説明

気体捕集方法

【課題】新規な気体捕集技術を提供するとともに、より長時間にわたる連続的な気体捕集に貢献する技術を提供すること目的とする。
【解決手段】水和物により気体を捕集する気体捕集方法であって、水和物を生成する薬剤の水溶液Wと、該水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油Oと、気体Gとを混在させる混合工程を含み、前記熱媒油Oとの直接接触を通じて前記水溶液W中に生成する前記水和物により前記気体Gを捕集することを特徴とする気体捕集方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和物により気体を捕集する技術に関し、詳しくは、水和物を生成する薬剤の水溶液(以下「原料水溶液」という)と、原料水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油との直接接触を通じて原料水溶液中に生成する水和物により気体を捕集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原料水溶液を冷媒により熱交換器を介して冷却し、原料水溶液中に水和物を生成させ、その水和物により気体を捕集する技術が知られている(特許文献1、2)。一方、原料水溶液を原料水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油と直接接触させて冷却し、原料液体中に水和物を生成させる技術が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3826176号公報
【特許文献2】特開2009−131728号公報
【特許文献3】特開2010−230228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、原料水溶液を冷媒により熱交換器を介して冷却し、原料水溶液中に水和物を生成させる場合、原料水溶液の過冷却により水和物の生成が予期せぬ場所で起こり閉塞を起こしたり、熱交換器の熱交換面に付着して熱交換効率を低下させるなどの弊害が生じる。このような弊害は、より長時間にわたる連続的な気体捕集を目指す際の妨げの一つになる。
本発明は、上記の背景や問題に鑑みてなされたものであり、新規な気体捕集技術を提供するとともに、より長時間にわたる連続的な気体捕集に貢献する技術を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための、本発明の第1の形態に係る気体捕集方法は、水和物により気体を捕集する気体捕集方法であって、水和物を生成する薬剤の水溶液と、該水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油と、気体とを混在させる混合工程を含み、前記熱媒油との直接接触を通じて前記水溶液中に生成する前記水和物により前記気体を捕集することを特徴とするものである。
【0006】
第2の形態に係る気体捕集方法は、第1の形態に係る気体捕集方法であって、前記混合工程が、前記水溶液から前記水和物が生成する温度よりも低い温度に設定された前記熱媒油及び前記気体と前記水溶液とを混在させる工程であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原料水溶液を原料水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油と直接接触させて冷却し、原料液体中に水和物を生成させ、その水和物により気体を捕集する技術を提供することができる。
【0008】
熱媒油は、それが存在しない場合よりも、原料水溶液中に生成する水和物の周囲への付着を抑制又は低減する。水和物と周囲の壁面との間に熱媒油が介入して付着を阻止し、剥離が促されることが原因であると考えられる。それ故、本発明の第1の形態によれば、より長時間にわたる連続的な気体捕集に貢献する技術を実現することができる。
【0009】
また、本発明の第2の形態によれば、熱媒油及び気体が、いずれも、予め、原料水溶液から前記水和物が生成する温度(以下「水和物生成温度」という)よりも低い温度に設定されるので、熱媒油と気体の両方と原料水溶液と間で直接接触による熱交換が起こり、効率的な水和物の生成が実現できると同時に、その水和物による気体捕集も実現でき、効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】原料水溶液と、該水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油と、気体とを反応系内に導入する方法の例を示す模式図。
【図2】実施例で用いるミキサーの一例を示す概略図。
【図3】実施例1〜4の気体捕集方法を示す概略図。
【図4】実施例5〜8の気体捕集方法を示す概略図。
【図5】M(XYZ)又はM(XY)を反応槽B又はその他の容器内に送る過程に一個又は複数個の熱交換器を配置する構成の要部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
本発明において、
(1) 原料水溶液中の物質の典型例は、アルキルアンモニウム塩に代表される第四級アンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩など(以下、まとめて「水和物生成薬剤」という場合がある)を溶質とする水溶液又はそれらの水和物生成薬剤のうち複数を溶質とする水溶液である。この水溶液を冷却すると、溶質である水和物生成薬剤をゲスト分子とし水分子をホストとする包接水和物が生成する。この包接水和物は生成時に潜熱を蓄熱する。従って、当該包接水和物は蓄熱性物質に該当し、温度変化により当該包接水和物を生成する当該水溶液は原料液体に該当する。
【0013】
原料水溶液から生成した包接水和物が当該原料液体に分散又は懸濁すると、当該原料液体はスラリー状を呈する。この状態の原料液体が蓄熱性物質のスラリーに該当する。
【0014】
水和物生成薬剤である第四級アンモニウム塩であって、入手し易いものの典型例は、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムである。
【0015】
(2) 熱媒油は、原料水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒体である(換言すれば、そのような性質を有する熱媒体が、本発明における熱媒油として選択される)。そのような熱媒体としては、石油精製品であって、パラフィン油、ガソリン、ナフサ、灯油、ジェット燃料油、軽油、潤滑油ベースオイル、重油などが含まれるもの、シリコン系オイルであって、ジメチルポリシロキサンを構成物質とするシリコーンオイルが含まれるもの、フッ素系液体であって、炭化水素のフッ素化物、例えば、炭化水素の全ての水素をフッ素に置換した化合物であり、炭素数5〜20(特に6〜12)の化合物が主成分であるものが含まれるもの等が挙げられる。
【0016】
(3) 気体は、水和物により捕集されるものであれば、特に制限はなく、水和物生成薬剤の種類にもよるが、水素、硫化水素、二酸化炭素、メタン等が典型例である。
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
1.反応系内への物質の導入
原料水溶液と、該水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油と、気体とを反応系内に導入する方法は、特に限定されるものではないが、その例を図1を参照して説明する。図1は、原料水溶液と、該水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油と、気体とを反応系内に導入する方法の例を示す模式図である。X,Y及びZは、気体G,原料水溶液W,熱媒油Oのうちいずれかを示している。
【0019】
図1の(a)は、気体G,原料水溶液W,熱媒油Oをそれぞれ別々に一つの反応槽B内に導入する例を示している。X,Y及びZは、それぞれ別々に、反応槽Bの例えば一方向(下方)から導入される。気体Gを捕集した水和物又はその水和物が原料水溶液W中に分散又は懸濁してなるスラリーS(以下、水和物等Sと称す)は、X,Y及びZが導入される経路とは異なる経路(例えば反応槽Bの上方)から送出される。また、未反応のX,Y及びZは、反応槽Bからそれぞれ別々に送出される。例えば、X,Yが反応槽Bの中段からそれぞれ送出され、Zが反応槽Bの上方から送出される。
【0020】
図1の(b)は、気体G,原料水溶液W,熱媒油Oを予め混合して、一つの反応槽B内に導入する例を示している。M(XYZ)は、XとYとZとの混合物を意味する。M(XYZ)は、反応槽Bの例えば一方向(下方)から導入される。水和物等S及び未反応のX,Y及びZの送出は、図1(a)と同様にして行われる。
【0021】
図1の(c)は、気体G,原料水溶液W,熱媒油Oのうちいずれか二つを予め混合して、残る一つと別々に、一つの反応槽B内に導入する例を示す。M(XY)は、XとYとの混合物を意味する。M(XY)及びZは、反応槽Bの例えば一方向(下方)から導入される。水和物等S及び未反応のX,Y及びZの送出は、図1(a)と同様にして行われる。
【0022】
図1の(d)及び図1の(e)は、気体G,原料水溶液W,熱媒油Oのうちいずれか一つを予め所蔵している反応槽B内に、残る二つを導入する例を示している。図1の(d)に示すように、反応槽B内には、Zが予め収容されている。この反応槽Bに、M(XY)を例えば一方向(下方)から導入する。水和物等Sは、図1(a)と同様にして反応槽Bから送出される。また、未反応のX及びYは、反応槽Bから別々に送出される。例えば、Xが反応槽Bの上方から送出され、Yが反応槽Bの中段から送出される。図1の(e)は、X及びYの混合物を反応槽Bに導入する代わりに、X及びYを別々に反応槽Bに導入する例である。水和物等S並びに未反応のX及びYの送出は、図1(d)と同様にして行われる。
【0023】
2.ミキサー
気体G,原料水溶液W及び熱媒油Oの混合は、例えば、ミキサーを用いて行うことができる。図2は、実施例で用いるミキサーの一例を示す概略図である。
【0024】
(1)「気体G,原料水溶液W,熱媒油Oを予め混合」するためのミキサーの典型例は、図2(a)に示すものである。X,Y及びZは、それぞれ別の管路を通してミキサー内に導入された後、混合される。上流側から順番に熱交換器Hxa、Hxbが配置される。混合後又は混合途中で、熱交換器Hxa、Hxbにより冷却し、原料水溶液W中に水和物を生成させ、その水和物により気体Gを捕集させる。熱媒油Oは、原料水溶液W中に生成する水和物の周囲への付着を抑制又は低減する。熱交換器Hxa、Hxbによる冷却は、一定温度で行っても、段階的に行っても良い(例えば、熱交換器Hxaで比較的高温で冷却し、熱交換器Hxbで比較的低温で冷却するようにしてもよい)。
【0025】
Xを熱媒油O、Yを気体G、Zを原料水溶液Wとするのが好適である。管内の最も外側に熱媒油Oを配置すれば、熱交換器Hxa、Hxbによる冷却を原料水溶液Wに伝達する役割を果たすと同時に、生成した水和物の壁面への付着を抑制できるからである。
【0026】
原料水溶液Wと熱媒油Oとの間に気体Gが配置されて短時間で混合するので、気体Gの捕集率が高まる。気体Gを投入する際には、できるだけ微細にする(微細気泡状)にするのが望ましい。
【0027】
(2)「気体G,原料水溶液W,熱媒油Oのうちいずれか二つを予め混合」するためのミキサーの典型例は、図2(b)に示すものである。X及びYは、それぞれ別の管路を通してミキサー内に導入された後、混合される。上流側から順番に熱交換器Hxa、Hxbが配置される。
【0028】
「気体G,原料水溶液W,熱媒油Oを予め混合」するためのミキサーの場合と同様に、熱交換器Hxa、Hxbによる冷却は、一定温度で行っても、段階的に行っても良い。X、Yが熱媒油O、原料水溶液Wの場合、Xを熱媒油Oとするのが好適である。なぜなら、管内の最も外側に熱媒油Oを配置すれば、熱交換器Hxa、Hxbによる冷却を原料水溶液Wに伝達する役割を果たすと同時に、生成した水和物の壁面への付着を抑制できるからである。
【0029】
3.温度の設定について
以下、Tmを原料水溶液Wから水和物が生成する温度とし、T(G)、T(O)、T(W)をそれぞれ、気体G,熱媒油O,原料水溶液Wの温度とする。
【0030】
(1)原料水溶液Wと熱媒油Oとが混合する際には、少なくとも混合後において、T(O)≦Tmとなるようにする。この場合、例えば、T(W)>Tm、T(O)>Tmである原料水溶液Wと熱媒油Oとを混合後に、T(W)≦Tm、T(O)≦Tmになるように冷却してもよい。あるいは、熱媒油Oを予めT(O)≦Tmとしたうえで、T(W)>Tmの原料水溶液Wに混合し、原料水溶液WをT(W)≦Tmになるように冷却してもよい。
【0031】
(2)原料水溶液Wを気体Gの存在下で冷却する場合や、原料水溶液Wを冷却するために熱媒油Oを気体Gの存在下で冷却する場合(例.原料水溶液Wと熱媒油Oとが混合する前に気体Gと熱媒油Oとが混合する場合)には、予め気体GをT(G)≦Tmに冷却しておくのが効果的である。
【0032】
4.気体Gの微細気泡(マイクロバブル)化と循環供給について
(1)気体Gは、微細気泡状態にしたうえで、反応装置内に気体G単独で又は他の物質(原料水溶液W及び/又は熱媒油O)と予め混合したうえで導入するのが好ましい。微細気泡化すれば、原料水溶液W中に生成する水和物と遭遇する確率(従って当該水和物に捕集される確率)が増えるからである。また、気体Gはそれほど熱伝導率が高くないので、(大気泡径であると)原料水溶液Wと熱媒油Oとの直接接触による熱交換を阻害する場合があるところ、微細気泡化すれば、原料水溶液Wと熱媒油Oとの直接接触による熱交換への悪影響を低減することができる。
【0033】
(2)気体Gは、微細気泡化されていると否とに拘らず、そのすべてが、反応装置内において、原料水溶液W中に生成する水和物に捕集されるとは限らない(通常は、未捕集気体Gが少なからず残る)。それ故、未反応の気体Gについては、これを反応槽Bから回収して、循環的に当該反応槽Bに供給するように構成する。これにより、水和物による気体Gの捕集率を高めることができる。
【0034】
5.熱交換器の熱交換面と攪拌効果について
反応槽B内又は反応槽B外において、原料水溶液W及び/又は熱媒油Oを冷却する熱交換器が存在する場合、その伝熱面における濡れがなくならない程度に(従って、例えば微細気泡状態にして)気体Gにより伝熱面界面を攪拌する。これにより、伝熱面への水和物の付着を抑制することができ、伝熱面からの伝熱効率を高めることができる。
【0035】
6.周囲の壁面への水和物の付着防止について
(1)熱媒油Oは、それが存在しない場合よりも、原料水溶液W中に生成する水和物が周囲の壁面に付着することを抑制又は低減することができる。水和物と周囲の壁面との間に熱媒油Oが介在すると、水和物の付着が阻害され、剥離が促されることが原因と考えられる。
【0036】
(2)気体Gは、原料水溶液Wと熱媒油Oとの直接接触熱交換により原料水溶液W中に生成する水和物の周囲への付着を抑制又は低減することができる。水和物と周囲の壁面との間に気体Gが介入して付着を阻止し、及び/又は、壁面に付着している水和物が気体Gから圧力(壁面と水和物との境界に剪断力を生じさせる力)を受け、剥離を促されることが原因と考えられる。
【0037】
(3)それ故、熱媒油Oとともに気体Gが水和物と周囲の壁面との間に介在すると、水和物の付着がより効果的に阻害され、剥離が促される。
【0038】
7.その他
(a)反応槽Bは、密閉型であっても開放型であってもよい。
【0039】
(b)反応槽Bにおける水和物又はそのスラリーSの生成は、連続式であっても、バッチ式であってもよい。連続式の場合には、反応槽B内への物質の送入や反応槽B内からの物質の送出は、連続的又は断続的である必要がある、ことはいうまでもない。
【0040】
(c)反応槽Bの中へのX,Y,Z(及びそれらの少なくとも二つの混合物M)の送入は、下方から上方の反応槽Bの中への送入に限定されない。上方から又は中段から反応槽Bの中への送入であってもよい。ただし、気体Gの送入については、下方から上方の反応槽Bの中への送入の方が好ましい。気体Gは反応槽B内で下から上に向かって移動するケースが多いからである。
【0041】
(d)反応槽Bの中からX,Y,Z,Sの送出は、反応槽Bの中から上方への送出に限定されない。反応槽Bの中から中段又は下方への送出であってもよい。ただし、気体Gは反応槽Bの中から上方への送出の方が好ましい。気体Gは反応槽Bから上に向かって移動するケースが多いからである。
【0042】
(e)反応槽B内への物質の送入や反応槽B内からの物質の送出の動力については、特に制限はなく、ポンプ動力、重力(溢れ出しのような場合)等であってよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
【0044】
(実施例1)
図3の(a)に示すように、気体Gを放出するための放出ノズルNgは、反応槽Bの下段に配置され、散気装置として機能する。気体Gは、放出ノズルNgから反応槽B内に導入され、反応槽B内を上方に向かって拡散する。未反応の気体Gは、反応槽Bの上方から回収される。熱媒油Oは、反応槽Bの下段から導入される。一方、原料水溶液Wは、反応槽Bの上段から導入される。
【0045】
T(G)≦Tmに冷却された気体Gを放出ノズルNgから反応槽B内に導入すると、気体Gが熱媒油Oと接するため、熱媒油Oが気体GによりT(O)≦Tmに冷却される。気体Gと熱媒油Oとの混合物が、T(W)>Tmの原料水溶液Wと直接接するため、原料水溶液WがT(W)≦Tmとなるまで冷却され、原料水溶液W中に水和物が生成し、生成した水和物が気体Gを捕集する。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように、熱媒油O及び気体Gが、いずれもTmよりも低い温度に設定されるので、熱媒油Oと気体Gの両方と原料水溶液Wと間で直接接触による熱交換が起こり、効率的な水和物の生成が実現でき、その水和物による気体捕集が実現でき、効率的である。
【0046】
(実施例2)
図3の(b)に示すように、反応槽Bの上段から熱媒油Oを導入し、かつ反応槽Bの下段から原料水溶液Wを導入する。気体Gの導入位置、水和物等Sの送出位置、未反応の気体Gの送出は、実施例1と同様にして行われる。
【0047】
T(O)≦Tmに冷却された熱媒油Oを反応槽Bの上段から導入し、また、T(G)≦Tmに冷却された気体Gを放出ノズルNgから反応槽B内に導入する。そこにT(W)>Tmの原料水溶液Wを反応槽Bの下段から導入すると、Tm以下の温度を持つ熱媒油O及び気体Gと、原料水溶液Wとの間で熱交換を生じ、原料水溶液WがT(W)≦Tmになるように冷却される。その結果、原料水溶液W中に水和物が生成し、生成した水和物が気体Gを捕集する。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように、熱媒油O及び気体Gが、いずれもTmよりも低い温度に設定されるので、熱媒油Oと気体G原料の両方と原料水溶液Wと間で直接接触による熱交換が起こり、効率的な水和物の生成が実現でき、その水和物による気体捕集が実現でき、効率的である。
【0048】
(実施例3)
図3の(c)に示すように、反応槽Bの下段には原料水溶液Wが収容されている。気体Gは、反応槽Bの下段に位置する散気装置としての気体Gの放出ノズルNgから反応槽B内に導入され、反応槽B内を上方に向かって拡散する。未反応の気体Gは反応槽Bの上方から回収される。熱媒油Oは、放出ノズルNgから拡散された気体Gと交差するように反応槽Bの下方から導入される。未反応の熱媒油Oは反応槽Bの上段から回収される。すなわち、熱媒油Oは、放出ノズルNgから拡散された気体Gと交差するように反応槽Bの下方から上方に移動する。
【0049】
予めT(O)≦Tmに冷却された熱媒油Oを反応槽Bに導入する。反応槽B内の原料水溶液Wは、T(W)>Tmの温度を持つものの、熱媒油Oと直接接触することにより、原料水溶液WがT(W)≦Tmになるように冷却される。これにより、原料水溶液W中に水和物が生成する。気体Gは反応槽B内を下方から上方に拡散しているため、生成した水和物が反応槽B内の気体Gを捕集する。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように原料水溶液Wを熱媒油Oとの直接接触で冷却することにより、熱媒油Oの存在下で水和物の生成、気体Gの捕集を行うことができるため、水和物が壁面に付着するのを抑えることができる。従って、より長時間に亘る連続的な気体捕集を実現することができる。なお、気体Gの温度は、特に限定されるものではないが、T(G)≦Tmであると、熱媒油Oによる原料水溶液Wの冷却をより効率的に行うことができる。
【0050】
(実施例4)
図3の(d)に示すように、反応槽Bの下段には熱媒油Oが収容されている。気体Gは、反応槽Bの下段に位置する散気装置としての気体Gの放出ノズルNgから反応槽B内に導入され、反応槽B内を上方に向かって拡散する。未反応の気体Gは反応槽Bの上方から回収される。原料水溶液Wは、放出ノズルNgから拡散された気体Gと交差するように反応槽Bの下方から導入される。未反応の原料水溶液Wは反応槽Bの上段から回収される。すなわち、原料水溶液Wは、放出ノズルNgから拡散された気体Gと交差するように反応槽Bの下方から上方に移動する。反応槽Bの下段には、下方から順番に冷却器Hx1、Hx2が配置されている。
【0051】
反応槽Bの下段に収容されている熱媒油Oは、冷却器Hx1、Hx2により、T(O)≦Tmになるように冷却されている。T(W)>Tmの原料水溶液Wを反応槽Bに導入することにより、原料水溶液Wを熱媒油Oと直接接触させる。これにより、原料水溶液WをT(W)≦Tmになるように冷却し、原料水溶液W中に水和物が生成する。気体Gは反応槽B内を下方から上方に拡散しているため、生成した水和物が反応槽B内の気体Gを捕集する。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように原料水溶液Wを熱媒油Oと直接接触させて冷却することにより、熱媒油Oの存在下で水和物の生成、気体Gの捕集を行うことができるため、水和物が壁面に付着するのを抑えることができる。従って、より長時間に亘る連続的な気体捕集を実現することができる。
【0052】
(実施例5)
図4の(a)に示すように、反応槽Bの下段には、気体Gと熱媒油Oを放出するための放出ノズルNgoが設けられている。熱媒油O及び気体Gは、放出ノズルNgoを通して反応槽B内に導入される。未反応の気体Gは反応槽Bの上方から回収される。原料水溶液Wは、反応槽Bの上段から導入される。
【0053】
T(O)≦Tmに冷却された熱媒油O及びT(G)≦Tmに冷却された気体Gを放出ノズルNgoを通して反応槽B内に導入する。これらが、T(W)>Tmの原料水溶液Wと直接接触すると、熱媒油O及び気体Gと原料水溶液Wとの間で熱交換を生じ、原料水溶液WがT(W)≦Tmになるように冷却される。その結果、原料水溶液W中に水和物が生成し、生成した水和物が気体Gを捕集する。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように、熱媒油O及び気体Gが、いずれもTmよりも低い温度に設定されるので、熱媒油Oと気体Gの両方と原料水溶液Wと間で直接接触による熱交換が起こり、効率的な水和物の生成が実現でき、その水和物による気体捕集が実現でき、効率的である。
【0054】
(実施例6)
図4の(b)に示すように、反応槽Bの下段には、原料水溶液Wと気体Gを放出するための放出ノズルNgwが設けられている。原料水溶液Wは、気体Gと共に放出ノズルNgwを通して反応槽B内に導入される。気体Gは、反応槽Bの下方から上方に拡散し、未反応の気体Gが反応槽Bの上方から回収される。熱媒油Oは、反応槽Bの上段から導入される。
【0055】
T(W)>Tmの原料水溶液W及びT(G)>Tmの気体Gを放出ノズルNgwを通して反応槽B内に導入する。また、予めT(O)≦Tmに冷却された熱媒油Oを反応槽B内に導入する。その結果、原料水溶液Wが熱媒油Oと直接接触することでT(W)≦Tmになるように冷却され、原料水溶液W中に水和物が生成し、生成した水和物が気体Gを捕集する。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように原料水溶液Wを熱媒油Oと直接接触させることで冷却することにより、熱媒油Oの存在下で水和物の生成、気体Gの捕集を行うことができるため、水和物が壁面に付着するのを抑えることができる。従って、より長時間に亘る連続的な気体捕集を実現することができる。
【0056】
(実施例7)
図4の(c)に示すように、反応槽Bの下段には、散気装置として気体Gを放出する放出ノズルNgが設けられている。気体Gは、放出ノズルNgから反応槽B内に導入され、上方に向かって拡散し、未反応の気体Gは反応槽Bの上方から回収される。熱媒油Oは、反応槽Bの下段に上方から導入され、未反応の熱媒油Oが反応槽Bの下段の下方から回収される。原料水溶液Wは、反応槽Bの上段の下方、すなわち熱媒油Oとの境界位置から導入され、未反応の原料水溶液Wが反応槽Bの上段の上方から回収される。
【0057】
T(O)≦Tmに冷却された熱媒油Oを、反応槽Bの下段上方から導入する。また、T(W)>Tmの原料水溶液Wを、反応槽Bに熱媒油Oとの境界から導入する。原料水溶液Wが熱媒油Oと直接接触することにより冷却され、原料水溶液Wの温度がT(W)≦Tmに達すると、水和物が生成する。気体Gが反応槽Bの下方から上方に拡散しているため、生成した水和物により気体Gを捕集することができる。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように原料水溶液Wを熱媒油Oと直接接触させることで冷却することにより、熱媒油Oの存在下で水和物の生成、気体Gの捕集を行うことができるため、水和物が壁面に付着するのを抑えることができる。従って、より長時間に亘る連続的な気体捕集を実現することができる。なお、水和物等Sの生成後は、水和物等Sと熱媒油Oとの境界位置から原料水溶液Wを反応槽B内に導入すると、原料水溶液Wと熱媒油Oとの直接接触がしやすくなる。気体Gの温度は、特に限定されるものではないが、T(G)≦Tmであると、熱媒油Oによる原料水溶液Wの冷却をより効率的に行うことができる。
【0058】
(実施例8)
図4の(d)に示すように、反応槽Bの下段には、散気装置として反応槽B内に気体Gを放出する放出ノズルNg、散水装置として反応槽B内に原料水溶液Wを放出する放出ノズルNwが設けられている。反応槽Bの上段には、散油装置として反応槽B内に熱媒油Oを放出する放出ノズルNoが設けられている。
【0059】
放出ノズルNgから反応槽B内に導入された気体Gは、反応槽Bの下方から上方に拡散し、未反応の気体Gが反応槽Bの上方から回収される。また、放出ノズルNwから反応槽B内に導入された原料水溶液Wは、反応槽Bの下段から上段に移動し、未反応の原料水溶液Wが反応槽Bの上段から回収される。さらに、放出ノズルNoから反応槽B内に導入された熱媒油Oは、反応槽Bの上段から下段に移動し、未反応の熱媒油Oが反応槽Bの下方から回収される。
【0060】
T(O)≦Tmに冷却された熱媒油Oを、反応槽Bの上段の放出ノズルNoから導入する。また、T(W)>Tmの原料水溶液Wを、反応槽Bの下段の放出ノズルNwから導入する。熱媒油Oが反応槽Bの上段から下段に移動し、かつ原料水溶液Wが反応槽Bの下段から上段に移動するため、原料水溶液Wが熱媒油Oと直接接触し、これにより冷却される。原料水溶液Wの温度がT(W)≦Tmに達すると、水和物が生成する。気体Gが反応槽Bの下方から上方に拡散しているため、生成した水和物により気体Gを捕集することができる。水和物等Sは、反応槽Bの中段から回収される。このように原料水溶液Wを熱媒油Oと直接接触させることで冷却することにより、熱媒油Oの存在下で水和物の生成、気体Gの捕集を行うことができるため、水和物が壁面に付着するのを抑えることができる。従って、より長時間に亘る連続的な気体捕集を実現することができる。
【0061】
なお、図1においては、上述のとおり、X,Y,Z,Sなどについて反応槽B内の位置に上下の区別はないが、実施例においては、上下の区別がある。熱媒油Oと原料水溶液Wとの比重差によってこれらの液体の上下位置の関係が変わり得るし、気体Gは常に下から上に上昇する。
【0062】
また、混合物M(XYZ)又はM(XY)を反応槽B又はその他の容器内に収容するための経路に、一個又は複数個の熱交換器を配置することができる。その例を図5に示す。図5は、管路内を、M(XYZ)又はM(XY)が流通する過程で、一個又は複数個の熱交換器Hexにより、熱交換(冷却)され、その結果物を反応槽B又はその他の容器内に収容するという構成の要部の説明図である。図5に示すように、M(XYZ)又はM(XY)を反応槽B又はその他の容器内に送る管路Pに、一個又は複数個の熱交換器Hexを配置することにより、M(XYZ)やM(XY)を所望の温度まで冷却することが可能となる。
【0063】
「その他の容器」内に収容する場合とは、管路P内で気体捕集の反応が(概ね)完了する場合である。その場合にはもはや反応槽Bは不要であり、単に、一時的又は長期間貯蔵する目的で容器に収容すればよい。
【0064】
「複数個の熱交換器Hex」の場合、例えば、管路を複数個の区画に分け、それぞれに熱交換器Hexを設けることにより、全体として管路の冷却を制御することが可能になる。このような複数区画化は、管路内での目詰まり防止に役立つ。
【符号の説明】
【0065】
G…気体、O…熱媒油、W…原料水溶液、S…気体Gを捕集した水和物又はその水和物が原料水溶液W中に分散又は懸濁してなるスラリー、X,Y,Z…気体G,熱媒油O,原料水溶液Wのいずれかに該当、M(XY)…XとYとの混合物、M(XYZ)…XとYとZとの混合物、B…反応槽、Hx、Hx1、Hx2…冷却手段、Hxa、Hxb、Hex…熱交換器、Ng…気体Gの放出ノズル、Nw…原料水溶液Wの放出ノズル、No…熱媒油Oの放出ノズル、Ngo…気体Gと熱媒油Oを放出するための放出ノズル、Ngw…原料水溶液Wと気体Gを放出するための放出ノズル、Tm…原料水溶液Wから水和物が生成する温度、T(G)…気体Gの温度、T(O)…熱媒油Oの温度、T(W)…原料水溶液Wの温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和物により気体を捕集する気体捕集方法であって、水和物を生成する薬剤の水溶液と、該水溶液に溶解しない又は疎水性の熱媒油と、気体とを混在させる混合工程を含み、前記熱媒油との直接接触を通じて前記水溶液中に生成する前記水和物により前記気体を捕集することを特徴とする気体捕集方法。
【請求項2】
前記混合工程は、前記水溶液から前記水和物が生成する温度よりも低い温度に設定された前記熱媒油及び前記気体と前記水溶液とを混在させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の気体捕集方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate