説明

水圧発電装置及び構造物の固定構造

【課題】 陸上の用地を確保するための手間と費用を削減することができる水圧発電装置を提供すること。
【解決手段】海底13に構造物の固定構造12により設けられ、内部に空洞14aを有する空洞体14と、空洞体14に設けられ、その内部と大気とを連通する大気連通管16と、空洞体14の壁部に挿通して設けられ、空洞体14の内部と外部の海中とを連通する水管23と、水管23に連通するように設けられ、水車及びポンプとして機能する水車ポンプ15と、水車ポンプ15に連結され、発電機及び電動機として機能する発電電動機18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力消費地や、変電所等の電力施設から近い距離にある海底や水底又はその近くの水中に設けることができる水圧発電装置、及びこの水圧発電装置に使用することができる構造物の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力需要のピークの時間帯に合わせて供給電力の増加を図る上で、揚水発電所は、有用なよく知られたものである。
【0003】
しかし、揚水発電所の上部貯水池及び下部貯水池が、適切な高度差と距離にあることが必要であって、しかも、揚水発電所が、電力消費地や、変電所等の電力施設から近い距離にあるという適切な立地条件を満たすことが経済上望まれため、揚水発電所の適切な建設場所は、極めて限られている。従って、このような適切な立地条件を満たす新たな建設場所を確保することは、極めて困難な状況となっている。
【0004】
従来の揚水発電設備の一例として、地下に設けられた地下水槽と、この地下水槽と海洋とを互いに連通する水路と、この水路に設けられた水車ポンプと、この水車ポンプに連結された発電電動機とを備えているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この揚水発電設備によると、電力需要が旺盛な時間帯に海洋から海水を水路に通して地下水槽に落下させて、水車ポンプを水車として運転する。これによって、発電電動機を発電機として運転して発電することができ(発電運転)、この発電した電力によって電力需要の負荷の一部を賄うことができる。
【0006】
そして、電力需要が少ない時間帯の夜間電力又は余剰電力を用いて発電電動機を電動機として運転すると共に、水車ポンプをポンプとして運転することによって、地下水槽に溜まっている海水を揚水して水路に通して海洋に排出する(排水運転)。これによって、発電運転の準備をすることができ、電力需要が旺盛な時間帯に発電運転をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−278632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の揚水発電設備は、沿岸に地下水槽を作ることが必要であって、しかも、このような地下水槽を必要とする揚水発電設備が、電力消費地や、変電所等の電力施設から近い距離にあることが経済上望まれるため、上記従来の揚水発電設備であっても、適切な立地条件を満たす新たな建設場所を確保することは、極めて困難であると言える。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、陸上の用地を確保するための手間と費用を削減することができる水圧発電装置及びそれに使用することができる構造物の固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水圧発電装置は、海底や水底又はその近くに浮上しないように水中に固定手段により設けられ、内部に空洞を有する空洞体と、前記空洞体に設けられ、その内部と大気とを連通する大気連通部と、前記空洞体の壁部に設けられ、前記空洞体の内部と外部の水中とを連通する連通孔と、前記連通孔に連通するように設けられ、水車及びポンプとして機能する水車ポンプと、前記水車ポンプに連結され、発電機及び電動機として機能する発電電動機とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る水圧発電装置によると、まず、空洞体の内部に海水又は水が収容されているときに、発電電動機を電動機として運転して、水車ポンプを回転させてポンプとして運転する。これによって、空洞体の内部の海水等を空洞体の外部の水中に排出することができ(排水運転)、このとき、大気中の空気が大気連通部を通って空洞体の内部に流入する。この空洞体の内部の圧力は、大気圧又はそれに近い圧力である。これで、この水圧発電装置を発電運転できる準備が整う。
【0012】
次に、発電電動機を電動機から発電機としての運転に切り替えると共に、水車ポンプをポンプから水車としての運転に切り替える。しかる後に、空洞体の外部の水圧の掛った海水等の圧力水を、空洞体に設けられている連通孔に通して空洞体の内部に流入させる。このとき、連通孔を通る圧力水は、水車ポンプを回転させて、この水車ポンプが発電電動機を回転させて発電することができる(発電運転)。
【0013】
ここで、空洞体の外部の水圧の掛った海水等の圧力水が、空洞体の連通孔を通る際に水車ポンプを回転させることができるのは、空洞体の内部の圧力(大気圧又はそれに近い圧力)と、空洞体の外部の海水等の水圧との圧力差によって、空洞体の外側の海水等が連通孔に流入するからである。
【0014】
この発明に係る水圧発電装置において、前記固定手段は、前記空洞体の下側に向かう開口の開口縁部と、海底又は水底との間を封止する構成を有し、前記空洞体は、その外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及び前記空洞体の重量に基づく重力方向の力が、それらに基づき鉛直上方向に働く力よりも大きくなるように形成されているものとするとよい。
【0015】
このように、空洞体の内部の圧力が、大気圧又はそれに近い圧力となるようにして、空洞体の下側に向かう開口の開口縁部と、海底又は水底との間を封止することによって、空洞体の外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及び空洞体の重量に基づく重力方向の力が、それらに基づき鉛直上方向に働く力よりも大きくなるように空洞体を形成することができる。このように、空洞体を形成することによって、空洞体に働く重力方向の力を利用して空洞体を海底等に固定することができ、空洞体を海底等に固定するための構造の簡単化を図ることができる。
【0016】
この発明に係る水圧発電装置において、前記空洞体は、海底や水底から間隔を隔てて配置され、前記固定手段は、海底や水底に設けられているアンカー用空洞体と、前記空洞体と前記アンカー用空洞体とを互いに連結する連結部と、前記空洞体の内部と前記アンカー用空洞体の内部とを連通し、又は前記アンカー用空洞体の内部と大気とを連通する第2大気連通部とを備え、前記アンカー用空洞体は、下側に向かう開口が形成され、前記開口を形成する開口縁部と、海底又は水底との間が封止され、更に、前記アンカー用空洞体は、その外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及び前記アンカー用空洞体の重量に基づく重力方向の力が、前記空洞体及び前記アンカー用空洞体に働く鉛直上方向の力よりも大きくなるように形成されているものとするとよい。
【0017】
このように、アンカー用空洞体の内部の圧力が、大気圧又はそれに近い圧力となるようにして、アンカー用空洞体の下側に向かう開口の開口縁部と、海底又は水底との間を封止することによって、アンカー用空洞体の外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及びアンカー用空洞体の重量に基づく重力方向の力が、空洞体及びアンカー用空洞体に働く鉛直上方向の力よりも大きくなるようにアンカー用空洞体を形成すことができる。そして、このようにアンカー用空洞体を形成することによって、アンカー用空洞体に働く重力方向の力を利用して空洞体を海底等に固定することができ、空洞体を海底等に固定するための構造の簡単化を図ることができる。そして、複数の小さいアンカー用空洞体を使用して、それよりも大きい空洞体を海底等に固定するようにすることができる。これによって、空洞体を海底に直接に設置するために必要とされる広さの平坦な用地を確保できないときでも、空洞体をそのような海底に設置することができる。
【0018】
この発明に係る水圧発電装置において、前記水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方が、前記空洞体の内部に設けられているものとするとよい。
【0019】
このようにすると、空洞体の内側は、大気圧又はそれに近い圧力であるので、水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方の耐圧性能を低減することができる。
【0020】
この発明に係る水圧発電装置において、前記水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方が、前記空洞体の内部の大気圧が掛る場所に設置されているもととするとよい。
【0021】
このようにすると、この水車ポンプや発電電動機の耐圧性能を低減することができるし、これらの点検や修理を、大気圧の環境で行うことができ、作業性の向上を図ることができる。
【0022】
この発明に係る水圧発電装置において、前記水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方が、前記空洞体の内部に流入する海水又は水に浸からない空間に設けられているものとするとよい。
【0023】
このようにすると、水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方が、海水や水と接触して腐食することを抑制することができる。
【0024】
本発明に係る水圧発電装置は、海底や水底又はその近くに浮上しないように水中に固定手段により設けられ、内部に空洞を有する空洞体と、前記空洞体に設けられ、その内部と大気とを連通する大気連通部と、前記空洞体の壁部に設けられ、前記空洞体の内部と外部の水中とを連通する連通孔と、前記連通孔に連通するように設けられた水車ポンプと、前記水車ポンプに連結された発電電動機とを備え、前記水車ポンプは、水車及びポンプが別個に設けられ、又は水車及びポンプとして機能する水車ポンプであり、前記発電電動機は、発電機及び電動機が別個に設けられ、又は発電機及び電動機としての機能を有する発電電動機であることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る水圧発電装置によると、上記の水圧発電装置と同様に作用する。そして、水車ポンプは、水車及びポンプが別個に設けられたものとしてもよく、又は水車及びポンプとして機能する水車ポンプとしてもよい。また、発電電動機は、発電機及び電動機が別個に設けられたものとしてもよく、又は発電機及び電動機としての機能を有する発電電動機としてもよい。
【0026】
本発明に係る構造物の固定構造は、海又は湖沼に配置される構造物を、海底又は水底に固定するための構造物の固定構造において、海底又は水底に設けられていて、前記構造物と一体に形成され、又は前記構造物と連結部を介して連結されたアンカー用空洞体と、前記アンカー用空洞体の内部と大気とを連通する大気連通部とを備え、前記アンカー用空洞体は、下側に向かう開口が形成され、前記開口を形成する開口縁部と、海底又は水底との間が封止され、前記アンカー用空洞体は、その外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及び前記アンカー用空洞体の重量に基づく重力方向の力が、前記構造物及び前記アンカー用空洞体に働く鉛直上方向の力よりも大きくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る構造物の固定構造によると、アンカー用空洞体の内部の圧力が、大気圧又はそれに近い圧力となるようにして、アンカー用空洞体の下側に向かう開口の開口縁部と、海底又は水底との間を封止することによって、アンカー用空洞体の外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及びアンカー用空洞体の重量に基づく重力方向の力が、当該構造物及びアンカー用空洞体に働く鉛直上方向の力よりも大きくなるように、アンカー用空洞体を形成すことができる。このようにアンカー用空洞体を形成することによって、アンカー用空洞体に働く重力方向の力を利用して構造物を海底等に固定することができ、構造物を海底等に固定するための構造の簡単化を図ることができる。
【0028】
この発明に係る構造物の固定構造において、前記アンカー用空洞体が設けられる前記海底又は水底は、前記アンカー用空洞体の前記開口縁部と、前記海底又は水底との間で、水圧による前記アンカー用空洞体内への水の噴発を防止するために、地盤改良されて固められているものとするとよい。
【0029】
このようにすると、アンカー用空洞体の開口縁部と、海底又は水底との間で、水圧によるアンカー用空洞体内への水の噴発を防止することができる。これによって、アンカー用空洞体に働く重力方向の力を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る水圧発電装置によると、空洞体を海底や水底又はその近くの水中に固定して設ける構成としたので、この空洞体を設置するための用地を陸地で確保(買収等による確保)する必要がなく、その手間と費用の削減を図ることができる。
【0031】
そして、このように空洞体を含む水圧発電装置を設置するための用地を陸地で確保する必要がないので、この水圧発電装置を、電力消費地や、変電所等の電力施設の近くに設置することが容易となり、電力の送電のための設備や、その設備の設置のための用地が少なくて済み、更に、送電による電力の損失の低減を図ることができる。
【0032】
そして、発電の際に、海水等が大きな流速で連通孔を通って空洞体の内部に流入すると共に、空洞体の内部に収容されている空気が、大きな流速で大気連通部を通って大気中に放出されるが、この大きな流速で大気連通部を通るのは、密度が小さく流量係数が大きい空気であり、海水等ではないので、大気連通部の内径を小さくすることが可能であり、大気連通部の費用の低減を図ることができる。そして、密度が大きく流量係数が小さい海水等が大きな流速で連通孔を通るが、この連通孔の長さは、発電に使用される水圧の低下を抑制するように短縮することが可能であり、発電効率の向上を図ることができる。
【0033】
更に、水圧発電装置は、海底に設けることができるので、風水害によって損傷する可能性が殆どなく、そのような損傷に対する修理に掛る手間や費用の削減を図ることができる。
【0034】
本発明に係る構造物の固定構造は、アンカー用空洞体に働く水圧及びアンカー用空洞体の重量に基づく重力方向の力が、海や湖沼に配置される構造物をアンカー用空洞体から引き離そうとする力の鉛直上方向の力よりも大きくなるようにアンカー用空洞体が形成されている。このように、アンカー用空洞体を形成することによって、アンカー用空洞体に働く重力方向の力を利用して構造物を海底等に固定することができ、構造物を海底等に固定するための構造の簡単化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の第1実施形態に係る水圧発電装置を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す水圧発電装置の空洞体を示す斜視図である。
【図3】図2に示す空洞体を構成する空洞部材を示す斜視図である。
【図4】図1に示す空洞体の封止構造を示す縦断面図である。
【図5】同発明の第2実施形態に係る水圧発電装置を示す縦断面図である。
【図6】同発明の第3実施形態に係る水圧発電装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る水圧発電装置、及びそれに使用される構造物の固定構造の第1実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。この水圧発電装置11は、図1に示すように、空洞体14を、海底13や水底又はその近くに浮上しないように水中に設けたものであり、この空洞体14の内部の圧力PT1(大気圧又はそれに近い圧力)と、空洞体14の外部の海水の水圧PS1との圧力差によって、水車ポンプ15を回転させて発電することができるものである。
【0037】
この水圧発電装置11は、海底13や水底又はその近くの水中に設けることができるものであるから、例えば電力消費地や、変電所等の電力施設から近い距離に設置することができる。
【0038】
この水圧発電装置11は、図1に示すように、空洞体14と、大気連通管(大気連通部)16と、連通孔17と、水車ポンプ15と、発電電動機18とを備えており、構造物の固定構造12によって海底13に固定されている。
【0039】
空洞体14は、図2に示すように、例えば防水処理を施したコンクリート製であって、図3に示す略半円筒形状の空洞部材19を軸方向に沿って複数接続した状態で、例えば約100mの深さの海底13に設置されている。そして、空洞体14の両方の各端部の空洞部材20は、一端部が閉塞部20aで閉じられている。また、略半円筒形状の空洞部材19どうしの接続部21は、シール部材で密封されている。この海底13に設置された空洞体14は、その内部に空洞14aが形成されている。
【0040】
この空洞体14を構成する空洞部材19、20は、例えばその半径Rが約5mであり、1つの空洞部材19、20の長さLは、約20mである。そして、このような空洞部材19、20を複数(例えば5つ)接続して空洞体14が形成されている。ただし、空洞体14は、図2及び図3に示す以外の形状及び大きさに形成してもよく、例えばドーム状に形成してもよい。
【0041】
大気連通管16は、例えば金属管であり、図1に示すように、その下端部が空洞体14の頂部に結合し、その上端部が海面22よりも上側に突き出ており、これによって、空洞体14の内部と大気とを連通するようになっている。従って、空洞体14の内部の圧力は、略大気圧PT1となっている。
【0042】
連通孔17は、図1に示すように、空洞体14の側面壁部に貫通して設けられ、この連通孔17には、水管23が水密状態で装着されている。この水管23は、空洞体14の内部と外部の水中とを連通している。
【0043】
水車ポンプ15は、図1に示すように、水車及びポンプとして機能するものであり、水管23の途中であって、空洞体14の外部に設けられている。
【0044】
発電電動機18は、図1に示すように、発電機及び電動機として機能するものであり、水車ポンプ15の回転軸に連結されている。この発電電動機18は、空洞体14の外部に設けられている。そして、この発電電動機18には、ケーブル24が接続している。このケーブル24は、発電電動機18が電動機として機能するときに、外部電力を発電電動機18に供給することができる。そして、ケーブル24は、発電電動機18が発電機として機能するときに、発電電力を電力消費地や、変電所等の電力施設に送電することができる。
【0045】
また、図1に示すように、水管23の水車ポンプ15よりも先端側には、電磁式遮蔽弁25(開閉弁)が設けられている。この電磁式遮蔽弁25によって水管23を開閉することができる。この電磁式遮蔽弁25には、ケーブル26が接続しており、このケーブル26は、地上から電磁式遮蔽弁25を操作するための制御信号を送信するためのものである。
【0046】
そして、水管23の出入り両側の先端部には、ベルマウス27、41が取り付けられており、海水の流入及び流出をスムースに行えるようにしている。
【0047】
次に、この空洞体14を海底13に固定している構造物の固定構造12(固定手段)を、図4を参照して説明する。この構造物の固定構造12は、空洞体14が浮上しないように海底13に固定することができ、しかも、この空洞体14の下側に向かう開口の略長円形の開口縁部14bと、海底13との間を水密封止して、空洞体14の内部を略大気圧PT1に保持することができる構成である。
【0048】
図4に示すように、構造物の固定構造12は、例えば海底13にコンクリート製の基礎ブロック28を設置し、この基礎ブロック28上に、ガスケット、Oリング、パッキング等のシール部材29を介して空洞体14の下側開口縁部14bをその上から圧接させた構造である。
【0049】
ただし、構造物の固定構造12は、上記以外の構成としてもよく、例えば海底13が強固であれば、基礎ブロック28を省略してもよい。また、ガスケットやOリング等のシール部材29を省略してもよい。
【0050】
次に、図4を参照して、空洞体14の下側開口を形成する開口縁部14bが、シール部材29を上から押し付けている力F1について説明する。今、空洞体14の半径Rが約5mであり、この空洞体14が設置されている海底13の平均水深が100m(水圧PS1≒100ton/m)とすると、空洞体14の直線部分の長さ1m当たり(単位長さ当たり)に働く水圧に基づく重力方向の力FS1は、
FS1=水圧PS1×半径R×2×1
=100ton/m×5(m)×2×1
=1,000ton ・・・・(1)
よって、空洞体14の片側の開口縁部14b(直線部分の単位長さ当たり)に働く重力方向の力F1は、
F1=(FS1+重量WK1―FN1)/2
=(1,000ton+WK1―FN1)/2・・・・(2)
ただし、FS1は、空洞体14の直線部分の単位長さ当たりに働く水圧に基づく重力方向の力であり、WK1は、空洞体14の単位長さ当たりの重量である。そして、FN1は、空洞体14の単位長さ当たりに働く内圧(大気圧PT1)に基づく鉛直上方向の力である。
【0051】
このように、空洞体14の片側の開口縁部14b(直線部分の単位長さ当たり)に働く重力方向の力F1によって、空洞体14の当該開口縁部14bと、海底13に設置された基礎ブロック28との間にシール部材29を強力に挟み込むことができ、この接続部の水密性を確保している。
【0052】
また、この実施形態では、図4に示すように、空洞体14の開口縁部14bと、海底13との間の接続部の水密性を確実なものとしたが、この接続部の水密性能をこれよりも低くしてもよい。つまり、この接続部から海水が空洞体14の内部に少しずつ流入することがあっても、大気連通管16から空気が排出されることによって、空洞体14の内部圧力が上昇しない程度の海水の流入であるときは、空洞体14に掛る重力方向の力は、殆ど低下しないからである。
【0053】
しかし、海水が接続部から空洞体14の内側に流入すると、その分だけ空洞体14の容量(発電運転の際に、海水が流入することができる容量)が少なくなり、この容量は、発電可能な電力量に比例するので、発電可能な電力量が少なくなる。よって、この点を勘案して、空洞体14の下側開口縁部14bと、基礎ブロック28(海底13)との間の水密性能のレベルを決定する必要がある。
【0054】
更に、空洞体14は、図4に示すように、この空洞体14の外面に働く水圧PS1、その内面に働く内圧PT1(大気圧又はそれに近い圧力)、及び空洞体14の重量WK1に基づく重力方向の力(FS1+WK1)が、それらに基づき空洞体14に働く鉛直上方向の力FN1よりも大きくなるように空洞体14が形成されている。よって、空洞体14は、浮力によって浮き上がることがなく、海底13に設置された空洞体14は、安定した状態で長期間設置された状態を維持することができる。
【0055】
次に、上記のように構成された水圧発電装置11の作用を説明する。図1に示すこの水圧発電装置11によると、まず、空洞体14の内部に海水が収容されているときに、発電電動機18を電動機として運転して、水車ポンプ15を回転させてポンプとして運転する。このとき、電磁式遮蔽弁25を開弁状態にする。これによって、空洞体14の内部の海水を、水管23(連通孔17)に通して空洞体14の外部の海中に排出することができ(排水運転)、このとき、大気中の空気が大気連通管16を通って空洞体14の内部に流入する。この空洞体14の内部の圧力は、大気圧PT1又はそれに近い圧力である(図1に示す状態)。このとき、電磁式遮蔽弁25を閉弁状態にする。これで、この水圧発電装置11を発電運転できる準備が整う。
【0056】
次に、発電電動機18を電動機から発電機としての運転に切り替えると共に、水車ポンプ15をポンプから水車としての運転に切り替える。しかる後に、電磁式遮蔽弁25を開弁状態にして、空洞体14の外部の水圧PS1の掛った海水の圧力水を、空洞体14に設けられている水管23(連通孔17)に通して空洞体14の内部に流入させる。このとき、水管23を通って空洞体14の内部に流入する圧力水は、水車ポンプ15を回転させて、この水車ポンプ15が発電電動機18を回転させて発電することができる(発電運転)。
【0057】
ここで、空洞体14の外部の水圧PS1の掛った圧力水(海水)が、水管23を通る際に水車ポンプ15を回転させることができるのは、空洞体14の内部の圧力(大気圧PT1又はそれに近い圧力)と、空洞体14の外部の海水の水圧PS1との圧力差(PS1−PT1)によって、空洞体14の外側の海水が水管23を通って空洞体14の内部に流入するからである。
【0058】
また、上記の発電運転は、図1において、空洞体14の内部の海水の水位がH2からH1となるまで行われ、上記の排水運転は、空洞体14の内部の海水の水位がH1からH2となるまで行われる。そして、このH1からH2までの水位は、図示しない水位検出器によって検出され、水位がH2からH1、又はH1からH2となるまで自動で発電運転及び排水運転をすることができるようになっている。また、手動で発電運転及び排水運転をできるようにもなっている。
【0059】
そして、図1に示す水圧発電装置11によると、空洞体14を海底13に固定して設ける構成としたので、この空洞体14を設置するための用地を陸地で確保(買収等による確保)する必要がなく、その手間と費用の削減を図ることができる。
【0060】
このように、空洞体14を含む水圧発電装置11を設置するための用地を陸地で確保する必要がないので、この水圧発電装置11を、電力消費地や、変電所等の電力施設の近くに設置することが容易となり、電力の送電のための設備や、その設備の設置のための用地が少なくて済み、更に、送電による電力の損失の低減を図ることができる。
【0061】
そして、発電の際に、海水が大きな流速で水管23を通って空洞体14の内部に流入すると共に、空洞体14の内部に収容されている空気が、大きな流速で大気連通管16を通って大気中に放出されるが、この大きな流速で大気連通管16を通るのは、密度が小さく流量係数が大きい空気であり、海水ではないので、大気連通管16の管径を小さくすることが可能であり、大気連通管16の費用の低減を図ることができる。そして、密度が大きく流量係数が小さい海水が大きな流速で水管23を通るが、この水管23の長さは、発電に使用される水圧の低下を抑制するように短縮することが可能であり、発電効率の向上を図ることができる。
【0062】
更に、この水圧発電装置11は、海底13に設けることができるので、風水害によって損傷する可能性が殆どなく、そのような損傷に対する修理に掛る手間や費用の削減を図ることができる。そして、図1に示す大気連通管16の上端開口部から海水が流入することを防止するために、この上端開口部を必要に応じて開閉できるように、開閉弁を設けることができる。
【0063】
そして、図1に示すように、空洞体14の内部の圧力PT1が、大気圧又はそれに近い圧力となるようにして、空洞体14の下側に向かう開口の開口縁部14bと、海底13との間の接続部を水密封止することによって、単位長さの空洞体14の外面に働く水圧PS1、その内面に働く内圧PT1、及び空洞体14の単位長さ当たりの重量WK1に基づく重力方向の力(FS1+WK1)が、それらに基づき鉛直上方向に働く力(大気圧PT1に基づく力)FN1よりも大きくなるように、空洞体14が形成されている。このように空洞体14を形成することによって、空洞体14に働く重力方向の力を利用してこの空洞体14を海底13に固定することができ、空洞体14を海底13に固定するための構造の簡単化を図ることができる。
【0064】
ただし、図1に示す空洞体14は、重力方向の力(FS1+WK1)が、鉛直上方向に働く力FN1よりも大きくなる形状であるので、いずれの水深位置の海底13にこの空洞体14を配置した場合でも、空洞体14が海底13から浮き上がることがなく、この重力方向の力(FS1+WK)によって、海底13に安定した状態で設置することができる。
【0065】
次に、本発明に係る水圧発電装置の第2実施形態を、図5を参照して説明する。この図5に示す第2実施形態の水圧発電装置31と、図1に示す第1実施形態の水圧発電装置11とが相違するところは、図1に示す第1実施形態では、空洞体14の下側開口の周縁部14bと海底13との接続部を水密封止する構成としたのに対して、図5に示す第2実施形態では、空洞体32とは別に複数のアンカー用空洞体33を設け、これら複数のアンカー用空洞体33を使用して空洞体32を海底13に固定する構成としたところである。
【0066】
この図5に示す第2実施形態の水圧発電装置31によると、複数の小さいアンカー用空洞体33を使用して、それよりも大きい空洞体32を海底13に固定することができる。これによって、空洞体32を海底13に直接に設置するために必要とされる広さの平坦な用地を確保できないときでも、空洞体32をそのような海底13に設置することができる。
【0067】
これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0068】
この図5に示す空洞体32は、例えば外形が回転楕円体の形状であり、内部に空洞32aが形成され、海底13から間隔を隔てて水中に配置されている。この空洞体32には、図1に示す第1実施形態と同様に、大気連通管16、水管23、水車ポンプ15、及び発電電動機18等が設けられている。勿論、空洞体32の外形は、回転楕円体以外の形状としてもよい。
【0069】
この図5に示す第2実施形態は、図1に示す第1実施形態と同様に排水運転及び発電運転を行うことができるので、それらの詳細な説明を省略する。
【0070】
そして、構造物の固定構造34(固定手段)は、図5に示すように、アンカー用空洞体33と、連結部35と、第2大気連通管(第2大気連通部)35とを備えている。
【0071】
図5に示す各アンカー用空洞体33は、図1に示す第1実施形態の空洞体14よりも小さい同等の形状であり、内部に空洞が形成されている。この実施形態では、アンカー用空洞体33は、例えば3つ設けられている。この3つの各アンカー用空洞体33は、図1及び図3に示す空洞体14と同様に、アンカー用空洞体33の単位長さ当たりの重力方向の力(FS1+WK1)が、鉛直上方向に働く力FN1よりも大きくなる形状であり、いずれの水深位置の海底13にこのアンカー用空洞体33を配置した場合でも、このアンカー用空洞体33が海底13から浮き上がることがなく、この重力方向の力(FS1+WK−FN1)によって、海底13に安定した状態で設置することができる。
【0072】
そして、図5に示すように、アンカー用空洞体33に対して働く単位長さ当たりの重力方向の力(FS1+WK1−FN1)に、3つのアンカー用空洞体33の合計長さGLを乗算して得られる力(FS1+WK1−FN1)×GLが、これら3つのアンカー用空洞体33によって、空洞体32に働く鉛直上方向の力に打ち克って、この空洞体32を海底13に引き留めておくことができる力となっている。
【0073】
また、図5に示すFS2は、空洞体32の下面に掛る水圧PS2Bと、その上面に掛る水圧PS2Aの差(PS2B−PS2A)によって、この空洞体32に働く鉛直上方向の力であり、WK2は、空洞体32とその内部に収容されている海水の合計重量である。そして、FN2は、空洞体32の内圧PT1に基づく鉛直上方向の力であり、空洞体32の内部で打ち消し合って0である。
【0074】
従って、3つのアンカー用空洞体33に対して重量方向に働く力(FS1+WK1−FN1)×GLが、空洞体32の鉛直上方向に働く力(FS2+FN2−WK2)よりも大きくなるように、3つのアンカー用空洞体33が形成されている。
【0075】
ここで、FS1は、アンカー用空洞体33の直線部分の単位長さ当たりに働く水圧に基づく重力方向の力であり、WK1は、アンカー用空洞体33の単位長さ当たりの重量である。そして、FN1は、アンカー用空洞体33の内圧(大気圧PT2)に基づく鉛直上方向の力であり、空洞体32の内部、第2大気連通管35、及びアンカー用空洞体33の内部に収容されている海水の水圧によって生じる力である。
【0076】
連結部35は、空洞体32と3つの各アンカー用空洞体33とを互いに連結して、空洞体32が浮き上がらないように、アンカー用空洞体33に係留するためのものである。この実施形態では、図5に示すように、連結部35は、第2大気連通管35と共用しており、例えば金属管である。勿論、連結部35は、第2大気連通管35と共用せずに、別に設けてもよい。例えば連結部35は、鎖やワイヤ等で形成し、第2大気連通管35は、これとは別に設けてもよい。
【0077】
第2大気連通管35は、図5に示すように、空洞体32の内部と、3つの各アンカー用空洞体33の内部とを連通し、アンカー用空洞体33の内部の圧力PT2が、空洞体32の内部の圧力PT1と同程度の大気圧又はそれに近い圧力となるようにするものである。ここで、アンカー用空洞体33の内部の圧力PT2が、空洞体32の内部の圧力PT1よりも高くなっており、これは、空洞体32の内部、第2大気連通管35、及びアンカー用空洞体33の内部に収容されている海水の水圧のためである。
【0078】
ただし、この実施形態の第2大気連通管35は、図5に示すように、空洞体32の内部と、3つの各アンカー用空洞体33の内部とを連通し、各アンカー用空洞体33の内部を大気圧に近い圧力PT2となるようにしたが、これに代えて、第2大気連通管35は、大気と、3つの各アンカー用空洞体33の内部とを直接に連通するようにして、各アンカー用空洞体33の内部を大気圧PT1となるようにしてもよい。
【0079】
この図5に示す水圧発電装置31によると、アンカー用空洞体33の内部の圧力PT2が、大気圧に近い圧力となるようにして、アンカー用空洞体33の下側に向かう開口の開口縁部14bと、海底13との間を水密封止することによって、アンカー用空洞体33の外面に働く水圧PS1、その内面に働く内圧PT2、及びアンカー用空洞体33の重量WK1に基づく重力方向の力(FS1+WK1−FN1)が、空洞体32及びアンカー用空洞体33に働く鉛直上方向の力(FS2+FN2−WK2)よりも大きくなるようにアンカー用空洞体33が形成されている。このようにアンカー用空洞体33を形成することによって、アンカー用空洞体33に働く重力方向の力を利用して空洞体32を海底13に固定することができ、空洞体32を海底13に固定するための構造の簡単化を図ることができる。
【0080】
次に、本発明に係る水圧発電装置の第3実施形態を、図6を参照して説明する。この図6に示す第3実施形態の水圧発電装置38と、図1に示す第1実施形態の水圧発電装置11とが相違するところは、以下に指摘するところである。
【0081】
つまり、図1に示す第1実施形態では、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25を空洞体14の外部の海中に設けた構成としたのに対して、図6に示す第3実施形態では、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25を空洞体14の内部に設けた構成としたところが相違している。
【0082】
この図6に示すようにすると、空洞体14の内側は、大気圧PT1又はそれに近い圧力であるので、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25の耐圧性能を低減することができる。
【0083】
ただし、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25の全てを空洞体14の内部に設けたが、これに代えて、これらのうちの1つ又は2つを空洞体14の内部に設けてもよい。
【0084】
そして、図1に示す第1実施形態では、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25を空洞体14の外部の海中に設けて、海水に浸かる構成としたのに対して、図6に示す第3実施形態では、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25を空洞体14の内部に設け、この空洞体14の内部に流入する海水に浸からない高さ位置(水位H1以上の高さ位置)に設けた構成としたところが相違している。
【0085】
この図6に示すようにすると、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25が海水と接触して腐食することを抑制することができる。そして、発電電動機18等を大気連通管の下端部よりも高い位置に配置することによって、空洞体14内に流入する海水の水位が上昇しても、発電電動機18等が海水に接触しないようにすることができる。
【0086】
ただし、水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25の全てを空洞体14の内部に流入する海水に浸からない高さ位置に設けたが、これに代えて、これらのうちの1つ又は2つを空洞体14の内部に流入する海水に浸からない高さ位置に設けてもよい。
【0087】
そして、空洞体14の内部に配置された水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25が水に浸からないようにするために、この水車ポンプ15、発電電動機18、及び電磁式遮蔽弁25を耐水性の容器内に収容してもよい。
【0088】
これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0089】
そして、上記各実施形態では、水車ポンプ15は、水車及びポンプの両方の機能を有するものを採用したが、これに代えて、水車及びポンプを別個に設けてもよい。また、発電電動機18は、発電機及び電動機の両方の機能を有するものを採用したが、これに代えて、発電機及び電動機を別個に設けてもよい。
【0090】
更に、上記実施形態では、図1に示すように、水圧発電装置11を海底13に設けたが、これに代えて、湖沼や川の底に設けてもよい。
【0091】
そして、上記各実施形態では、構造物の固定構造12等を水圧発電装置11等に適用した例を示したが、これ以外の構造物に適用することができる。この構造物として、例えば石油ガス生産リグや浮遊式原油生産貯蔵荷役設備を含む洋上生産基地を挙げることができる。また、水産物を養殖するための筏等を挙げることもできる。更に、海底や水底に配置される構造物を挙げることもできる。
【0092】
また、上記各実施形態の大気連通管16及び、第2大気連通管35は、この水圧発電装置の点検や修理のための通路として使用できるようにしてもよい。
【0093】
更に、図6に示す第3実施形態では、大気連通管16の下端部は、空洞体14の天井のうち、水車ポンプ15及び発電電動機18よりも低くなっている部分14cに結合したが、これに代えて、空洞体14の天井のうち、発電電動機18及び水車ポンプ15よりも高くなっている部分14dに結合してもよい。
【0094】
このようにすると、空洞体14内の水位が上昇したときに、水車ポンプ15及び発電電動機18が設けられている空間14eが、密閉された圧力空間とならずに略大気圧を維持することが可能である。これによって、この水車ポンプ15や発電電動機18の耐圧性能を低減することができるし、これらの点検や修理を、大気圧の環境で行うことができ、作業性の向上を図ることができる。
【0095】
そして、上記各実施形態において、空洞体14及びアンカー用空洞体33が設けられる海底13は、空洞体14及びアンカー用空洞体33の開口縁部14bと、海底13との間で、水圧による空洞体14及びアンカー用空洞体33内への海水の噴発を防止するために、地盤改良されて固められているものとするとよい。
【0096】
この地盤改良は、例えば流動性を有する海底の土砂等に地盤硬化剤(セメント等)を混ぜ込むことによって行うことができる。
【0097】
このようにすると、空洞体14及びアンカー用空洞体33の開口縁部14bと、海底13との間で、水圧による空洞体14及びアンカー用空洞体33内への水の噴発を防止することができる。これによって、空洞体14及びアンカー用空洞体33に働く重力方向の力を確実に確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明に係る水圧発電装置は、陸上の用地を確保するための手間と費用を削減することができる優れた効果を有し、このような水圧発電装置に適用するのに適している。そして、本発明に係る構造物の固定構造は、このような水圧発電装置に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0099】
11 水圧発電装置
12 構造物の固定構造
13 海底
14 空洞体
14a 空洞
14b 開口縁部
14c、14d 天井の部分
14e 空洞体内の空間
15 水車ポンプ
16 大気連通管(大気連通部)
17 連通孔
18 発電電動機
19、20 空洞部材
20a 閉塞部
21 接続部
22 海面
23 水管
24、26 ケーブル
25 電磁式遮蔽弁(開閉弁)
27、41 ベルマウス
28 基礎ブロック
29 シール部材
31 水圧発電装置
32 空洞体
32a 空洞
33 アンカー用空洞体
34 構造物の固定構造
35 連結部、第2大気連通管(第2大気連通部)
38 水圧発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底や水底又はその近くに浮上しないように水中に固定手段により設けられ、内部に空洞を有する空洞体と、
前記空洞体に設けられ、その内部と大気とを連通する大気連通部と、
前記空洞体の壁部に設けられ、前記空洞体の内部と外部の水中とを連通する連通孔と、
前記連通孔に連通するように設けられ、水車及びポンプとして機能する水車ポンプと、
前記水車ポンプに連結され、発電機及び電動機として機能する発電電動機とを備えることを特徴とする水圧発電装置。
【請求項2】
前記固定手段は、前記空洞体の下側に向かう開口の開口縁部と、海底又は水底との間を封止する構成を有し、
前記空洞体は、その外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及び前記空洞体の重量に基づく重力方向の力が、それらに基づき鉛直上方向に働く力よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の水圧発電装置。
【請求項3】
前記空洞体は、海底や水底から間隔を隔てて配置され、
前記固定手段は、
海底や水底に設けられているアンカー用空洞体と、
前記空洞体と前記アンカー用空洞体とを互いに連結する連結部と、
前記空洞体の内部と前記アンカー用空洞体の内部とを連通し、又は前記アンカー用空洞体の内部と大気とを連通する第2大気連通部とを備え、
前記アンカー用空洞体は、下側に向かう開口が形成され、前記開口を形成する開口縁部と、海底又は水底との間が封止され、更に、
前記アンカー用空洞体は、その外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及び前記アンカー用空洞体の重量に基づく重力方向の力が、前記空洞体及び前記アンカー用空洞体に働く鉛直上方向の力よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の水圧発電装置。
【請求項4】
前記水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方が、前記空洞体の内部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水圧発電装置。
【請求項5】
前記水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方が、前記空洞体の内部の大気圧が掛る場所に設置されていることを特徴とする請求項4記載の水圧発電装置。
【請求項6】
前記水車ポンプ及び発電電動機のうちのいずれか一方又は両方が、前記空洞体の内部に流入する海水又は水に浸からない空間に設けられていることを特徴とする請求項4記載の水圧発電装置。
【請求項7】
海底や水底又はその近くに浮上しないように水中に固定手段により設けられ、内部に空洞を有する空洞体と、
前記空洞体に設けられ、その内部と大気とを連通する大気連通部と、
前記空洞体の壁部に設けられ、前記空洞体の内部と外部の水中とを連通する連通孔と、
前記連通孔に連通するように設けられた水車ポンプと、
前記水車ポンプに連結された発電電動機とを備え、
前記水車ポンプは、水車及びポンプが別個に設けられ、又は水車及びポンプとして機能する水車ポンプであり、
前記発電電動機は、発電機及び電動機が別個に設けられ、又は発電機及び電動機としての機能を有する発電電動機であることを特徴とする水圧発電装置。
【請求項8】
海又は湖沼に配置される構造物を、海底又は水底に固定するための構造物の固定構造において、
海底又は水底に設けられていて、前記構造物と一体に形成され、又は前記構造物と連結部を介して連結されたアンカー用空洞体と、
前記アンカー用空洞体の内部と大気とを連通する大気連通部とを備え、
前記アンカー用空洞体は、下側に向かう開口が形成され、前記開口を形成する開口縁部と、海底又は水底との間が封止され、
前記アンカー用空洞体は、その外面に働く水圧、その内面に働く内圧、及び前記アンカー用空洞体の重量に基づく重力方向の力が、前記構造物及び前記アンカー用空洞体に働く鉛直上方向の力よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする構造物の固定構造。
【請求項9】
前記アンカー用空洞体が設けられる前記海底又は水底は、
前記アンカー用空洞体の前記開口縁部と、前記海底又は水底との間で、水圧による前記アンカー用空洞体内への水の噴発を防止するために、地盤改良されて固められていることを特徴とする請求項8記載の構造物の固定構造。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79612(P2013−79612A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220392(P2011−220392)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】