説明

水濡れ等バラスト表面状態に影響されない一液湿気硬化型道床安定剤

【課題】安全性が高く水に濡れたバラストでも接着する短期間の線路の保守が容易な一液湿気硬化型道床安定剤を提供する。
【解決手段】ポリ又はモノイソシアネートと活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、及び、減粘剤を含有し、前記イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーがオキシエチレン基を含有せず、前記減粘剤が、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性である一液湿気硬化型道床安定剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨後等の水濡れしたバラスト固定に使用できる一液湿気硬化型道床安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道では、主に枕木及びバラストにより道床が構成される。従来、バラストに道床安定剤を散布してバラストを固定することにより、道床抵抗力を高め、またバラストの飛散を防止している。夏のレール膨張を抑え、冬の降雪、凍結、暴風等の自然災害からレールを守るためにもバラストの固定は重要である。一方、保守作業においては、天候に左右される作業も多くあり、特に一液湿気硬化型道床安定剤を用いた保守作業においては、従来の技術ではバラスト表面が乾燥していることが求められ、撒布時の天候のみならずバラスト表面の乾燥時間も必要であった。
道床安定剤として、ポリウレタンプレポリマーを含有する一液湿気硬化型のものが周知である(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−112912号公報
【特許文献2】特許第3813114号公報
【特許文献3】特許第3813115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの道床安定剤では、降雨後等の多量の水分がある雰囲気で施工した場合、ポリウレタンプレポリマーが水と反応して大量の炭酸ガスを生成、この炭酸ガスが樹脂をスポンジ状にして樹脂硬度を極端に低下させ、本来の目的である道床抵抗力を得ることが出来ないという問題点があった。
本発明は、降雨後等水分を含む雰囲気であっても、バラストの固定力を損なうことなく、結果保守作業の時間拡大が可能な一液湿気硬化型道床安定剤を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。即ち、一液湿気硬化型道床安定剤に含まれるポリウレタンプレポリマーにオキシエチレン基等の親水基を含有するポリオールあるいはモノオールが導入されていたり、親水性を持った希釈剤を使用したりすれば炭酸ガスの発生がより助長され樹脂がスポンジ状に硬化しバラストの固定に悪影響を及ぼすこと、低温時の作業性向上をはかる目的で0℃における粘度を500mPa・s以下に設定すると、気温が高くなれば見かけの粘度が極端に低くなるため、バラスト表面から樹脂が流れ落ちてしまいバラスト同士の密着力の低下を招くことになってしまうことを知見した。
さらに、(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有非水溶性モノマー又は非水溶性ポリマー及び活性水素含有塩成分とを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、及び通常施工時の最適付着量を確保できる粘性を持たせるために非水溶性減粘剤を含有する道床安定剤を用いることにより、バラストに付着した水分に影響されないで道床安定ができることを知見した。
【0006】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の一液湿気硬化型道床安定剤に関する。
[1] (A)(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、及び(B)減粘剤を含有し、
前記イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーがオキシエチレン基を含有せず、
前記減粘剤が、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であることを特徴とする一液湿気硬化型道床安定剤。
[2] 塩を含有するモノマー又はポリマーをさらに含有することを特徴とする前記[1]記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[3] 前記減粘剤が、炭素数6〜22の芳香族、脂肪族若しくは脂環族炭化水素、炭素数6〜22の高級脂肪酸エステル、植物油若しくは動物油脂肪酸の炭素数6〜22のアルキルエステル、炭素数6〜22の高級脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセライド、炭素数6〜22の多塩基酸若しくは酸無水物のエステル、並びに炭素数6〜22の多塩基酸若しくは酸無水物のモノ、ジ若しくはトリグリセライドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[4] 前記活性水素含有モノマー又はポリマーがオキシエチレン基を含有しないことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[5] 0℃での粘度が500mPa・sを越えることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[6] 湿気硬化に際してウレタン化触媒を含有しないことを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
[7] 経時分解剤をさらに含有しても良いことを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、疎水性かつ通常施工時の最適粘度を有するため、降雨後等の湿潤したバラストであっても、当該バラストの固定が可能であるという優れた効果を奏する。
また、本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、引火点が高い非水溶性の減粘剤を使用することができ、人体に有毒な触媒を添加する必要がないので、安全性も高いという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0009】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、(A)(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、及び(B)減粘剤を含有する、道床に散布されてバラストを相互に固着する道床安定剤であって、前記イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーがオキシエチレン基を含有せず、前記減粘剤が、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であることを特徴とするものである。
【0010】
[ポリ又はモノイソシアネート]
ポリ又はモノイソシアネートとしては、例えば分子中に平均1個以上、好ましくは平均1〜3個程度のイソシアネート基を有する脂肪族、芳香族、脂環族等のポリ又はモノイソシアネートが挙げられる。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等のポリイソシアネート;フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ベンゼンスルホニルイソシアネート、p−トルエンスルホニルイソシアネート、イソシアネートエチルメタクリレート等のモノイソシアネートが挙げられる。これらのポリ又はモノイソシアネートは、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0011】
[活性水素含有ポリマー又はモノマー]
活性水素含有ポリマー又はモノマーとしては、例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素含有基を平均1個以上、好ましくは平均1〜4個程度含有するポリマー又はモノマーが用いられる。具体的には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ジメチロールプロピオン酸等のアルキルポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、ペンタエリスリトール、DPPA等のポリエーテルポリオール;多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリシクロデカンジメチロール等)と多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール等のポリオール、ポリアミン、ポリチオール等が挙げられる。これらの活性水素含有ポリマー又はモノマーは、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0012】
本発明に使用される活性水素含有ポリマー又はモノマーは、オキシエチレン基を含有しないことが好ましい。
【0013】
[イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマー]
本発明に使用されるイソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーは、(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーと常法に従い反応させることによって製造することができる。当該反応に供する(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーの比率は、例えば、重量比100:100〜100:1程度、好ましくは100:50〜100:10程度で行えばよい。
【0014】
前記イソシアネート基を含有するポリウレタンプレポリマーとしては、例えばイソシアネート基含有量を2〜50%程度、好ましくは5〜20%程度含有するポリウレタンプレポリマー等が挙げられる。上記範囲であれば、フリーのイソシアネート基の量が適切であり、道床安定剤の貯蔵安定性に優れる。また、バラストに散布した後、イソシアネート基と水との反応による副生成物の炭酸ガスが多量に発生して、樹脂がスポンジ状に固まることもない。
【0015】
本発明において、イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーは、オキシエチレン基を含有しないことを特徴とする。イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーが親水性のオキシエチレン基を含有しないことにより、本発明に係る道床安定剤をバラストに散布した際に、炭酸ガスの生成が抑えられ、バラストを安定して固定することができる。
【0016】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤中のイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーの含有量は、道床安定剤全体に対して、例えば30〜95重量%程度、好ましくは50〜90重量%程度、より好ましくは50〜80重量%程度にすればよい。
【0017】
[減粘剤]
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤中の減粘剤としては、本発明の道床安定剤の粘度を調整できるものであり、かつ、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性(非水溶性)のものであれば特に限定されないが、例えば、炭素数6〜22の芳香族、脂肪族若しくは脂環族炭化水素、炭素数6〜22の高級脂肪酸エステル、植物油若しくは動物油脂肪酸の炭素数6〜22のアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)エステル、炭素数6〜22の高級脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセライド、炭素数6〜22の多塩基酸若しくは酸無水物のエステル、並びに炭素数6〜22の多塩基酸若しくは酸無水物のモノ、ジ若しくはトリグリセライド等、又はこれらの混合物等で、水に対する溶解度が1.0重量%未満の非水溶性のもの等が挙げられる。前記減粘剤は、性状が常温液体であるものが好ましい。
【0018】
前記高級脂肪酸としては、例えば、直鎖又は分岐鎖をもつ炭素数6〜22の飽和又は不飽和の高級脂肪酸等が挙げられ、具体的にはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が挙げられる。
【0019】
前記植物油若しくは動物油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、ババス脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、あまに油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、鯨油脂肪酸等の植物油又は動物油脂肪酸等が挙げられる。
【0020】
前記多塩基酸としては、例えば、蟻酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、安息香酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0021】
前記芳香族、脂肪族若しくは脂環族炭化水素としては、例えば、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、石油ナフサ、メチルシクロヘキサン、イソホロン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0022】
前記芳香族、脂肪族若しくは脂環族炭化水素、高級脂肪酸エステル、植物油若しくは動物油脂肪酸のアルキルエステル、高級脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセライド、多塩基酸若しくは酸無水物のエステル、並びに多塩基酸若しくは酸無水物のモノ、ジ若しくはトリグリセライドは、例えばアセチル基等の官能基で修飾されていてもよい。
【0023】
本発明に使用される減粘剤としては、天然品又は天然品を常法により適宜精製した天然品由来のものでもよく、また石油由来等の合成品であってもよい。地球温暖化防止への取り組みが世界的規模で始まっている昨今、炭酸ガスとして炭素を大気中へ余分に排出しないカーボンニュートラルと考えられる天然素材を出発原料とした製品の開発が国内外から求められているという点から、天然品又は天然品由来のもの、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、ババス脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、あまに油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸等の植物油脂肪酸等のアルキルエステル等が好ましい。
【0024】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤中の減粘剤の含有量は、道床安定剤全体に対して、例えば約5重量%以上、好ましくは10〜50重量%程度、より好ましくは20〜50重量%程度にすればよい。上記範囲であれば、道床安定剤の粘度が適切となり、バラスト表面にポリウレタン樹脂が適切量付着するので、バラストの固定強度に優れる。
【0025】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、減粘剤により0℃での粘度が500mPa・sを越えるように調整されることが好ましい。より好ましくは、0℃での粘度が500mPa・sを越えかつ5000mPa・s以下であり、さらに好ましくは0℃での粘度が500mPa・sを越えかつ2000mPa・s以下である。このような粘度範囲に調整することにより通常施工時の最適付着量を確保でき、道床安定を図る強度を得ることができる。
【0026】
[塩を含有するモノマー又はポリマー]
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、さらに塩を含有するモノマー又はポリマーを含有していてもよい。
前記塩を含有するモノマー又はポリマーとしては、例えば無機酸の塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、有機酸の塩(例えば、酢酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等)を含有するモノマー又はポリマーが使用できる。好ましくは、ウレタンプレポリマーとの溶解性から、有機酸の塩を含有するモノマー又はポリマーを用いるが、雨等により自然界に溶け出さないためにはウレタン化する必要があり、例えば、ヒドロキシ酸等の塩を含有するモノマー又はポリマーを用いるのがより好ましい。
【0027】
前記ヒドロキシ酸としては、具体的には、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸等の脂肪族ヒドロキシ酸;サリチル酸、クレオソート酸、バニリン酸、シリング酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等の芳香族ヒドロキシ酸等が挙げられる。塩としては、具体的には、アルカリ金属塩(カリウム、ナトリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、アンモニューム塩等が挙げられる。
【0028】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤中の塩を含有するモノマー又はポリマーの含有量は、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー全体に対して0.1〜30重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。上記範囲であれば、空気中からの吸湿量が適切であり、イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーの硬化が均一に行われるので、バラスト固定力の低下が抑えられる。
【0029】
[経時分解剤]
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤はさらに経時分解剤を含有していてもよい。経時分解剤を含有することにより、バラスト交換時におけるバラスト突き崩しの作業性を向上することができる。
前記経時分解剤としては、例えば、日光、紫外線、熱、水、酵素、微生物の作用によって熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の分子結合を分断し最終的には水や二酸化炭素、コンポスト等の無害な物質にまで分解を促進させる重合体組成物等を用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂成分の分解を促進するための、脂肪酸、脂肪酸エステル、天然脂肪、天然若しくは合成ゴム、又はこれらの混合物から選ばれた酸化可能な成分と、酸化反応を開始させる遷移金属成分と、分解過程の開始を遅延させる非金属安定化成分とからなる酸化分解促進剤(特許第2961138号公報)等が挙げられる。具体的には、デグラノボンやS−AWシロップ(ノボンジャパン株式会社製)等を用いることができる
【0030】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤中の経時分解剤の含有量は、道床安定剤全体に対して、例えば0.1〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度、より好ましくは0.1〜2重量%程度にすればよい。上記範囲であれば、分解促進速度が適切となり、通常保線作業で行われる定期的なバラスト交換作業である固定から数ヵ月経過後の突き崩しが容易となる。
【0031】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、消防法上の指定可燃物又は危険物第4類であることが好ましく、指定可燃物又は危険物第4類の中でも引火点が200℃を越える第4石油類であることがより好ましい。
【0032】
また、本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、湿気硬化に際して従来用いられる第3級アミン類、有機金属化合物等のウレタン化触媒を含有しないことが好ましい。
【0033】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、上記したイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー及び減粘剤、並びに、所望により、塩を含有するモノマー又はポリマー、経時分解剤等を公知の方法で混合することにより、製造することができる。
【0034】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤は、容器の石油缶に孔をうがつ方法や市販のじょうろ等の散布器を使う等の公知の方法により散布することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例及び比較例を提示するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1
攪拌羽根、還流装置、温度計を設置した加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDI(日本ポリウレタン工業株式会社製MR−200)を72重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレングリコール)16重量部、リシノール酸トリグリセリド(小倉合成工業株式会社製精製ひまし油)10重量部、リシノール酸Na2重量部を投入し80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、アセチル化リシノール酸アルキルK−PON 180BA(小倉合成工業株式会社製、引火点200℃以上) 67重量部投入して15分間攪拌することにより、0℃で粘度が1000mPa・s、固形分60%のやや霞のある褐色粘稠液を得た。
【0037】
比較例1
実施例1と同様に加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDIを72重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレングリコール)16重量部、リシノール酸トリグリセリド(小倉合成工業株式会社製精製ひまし油)10重量部、リシノール酸Na2重量部を投入し80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、プロピレンカーボネート(BASF ジャパン株式会社製)100重量部投入して15分間攪拌することにより、0℃で粘度が300mPa・s、固形分60%のやや霞のある褐色粘稠液を得た。
【0038】
比較例2
実施例1と同様に加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDIを68重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレングリコール)12重量部、ポリオキシエチレン含有ポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製PR−3007=数平均分子量3000、2官能、ポリオキシエチレン:ポリオキシプロピレンの重量比7:3のランダム重合ポリエーテルポリオール)20重量部を投入し、80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、プロピレンカーボネート43重量部投入して15分間攪拌した後、硬化促進のためウレタン化触媒としてDMDEEを0.3重量部混合することにより、0℃で粘度が700mPa・s、固形分70%でやや霞のある褐色粘稠液を得た。
【0039】
比較例3
実施例1と同様に加温装置付き四つ口セパラブルフラスコに窒素ガス雰囲気下、ポリメリックMDIを68重量部投入し、液温を50℃に調整した。次に攪拌しながらポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製P−3000=平均数分子量3000、2官能ポリプロピレンポリオール)12重量部、ポリオキシエチレン含有ポリエーテルポリオール(株式会社ADEKA製PR−3007=数平均分子量3000、2官能、ポリオキシエチレン:ポリオキシプロピレンの重量比7:3のランダム重合ポリエーテルポリオール)20重量部を投入し80℃で3時間反応させた。反応終了後液温を50℃まで下げた後、キシレン21重量部、ソルフィットAC22重量部の混合液を投入して15分間攪拌した後、硬化促進のためのウレタン化触媒DMDEEを0.3重量部混合することにより、0℃で粘度が600mPa・s、固形分70%の褐色透明な粘稠液を得た。
【0040】
評価方法
実施例及び比較例1〜3を、以下の方法により評価した。
*樹脂の性状:ガラス容器を通して目視にて確認した。24時間後に樹脂が分離、固化及び沈降物が発生していない場合を合格とした。
*硬化性:5〜10mm程度の花崗岩乾燥砕石(乾燥状態)及びそれを24時間水につけ市販のざるにて水をきったもの(湿潤状態)を厚み20mmに敷き、各樹脂をそれぞれ2kg/mの量で均一に散布し、2時間後完全に固着しているか否かを指触にて確認した。
*接着性:5〜10mm程度の花崗岩乾燥砕石及びそれを24時間水につけ市販のざるにて水をきったものを厚み20mmに敷き、各樹脂を2kg/mの量で均一に散布し、24時間後の圧縮破壊強度が20Kgf/cm以上の場合を合格とした。
*発泡性:接着性同様に花崗岩乾燥砕石を処理し、樹脂を撒布、目視にて観察、発泡が抑えられている場合を合格とし、明らかに発泡している場合を不合格とした。
結果を下記表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
結果から明らかなように、乾燥状態では実施例及び比較例1〜3ともに硬化性は良好であった。しかしながら、湿潤状態では実施例の硬化性は良好であったのに対し、比較例1〜3の硬化性は劣悪であった。
また、実施例は湿潤状態においても、接着性は良好で、炭酸ガスの発生はごく少量であった。それに対し、比較例1の場合粘度が低すぎ、厳冬時の気温が氷点下の場合以外粘度が低くなりすぎ樹脂がバラスト表面から流れ落ちてしまい接着強度低下を引き起こした。さらに、比較例2、3の場合、樹脂の親水性が強くバラストに付着している水分により炭酸ガスが発生し発泡して接着強度低下を引き起こした。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の一液湿気硬化型道床安定剤を用いることにより、安全性が高く、水に濡れたバラストでも接着するため、短期間の線路の保守が容易になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)ポリ又はモノイソシアネートと(b)活性水素含有モノマー又はポリマーとを反応させて得られるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマー、及び、(B)減粘剤を含有し、
前記イソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーがオキシエチレン基を含有せず、
前記減粘剤が、20℃での水に対する溶解度が1.0重量%未満の疎水性であることを特徴とする一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項2】
塩を含有するモノマー又はポリマーをさらに含有することを特徴とする請求項1記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項3】
前記減粘剤が、炭素数6〜22の芳香族、脂肪族若しくは脂環族炭化水素、炭素数6〜22の高級脂肪酸エステル、植物油若しくは動物油脂肪酸の炭素数6〜22のアルキルエステル、炭素数6〜22の高級脂肪酸のモノ、ジ若しくはトリグリセライド、炭素数6〜22の多塩基酸若しくは酸無水物のエステル、並びに炭素数6〜22の多塩基酸若しくは酸無水物のモノ、ジ若しくはトリグリセライドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項4】
前記活性水素含有モノマー又はポリマーがオキシエチレン基を含有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項5】
0℃での粘度が500mPa・sを越えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。
【請求項6】
湿気硬化に際してウレタン化触媒を含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の一液湿気硬化型道床安定剤。

【公開番号】特開2011−106097(P2011−106097A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259386(P2009−259386)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(591195592)大同化成工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】