説明

水中血圧計

【課題】水や水圧の影響を受けることなく水中で血圧を正常に測定することができる水中血圧計の提供。
【解決手段】防水ケース10内に血圧計本体50が収納設置され、かつ当該防水ケース10外に加圧袋80を備えた血圧計用カフ70とマイク90が配置されていると共に、当該防水ケース10が、潜行時防水ケース10の外部圧の増加に伴ない、防水ケース10内に空気を導入して防水ケース10の内部圧と外部圧とを平衡にする、呼吸用エアタンク100と連結可能なレギュレータ20と、浮上時防水ケース10の外部圧の減少に伴ない、防水ケース10内の空気を防水ケース10外に排出する排気バルブ33を有する外部排気管部32と、血圧計本体50の測定開始ボタン51を作動せしめる測定開始レバー40とを備えていることを特徴とする水中血圧計。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中において人体の血圧を測定するための水中血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水泳を始めとする水中運動は健康法の一つと認識されているが、一方でAED(自動体外式除細動器)使用例の30%が水中運動時発作に関係するなど、特に心血管系有病者にとって水中運動が健康リスクと成り得ることを示唆する成績も報告されている。つまり、ヒトの水中での血圧変動を知ることはスポーツ健康医学における重要な課題の一つである。
【0003】
しかしながら、従来の非侵襲式血圧計は一般に血圧計本体と、加圧袋及びマイクを備えたカフとによって構成され、大気圧下での測定を前提としているものであったため、そもそも水との接触状態下、しかも水圧による加圧状態下にある水中での血圧測定には供し得ないのが実状であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の如き従来の実状に鑑みてなされたものであり、水や水圧の影響を受けることなく水中で血圧を正常に測定することができる水中血圧計を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、種々検討を重ねた結果、水中において、血圧計本体と水との接触を防止し、かつ血圧計本体を水圧と平衡圧に保持する防水ケースを用いれば、極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、防水ケース内に血圧計本体が収納設置され、かつ当該防水ケース外に加圧袋を備えた血圧計用カフとマイクが配置されていると共に、当該防水ケースが、潜行時防水ケースの外部圧の増加に伴ない、防水ケース内に空気を導入して防水ケースの内部圧と外部圧とを平衡にする、エアタンクと連結可能なレギュレータと、浮上時防水ケースの外部圧の減少に伴ない、防水ケース内の空気を防水ケース外に排出する排気バルブを有する排気管と、血圧計本体の測定開始ボタンを作動せしめる測定開始レバーとを備えていることを特徴とする水中血圧計により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中血圧計を用いれば、血圧計本体が水と接触することがなく、しかも防水ケースの内部圧と外部圧とが平衡に保持されるので、水や水圧の影響を受けることなく水中で血圧を正常に測定することができる。
【0008】
その結果、水中活動時における血圧に関する基礎データの収集時の研究はもとより、各種水中競技、スイミングスクール等への参加者の健康管理も可能となり、スポーツ健康医学分野に大きく貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明水中血圧計の概略構成説明図。
【図2】本発明水中血圧計の使用例を示す概略説明図。
【図3】レギュレータの空気導入作動例を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0011】
図1は、本発明水中血圧計の概略構成説明図である。
該図1において、10は防水ケースで、レギュレータ20と、排気管30と、測定開始レバー40とを備えており、その材質は防水可能なものであれば、金属、プラスチック等特に限定されない。
また、11は水受けスペース部で、防水ケース10の下部、換言すれば内部に収納設置された血圧計本体50の下位に形成されている。
【0012】
レギュレータ20は、潜行時防水ケース10の外部圧の増加に伴ない、防水ケース10内に自動的空気を導入して防水ケース10の内部圧と外部圧とを平衡にするもので、ダイアフラム21と、該ダイアフラム21の変形に連動して開閉するバルブ22が設置された空気導入管23とを備え、当該空気導入管23は呼吸用エアタンク100と連結可能となっている。
【0013】
排気管30は、浮上時防水ケース10の外部圧の減少に伴ない、防水ケース10内の空気を防水ケース10外に排出するもので、防水ケース10内に配設された内部排気管部31と防水ケース10外に配設された外部排気管部32とから成り、当該内部排気管部31と外部排気管部32の連結部内に、防水ケース10の内部圧が外部圧より高いときに開き、当該内部圧が外部圧以下のときに閉じる排気バルブ33が設置されている。
尚、当該内部排気管部31は、その下端31aが防水ケース10の水受けスペース部11に開口するように配設されている。
【0014】
測定開始レバー40は、防水ケース10の外部から防水ケース10内に収納設置された血圧計本体50の測定開始ボタン51を作動せしめるもので、その一端が防水ケース10外壁に枢着されていると共に、上下回動する他端に磁石(図示省略)が取り付けられている。一方、防水ケース10内の血圧計本体50の測定開始ボタン51の上方には、略中央部に測定開始ボタン操作用凸部61を備えている上下回動バー60が配設されている。この上下回動バー60の一端は防水ケース10内壁に枢着されていると共に、測定開始レバー40側において上下回動する他端に磁石(図示省略)が取り付けられている。
斯かる構成により、測定開始レバー40を引き下げると、測定開始レバー40の磁石と上下可動バー60の磁石の磁力により上下回動バー60も下動し、測定開始ボタン操作用凸部61が測定開始ボタン51を押すことで、血圧計本体50のスイッチが入るようになっている。このように、磁石の磁力により測定開始ボタン51の作動を制御しているので、防水ケース10に穴を形設する必要がないので、水が侵入する恐れもない。
【0015】
70は防水ケース10外に配設された血圧計用カフで、その内側には加圧袋80が装着されている。当該加圧袋80は、空気管81を介して防水ケース10内の血圧計本体50と空気導入可能に連結されている。
90は防水ケース外に配設された血圧計用マイクで、血圧測定時には加圧袋80の内部に入れて使用される。当該血圧計用マイク90は、チューブ等で防水加工したコード91を介して、コロトコフ音の伝達可能に防水ケース10内の血圧計本体50に連結されている。
【0016】
次に、上記の実施の形態に係る水中血圧計の使用方法を説明する。
【0017】
まず、図2に示すように、血圧計本体50が収納設置された防水ケース10を呼吸用エアタンク100の外壁に取り付け固定すると共に、当該呼吸用エアタンク100内に空気導入管23を連結し、その状態で被測定者が呼吸用エアタンク100を装着する。
次いで、被測定者の腕Pに、加圧袋80の内側に血圧計用マイク90を入れた状態で血圧計用カフを巻回固定する。
因に、斯かる状態におけるレギュレータ20のバルブ22は、図3(1)に示されているように、防水ケース10の内部圧と外部圧が平衡状態となっているため、閉じられていると共に、排気管30の排気バルブ33も閉じられている。
【0018】
次いで、呼吸用レギュレータ110を口に装着して潜行すると、図3(2)に示されているように、防水ケース10の外部圧が増加するので、レギュレータ20のダイアフラム21が変形し、その変形に連動してバルブ22が開き、空気導入管23が開口するので、呼吸用エアタンク100から空気が防水ケース10内に導入される。
【0019】
次いで、防水ケース10の内部圧と外部圧とが平衡になるまで防水ケース10内に空気が導入されるとダイアフラム21の変形が元に戻るので、図3(1)に示す状態となり、レギュレータ20のバルブ22が閉じられ、空気の導入が停止される。因に、この状態においても排気管30の排気バルブ33は閉じられているため、水が防水ケース10内に侵入することは防止されている。
【0020】
次いで、斯かる状態で測定開始レバー40を操作し、血圧計本体50の測定開始ボタン51を作動せしめれば、大気中におけると同様に、潜行中の被測定者の血圧が正常に測定記録される。
【0021】
次いで、血圧測定後浮上すると、防水ケース10の外部圧が内部圧より減少するので、大きな内部圧により排気管30の排気バルブ33が開き、防水ケース10内の空気が内部排気管部31〜外部排気管部32を経て防水ケース10外に排出され、防水ケース10の内部圧と外部圧が平衡になると排気バルブ33が閉じる。
【0022】
仮に、何らかの事情により、防水ケース10内に水Wが侵入した場合には、水受けスペース部11に貯水されるので、血圧計本体50と水との接触を防止することができる。またタイヤフラム21を押し、バルブ22を開いて呼吸用エアタンク100から空気を防水ケース10内に導入すれば、防水ケース10の内部圧が外部圧より高まり、排気バルブ33が開くので、水受けスペース部11の水が内部排気管部31〜外部排気管部32を経て防水ケース10外に排水することができる。
【符号の説明】
【0023】
10:防水ケース
11:水受けスペース部
20:レギュレータ
21:ダイアフラム
22:バルブ
23:空気導入管
30:排気管
31:内部排気管部
32:外部排気管部
40:測定開始レバー
50:血圧計本体
51:測定開始ボタン
60:上下回動バー
61:測定開始ボタン操作用凸部
70:血圧計用カフ
80:加圧袋
81:空気管
90:血圧計用マイク
91:コード
100:呼吸用エアタンク
110:呼吸用レギュレータ
P:腕
W:水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水ケース内に血圧計本体が収納設置され、かつ当該防水ケース外に加圧袋を備えた血圧計用カフとマイクが配置されていると共に、当該防水ケースが、潜行時防水ケースの外部圧の増加に伴ない、防水ケース内に空気を導入して防水ケースの内部圧と外部圧とを平衡にする、エアタンクと連結可能なレギュレータと、浮上時防水ケースの外部圧の減少に伴ない、防水ケース内の空気を防水ケース外に排出する排気バルブを有する排気管と、血圧計本体の測定開始ボタンを作動せしめる測定開始レバーとを備えていることを特徴とする水中血圧計。
【請求項2】
排気管が、防水ケース内に配設された内部排気管部と防水ケース外に配設された外部排気管部とから成ると共に、当該内部排気管部の下端が、防水ケース内の血圧計本体下位に形設された水受けスペース部に開口していることを特徴とする請求項1記載の水中血圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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