hに押し付けられたときに該毛髪束Hの表面の凹凸形状に沿うように変形可能な毛髪処理剤漏出防止部材4,4が設けられている。図4に、毛髪処理剤漏出防止部材4が、毛髪束Hの表面の凹凸形状に沿うように変形した状態の典型を示した。図4中、hは個々の毛髪の断面を示している。
【0014】
第1実施形態の毛髪保持具1について以下に詳述する。
筒状体2は、図1に示すように、縦長であり、一端の開口部21から他端の開口部22に向けて毛髪束Hを挿入可能なように構成されている。また、筒状体2は、一対の縦長矩形状のシート23、23により構成されている。一対のシート23、23は、筒状体2の長手方向の側端部24a,24bにおいて、それぞれの側端部同士が接合されて扁平形状の筒状体とされている。一対のシート23、23それぞれは、柔軟であり、筒状体2は可撓性を有している。
【0015】
筒状体2の長さは、処理すべき毛髪の長さに応じて適切な長さとされ、好ましくは処理すべき毛髪の長さよりも長くなっている。また、筒状体2の開口部21、22の形状は、自然状態において細長い長円形状であり、その大きさは、挿入する毛髪束の量に応じて適切な大きさとされる。
一般に、筒状体2の長さは50〜600mm程度であり、開口部21,22の大きさは、筒状体2の相対向する一方の面側Fと他方の面側Rとを密着状態として測定した、該筒状体2の一方の側端部24aから他方の側端部24bまでの距離W〔図2(a)参照〕が、5〜100mm程度である。前記距離Wは、開口部21,22それぞれの内面側の周長の1/2の長さに等しい。
【0016】
一対のシート23、23は、染毛剤に対して、非透過性の材料から形成されており、染毛剤が筒状体2の側面から外に漏れ出すことはない。その結果、毛髪保持具1に挿入されている毛髪束以外の毛髪が染毛されることが防止される。従って、本実施形態の毛髪保持具1を用いた染毛処理は、頭部における毛髪の部分的な染毛に適している。
【0017】
また、染毛剤は、毛髪保持具1内に比較的気密状態で存在することになるので、染毛剤に揮発成分が含まれている場合には、染毛中に該揮発成分が揮発することが防止され、染毛処理を効率的に行えるという利点もある。
【0018】
前述した一対のシート23、23の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートといったポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、塩化ビニル等の合成樹脂単体で製造されたフィルム、あるいは前記フィルムを多層にラミネートした合成樹脂フィルム等が好ましく用いられる。
【0019】
本実施形態の毛髪保持具1における毛髪処理剤漏出防止部材4は不織布からなる。
本実施形態における筒状体2においては、図2(c)に示すように、一端の開口部21の近傍が、相対向する一方の面側Fと他方の面側Rの何れにおいても、染毛剤に対して非透過性であるシート23と、2つ折りされて該シート23の内外両面に積層され、該シート23に部分的に接合された矩形状の不織布41とから構成されている。
本実施形態における毛髪処理剤漏出防止部材4は、この不織布41における、シート23の内面側(筒状体内面側)に位置する部分41a(以下、内面側部分41aともいう)から構成されている。
【0020】
不織布41は、シート23と略同じ幅を有しており、毛髪処理剤漏出防止部材4を構成する、不織布41の内面側部分41aは、該部分41aにおける、開口部21の開口端側の一端寄りの図2(c)中に符号51で示す部位と、他端寄りの図2(c)中に符号52で示す部位52とにおいてシート23にヒートシールによって接合されている。また、不織布41の内面側部分41aの両側端部は、筒状体2の両側端部24a,24bにおいて、シート23、23同士間にヒートシールによって接合されている。不織布41における、シート23の外面側に位置する部分41b(以下、外面側部分41bともいう)は、上述した符号52で示す部位及び筒状体2の両側端部24a,24bにおいて、該シート23にヒートシールによって接合されている。
【0021】
本実施形態の毛髪保持具1は、図3に示すように、筒状体2の一端の開口部21から毛髪束Hを挿入し、その状態で、筒状体2における、毛髪処理剤漏出防止部材4,4が設けられた部分Pをクリップ型固定具3等の固定具で挟んで、該毛髪束Hに固定して使用される。固定具により固定した際に、毛髪束Hに、その両側から毛髪処理剤漏出防止部材4が押し付けられるが、不織布からなる毛髪処理剤漏出防止部材4は、該毛髪束に押し付けられる面の表面が、図4に示すように、毛髪束の表面の凹凸形状に沿うように変形する。即ち、毛髪束を構成する個々の毛髪によって該毛髪束の表面に形成される細かい凹凸の形状に沿うように変形する。
これにより、毛髪処理剤漏出防止部材4と毛髪束Hとの間に大きな摩擦抵抗が生じ、そのため、毛髪束Hに固定した筒状体2がずりおちにくく、そのため、筒状体2が毛髪束Hに安定的に固定される。
【0022】
また、毛髪保持具1を毛髪束Hに固定した状態において、筒状体2の他端の開口部22から染毛剤を注入し、注入した染毛剤を、例えば他端の開口部22から一端の開口部21の方向へと筒状体2を手の指でしごいて塗り広げたりするときに、毛髪処理剤漏出防止部材4が開口部21の近傍に設けられていることによって、染毛剤が一端の開口部21から漏れ出すことが効果的に防止される。
【0023】
毛髪処理剤漏出防止部材4は、毛髪束Hと接触する面が、細かい凹凸を有する毛髪束Hの表面形状に沿って変形するようにする観点から、荷重3.7g/cm2下における厚みT1と、荷重204g/cm2下における厚みT2との厚み差(T1−T2)が、一般的な毛髪の太さとされる0.1mmの半分である0.05mm以上であることが好ましく、0.1〜0.5mmであることがより好ましい。また、同様の観点、及びコストや生産性の観点から、前記厚みT1は、0.3〜2mm、特に0.4〜1mmであることが好ましい。
荷重3.7g/cm2という荷重値は、低荷重下での測定条件であり、軟らかい対象物を安定して厚み測定するために定義した荷重である。
荷重204g/cm2という荷重値は、高荷重下での測定条件であり、毛髪保持具を毛髪束にズレ落ちないよう固定する、好ましい固定力を達成するための目安となる荷重である。
【0024】
厚み差(T1−T2)が一般的な毛髪の太さとされる0.1mmの半分以上であれば、当該毛髪処理剤漏出防止部材と相対する毛髪処理剤漏出防止部材(例えば図2(c)に示すF側の部材に対するR側の部材のこと)とが毛髪の外周を囲むことができ染毛剤の漏れを防止することができる。実際には、毛髪束の乱れ等により毛髪の外周を毛髪処理剤漏出防止部材で完全に囲むことができなくても、染毛剤の粘度と毛髪と毛髪処理剤漏出防止部材との隙間との関係が、毛髪保持具をしごく時に染毛剤がもれない程度で良い。
【0025】
厚みT1及び厚みT2は、以下のようにして測定する。
即ち、毛髪処理剤漏出防止部材4から、約3×3cmの試験片を切り出し、先端が平面のダイヤルゲージを使用して、それぞれ荷重3.7g/cm2、204g/cm2下で厚みを測定する。
【0026】
また、毛髪処理剤漏出防止部材4は、本実施形態におけるように、毛髪処理剤、特に染毛剤を含浸保持可能な多孔性材料からなることが好ましい。毛髪処理剤を含浸保持可能な多孔性材料を用いると、余分な毛髪処理剤が該多孔性材料に保持されるので、漏出しにくくなる効果を得ることができる。
なお、本願でいう多孔性材料とは、毛細管現象を生ずる構造を有する材料のことを指し、以下に例示する、不織布といった繊維状物の他、スポンジ状物等が該当する。
【0027】
染毛剤(毛髪処理剤)を含浸保持可能な多孔性材料としては、本実施形態で用いた不織布の他に、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリウレタン、合成ゴム系の材料から製造されるスポンジ等を用いることができる。これらの中でも好ましいのは不織布である。不織布としては、各種製法による不織布を用いることができ、例えばエアスルー不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布などを用いることができる。これらの不織布の中でも、毛髪束Hの横断面形状に対する追従変形性の点から、スパンレース、エアスルー、スパンボンド等を用いることが好ましい。
【0028】
不織布を構成する繊維材料としては、セルロース系繊維、変性セルロース繊維、合成繊維及びこれらの二種以上の混合物などを用いることができる。セルロース系繊維としては、例えば木材系パルプや綿、麻等の天然繊維、テンセル、ビスコースレーヨンやアセテート等のセルロース系化学繊維が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維及びこれらの合成繊維の少なくとも二種を芯鞘型等に複合化した繊維、並びにこれらの合成繊維の少なくとも二種を混合した繊維等が挙げられる。
【0029】
また、毛髪処理剤漏出防止部材4は、厚み方向の加圧圧縮に対して弾性回復性を有するものが好ましい。
【0030】
本実施形態の毛髪保持具1は、筒状体2における、毛髪処理剤漏出防止部材4,4が設けられた部分Pを挟むことができる固定具と組み合わせて使用することが好ましい。このような固定具としては、クリップ型固定具を用いることが好ましい。
【0031】
クリップ型固定具3は、例えば図5に示すクリップ型固定具3のように、一対の挟持部31,32がそれぞれの一端部において結合されており、一対の挟持部31,32間に毛髪束を挟んで、該毛髪束に固定することができるものである。
図5に示すクリップ型固定具3は、一対の挟持部31,32が支軸33で回動可能に結合されており、且つ支軸33に設けられたバネ(図示せず)により一対の挟持部31,32間が閉じる方向に付勢されているものである。このようなクリップ型固定具3は、一対の挟持部31,32それぞれの一端部に連続して形成された摘み部34,35を手で摘んだり手を離したりするという簡単な操作により一対の挟持部31,32間を開閉できる。
クリップ型固定具としては、摘み部34,35を有しないものを用いることもできる。例えば、バネ弾性を有する金属からなる一対の挟持部31,32がそれぞれの一端部において積層されて結合されており、一対の挟持部31,32を一体的に反らせることにより、両者間が開き、反対側に反らせることにより、両者間を閉鎖できるもの等を用いることができる。
【0032】
クリップ型固定具としては、図6に示すようなクリップ型固定具3’を用いることもできる。クリップ型固定具3’は、合成樹脂から形成されており、一対の挟持部31,32がヒンジ部分36を介して互いに連結された構造を有している。クリップ型固定具3’は、一方の挟持部32に開口部32a又は凹部を有し、他方の挟持部31に、両挟持部31,32間に挟んだものを前記開口部32a又は前記凹部に押し込むための凸部31aを有している。図6に示すクリップ型固定具3’における開口部32a又は凹部は、挟持部32の長手方向に長い長方形状を有しており、前記凸部31aは、該開口部32a又は凹部の寸法よりやや小さい寸法を有している。
クリップ型固定具3’は、一対の挟持部31,32間に、毛髪保持具1の染毛剤漏出防止部材4,4が設けられた部分Pを挟み、その状態を、ヒンジ部分36とは反対側に設けられたロック機構31b、32bにより維持して使用することができる。
【0033】
クリップ型固定具3等の固定具の形成材料としては、従来公知の各種ヘアクリップと同様の材料を用いることができるが、特に染毛剤による腐食、変色等の化学反応を起さないものが好ましい。この種の材料としては、例えばポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレン等の合成樹脂材料等が好ましい。また、染毛剤による腐食、変色等の化学反応を有する材料であっても、その表面に該染毛剤に対して化学的に不活性な樹脂又は金属等を被覆してあるものも好ましく用いることができる。
【0034】
本発明で用いる固定具は、筒状体2を挟んで、該筒状体2に設けられた毛髪処理剤漏出防止部材4を充分に毛髪束Hに押し付けられるものであることが、毛髪保持具の固定及び染毛剤の漏れ出し防止の点で好ましい。このような観点から、固定具は、0.4N以上の固定力、特に0.5〜3.0Nの固定力を付与可能であるものが好ましい。
ここでいう固定力は、以下のようにして測定される。
固定具で30mm×200mm角、厚み80μmのLDPE(低密度ポリエチレン)フィルムを挟み込み、その状態でフィルムを長手方向に引き抜くときの最大荷重を固定力とした。また、測定はプッシュプルゲージ(株式会社 イマダ製)を使用した。
【0035】
筒状体2と併用されるクリップ型固定具3は、筒状体の毛髪束への確実な固定や、染毛剤等の開口部21からの漏れ出し防止の観点から、一対の挟持部31,32それぞれの長さが、筒状体2の両側縁端24a,24b間の前記距離Wの100%以上の長さであることが好ましく、前記距離Wの100〜150%の長さであることがより好ましい
また、筒状体2の長手方向において、毛髪処理剤漏出防止部材4を設ける部位は、前記一端の開口部の近傍における内面側であり、前記一端の開口部21の開口端から毛髪処理剤漏出防止部材4までの距離が0〜50mmであることが好ましく、より好ましくは0〜30mm、更に好ましくは0〜10mmであり、該開口端から毛髪処理剤漏出防止部材4の最も遠い部分までの距離が5〜110mmであることが好ましく、より好ましくは20〜60mmである。
また、毛髪処理剤漏出防止部材4は、長手方向の長さが5〜60mmであることが好ましく、より好ましくは20〜40mm程度である。
【0036】
本実施形態の毛髪保持具1について、更に説明すると、筒状体2の他端の開口部22の近傍には、筒状体2の内部に注入された染毛剤が、他端の開口部22から流れ出ることを防止するために、開閉自在の封止手段26が設けられている。
本実施形態における封止手段26は、筒状体2の一方の面側Fのシート23の外面に接合された、塑性変形し且つその変形形態を維持可能なシート状の部材である。シート状の部材としては、アルミ箔のような金属製シート等が好ましく用いられる。筒状体2における、該シート状の部材26が接合された部分を上方に向けて一回又は複数回折り畳むことにより、筒状体2の開口部22を開閉自在に封鎖することができる。
開口部22を開閉自在に封止可能な他の封止手段としては、チャック等を用いることができる。チャックが設けられることにより、他端の開口部22の開閉が行なえる。また、封止手段としては、機械的面ファスナー、粘着テープ、自己接着性テープ〔例えば仁礼工業製のふしぎテープ(商品名)〕などを用いることもできる。
【0037】
本実施形態の毛髪保持具1は、染毛処理をする際に、毛髪束Hを一端の開口部21から筒状体2の内部へ挿入するために、毛髪挿入具を用いることも好ましい。毛髪挿入具は、長手方向の一端部に毛髪束Hを係止するための係止部を有し、他端部に把持部を有しており、予め又は使用に際して、筒状体に挿入され、且つ該筒状体の一端の開口部から前記係止部が延出し、筒状体の他端の開口部から前記把持部が延出した状態とされて用いられるものが好ましい。このような毛髪挿入具としては、例えば、前述した特開平2003−93133号公報又は米国特許出願公開第2004−216759号の明細書等に記載のものが挙げられる。
【0038】
次に、前述した毛髪保持具1と上記の好ましい毛髪挿入具とを用いた染毛処理の一例について説明する。染毛する際に用いる毛髪保持具1における筒状体2の長さは、毛髪束Hの長さよりも長いものを用いることが、毛髪束H全体を染毛する上で好ましい。
【0039】
毛髪挿入具の係止部が一端の開口部21から延出し、把持部が他端の開口部22から延出した状態の毛髪保持具1を用意する。
【0040】
そして、毛髪挿入具の係止部に毛髪束Hを係止する。この際、毛髪束Hの頭皮に近い部分を係止部に係止することが好ましい。次に、係止部に毛髪束Hを係止した状態で、把持部を引っ張り、毛髪束Hを筒状体2の内部に挿入する。毛髪束Hは、筒状体2の内部で、図3に示すように、概ね直線状に伸ばされた状態となる。
そして、筒状体2の開口部21が毛髪束Hの適切な位置にあることを確認したのち、クリップ型固定具3を用いて、筒状体2の毛髪処理剤漏出防止部材4が設けられた部分を挟むことによって、該筒状体2を毛髪束Hに固定する。
【0041】
そして、毛髪保持具1を毛髪束Hに固定した状態において、図7(a)に示すように、内部に染毛剤が納められた染毛剤容器Q等を用いて、筒状体2の他端の開口部22から、所定量の液状の染毛剤を筒状体2の内部に注入する。次に、図7(b)に示すように、毛髪保持具1の他端の開口部22の近傍を両手で摘み、一方の手はそのまま摘んだ状態で、図7(c)に示すように、他端の開口部22から一端の開口部21へ向けて、筒状体2の両面を他方の手の指でしごき、染毛剤を毛髪束Hに塗り広げる。必要に応じて、他端の開口部22を、封止手段26を用いて封止する。
【0042】
所望により複数の毛髪保持具を用いて同様の操作を繰り返し、所定時間放置する。
放置後、筒状体2からクリップ型固定具3を取り外し、毛髪束Hを毛髪保持具1から取り出す。そして、すすぎ洗いをし、更に所望によりシャンプー及びブローを行う。
【0043】
本発明の毛髪保持具は、前述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、筒状体2の相対向する一方の面側Fと他方の面側Rとに毛髪処理剤漏出防止部材4を設けるのに代えて、一方の側にのみ毛髪処理剤漏出防止部材4を設けることもできる。また、相対向する一方の面側Fと他方の面側Rとのそれぞれに、図8に示すように、毛髪処理剤漏出防止部材4、4を、筒状体2の長手方向に相互に離間させて複数設けることもできる。また、毛髪処理剤漏出防止部材は、天然ゴム、合成ゴム等の弾性材料からなるものであっても良い。毛髪処理剤漏出防止部材4をシート23に固定する方法は、ヒートシールに代えて、超音波シール、インパルスシール、接着剤、両面テープ等を用いても良い。
【0044】
また、本発明の毛髪保持具を用いて、ストレートパーマネント処理を行うことも好ましい。例えば、ストレートパーマネント処理を行う場合には、毛髪処理剤としてのパーマネント処理液を毛髪に塗布する必要がある。この場合には、筒状体2を形成する一対のシート23,23の内の一方又は双方として、パーマネント処理液が透過する材料を用いることが好ましい。パーマネント処理を施す部位の毛髪束Hを、毛髪保持具1内に保持した後に、毛髪保持具1の外側から、パーマネント処理液を供給し、該パーマネント処理液が前記シートを透過して、毛髪束に塗布されるため、パーマネント処理を効率的に行なうことが可能となる。
【0045】
前述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお本発明は、本実施例により何ら制限されない。
【0047】
〔実施例1〕
下記材質の毛髪処理剤漏出防止部材を用いて、図1〜図3に示す形態の毛髪保持具を作成した。筒状体の長さは400mmとし、筒状体の一方の側端部から他方の側端部までの距離Wは30mmとした。また、一対のシート23,23の材質は低密度ポリエチレンとした。
〔毛髪処理剤漏出防止部材の材質〕
芯鞘構造の繊維を使用した2成分のスパンボンド不織布
芯部:ポリエステル、鞘部:ポリエチレン、坪量:40g/m2、花王株式会社製
荷重3.7g/cm2下における厚みT1:0.56mm
荷重204g/cm2下における厚みT2:0.27mm
T1とT2との厚み差:0.29mm
【0048】
作成した毛髪保持具について、下記の試験手順に従って評価試験を行い、毛髪保持具の一端の開口部からの染毛剤の漏れ出しの有無及び毛髪保持具のズレの有無を下記のように評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
〔試験手順〕
(1)長さ約250mmの毛髪束(約1000本)を、筒状体2の一端の開口部21から他端の開口部22に向けて挿入する。
(2)図3に示す様に、毛髪処理剤漏出防止部材が設けられている部分Pを図5に示すクリップ型固定具で挟んで、毛髪保持具を毛髪束に固定する(固定力:1N)。
(3)毛髪保持具の他端の開口部から染毛剤を5g注入する。
(4)注入した染毛剤を他端の開口部から一端の開口部の方向へ毛髪保持具を手の指でしごいて塗り広げる。
【0050】
〔染毛剤の漏れ出し有無の評価〕
染毛剤を塗り広げた後に、毛髪保持具の一端の開口部から染毛剤が漏れ出し状態を目視で確認する。漏れ出しの有無は目視で確認できる程度の漏れ出し量(数mg前後以上)で判断する。
【0051】
〔毛髪保持具のズレ有無の評価〕
上記の実験中に毛髪保持具のズレが発生するかを目視で確認する。ズレ発生の有無は目視で確認できる程度のズレ量(1mm前後以上)で判断する。
【0052】
〔実施例2〕
毛髪処理剤漏出防止部材の材質を以下の通りに変更しその他は実施例1と同様にして各評価を行った。その結果を表1に示した。
〔毛髪処理剤漏出防止部材の材質〕
無架橋高発泡ポリエチレンシート
酒井化学工業株式会社製、商品名:ミナフォーム
荷重3.7g/cm2下における厚みT1:0.52mm
荷重204g/cm2下における厚みT2:0.4mm
T1とT2との厚み差:0.12mm
【0053】
〔比較例1〕
毛髪処理剤漏出防止部材の材質を以下の通りに変更しその他は実施例1と同様にして各評価を行った。その結果を表1に示した。
〔毛髪処理剤漏出防止部材の材質〕
低密度ポリエチレンフィルム(公称厚み:40μm)
荷重3.7g/cm2下における厚みT1:0.04mm
荷重204g/cm2下における厚みT2:0.036mm
T1とT2との厚み差:0.004mm
【0054】
〔比較例2〕
毛髪処理剤漏出防止部材の材質を以下の通りに変更しその他は実施例1と同様にして各評価を行った。その結果を表1に示した。
〔毛髪処理剤漏出防止部材の材質〕
ポリエステル繊維を使用したスパンボンド不織布
坪量:250g/m2、旭化成株式会社製、商品名:エルタススマッシュ
荷重3.7g/cm2下における厚みT1:0.57mm
荷重204g/cm2下における厚みT2:0.54mm
T1とT2との厚み差:0.03mm
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、実施例1及び2については、染毛剤の漏れ出し及び毛髪保持具のズレともに目視では確認できず良好な結果が得られた。
これに対して、比較例1及び2については、染毛剤の漏れ出し及び毛髪保持具のズレともに目視で確認でき、良好な結果を得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である毛髪保持具を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の毛髪保持具の一端の開口部の近傍を拡大して示す部分拡大図であり、(a)は正面図、(b)は、前記一端の開口部を閉鎖した状態の(a)のII−II線断面図(c)は、前記一端の開口部を開口した状態の(a)のII−II線断面図である。
【図3】図3は、図1の毛髪保持具を毛髪束に固定した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、毛髪処理剤漏出防止部材が、毛髪束Hの表面の凹凸形状に沿うように変形した状態の典型を示す模式断面図である。
【図5】図5は、本発明で用い得る固定具の好ましい例を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明で用い得る固定具の他の好ましい例を示す図であり、(a)は、一対の挟持部間を開いた展開状態、(b)は、一対の挟持部間を閉じて嵌合部同士を嵌合させた固定状態を示す図である。
【図7】図7は、図1の毛髪保持具を用いて染色処理を行う様子を模式的に示す模式図であり、(a)は、毛髪保持具に染毛剤を注入する様子、(b)は毛髪保持具をしごく前の様子、(c)は、筒状体をしごいて染毛剤を塗り拡げている様子を示す図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態の要部を示す模式図〔図2(c)対応図〕である。
【符号の説明】
【0058】
1 毛髪保持具
2 筒状体
21、22 開口部
23 シート
24a,24b 側端部
3,3’ クリップ型固定具(固定具)
31,32 挟持部
4 毛髪処理剤漏出防止部材
41 不織布
H 毛髪束


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端の開口部から他端の開口部に向けて毛髪束を挿入可能なように構成された筒状体を有し、該筒状体内に毛髪処理剤を注入して、該筒状体の内部で該毛髪束に対して毛髪処理を施すことができるようになされている毛髪保持具であって、
前記筒状体の、前記一端の開口部の近傍における内面側に、毛髪束に押し付けられたときに漏出防止作用を発現する毛髪処理剤漏出防止部材が設けられている毛髪保持具。
【請求項2】
前記毛髪処理剤漏出防止部材が前記毛髪束に押し付けられたときに該毛髪束の表面の凹凸形状に沿うように変形可能である請求項1に記載の毛髪保持具。
【請求項3】
前記毛髪処理剤漏出防止部材は、前記毛髪処理剤を含浸保持可能な多孔性材料からなる請求項1又は2に記載の毛髪保持具。
【請求項4】
前記多孔性材料が不織布である請求項3記載の毛髪保持具。
【請求項5】
前記筒状体における、前記毛髪処理剤漏出防止部材が設けられた部分を挟むことができる固定具と併用される請求項1〜4の何れかに記載の毛髪保持具
【請求項6】
前記固定具は0.4N以上の固定力が付与可能である請求項5に記載の毛髪保持具。
【請求項7】
前記筒状体の前記他端の開口部近傍に、該開口部を開閉自在な封止手段が設けられている請求項1〜6の何れかに記載の毛髪保持具。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−306972(P2007−306972A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136412(P2006−136412)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】