説明

気体置換用チャンバー装置、及び、光学素子の製造方法

【課題】簡素な構成で塵埃の巻き上げを抑制しながら短時間でチャンバー内に気体を供給する気体置換用チャンバー装置及び光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】減圧装置により内部を減圧され、気体供給装置により気体が供給されるチャンバー11と、このチャンバー11に供給される気体A1をチャンバー11内で遮蔽して拡散する遮蔽部12と、この遮蔽部12により拡散された気体A2を整流A3,A4する整流部13,14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバー内部の気体が置換される気体置換用チャンバー装置、及び、チャンバー内部の気体を置換して光学素子を成形する光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子の製造方法において、光学素子材料を収容する型セットを加熱、加圧、冷却等する前に、型セット内の空気を不活性ガスに置換する手法がとられている。この手法は、型組後の型セットが投入されたチャンバー内を真空状態にして型セット内の空気を除去し、その後チャンバー内に不活性ガスを供給することで、型セット内が不活性ガスで充填されるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、真空引き後にチャンバー内へ不活性ガスを供給する際に、チャンバー内のゴミ等の塵埃が巻き上がり光学素子材料に付着することが外観不良等の原因となっている。
【0004】
チャンバー内の真空状態を破壊する際の塵埃の巻き上がりを防止するためにいくつかの手法が提案されている。例えば、流路を複雑に屈曲させることで気体の流速を減少させる手法(例えば、特許文献2参照)、最初に所定流量よりも低い流量の気体を供給し、所定時間経過後に所定流量の気体を供給する手法(例えば、特許文献3参照)、気体拡散用のブレークフィルターを用いる手法(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。なお、大気中の空気が流入するのを防ぐために、気体により障壁を形成する手法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3717102号公報
【特許文献2】特開平3−217224号公報
【特許文献3】特開2002−141324号公報
【特許文献4】特開2000−325774号公報
【特許文献5】特開平6−185622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、チャンバー内の真空状態を破壊する際の塵埃の巻き上がりを防止する従来の手法は、高価な部品や複雑な構造の装置を用いたり、ガスの流量を絞ることで生産性が低下したりするといった問題点がある。
【0007】
上記の問題点は、光学素子の製造に際してチャンバーに型セットが投入される場合に限らず、型セット以外のものがチャンバー内に投入された場合にチャンバー内部の気体を置換するときにも同様に生じる。
【0008】
本発明の目的は、簡素な構成で塵埃の巻き上げを抑制しながら短時間でチャンバー内に気体を供給することができる気体置換用チャンバー装置及び光学素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の気体置換用チャンバー装置は、減圧装置により内部を減圧され、気体供給装置により気体が供給されるチャンバーと、前記チャンバーに供給される気体を前記チャンバー内で遮蔽して拡散する遮蔽部と、前記遮蔽部により拡散された気体を整流する整流部と、を備える。
【0010】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記整流部は、第1の整流部と、前記第1の整流部により整流された気体を整流する第2の整流部と、を含むようにしてもよい。
【0011】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記第1の整流部及び前記第2の整流部には、前記遮蔽部により拡散された前記気体が通過する複数の通気孔が形成され、前記第2の整流部の前記通気孔は、前記第1の整流部の前記通気孔よりも流路が小さいようにしてもよい。
【0012】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記チャンバーには、前記気体供給装置により気体が供給される気体流入口が形成され、前記遮蔽部は、前記気体流入口から供給される前記気体の流路の延長上に位置するようにしてもよい。
【0013】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記整流部には、前記遮蔽部により拡散された前記気体が通過する複数の通気孔が形成され、前記整流部の中心部側の前記通気孔は、前記整流部の周縁部側の前記通気孔よりも流路が小さいようにしてもよい。
【0014】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記通気孔の流路は、前記整流部の前記周縁部側から前記中心部側にいくほど小さくなるようにしてもよい。
【0015】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記整流部には、前記遮蔽部により拡散された前記気体が通過する複数の通気孔が形成され、前記整流部の周縁部側には、前記整流部の中心部側よりも狭いピッチで前記通気孔が形成されているようにしてもよい。
【0016】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記遮蔽部は、前記整流部と一体に設けられているようにしてもよい。
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記整流部は、パンチング材、メッシュ素材及び多孔質素材のうちのいずれかから構成されているようにしてもよい。
【0017】
また、上記気体置換用チャンバー装置において、前記チャンバーには、光学素子材料を収容し、前記チャンバー内において内部の気体が置換される光学素子成形用型セットが投入されるようにしてもよい。
【0018】
本発明の光学素子の製造方法は、光学素子材料を収容する光学素子成形用型セットをチャンバー内に投入する投入工程と、前記チャンバーの内部を減圧して、前記光学素子成形用型セットの内部を減圧する減圧工程と、前記チャンバーに気体を供給して、前記光学素子成形用型セットの内部に気体を供給する気体供給工程と、前記光学素子成形用型セットを用いて、前記光学素子材料を成形する成形工程と、を含み、前記気体供給工程では、前記チャンバーに供給される気体を遮蔽部により前記チャンバー内で遮蔽して拡散し、拡散した気体を整流部により整流する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡素な構成で塵埃の巻き上げを抑制しながら短時間でチャンバー内に気体を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る気体置換用チャンバー装置を備える光学素子の製造装置を示す概略構成図である。
【図2A】本発明の一実施の形態に係る気体置換用チャンバー装置を示す概略断面図である。
【図2B】本発明の一実施の形態に係る気体置換用チャンバー装置内の気体の流れを示す概略断面図である。
【図2C】比較例に係る気体置換用チャンバー装置を示す概略断面図である。
【図3A】本発明の一実施の形態における第1の整流板(その1)を示す説明図である。
【図3B】本発明の一実施の形態における第1の整流板(その2)を示す説明図である。
【図4A】本発明の一実施の形態の変形例における遮蔽部一体型整流板を示す平面図(その1)である。
【図4B】本発明の一実施の形態の変形例における遮蔽部一体型整流板を示す平面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る気体置換用チャンバー装置及び光学素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る気体置換用チャンバー装置10を備える光学素子の製造装置1を示す概略構成図である。
【0022】
光学素子の製造装置1は、気体置換用チャンバー装置10と、加熱ステージ(加熱部)20と、加圧ステージ(加圧部)30と、冷却ステージ(冷却部)40と、搬入側予備室50と、成形室60と、搬出側予備室70と、減圧装置80と、気体供給装置90と、を備える。加熱ステージ20、加圧ステージ30及び冷却ステージ40は、光学素子材料100を成形する成形部の一例である。
【0023】
なお、気体置換用チャンバー装置10と、減圧装置80と、気体供給装置90とは、気体置換用チャンバー装置10のチャンバー11内部の気体を置換する気体置換装置として機能する。
【0024】
気体置換用チャンバー装置10の図2Aに示すチャンバー11等(配管部16以外の部分)は、搬入側予備室50内に配置されている。また、加熱ステージ20、加圧ステージ30、冷却ステージ40は、成形室60内に配置されている。
【0025】
搬入側予備室50、成形室60及び搬出側予備室70には、不活性ガスである窒素が充填されていて、低酸素濃度の状態が維持されている。
搬入側予備室50は、内部を密閉する図1に示す閉鎖位置と、この閉鎖位置の上方の開放位置とを往復移動するシャッター51を有する。このシャッター51が開放位置にあるとき、搬入側予備室50に光学素子成形用型セット101が搬入される。
【0026】
搬出側予備室70は、内部を密閉する図1に示す閉鎖位置と、この閉鎖位置の上方の開放位置とを往復移動するシャッター71を有する。このシャッター71が開放位置にあるとき、搬出側予備室70の外部に光学素子成形用型セット101が排出される。
【0027】
なお、搬入側予備室50と成形室60との間、及び、搬出側予備室70と成形室60との間にも、図示しないシャッターが配置されている。
加熱ステージ20、加圧ステージ30及び冷却ステージ40は、それぞれ、光学素子成形用型セット101に当接する上加熱ブロック21,31,41及び下加熱ブロック22,32,42と、上加熱ブロック21,31,41を昇降させるシリンダ駆動部23,33,43と、を有する。
【0028】
図2Aに示すように、気体置換用チャンバー装置10は、チャンバー11と、遮蔽部の一例である遮蔽板12と、第1の整流部の一例である第1の整流板13と、第2の整流部の一例である第2の整流板14と、封止材の一例であるOリング15と、配管部16と、を備える。気体置換用チャンバー装置10は、チャンバー11の内部をOリング15によって封止する図1及び図2Aに示す封止位置と、この封止位置の上方において光学素子成形用型セット101を出し入れするときの開放位置とに往復移動する。
【0029】
チャンバー11は、下端に開口する例えば内径2,30mmの筒形状を呈する。チャンバー11の内部は、排気口と気体流入口とを兼ねる上面中央の開口部11aにおいて、配管部16に連通している。この配管部16は、図1に示すように、例えば真空ポンプである減圧装置80の排気路と、気体供給装置90の供給路とを兼ねる。
【0030】
チャンバー11の下端には、Oリング15を収容する収容部11bが径方向断面において逆U字状に形成されている。Oリング15は、気体置換用チャンバー装置10(チャンバー11)が上方の上記開放位置から下方の上記封止位置に移動したときに、収容部11bから下方に突出した部分が押圧されることで、チャンバー11の内部を封止する。
【0031】
遮蔽板12は、第1の整流板13上に設けられた例えば直径7mmの薄い円板である。遮蔽板12は、チャンバー11に供給される窒素(気体の一例である不活性ガス)をチャンバー11内で遮蔽して拡散する。
【0032】
遮蔽板12は、第1の整流板13上において、開口部11aから供給され、直線状に進行する窒素の流路(図2Bに示す矢印A1)の延長上に位置する。遮蔽板12は、配管部16と中心がほぼ同軸上にあり、上記のように直径7mmの薄い円板であり配管部16の内径が6mmであるため、開口部11aから供給される窒素の流路(図2Bに示す矢印A1)を完全に遮蔽する。
【0033】
なお、遮蔽板12は、窒素の流路(矢印A1)以上の大きさ(平面視における面積)でなくともよく、また、窒素を完全に遮蔽するものでなくともよい。
また、遮蔽板12は、チャンバー11の開口部11aと第1の整流板13との間に設けられていればよく、第1の整流板13上ではなく、第1の整流板13よりも間隔を隔てた上方に設けられていてもよい。
【0034】
第1の整流板13及び第2の整流板14は、遮蔽板12により拡散された窒素(矢印A2)を通気孔13a,14aから吹き出すことで整流する。第2の整流板14は、第1の整流板13と間隔を隔てて配置され、第1の整流板13により整流された窒素(矢印A3)を整流する(矢印A4)。第1の整流板13及び第2の整流板14は、開口部11aから供給された窒素の流路(矢印A1)の方向(上下方向)に直列的に配置されている。
【0035】
第1の整流板13は、例えば、チャンバー11の開口部11aから5mm下方に位置する。また、第2の整流板14は、例えば、第1の整流板13から5mm下方において、チャンバー11内に投入される光学素子成形用型セット101と干渉しないように位置している。
【0036】
第1の整流板13は、図3Aに示すように、例えば、直径1mmの複数の通気孔13aが数mm間隔で点在するように形成された厚さ0.5mmのパンチングメタル(パンチング材の一例)から構成されている。なお、パンチング材としては、非金属製のパンチング材であってもよい。
【0037】
なお、図3Bに示す第1の整流板13−1のように、平面視における中心部側の通気孔13−1aが周縁部側の通気孔13−1bより流路(例えば孔の開口の直径)が小さくなるようにすることで、図3Aに示す第1の整流板13よりも、中心部側と周縁部側との流量差を小さくすることができる。なお、図3Bに示す第1の整流板13−1において、通気孔13−1a,13−1bのピッチは一定であり、第1の整流板13の単位面積当たりの流路の大きさは、周縁部側よりも中心部側が小さくなっている。ここで、ピッチとは、隣り合う通気孔の中心間距離をいう。
【0038】
図3A及び図3Bに示す流量は、遮蔽板12が第1の整流板13,13−1の上に位置しない場合のものであるが、第1の整流板13,13−1の上に遮蔽板12が位置していても、周縁部側よりも中心部側で流量が多くなるため、図3Bに示す第1の整流板13−1によって、図3Aに示す第1の整流板13よりも、中心部側と周縁部側との流量差を小さくすることができる。
【0039】
なお、図3Bに示す第1の整流板13−1の通気孔13−1a,13−1bの流路は、周縁部側(通気孔13−1b側)から中心部側(通気孔13−1a側)にいくほど小さくなる。このため、例えば、通気孔13−1a,13−1bの流路の大きさが、周縁部側と中心部側の2種類のみであって、中心部側の方が周縁部側よりも小さいような場合に比べ、第1の整流板13−1の位置による流量の周縁部側から中心部側への変化をなだらかにすることができる。
【0040】
第2の整流板14は、例えば、ナイロン或いは金属からなるメッシュフィルタ(メッシュ素材の一例)から構成されている。このメッシュフィルタは、例えば、綾織で、線径が0.12mm,メッシュが100,網目が0.134mm,開口率が27.8%である。なお、メッシュ素材としては、メッシュ形状であれば、開口率が高いものなどでもよい。
【0041】
上述のように、第2の整流板14の通気孔14aは、メッシュが100であるため、第1の整流板13の例えば直径1mmの通気孔13aよりも流路が小さく、且つ、第1の整流板13の通気孔13aよりも数多く形成されている。
【0042】
なお、整流部としては、第1の整流板13及び第2の整流板14の計2つの整流部でなくとも、1つとすることも、3つ以上とすることも可能である。
【0043】
図2Aに示すように、光学素子成形用型セット101は、対向して配置された上型(第1の成形型)102及び下型(第2の成形型)103と、これら上型102及び下型103の周囲に配置されたスリーブ(第3の成形型)104とを有する。また、光学素子成形用型セット101は、例えば超硬合金(炭化タングステン)からなり、上型102と下型103との間に、例えば株式会社オハラ社製S−BSL7である光学素子材料100を収容する。
【0044】
上型102は、円柱形状を呈し、光学素子材料100に凸形状を転写する光学機能面である凹成形面102aが底面に形成されている。
下型103は、円柱形状を呈し、光学素子材料100に凸形状を転写する光学機能面である凹成形面103aが上面に形成されている。
【0045】
スリーブ104には、円筒形状を呈し、上型102と下型103との間のキャビティに連通する貫通孔104aが径方向に複数形成されている。
【0046】
以下、本実施の形態に係る光学素子の製造方法について、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
まず、図1に示すように、光学素子材料100を収容する光学素子成形用型セット101は、搬入側予備室50に搬入され、チャンバー装置10の図2Aに示すチャンバー11の内部に投入される(投入工程)。
【0047】
そして、減圧装置80は、配管部16を介して、チャンバー11の内部を例えば真空になるまで減圧する(減圧工程)。これにより、チャンバー11の内部の気体、ひいては、光学素子成形用型セット101の内部の気体が除去され、光学素子成形用型セット101の内部が減圧される。
【0048】
光学素子成形用型セット101の内部の気体が除去された後、気体供給装置90は、配管部16を介してチャンバー11に窒素を供給して、光学素子成形用型セット101の内部に気体を供給する(気体供給工程)。図2Bに示すように、気体供給工程では、チャンバー11の開口部11aから供給される窒素(矢印A1)は、真空に引っ張られて流入速度が上がるが、遮蔽板12により遮蔽されて跳ね返り、拡散する(矢印A2)。
【0049】
また、拡散した窒素(矢印A2)は、チャンバー11の天井等に当たった後、第1の整流板13の通気孔13aから吹き出されることで整流される(矢印A3)。また、第1の整流板13により整流された窒素(矢印A3)は、第2の整流板14の通気孔14aから吹き出されることで整流され(矢印A4)、チャンバー11内の下部(矢印A5)、ひいては図2Aに示す光学素子成形用型セット101内にまで供給される。
【0050】
このように遮蔽板12並びに第1の整流板13及び第2の整流板14を用いることで、これらを用いない図2Cに示す比較例のチャンバー11内に生じる窒素の対流(矢印A)が起こりにくく、塵埃の巻き上げが抑制される。
【0051】
窒素がチャンバー11内に供給された後、光学素子成形用型セット101は、成形室60に移送される。そして、光学素子成形用型セット101内の光学素子材料100は、成形室60内で成形され(成形工程)、所望の形状の光学素子が製造される。成形工程では、光学素子材料100は、加熱ステージ20において例えばガラス転移点温度まで加熱され(加熱工程)、加圧ステージ30において加圧され(加圧工程)、冷却ステージ40において冷却される(冷却工程)。光学素子成形用型セット101は、その後、成形室60から搬出側予備室70に移送され、搬出側予備室70から搬出される。そして、製造された光学素子が光学素子成形用型セット101から取り出される。
【0052】
以上説明した本実施の形態では、チャンバー11に供給される気体である窒素(矢印A1)は、遮蔽板(遮蔽板)12によりチャンバー11内で遮蔽して拡散され(矢印A2)、第1の整流板(整流部)13及び第2の整流板(整流部)14により整流される。そのため、簡素な構成で窒素の対流(図2Cの比較例参照)を抑えることができる。また、窒素供給時の圧力損失を抑えることができる。よって、本実施の形態によれば、簡素な構成で塵埃の巻き上げを抑制しながら短時間でチャンバー11内に気体を供給することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、気体置換用チャンバー装置10は、第1の整流板13と、この第1の整流板13により整流された窒素を整流する第2の整流板14と、を含む複数の整流部を備える。そのため、より確実に塵埃の巻き上げを抑制することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、第1の整流板13及び第2の整流板14には、遮蔽板12により拡散された窒素が通過する複数の通気孔13a,14aが形成され、第2の整流板14の通気孔14aは、第1の整流板13の通気孔13aよりも流路が小さい(例えば流路の開口面積が小さい)。そのため、より一層確実に塵埃の巻き上げを抑制することができる。
【0055】
また、本実施の形態では、チャンバー11には、気体供給装置90により気体が供給される開口部(気体流入口)11aが形成され、遮蔽板12は、開口部11aから供給される窒素の流路(矢印A1)の延長上に位置する。そのため、より確実に塵埃の巻き上げを抑制することができる。
【0056】
また、図3Bに示す第1の整流板13−1のように、中心部側の通気孔13−1aが周縁部側の通気孔13−1bより流路(直径)が小さくなる場合、図3Aに示す第1の整流板13よりも、中心部側と周縁部側との流量差を小さくすることができる。
【0057】
また、図3Bに示す第1の整流板13−1の通気孔の流路は、第1の整流板13−1の周縁部側(通気孔13−1b側)から中心部側(通気孔13−1a側)にいくほど小さくなる。そのため、第1の整流板13−1の位置による流量の周縁部側から中心部側への変化をなだらかにすることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、チャンバー11には、光学素子材料100を収容し、チャンバー11内において内部の窒素が置換される光学素子成形用型セット101が投入される。そのため、チャンバー11内の塵埃の巻き上げによって、光学素子成形用型セット101の上型102及び下型103の凹成形面102a,103aや光学素子材料100に塵埃が付着して、光学素子に外観不良等が発生するのを防ぐことができる。したがって、高精度な光学素子を製造することができる。
【0059】
図4A及び図4Bは、本実施の形態の変形例における遮蔽部一体型整流板17,18を示す平面図である。
図4Aに示す遮蔽部一体型整流板(遮蔽部一体型整流部)17は、第1の整流板(整流部)13と遮蔽板(遮蔽部)12とを一体にして設けられている。そのため、遮蔽部一体型整流板17の下方には第2の整流板14が位置するが、この第2の整流板14を省略することも可能である。
【0060】
遮蔽部一体型整流板17は、遮蔽板12と同様に窒素を遮蔽して拡散する非開口部(遮蔽部)17aが中心部側に形成されている。また、遮蔽部一体型整流板17には、非開口部17aの周囲に通気孔17bが形成されている。
【0061】
通気孔17bは、径方向のピッチは例えば一定であるが、遮蔽部一体型整流板17の中心からの配置角度は、中心部側2列(2周)分の通気孔17b−1は例えば20°間隔、その外側2列分の通気孔17b−2は例えば10°間隔、その外側の周縁部側2列分の通気孔17b−3は例えば5°間隔であり、中心部側よりも周縁部側で小さくなっている。なお、配置角度が一定の場合、遮蔽部一体型整流板17の周方向(矢印D)のピッチ(円弧の長さ)は中心部側から周縁部側にいくほど徐々に大きくなるが、上記のように配置角度を中心部側よりも外周部側で小さくすることで、中心部側よりも周縁部側において狭いピッチで通気孔17bが形成されている。そのため、遮蔽部一体型整流板(遮蔽部一体型整流部)17の中心部側と周縁部側との流量差を小さくすることができる。
【0062】
また、図4Bに示す遮蔽部一体型整流板(遮蔽部一体型整流部)18では、その周方向(矢印D)のピッチ及び通気孔18bの流路は、非開口部18aの周囲の中心部側から周縁部側にいくほど大きくなるが、遮蔽部一体型整流板18の径方向には、中心部側の7列の通気孔18b−1よりも狭いピッチで周縁部側の7列の通気孔18b−2が形成されており、中心部側よりも周縁部側において狭いピッチで通気孔18bが形成されている。そのため、遮蔽部一体型整流板(遮蔽部一体型整流部)18の中心部側と周縁部側との流量差を小さくすることができる。
【0063】
なお、上述のように中心部よりも周縁部側において狭いピッチで通気孔18bを形成するのは、遮蔽部と別体の整流部(例えば、第1の整流板13−1)等に適用してもよい。
【0064】
図4A及び図4Bに示す遮蔽部一体型整流板17,18のように遮蔽部と整流部とを一体にすることで、気体置換用チャンバー装置10をより簡素な構成とすることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、第1の整流板13がパンチング材から構成され、第2の整流板14がメッシュ素材から構成される例を説明したが、整流部としては、多孔質素材その他のものを用いることも可能である。
【0066】
また、本実施の形態では、加熱ステージ20、加圧ステージ30、冷却ステージ40に順次光学素子成形用型セット101を移送する循環型の光学素素子の製造装置1を例に説明したが、単一のステージにおいて、光学素子材料100に成形(加熱、加圧及び冷却)を行う光学素子の製造装置にも気体置換用チャンバー装置10は適用可能である。更には、気体置換用チャンバー装置10は、光学素子の製造装置1以外の用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 光学素子の製造装置
10 気体置換用チャンバー装置
11 チャンバー
11a 開口部
11b 収容部
12 遮蔽板(遮蔽部)
13 第1の整流板(第1の整流部)
13a 通気孔
14 第2の整流板(第2の整流部)
14a 通気孔
15 Oリング
16 配管部
17 遮蔽部一体型整流板
17a 非開口部
17b 通気孔
18 遮蔽部一体型整流板
18a 非開口部
18b 通気孔
20 加熱ステージ
21,31,41 上加熱ブロック
22,32,42 下加熱ブロック
23,33,43 シリンダ駆動部
30 加圧ステージ
40 冷却ステージ
50 搬入側予備室
51 シャッター
60 成形室
70 搬出側予備室
71 シャッター
80 減圧装置
90 気体供給装置
100 光学素子材料
101 光学素子成形用型セット
102 上型
102a 凹成形面
103 下型
103a 凹成形面
104 スリーブ
104a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧装置により内部を減圧され、気体供給装置により気体が供給されるチャンバーと、
前記チャンバーに供給される気体を前記チャンバー内で遮蔽して拡散する遮蔽部と、
前記遮蔽部により拡散された気体を整流する整流部と、
を備える、気体置換用チャンバー装置。
【請求項2】
前記整流部は、
第1の整流部と、
前記第1の整流部により整流された気体を整流する第2の整流部と、
を含む、請求項1記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項3】
前記第1の整流部及び前記第2の整流部には、前記遮蔽部により拡散された前記気体が通過する複数の通気孔が形成され、
前記第2の整流部の前記通気孔は、前記第1の整流部の前記通気孔よりも流路が小さい、請求項2記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項4】
前記チャンバーには、前記気体供給装置により気体が供給される気体流入口が形成され、
前記遮蔽部は、前記気体流入口から供給される前記気体の流路の延長上に位置する、請求項1から請求項3のいずれか1項記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項5】
前記整流部には、前記遮蔽部により拡散された前記気体が通過する複数の通気孔が形成され、
前記整流部の中心部側の前記通気孔は、前記整流部の周縁部側の前記通気孔よりも流路が小さい、請求項1から請求項4のいずれか1項記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項6】
前記通気孔の流路は、前記整流部の前記周縁部側から前記中心部側にいくほど小さくなる、請求項5記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項7】
前記整流部には、前記遮蔽部により拡散された前記気体が通過する複数の通気孔が形成され、
前記整流部の周縁部側には、前記整流部の中心部側よりも狭いピッチで前記通気孔が形成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項8】
前記遮蔽部は、前記整流部と一体に設けられている、請求項1記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項9】
前記整流部は、パンチング材、メッシュ素材及び多孔質素材のうちのいずれかから構成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項10】
前記チャンバーには、光学素子材料を収容し、前記チャンバー内において内部の気体が置換される光学素子成形用型セットが投入される、請求項1から請求項9のいずれか1項記載の気体置換用チャンバー装置。
【請求項11】
光学素子材料を収容する光学素子成形用型セットをチャンバー内に投入する投入工程と、
前記チャンバーの内部を減圧して、前記光学素子成形用型セットの内部を減圧する減圧工程と、
前記チャンバーに気体を供給して、前記光学素子成形用型セットの内部に気体を供給する気体供給工程と、
前記光学素子成形用型セットを用いて、前記光学素子材料を成形する成形工程と、を含み、
前記気体供給工程では、前記チャンバーに供給される気体を遮蔽部により前記チャンバー内で遮蔽して拡散し、拡散した気体を整流部により整流する、光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−158508(P2012−158508A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21115(P2011−21115)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)