説明

水溶性架橋剤

【課題】産業上及び医学的に重要な基材の表面特性の化学的及び/又は物理的改質に関し、化合物を他の化合物及び/又は基材表面に結合させるための光活性化可能な架橋剤を提供することを目的とする。
【解決手段】2官能価又はより高い官能価の光活性化可能な化合物から形成される化学架橋剤であって、改良された水溶性を提供するように使用条件下で帯電する少なくとも1個の基を提供する化学架橋剤。この架橋剤は、さらに、当該架橋剤が水性系で架橋剤として使用することが可能となるように2個以上の光活性化可能な基を提供する。帯電した基は1個以上の有機酸の塩、オニウム化合物又はプロトン化されたアミンを含む基(場合に応じて、追加の光反応性基)により提供することができ、光反応性基は1個のアリールケトンを含む2個以上の基により提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、産業上及び医学的に重要な基材の表面特性の化学的及び/又は物理的改質に関する。さらなる観点において、本発明は、特定の用途のためにばら材料の表面特性を改質する有用な種々の方法に関する。この観点において、本発明は、プラズマ蒸着、放射線グラフト化、光重合によるグラフト化、イオン注入及び化学誘導体化のような表面改質技術に関する。
【0002】
本発明はさらに、化合物を他の化合物及び/又は基材表面に結合させるための光活性化可能な架橋剤に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
望ましい化学的及び/又は物理的特性を達成するための表面の化学的改質は既に記載されている。例えば、米国特許第4,722,906号、第4,973,493号、第4,979,959号及び第5,002,582号(引用によりこれらの各開示をここに含めることにする)は、生体分子及び合成ポリマーのような化学物質の種々の基材への共有結合を達成するための潜伏反応性基(latent reactive groups)の使用による表面改質に関する。好ましい潜伏反応性基は典型的には光化学反応性官能基(すなわち、光反応性基)と記述される。適切なエネルギー源に暴露されると、光反応性基は、不活性状態(すなわち、基底状態)から適切な物質と共有結合を形成することができる反応性中間体に変換される。
【0004】
そのような潜伏反応性基は、望ましい化合物をまず(例えば、熱化学的に)誘導体化させ、次に誘導体化された化合物を表面に光化学的に結合させるために使用することができる。そのような一連の方法は、多くの状況で適切であるが、特に最初に誘導体化することが本質的に困難な標的分子と共に使用される場合には、速度、融通性及び使用のし易さのような特性に欠けることがある。
【0005】
また、架橋剤、例えば片方の末端の光反応性基を有し、そしてもう一方の末端に熱化学的結合基を有する架橋剤としての光活性化可能なヘテロ2官能価分子を生成させるために潜伏反応性基を使用することができる。(例えば、上記‘582号明細書及びReiner等の記述を参照されたい。)
【0006】
そのような架橋剤は、無反応性化合物を表面に結合させること又は適切な光化学作用をもつ放射線に暴露することにより比較的不活性な表面を活性にするための下塗りのいずれかに使用することができる。
【0007】
本願の譲受人が一般所有する米国特許第5,414,075号明細書には、光活性化可能な基を有する表面を提供するために、表面を下塗りすることに架橋剤を使用することが記載されている。この特許明細書には、支持体表面を下塗りすること又は標的分子を支持体に同時適用することに有用な抑制された多官能化学物質が記載されている。
【0008】
‘075号特許明細書に記載されているものを含む上記特許明細書に記載されているような化学物質は概して疎水性である。その結果、それらは水性系での溶解度が比較的低く、そのため往々にしてそれらの有用性は疎水性用途に限定されている。このため、この先行技術の架橋剤は、一次(例えば、約50体積%以上を占める)溶剤として水を使用する組成物でめったにコーティングされない。
【0009】
別の問題に関して、一群の陽イオン性高分子電解質が、例えば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Kroschwitz編集、John Wiley and Sons,1990 の第761 〜763 頁「Polyamines and Polyquaternary Ammonium Salts」に記載されている。この記載は、引用によりここに含めることにする。そのようなポリアミン及び「高分子第4級塩(polyquats)」は、それらの陽イオン性の観点から、水性媒体中の負に帯電したコロイド粒子との相互作用を伴う用途で有用なものであると記載されている。それらは、例えば、濁った天然水からの粒状物質の凝集において、製紙における顔料定着促進剤として、及び濾過促進剤、乳化破壊剤等として使用される。
【0010】
出願人は、改良された水溶性及び無反応性分子を表面に架橋させるかさもなければ無反応性分子を表面に結合させる能力の両方を有する非重合体の光活性化可能な架橋剤の存在を知らない。
【発明の開示】
【0011】
発明の要約
本発明は、2官能価又はより高い官能価の光活性化可能な帯電した化合物を含む化学架橋剤を提供する。本発明の架橋剤は、改良された水溶性を提供するように、使用条件下で帯電する少なくとも1個の基を提供する。この架橋剤は、さらに、当該架橋剤が水性系で架橋剤として使用することができるように、2個以上の光活性化可能な基を提供する。好ましい態様において、電荷は、1個以上の第4級アンモニウム基を含めることによって提供され、この光活性化可能な基は、ベンゾフェノンのようなアリールケトンの2個以上の基により提供される。
【0012】
好ましい態様において、本発明は、一般式:
X−Y−X
(式中、各Xは、独立に、光反応性基を含有する基であり、Yは特に1個以上の帯電した基を含有する基である)
により表される架橋剤を提供する。そのような態様において、帯電した基の数及び/又は種類は、当該架橋剤が水を主成分とする溶剤系で使用すること(すなわち、表面に適用され、活性化されること)ができるように、分子に十分な水溶性を付与するのに十分なものである。
【0013】
特に好ましい態様において、Yは1個以上の窒素含有基(例えば第4級アンモニウム基)を含む。より好ましくはYは、
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、各R1は独立にアルキレン基、オキシアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を含む基であり、各R2は独立にアルキル基、オキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を含む基であり、各R3は独立に非結合性電子対、水素原子又はR2と同じく定義されるもののいずれかであり、R1、R2及びR3基は、O、N、S、P等のような妨害作用のないヘテロ原子及び/又はハロ(例えば、Cl)等のような妨害作用のない置換基を含みうる)
からなる群から選ばれる線状又は複素環式基を含む。
【0016】
ある好ましい態様において、1個以上のR2基は光活性化可能なアリールケトンの形態にあるアラルキル基を含む。上記X基により提供される2個の光活性化可能な基に加えて、これらの基は、本明細書において「トリフォト(triphoto)」、「テトラフォト(tetraphoto)」及びより高次の光活性化可能な基を提供するように使用することができる。合計で3個以上の光反応性基を使用すると、当該架橋剤に標的分子及び/又は表面に当該架橋剤を架橋させる能力が付与される。
【0017】
さらに別の好ましい態様において、既に例示したもの以外の複素環式構造を形成するように、上記線状基のR2及びR3基を実質的に縮合させることができる(例えば、1個のN原子上にR2及びR3を、又は隣接する複数のN原子上にR2/R3基の適切な組み合わせを縮合させることができる)。本発明の架橋剤中のR基同士間の特定の選択及び関係は、当該架橋剤が2個以上の光活性化可能な基を提供し、その意図される用途にとって十分な水溶性を持ち続ける限り、厳密ではない。
【0018】
「妨害作用のない」という用語は、その存在が、前記光活性化可能な架橋剤を当該架橋剤の意図する目的で使用することを妨げない基、ヘテロ原子又は置換基にあてはまる。
【0019】
本発明の架橋剤は、特に前述の架橋剤が有効ではない架橋用途に使用することができるため、広範な用途を有する。特に、1個以上の帯電した基(例えば、有機酸の塩、オニウム化合物、又はプロトン化されたアミン)の存在は、当該架橋剤に高い水溶性を付与する。
【0020】
その結果、本発明の架橋剤は、改良された水溶性を有する化学物質を必要とする水性系で使用することができる。これによって、安価な非光反応性分子を表面に固定化するための原価効率の良い方法が提供される。当該架橋剤自体はアミン及び4−ブロモメチルベンゾフェノン(BMBP)のような安価な出発物質から製造することができるため、そのような架橋剤を製造及び使用する際の最終費用は従来の光反応性化学物質よりも著しく低い。
【0021】
本発明の架橋剤は、他の無反応性分子を表面に同時に(例えば、架橋により)
固定化することに使用することができる。この架橋剤は、下塗りされた潜伏反応性表面を調製することに使用されてもよく、この下塗りされた潜伏反応性表面は標的分子のその後の適用に使用することができる。
【0022】
詳細な説明
本明細書で使用する次の語句及び用語は以下の意味を有する:「水溶性」とは、水性条件下で本発明の架橋剤を有効に使用することができるほど十分な溶解性を本発明の架橋剤が有することを意味し、「(モノ、ジなど)フォト−(モノ、ジなど)電荷」とは、本発明の架橋剤中の光反応性基の総数並びに帯電した基の総数及び種類を示す略記号として用いる。例えば、「ジフォト−ジ第4(Diphoto−Diquat)」とは、2個の光反応性基と2個の第4級アンモニウム基を有する本発明の架橋剤を意味し、例えば、限定するわけではないが、表Iの式II〜Vで示されるものを包含する。他の例として、「トリフォト−トリ第4(Triphoto−Triquat)」とは、3個の光反応性基と3個の第4級アンモニウム基を有する本発明の架橋剤(例えば式VI)を意味し、「ジフォト−モノスルホネート(Diphoto−Monosulfonate)」とは、2個の光反応性基と1個のスルホネート基を有する架橋剤を意味する。
【0023】
好ましい態様において、本発明は、一般式:
X−Y−X
(式中、各Xは独立に光反応性基を含む基であり、Yは1個以上の帯電した基を含む基である)
により表される架橋剤を提供する。
【0024】
電荷を有する基「Y」
本発明の架橋性化合物は1個以上の帯電した基及び任意に1個以上の実験式「Y」で同定される基の中に含まれる追加の光反応性基を含む。「帯電した」基とは、この意味で使用する場合に、使用条件(例えば、pH)下でイオンの形態で存在する基、すなわち電荷を有する基を意味する。帯電した基は、一部、当該化合物に望ましい水溶性を付与するために存在する。
【0025】
好ましいY基は重合体ではない。すなわち、好ましいY基は、モノマーの任意の組み合わせの重合により形成されるものではない。非重合体架橋剤はより小さな分子量を有する傾向があるため、非重合体架橋剤が好ましい。このことは、概して、単位質量当たりより高濃度の光反応性基を有するように非重合体架橋剤を調製することができることを意味する。また、非重合体架橋剤は、概して、同等な光反応性重合体化学物質よりもよりコーティング密度の高い光反応性基を提供することができる(例えば、上記‘582号特許明細書に記載されている光PVP化学物質)。
【0026】
好ましい架橋剤中の帯電した基の種類及び数は、当該架橋剤に少なくとも約0.1mg/ml、好ましくは少なくとも約0.5mg/ml、より好ましくは少なくとも約1mg/mlの水(室温の最適pHの水)への溶解度を付与するのに十分なものである。表面コーティング方法では、標的分子の有用なコーティングを表面に提供することに対し、少なくとも約0.1mg/mlの架橋剤の溶解度が概して適切である。
【0027】
このことは、水に不溶であると通常見なされている当該技術分野における架橋剤(例えば、約0.1mg/ml以下、より往々にして約0.01mg/ml以下の範囲内にある同等な水への溶解度を有する)と対照をなす。この理由のために、従来の架橋剤は、水が存在しないか又は水が少量(すなわち、50体積%以下)の成分として含まれる溶剤系に典型的には提供され、使用される。
【0028】
適切な帯電した基の例には、限定するわけではないが、有機酸の塩(例えば、スルホネート基、ホスホネート基及びカルボキシレート基)、オニウム化合物(例えば、第4級アンモニウム基、スルホニウム基及びホスホニウム基)及びプロトン化されたアミン並びにこれらの組み合わせが含まれる。第4級アンモニウム化合物の他に帯電した基を用いる架橋剤の例は表Iの式Xで与えられる。上記実験式を参照すると、式X中のR3基は第3級アミン基が与えられるように孤立電子対であることが分かり、R2は式:−CH2−CH2−SO3Naにより表される基の中に帯電したスルホネート基を含む。当該化合物を水溶性にするのに十分な全電荷は、孤立しているスルホネート基の負電荷により与えられる。
【0029】
本発明の架橋剤を製造する際に使用するのに好ましい帯電した基は第4級アンモニウム基である。「第4級アンモニウム」なる用語は、本明細書で使用する場合に、水素原子がそれぞれ基により置換され、それによりこの基に実効正電荷を付与するNH4+の有機誘導体を意味する。残りの対イオンは、任意の適切な陰イオン性化学種、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又はスルフェートイオンにより提供される。
【0030】
光反応性「X」基
好ましい態様において、中央のY基に結合したX基により2個以上の光反応性基が提供される。適切な光源に露光することによって、光反応性基のそれぞれは活性になる。「光反応性基」なる用語は、本明細書で使用する場合に、隣接する化学構造物との共有結合をもたらす活性な化学種(例えば、引抜き可能な水素)を生成する加えられた外部エネルギー源に応答する化学基を意味する。
【0031】
好ましいX基は、以下の種類の標準化された評価方法(追加の実験条件は下記実施例で示す。)で架橋についての目視指標が提供されるほど十分に光反応性である。本発明の架橋剤を含む溶液は、水又はここで述べるような水/補助溶剤系によりコーティング溶液を調製することに使用される。前記コーティング溶液は0.1〜1mg/mlの間の濃度の架橋剤を含む。BASF Corporationから入手可能なKollidon 90F(「K−90F」)と同定されるもののような試薬用ポリビニルピロリドン(分子量が約1.5ミリオンダルトンである「PVP」)は、最終PVP濃度が約20mg/mlの濃度に達するように前記コーティング溶液に加えられ、結果として得られる組成物はポリスチレンスリップの表面を被覆するために使用される。このコーティング組成物は、次に、水素の引き抜きを促進するのに必要な波長範囲で強度が少なくとも約1.5ミリワット/平方センチメートルである250nm〜450nmの間の露光波長を提供するランプのような適切な光源に現場(in situ)で約4分間露光される。被覆されたPVP(すなわち、架橋剤によりポリスチレン表面に架橋されたもの)の存在は、Congo Red(Sigma)を用いる着色によって定量的に決定される。脱イオン(「DI」)水の流れの下で徹底的に洗浄し、こすった後、表面上で結合しているPVPの存在は、Congo Redの0.35%DI水溶液で着色することにより目視確認される。
【0032】
好ましい基は、そのような特性を持ち続ける条件下で貯蔵できる程度に十分に安定である。例えば、米国特許第5,002,582号明細書を参照されたい。この特許明細書の開示は引用によりここに含めることにする。潜伏反応性基は、電磁スペクトルの種々の部分に対して反応するものから選ぶことができ、その中でもスペクトルの紫外及び可視部分に反応するもの(本明細書で「光反応性」と呼ぶもの)が特に好ましい。
【0033】
アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン及びアントロン様複素環式化合物(すなわち、10位にN、O又はSを有するもののようなアントロンの複素環式類似体)又はそれらの置換された(例えば、環置換された)誘導体のような光反応性アリールケトンが好ましい。そのようなケトン類の官能基は、本明細書で説明する活性化/不活性化/再活性化サイクルを容易にかけることができるため、そのようなケトン類の官能基は好ましい。ベンゾフェノンは、三重項状態に系間交差をする励起一重項状態の初期形成により光化学的に励起することができるため、ベンゾフェノンは特に好ましい光反応性基である。励起三重項状態は、(例えば、支持体表面又は溶液中の標的分子及び当該架橋剤に近接して結合している標的分子からの)水素原子の引抜きにより炭素−水素結合の間でラジカル対を生成させる。その後のラジカル対の崩壊によって、新たな炭素−炭素結合の形成が起こる。反応性基(例えば、炭素−水素)が結合に利用できない場合には、紫外線により誘発されるベンゾフェノン基の励起は可逆的であり、その分子はエネルギー源を取り去ることにより基底状態のエネルギー準位に戻る。従って、光反応性アリールケトンが特に好ましい。
【0034】
架橋剤の調製
本発明の架橋剤は、入手可能な試薬及び化学物質を使用し、関連する技術の分野における通常の知識を有する者に周知の化学転化法を使用して調製することができる。例えば、Menschutkin反応(Z.Physik.Chem.5,589(1890))を使用して第3級アミンをハロゲン化アルキルと反応させることにより第4級アンモニウム塩を調製することができる。そのような転化の反応速度は、非常に求核性の高い第3級アミンを使用することにより促進され、ハロゲン化アルキルはハロゲン化物アニオンにより容易に置換される。典型的には、反応性の順序はI->Br->Cl-であり、第1級ハロゲン化物及びベンジル酸ハロゲン化物のような他の非常に反応性の高い化合物が前記反応とって好ましい。Organic Synthesis Collective第IV巻、第585頁(1963)に記載されているヨウ化ベンジルトリメチルアンモニウムの合成は、この反応機構の代表例である。
【0035】
本発明のジ−、トリ−又はより高次の第4級アンモニウム化合物は、例えば4−ブロモメチルベンゾフェノン(「BMBP」)を2個以上の第3級アミン基を含有する化合物と反応させることにより調製することができる。そのようなアミンの特定の例には、限定するわけではないが、N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチレンジエチレントリアミン、及び1,4−ジメチルピペラジンが含まれる。
【0036】
表Iで本発明の好ましい光反応性架橋剤の例を示す。
【0037】
【表1A】

【0038】
【表1B】

【0039】
【表1C】

【0040】
【表1D】

【0041】
【表1E】

【0042】
架橋剤の使用
化合物を表面に同時又は逐次結合させることを含む任意の適切な態様で架橋剤を使用できる。本発明の架橋剤は、任意の適切な表面に対して使用することができるものである。当該架橋剤の潜伏反応性基が好ましい種類の光反応性基である場合に、活性化された基との共有結合に適切な引抜き可能な水素原子を表面が具備することが特に好ましい。
【0043】
ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)のような塩素含有ポリマー、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、アミノ−エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、セルロース系プラスチック及びゴム様プラスチックのようなプラスチックは全て、本明細書で説明するように改質することができる表面を提供する支持体として使用することができる。Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Kroschwitz編集、John Wiley and Sons,1990の第462〜464頁「Plastics」を参照されたい。この開示は引用によりここに含めることにする。さらに、熱分解炭素から形成されたもの及びガラス、セラミック又は金属のシリル化された表面のような支持体が表面改質に適する。
【0044】
支持体表面への結合のために本発明における使用に適切な標的分子は種々の物質群を包含する。標的分子は、誘導体化されていない形態で又は予め誘導体化して使用することができる。さらに、標的分子は、単独で、又は他の種類の標的分子との組み合わせで固定化されうる。
【0045】
表面に架橋剤を下塗りした後で(例えば、逐次的に)標的分子をその表面に固定化することができる。しかしながら、本発明の架橋剤を表面に結合させている間に(例えば、それと同時に)標的分子を固定化することが好ましい。
【0046】
典型的には、特定の望ましい特性が表面及び/又は表面を有する装置又は物品に付与されるように標的分子が選択される。適切な標的分子の例及び提供するために典型的に使用される表面特性を次の非制限的な表に示す:
【0047】
【表2A】

【0048】
【表2B】

【0049】
架橋剤を表面に結合させるために任意の適切な技術を使用することができ、そのような技術は、各物質、方法又は装置に適するように選ばれ、最適化される。当該反応性架橋剤の溶液の吹付け塗り、浸漬被覆又ははけ塗りにより当該架橋剤を上記のような清浄な物質表面にうまく適用することができる。典型的な同時適用において、コーティングされる予定の支持体は、まず最初に架橋剤と標的分子の水溶液中に浸漬される。本発明において使用するのに適する水性溶剤は少なくとも約50(体積)%の水を含み、任意に1種以上の適切な補助溶剤、例えばイソプロピルアルコールを約10%〜約50%含む。前記補助溶剤は、通常、溶剤系中の当該架橋剤の溶解性に、もし存在したとしても殆ど影響を及ぼさないものであって、表面の効率的なコーティングを促進するために溶液の表面張力を低下させるために使用される。次に、コーティングされた表面は、架橋剤、標的分子及び物質表面の間での共有結合形成を促進させるために紫外線又は可視光に露光され、その後に当該支持体は結合しなかった分子を除去するために洗浄される。
【0050】
典型的な逐次適用において、支持体は、まず最初に架橋剤の水溶液中に浸漬され、次に、架橋剤によりコーティングされた支持体は物質表面での共有結合形成を促進させるために紫外線又は可視光に露光される。任意の結合しなかった架橋剤を除去するために洗浄した後、標的分子を含む溶液を適用し、続いて第2回目の紫外線照射を行い、標的分子を当該架橋剤を通じて表面に付着させる。所望であれば、本発明の架橋剤を使用する表面改質に他の方法を使用することができる。この方法は、従来の化学物質を使用して支持体を改質することが困難な状況又は表面上に耐久性及び安定性が非常に高い標的分子を必要とする状況で特に有用である。
【0051】
本発明は、適切な標的分子の広範なスペクトルを使用する種々の医療上、科学上及び産業上重要な装置の表面特性を変化させるのに有用な化学物質及び方法を提供する。
【0052】
本発明を以下の非制限的な実施例を参照してさらに説明する。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、説明する態様に多くの変更を加えることができることが明らかであろう。従って、本発明の範囲は本願明細書に記載した態様に限定されるべきではなく、特許請求の範囲に記載の態様及びそれらの態様の均等物に限定されるべきである。特に断らない限り、全ての百分率は重量で表されている。
【実施例】
【0053】
実施例1
4−ブロモメチルベンゾフェノン(化合物I)の調製
オーバーヘッド攪拌機を備えた5リットルMortonフラスコに4−メチルベンゾフェノン750g(3.82モル)を加え、2850mlのベンゼンに溶解させた。溶液を次に加熱して還流させ、続いて330mlのベンゼン中に610g(3.82モル)の臭素を含む溶液を滴下添加した。添加速度は約1.5ml/分であり、反応を開始させるために90ワット(90ジュール/秒)のハロゲンスポットライトでフラスコに光を当てた。ランプにタイマーを使用し、10%の装荷率(duty cycle)(動作状態5秒間、休止状態40秒間)を与え、続いて1時間で20%の装荷率(動作状態10秒間、休止状態40秒間)を与えた。添加の最後に、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析すると、生成物は4−ブロモメチルベンゾフェノンを71%、ジブロモ生成物を8%及び未反応の4−メチルベンゾフェノンを20%含むことを確認した。冷却後、反応混合物を、100mlの水中に10gの硫酸水素ナトリウムを含む溶液で洗浄し、続いて、3×200mlの水で洗浄した。生成物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、1:3トルエン:ヘキサンから2回再結晶化させた。減圧乾燥後、融点が112〜114℃である4−ブロモメチルベンゾフェノンを収率60%で635g単離した。核磁気共鳴(NMR)分析(1H NMR(CDCl3))は、所望の生成物に一致した:芳香族プロトン7.20〜7.80(m,9H)及びメチレンプロトン4.48(s,2H)。全ての化学シフト値は、テトラメチルシラン内部標準からのダウンフィールド側へのppmで表す。
【0054】
実施例2
エチレンビス(4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)ジブロミド(Diphoto−Diquat)(化合物II)
225mlのクロロホルムに6g(51.7ミリモル)のN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを撹拌しながら溶解させた。4−ブロモメチルベンゾフェノン29.15g(106.0ミリモル)を固形物として加え、反応混合物を室温で72時間攪拌した。この後に、生成した固形物を濾過により単離し、白色固形物を冷クロロホルムで濯いだ。残留溶剤を減圧除去し、融点が218〜220℃の固形物34.4gを99.7%の収率で単離した。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(DMSO−d6)芳香族プロトン7.20〜7.80(m,18H)、ベンジルメチレン4.80(br.s,4H)、アミンメチレン4.15(br.s,4H)、及びメチル3.15(br.s,12H)。
【0055】
実施例3
ヘキサメチレンビス(4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)ジブロミド(Diphoto−Diquat)(化合物III)
50mlのクロロホルムに1g(5.80ミリモル)のN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンを溶解させた。次に、4−ブロモメチルベンゾフェノン3.35g(12.18ミリモル)を固形物として加え、得られた溶液を50℃で18時間攪拌した。この後に、その透明溶液をエーテルで処理した。その結果として得られたスラリーを室温に放冷させ、固形物を沈殿させた。液体をデカントし、残留固形物をエーテルを用いて徹底的に粉砕した。得られた固形物を減圧乾燥させると、融点が208〜209℃の固形物を定量的収率で4.19g得た。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(DMSO−d6)芳香族プロトン7.25〜7.90(m,18H)、ベンジルメチレン4.65(br.s,4H)、アミンメチレン3.25(br.s,4H)、メチル3.00(br.s,12H)、並びにメチレン1.60〜2.10(m,4H)及び1.20〜1.60(m,4H)。
【0056】
実施例4
1,4−ビス(4−ベンゾイルベンジル)−1,4− ジメチルピペラジンジウムジブロミド(Diphoto−Diquat)(化合物IV)
10mlのクロロホルムに1g(8.76ミリモル)の1,4−ジメチルピペラジンを溶解させ、続いて4.94g(17.96ミリモル)の4−ブロモメチルベンゾフェノンを加えた。固形物は15分間以内に溶解し、固形生成物の沈殿は30分後に起こった。混合物をアルゴン雰囲気下で室温で一晩攪拌した。生成物をエーテルで稀釈し、その固形物を濾過し、次いでエーテルで濯いだ。得られた生成物を減圧乾燥させると、融点が241〜244℃の固形物を定量的収率で5.82g得た。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(DMSO−d6)芳香族プロトン7.25〜7.90(m,18H)、ベンジルメチレン4.80〜5.30(m,4H)、環メチレン2.90〜4.40(m,4H)、及びメチル3.25(br.s,6H)。
【0057】
実施例5
ビス(4−ベンゾイルベンジル)ヘキサメチレンテトラアミンジウムジブロミド(Diphoto−Diquat)(化合物V)
100mlの室温のクロロホルムに、1g(7.13ミリモル)のヘキサメチレンテトラアミン及び4.02g(14.6ミリモル)の4−ブロモメチルベンゾフェノンを溶解させた。次に、この溶液を加熱し、48時間還流した。室温に冷却後、1リットルのエーテルを加えることにより生成物が沈殿し、その得られた油状固形物を温エーテルで3回抽出した。残留溶剤を減圧除去すると、融点が138〜141℃の固形物を収率54.7%で2.69g得た。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(DMSO−d6)芳香族プロトン7.40〜7.90(m,18H)、ベンジルメチレン5.10(s,4H)並びに環メチレン5.00(br.s,2H)、4.50(br.s,8H)及び4.15(br.s,2H)。
【0058】
さらに精製するために、200mgの試料を順相フラッシュシリカゲルカラムに装填し、メタノールの10%(v/v)クロロホルム溶液を使用し、カラムから無極性成分を溶出させた。次に、シリカゲル床を取り出し、メタノールの10%(v/v)クロロホルム溶液を用いて完全に抽出し、精製された試料を得た。
【0059】
実施例6
ビス[2−(4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニオ)エチル]−4−ベンゾイルベンジルメチルアンモニウムトリブロミド(Triphoto−Triquat)(化合物VI)
20mlのクロロホルムに攪拌しながら1g(5.77ミリモル)のN,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミンを溶解させた。4−ブロモメチルベンゾフェノン4.84g(17.60ミリモル)を固形物として加え、その結果得られた溶液を50℃で48時間攪拌した。冷却後、その溶液をエーテルで処理し、その結果生成した固形物を沈殿させた。液体をデカントし、残留固形物をエーテルを用いて粉砕した。得られた油状固形物を2時間減圧乾燥させた。生成した固形物は、88.1%の収率に対応する5.08gの重量であり、融点は123〜128℃であった。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(CDCl3)芳香族プロトン7.20〜8.10(m,27H)、ベンジルメチレン5.15(s,6H)、メチレン4.05(br.s,8H)、及びメチル3.35(br.s,15H)。
【0060】
実施例7
4,4−ビス(4−ベンゾイルベンジル)モルホリニウムブロミド(Diphoto−Monoquat)(化合物VII)
10mlの乾燥テトラヒドロフラン(THF)に0.85g(9.76ミリモル)のモルホリンを溶解させ、続いて0.39g(9.76ミリモル)のNaH(油中60%懸濁液)を加えた。アニオンを形成させるためにこの混合物を50〜60℃で10分間加熱し、続いて2.68g(9.76ミリモル)の4−ブロモメチルベンゾフェノンを加えた。混合物を一晩攪拌し、次に不溶性物質を除去するために濾過し、フィルターケーキを3×10mlのCHCl3で洗浄した。溶剤を減圧除去し、生成物を50mlのCHCl3に再溶解させ、続いて2×30mlの水で洗浄した。Na2SO4上で乾燥させ、溶剤を蒸発させた後、ガスクロマトグラフィーによると純度が95%を上回る生成物を2.9g得た。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(CDCl3)芳香族プロトン7.20〜7.80(m,9H)、酸素に隣接するメチレン3.55〜3.80(m,4H)、ベンジルメチレン3.50(s,2H)、及び窒素に隣接するメチレン2.30〜2.55(m,4H)。
【0061】
上記生成物2.4g(8.07ミリモル)を5mlのCHCl3に攪拌しながら溶解させた。4−ブロモメチルベンゾフェノン2.22g(8.07ミリモル)を120mg(0.80ミリモル)のNaIと共に加え、その混合物を室温で一晩攪拌した。その混合物を濾過し、固形物を3×5mlのCHCl3で洗浄すると、0.95gの白色固形物が得られた。濾液は、生成物の有機溶剤への溶解度のために、より純度の低い物質を多量に含んでいた。1H NMR(DMSO−d6)芳香族プロトン7.30〜7.85(m,18H)、ベンジルメチレン4.95(s,4H)、酸素に隣接するメチレン3.90〜4.25(m,4H)、及び窒素に隣接するメチレン3.15〜3.60(m,4H)。
【0062】
実施例8
エチレンビス[(2−(4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニオ)エチル)−4−ベンゾイルベンジルメチルアンモニウム]テトラブロミド(Tetraphoto−Tetraquat)(化合物VIII)
攪拌しながら20mlのクロロホルムに1.0g(4.34ミリモル)の1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミンを溶解させた。5.02g(18.23ミリモル)の4−ブロモメチルベンゾフェノンを固形物として加え、混合物を50℃で48時間攪拌した。冷却後、混合物をエーテルで処理し、その結果生成した固形物を濾過により単離した。生成物をエーテルで濯ぎ減圧乾燥させた。
【0063】
実施例9
1,1,4,4−テトラキス(4−ベンゾイルベンジル)ピペラジンジウムジブロミド(Tetraphoto−Diquat)(化合物IX)
1g(11.61ミリモル)のピペラジンを20mlのTHFに溶解させ、続いて0.929g(23.22ミリモル)のNaH(油中60%懸濁液)を加えた。アニオンを形成させるためにこの混合物を50〜60℃で10〜20分間加熱し、続いて6.39g(23.22ミリモル)の4−ブロモメチルベンゾフェノンを加えた。混合物を一晩攪拌し、次に不溶性物質を除去するために濾過した。減圧下で蒸発させた後、生成物を50mlのCHCl3に再溶解させ、次いで2×30mlの水で洗浄した。生成物は、Na2SO4上で乾燥させ、濾過及び蒸発により単離した。
【0064】
次に、上記生成物を10mlのCHCl3に溶解させ、続いて6.39g(23.22ミリモル)の4−ブロモメチルベンゾフェノンを加えた。120mg(0.80ミリモル)のNaIを触媒として加え、そして出発物質が消費されるまで混合物を攪拌した。生成物は、エーテルを用いて沈殿させ、その結果得られ固形物をエーテルで濯ぎ、減圧乾燥させることにより単離した。
【0065】
実施例10
N,N−ビス[2−(4−ベンゾイルベンジルオキシ)エチル]−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム塩(Diphoto−Monosulfonate)(化合物X)
5.43g(51.7ミリモル)のジエタノールアミンを60mlのCH2Cl2で稀釈し、続いて5.20g(51.5ミリモル)のトリエチルアミン及び11.3g(51.7ミリモル)のジ−t−ブチルジカーボネートを室温で加えた。GC分析により反応の完了が示された後、揮発性物質を減圧除去し、残留物を45mlのCHCl3に溶解させた。有機物を2×45mlの1NのNaOH、45mlの0.1NのNaOH及び45mlの0.01NのNaOHで連続的に抽出した。次に、各水性抽出液を3×45mlのCHCl3で逆抽出した。組み合わせた有機抽出液を、酢酸エチルを使用し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフ用カラムで精製し、t−BOCにより保護されたアミンを粘性油として収率63%で6.74g得た。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(CDCl3)ヒドロキシルプロトン及び酸素に隣接するメチレン3.50〜3.90(m,6H)、窒素に隣接するメチレン3.25〜3.50(m,4H)、及びt−ブチルプロトン1.45(s,9H)。
【0066】
t−BOCにより保護されたアミン6.7g(32.6ミリモル)を50mlの乾燥THFで稀釈し、続いて19.72g(71.72ミリモル)の4−ブロモメチルベンゾフェノン、83mg(0.55ミリモル)のヨウ化ナトリウム、1.75g(5.43ミリモル)のテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドを加えた。次に、3.1g(71.7ミリモル)の水素化ナトリウム(油中55%懸濁液)を、約80%の量が加えられるまで分割して加えた。混合物を室温で一晩攪拌し、続いて残りの20%の水素化ナトリウムを加えた。さらに1時間反応させた後、生成物を200mlの水で稀釈し、そして生成物を3×100mLのCHCl3で抽出した。ビスベンゾフェノンt−BOC化合物を、95/5(v/v)CHCl3/アセトニトリルを使用してシリカゲルフラッシュクロマトグラフ用カラムで精製し、15.60g(理論量の81%)得た。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(CDCl3)芳香族プロトン7.10〜7.80(m,18H)、ベンジルメチレン4.55(s,4H)、残留メチレン3.30〜3.75(m,9H)、及びt−ブチルプロトン1.45(s,9H)。
【0067】
ビス−ベンゾフェノンt−BOC化合物0.52g(0.877ミリモル)を5mlの酢酸エチルと2.5mlの濃HClとの混合物に溶解させ、室温で30分間攪拌した。次に、10NのNaOHを加えることによりpHを約14に調節し、所望の生成物を4×10mLのCHCl3で抽出した。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、溶剤を蒸発させることによって、第2級アミン生成物を得た。精製することなくこの生成物を使用した。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(CDCl3)芳香族プロトン7.10〜7.80(m,18H)、ベンジルメチレン4.55(s,4H)、酸素に隣接するメチレン3.60(t,4H)、窒素に隣接するメチレン2.85(t,4H)、及びアミンプロトン2.50(s,1H)。
【0068】
前記第2級アミンを5mlのN,N,−ジメチルホルムアミドで稀釈し、続いて0.185g(0.877ミリモル)の2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム塩を加えた。固形物が溶解したら、0.040g(1ミリモル)の60%水素化ナトリウムを加え、混合物を60℃に温めた。反応が徐々に進行していることを確認したら、6.3g(0.042ミリモル)のヨウ化ナトリウムを加え、加熱を3日間続けた。生成物を200mlの水で稀釈し、そして生成物を3×200mlのCHCl3で抽出した。CHCl3/CH3OH/NH4OH 90/10/1(v/v/v)を溶剤として使用してシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより所望のスルホネート生成物を単離し、27%の収率で150mgの生成物を得た。NMR分光法に基づく分析値は所望の生成物に一致した:1H NMR(CDCl3)芳香族プロトン7.10〜7.80(m,18H)、ベンジルメチレン4.50(s,4H)、及び残留メチレン2.90〜4.00(m,12H)。
【0069】
実施例11
化合物IIと共にPVPを適用することによるポリエチレン(PE)の表面改質
イソプロピルアルコール(IPA)/水(1:1)中にPVP(「K90F」、BASF Corporation)を20mg/mlで及び化合物IIを1mg/mlで溶解させることによりコーティング溶液を調製した。高密度ポリエチレン(「HDPE」)棒(長さ15cm(6インチ))をまずIPAをしみ込ませたテッシューで拭き、その後、300mtorrのアルゴン中で250ワットでその棒を2分間プラズマ処理した。前記棒は、前記溶液に2cm(0.75インチ)/秒で浸漬し、5秒間その中に留め、0.5cm(0.19インチ)/秒の速度で引き上げることにより前記コーティング溶液で浸漬被覆した。コーティング溶液から前記棒を取り出した後、その棒を10分間風乾させた。前記棒を、400ワット水銀蒸気バルブを具備する対向するELC4000ランプ(40cm(15.7インチ)離間)の中間に吊り下げた。前記水銀蒸気バルブはその距離で330〜340nmの光を平方センチメートル当たり1.5mW出力する。その棒を回転させ、コーティングが均一に硬化するように3分間ずつ光を当てた。
【0070】
流れている脱イオン(「DI)水で徹底的に洗浄し、親指と人差し指の間で(約30秒間)こすると、未被覆の棒に比べて滑らかなPVPの強い接着性が示された。表面上の結合したPVPの存在も、Congo Red の0.35%DI水溶液で着色することにより確認した。
【0071】
実施例12
化合物IIと共にPVPを適用することによるポリ塩化ビニルの表面改質
PVC尿カテーテル(17.78cm(7.0インチ))×(外径4.0(0.16インチ))を実施例11に記載したような手法でコーティングした。
【0072】
再び、流れているDI水で徹底的に洗浄し、親指と人差し指の間で(約30秒間)こすると、未被覆の対照に比べてPVPの強い接着性の滑らかなコーティングが示された。表面上の結合したPVPの存在も、Congo Redの0.35%DI水溶液で着色することによりもたらされた均一に着色した濃赤色で確認した。
【0073】
実施例13
化合物IIと共にPVPを適用することによるポリウレタンの表面改質
棒はプラズマ前処理されたものではなく、ぬれたままで4分間照射されたもの(照射後に乾燥されるべきもの)であったことを除き、ポリウレタン(「PU」)棒(長さ15cm(6インチ))を実施例11に記載したような手法でコーティングした。
【0074】
このPU棒を流れているDI水で徹底的に洗浄し、親指と人差し指の間で(約30秒間)こすると、滑らかなPVPの強い接着性層が示された。表面上の結合したPVPの存在を実施例11に記載したように着色することよって確認した。
【0075】
実施例14
化合物IIと共にPVPを適用することによるラテックスゴムの表面改質
ラテックスゴムカテーテル(16.5cm(6.5インチ)×外径6mm(0.24インチ))をコーティングし、PVPの表面結合コーティングの存在を実施例3に記載したような手法で確認した。
【0076】
実施例15
化合物IIと共にPVP及びヘパリンを適用することによるPEの表面改質
1本のHDPE棒(長さ15cm(6インチ))を実施例11に記載したような手法で洗浄及び前処理した。この棒は、実施例11に記載したコーティング溶液及び方法を使用して最初のコーティングをした。最初のコーティングが硬化した後、前記棒をIPA/水(40:60v/v)中に20mg/mlでPVPを、10mg/mlでヘパリン(Celsus Corp.)を、及び1mg/mlで化合物IIを含む溶液中に2cm(0.75インチ)/秒で浸し、5秒間留め、0.5cm(0.19インチ)/秒の速度で引き上げることにより浸漬塗りした。ぬれているPE棒を、実施例11に記載したように対向するELC4000ランプの中間に吊り下げ、回転させ、4分間照射した(照射後に乾燥されるべき)。
【0077】
流れているDI水中で親指と人差し指の間で棒を(約30秒間)こすると、未被覆の対照に比べてPVPの滑らかなコーティングが示された。表面上の結合したヘパリンの存在も、Toluidine Blue O(Sigma)の0.1%DI水溶液で着色することにより確認した。
【0078】
実施例16
化合物IIと共にPVP及びヘパリンを適用することによるPVCの表面改質
PVC尿カテーテル(20cm(8インチ)×外径4mm(0.16インチ))をコーティングし、表面上に結合しているPVP及びヘパリンの存在を実施例5に記載したように確認した。
【0079】
実施例17
化合物IIと共にPVP及びヘパリンを適用することによるPUの表面改質
プラズマ前処理を用いなかったことを除き、実施例15に記載したようにPU棒(長さ15cm(6インチ))をコーティングした。実施例15に記載したような棒の評価によって、棒表面に強く結合したPVP及びヘパリンの存在を確認した。
【0080】
実施例18
化合物IIと共にPVP及びヘパリンを適用することによるラテックスゴムの表面改質
プラズマ前処理を必要とせず、IPA/水(40:60 v/v)中に20mg/mlでPVP(K90F)を、10mg/mlでヘパリン(Celsus Corp.)を、及び1mg/mlで化合物IIを含む溶液のみを使用してカテーテルをコーティングしたことを除き、実施例15に記載したようにラテックスゴム尿カテーテル(15cm(6インチ)×外径6mm(0.24インチ))をコーティング及び評価した。ラテックスゴムの実施例15に記載した評価によって、表面に結合したPVP及びヘパリンの存在が示された。
【0081】
実施例19
化合物IIIと共にPVPを適用することによるPUの表面改質
IPA/水(1:1 v/v)中に20mg/mlでPVP(K90F)を、及び1mg/mlで化合物IIIを含む溶液を調製した。最初に、IPAをしみこませたティシューでPU棒(長さ10cm(3.9インチ))を拭いた。その棒を2cm(0.75インチ)/秒で前記コーティング溶液に浸し、5秒間留め、そして1cm(0.39インチ)/秒の速度で引き上げることにより前記コーティング溶液中で浸漬塗りした。PU棒をコーティング溶液から取り出し、その照明距離で330〜340nmの光を平方センチメートル当たり1.5mW出力する400ワット水銀蒸気バルブを具備する対向するELC4000(40cm(15.7インチ)離間)の中間に吊り下げた。コーティングが均一に硬化するように、ぬれている棒を回転させ、3分間照射した。
【0082】
硬化した棒の表面を流れているDI水中で15秒間こすり、次に0.35%Congo Red溶液で着色すると表面上のPVPの存在が示された。再び棒を前述のようにこすり、続いてCongo Redでもう1回着色した。棒の被覆された部分は、均一に濃赤色で着色され、未被覆の対照と比べて滑らかな触感があった被覆がこすれ落ちたことは示されなかった。IPA/水(1:1 v/v)中に20mg/mlでPVPを含む溶液のみを使用してコーティングされた対照棒はこすった後で滑らかではなく、Congo Redで着色しなかった。このことはPVPがPU表面に強く結合しなかったことを示している。
【0083】
実施例20
化合物IV、V又はVIと共にPVPを適用することによるPUの表面改質
コーティング溶液が1mg/mlの化合物IV、V又はVIを含んでいたことを除き、ポリウレタン棒(10cm(3.9インチ))を実施例19に記載したようにコーティングした。各架橋剤を使用する滑らかなコーティングの存在は、実施例19に示したように確認した。
【0084】
実施例21
化合物III、IV、V又はVIと共にPVPを適用することによるPEの表面改質
棒を300mtorrの酸素中で100ワットで3分間を要してプラズマ前処理したことを除き、HDPE棒(12cm(4.7インチ))を同様な濃度のPVP及び化合物III、IV、V又はVIで実施例19に記載したようにコーティングした。4種の全ての架橋剤に関し、実施例19に記載したように手でこすること及びCongo Redで着色することによる棒の表面の評価によって、未被覆の対照に比べて滑らかな触感を有する均一に着色された濃赤色のコーティングが示された。
【0085】
実施例22
PVO1、PVPと化合物II又はVIとによるHDPE、LDPE、PU及びナイロンの表面改質
2種のコーティング溶液を次のように調製した:溶液#1は、30%(v/v)IPA水溶液中にPVO1/PVP(K90F)/化合物II(それぞれ10/20/1mg/ml)を含んでいた。溶液#2は、30%(v/v)IPA水溶液中にPVO1/PVP(K90F)/化合物VI(それぞれ10/20/1mg/ml)を含んでいた。PVO1(photo PVP)は、1−ビニル−2−ピロリドンとN−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド(APMA)の共重合と、それに続いてSchotten−Baumann条件、例えば2相の水性/ 有機反応系下で4−ベンゾイルベンゾイルクロライドを使用してポリマーを光誘導体化することにより調製した。
【0086】
PY棒及びLDPE管(31cm(12.2インチ))並びにHDPE棒及びナイロン管(20cm(7.87インチ))の全部で4つの基材を、IPAがしみこんだティシューで拭き、2cm(0.75インチ)/秒でコーティング溶液に浸し、30秒間留め、0.5cm(0.19インチ)/秒の速度で引き上げることにより浸漬塗りした。それらの基材を上記(実施例11)のような2つの対向するELC 4000ランプの中間に吊り下げ、コーティングが適切に硬化するようにぬれている基材を回転させ、4分間光を当てた。
【0087】
硬化した基材を流れているDI水中で親指と人差し指の間で(約30秒間)こすり、Congo Redの0.35%溶液で着色し、再び(30回)こすり、結合しているPVPの存在を明らかにするために再び着色した。基材上のコーティングの靭性は、管のための変更されたASTMプロトコルを使用して摩擦係数(C.O.F.)により評価した。結果は、PVO1/PVP対照に比べて化学物質II及びVIの添加によってコーティングの耐久性が非常に高まり、減摩性がほんの僅かに減少することを示した。
【0088】
実施例23
PVO1及び化合物II又はVIとによるHDPE、LDPE、PU及びナイロンの表面改質
4つの異なる基材を2つの異なる溶液でコーティングした。溶液#1は、30%(v/v)IPA水溶液中にPVO1/化合物II(それぞれ20/0.5mg/ml)を含んでいた。溶液#2は、30%(v/v)IPA水溶液中のPVO1/化合物VI(それぞれ20/0.5mg/ml)から成っていた。前記材料を実施例22に記載したようにコーティングし、評価した。表面コーティングは、架橋剤を含まないPVO1/PVPよりも強靭であったが、対照よりも許容可能な範囲内でわずかに減摩性が低かった。
【0089】
実施例24
化合物II、III、IV、V又はVIの逐次適用によるPUの表面改質
PU棒(10cm(3.9インチ))をIPAをしみこませたティシューで拭いた。
IPA/水(1:1 v/v)中に化合物II(10mg/ml)、化合物III(10mg/ml)、化合物IV(4mg/ml)、化合物V(10mg/ml)又は化合物VI(10mg/ml)を含む溶液で実施例11に記載したように棒を浸漬塗りした。前述(実施例11)のようなELC4000ランプを使用して棒に光りを1分間当て、コーティングが均一に硬化するように回転させた。次にIPA中にPVP(20mg/ml)含む溶液中で棒を浸漬塗りし、風乾させ、次に前述(実施例11)のように3分間光を当てた。
【0090】
硬化した棒を流れているDI水中で指の間でこすり(15秒間)、次に0.35%Congo Redで着色し、表面上に結合しているPVPが存在していることを証明した。低い靭性及び減摩性のPVPコーティングを示した化合物IVのコーティングを除き、全ての光試薬がPU棒上に強靭で滑らかなコーティングを形成した。
【0091】
実施例25
化合物II、III、IV、V又はVIとPVPの逐次適用によるHDPEの表面改質
5cm(1.97インチ)×1.5cm(0.59インチ)×4mm(0.16インチ)の平らなHDPE片をまずIPAをしみこませたティシューで拭き、次に各面を300mtorrの酸素中で100ワットで1分間前処理した。次に前記片を前述(実施例24)の濃度の化合物II、III、IV、V又はVIの溶液中に浸漬した。次に前記平らな片に実施例11に記載したように光を1分間当てた。硬化後、IPA中にPVP(20mg/ml)含む溶液中で棒を浸漬塗りし、風乾させ、次に前述(実施例11)のように3分間光を当てた。
【0092】
硬化した棒を流れているDI水中で徹底的に洗浄し、親指と人差し指の間でこすり(2×15秒間)、次に0.35%Congo Redで着色し、各光試薬を使用することによって靭性及び減摩性のあるコーティングであることが示された。
【0093】
実施例26
PVPと化合物VIIによるPUの改質
2種のコーティング溶液を調製した:溶液#1は、50%(v/v)IPA水溶液中にPVP(K90F)/化合物VII(それぞれ17/1mg/ml)を含んでいた。溶液#2は、50%(v/v)IPA水溶液中にPVP(K90F)(12mg/ml)を含んでいた。
【0094】
PU棒(16cm(6.3インチ))をIPAをしみこませたティシューで拭き、コーティング溶液に2cm(0.75インチ)/秒で浸し、30秒間留め、0.7cm(0.27インチ)秒の速度で引き上げることにより各コーティング溶液中で浸漬塗りした。
対照棒と化合物VIIによりコーティングされたものの両方の試料を、光を当てる前に10分間風乾させるかぬれたまま光を当てた。基材を前述(実施例11)のような2基の対向するELC4000ランプ(40cm(15.7インチ)離間)の中間に吊り下げた。棒を回転させ、2分間(乾式照明)又は4分間(湿式照明)光りを当てた。
【0095】
硬化した棒を流れているDI水中で徹底的に洗浄し、親指と人差し指の間で(約30秒間)こすることによって、PVPのみを含む対照に比べて化合物VIIを使用した減摩性PVPの接着性の高い層が示された。PVP及び化合物VIIにより処理された表面上に結合しているPVPが存在していることも、Congo Redの0.35%DI水溶液で着色することにより表れた均一に着色した濃赤色によって確認した。吸着したPVPのみによってコーティングされた棒は、無色であったか、又は非常に淡い桃色の着色を呈した。
【0096】
実施例27
PVP及び化合物XによるPUの改質
0.5当量の0.1NのNaOHを含むDI水中に20mg/mlでPVP(K90F)を、及び1mg/mlで化合物Xを溶解させることによりコーティング溶液を調製した。PU棒(18cm(7.1インチ))をまずIPAをしみこませたティシューで拭き、次いで溶液に2cm(0.74インチ)/秒で浸し、15秒間留め、1cm(0.38インチ)秒の速度で引き上げることによりコーティング溶液中で浸潰塗りした。ぬれているPU棒を、実施例11に記載したように対向するELC4000ランプの中間に吊り下げ、回転させ、3分間光りを当てた。
【0097】
流れているDI水中で徹底的に洗浄し、親指と人差し指の間で表面を(約30秒間)することによって、未被覆の棒に比べて減摩性のPVPの接着層が示された。表面上に結合しているPVPが存在していることも、Congo Redの0.35%DI水溶液により確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化により表面及び/又は標的分子に共有結合することができる光活性化可能な化学架橋剤であって、該光活性化可能な化学架橋剤は、帯電した2官能価又はより高い官能価の光活性化可能な非重合体化合物を含み、ここで、該化合物は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、及びアントロン様複素環式化合物、並びにこれらの置換誘導体からなるアリールケトンの群から選ばれ、各々が活性化されて前記表面又は標的分子と共有結合を形成することができる2個以上の光反応基;及び、各々が独立して窒素含有基を含む1個以上の帯電した基を含み、ここで、前記窒素含有基が、
【化1】

(式中、各R1は独立にアルキレン基、オキシアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基であり、各R2は独立にアルキル基、オキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、各R3は独立に非結合性電子対、水素原子又はR2と同じく定義される基であり、R1、R2及びR3基は妨害作用のないヘテロ原子又は置換基を含むことができ、ただし、R2が光活性化可能な基を含む場合、R3はR2に等しくない)
からなる線状又は複素環式基の群から選択される、前記光活性化可能な化学架橋剤。
【請求項2】
前記帯電した基が、水を主成分とする溶剤系で当該架橋剤が架橋剤として使用されることができるほどに十分である、請求項1記載の架橋剤。
【請求項3】
前記光反応性基が、各々1個のアリールケトンを含有する2個以上の基により提供される、請求項1記載の架橋剤。
【請求項4】
式:
X−Y−X
{式中、各Xは、独立に、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、及びアントロン様複素環式化合物、並びにこれらの置換誘導体からなるアリールケトンの群から選ばれる光反応性基であり、Yは1個以上の帯電した基であり、この帯電した基の数及び/又は種類は水を主成分とする溶剤系で当該架橋剤を使用されることが可能になるほど十分な水溶性をこの分子に付与するのに十分なものであり、ここで、各帯電した基は、独立して窒素含有基を含み、前記窒素含有基が、
【化2】

(式中、各R1は独立にアルキレン基、オキシアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基であり、各R2は独立にアルキル基、オキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、各R3は独立に非結合性電子対、水素原子又はR2と同じく定義される基であり、R1、R2及びR3基は妨害作用のないヘテロ原子又は置換基を含むことができ、ただし、R2が光活性化可能な基を含む場合、R3はR2に等しくなく、Yそれ自体は、各帯電した基に対してたった1つの光反応基を含む)
からなる線状又は複素環式基の群から選択される}
により表される化合物を含む光活性化可能な架橋剤。
【請求項5】
標的分子で表面をコーティングする方法であって、a)活性化により表面及び標的分子に共有結合することができる光活性化可能な化学架橋剤であって、該光活性化可能な化学架橋剤は、帯電した2官能価又はより高い官能価の光活性化可能な非重合体化合物を含み、ここで、該化合物は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、及びアントロン様複素環式化合物、並びにこれらの置換誘導体からなるアリールケトンの群から選ばれる2個以上の光反応基を含み、該化合物は各々が独立して窒素含有基を含む1個以上の帯電した基を含み、ここで、前記窒素含有基が、
【化3】

(式中、各R1は独立にアルキレン基、オキシアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基であり、各R2は独立にアルキル基、オキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、各R3は独立に非結合性電子対、水素原子又はR2と同じく定義される基であり、R1、R2及びR3基は妨害作用のないヘテロ原子又は置換基を含むことができ、ただし、R2が光活性化可能な基を含む場合、R3はR2に等しくはない)
からなる線状又は複素環式基の群から選択される前記光活性化可能な化学架橋剤を提供し;水を主成分として含み、かつ前記架橋剤と標的分子とを含む溶剤系を形成する工程;b)前記溶剤系を表面に接合させて提供する工程、並びにc)前記標的分子を表面に架橋させるために前記架橋剤の光反応性基を活性化させる工程を含む前記方法。
【請求項6】
光活性化可能な化学架橋剤の活性化により表面に架橋された標的分子を含むコーティングを有する表面であって、前記光活性化可能な化学架橋剤が、帯電した2官能価又はより高い官能価の光活性化可能な非重合体化合物を含み、該化合物は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、及びアントロン様複素環式化合物、並びにこれらの置換誘導体からなるアリールケトンの群から選ばれ、活性化されて前記表面及び標的分子と共有結合を形成する2個以上の光反応基;及び、水を主成分として含む溶剤系で当該架橋剤が架橋剤として使用されることができるほどに十分である1個以上の帯電した基を含み、ここで、各帯電した基は、独立して窒素含有基を含み、前記窒素含有基が、
【化4】

(式中、各R1は独立にアルキレン基、オキシアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基であり、各R2は独立にアルキル基、オキシアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、各R3は独立に非結合性電子対、水素原子又はR2と同じく定義される基であり、R1、R2及びR3基は妨害作用のないヘテロ原子又は置換基を含むことができ、ただし、R2が光活性化可能な基を含む場合、R3はR2に等しくない)
からなる線状又は複素環式基の群から選択される前記表面。

【公開番号】特開2009−19045(P2009−19045A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212858(P2008−212858)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願平9−517607の分割
【原出願日】平成8年10月31日(1996.10.31)
【出願人】(500064890)サーモディックス,インコーポレイティド (15)
【Fターム(参考)】