説明

水没検出装置および水没検出方法

【課題】誤動作の抑制と迅速な水没の判断とが可能な水没検出装置および水没検出方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、3個以上の複数の浸水センサ(12、14、16、18)と、複数の浸水センサのうち少なくとも2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検出する検出部(29)と、を具備する水没検知装置および水没検出方法である。本発明によれば、2つの浸水センサが浸水を検知しなければ、水没を検出しない。よって、浸水センサの結露による水没検出装置の誤動作を抑制することができる。さらに、3つ以上の浸水センサのうち、少なくとも2つ以上の浸水センサの浸水の検知で水没と検出するため、迅速に水没を検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水没検出装置および水没検出方法に関し、特に複数の浸水センサを有する水没検出装置および水没検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水没検出装置は、例えば車両等が水没したことを検出する。車両が水没する事故が発生した場合、水没検出装置が水没を検出することにより、例えばパワーウインドを開放する等し、搭乗者の安全を確保する。特許文献1には、複数の浸水センサを有し、複数の浸水センサのうちいずれかが浸水を検知した場合、車両が水没したと判断する水没検出装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−227527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る水没検出装置は、複数の浸水センサのいずれかが浸水を検知すると、車両が水没したと判断してしまう。このため、結露等により1つの浸水センサが誤動作すると、水没検出装置も誤動作してしまう。一方、複数の浸水センサ全てが浸水を検知したときに水没と判断する水没検出装置は、水没の迅速な判断ができない。このため搭乗者の危険が増す。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、誤動作の抑制と迅速な水没の判断とが可能な水没検出装置および水没検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、3個以上の複数の浸水センサと、前記複数の浸水センサのうち少なくとも2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検出する検出部と、を具備することを特徴とする水没検知装置である。本発明によれば、2つの浸水センサが浸水を検知しなければ、水没を検出しない。よって、浸水センサの結露による水没検出装置の誤動作を抑制することができる。さらに、3つ以上の浸水センサのうち、少なくとも2つ以上の浸水センサの浸水の検知で水没と検出するため、迅速に水没を検知することができる。
【0007】
本発明は、多角形状の頂点に配置された複数の浸水センサと、前記複数の浸水センサのうち前記多角形状の各辺のいずれか1辺の両端の2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検知する検出部と、を具備することを特徴とする水没検出装置である。この構成によれば、水没する方向に依らず迅速に水没を検知することができる。
【0008】
本発明は、3個以上の複数の浸水センサが浸水を検知するステップと、前記複数の浸水センサのうち少なくとも2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検出するステップと、を有する水没検出方法である。本発明によれば誤動作の抑制と迅速な水没の判断とが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば誤動作の抑制と迅速な水没の判断とが可能な水没検出装置および水没検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例につき図面を参照に説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1は、車両に搭載される水没検出装置の例である。図1は、実施例1に係る水没検出装置60のブロック図である。水没検出装置60は4個の浸水センサ12、14、16および18、検出部29、FET31、32、駆動回路33、34を有し、これらは基板10に設けられている。検出部29はOR回路20、22およびAND回路24を有している。
【0012】
基板10は例えばECU(車両制御装置)を構成する基板である。浸水センサ12、14、16および18の出力は検出部29に入力する。浸水センサ12、14、16および18は浸水するとハイレベルを出力する。OR回路20は浸水センサA12および浸水センサB14の出力をOR処理する。つまり、浸水センサA12および浸水センサB14のいずれかのセンサが浸水を検知すると、OR回路20はハイレベルを出力する。OR回路22は浸水センサC16および浸水センサD18の出力をOR処理する。つまり、浸水センサC16および浸水センサD18のいずれかのセンサが浸水を検知すると、OR回路22はハイレベルを出力する。
【0013】
AND回路24はOR回路20および22の出力をAND処理する。つまり、OR回路20および22の両方の出力がハイレベルの場合AND回路24はハイレベルを出力する。AND回路24の出力は検出部29の出力としてスイッチであるFET31および32のゲートに接続される。FET31のソースおよびドレインはそれぞれ電源と駆動回路33に接続される。FET32のソースおよびドレインはそれぞれ電源と駆動回路34に接続される。検出部29の出力がハイレベルになると、FET31および32がオンし、駆動回路33および34に電源が接続される。
【0014】
駆動回路33および34はそれぞれパワーウインド(P/W)制御ECU37およびスタータモータ38を駆動する回路である。駆動回路33の出力がハイレベルとなるとリレー35はP/W制御ECU37を電源に接続する。よって、パワーウインドが駆動する。一方、駆動回路34の出力がハイレベルとなるとリレー36はスタータモータ38の電源を遮断する。
【0015】
図2は水没検出装置60の断面模式図である。基板10上に浸水センサ66が設けられている。浸水センサ66は、図1に示す浸水センサ12、14、16、18である。図示していないが、基板10には検出部29、FET31、32、駆動回路33、34も搭載されている。また、水没検出装置60以外のECUとしての回路が搭載されていてもよい。基板10は筐体62、64内に収められている。車両が水没した場合の水は、筐体62、64の隙間68や筐体62、64に設けられた貫通孔を介し、筐体62、64内に侵入する。水没検出装置60は筐体62、64を有さなくてもよく、筐体62、64の外側に浸水センサ66が設けられていてもよい。
【0016】
図3は浸水センサ66の回路図である。図3を参照に、基板10に導電性のパターン52、54、56が一定の距離を保ち形成されている。パターン52と54との間は切り込み53で絶縁され、パターン54と56との間は切り込み55で絶縁されている。パターン52、54、56は例えば基板10上に形成された配線パターンと同じ金属膜で形成することができる。パターン52は電源に、パターン56はグランドに、パターン54はP型MOSFET1のゲートに接続されている。パターン52と54との間には抵抗R、キャパシタC1およびダイオードD1が接続されている。パターン54と56との間には、キャパシタC2およびダイオードD2が接続されている。電源にはFET1のソースが接続され、FET1のドレインはダイオードD3を介し出力される。FET1の閾値電圧は、ゲートが電源の電圧ではオフし、電源の約半分の電圧ではオンするように設定されている。
【0017】
パターン52、54、56が浸水していない場合、パターン52と54とは切り込み53により、パターン54と56とは切り込み55により絶縁されている。よって、FET1のゲートはほぼ電源の電圧となり、FET1はオフしている。パターン52、54、56が浸水した場合、水分中のイオンがパターン52と54との間、パターン54と56との間を流れる。よって、パターン52と54との間、パターン54と56との間は抵抗R1より低抵抗となる。例えば、パターン52と54との間およびパターン54と56との間の抵抗が同程度となるように切り込み53と55とを設定しておく。この場合、ゲートは電源電圧のほぼ半分の電圧となり、FET1はオンする。よって、浸水センサ66はハイレベルを出力する。
【0018】
図4は水没検出装置60が搭載された車両の例である。図4を参照に、水没検出装置60は、図1の上側を上に下側を下に縦方向に車両50のエンジンコンパートメント51(エンコパ)内に搭載されている。搭載位置はエンコパ内以外にも車室内、助手席のグローボックス内等とすることもできる。
【0019】
図5は、水没検出装置60の動作を示すフローチャートである。まず、浸水センサ12、14、16および18が浸水の検知を行う(ステップS10)。次に、検出部29が浸水センサA12またはB14並びに浸水センサC16またはD18が浸水を検知したか判定する(ステップS12)。Noの場合、検出部29はローレベルを出力する。終了か判定する(ステップS14)。例えば、イグニッションキーが抜かれた場合、終了と判定する。終了でなければ、ステップS10に戻る。ステップS12においてYesの場合、検出部29はハイレベルを出力する。すなわち、水没検出装置60は車両が水没と検出する(ステップS16)。駆動回路33および34は、パワーウインドを開放し、スタータモータを停止させる(ステップS18)。
【0020】
このように、車両50の水没を水没検出装置60が検出し、搭乗者の安全を確保する。車両50の水没を検出する場合、車両50が水没していないにも関わらず水没検出装置60が水没と検出すると、例えば走行中にパワーウインドが開放となり危険である。一方、車両が水没した場合は、一刻も早く水没を検出することが求められる。実施例1によれば、物理的に離れた2個の浸水センサが浸水を検知しなければ、水没検出装置60は水没と検出しない。物理的に離れた2個の浸水センサが同時に結露することはほとんどない。よって、結露による水没検出装置の誤動作を抑制することができる。しかも、4個の浸水センサ全てが浸水を検知しなくとも、2個の浸水センサの浸水の検知で水没検出装置60は水没と検出する。よって、迅速に水没を検出することができる。
【0021】
図6(a)から図6(c)は実施例1の変形例を示す図である。図6(a)を参照に、AND回路26は浸水センサA12およびB14の出力をAND処理しOR回路28に出力する。AND回路27は浸水センサC16およびD18の出力をAND処理しOR回路28に出力する。OR回路28はAND回路26および27の出力をOR処理し出力する。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略し図示しない。
【0022】
図6(b)を参照に、下側の浸水センサは浸水センサC17のみであり、AND回路25はOR回路20の出力と浸水センサC17の出力をAND処理し出力する。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略し図示しない。
【0023】
図6(c)を参照に、OR回路21および23はそれぞれ対角の浸水センサA12とD18および浸水センサB14とC16をOR処理する。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略し図示しない。
【0024】
実施例1および図6(a)から図6(c)の変形例によれば、3個以上の複数の浸水センサと、複数の浸水センサのうち少なくとも2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検出する検出部29と、を有している。少なくとも物理的に離れた2つの浸水センサが浸水を検知しなければ、水没を検出しない。このため、浸水センサの結露による水没検出装置の誤動作を抑制することができる。さらに、3つ以上の浸水センサのうち、少なくとも2つ以上の浸水センサの浸水の検知で水没と検出するため、迅速に水没を検知することができる。浸水センサの数は図6(b)の変形例のように3個、図1、図6(a)および図6(c)のように4個でもよいし、5個以上であってもよい。
【0025】
また、複数の浸水センサは結露による誤動作を抑制するため、離れていることが好ましい。そこで、4個の浸水センサを用いる場合は、複数の浸水センサを、基板10等の4隅に設けることが好ましい。
【0026】
図7(a)から図7(c)は、水没検出装置60が水没する場合の浸水センサの位置を示した模式図である。図1の実施例1に係る水没検出装置60は、図7(a)のように浸水センサB14およびD18が浸水した場合は、水没と検出する。一方、図7(b)のように、浸水センサC16およびD18が浸水した場合は、水没とは検出しない。図7(c)のように、さらに浸水センサB14が浸水した時点で、水没を検出する。車両はいかなる方向からも水没する可能性がある。例えば、図1の実施例1に係る水没検出装置60は、前述のように、図7(b)の方向から水没した場合、水没の検出が遅延してしまう。
【0027】
図6(c)の水没検出装置によれば、四角形状の頂点に配置された浸水センサ12、14、16および18の各辺のいずれか一辺の両端の2個の浸水センサが浸水を検知した場合、検出部29は水没と検出する。よって、図7(a)、図7(b)のいずれの方向から水没しても2個の浸水センサが浸水を検知した場合、検出部29は水没と検出する。このため、水没の検出を迅速に行うことができる。
【0028】
複数の浸水センサの配置は四角形状に限られず、3角形状、5角形状以上とすることもできる。すなわち、複数の浸水センサが多角形状に配置されており、検出部は、複数の浸水センサのうち多角形状の各辺のいずれか1辺の両端の2個の浸水センサが浸水を検知した場合、水没を検出する。これにより、水没の検出をより迅速に行うことができる。
【0029】
本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は実施例1に係る水没検出装置のブロック図である。
【図2】図2は水没検出装置の断面模式図である。
【図3】図3は浸水センサの回路図である。
【図4】図4は車両に搭載された水没検出装置を示すである。
【図5】図5は実施例1に係る水没検出装置の動作を示すフローティングチャートである。
【図6】図6(a)から図6(c)は実施例1の変形例を示す図である。
【図7】図7(a)から図7(c)は水没検出装置の水没の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0031】
10 水没検出装置
12、14、16、18 浸水センサ
20、21、22、28 OR回路
24、25、26、27 AND回路
29 検知部
31、32 FET
35、36 リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3個以上の複数の浸水センサと、
前記複数の浸水センサのうち少なくとも2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検出する検出部と、を具備することを特徴とする水没検出装置。
【請求項2】
多角形状の頂点に配置された複数の浸水センサと、
前記複数の浸水センサのうち前記多角形状の各辺のいずれか1辺の両端の2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検出する検出部と、を具備することを特徴とする水没検出装置。
【請求項3】
3個以上の複数の浸水センサが浸水を検知するステップと、
前記複数の浸水センサのうち少なくとも2個の浸水センサが浸水を検知した場合に水没を検出するステップと、を有することを特徴とする水没検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−96378(P2008−96378A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281253(P2006−281253)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】