説明

水性分散体およびその製造方法、ならびに層間付着性付与組成物

【課題】複層塗膜としたときに隣接する塗膜との層間付着性に優れ、耐水性を有する塗膜を形成でき、かつ安定性に優れる水性分散体、ならびに該水性分散体からなる層間付着性付与組成物を提供する。また、そのような水性分散体を容易に製造できる水性分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の水性分散体は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して、5.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.1〜10.0質量部の炭素数が14〜22である脂肪酸(C)と、0.5〜5.0質量部の水(E)とを含有し、さらに、前記酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍のアルカノールアミン(D)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性分散体およびその製造方法、ならびに層間付着性付与組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業分野など、塗膜に高い意匠性や優れた耐久性が要求される用途においては、基材表面に様々な役割を持つ複層塗膜が形成される。
しかし、複層塗膜を構成する塗膜は、塗膜同士の付着性(以下、「層間付着性」という。)が劣る場合がある。層間付着性が劣る場合、衝撃や加熱などにより塗膜界面にて層間剥離が起こるといった不具合を生じることとなる。
【0003】
実際の自動車車体の塗装においては、第一層(最上層:例えばクリヤー塗料により形成されるクリヤー塗膜)と、第一層に隣接する第二層(例えばベース塗料により形成されるベース塗膜)との界面や、第二層と第二層に隣接する第三層(例えば中塗り塗料により形成される中塗り塗膜)との界面での層間付着性が特に重要である。
そこで、層間付着性を改良する方法として、自動車の車体全体または一部を研磨処理する方法が知られている。しかし、この方法は塗料の塗装効率が低下するなどの問題があり、実用的ではなかった。また、研磨処理は応急的な処置であるため、層間付着性の根本的な解決には至っていない。
また、研磨処理以外の方法も検討が行われているが、層間付着性の改良効果は見られるものの、塗膜の耐水性が低下するといった新たな問題を招くことがあった。また、特に第二層がベース塗料により形成されるベース塗膜の場合は、十分な層間付着性を必ずしも満足することができず、第一層と第二層、第二層と第三層との界面で層間剥離が起こりやすかった。
【0004】
複層塗膜の層間付着性を向上させる塗料として、フェノール系酸化防止剤を含有する塗料が知られている(例えば特許文献1、2)。これらは、第二層がベース塗膜の場合にも層間付着性に優れるとしている。また、フェノール系酸化防止剤を含有する塗料を上塗り塗料として用いる場合、該塗料を塗装して塗膜を硬化させた後に再塗装(リコート)する際の、被塗装塗膜と再塗装塗膜の層間付着性にも優れるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−146144号公報
【特許文献2】特開2005−139222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の塗料は、自動車塗装ラインにおいて基材表面を塗装する際に生じる、焼き付け乾燥炉内の窒素酸化物濃度の上昇や、焼き付け温度の上昇、焼き付け時間の超過などを主要因とする層間付着性の低下には効果があるものの、塗膜を形成する樹脂(塗料)の組成そのものに起因する層間付着性の低下には効果が得られにくかった。また、保存したときの安定性に劣る場合があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、複層塗膜としたときに隣接する塗膜との層間付着性に優れ、耐水性を有する塗膜を形成でき、かつ安定性に優れる水性分散体、ならびに該水性分散体からなる層間付着性付与組成物を提供することにある。また、そのような水性分散体を容易に製造できる水性分散体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して、5.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.1〜10.0質量部の炭素数が14〜22である脂肪酸(C)と、0.5〜5.0質量部の水(E)とを含有し、さらに、前記酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍のアルカノールアミン(D)を含有することを特徴とする水性分散体。
[2] 前記脂肪酸(C)が、ステアリン酸であることを特徴とする[1]に記載の水性分散体。
[3] 前記アルカノールアミン(D)が、ジエタノールアミンであることを特徴とする[1]または[2]に記載の水性分散体。
[4] 前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の質量平均分子量が、30,000〜70,000であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の水性分散体。
[5] 前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度が、10〜25%であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の水性分散体。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の水性分散体からなることを特徴とする層間付着性付与組成物。
[7] エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して、5.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.1〜10.0質量部の炭素数が14〜22である脂肪酸(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、該溶融混練物に、前記酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍のアルカノールアミン(D)、および前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して、0.5〜5.0質量部の水(E)を同時に添加して、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散するように転相させる転相工程とを有することを特徴とする水性分散体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複層塗膜としたときに隣接する塗膜との層間付着性に優れ、耐水性を有する塗膜を形成でき、かつ安定性に優れる水性分散体、ならびに該水性分散体からなる層間付着性付与組成物を提供できる。また、そのような水性分散体を容易に製造できる水性分散体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[水性分散体]
本発明の水性分散体は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、酸変性ポリエチレン(B)と、脂肪酸(C)と、アルカノールアミン(D)と、水(E)とを含有する。
【0011】
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、エチレンと1−オクテンをランダムに共重合して得られる共重合体である。エチレンと1−オクテンをランダムに共重合させることで、本発明の水性分散体より形成される塗膜に層間付着性を付与することができる。その結果、該塗膜に隣接する他の塗膜との付着性が良好となり、層間剥離が起こりにくい複層塗膜が得られる。
なお、エチレンと1−オクテンをランダム共重合以外の方法(例えばブロック共重合、グラフト共重合など)で共重合した場合、各ポリマー鎖が独立して凝集し、ミクロ相分離構造を形成するため、塗膜の層間付着性が低下しやすくなる。
また、1−オクテン以外のα−オレフィンとエチレンをランダムに共重合させて得られる共重合体(例えばエチレン−1−ブテンランダム共重合体など)では、反応工程において、ポリマーの結晶化度を任意に調整することが困難となる。その結果、塗膜の層間付着性が低下しやすくなる。
【0012】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、エチレン単位を50〜75質量%含有することが好ましい。エチレン単位が50質量%以上であれば、塗膜の耐水性がより向上する。一方、エチレン単位が75質量%以下であれば、塗膜の層間付着性がより向上する。
【0013】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の製造方法は特に制限はないが、例えば、可溶性バナジウム化合物とアルキルアルミニウムハライド化合物とからなるバナジウム系触媒、またはメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物等の助触媒とからなるメタロセン系触媒の存在下で、エチレンと1−オクテンとをランダムに共重合させることが好ましい。
【0014】
エチレンと1−オクテンの共重合条件は、重合温度が40〜200℃であると好ましく、50〜150℃であるとより好ましい。更にこのとき、圧力が、大気圧〜100kg/cmであると好ましく、大気圧〜50kg/cmであるとより好ましい。
【0015】
以上の重合温度および圧力下での共重合反応は、様々な重合方法により実施することが可能であるが、反応安定性の点から溶液重合により行うことが特に好ましい。
共重合形式としては、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができるが、連続式で行うことが好ましい。さらに反応条件を変えて、共重合反応を2段以上にわけて行うこともできる。
【0016】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、質量平均分子量が30,000〜70,000であることが好ましく、35,000〜65,000であることがより好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であれば、塗膜の層間付着性および耐水性が向上すると共に、水性分散体の安定性が向上する。
【0017】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により、ポリスチレン換算で求めた値である。
なお、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の質量平均分子量は、重合温度などの重合条件を変更することで制御できる。また、重合中に添加する水素(分子量調節剤)の使用量(供給量)を調整することでも制御できる。
【0018】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)は、結晶化度が10〜25%であることが好ましく、12〜23%であることがより好ましい。結晶化度が上記範囲内であれば、塗膜の層間付着性および耐水性が向上する。
【0019】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度は、X線回折法により測定される値である。
なお、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度は、重合時のエチレンと1−オクテンの混合ガスの比率を調整することで制御することができる。
【0020】
<酸変性ポリエチレン(B)>
酸変性ポリエチレン(B)は、常法に従って、ポリエチレンが不飽和ジカルボン酸によって酸変性されたものである。変性基は塩の形態をなしていても構わない。
【0021】
不飽和ジカルボン酸類としては特に制限はなく、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸メチル等の不飽和ジカルボン酸のエステル誘導体などが挙げられる。これらの不飽和ジカルボン酸類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリエチレン(B)としては特に制限されるものではないが、特に無水マレイン酸変性ポリエチレンが好ましい。
【0022】
酸変性ポリエチレン(B)は、質量平均分子量が1,000〜35,000であることが好ましく、2,000〜20,000であることがより好ましい。質量平均分子量が上記範囲内であれば、水性分散体の安定性が向上する。
酸変性ポリエチレン(B)の質量平均分子量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と同様にして求めることができる。
また、酸変性ポリエチレン(B)の質量平均分子量は、ポリエチレンと不飽和ジカルボン酸類との反応における反応温度などの反応条件を調整することで制御できる。
【0023】
酸変性ポリエチレン(B)は、酸価が10〜60mgKOH/gであることが好ましく、20〜50mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が上記範囲内であれば、水性分散体の安定性が向上する。
なお、ここでいう「酸価」とは、酸変性ポリエチレン1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数のことであり、JIS K5902に準拠して測定される。
また、酸変性ポリエチレン(B)の酸価は、ポリエチレンに対する不飽和ジカルボン酸の反応量(率)を調整することで制御できる。
【0024】
酸変性ポリエチレン(B)の含有量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して5.0〜30.0質量部であり、10.0〜20.0質量部であることが好ましい。酸変性ポリエチレン(B)の含有量が5.0質量部以上であれば、未乳化物量が増加するのを抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、酸変性ポリエチレン(B)の含有量が30.0質量部以下であれば、塗膜の層間付着性および耐水性が低下するのを抑制できる。
【0025】
<脂肪酸(C)>
脂肪酸(C)は、炭素数が14〜22である。このような脂肪酸としては、例えばミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸等があげられる。
これらの中でも、塗膜の耐水性や水性分散体の安定性が向上する点から、ステアリン酸が好ましい。
なお、脂肪酸(C)として、炭素数が14未満の脂肪酸を用いた場合、塗膜の耐水性や水性分散体の安定性が低下する。一方、炭素数が22超の脂肪酸を用いた場合、水性分散体が得られにくくなる。
【0026】
脂肪酸(C)の含有量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して0.1〜10.0質量部であり、1.0〜5.0質量部であることが好ましい。脂肪酸(C)の含有量が0.1質量部以上であれば、未乳化物量が増加するのを抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、脂肪酸(C)の含有量が10.0質量部以下であれば、塗膜の耐水性が低下するのを抑制できる。
【0027】
<アルカノールアミン(D)>
アルカノールアミン(D)は、詳しくは後述するが、水性分散体を調製する際に、未中和の酸変性ポリエチレン(B)および脂肪酸(C)を中和させる塩基性物質の役割を果たす。
アルカノールアミン(D)としては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N−イソプロピルイソプロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルイソプロパノールアミン、モノn−プロパノールアミン、ジn−プロパノールアミン、トリn−プロパノールアミン、N−メチルn−プロパノールアミン、N,N−ジメチルn−プロパノールアミン、N−エチルn−プロパノールアミン、N,N−ジエチルn−プロパノールアミン、N−イソプロピルn−プロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルn−プロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N−イソプロピルブタノールアミン、N,N−ジイソプロピルブタノールアミン等が挙げられる。
これらの中でも、塗膜の層間付着性が向上する点から、ジエタノールアミンが好ましい。
【0028】
なお、酸変性ポリエチレン(B)および脂肪酸(C)の中和に用いる塩基性物質がアルカノールアミン(D)以外の塩基性物質、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン等の有機アミン;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の弱塩基等である場合、塗膜の層間付着性および耐水性が低下する。
【0029】
アルカノールアミン(D)は、沸点が150〜350℃であることが好ましく、200〜300℃であることがより好ましい。沸点が上記範囲内であれば、塗膜の層間付着性が向上する。
【0030】
アルカノールアミン(D)の含有量は、酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来スル酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍である。アルカノールアミン(D)の含有量がモル換算で0.8倍以上であれば、未乳化物量が増加するのを抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、アルカノールアミン(D)の含有量がモル換算で2.0倍以下であれば、水性分散体の安定性が低下するのを抑制できる。
【0031】
<水(E)>
水(E)の含有量は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して0.5〜5.0質量部であり、1.5〜3.5質量部であることが好ましい。水(E)の含有量が0.5質量部以上であれば、未乳化物量が増加するのを抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、水(E)の含有量が5.0質量部以下であれば、水性分散体の安定性が低下するのを抑制できる。
【0032】
<その他の成分>
本発明の水性分散体には、必要に応じて、水性分散体に一般的に使用することができる各種副資材、例えば安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、老化防止剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等が含まれていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内において、後述する塗料樹脂が含まれていてもよい。
【0033】
<水性分散体の性状>
本発明の水性分散体は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)に由来する樹脂固形分が乳化して、微細分散粒子として水中に分散している。
微細分散粒子の体積平均粒子径は、0.2〜0.8μmであることが好ましく、0.3〜0.6μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、塗膜の層間付着性および耐水性がより向上すると共に、水性分散体の安定性もより向上する。
【0034】
微細分散粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折法により測定される値である。
なお、微細分散粒子の体積平均粒子径は、例えば酸変性ポリエチレン(B)や脂肪酸(C)の含有量を調整することで制御できる。具体的には、酸変性ポリエチレン(B)や脂肪酸(C)の含有量を増やすと、微細分散粒子の体積平均粒子径は小さくなる傾向にあり、逆に含有量を減らすと体積平均粒子径は大きくなる傾向にある。
【0035】
本発明の水性分散体は、水分含有率が3〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量であることがより好ましく、50〜70質量%であることが特に好ましい。水分含有率が上記範囲内であれば、水性分散体の安定性を十分に確保できる。
水性分散体は、水分含有率3〜35質量%の範囲内において、通常、固形またはペースト状となる。従って、既存の塗装方法を適用して水性分散体を塗装して塗膜を形成したり、他の成分(樹脂など)と混合したりするには、水を添加して所望の水分含有率(好ましくは40〜80質量%)になるように希釈するのが望ましい。
【0036】
水性分散体の水分含有率は、以下のようにして測定できる。
すなわち、水性分散体を1g採取し、120℃のオーブンで20分間乾燥させる。乾燥後の水性分散体の質量を測定し、下記式(H)を用いて水分含有率を求める。
水分含有率[%]={1[g]−(乾燥後の水性分散体の質量[g]/1[g] )}×100 ・・・(H)
【0037】
<水性分散体の製造方法>
本発明の水性分散体の製造方法の一例について説明する。
本発明の水性分散体の製造方法は、上述したエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、酸変性ポリエチレン(B)と、脂肪酸(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る工程(溶融混練工程)と、該溶融混練物にアルカノールアミン(D)と水(F)を同時に添加し、さらに溶融混練して樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散するように転相させる工程(転相工程)とを有する。
なお、溶融混練工程と転相工程とは、逐次的に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0038】
溶融混練工程で用いる溶融混練手段としては公知のいかなるものでもよいが、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などが好適である。
【0039】
溶融混練工程における酸変性ポリエチレン(B)の配合量は、水性分散体中の酸変性ポリエチレン(B)の含有量と同様に、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して5.0〜30.0質量部であり、10.0〜20.0質量部であることが好ましい。
一方、脂肪酸(C)の配合量は、水性分散体中の脂肪酸(C)の含有量と同様に、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して0.1〜10.0質量部であり、1.0〜5.0質量部であることが好ましい。
【0040】
溶融混練工程では、溶融混練と同時に加熱することが好ましく、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の種類によっても異なるが、例えば加熱温度としては140〜250℃であることが好ましい。加熱温度が140℃以上であれば、溶融粘度が十分に低くなるので容易に混練できる。一方、加熱温度が250℃以下であれば、必要以上に加熱しないので、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の劣化や加熱分解を抑制し、かつエネルギー使用量を削減できる。
【0041】
転相工程では、溶融混練工程で得た溶融混練物にアルカノールアミン(D)と水(E)を同時に添加し、エチレン−1−オクテンランダム共重合体および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分に水を含有させる。アルカノールアミン(D)と水(E)を同時に添加することで、酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸と、アルカノールアミン(D)に由来する塩基の中和効率が向上し、未乳化物量の少ない水性分散体を得ることが可能となる。
アルカノールアミン(D)と水(E)は、添加するタイミングが同時であれば別々に添加してもよいし、アルカノールアミン(D)を水(E)で希釈し、希釈液として添加してもよい。特に、水性分散体の未乳化物量を削減しやすい点で、希釈液として添加するのが好ましい。
【0042】
転相工程におけるアルカノールアミン(D)の添加量は、水性分散体中のアルカノールアミン(D)の含有量と同様に、酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍である。
一方、水(E)の添加量は、水性分散体中の水(E)の含有量と同様に、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して0.5〜5.0質量部であり、1.5〜3.5質量部であることが好ましい。
【0043】
転相工程で用いられるアルカノールアミン(D)は、上述したように、樹脂固形分を微細分散粒子として転相させる際に、未中和の酸変性ポリエチレン(B)および脂肪酸(C)を中和するために使用される。
【0044】
転相工程では、樹脂固形分に水が含まれる状態から、水に樹脂固形分が分散する状態に転相させ、水性分散体を得る。
転相工程においても、溶融混練工程と同様にニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などの溶融混練手段を用いて溶融混練する。その際、溶融混練工程と同様に140〜250℃に加熱しながら溶融混練するのが好ましい。その後、自然冷却または強制冷却により室温程度まで冷却される。このとき、微細分散粒子が固化し、安定な水性分散体となる。
【0045】
このようにして得られた水性分散体は、水分含有率が3〜90質量%になるように微細分散粒子を水中に投入して分散させたり、水を添加して希釈したりして(水分調整工程)、水分を調整するのが好ましい。
【0046】
上述した溶融混練工程と転相工程とを有する製造方法によれば、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が水中に乳化分散した水性分散体を容易に製造できる。しかも、この製造方法によれば、安定性の良好な水性分散体が得られる。
【0047】
なお、水性分散体に上述した副資材や塗料樹脂等のその他の成分を含有させる場合、溶融混練工程においてエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、酸変性ポリエチレン(B)と、脂肪酸(C)と共に、その他の成分を溶融混練して水性分散体を製造してもよい。また、その他の成分が水に溶解または分散した水溶液を予め調製しておき、水分調整工程においてこの水溶液中に微細分散粒子を投入し、分散させて水性分散体を製造してもよい。
【0048】
その他の成分である塗料樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
アクリル樹脂は、公知の乳化重合技術により製造することができる。
アクリル系樹脂の製造に用いられる単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、および上記単量体と共重合可能な単量体などが挙げられる。
【0049】
ウレタン樹脂は、公知の方法により製造することができる。具体的には、多官能イソシアネート化合物と、活性水素基を1分子中に2個以上有する活性水素化合物とを反応させることで得られる。
多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、含硫脂肪族イソシアネート、芳香族スルフィド系イソシアネート、脂肪族ジスルフィド系イソシアネート、芳香族スルホン系イソシアネート、スルホン酸エステル系イソシアネート、芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート、含硫複素環化合物などが挙げられる。
【0050】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばエチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω,ω’−ジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、メシチレントリイソシアネート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等が挙げられる。
【0051】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナト−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、ダイマ酸ジイソシアネート、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.1.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.1.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2,5−ビスイソシアナートメチルノルボルナン、2,6−ビスイソシアナートメチルノルボルナン等が挙げられる。
【0052】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピレンフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチルナフタレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメリックMDI、ナフタレントリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4−メチル−ジフェニルメタン−3,5,2’,4’,6’−ペンタイソシアネート、フェニルイソシアナトメチルイソシアネート、フェニルイソシアナトエチルエチルイソシアネート、テトラヒドロナフチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアネート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、エチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−プロピレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ベンゾフェノンジイソシアネート、ジエチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ジベンゾフランジイソシアネート、カルバゾールジイソシアネート、エチルカルバゾールジイソシアネート、ジクロロカルバゾールジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
含硫脂肪族イソシアネートとしては、例えばチオジエチルジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ジメチルスルフォンジイソシアネート、ジチオジメチルジイソシアネート、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオプロピルジイソシアネート、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
芳香族スルフィド系イソシアネートとしては、例えばジフェニルスルフィド−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、3,3’ ,4,4’−ジイソシアナトジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナトメチルベンゼン)スルフィド、4、4’−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
脂肪族ジスルフィド系イソシアネートとしては、例えばジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
芳香族スルホン系イソシアネートとしては、例えばジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、ベンジディンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアネート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
スルホン酸エステル系イソシアネートとしては、例えば4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4’−イソシアナトフェノールエステル等が挙げられる。
【0058】
芳香族スルホン酸アミド系イソシアネートとしては、例えば4,4’−ジメチルベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアネート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3’−イソシアネート等が挙げられる。
【0059】
含硫複素環化合物としては、例えばチオフェン−2,5−ジイソシアネート、チオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアネート、1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナトメチル等が挙げられる。
【0060】
多官能イソシアネート化合物としては、上述した各化合物のアルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。また、上述した化合物以外の多官能イソシアネート化合物を使用してもかまわない。
これらの多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
一方、活性水素化合物としては、例えば以下に例示するものが挙げられる。
ポリオール化合物:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグリコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロース、ジグリペロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−ジメタノール、ビシクロ[4.3.0]−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジオール、ビシクロ[4.3.0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5.3.1.1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール;ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールS等の芳香族ポリオール;ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール;ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、シリコンポリオール、フランジメタノール。
【0062】
また、活性水素化合物としては、シュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、ピロメリット酸等の有機酸と、前記ポリオール化合物との縮合反応生成物;前記ポリオール化合物と、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとの付加反応生成物;アルキレンポリアミンとアルキレンオキシドとの付加反応生成物;2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、およびこれらのカプロラクトン変性品;2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトジフェニルスルフォン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチル−トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等が挙げられる。
【0063】
さらに、活性水素化合物としては、上述した以外にも、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2ーメチルピペラジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、α,α’−メチレンビス(2−クロルアニリン)3,3’−ジクロル−α,α’−ビフェニルアミン、m−キシレンジアミン、イソフォロンジアミン、N−メチル−3,3’−ジアミノプロピルアミン、ノルボルネンジアミン等のポリアミノ化合物、セリン、リジン、ヒスチジン等のα−アミノ酸も使用することができる。
【0064】
ポリエステル樹脂は、公知の方法で、常法に従い多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させることによって合成することができる。
【0065】
多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン、4,4−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの無水物などが挙げられる。
【0066】
また、多塩基酸として脂環式多塩基酸を用いることができる。脂環式多塩基酸は、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、およびこれらの無水物などが挙げられる。
【0067】
多価アルコールのうち、1分子中に2個の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル等のグリコール類、これらのグリコール類にε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類などが挙げられる。
【0068】
また、多価アルコールのうち、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。
【0069】
また、多価アルコールとして脂環式多価アルコールを用いることができる。脂環式多価アルコールは1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上の水酸基とを有する化合物であり、例えば1、3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカンなどが挙げられる。
【0070】
上述した多塩基酸(脂環式多塩基酸を含む)と多価アルコール(脂環式多価アルコールを含む)とをエステル化反応させて得られるポリエステル樹脂の質量平均分子量については、特に制限されない。
【0071】
また、ポリエステル樹脂として、ポリエステル樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性ポリエステル樹脂を使用してもよい。ウレタン変性水酸基含有ポリエステル樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化したものである。
【0072】
以上説明した本発明の水性分散体は、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、特定量の酸変性ポリエチレン(B)および炭素数が14〜22である脂肪酸(C)を含有し、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散している。このような水性分散体は安定性に優れると共に、耐水性の良好な塗膜を形成することができる。加えて、塗膜に層間付着性を付与できるので、該塗膜に隣接する他の塗膜との付着性が良好となり、層間剥離が起こりにくい複層塗膜が得られる。
また、アルカノールアミン(D)を含有することで、リコート時の層間付着性を大幅に改良することもできる。
【0073】
本発明の水性分散体は、各種基材を接着する際や塗装する際に使用するバインダー、プライマーなどの用途に好適である。また、本発明の水性分散体は層間付着性に優れる塗膜を形成できることから、層間付着性付与組成物として用いるのが特に好ましい。本発明の水性分散体からなる層間付着性組成物は、該層間付着性組成物より形成される塗膜を介して、該塗膜に隣接する2つの塗膜を効果的に接着させることができる。
水性分散体や、水性分散体からなる層間付着性付与組成物は、そのまま接着剤や塗料として使用することもできるが、必要に応じて副資材や塗料樹脂などと混合して、接着剤組成物や塗料組成物として使用してもよい。特に、水性分散体中にその他の成分(副資材や塗料樹脂など)が含まれていない場合は、水性分散体とその他の成分とを混合して接着剤組成物や塗料組成物として使用するのが好ましい。
副資材としては、その他の成分の説明において例示した副資材を用いることができる。一方、塗料樹脂としては、その他の成分の説明において例示したアクリル樹脂やウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0074】
本発明の水性分散体や、水性分散体からなる層間付着性付与組成物は、そのまま、または塗料組成物などの状態で、自動車部品等の金属製やプラスチック製の基板などの被塗装物に直接塗装することができる。また、被塗装物上に予めカチオン電着塗料などの下塗り塗料を塗装して下塗り塗膜を形成しておき、該下塗り塗膜上に塗装してもよい。さらに、下塗り塗膜上に中塗り塗料を塗装して中塗り塗膜を形成し、該中塗り塗膜上に塗装してもよい。
また、本発明の水性分散体より形成される塗膜上には、必要に応じてクリヤー塗料などの上塗り塗料を塗装して上塗り塗膜を形成してもよい。また、上塗り塗膜上にベース塗料を塗布し、さらにその上にクリヤー塗料を再塗装してもよい。
なお、ベース塗料に代えて、本発明の水性分散体を再塗装してもよい。上述したように、本発明の水性分散体はリコート時の層間付着性を改良できるので再塗装にも好適であり、被塗装塗膜(再塗装前における最上層の塗膜)と、これに隣接する再塗装塗膜(再塗装により形成された塗膜)の層間付着性が良好な複層塗膜を形成できる。
【0075】
下塗り塗料(カチオン電着塗料)としては、例えばエポキシ樹脂系塗料などを用いることができる。
中塗り塗料としては、例えばポリエステル樹脂・メラミン樹脂系塗料、アルキド樹脂・メラミン樹脂系塗料などを用いることができる。
ベース塗料としては、例えばアクリル樹脂・メラミン樹脂系塗料、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系塗料、アルキド樹脂・メラミン樹脂系塗料などを用いることができる。
上塗り塗料(クリヤー塗料)としては、例えばアクリル樹脂系塗料などを用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の記載において特に限定のない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
また、以下の製造例、実施例及び比較例における物性の特性は、下記のようにして測定した。
【0077】
(質量平均分子量の測定)
エチレン−1−オクテンランダム共重合体の質量平均分子量は、ウォーターズ社製「アライアンスGPC V2000型」を用いて、標準物質;ポリスチレン換算、溶媒;オルトジクロロベンゼン、測定温度;140℃の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定した。
【0078】
(結晶化度の測定)
エチレン−1−オクテンランダム共重合体の結晶化度は、理学電機(株)製の広角X線回折装置「RAD−RX型」を用い、X線回折法により測定した。
【0079】
(酸価の測定)
酸変性ポリエチレンの酸価は、JIS K5902に準拠し測定した。
【0080】
(体積平均粒子径の測定)
微細分散粒子の体積平均粒子径は、Microtrac UPA(Mountech Co.Ltd)を用い、レーザー回折法により測定した。
【0081】
(水分含有率の測定)
水性分散体の水分含有率は、以下のようにして測定した。
まず、水性分散体を1g採取し、120℃のオーブンで20分間乾燥させた。乾燥後の水性分散体の質量を測定し、下記式(H)を用いて水分含有率を求めた。
水分含有率[%]={1[g]−(乾燥後の水性分散体の質量[g]/1[g] )}×100 ・・・(H)
【0082】
[(A)成分]
以下の実施例および比較例において、下記のエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)〜(A−9)、およびエチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−10)を用いた。
【0083】
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)の調製>
重合器に投入したヘキサン(重合溶媒)中に、エチレンと1−オクテンの混合ガスおよび水素ガスを供給し、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドとメチルアルミノキサンのトルエン溶液を重合触媒として用いて、70℃、4kg/cm、滞留時間1時間の条件下で連続的にエチレンと1−オクテンとをランダムに共重合した。
次いで、得られた反応溶液から重合触媒を分離し、質量平均分子量50,000、結晶化度18%のエチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)を得た。
【0084】
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)〜(A−5)の調製>
水素ガスの供給量を調整した以外は(A−1)の製法と同様にして、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)〜(A−5)を調製した。水素ガスの供給量を調整することで、共重合体(A)の質量平均分子量を制御できた。
各共重合体の質量平均分子量および結晶化度を表1に示す。
【0085】
<エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−6)〜(A−9)の調製>
チレンと1−オクテンの混合ガスの供給量を調整した以外は(A−1)の製法と同様にして、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−6)〜(A−9)を調製した。混合ガスの供給量を調整することで、共重合体(A)の結晶化度を制御できた。
各共重合体の質量平均分子量および結晶化度を表1に示す。
【0086】
<エチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−10)の調製>
重合器に投入したヘキサン(重合溶媒)中に、エチレンと1−ブテンの混合ガスおよび水素ガスを供給し、オキシ三塩化バナジウムとエチルアルミニウムセスキクロリドを重合触媒として用いて、40℃、5kg/cm、滞留時間1時間の条件下で連続的にエチレンと1−ブテンとを重合した。
次いで、得られた反応溶液から重合触媒を分離し、質量平均分子量50,000、結晶化度18%のエチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−10)を得た。
【0087】
【表1】

【0088】
[(B)成分]
以下の実施例および比較例において、下記の無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)を用いた。
・B−1:無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mgKOH/g、変性量:2.49質量%、モル質量:98.06g/mol)
【0089】
[(C)成分]
以下の実施例および比較例において、下記の脂肪酸(C−1)〜(C−5)を用いた。
・C−1:ステアリン酸(花王(株)製「ルナックS−98」、炭素数:18、モル質量:284.5g/mol)
・C−2:ミリスチン酸(花王(株)製「ルナックMY−98」、炭素数:14、モル質量:228.4g/mol)
・C−3:ベヘン酸(花王(株)製「ルナックBA」、炭素数:22、モル質量:340.6g/mol)
・C−4:ラウリン酸(花王(株)製「ルナックL−98」、炭素数:12、モル質量:200.3g/mol)
・C−5:モンタン酸(クラリアント(株)製「リコワックスS」、炭素数:28、モル質量:396.7g/mol)
【0090】
[(D)成分]
以下の実施例および比較例において、下記のアルカノールアミン(D−1)〜(D−2)、および水酸化カリウム(D−3)を用いた。
・D−1:ジエタノールアミン(日本触媒(株)製「ジエタノールアミン−90」、ジエタノールアミン90%、水10%、モル質量:105.14g/mol)
・D−2:トリエタノールアミン(日本触媒(株)製「トリエタノールアミン−90」、トリエタノールアミン87%、ジエタノールアミン4%、水9%、モル質量:149.19g/mol)
・D−3:水酸化カリウム、モル質量:56.11g/mol
【0091】
[水性分散体]
<水性分散体(X−1)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部と、無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)18.0部と、炭素数が18である脂肪酸(C−1)5.0部とを混合した。
次いで、この混合物を二軸スクリュー押出機(池貝鉄鋼(株)製「PCM−30型」L/D=40)のホッパーより4kg/時間で供給し、アルカノールアミン(D−1)4.2部を(E)成分として水(E−1)2.5部で希釈した希釈液を連続的に供給しながら、200℃に加熱して溶融混練し、得られた溶融混練物を押出した。
引き続き、溶融混練物を同押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した見掛け上固体の微細分散粒子を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、表2に示す性質(水分含有率および微細分散粒子の体積平均粒子径)を有する水性分散体(X−1)を得た。
なお、(B)成分と(C)成分に由来する酸の合計に対する、(D)成分の塩基当量(倍)は以下のようにしてモル換算して求めた。
塩基当量(倍)=W×M×M/(M×W×H×M×2+M×W×M
ここで、式中の略号は以下のとおりである。
:成分(B)の変性量(B−1:2.49質量%)
:成分(B)のモル質量(B−1:98.06g/mol)
:成分(C)のモル質量(C−1:284.5g/mol、C−2:228.4g/mol、C−3:340.6g/mol、C−4:200.3g/mol、C−5:396.7g/mol)
:成分(D)のモル質量(D−1:105.14g/mol、D−2:149.19g/mol、D−3:56.11g/mol)
:成分(B)の部数(表2〜4中に記載)
:成分(C)の部数(表2〜4中に記載)
:成分(D)の部数(表2〜4中に記載)
【0092】
<水性分散体(X−2)〜(X−3)の製造>
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)とアルカノールアミン(D−1)の添加量を、それぞれ表2に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(X−2)〜(X−3)を得た。
【0093】
<水性分散体(X−4)〜(X−5)の製造>
炭素数が18である脂肪酸(C−1)とアルカノールアミン(D−1)の添加量を、それぞれ表2に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(X−4)〜(X−5)を得た。
【0094】
<水性分散体(X−6)〜(X−7)の製造>
アルカノールアミン(D−1)の添加量を表2に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(X−6)〜(X−7)を得た。
【0095】
<水性分散体(X−8)〜(X−9)の製造>
水(E−1)の添加量を表2に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(X−8)〜(X−9)を得た。
【0096】
<水性分散体(X−10)の製造>
炭素数が18である脂肪酸(C−1)の代わりに、炭素数が14である脂肪酸(C−2)を用い、アルカノールアミン(D−1)の添加量を表2に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表2に示す性質を有する水性分散体(X−10)を得た。
【0097】
<水性分散体(X−11)の製造>
炭素数が18である脂肪酸(C−1)の代わりに、炭素数が22である脂肪酸(C−3)を用い、アルカノールアミン(D−1)の添加量を表3に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表3に示す性質を有する水性分散体(X−11)を得た。
【0098】
<水性分散体(X−12)の製造>
アルカノールアミン(D−1)4.2部の代わりに、アルカノールアミン(D−2)を6.0部用いた以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表3に示す性質を有する水性分散体(X−12)を得た。
【0099】
<水性分散体(X−13)〜(X−20)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部の代わりに、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−2)〜(A−9)を100用いた以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表3に示す性質を有する水性分散体(X−13)〜(X−20)を得た。
【0100】
<水性分散体(X−21)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部の代わりに、エチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−10)を100用いた以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表4に示す性質を有する水性分散体(X−21)を得た。
【0101】
<水性分散体(X−22)の製造>
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)とアルカノールアミン(D−1)の添加量を、それぞれ表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、取り出した微細分散粒子を80℃の温水中に投入したが、水性分散体(X−22)は得られなかった。
【0102】
<水性分散体(X−23)の製造>
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)とアルカノールアミン(D−1)の添加量を、それぞれ表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表4に示す性質を有する水性分散体(X−22)〜(X−23)を得た。
【0103】
<水性分散体(X−24)の製造>
炭素数が18である脂肪酸(C−1)とアルカノールアミン(D−1)の添加量を、それぞれ表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、取り出した微細分散粒子を80℃の温水中に投入したが、水性分散体(X−24)は得られなかった。
【0104】
<水性分散体(X−25)の製造>
炭素数が18である脂肪酸(C−1)とアルカノールアミン(D−1)の添加量を、それぞれ表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表4に示す性質を有する水性分散体(X−25)を得た。
【0105】
<水性分散体(X−26)の製造>
炭素数が18である脂肪酸(C−1)の代わりに、炭素数が12である脂肪酸(C−4)を用い、アルカノールアミン(D−1)の添加量を表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表4に示す性質を有する水性分散体(X−26)を得た。
【0106】
<水性分散体(X−27)の製造>
炭素数が18である脂肪酸(C−1)の代わりに、炭素数が28である脂肪酸(C−5)を用い、アルカノールアミン(D−1)の添加量を表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、取り出した微細分散粒子を80℃の温水中に投入したが、水性分散体(X−27)は得られなかった。
【0107】
<水性分散体(X−28)の製造>
アルカノールアミン(D−1)の添加量を表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、取り出した微細分散粒子を80℃の温水中に投入したが、水性分散体(X−28)は得られなかった。
【0108】
<水性分散体(X−29)の製造>
アルカノールアミン(D−1)の添加量を表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表4に示す性質を有する水性分散体(X−29)を得た。
【0109】
<水性分散体(X−30)の製造>
水(E−1)の添加量を表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、取り出した微細分散粒子を80℃の温水中に投入したが、水性分散体(X−30)は得られなかった。
【0110】
<水性分散体(X−31)の製造>
水(E−1)の添加量を表4に示す量に変更した以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表4に示す性質を有する水性分散体(X−31)を得た。
【0111】
<水性分散体(X−32)の製造>
アルカノールアミン(D−1)4.2部の代わりに、水酸化カリウム(D−3)を2.2部用いた以外は水性分散体(X−1)と同様にして、表4に示す性質を有する水性分散体(X−32)を得た。
【0112】
<水性分散体(X−33)の製造>
攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブ内に、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部と無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)18.0部とトルエン500部を仕込み、125℃で1時間攪拌して溶解した後、90℃に冷却した。
また、これとは別に、攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブ内で、炭素数が18である脂肪酸(C−1)5.0部と水600部を含む水溶液を90℃に加熱し、その中に、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A−1)100部と、無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)18.0部のトルエン溶液、およびアルカノールアミン(D−1)4.2部、(E)成分として水(E−1)2.5部を攪拌継続下で添加した。2時間攪拌して分散した後、高速ホモジナイザー(エスエムテー社(製)「HG−92型」)を用いて、10000rpmで10分間分散した。
次いで、攪拌翼による攪拌を継続したまま、凝縮水を還流させながら、2時間水蒸気蒸留してトルエンを留去したが、トルエンを留去するにつれて凝集物が発生し、トルエンの全量を留去する前に凝集物が99部に達し、水性分散体(X−33)を得ることができなかった。
【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
[実施例1]
リン酸亜鉛系化成処理剤(日本ペイント(株)製「サーフダインSD2000」)で化成処理したダル鋼板(「SPCC−SD」、大きさ:20cm×30cm、板厚:0.8mm)に、カチオン電着塗料(日本ペイント(株)製「パワートップU−50」)を、乾燥膜厚が20μmになるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付け、電着塗膜を形成した。次に、電着塗膜上に、中塗り塗料としてグレー色のポリエステル・メラミン樹脂系塗料(日本ペイント(株)製「オルガP−2グレー」)を、乾燥膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、140℃で20分間焼き付け、中塗り塗膜を形成した。
別途、メタリック水性ベース塗料(日本ペイント(株)製「アクアレックスAR−2000シルバー」)100部(固形分換算)に対して、水性分散体(X−1)5部(固形分換算)を加え、塗料組成物を調製した。得られた塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmになるように中塗り塗膜上にエアースプレーにて塗装し、140℃で20分間加熱乾燥させ、ベース塗膜を形成した。
これを室温(20℃)まで放冷した後、溶剤型のクリヤー塗料(日本ペイント(株)製「マックフローO−1810クリヤー」)を、乾燥膜厚が35μmになるようにベース塗膜上にエアースプレーにて塗装し、140℃で20分間加熱硬化させ、クリヤー塗膜を形成し、ダル鋼板上に複層塗膜が形成した塗装板を作製した。
得られた塗装板について以下に示す評価を行った。結果を表5に示す。
【0117】
<層間付着性の評価>
カッターにより、塗装板の複層塗膜の表面に、ダル鋼板に達する切れ目を1mm間隔で100個のマス目が形成されるように形成した。それらのマス目に粘着テープ(ニチバン社製)を密着させた後、粘着テープを引き剥がす剥離試験を行い、残存したマス目の数を記録し、下記評価基準に従って層間付着性の評価を行った。残存したマス目の数が多い程、層間付着性に優れる。
また、剥離が生じたサンプルに関して、その剥離箇所をレーザー顕微鏡(KEYENCE社製「VK8500」)にて観察した。
×:マス目の残存数が0〜79個。
△:マス目の残存数が80〜90個。
○:マス目の残存数が91〜99個。
◎:マス目の残存数が100個。
【0118】
<リコート層間付着性の評価>
塗装板の複層塗膜の表面に、再度、先に調製した塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmになるようにクリヤー塗膜上にエアースプレーにて塗装し、140℃で20分間加熱乾燥させ、ベース再塗膜を形成した。
これを室温(20℃)まで放冷した後、溶剤型のクリヤー塗料(日本ペイント(株)製「マックフローO−1810クリヤー」)を、乾燥膜厚が35μmになるようにベース再塗膜上にエアースプレーにて塗装し、140℃で20分間加熱硬化させ、クリヤー再塗膜を形成し、リコート層間付着性用の塗装板を作製した。
得られたリコート層間付着性用の塗装板について、先の層間付着性の評価と同様にして剥離試験を行い、下記評価基準に従ってリコート層間付着性の評価を行った。残存したマス目の数が多い程、リコート層間付着性に優れる。
また、剥離が生じたサンプルに関して、その剥離箇所をレーザー顕微鏡(KEYENCE社製「VK8500」)にて観察した。
×:マス目の残存数が0〜79個。
△:マス目の残存数が80〜90個。
○:マス目の残存数が91〜99個。
◎:マス目の残存数が100個。
【0119】
<耐水性の評価>
塗装板を80℃の温水中に3時間浸漬させた後、温水を室温(20℃)まで冷却し、その状態でさらに3時間放置した。その後、水中から塗装板を取り出し、複層塗膜表面を目視にて観察し、白化または浸漬前の複層塗膜との色相変化という観点から、下記評価基準に従って耐水性の評価を行った。
××:著しい白化が確認され、ブリスターが見られる。
×:浸漬前の複層塗膜に対してかすかに白化が確認され、極小のブリスターが見られる。
△:浸漬前の複層塗膜に対して色相の変化が確認されるが、違和感はない。
○:浸漬前の複層塗膜に対してかすかに色相の変化が確認される。
◎:浸漬前の複層塗膜に対して色相の変化が観察されない。
【0120】
<貯蔵安定性の評価>
塗装板の作製に用いた水性分散体について、安定性の評価を行った。
まず、水性分散体を1000mLのポリ容器中に入れ、常温(23℃)にて3ヶ月間静置した。その後の水性分散体の外観について目視にて観察し、下記評価基準に従って貯蔵安定性の評価を行った。
×:粘度上昇および/または未乳化物の発生が見られる。
△:僅かに粘度上昇が見られる。
○:変化が見られない。
【0121】
<実施例2〜20、比較例1〜8>
水性分散体(X−1)の代わりに、表5〜7に示す種類の水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を調製して塗装板を作製し、各評価を行った。結果を表5〜7に示す。
【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
【表7】

【0125】
表5、6から明らかなように、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対し、酸変性ポリエチレン(B)を5.0〜30.0質量部、炭素数が14〜22である脂肪酸(C)を0.1〜20.0質量部、水(E)を0.5〜5.0質量部、酸変性ポリエチレン(B)および脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍のアルカノールアミン(D)を含有する水性分散体(X−1〜X−20)を用いた実施例1〜20では、層間付着性、リコート層間付着性、耐水性、および貯蔵安定性の評価がいずれも良好であった。
中でも、無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)を10.0〜20.0質量部、脂肪酸(C)としてステアリン酸(C−1)を1.0〜5.0質量部、また、エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)として、質量平均分子量が30,000〜70,000、結晶化度が10〜25%の範囲内にあるエチレン−1−オクテンランダム共重合体、アルカノールアミン(D)としてジエタノールアミン(D−1)を含有する水性分散体(X−1)、(X−6)、(X−7)、(X−8)、(X−9)、(X−18)を用いた実施例1、6、7、8、9、18は、層間付着性、リコート層間付着性、耐水性、および貯蔵安定性の評価が特に良好であった。
なお、各実施例の層間付着性およびリコート層間付着性の評価において、剥離が生じたサンプルの剥離箇所をレーザー顕微鏡にて観察した結果、層間付着性の評価ではベース塗膜とクリヤー塗膜との界面で層間剥離していた。一方、リコート層間付着性の評価では、クリヤー塗膜とベース再塗膜との界面で層間剥離していた。
【0126】
一方、水性分散体を配合しなかった比較例1では、層間付着性およびリコート層間付着性の評価が各実施例に比べて劣っていた。
エチレン−1−ブテンランダム共重合体(A−10)を含有する水性分散体(X−21)用いた比較例2では、層間付着性およびリコート層間付着性の評価が各実施例に比べて劣っていた。
無水マレイン酸変性ポリエチレン(B−1)の含有量が32部である水性分散体(X−23)を用いた比較例3では、耐水性の評価が各実施例に比べて劣っていた。
ステアリン酸(C−1)の含有量が12部である水性分散体(X−25)を用いた比較例4では、耐水性の評価が各実施例に比べて著しく劣っていた。
ラウリン酸(C−4)を含有する水性分散体(X−26)を用いた比較例5では、耐水性の評価が各実施例に比べて著しく劣っていた。また、貯蔵安定性の評価も劣っていた。
ジエタノールアミン(D−1)の量が6.2部である水性分散体(X−29)を用いた比較例6では、貯蔵安定性の評価が各実施例に比べて劣っていた。
水(E−1)の量が5.5質量部である水性分散体(X−31)を用いた比較例7では、貯蔵安定性の評価が各実施例に比べて劣っていた。
アルカノールアミン(D)の代わりに、水酸化カリウム(D−3)を使用した水性分散体(X−32)を用いた比較例8では、リコート層間付着性、および耐水性の評価が各実施例に比べて劣っていた。
なお、各比較例の層間付着性およびリコート層間付着性の評価において、剥離が生じたサンプルの剥離箇所をレーザー顕微鏡にて観察した結果、層間付着性の評価ではベース塗膜とクリヤー塗膜との界面で層間剥離していた。一方、リコート層間付着性の評価では、クリヤー塗膜とベース再塗膜との界面で層間剥離していた。
【0127】
以上の結果より、本発明の水性分散体は、複層塗膜としたときに隣接する塗膜との層間付着性に優れ、耐水性を有する塗膜を形成でき、かつ安定性に優れる。また、リコート時の層間付着性も改善できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して、5.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.1〜10.0質量部の炭素数が14〜22である脂肪酸(C)と、0.5〜5.0質量部の水(E)とを含有し、
さらに、前記酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍のアルカノールアミン(D)を含有することを特徴とする水性分散体。
【請求項2】
前記脂肪酸(C)が、ステアリン酸であることを特徴とする請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
前記アルカノールアミン(D)が、ジエタノールアミンであることを特徴とする請求項1または2に記載の水性分散体。
【請求項4】
前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の質量平均分子量が、30,000〜70,000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体。
【請求項5】
前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)の結晶化度が、10〜25%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性分散体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水性分散体からなることを特徴とする層間付着性付与組成物。
【請求項7】
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)と、該エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して、5.0〜30.0質量部の酸変性ポリエチレン(B)と、0.1〜10.0質量部の炭素数が14〜22である脂肪酸(C)とを溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、
該溶融混練物に、前記酸変性ポリエチレン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍のアルカノールアミン(D)、および前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)100質量部に対して、0.5〜5.0質量部の水(E)を同時に添加して、前記エチレン−1−オクテンランダム共重合体(A)および酸変性ポリエチレン(B)を含む樹脂固形分が微細分散粒子として水中に分散するように転相させる転相工程とを有することを特徴とする水性分散体の製造方法。

【公開番号】特開2011−162709(P2011−162709A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28932(P2010−28932)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(502163421)ユーエムジー・エービーエス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】