説明

水中油型化粧料

【課題】長期の乳化安定性を有し、使用感が良好で保湿効果の持続性に優れる水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】下記の成分(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)を含有し、全質量に対する成分(ア)の含有量が0.01〜30質量%、成分(イ)及び成分(ウ)の合計量が1〜60質量%、成分(エ)の含有量が1〜30質量%、かつ、成分(イ)と成分(ウ)の合計量100質量部に対する成分(イ)の量が10質量部以上である、水中油型乳化化粧料。
(ア)一般式(I)で表されるポリアルキレングリコール誘導体。
Z−{O−(EO)(AO)−H} (I)

(式中、Zは、水酸基を3〜6個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基)
(イ)エステル油、トリグリセリドから選ばれる1種以上の極性油
(ウ)炭化水素油
(エ)炭素数2〜6の2価又は3価のアルコール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコール誘導体を含む水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品には、皮膚や毛髪に滑らかさやしっとり感を付与するために油性基剤が汎用されている。油性基剤としては、流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素油、植物油に代表される油脂やトリグリセリド、エステル結合を有するエステル油、ジメチルシロキサンなどといったシリコーン油などが特に汎用され、これらを安定配合するために、様々な乳化形態がある。その中でも、水中油型乳化化粧料(以下、O/W型乳化化粧料と示す場合がある)は、さっぱりしたみずみずしい使用感が好まれ、乳液、クリームなど多くの剤型に広く利用されている。
しかし、保湿効果の持続性を得るために油剤を高配合すると、乳化が困難となり、配合安定性を損なうばかりか、使用感の悪化をもたらす場合があった。
このような課題を達成するためは、セルロールなど天然多糖類から誘導される水溶性高分子や、アクリル酸系ポリマーなどの水溶性合成高分子を添加することで連続相の水相の粘性をコントロールし、乳化安定性及び使用感を改善する方法が一般的である(例えば非特許文献1又は特許文献1)。
【0003】
しかし、天然多糖類系の高分子では、使用感は良好であるものの、乳化安定性において十分に満足いくものではなかった。また、アクリル酸系ポリマーなどの高分子では、乳化安定性には効果を示すものの、べたつき感があり使用感及び保湿効果の持続性において十分に満足いくものではなかった。
また、優れた感触と高い保湿性の双方を有する化粧料用基剤及びこれを配合する化粧料の提案もなされている(例えば特許文献2)がなされている。さらには、油性成分との相溶性に優れた化粧料用基剤及びこれを配合する化粧料の提案もなされている(例えば特許文献3)。しかし、これら提案では、感触、保湿効果、油性成分との相溶性には優れているものの、界面活性能に劣る場合があり、配合安定性に関しては十分に満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−106043号公報
【特許文献2】国際公開2006−038724号公報
【特許文献3】特開2006−282539号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】フレグランス ジャーナル2007−7 p40−45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、長期間の乳化安定性を有する化粧料を提供することであり、特に、長期の乳化安定性を有し、使用感が良好で保湿効果の持続性に優れる水中油型乳化化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のポリアルキレングリコール誘導体を配合することで、これらの課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は以下に示されるものである。
(1)下記の成分(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)を含有し、全質量に対する成分(ア)の含有量が0.01〜30質量%、成分(イ)及び成分(ウ)の合計量が1〜60質量%、成分(エ)の含有量が1〜30質量%であり、かつ、成分(イ)と成分(ウ)の合計量100質量部に対する成分(イ)の量が10質量部以上である、水中油型乳化化粧料。
(ア)一般式(I)で表されるポリアルキレングリコール誘導体。
Z−{O−(EO)(AO)−H} (I)

(式中、Zは、水酸基を3〜6個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基、mは3〜6、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基を示し、EOとAOはブロック状に結合している。
aはEOの平均付加モル数で5〜100、kはAOの平均付加モル数で1〜20であり、EOとAOの合計質量に対するEOの質量割合(X)は、75<X≦95質量%である。)
(イ)エステル油、トリグリセリドから選ばれる1種以上の極性油
(ウ)炭化水素油
(エ)炭素数2〜6の2価又は3価のアルコール
(2)AOが、1,2−オキシブチレン基である、上記(1)記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中油型乳化化粧料は、式(I)で表される基材を配合したことにより、長期にわたり乳化安定性を維持することができる。肌に塗布したときのべたつき感が少なく、のびがよいなど、使用感に優れる上、保湿効果が持続するなど、とくに皮膚化粧料として顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポリアルキレングリコール誘導体]
本発明に係る水中油型化粧料における成分(ア)は、下記一般式(I)により示されるポリアルキレングリコール誘導体である。
Z−{O−(EO)(AO)−H} (I)

式中、Zは、水酸基を3〜6個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基である。
水溶性多価アルコールとしては、水酸基が3個の、グリセリン、トリメチロールプロパン、水酸基が4個の、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、メチルグルコシド、水酸基が5個のキシリトール、トリグリセリン、水酸基が6個のソルビトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールが例示される。好ましくは、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトールである。
mは3〜6で、好ましくは3〜4である。mが2以下では、求める乳化安定性が得られない。mが7以上では、べたつき感を生じてしまい、求める使用感が得られず好ましくない。
【0010】
EOはオキシエチレン基であり、ポリアルキレングリコール誘導体の親水基となる。aはEOの平均付加モル数で5〜100であり、好ましくは、10〜40である。ただし、a×mは、式(I)における全EO付加モル数を示す。aが5より小さいと十分な親水性が得られず、安定な乳化物が得られない場合があり好ましくない。また、aが100より大きいとべたつき感を生じてしまい、求める使用感が得られず好ましくない。
AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基であり、本発明のポリアルキレングリコール誘導体の親油基となる。炭素数4の1,2−オキシブチレン基、炭素数5の1,2−オキシペンチレン基、炭素数6の1,2−オキシヘキシレン基、炭素数7の1,2−オキシへプチレン基、炭素数8の1,2−オキシオクチレン基が例示できるが、好ましくは、1,2−オキシブチレン基又は1,2−オキシオクチレン基である。より好ましくは、1,2−オキシブチレン基である。AOは1種でも2種以上でも構わないが、2種以上の場合、付加形態は、ランダム状であってもブロック状であってもどちらでもよい。
kはAOの平均付加モル数で、1〜20であり、好ましくは、1〜10である。kが1より小さいと、十分な親油性が得られず、乳化安定性に劣る。また、20より大きいと、保湿効果の持続性に劣る場合があり好ましくない。k×mは、式(I)の全AO付加モル数である。
EOとAOの合計質量に対するEOの質量割合(X)は、75<X≦95質量%であり、好ましくは80≦X≦95である。75質量%以下では、十分な親水性が得られず、乳化安定性に劣るばかりか、保湿効果の持続性に劣る場合があり、好ましくない。また、95質量%より大きい場合は、水中油型乳化剤としては、油相を内包させる効果に劣る場合があり好ましくない。
EOとAOはブロック状に結合している。ランダム状では、十分な界面活性能が得られず、乳化可溶化剤として作用しない。
【0011】
本発明の式(I)で示されるポリオキシアルキレングリコール誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を3〜6個有する水溶性多価アルコールに、アルカリもしくは酸触媒下、オキシエチレン、次いで炭素数4〜8のオキシアルキレンを付加重合して得ることができる。
【0012】
[水中油型乳化化粧料]
本発明の式(I)で示されるポリオキシアルキレングリコール誘導体は、エステル油、トリグリセリド及び炭化水素油からなる油相との相溶性がよく、さらに、炭素数2〜6の2価又は3価のアルコールと併用すると、使用感及び保湿効果の持続性が良好となる。すなわち、下記成分(ア)を0.01〜30質量%、成分(イ)及び成分(ウ)の合計量を1〜60質量%、成分(エ)を1〜30質量%を含有し、成分(イ)と成分(ウ)の合計量を100質量部としたときに前記成分(イ)の量が10質量部以上である、O/W型化粧料が好適である。
(ア)一般式(I)で表されるポリアルキレングリコール誘導体。
(イ)エステル油、トリグリセリドから選ばれる1種以上の極性油
(ウ)炭化水素油
(エ)炭素数2〜6の2価又は3価のアルコール
【0013】
成分(ア)のポリアルキレングリコール誘導体の配合量は、0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。0.01質量%より少ないと乳化安定性に劣り好ましくない。また、30質量%より多いと、べたつき感が生じてしまい、使用感に劣る。
【0014】
成分(イ)のうち、トリグリセリドとしては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、エイコサン酸、べへン酸、テトラコサン酸、ミリストレン酸、パルミトレン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、硬化パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、豚脂脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸などの炭素数6以上の高級脂肪酸のトリグリセリド、オリーブ油、ヒマワリ油、ハイブリッドヒマワリ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヤシ油、ツバキ油、カカオ脂、シア脂などの動植物油脂類などが例示できる。エステル油としては、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、2−エチルへキサン酸ステアリル、2−エチルへキサン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、エルカ酸オクチルドデシル、ジデカン酸ネオペンチルグリコール、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパンアジピン酸ジデシル、アジピン酸ジデシル、(アジピン酸・2−エチルへキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、イソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸バチル、イソステアリン酸フィトステリル、オキシステアリン酸オクチル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、オレイン酸フィトステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ジヤシ油脂肪酸ペンタエリスリット、ステアリン酸硬化ヒマシ油、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ラノリン脂肪酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ステアリン酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、リシノレイン酸セチル、コハク酸ジオクチル、乳酸セチル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジノナン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジステアリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコールなどが例示できる。また、ミツロウ、モクロウ、カルナバロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、ホホバ油などロウ類も使用できる。これらを1種もしくは2種以上用いることができる。好ましくは、炭素数6以上の高級脂肪酸のトリグリセリド、動植物油脂類、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミツロウ、モクロウなどロウ類である。
【0015】
成分(ウ)の炭化水素油としては、流動パラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、スクワレン、プリスタン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、テトラデセン、イソヘキサデカン、イソドデカン、α―オレフィンオリゴマー、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィン、ポリエチレン、セレシン等を挙げることができる。好ましくは、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスである。これらを1種又は2種以上、用いることができる。
【0016】
成分(イ)と成分(ウ)の合計量は、1〜60質量%である。60質量%を超えると、安定なO/W型乳化物が得られないことがあり劣り好ましくない。成分(イ)と成分(ウ)の合計量を100質量部としたときに、成分(イ)の量は10質量部以上であり、好ましくは、10〜90質量部である。10質量部より少ないと、成分(ア)と油相との相溶性に劣り、乳化安定性が低下する場合があるため好ましくない。
また、成分(イ)と成分(ウ)の合計量が、30質量%を超える場合には、成分(イ)として、炭素数6以上の高級脂肪酸のトリグリセリド、もしくは、動植物油脂を使用することが好ましい。
【0017】
成分(エ)は、炭素数2〜6の2価又は3価のアルコールであり、良好な使用感及び保湿効果の持続性に寄与する。このようなアルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、メチルプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンチレングリコール、1,2−へキシレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンが例示される。好ましくは、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリンである。
成分(エ)の配合量は、1〜30質量%である。1質量%より少ないと、求める保湿効果が得られない。また、30質量%より多いとべたつき感が生じてしまい、使用感が悪化することがあり、好ましくない。
【0018】
本発明の化粧料の形態は常温において液状、半固体、固体の何れかの形態をとることができる。さらに、他の任意成分を本発明の性能を損なわない範囲で含有することも可能である。例えば、低級アルコール、シリコーン油、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、半極性界面活性剤、水溶性高分子、有機又は無機塩類、pH調整剤、殺菌剤、キレート剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、動植物由来の天然エキス、色素、顔料、香料などが挙げられる。
【0019】
本発明の水中油型乳化化粧料の製品形態は、前述の形態に特に限定されるものではないが、皮膚外用剤であることが好ましい。皮膚外用剤としては、化粧水、乳液、クリーム、パック等のスキンケア化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー等のメークアップ化粧料;日焼け止め化粧料;ボディー化粧料;芳香化粧料;メーク落とし、ボディーシャンプー、ハンドソープ等の皮膚化粧料;ヘアリキッド、ヘアトニック、育毛剤等の毛髪化粧料;軟膏等が例示できる。
本発明の水中油型乳化化粧料の調製方法は、特に限定されないが、転相乳化にて得ることが一般的である。この場合、50〜90℃程度にて、水相及び油相をそれぞれ調製し、水相を攪拌しながら、油相を徐々に添加し予備乳化を行う。その後、ホモジナイザーなど乳化機を用いて攪拌し、冷却して得ることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[合成例]
本発明にかかる化粧料用基剤の合成例を示す。水酸基価は、JISK1557
6.4に準じて測定した。
合成例1:ポリオキシブチレン(12モル、k=3)
ポリオキシエチレン(108モル、a=27)
ペンタエリスリトールエーテル(m=4)(化合物1)

ペンタエリスリトール45g、トルエン50g、水酸化カリウム5.6gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら、140℃にて、滴下装置より、エチレンオキシド1570gを滴下して2時間撹拌した。引き続き、110℃にて1,2−ブチレンオキシド290gを滴下し、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有するトルエン及び水分を除去するため、115℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、1700gの化合物1を得た。水酸基価は、エチレンオキシド反応後が45.9mgKOH/g、1,2−ブチレンオキシド反応後が39.0mgKOH/gであった。
【0021】
合成例2:ポリオキシブチレン(20モル、k=5)
ポリオキシエチレン(160モル、a=40)
ジグリセリルエーテル(m=4) (化合物2)

ジグリセリン50g、水酸化カリウム8.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら、140℃にて滴下装置より、エチレンオキシド2115gを滴下して2時間撹拌した。引き続き、140℃にて、1,2−ブチレンオキシド435gを滴下し、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃にて1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、2500gの化合物2を得た。水酸基価は、エチレンオキシド反応後が31.1mgKOH/g、1,2−ブチレンオキシド反応後が25.9mgKOH/gであった。
上記合成例1〜2に準じて、下記表1に示す組成のポリアルキレングリコール誘導体(化合物3〜10)及び化合物11、12を合成した。
【0022】
【表1】

【0023】
化合物12
グリセリン(m=3)に、エチレンオキシド90モル(a=30)、及びプロピレンオキシド9モルをランダム付加重合した後、さらに、1,2−ブチレンオキシド9モル(k=3)を付加重合した化合物(EO77.2質量%)。
【0024】
<実施例1〜10、比較例1〜11>
表2に示す組成にて、O/W型エモリエントクリームを調製し、使用感及び乳化安定性の評価を行った。
調製方法
[油相]
(ア)又は(ア’)成分
(イ)成分
(ウ)成分
セチルアルコール
ステアリルアルコール
モノステアリン酸ソルビタン
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75モル)
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン
防腐剤
香料
[水相]
(エ)成分

油相と水相をそれぞれ70〜80℃にて加熱溶解させる。同温度にて、ホモジナイザーを用いて、5000rpmで攪拌しながら、水相に油相を徐々に加えて、5000rpmにて10分間攪拌した。その後、40℃以下に急冷して、エモリエントクリームを得た。
【0025】
使用感の評価方法
20名の専門女性パネラーに、得られたエモリエントクリームの[塗布時の感触]と[保湿効果の持続性]について、以下の基準にて評価してもらった。3.5点以上を合格基準とした。評価結果を表2に併せて示す。
[塗布時の感触]
25℃、相対湿度50%の環境下にて、調製直後のエモリエントクリームを前腕内側部に塗布し、塗布時の使用感について以下の基準にて評価した。
5:のびが非常によく、全くべたつき感がない。
4:のびがよく、全くべたつき感がない。
3:のびがやや悪く、ややべたつき感がある。
2:のびが悪く、べたつき感がある。
1:のびが非常に悪く、べたつき感が非常に強い。
[保湿効果の持続性]
[塗布時の感触]の評価に引き続き、25℃、相対湿度50%の環境下にて2時間経過後の保湿効果について、以下の基準にて評価した。
5:かさつきが全くなく、十分にうるおっている状態。
4:かさつきがなく、うるおっている状態。
3:かさつきが若干あり、うるおいが少し足りない状態。
2:かさつきがあり、うるおいが足りない状態。
1:かさつきがひどく、うるおいが足りない状態。
乳化安定性の評価方法
乳化直後、室温及び40℃にて1ヶ月間保管した状態を目視した。
○○:乳化状態を維持。
○:下部にわずかに離水しているが、全体的に安定。
×:上部に油相、中層部に界面活性剤相、下部に水相が発現。
××:分離
【0026】
【表2】

【0027】
本発明の処方例を以下に挙げる。何れの処方例も、[塗布時の感触]、[保湿効果の持続性]、[乳化安定性]が良好であった。
<処方例1:O/W型乳液>
[油相]
(ア)化合物1 1.0質量%
(イ)ミツロウ 1.0質量%
(ウ)ワセリン 1.0質量%
(ウ)スクワラン 5.0質量%
セスキオレイン酸ソルビタン 0.8質量%
ポリオキシエチレン(20モル)オレイルエーテル 0.5質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(75モル) 1.0質量%
香料 適量
[水相]
(エ)1,2−へキサンジオール 2.0質量%
(エ)1,3−ブチレングリコール 3.0質量%
水 残部
調製方法
油相と水相をそれぞれ70〜80℃にて加熱溶解させる。同温度にて、ホモジナイザーを用いて、5000rpmで攪拌しながら、水相に油相を徐々に加えて、5000rpmにて10分間攪拌した。その後、40℃以下に急冷して、乳液を得た。
【0028】
<処方例2:O/W型クレンジングローション>
[油相]
(ア)化合物2 2.0質量%
(イ)2−エチルへキサン酸セチル 5.0質量%
(イ)ハイブリッドヒマワリ油 5.0質量%
(ウ)水添ポリイソブテン 10.0質量%
シクロメチコン 5.0質量%
セチルアルコール 1.5質量%
親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン 1.0質量%
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75モル) 1.0質量%
防腐剤 適量
香料 適量
[水相]
(ニ)グリセリン 5.0質量%
(ニ)ジプロピレングリコール 5.0質量%
PEG#1500 2.0質量%
水 残部
[中和剤]
トリエタノールアミン 0.1質量%
調製方法
油相と水相をそれぞれ70〜80℃にて加熱溶解させる。同温度にて、ホモジナイザーを用いて、5000rpmで攪拌しながら、水相に油相を徐々に加えて、5000rpmにて10分間攪拌した。その後、中和剤を添加して、さらに70〜80℃、5000rpmにて10分間攪拌した。その後、40℃以下に急冷して、クレンジングローションを得た。
【0029】
<処方例3:O/W型クレンジングクリーム>
[油相]
(ア)化合物1 2.0質量%
(イ)オリーブ油 5.0質量%
(ウ)流動パラフィン 25.0質量%
(ウ)ワセリン 15.0質量%
(ウ)マイクロクリスタリンワックス 3.0質量%
親油型モノステアリン酸グリセリン 3.0質量%
防腐剤 適量
香料 適量
[水相]
(ニ)1,3−ブチレングリコール 4.0質量%
(ニ)グリセリン
1.0質量%
水 残部
調製方法
油相と水相をそれぞれ70〜80℃にて加熱溶解させる。同温度にて、ホモジナイザーを用いて、5000rpmで攪拌しながら、水相に油相を徐々に加えて、5000rpmにて10分間攪拌した。その後、40℃以下に急冷して、クレンジンクリームを得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)を含有し、全質量に対する成分(ア)の含有量が0.01〜30質量%、成分(イ)及び成分(ウ)の合計量が1〜60質量%、成分(エ)の含有量が1〜30質量%であり、かつ、成分(イ)と成分(ウ)の合計量100質量部に対する成分(イ)の量が10質量部以上である、水中油型乳化化粧料。
(ア)一般式(I)で表されるポリアルキレングリコール誘導体。
Z−{O−(EO)(AO)−H} (I)

(式中、Zは、水酸基を3〜6個有する水溶性多価アルコールから水酸基を除いた残基、mは3〜6、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基を示し、EOとAOはブロック状に結合している。
aはEOの平均付加モル数で5〜100、kはAOの平均付加モル数で1〜20であり、EOとAOの合計質量に対するEOの質量割合(X)は、75<X≦95質量%である。)
(イ)エステル油、トリグリセリドから選ばれる1種以上の極性油
(ウ)炭化水素油
(エ)炭素数2〜6の2価又は3価のアルコール
【請求項2】
AOが、1,2−オキシブチレン基である、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。




【公開番号】特開2012−207000(P2012−207000A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75269(P2011−75269)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】